( ∵)は( ^ω^)の遊園地にやってきてしまったようです その13
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:07:13.44 ID:VGa1BqEu0
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僕は数十年前の書類を机に戻すと、窓を開けた。
日の光が、我先にと部屋の中に差し込む。さわやかな風が、僕の頬をなでる。
空は雲ひとつ無い青空、太陽がさんさんと差し、部屋に居てもぽかぽかと暖かい。
外、つまり園内には明るい音楽が流れ、カップルや家族連れなど
さまざまなお客さんが行きかっている。
(;^ω^)「……わけわからんお 」
誰に言うでもなく、つぶやいてみる。
とりあえず今のところ
何で僕がブーンさんの記憶を見ているかはわからない。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:08:36.19 ID:VGa1BqEu0
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でも、わかったこともある。
まず、ここが過去の日本であるということ。
さっきの書類にあったラウンジ建設という会社名を
僕は園に来る前に確かに聞いたことがあった。
ということは、あの園は確かに過去の日本に実在していた。
……ってことだよな、やっぱり。信じられないけど。
(;^ω^)(……いろいろ考えたってしかたないお。
とりあえず今は、外に出て直接自分の目で確認するお)
そろりとドアを開けると、さんさんと降る日の光が僕の顔を照りつけた。
( ・∀・)「どうかしましたか」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:09:49.49 ID:VGa1BqEu0
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(;^ω^)「うわお!!」
ドアを開けた瞬間
不意に見慣れた、でも少し懐かしい姿が視界に飛び込んできて
僕は数歩後ずさり、ドアに激突した。
( ・∀・)「? どうかしましたか」
あいててて、と背中をさする僕に、いつもどおりの案内係さんがもう一度繰り返した。
まさか、この人まで実在してるとは思わなかった。
日の光の下で見るのも、やっぱりどこか少し不気味。
(;^ω^)「な、なんでもないですお。少し散歩するだけだお」
( ・∀・)「散歩? でも今日h」
「ブーンちゃん! 」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:10:40.45 ID:VGa1BqEu0
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と、案内係さんの後ろから叫び声がしたと思えば
少女がひょっこりと顔を出した。
('、`*川「おひさしぶりね! ブーンちゃん! 」
(;^ω^)「お……? 」
記憶を見てる、とはいえどうやらブーンさんの記憶は
僕には用意されていないらしい。
目の前の親しげに現れたこの女の子を、僕は知らない。
だいたいい僕はブーンさんじゃないし。
……いや、でもなんとなく、どこかで見た事がある様な……。
('、`*川「あら、私が解らないの?
まぁ、もうしばらく会っていないからしかたないわね」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:12:57.73 ID:VGa1BqEu0
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妙に大人びたしゃべり方をする女の子だ。
腰に手をあてはーっとため息をつく姿は成人女性のそれにしか見えない。
('、`*川「ペニサスよ。ブーンちゃんの従兄妹の」
( ・∀・)「ほら、この間招待したでしょう。一日フリーパスを送って」
(;^ω^)「そ、そうかお……? そういわれればそんな気もしてきたお」
( ・∀・)「? ここ最近はいつも今日という日を楽しみにしてたじゃないですか」
じゃないですか、といわれても……
川 ゚ -゚)「じゃああれか、私のことまで忘れたのか」
(;^ω^)「お? 」
突然ひょっこり現れたのは、黒髪が印象的な少女だった。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:16:15.41 ID:VGa1BqEu0
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川 ゚ -゚)「久しぶりだな、ブーン。
この園が開園したときに招待されて以来だから……5年ぶりか」
もちろん、僕は園長さんじゃないからこの人の事も知らない。
だから久しぶりといわれてもやはり全くピンとくるはずも無い。
けどやっぱりどこかで見たことがある気がする。
そして、この人を見ると悪寒がするのはなんでだろう……。
でも脳が思い出すなと警告しているので、僕は考えるのをやめた。
川 ゚ -゚)「私はまだ12、3歳そこらだったし
ペニサスは至ってはまだ小学生か幼稚園生かって頃だったしな。
解らなくとも無理も無いか」
('、`*川「あら失礼ね、私はちゃんと小学生だったわよ」
川 ゚ -゚)「大して変わらんよ。ところでブーン」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:19:53.87 ID:VGa1BqEu0
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(;^ω^)「は、はひ」
川 ゚ -゚)「今話題の日本一のジェットコースター
ザ・ブーンとやら、工事中とあったが」
そこにいる全員がブーンをじっと見る。
しどろもどろのブーンに、すかさず案内係が割って入った。
( ・∀・)「ここだけの話ですが、少々不備が見つかりましてね。
ゲストに何かあってからでは、ということもあり
改装も兼ねて大掛かりな工事を行うことになったのです」
川 ゚ -゚)「むぅ……。それは残念だな。
今日はそれを楽しみに来たところもあったのだが」
( ・∀・)「工事の着工までにはまだ日はありますが
何しろゲストに何かあってからでは取り返しがつきませんからね」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:25:13.43 ID:VGa1BqEu0
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名前はまだ解らないが、おそらく姉の方は
ほっぺをぷくっと膨らませてへそを曲げていて、妹のペニサスちゃんは
そんなお姉さんをなだめている。
( ・∀・)「園長さん、だめですよ」
( ^ω^)「え? 」
( ・∀・)「どうせ園長さんの事だから
一回くらいなら動かしてあげてもいいかな、なんて
考えてるんでしょう、いけませんよ。絶対に」
(;^ω^)「そんなことないお」
正直、少しだけそうしてあげたいと思った。
僕がというより、ブーンさんが、というか。うまく説明はできないけど。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:30:53.69 ID:VGa1BqEu0
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( ・∀・)「さ、そろそろ広場でパレードがスタートしますよ、行きましょう」
案内係さんが、行きましょうと2人を急かすと
ペニサスちゃんはにこにこ顔でそちらに駆けていった。
うん、大人びていてもやっぱり子供なんだな。
川 ゚ -゚)「ブーン、」
( ^ω^)「お、君も早くついて行ったほうがいいですお? 」
川 ゚ -゚)「一泊この近くのホテルに泊まって
明日、もう一日ここで遊ぶ予定なんだが
さっきの話、考えておいてくれないか? 」
(;^ω^)「さっきの話? 」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:32:20.06 ID:VGa1BqEu0
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川 ゚ -゚)「ザ・ブーンだよ。
私ももうすぐ受験、大学生になればなおのこと
就職してしまえばものすっごい忙しくなる。
もうしばらくはここにこれないと思うんだ」
(;^ω^)「……」
川 ゚ -゚)「その前に、思い出を作っておきたいんだ。
な、園長さん、いいだろ? な? 」
( ・∀・)「い け ま せ ん」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:33:10.85 ID:VGa1BqEu0
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(;^ω^)「ですよねー」
( ・∀・)「しっかりしてください。
クーさんに何を言われたのかは解りませんが……」
遊園地の業務が終了し、閉園後、ブーンの家に戻った僕は
案内係さんに無理な提案をして、突っぱねられていた。
(;^ω^)「あの二人には僕からちゃんと改めて説明しておくお。
忘れてくださいお」
( ・∀・)「……まったく」
案内係さんはあきれた顔をして、くるりと後ろを向くと
わざとらしく「あ」と言って、またこちらに向きなおし、言った。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:33:53.42 ID:VGa1BqEu0
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( ・∀・)「確か今ラウンジ建設の方が見えていますね。
今度の工事の下見に、と」
(;^ω^)「? 」
( ・∀・)「もし、その方に見ていただいて
動かしても大丈夫ということになったら……あるいは」
案内係さんが、こちらを見てにこりと笑う。
(*^ω^)「ぼ、僕ちょっとお願いしてきますお! 」
<ヽ`∀´>「え? 明日動かすのは可能か、ニダか? 」
(;^ω^)「急にすみませんお。とある理由があって、一度だけでも動かしたいんですお」
<ヽ`∀´>「ふいー、また急ニダねぇ」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:38:10.55 ID:VGa1BqEu0
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この男は、担当者のニダーというらしい。
一部照明を照らされた大きなジェットコースターの前で、タバコをぷかぷかと吹かしている。
<ヽ`∀´>「可能ニダよ。
たった今すべての点検・整備は済ましたし、不備はないニダ」
ホルホルホル、と笑って、目の前で煙をぷーっと吹く。
(*^ω^)「おっおっ! ありがとうございますお! 」
タバコの煙を振り切ると、僕は急ぎ足で家に帰り二人のいるホテルへ連絡をした。
(;-@∀@)「い、良いんですか、ニダーさん。
まだ整備はどころか点検すら完全に終わっていませんよ」
<ヽ`∀´>「かまわんニダ。日本人は少し過敏すぎるニダ。
ちょっとばかし不備があったってばれやしないニダ」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:43:53.17 ID:VGa1BqEu0
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ξ゚听)ξ「ちょっとブーン、どういうことなのかしら」
(;^ω^)「ツ、ツンさん」
ξ゚听)ξ「おはよう、で、どういうこと? 」
その日の夜
顔をしかめたツンさんが家にやってきて
ドン、と握りこぶしをテーブルに打ち付けた。……正直、怖いです。
(;^ω^)「ど、どういうって、なんのことですかお」
ξ゚听)ξ「とぼけないで」
(;^ω^)「だ、大丈夫ですお。
ラウンジの人は点検も整備も済んでいるといっていましたお」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:44:28.18 ID:VGa1BqEu0
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ξ゚听)ξ「私が言ってるのは安全面の事だけじゃないわよ。
仮にも園長であるあなたが、私情を持ち出して
キャストやゲストを混乱させること、ちゃんとわかってるわけ? 」
(;^ω^)「あ、あうあう……」
「まぁまぁ、いいじゃない」
ガチャリと戸が開いて入ってきた人物を見て、僕は目を丸くした。
/ ,' 3「安全面には問題ないと専門家も言ってるし
ゲストにも良いサプライズになるさ」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:45:29.61 ID:VGa1BqEu0
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ふっくらしているし、肌つやも良い。しわだってほとんど見られないし
声だってわかわかしい。
一見して、別人にしか見えない。
でも、間違いない。間違えるはずが無い。
信じられないけど。
(; ω )(お、おじいちゃん……? )
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:46:40.65 ID:VGa1BqEu0
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ξ゚听)ξ「あら荒巻。園内清掃は終わったわけ? 」
/ ,' 3「ああ、今終わったところ。
ザ・ブーンが一日だけ再オープンするってことで
キャスト達が園中を慌しく走り回っていたけどね」
(; ω )(…… )
そういえば、昔おじいちゃんがよく話してくれたのを思い出した。
/ ,' 3『子供達の笑顔と仲間達に囲まれていると
清掃という仕事も、毎日楽しくて仕方なかったもんじゃ……』
遊園地で働いていた事は知っていた。
でも、まさか、まさかこの園だったとは……
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:52:18.76 ID:VGa1BqEu0
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ξ゚听)ξ「ごめんなさいね、誰かさんのワガママで
あなたたちに迷惑をかけることになってしまったわね」
/ ,' 3「いやいや、僕は一清掃員でしかないから特に迷惑は被ってないさ。
それに、キャスト達はみんな園長さんが大好きだからね。
園長さんの頼みとあればなんだってするよ」
ξ゚听)ξ「……まったく、好きだからって理由だけで
みんながそうやって甘やかすんだからっ」
/ ,' 3「ふふ、そう言って。園長さんの事を一番好きなのは誰だろうね」
ξ///)ξ「バ、バカッ、何言うのよっ」
二人が親しげに何か喋っているけど、何も頭に入ってこない。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:58:47.62 ID:VGa1BqEu0
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少なくとも、この人はおじいちゃんであって、おじいちゃんではない。
思い出話をすることも、ありがとうを言うことも……
瞬間、涙が溢れそうになって二人にくるりと背を向ける。
ξ゚听)ξ「? あら、もうこんな時間。着替えて帰らなくっちゃ 」
/ ,' 3「こんな時間に一人じゃ危ないよ。送っていこうか」
ξ゚听)ξ「大丈夫よ、爺が迎えに来てくれているわ
それじゃあお疲れ様 」
/ ,' 3「そうか、ツンはお金持ちのお嬢様だったね、
おつかれさま、また明日」
ツンさんが部屋から出て行くと、部屋はおじいちゃんと僕だけになった。
/ ,' 3「ねえ、園長さん」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 00:59:19.86 ID:VGa1BqEu0
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(; ω )「な、なんですかお」
/ ,' 3「まだみんなには内緒にしているんだけど
やっぱり園長さんには最初に報告したくて」
( ^ω^)「? 」
/ ,' 3「実は僕、結婚することになりそうで……」
とはいっても、まだプロポーズをしただけだから
決まったわけではないですけどね。と言って、照れくさそうに笑う。
( ^ω^)「そ、それは……お、おめでとうだお! 」
僕の意思とは関係なく、言葉が漏れる。これはブーンさんの言葉だ。
/ ,' 3「ありがとうございます、へへ。
それで、園長さんにお願いがあるんです」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 01:00:10.73 ID:VGa1BqEu0
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( ^ω^)「お願い? 」
/ ,' 3「ええ。ずっとこの園をやっていてほしいんです」
おじいちゃんは、言った。
生まれてくる子供と、奥さんと三人でここに遊びに来るのが夢だと。
そして、いつか自分に孫というものが出来たなら
/ ,' 3「ここにつれてきて、園長さん、ツン、ドクオ、キャストのみんな
仲間達のことを自慢したいんです」
だから
/ ,' 3「だから、どんなによぼよぼになっても
ここを続けてください。この場所を残しておいてください、なんて」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 01:00:55.57 ID:VGa1BqEu0
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( ω )「く…… 」
/ ,' 3「? 」
( ;ω;)「くさいお、くさすぎるお。何いってるんだお荒巻
まだプロポーズの返事ももらっていないくせに何いってるんだお」
僕の目からは、ぼろぼろと涙が出ていた。
僕も泣いてしまっていたし、ブーンさんも泣いていた。
/ ,' 3「そうですね、これでふられちゃったらしゃれにもなりやしない 」
( ;ω;)「お前みたいないい男がふられるわけないお。
う、うぐ、うぐ、幸せになれお、荒巻」
/ ,' 3「もう、なかないでくださいよ園長さん、僕は別に
ここを辞めるわけじゃないんだから」
嗚咽する僕(ブーンさん)の肩を、おじいちゃんがぽんぽんと叩いて笑う。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 01:02:10.04 ID:VGa1BqEu0
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おじいちゃんの語った夢が叶わなかったのを僕は知ってる
こんなに仲間達に囲まれていて幸せだったおじいちゃんの最期を知っているから
いつまでも涙が止まらなかった。
そう、おじいちゃんの夢は、叶うことは無かった。
僕と来ることも
奥さんと三人でここに遊びに来ることすらも。
その理由の全てを、次の日
僕は知ることになる。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/13(木) 01:03:17.32 ID:VGa1BqEu0
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幾人もの人を死なせた、その事故の全てを。
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