( ∵)は( ^ω^)の遊園地にやってきてしまったようです その12
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:19:47.22 ID:qKlUFSkq0
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目が開けていられなくなって、どんどん閉まっていく視界と
遠ざかっていく園長さんの背中。
手を延ばそうとするけれど、最早指一本動かすことすら適わない。
……
抗うことを止めるとやがて、視界は完全に暗闇に変わった。
僕はこのまま消えてなくなってしまうのか。
それとも、ずっとこの闇の中に、意識だけを漂わせているのか。
……どちらにしろ……
「ねぇ、……寝てるの?」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:20:50.65 ID:qKlUFSkq0
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気のせいか、人の声がしたような気がした。幻聴か、それとも……
「こんなところで眠ったら寒いよ、かぜひくよ」
幻聴ではない。耳元で、確かに少女の声がする。
どこから入ったのだろうか。というか、なぜこんなところに……
聞こうとするけど、口が動かない。
「眠っているなら良いけど、起きてるなら聞いて。お願いがあるの」
……お願い?
( ・∀・)「ゲスト。歓迎致します。僕は案内係のモララーです」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:49:47.42 ID:qKlUFSkq0
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J(;'ー`)し「……え、あぁ、こんにちは。どうも」
戸惑うしかない女と、胸に手を当てて深々と礼をするモララー。
(´<_` )「じゃあゲストの相手はお前のお仕事だな。
後は頼んだぞ、モララー」
そう言うと弟者は猫の様にひらりとそこにあった塀に登ると
またその奥の建物の屋根から屋根へと伝っていった。
J(;'ー`)し(なんというジャンプ力。間違いなくオリンピック代表)
( ・∀・)「さて、あなたが行くべきはこちらですよ」
J(;'ー`)し「え? 」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:50:32.56 ID:qKlUFSkq0
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( ・∀・)「僕の他にもあなたを確かに知っている人があと一人だけいます。
その人もあなたに会いたいでしょうからね」
J(;'ー`)し「わ、私を知っている? 」
女は、そんなに大きくない目をくわっと開いた。口は変わらずぼんやりと開いたままだ。
( ・∀・)「ええ。本当は園中をご案内して差し上げたいのですがね」
モララーはわざとらしく残念そうな顔をしてみせると、混乱している女の
手を引いて、ゆっくり、塔に向かって歩き始めた。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:51:12.69 ID:qKlUFSkq0
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从'ー'从 最後に動かしてあげられるのは……ゲストのお陰です
( ∵)「……」
ふと、渡辺さんの言葉が頭をよぎった。
そのときはわけが分からなかったけど、今なら分かる気がする。
園の隅、遠くの方に見える渡辺さんの白いジェットコースターに
ゆらゆらと不気味にうごめく闇が手をかけているように見えた。
そう。今にも、食べられてしまいそうな……
( ∵)「……ん? 」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:52:01.21 ID:qKlUFSkq0
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ノハ ゚听)「あ、そうだゲスト。そのてすりですけど
少しさびて腐食してるみたいなんで、気をつけて……って……
あれ? ゲストはどこに?」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:52:43.76 ID:qKlUFSkq0
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暗闇だし、私は少し後ろを歩いているから、ぼんやりとしか顔が見えない。
くんくんと鼻を動かして、まるで飼い主を探す犬みたい。
J(;'ー`)し「……あの、モ、モララーさん? 」
握られたままの手に戸惑いつつ、恐る恐る声をかける。
振り返った案内係の顔が、ぽつんとついていた街灯に灯される。
最初に会ったときから動いていない、笑顔っていったら笑顔なんだけど……。
この暗闇や、派手な装飾を施された建物たちと似合いすぎていて、不気味。
( ・∀・)「案内係で結構ですよ。名前で呼んでいただけるような身分ではありませんし。
何かありましたか? 」
J(;'ー`)し「案内係さん? あの、ここは一体……? 」
( ・∀・)「遊園地ですよ」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:53:57.32 ID:qKlUFSkq0
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即答。それは見れば解るけど、そういうことじゃなくて……。
( ・∀・)「……」
間。
でも目を離してくれない。うう、怖い……。
J(;'ー`)し「あの、私を知ってる人って? 」
間には耐えられないし、勇気を出して、質問を重ねてみる。
( ・∀・)「ええ。僕とその他に、あなたに非常に近しい関係の……」
近しい関係と聞いて、少しほっとした。
よかった、誰かは知らないが、その人に会えばひとまず……
って、あれ?
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:55:09.14 ID:qKlUFSkq0
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J(;'ー`)し「ぼ、僕って、あなたも私を……? 」
( ・∀・)「もちろん、よく知っt……」
言葉が途切れたかと思うと、案内係の目が私から離れた。
さっきまで動かなかった表情が、ぐっと険しくなる。
どうしたんですか、と言おうとする間もなく
案内係は「お待ちください」とだけつぶやいて、駆け出した。
J(;'ー`)し「ちょっ、待っ……」
やたら長い丈の服を着ているっていうのに、走る速度はやたら速い。
こんなところに一人にされてはたまらない。慌てて追いかける。
が、その姿はどんどん小さく……
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:57:29.38 ID:qKlUFSkq0
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J(;'ー`)し「はっ、はっ……どこいくんですか! ……ちょっと! 」
喉が裂けるほどの大声で叫ぶけど、とまってくれない。
と、遠くに大きな時計が……。どうやらあれに向かって走ってるみたい。
度々もつれそうになる足と、切れる息。ああもうだめ、倒れそう。
あぁ、もう時計台の近くまできた。あと少し、あと少しだけ走ろう。
( ・∀・)「……ふう」
もう死ぬ、意識が飛ぶって限界まで走って
ようやく追いついた先、バカ高い時計台の下にボロボロの子供を抱えた案内係がいて
私はその場にへたり込んだ。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:58:30.90 ID:qKlUFSkq0
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( ・∀・)「危なかったね、ゲスト。痛いところはないかな? 」
( ∵)「……はあああぁぁ……」
死ぬかと思った。
僕の口から、大きくて長いため息がもれる。
というかもし、案内係さんが拾ってくれなかったら、確実に死んでた。
( ・∀・)「無事みたいだね、よかった。
ところで、なんであんなところから降ってきたのかな? 」
( ∵)「いや、て、手すりが……」
思い出して、ぞわっと鳥肌が立った。そう、手すりが……
「ゲストォォォォォォォォォォ!!! 」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 00:59:42.61 ID:qKlUFSkq0
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(;∵)「! 」
案内係さんに説明しようと口を開いたとき、何かが
彗星のような勢いで僕に(正確には、僕を抱えた案内係さんに)衝突した。
( ∵)「あいててて……」
どうやら僕は何かによって数メートルほどふっとばされたらしい。
むっくりと体を起こす。
ノパ听)「だ、だだだ大丈夫ですかぁぁぁぁぁ!?」
(;∵)「うわっ! 」
起き上がった先、視界いっぱいに現れたヒートさんの顔。
ち、近い。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:00:20.70 ID:qKlUFSkq0
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ノパ听)「あ、あぁぁぁ、ここ、血、血がぁぁぁぁぁ!! 」
なみだ目で、僕のひざのかすり傷を指差し叫ぶ。
(;∵)「い、いや。これはさっきふっとばされたときの奴で……」
( ・∀・)「手すりが、どうしたんだい? 」
どこらからぬっと現れた案内係さんが、ヒートさんの肩にポンと手を置く。
ノパ听)「て、手すりが……あ、あの、そのぉぉ……」
( ∵)「いや、ぼ、僕が手すりから落ちたんです! 」
( ・∀・)「ゲストが? 」
( ∵)「え、ええ。身を乗り出してたら手すり飛び越えちゃって、あははは」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:01:45.37 ID:qKlUFSkq0
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( ・∀・)「……そう。僕はてっきり」
ノハ;゚听)「す、すみません! 手すりは高くしておきます!!
そ、それじゃあ私はこれで!!! 」
そう言うとヒートさんは、逃げるようにどこかに走っていってしまった。
本当は、手すりが壊れて、それと一緒に落ちてしまったんだけど、本当のことを言えば
ヒートさんが何をされるか……。さっきの案内係さんの目を見ていれば想像がつく。
( ・∀・)「楽しかったかい、ゲスト」
必死で走るヒートさんを見送りながら、案内係さんが言う。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:02:33.36 ID:qKlUFSkq0
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( ∵)「楽しいと言うか……」
そうだ、あの暗闇のこと……聞かなきゃ。
( ・∀・)「闇を見たんだね」
( ∵)「え!? 」
今言おうとした言葉が先に出てきたから、鳥肌が立った。
( ∵)「キャストの人たちも知ってたんですか? 」
( ・∀・)「知ってるのは僕とゲスト、あと渡辺くらいかな。
ほかにも知ってた人はいたんだけど、食べられちゃった」
(;∵)「た、食べ……!? 」
「あ、あの……案内係さん?」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:03:09.55 ID:qKlUFSkq0
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唐突に
懐かしいにおいがした。それに、聞き覚えのある声。
聞き違えるはずも無い。
でも
こんなところにいるわけがない。ありえない。
「……はぁ、おいていかないでくださいよ、焦りました」
( ・∀・)「申し訳ない。僕自身少し焦っていましたからね」
後ろで声がしている。案内係さんは僕の隣で、後ろを向いて話している。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:04:35.29 ID:qKlUFSkq0
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振り返るのが、こわい。
だって、まさか
「あ、あの。その男の子は? 」
( ・∀・)「彼が、あなたに紹介したい人ですよ。
ゲスト、こっちを向いて」
ぐいと腕をつかまれ強制的に、そちらを向かされる。
J( 'ー`)し「……? 」
まさか
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:06:26.90 ID:qKlUFSkq0
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なんで
J( 'ー`)し「あ、あの。あなた、私のこと知ってるって…… 」
なんで、お母さんが、ここにいるんだ
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:07:36.23 ID:qKlUFSkq0
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体の震えが止まらない。ことばが出てこない。
( ∵)「お、おか……」
( ・∀・)「ゲスト」
案内係さんが、背中をコツンと突いて耳元でつぶやく。
( ・∀・)「彼女はここに来たばかりだよ」
( ∵)「……え? 」
( ・∀・)「ゲストもここに来たばかりの時は
空気の効果で何も覚えていなかったろ? 」
( ∵)「っていうことは……」
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:09:55.31 ID:qKlUFSkq0
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( ・∀・)「そうだよ。ゲストのことも知らないし、
自分の事も何も覚えていない」
J( 'ー`)し「あの…… 」
( ・∀・)「おっと、紹介が遅れました。彼もあなたと同じゲストです」
J( 'ー`)し「そ、そうですか。どうも、はじめまして…… 」
「ぼくはビコーズです、よろしくね」
と、僕の後ろで案内係さんが言って、頭をぐっと押し
強制的におじぎをさせられる。
実の母親にはじめまして、といわれ、はじめましてと返すのが
こんなにつらいことだとは思わなかった。
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:10:54.86 ID:qKlUFSkq0
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( ・∀・)「ゲストがそうだったように、直に記憶を取り戻すさ。
いろいろ言いたいこともあるだろうけど、それまではがまんだよ」
案内係さんがやはり耳元で言う。
僕は何も返せない、さっきから、ただ茫然としていることしかできずにいる。
J( 'ー`)し「……あ、案内係さん? あの、それで……」
お母さんは、園に来たときの僕みたいに混乱していて
聞きたいことを整理、消化するのに手間取っているみたいだ。
( ・∀・)「ふう、それにしても、ゲストが二人とはどうしようかね。
ゲストが二人じゃあ、呼び方も面倒くさくなるし……」
まーたなんかおかしなこと言ってるけど、なんかどうでもいいから無視だ。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:11:32.93 ID:qKlUFSkq0
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( ・∀・)「こんなときは……」
ξ゚听)ξ「……何よ、急に呼び出したりして」
( ・∀・)「あいたたたー、いきなりぶたなくてもいいじゃないか」
ξ゚听)ξ「フン、この鞘で思い切り殴っても
倒れないどころか血のひとつも流さないくせに」
( ・∀・)「頭はもげそうになったけどね」
(((J(;'ー`)し)))(ば、化け物だ)
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:12:53.07 ID:qKlUFSkq0
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( ・∀・)「で、ツン、君にお願いがあるんだ。この女性を頼みたい」
ξ゚听)ξ「……は? 」
(((J(;'ー`)し)))(こ、殺される)
( ・∀・)「とはいっても、どこにも案内しなくていいんだ。
ただ一緒にいておはなしでもしててくれればそれでいい」
ξ゚听)ξ「……なんであたしなのかしら? 」
( ・∀・)「だって一番の仲良しじゃないか、僕ら」
ξ゚听)ξ「そうね、じゃあ今度友情の証に心臓を一突きさせてちょうだいね」
( ・∀・)「やだなあ、冗談ばっかり」
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:14:28.18 ID:qKlUFSkq0
-
ξ゚听)ξ「ふふふふふ」
( ・∀・)「ははははは」
……と、一通りのお約束(?)があった後に
お母さんはツンさんと一緒にメリーゴーランドへ行った。
正直、つらかった。お母さんの顔を見るのも、声を聞くのも。
あのまま一緒にいたら、息が詰まって死んでいたかもしれないから。
( ・∀・)「ゲスト、引き離すような真似をしてすまなかったね」
( ∵)「……いえ」
( ・∀・)「今の状態の彼女とゲストを会わせるべきじゃなかった。
気がつくのが遅かったよ」
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:16:05.88 ID:qKlUFSkq0
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( ∵)「……」
( ・∀・)「意外と冷静なんだね」
( ∵)「そんなこと……」
( ・∀・)「ゲストをね、連れて行きたい場所があるんだ」
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:17:11.30 ID:qKlUFSkq0
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歩いた。どこに向かっているかはわからないけど、歩いた。
僕も何もしゃべらないし、案内係さんもなにもしゃべらない。
でも気を遣ってくれてるのか、ゆっくりと僕の歩く早さにあわせてくれる。
( ・∀・)「ここだよ」
しばらく歩いて、そろそろ着かないかなって頃に
周りのそれより頭一個突き抜けた、お城みたいな建物の前に着いた。
( ∵)「なんですか? ここは」
( ・∀・)「園長のいえだよ」
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:18:35.83 ID:qKlUFSkq0
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( ∵)「え、園長さんの……? 」
( ・∀・)「鍵はここにある」
案内係さんは胸ポケットから古びた鍵を取り出して
ガチャリと扉を開けた。
( ∵)「あ、あの……勝手に入っちゃっていいんですか? 」
( ・∀・)「いいんだよ。園長はいないんだからね」
( ∵)「いないって……」
というか、案内係さんはさっきから、何をがさこそと探し回ってるんだろう?
まぁいいや……、どうでも。
( ・∀・)「お、あったあった」
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:19:35.20 ID:qKlUFSkq0
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やがて、何かを見つけ出したらしい案内係さんは、僕に一枚の紙を差し出した。
( ・∀・)「引継ぎ申請書だよ」
( ∵)「引継ぎ? 何のですか? 」
( ・∀・)「園長のさ」
……え?
( ∵)「えっと、それならすこし前に断ったはずなんですけど……」
( ・∀・)「暗闇を止めるには、こうするしかないんだよ」
( ∵)「……どういう意味ですか? 」
( ・∀・)「そもそも、なんで暗闇が現れたかっていうと
僕が考えるに、園長がいないからなんだ」
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:20:40.75 ID:qKlUFSkq0
-
「園長が?」僕が言うと
案内係さんは引継ぎ書になにやらガリガリと書きながら頷いた。
( ・∀・)「考えてみれば当たり前な話だよ。誰でも思いつく。
だって、園長がいない園が成立するわけがない。
今こうして在るだけでも奇跡と呼べるのかもしれない」
書きながら、ペラペラとなにやらしゃべっているけどよく意味が解らない。
( ・∀・)「まぁ要は。君が園長にならないと
この園は闇に飲まれてしまうって事だ」
( ∵)「……え? 」
( ・∀・)「僕も君も、キャストのみんなも、みんな消えてしまう。
もちろん君の母親も。永遠に、闇の中だ」
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:22:04.79 ID:qKlUFSkq0
-
早口でまくし立てる案内係さんに、僕は圧倒されるだけだった。
もし案内係さんが言ってることが本当だとしたら僕は、
( ・∀・)「これでよし、あとはゲストのサインだけだ。
本当はここにキャスト達の代表者のサインもいるんだけど。
ほら、スタンプのお願いがあるだろう? あれを使えば省略できる」
( ∵)「……ぼ、僕は、」
( ・∀・)「……」
( ∵)「……」
黙ってしまった僕に、案内係さんが
今度はいつものようにゆっくりとした口調で話し始めた。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:24:12.82 ID:qKlUFSkq0
-
( ・∀・)「迷うことなんてないんだよ、ゲスト。
ここにサインをすればみんなが闇から解放されるし
君はお母さんとずっとここに居れるんだ」
( ∵)「……おかあさんと……、」
案内係さんは、「そう、ずっと一緒だよ」と呟くとにこりと笑って
ペンを握らせた僕の手を取り、サラサラと僕の名前をサインをした。
僕の名前が、少し黄ばんだ紙の上に、キラキラと金色に輝きだした。
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:25:35.45 ID:qKlUFSkq0
-
ξ゚听)ξ「それで、あんたは一体誰なわけ? 」
J( 'ー`)し「……誰、っていわれても……」
私はツンさんという人と一緒に、メリーゴーランドを目指して歩いていた。
ξ゚听)ξ「名前もわからないのかしら? 」
J( 'ー`)し「……ええ、まぁ」
ξ゚听)ξ「じゃあなんてよべばいいの? おばさまでいい? 」
J(;'ー`)し「……それはちょっと」
ξ゚听)ξ「規則ではゲストと呼ばなければならないのだけれどね」
J(;'ー`)し「……じゃあゲストでいいじゃないですか」
ξ゚听)ξ「規則は破るためにあr……あら? 」
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:27:06.20 ID:qKlUFSkq0
-
J( 'ー`)し「どうかしたんですか? 」
ξ゚听)ξ「……見て、電灯が 」
ツンさんが指差す遠い先を、目を凝らして見る。
道の両端に置かれている電灯が、こちらに向かってポツポツとついていってる。
さっきまで真っ暗だった園が、明るさを取り戻していく。
ξ゚听)ξ「……どういうこと……? こんなことって……」
川 ゚ -゚)「ツン」
まだ暗い、明かりのついていないほうの道から、ぬっと
長髪の女性が現れた。
ξ゚听)ξ「クー、あなた何か知ってるの!? 何なの、これは!? 」
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:27:57.72 ID:qKlUFSkq0
-
川 ゚ -゚)「落ち着け、私も何も知らんのだ。
さっき貞子の所へ行って見たが何も知らんと言っていた」
ξ゚听)ξ「だ、だって。開演前の照明の点灯は園長の仕事よ。
この園に園長はいない。それなのに」
川 ゚ -゚)「ブーンがここに帰ってくることは無い。
ならば……ひとつしかない、しかし、誰が……」
ξ )ξ「……案内係 」
川 ゚ -゚)「何? 案内係がどうs
ツンさんはそう呟くと、明かりの来る方向へ走り出した。
川 ゚ -゚)「……どうなっている」
長髪の女性は眉間に手をやり、なにやら考え事を始めた。
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:29:26.28 ID:qKlUFSkq0
-
ううん、わけがわからない。暗くなった遊園地に電灯がつくのは当たり前じゃない。
というかもうすでに暗くなっていたから、点けるのが遅いくらい。
でもどうやらここでは、電灯が点くのは一大事……らしい。
J(;'ー`)し(さっきから、わけがわからないことだらけよ……)
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:30:15.76 ID:qKlUFSkq0
-
川д川 「……一体何が……おきてるの」
貞子は、すっかり明るくなった園から差す光を疎ましげに見つめると、シャッとカーテンをしめた。
( ,,゚Д゚)「俺にもわからねえッス。園がこんな風に、明るさを取り戻すなんて、普通じゃない」
('A`)「あぁ、不気味だ……」
从・∀・ノ!リ人「ぶきみなのじゃー」
(´<_` )「まぁ、今現在解るのは」
('A`)「この園に新しい園長が誕生したっつーことくらいだ……」
川д川 (そんなことより、
なんでみんながよりによって私の家に集まってきたのかもわからないわ……)
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:32:27.92 ID:qKlUFSkq0
-
貞子は紅茶をすすりながら、せまくなった部屋を見てためいきをついた。
('A`)「つうか規則では園長の引継ぎには、キャストのサインが必要なはずだ。
なのに、俺が聞いた限りじゃ誰も園長の誕生をしらねえ……」
ドア付近に立っているのは機関車の担当であるドクオ。ひどく困惑した様子で
それでもこの異常を説明してみせる。
(´<_` )「あぁ、それに申請書は園長の家にあるはず。
園長の家のカギを持っているのは……」
そのすぐ傍、ボロボロのいすに座り、眉間にしわを寄せているのが
ミラーハウスの弟者。
本当は別の様があってここに着たのだが、すっかり忘れている様子。
( ,,゚Д゚)「園長と、モララーだけだ」
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:34:15.55 ID:qKlUFSkq0
-
床にぺたんと座っている観覧車の妹者のひざで、その姿に似合わず饒舌に語っているのが
化け猫であるギコ。
みんながこの園に起きた異常に困惑し、ここに集まってきたのだ。
川д川 「……じゃあ……案内係が? 」
( ,,゚Д゚)「関わってると見てまず間違いないっす。
だがアイツは案内係。園長にはなれないはず」
(´<_` )「すると、案内係が連れまわしていたあの子供か」
弟者の一言に、そこにいた全員が目を合わせる。
('A`)「……マジかよ、でもあいつはただのゲストだろ!? 」
( ,,゚Д゚)「ゲストが園長になっちゃいけねー決まりはないからな」
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:35:06.96 ID:qKlUFSkq0
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(´<_`; )「なるほど、そういうわけか」
('A`)「……どういうわけだ? 」
(´<_` )「あのゲスト、本人は認めていないがモララーが連れてきたと見て間違いない。
ずっと気になっていたんだ、その目的が 」
('A`)「……あの子供を、園長にするためって事か? 」
(´<_` )「こうなった今、そうとしか考えられん」
( ,,゚Д゚)「しかし、何のためにだ?
今更園長を立てて、何がしたいっていうんだ、あいつは」
(´<_` )「……それはわからん」
- 126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:36:08.22 ID:qKlUFSkq0
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('A`)「……くそ、あいつ……ブーンのことを何だと思ってやがる……
何の目的があるのかはしらねぇが……」
ドクオはぐっとこぶしを握り、壁に打ち付けると部屋を出て行った。
('A`)「……ちくしょう……ちくしょう」
照明が照らし、ぼんやりと明るくなった道を、どこというわけでもなく歩く。
ブーンがいなくなって、それ以来色を失っていた道が、はっきりと見える。
おちている砂のひとつも、建物の華やかな色も、植えられた花たちも
どれもブーンがいたときのそれと変わっていなくて、それが許せない。
ブーンの変わりなんてありえないんだ。俺は絶対に認めない。
ブーンは必ず、ここに帰ってくるんだ。
- 129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:38:06.57 ID:qKlUFSkq0
-
( ・∀・)「さて、手続きは済んだ。園にも徐々に明かりが戻ってきている。
やはり、僕の考えてる通りだった」
( ∵)「あ、あの……」
( ・∀・)「ごめんね、今はおしゃべりをしてる暇も、祝っている暇も無いんだ。
みんなの前で挨拶をしなくてはいけない」
( ∵)「あ、あいさつ? 」
( ・∀・)「これを」
案内係さんが、すっと何かを差し出す。
( ∵)「……これは? 」
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:40:06.70 ID:qKlUFSkq0
-
手渡されたのは、白いシルクハットと真っ赤な蝶ネクタイ。
白いワイシャツに、黒いズボン、黒いジャケット。
( ・∀・)「園長はこれと決まってるんだ。さぁ、付けて」
僕は言われるがまま着替えて、ネクタイを付けた。
不思議とぴったりと馴染んで、まるで特注したようだった。
園長さん用なのに、子供用も用意してあるんだな。
最後に、シルクハットを手に取る。これもまた小さくて、僕にちょうど合うサイズ。
僕はいったん頭をかがめて、すっぽりと頭にかぶせて、また頭を……
「……ん? 」
頭を上げると、さっきまで目の前にいたはずの案内係さんがいなくなっていた。
- 133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:45:04.70 ID:qKlUFSkq0
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どこに行っちゃったんだろ……
心なしか、部屋の雰囲気もどことなく違うような……それに、なんだか外が騒がしい。
部屋も妙に明るい。カーテンを閉めきった窓から、光が漏れている。
僕が恐らく似合っていないだろう、着慣れない園長の衣装のままうろちょろとしていると
不意に、ガチャリと部屋の扉が開いた。
ξ゚听)ξ「あら、届いていたのね。」
ツ、ツンさん!!?? な、なんでここに!?……ん、なんか雰囲気が違うような。
ξ゚听)ξ「特注だからべらんめえに高かったんだからね
もう壊さないでよ、シルクハット」
ツンさんはふふっと笑って、持ってきた書類のようなものを机に置いた。
「ツ、ツンさん、なんなんですかお? 案内係さんは? 」
……なんなんですか お ?
- 144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:52:42.97 ID:qKlUFSkq0
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ξ゚听)ξ「な、何よその呼び方。ツンさん、案内係さんって。
ブーンったら、どうかしちゃったんじゃないの?」
ブーンって……
え?
ξ゚听)ξ「例の改装工事の書類、置いておくから目を通しておいてね」
僕はわけのわからないまま書類を受け取ると、ツンさんは部屋から出て行った。
書類の内容はもちろんわけがわからない。
工事の書類とか言ってたけど、難しい漢字や専門用語が並んでいて……
しかし、最後の行、日付だけは読めた。
19○○年○月○日。
- 147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/08(金) 01:55:30.68 ID:qKlUFSkq0
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難しい書類に書かれた、数十年も前の日付。
普段僕に接する態度とは違う、親しげなツンさん。
明るくてにぎやかな園。
つまりこれは……
(;^ω^)「ブ、ブーンさんの記憶……ってこと かお !? 」