七話 −超現実−
6 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:04:29.72 ID:x8Bj4UvvP
代理ありがとうございました。

まとめ 内藤エスカルゴ様
http://localboon.web.fc2.com/099/top.html

−前回のあらすじ−
ヽ('∀`)ノ.......
  (  )........
 ノ  |.............

以上。
今回も短いので2話投下します。

10 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:10:15.58 ID:x8Bj4UvvP
七話 −超現実−



 先の一騒動により半壊したモナーの喫茶店にて、
ぞろぞろと集まった警察関係者により現場検証が行われていた。
 そこよりやや遠く、現場検証に加わることなく、
その様子を眺めるだけの警官が二人いた。

(´<_` )「兄者部長」

( ´_ゝ`)「なんだい、弟者君」

(´<_` )「これはなんですかね?」

( ´_ゝ`)「なんだろうなあ」

 彼らは現場検証に駆り出されているわけではなく、
ただ暇だから駐在所から足を運んだ、いわば野次馬である。
 二人の視線の先にはポップコーンのように弾けた屋根や、
直線的に切り落とされた壁、
どういうわけか道路の真ん中まで飛び出したテーブルや椅子など、
様々な非現実的光景が広がっていた。


13 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:13:19.47 ID:x8Bj4UvvP
(´<_` )「これ、人間がやったんですか?」

( ´_ゝ`)「女が喧嘩をしていたらしい」

(´<_` )「……ゴリラの女とかじゃなくて?」

( ´_ゝ`)「人間の」

 弟者は再び喫茶店に視線を戻すと、「はぁ……」と溜息を吐いた。

(´<_` )「警察官は市民の安全を守るのが職務ですよね」

( ´_ゝ`)「そうだな」

(´<_` )「じゃあ僕仕事辞めても良いですか? 今とっても守られたいです」

( ´_ゝ`)「まあ待ちたまえ」

(´<_` )「何か?」

( ´_ゝ`)「君が辞めたら、誰が私を守る」

(´<_` )「……勘弁してください。自分で精一杯です」

( ´_ゝ`)「いやいや、すまん。冗談だ」

(´<_` )「はぁ。先に言ったのは僕ですし、気持ちは分かりますけど……」

14 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:16:26.11 ID:x8Bj4UvvP
 今度は二人で喫茶店をまじまじと眺める。
どう見てもこれほどの規模の破壊ならば、
爆発事故など強烈なアクシデントに見舞われた様にしか思えないのだが、
それにしては窓ガラスが無事であるし、とにかく破壊が局所的で奇妙なのだ。

( ´_ゝ`)「幸い怪我人は居ないみたいだし、
      これ以上よくないことが起こらなければいいが」

(´<_` )「そうですね。最近は物騒な話も多いですから」

 ここ数ヶ月、この町近辺での死亡事件が急激に増加していた。
既に前年の死者数を軽く超えたばかりか、
このペースでいけば全国でトップに躍り出るほどの勢いだ。
 加えて、被害者は多様な死因の者が揃っており、
猟奇殺人者の類である可能性が高いとされている。

 しかしながら関連性のあると思われる事件の被疑者については、
未だその足取りすらつかめていない。

(´<_` )「そういえばこんな話、知ってますか?
      ここ最近の事件の犯人が数十年前の生き残りだっていう話です」

( ´_ゝ`)「生き残り? 一体何の」

(´<_` )「僕も生まれる前の事ですから、詳しくは知らないんですけど、
      なんでもある農村で流行り病が起きて、
      その病に罹患(りかん)した人が周辺都市を襲撃したとか」

( ´_ゝ`)「ん? それなら昔聞いたことがあるな。
      たしか、世間が『黄泉がえり』とか言って騒いでいたやつじゃないか?」

16 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:19:24.07 ID:x8Bj4UvvP
(´<_` )「ええ。死んだと思っていた人が再び息を吹き返し、
      その時には怪力になっていたり、足がとんでもなく速くなっていたりしたそうです」

( ´_ゝ`)「たしかそれは調べてみると生き返っていたのではなく、
      一時的に心停止を引き起こしていただけで、
      怪力云々も噂や報道に後付された与太話だったと解決したらしいが」

(´<_` )「らしいですね。事実、医学的にもきちんとした証拠が揃っていて、
      黄泉がえりは貧困に苦しみ凶行に及んでしまった農民の、
      その鬼気迫る言動が生み出した作り話だということに間違いないそうです」

( ´_ゝ`)「それじゃあ何か、その時捕まらなかった農民が、
      今回事件を引き起こしていると?」

(´<_` )「あくまで噂話です。
      現場がああですから、オカルト好きの格好の餌になっていると言うところでしょうか」

( ´_ゝ`)「生き残っていたとしても、その農民ももう腰が曲がっているだろうに」

(´<_` )「そうですね。あるいはその子供や孫なんて説もあるそうですよ」

( ´_ゝ`)「ふむ……私が思うにその考えは短絡的だな。
      むしろ現代で共通点を持つケース、あるいは当時の事件を今知った若者の――」

 兄者が推論を披露しようとしたその時、
どこから来たのか唐突に一人の小さな少女が現れた。
背丈は一五〇センチ後半くらいなのだが肩幅が狭く、
また、サイズの合ってない一回り大きいカーキ色のチュニックパーカーが、
少女の体を小さく見せていた。

19 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:23:36.65 ID:x8Bj4UvvP
 フードを深く被っていたため、その表情をうかがい知ることは出来ないが、
兄者の目の前に立ち止まり黙っているところを見ると、何か用事があることには違い無さそうだった。

( ´_ゝ`)「何か、お困りですか?」

 語りかけ反応を探るも、少女は微動だにしない。
それを見た弟者が、フォローすべく中腰になって少女に目線を合わせると、
普段より根幾分優しい声で話しかけた。

 それを聞いてか聞かずか、少女はポケットから裸の白い錠剤を一つ取り出すと、
それを前歯で噛み砕き、残りを音を立ててすり潰すと、ぽつりと一言だけ、

lw´‐ _‐ノv「死んで砂になったら、私と遊んでね」

そう言って何処かへと歩き去ってしまった。

( ´_ゝ`)「……なあ、弟者君。私にはそんな農民より、今この町に住む人が心配でならないよ」

(´<_` )「同感です」

 兄者は首に手を当て「ふう」と溜息を吐くと、
ニ三度気だるそうに首を回しながら、弟者に背を向け歩き出した。

(´<_` )「戻るんですか?」

( ´_ゝ`)「煙草だよ」

 後ろを向いたまま胸ポケットから取り出した煙草の箱を見せると、
兄者はまた溜息を吐いた。

22 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:26:26.22 ID:x8Bj4UvvP




  _
( ゚∀゚)「そんなに溜息ばっかり吐くなって」

 一方でこちらもに、しつこく溜息を吐く人物が居た。

从 ゚∀从「無茶言うなよ。足がこれで、ペニサスさんがそれだぜ?」

 ベッドに寝ながら、ハインは苦笑した。
ツンにより負傷したアキレス腱は、手術が必要なほど傷が深く、
手術が成功したとして、全治まで一年は掛かるだろうと医者には言われた。

ノパ听)「……ペニサスさん、辞めないって言ってたのに」

 傍らに居たヒートが呟く。
見舞いに来たのはジョルジュとヒートだけであり、
ツンはどうしても気まずいと、この場には現れなかった。
  _
( ゚∀゚)「で、お前らはこれからどうする?」

从 ゚∀从「どうするって、どうもしねえよ」
  _
( ゚∀゚)「ペニサスの居ないモララーの下に留まるのか?」

从 ゚∀从「別に俺はモララーの下についてたわけじゃねえ」

ノパ听)「そうそう。俺はペニサスさんのものだからな」

26 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:29:34.53 ID:x8Bj4UvvP
  _
( ゚∀゚)「惚れこんでるなー。じゃあこのまま何もしないのか?」

从 ゚∀从「わかんねえな。どーせ足もロクに動かねえし、何もしねーかもな」

ノパ听)「俺はそんなのはイヤだからな」
  _
( ゚∀゚)「お、ヒートは何か考えてるのか?」

ノパ听)「まずあの金髪女を殴る。謝るまで殴ったらペニサスさんを探しに行く」
  _
( ゚∀゚)「金髪ってツンか」

从 ゚∀从「それは別にいいだろ。なんかもう殴る理由もねえし」

ノパ听)「イヤだ」
  _
( ゚∀゚)「じゃあ今から行くか、ヒート」

ノパ听)「おう、連れてってくれ」

从 ;゚∀从「はあ? マジで?」
  _
( ゚∀゚)「いやー、俺も前々からアイツは一度懲らしめてやらなきゃいけないと思ってたんだ。
    よっしゃ、それじゃハイン、行ってくるわ。お大事にー」

从 ゚∀从「お、おう……」

 なんでもないようにそう言うとジョルジュは片手を挙げながら、
鼻息を荒げるヒートを連れて部屋を出て行った。

29 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:32:17.33 ID:x8Bj4UvvP




  _
( ゚∀゚)「たのもー!」

ξ゚听)ξ「……何よ」
  _
( ゚∀゚)「ぶっ飛ばしに来た」

ξ゚听)ξ「……あっそ。好きにすれば」
  _
( ゚∀゚)「だとよ。ほら、よかったな今がチャンスだぞ! ぶん殴れ!」

ノパ听)「おい、いや、ぶん殴れってお前……」

 ドアを開けて出てきたツンは、目の周りを真っ赤に腫らしている上、
返事も鼻に掛かったような弱々しい声しか出していなかった。
一目見ただけで先ほどまで泣いていたのは明らかだが、
それでもジョルジュは、むしろヒートの方を不思議そうに見るばかりであった。

ノパ听)「さすがに無理だろ、これは」
  _
( ゚∀゚)「んだよだらしねえな。
     こんなしおらしい時のコイツになんて滅多に会えないんだぞ」

33 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:35:37.21 ID:x8Bj4UvvP
ノパ听)「お前かなり酷い奴だったんだな。こんな顔見せられて殴れねーよ」

ξ゚听)ξ「何それ、同情? くだらない。いいから早くしてよ」

ノパ听)「はあ? お前、俺が折角何もしないで……」
  _
( ゚∀゚)「いいから、早く殴ってやれ」

ノパ听)「殴ってやれって、お前ら頭おかしいんじゃないか?」
  _
( ゚∀゚)「早くしろ。言っただろ。
     こいつがこんなにヘコんでるの滅多に無いって」

ノパ听)「だから! ヘコんでるんなら殴ったら可哀想だろ!」
  _
( ゚∀゚)「ヘコんでるからだよ。なあ、ツン」

ξ゚听)ξ「……ごめん、もう無理」
  _
( ゚∀゚)「さいですか。それじゃお邪魔しました」

ノパ听)「え、ちょ」

 ツンは勢い良く扉を閉めると、
ドタドタと足音を立てて部屋の奥のほうへ駆けていった。

35 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:38:16.75 ID:x8Bj4UvvP
ノパ听)「……意味わかんねえ」
  _
( ゚∀゚)「お前も酷い奴だな。ツンまた泣いちゃったじゃねーか」

ノパ听)「酷いのはお前だろ! お前が殴れとか何とか言ってたからじゃねーのかよ!」
  _
( ゚∀゚)「聞け、ヒート」

ノパ听)「なんだよ」
  _
( ゚∀゚)「いいか、悪いことしちまったと思ってる奴を、初めは絶対許すな。
     必ず最初に責めてやれ。それから許してやれ」

ノパ听)「なんでだよ。怒られたい奴なんて居るわけねーだろ」
  _
( ゚∀゚)「それはお前がこれからもう少し色々な経験をするとわかる。
     ま、例外もあるけど、ムカつかれるのは覚悟でこれはしなきゃいけないんだ」

ノパ听)「はあ?」
  _
( ゚∀゚)「ああ、でも悪いことしたと思ってない奴は別にどーでもいいぞ。
     むしろ逆ギレされるしな。ありゃ厄介だ」

ノパ听)「……金髪は悪いことしてると思ってるってことかよ」
  _
( ゚∀゚)「そりゃお前、あの顔見てないのかよ」

39 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:41:20.28 ID:x8Bj4UvvP
ノパ听)「……じゃあやっぱりいいよ。止めた」
  _
( ゚∀゚)「あーあ、ヒートも何だかんだで優しいからなあ。
     わざわざハインの為に怒りに来て、それで相手許しちゃうし」

ノパ听)「許してねーよ! こっちの方が金髪にとって辛いって事なんだろ?
     ならこれでいいじゃねーか!」
  _
( ゚∀゚)「お、なんか珍しく知性のかけらを感じたぞ。
     でもハインの件(くだり)は否定しないんだな」

ノパ听)「くだりってなんだよ」
  _
( ゚∀゚)「話の流れから読みとれ。
     ……つってもお前は機微(きび)には疎(うと)そうだな」

ノパ听)「何言ってるか全然わかんねえ」
  _
( ゚∀゚)「ちびっ子は知らなくて良い事だよ」

ノハ#゚听)「誰がチビだ! この間測ったら150センチあったんだからな!」
  _
( ゚∀゚)「だはは! いやー、お前ってさ」

ノパ听)「なんだよ」
  _
( ゚∀゚)「実際こうして色々話してみて分かったんだけど、
     そんなキャラだったんだな」

ノパ听)「どんなだよ」

42 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:44:42.41 ID:x8Bj4UvvP
  _
( ゚∀゚)「例えば……動物園に大好きな動物を見に行ってすげえテンション上がったけど、
     その後その動物に怖い目に遭わされて泣きながら嫌いになるってのはかなりピンと来る」

ノパ听)「……なんだそれ」
  _
( ゚∀゚)「今度ハインに言ってみな。きっと簡単に二文字くらいで説明してくれるぞ」

 それきり脹(ふく)れたしまったヒートを見て、
時折ジョルジュはニヤニヤしながら彼女の頭を撫でようとした。
しかしそれはヒートによって素早く払い除けられ、
再びジョルジュは頬を緩ませてしまうのであった。

 そんなやりとりも行われなくなった頃、
ジョルジュはやおら表情を引き締め、しかし声は努めて明るく保ちながら、
ヒートに問いかけた。
  _
( ゚∀゚)「ところで、お前俺たちと一緒に活動しないか?」

ノパ听)「……いや、しない」
  _
( ゚∀゚)「あちゃー、即答。ちなみにどうして?」

ノパ听)「それだと、なんか俺だけ裏切ったみたいな感じがするから」
  _
( ゚∀゚)「……裏切った、か」

ジョルジュの声のトーンが、一つ下がった

47 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:49:08.64 ID:x8Bj4UvvP
ノパ听)「それに、俺一人じゃなんか変な感じがするんだよ」
  _
( ゚∀゚)「一人? うーん、俺たちじゃ駄目か」

ノパ听)「なんかだめ」
  _
( ゚∀゚)「そか。駄目なら仕方ないな」

ノパ听)「ああ、仕方ねえ」
  _
( ゚∀゚)「んじゃ俺帰るわ。ヒートは病院戻るのか?」

ノパ听)「ああ」
  _
( ゚∀゚)「そか。気を付けてな」

 軽く手を挙げヒートに別れを告げると、
ジョルジュは何かの歌を口ずさみながら歩いていった。

 その背中を見ながらヒートは、
ハインに会いにいく前にどこかで果物でも買おうかなどと考えていた。
そうして実際には二三分ほど考え事をしていただけなのだが、
いつの間にかヒートの目の前に、その少女が音も無く現れていた。

52 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:52:47.43 ID:x8Bj4UvvP
ノパ听)「……くそ、油断したな」

lw´‐ _‐ノv「……」

ノパ听)「俺を殺しに来たのか? シュー」

lw´‐ _‐ノv「……来たの?」

 シューと呼ばれた少女は小首を傾げた。
その右手には白い錠剤が並ぶPTPシートがいくつか握られている。

ノパ听)「でも俺は黙ってお前に殺されるほど弱くねえぞ」

 半身の構えを取り、ヒートが意識を集中し始めた。
一方で脱力したまま、視線をあちらこちらへと移すシュー。
そして何処からか赤いクラッカーを取り出すと、まじまじと見つめ、大きく口を開けた。

lw´‐д‐ノv「んぐ……」

 僅かに声を漏らしクラッカーの広がった口を銜えると、
再びヒートの方へ視線を向けた。

ノパ听)「……お前、マジでやる気あんのか?」

lw´‐д‐ノv「あー」

 そしてシューは、そのまま口に銜えたクラッカーの紐を勢い良く引っ張った。
『パンッ!』と若干篭った破裂音と共に、
シューの頭から大量の紙吹雪と紙テープが飛び出した。

56 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:56:31.83 ID:x8Bj4UvvP
ノパ听)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

 パラパラと辺りに紙ふぶきが落ち、シューは紙テープ塗(まみ)れになった。

lw´‐ _‐ノv「……失敗」

 呆けたままのヒートを尻目にシューはクラッカーを口から取り出し頭に乗せると、
タイミングよく煙を吐きながらやってきたタクシーに乗りこんだ。
そしてタクシーはカートゥーンのように前タイヤを振り上げ一度縮むと、
信じられない速度で何処かへと走り去ってしまった。

ノハ;゚听)「……あいつ、何しに来たんだ?」

lw´‐ _‐ノv「それはね、ヒーちゃんも私と遊べばいいんだよ」

ノハ;゚听)「なッ!」

 たった今タクシーに乗ったはずのシューがヒートの真後ろに立っていた。
ヒートはそれに気付き、振り向くと同時にシュー目掛けて五指を突き出そうとした。
しかしシューは既に眼前にまで切迫しており、自爆は必至だった。

ノパ听)「クソッ!」

 距離を保つため慌てて飛び退くヒート。
しかしその背中がブロック塀にぶつかってしまった。

59 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 01:59:39.53 ID:x8Bj4UvvP
ノパ听)「え? なんで後ろに塀……」

lw´‐ _‐ノv「Qwamuichikup qwamui... loswe qwamui」

 一人慌てるヒートを意に介さず、何事かを呟き始めるシュー。
すると何が起きているのか、その背後にインクを零した様に黒いシミが広がっていく。

lw´‐ _‐ノv「Qwamuischipf qwamui, loswe qwamui.
        Cutonkre qwamui, loswe qwamui」

       『Gulmirphos ac ihrephen』

 そのシューの呟きに呼応するようにシミは広がり、
或(ある)いはどこからかそれに呼応する声さえ聞こえてきた。

lw´‐ _‐ノv「Pshkom robtho! Qwamui robtha!
       Cutonkre qwamui! loswe qwamui!」

       『Gulmirphos ac ihrephen,
        elmirphos ac ihrephen』

 突如黒いシミは弾け、辺りは陽の光の無い森へと変貌した。
シューの背後で、より一層闇の濃い空間が広がっていく。
そしてその密度が極大に達した時、その奥から何かが滲み出るようにゆっくりと現れた。

ノハ;゚听)「……」
ミ,, -ω-彡『Gulmirphos ac ihrephen,
       elmirphos ac ihrephen』

64 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:03:38.53 ID:x8Bj4UvvP
 それは桁違いに大きいフクロウだった。
翼を畳んだまま、ただ目を瞑りじっと動かずに居るフクロウは、
しかしそれだけで十分に存在感があり、自らを包む空間全てから睨まれているような錯覚さえ起こす。

ノハ;゚听)「これがお前の……」

 同じグループに居ながら、ヒートがシューの能力を見たのはこれが初めてだった。
シューは戦いの場には滅多に赴(おもむ)かず、
専(もっぱ)ら部屋に閉じこもるか、一人どこかをうろついているだけだった。

lw´‐ _‐ノv「一緒に遊んであげるね」

 シューがそう呟くと、フクロウはシューをそのくちばしで素早く一突きし、
一瞬でペロリと平らげてしまった。
そして首を二三度傾げると、再びじっと動かなくなった。

ノハ;゚听)「……おいおい」

 最早何をしていいかも分からずただ立ち尽くすヒート。
その目の前にひらひらとフクロウの羽根がゆっくり落ちてきた。
羽根はヒートの鼻先で一回転し、空中で静止。
そして羽根先を地面に向け、ピンと真っ直ぐに伸びると、
音も無く弾け無数に分裂し、辺り一面を羽根の吹雪で埋め尽くした。

lw´‐ _‐ノv「けれど彼女には鈍色(にびいろ)の滴しか降らない。
        紙風船は濡れて、乾かす陽の光さえ届かない」

 無数の羽根の向こう、いつの間にか真白な椅子に座るシューが居た。

lw´‐ _‐ノv「おしまい」

67 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:06:19.60 ID:x8Bj4UvvP




ノハ;゚听)「ッ!」

 気が付くとそこはジョルジュと別れた場所だった。
陽光がアスファルトに差し、道路には何も落ちていない。
視線を上げれば未だ歩き続けるジョルジュの背中があり、
その他に人影は全く無い。

ノハ;゚听)「……なんなんだよ」

 薄気味の悪い印象が拭いきれず、
不安に駆られたヒートは、別れたばかりのジョルジュの背中を早足で追った。





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