八話 −緩やかな連続−
70 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:08:24.60 ID:x8Bj4UvvP
八話 −緩やかな連続−



(;^ω^)「えーと……つまり?」

ノパ听)「……」
  _
( ゚∀゚)「つまり、こいつが今日からウチの居候になります」

(;^ω^)「……ア、アウアウ!」


 ――時は遡ること数時間前。
別れてハインの元へ向かったはずのヒートが、
いつの間にかジョルジュの服の袖を掴んで一緒に歩いていたのだ。
  _
( ゚∀゚)「えーと……忘れ物? 甘酸っぱい青春の思いが詰まった告白を忘れてたとか?」

ノパ听)「……」

 しかしヒートは俯いたまま何も喋る気配が無い。
眉間に軽くシワを寄せ、口はへの字になっているが、どことなく眼は泳いでいた。
  _
( ゚∀゚)「あれ、シカト喰らっちゃいましたけど。
     どうした? 何か言いそびれたことでもあったのか?」

 話を聴く態勢に入ったジョルジュ。
それを感じると、ヒートは顔を上げ、
モゴモゴと吃(ども)りながら、なにやら呟き始めた。

75 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:11:56.75 ID:x8Bj4UvvP
ノパ听)「よ、よく考えたらよ」
  _
( ゚∀゚)「おう」

ノパ听)「俺、今まで仮にもモララーの仲間だった」
  _
( ゚∀゚)「うんうん、そうだな」

ノパ听)「だから住む場所とかあったし、
     ハインとかペニサスさんが居て、寂しくなかったし」
  _
( ゚∀゚)「それで?」

ノパ听)「だけど、いま誰も居なくて、で、だから……
     だから、その……なんていうか……ほら……う……」
  _
( ゚∀゚)「何? 最後よく聞こえないぞ?」

ノパ听)「家無いだろ! お前家あるだろ! なんとかしろ!」

 若干涙目になりながら訴えるヒート。
それを見下ろしながら、ジョルジュは少し意地悪してみたくもなったが、
泣き出してしまいそうなヒートが可愛そうだったのですぐに助け舟を出すことにした。

80 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:14:41.10 ID:x8Bj4UvvP
  _
( ゚∀゚)「そうか! そうだな、そりゃ大変だ。
     ペニサスは何処行ったかわかんねえしハインは病院。
     モララーに付くの辞めちまったし、帰れねーよな」

ノパ听)「お、おう」
  _
( ゚∀゚)「よっしゃバッチリまかしとけ! 今ツンの家に電話して――」

ノハ;゚听)「ストップ!」
  _
( ゚∀゚)「え、なに? 賞賛の声を挙げる暇を与えろって?」

ノハ;゚听)「おまえ、あんなところに俺放り込まれたら八つ裂きにされちまうよ」
  _
( ゚∀゚)「大丈夫だ。アイツの得物は矢だから串刺しになるだけだ」

ノハ;゚听)「アホか!」
  _
( ゚∀゚)「アホとはなんだ、失礼な。
     ツン以外にお前匿(かくま)ってくれる奴なんかいねーぞ?」

ノパ听)「や、お前が居るじゃん」
  _
( ゚∀゚)「……はい? 俺?」

ノパ听)「うん」
  _
( ゚∀゚)「いや、俺はダメでしょー」

85 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:18:07.24 ID:x8Bj4UvvP
ノパ听)「なんで?」
  _
(;゚∀゚)「なんで? ってそんな普通の眼して訊かれてもなあ」

ノパ听)「別にもう襲ったりしねえことくらい分かるだろ」
  _
(;゚∀゚)「いや、お前じゃなくてさ、あーもー、なんつーんだろーなー」

ノパ听)「あ、そうか」

 パッと掴んでいた手を離すヒート。
ようやく気が付いたのかとジョルジュは溜息を吐き、
一体ヒートを誰に預けたら良いものかと再び考え始めた。

ノパ听)「掃除くらいなら出来るぞ」
  _
( ゚∀゚)「は?」

ノパ听)「飯はいい。俺食わないし。それでもまだダメか?」
  _
( ゚∀゚)「はあ……そういうこと」

 その一言にジョルジュは思考することを諦め、
ヒートをつれて自宅へと向かった――



89 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:20:35.90 ID:x8Bj4UvvP

  _
( ゚∀゚)「なあ、内藤。俺現時点で何か悪いことしてるかな?」

(;^ω^)「うーん……してないけど、駄目なんじゃないかって感じがするお」
  _
( ゚∀゚)「だよなー」

 ジョルジュの部屋に三人。
二人の男が悩み、一人の少女が何かを考えるでもなく、
ただ胡坐(あぐら)を掻(か)きながらゆらゆらと揺れていた。

ノパ听)「で、ジョルジュ。誰?」
  _
( ゚∀゚)「ん? ああ、そういや一応初対面になるか。
    こいつは内藤っつって、まあ新入りだな」

( ^ω^)「よろしくおねがいしますお」

ノパ听)「よろしく……した方がいいのか?」
  _
( ゚∀゚)「俺に訊くな。んでこっちはヒート。
     内藤に分かりやすく言うと、喫茶店襲ってきた三人組みの一人」

(;^ω^)「え? じゃあなんでここでこんなのんびりしてるんだお?」
  _
( ゚∀゚)「ほら、言ったじゃん。敵じゃなくなったって」

( ^ω^)「……あー、そう言えば。あ、そっかそっか」

93 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:23:24.35 ID:x8Bj4UvvP
 うんうんと納得した様子でヒートを見る内藤。
そして視線をジョルジュに移し、最後に部屋全体を眺め回して一言。

( ^ω^)「ジョルジュなら問題ないかと思うお」
  _
( ゚∀゚)「うーん……」

ノパ听)「考えるなって、もう連れ込んでるんだから。諦めとけ」
  _
( ゚∀゚)「連れ込むとか誤解を招く表現はやめろ」

 ジョルジュはふざけた顔で親指と人差し指でヒートの頬を摘んではいたが、
しかしそれでも一時たりとも笑顔にはならなかった。

( ^ω^)「結局ジョルジュがどうにかするしかないなら、
      これでいいんじゃないかお?」

ノパ听)「まあペニサスさんが見つかるか、ハインの足が治るか。
     そんな長くは居座らないから安心しろって!」
  _
( ゚∀゚)「わかったよ。なんとかするさ。なんとかする」

 半ば諦めたようにそう言い放つと、
ジョルジュは立ち上がりどこからか財布を持ってきた。
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( ゚∀゚)「ほら、ヒート。買い物行くぞ、買い物」

97 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:27:15.78 ID:x8Bj4UvvP
ノパ听)「買い物? いいけど急だな」
  _
( ゚∀゚)「お前がここに寝泊りするなら色々必要だろ。さすがにお前も俺のパンツ穿きたくないだろ?」

ノパ听)「あー、いや着替えとかはペニサスさんがハインのと一緒に持ってきてくれたぞ」
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( ゚∀゚)「はい? お前ペニサスと会ったのか?」

ノパ听)「いや、ペニサスさんが病院にでっかいバッグ持って一回来たってハインが言ってた」
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( ゚∀゚)「……ふーん。まあそうか。そうなるよな」

 なにやら一人で納得した様子のジョルジュは、
何かを考えるように俯きながら、頭の後ろを掌でトントンと叩いた。
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( ゚∀゚)「んー、まあそれじゃあ荷物取りに行くか。その帰りに何か食いたいもんでも買って帰ろう」

ノパ听)「ん? ジョルジュは腹減るのか? 俺は食わなくても大丈夫だけど」
  _
( ゚∀゚)「分かってねえなあ。食は体だけじゃなく心も作るんだぜ?
     育ち盛りのお前にゃ、腹が減らずとも必要なんだって」

ノパ听)「そうなのか」
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( ゚∀゚)「おう。何でもいいからお前は食いたいモン考えりゃいいんだ」

ノパ听)「わ、わかった。えーと……」

 真剣な顔をして両手を見つめたかと思うと、
ヒートは指を一本ずつ折りながらブツブツと呟き始めた。

100 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:30:09.76 ID:x8Bj4UvvP
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( ゚∀゚)「あ、内藤」

 ジョルジュは内藤に近寄ると、小さい声で「ツンにはしばらく内緒な」と、呟いた。
それを聞いた内藤は、顔を綻ばせると、

( ^ω^)「あー、そういうことかお」

と、なにやら得心(とくしん)した様子で頷いた。
  _
( ゚∀゚)「お前、いま途轍もない勘違いをしたな」

( ^ω^)「してないお。全然。同じ男として」
  _
( ゚∀゚)「……まあ、どっちでもいいわ。
     とにかく今はそっとしておいてくれ」

 その頃ヒートはといえば両の指を折り終えて、
果たして次は何で数えたらいいものかと悩んでいる様子だった。
ジョルジュの視線に気が付くと、ヒートは握った両拳を突き出して言った。

ノハ;゚听)「ジョルジュ! 数えられない!」

その言葉にジョルジュは少し勿体付けたように間を置き、
自身ありげに言い放つ。
  _
( ゚∀゚)「そういう時はな、食ってからまた数えろ!」

ノパ听)「おー、頭良い」

103 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:33:26.44 ID:x8Bj4UvvP
 素直に感心するヒートのその様子を見た内藤に、
いや、それまでの行動も慮(おもんぱか)った上でのことだが、ふと疑問が浮かぶ。

( ^ω^)「……。えーと、ヒート……さん?」

ノパ听)「おう」

( ^ω^)「失礼ですが……おいくつですか?」

ノパ听)「13」

(;^ω^)「アウトー! ジョルジュアウトー!」
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(;゚∀゚)「うるせー! おせーよ! ほら、行くぞヒート」

 ヒートを急かし、ジョルジュはそのまま逃げるように家を飛び出していった。

( ^ω^)「あ、鍵――」

 言いかけた言葉が届くことなく、内藤は再びジョルジュの家に一人残された。

( ^ω^)「これじゃあ本当にツンには何も言えないお……」

 溜息を吐き、独りごつ内藤。
その肩に、ひらひらと一頭のモンシロチョウが止まった。
それをじぃ、と見つめ、そして不意に内藤は全身が粟(あわ)立った。

106 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:37:10.29 ID:x8Bj4UvvP
(;^ω^)「あ、も、モンシロ……ツン、ちょ……」

 意味を持つ前に口から次々と言葉が出る間もモンシロチョウはハタハタと舞い続け、
そしてふわりと微かな横風に煽られたかと思うと、
そのまま背景の白に溶けて曖昧になり、消えてしまった。

( ^ω^)「……あー、そうだ。僕は大事な用事が山ほどあるんだよね。
      仕方ないよね。帰らなきゃね。そして家に鍵を掛けなきゃね」

 不自然な口調で内藤は誰にでもなくそう言うと、ジョルジュの部屋を後にした。
そして、その時になってジョルジュの部屋はオートロックだったということを思い出した。


 その夜、内藤の携帯にはツンからの着信が一件。
そしてその直後からジョルジュの着信が連続で七件。
最後に一時間空けてツンからの着信が再度一件あったが、
内藤はそれらを全てやり過ごし、ボーっとテレビを見ながら、
たまにジョルジュの置かれている状況を想像し、身震いをなんかをしていた。

110 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:41:26.41 ID:x8Bj4UvvP





 内藤が身震いをしていた頃、
時を同じくしてハインの病室に陰を落とす人物が一人居た。
とは言え室内に明かりは無く、
僅かに何処かから反射する月明かりのみが存在するだけであったが。

 ハインはといえば僅かに寝息を立てるばかりで、その気配に何の反応も示さない。
病室に人が一人居ようがそれは特別なことではないし、
存在するだけで目を覚ますほどハインは神経を鋭くしているわけではなかった。

( ・∀・)「……」

 そんな彼女の寝顔をじっくりと観察すると、
彼は微笑み、その手で彼女の前髪を優しく上げ額を撫でた。
そうして慈しむようにニ三度額を撫でた後、
彼はそのままその手で彼女の口を力強く押さえつけ、
もう片方の手で、先ほどまで撫でていた額に刃を突き立てた。

114 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/03(金) 02:45:48.65 ID:x8Bj4UvvP
 刃渡りは三十センチ。
若干肉厚ではあるが特に秀でた特徴のない普通の刃である。
ところが通常ならば片手で突き抜ける筈のない頭蓋をいとも簡単に打ち破り、
刃先は枕に到達していた。

 突如として見開かれたハインの眼は、
しかし彼を認識することなく天井をしっかと凝視するだけで、
すぐに何かを拒絶するように力いっぱい閉じられた。

( ・∀・)「君は火事だったか。でも僕にはそれが納得できない。
      仮説は十分に立てた。後は立証だ」

 そう言うと彼はナイフをいとも簡単に抜き取り、
まるで何も起きなかったかのように、普通にドアを開け、その場を後にした。
夜が明けるまで彼が捕まることは無く、また騒ぎが起こることも無かった。
そして脳漿(のうしょう)に塗(まみ)れたハインの枕だけが翌朝に発見された。






118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/03(金) 02:52:01.83 ID:x8Bj4UvvP
今日はこれで終了です。
たくさんの書き込みありがとうございました。
猿にもならないし、すごくうれしいです。

再規制に萎えて今回は投下が若干遅れました。ごめんなさい。
次回は次の次の土日を目指してがんばります。

深夜までお付き合い下さりありがとうございました。

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