( ∵)は( ^ω^)の遊園地にやってきてしまったようです その10
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 01:42:39.46 ID:suP0vWEc0
-
歩くたび軋む古びた床板に、素足でぺったり座り込む少女。
真っ暗な園内でもひときわ真っ暗な室内で、その闇にさえすっぽりとけ込んでいる。
彼女の目線の先に有るのは、無数のうごめく腕達。
彼女はそれを、愛おしげに
そして心配そうにじっと見つめ、たまにぽつりと何か呼びかけていた。
恐らく一般人には、気味の悪い光景にしか見えないだろう。だが俺は違う。
例えるなら、ベッドの上で弱っている子猫をなでる飼い主の少女の様な。
その細くて白い指の一本一本が動く度にあらぬ妄想を掻き立てられる。
――いかんいかん。少々興奮しすぎて表現が臭くなってしまっている。
おまけに口から自重しよう。
(*´_ゝ`)「ふぅ……」
とりあえず目を閉じて、心を落ち着かせると
部屋の片隅に立てかけられた、錆び付いて割れた鏡の中から、再び部屋を覗き込んだ。
( ´_ゝ`)「ん?」
暗闇の中に、さっきまでいた彼女がいない。
俺は鏡からひょっこりと頭だけを出して部屋を見渡して彼女を捜す。
が、やっぱりいn……
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 01:43:37.49 ID:suP0vWEc0
-
部屋の左右を見渡して、視線を元の位置に戻した時。
( ´_ゝ`) 川д川
屋敷中に、悲鳴が響いた。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 01:46:41.06 ID:suP0vWEc0
-
( ´_ゝ`)「そんなに大声を上げなくても良いだろ……JK」
呆然としている彼女に鏡の中から声をかける。と、ハッとしてこちらをを睨みつけた。
いや、目はほとんど髪に隠れているから、正確に睨んでいるかは分からないけど。
( ´_ゝ`)「まぁそう怒るなよ。そもそもそっちが急に目の前に現れるかじゃないか」
川д川「……また……ふともも触った…… 」
ほんのり頬を赤くした涙目(ここまで推測)の彼女が、恨めしげにこちらを見て言う。
(*´_ゝ`)「びっくりして思わず手が伸びてしまったのだ。俺自身驚いている」
川д川「……へ、変態め……」
貞子が、腕達をちらっとみる。アイコンタクトしたのか、瞬間、腕達が動き出す。
( ´_ゝ`)(いやまてよ、腕に目は無いのに、アイコンタクトが通じるのは変な話……)
ううむ、でももしかしたら目はある、のかもしれない。
なぜなら腕達は、何の迷いもなく一斉に鏡に向かって来ているからだ。
(;´_ゝ`)(って、えええええ!? )
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 01:47:32.06 ID:suP0vWEc0
-
迫ってくる無数の腕。とっさに、安全な位置にある鏡への移動を試みる。
( ´_ゝ`)(あれ?)
体中を走る違和感。
……ま、まさか。
(;´_ゝ`)「い、……移動できない……だと!? 」
そういえば、入ってくるときも違和感は感じていた。
こいつは錆び付いているわ割れているわで、ふつうの鏡の機能を半分も満たしてない。
だから、移動をするのに不都合が現れてもまったくおかしくないのだ。
(;´_ゝ`)「……」
川д川「逃げないのね……ふふふ、いい根性してるじゃない
……くたばれ変態……」
(;´_ゝ`)(……これは非常にまずいかもわからんね)
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 01:49:08.23 ID:suP0vWEc0
-
(´<_` )「……む?」
風が吹いたわけでもないのに
足の先から背中を伝って全身にぞわりと、何か嫌なものが走りぬけていく。
ただの悪寒か、虫の知らせという奴か。
いいや、考えるまでもない。どうせまた、兄者が何かしでかしたんだろう。
大方、女のケツでも触って殴られたか、壁に落書きして案内係に仕置きでもされているか。
どちらにしろ、碌でもない理由に違いはない。
(´<_` )(だからといって、放っておくわけにはいくまい)
俺は重い腰を上げると、ミラーハウスを出た。
(´<_` )「……ううむ」
しかし、よくよく考えれば、兄者がどこにいるのかが解らない。
いや、例え今兄者がいる場所が解ったとしても、一秒後には全く違う場所にいる可能性もある
から見つけようがない。
さて、どうしようか……。
「あの……」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 01:50:05.99 ID:suP0vWEc0
-
( ∵)「……あれ?」
ふわっと、鼻先を懐かしいにおいが通って、後ろを振り返る。
( ・∀・)「? 」
( ∵)「……においが」
( ・∀・)「におい? 」
案内係さんが、くんくんと鼻を鳴らして、僕の方を見直す。
( ・∀・)「しないけど? 」
( ∵)「そうですか? ……」
確かにしたのは一瞬だったし、どんな匂いだったかと聞かれても答える事はできないけど
でも、確かに覚えのある匂いだった。だから、妙に頭に残るのだと思う。
でも、あの鼻の良い案内係さんが【しない】と言うのだから、思い違いなんだろうな。
( ・∀・)「それよりさ、お願いは決まった? 」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 01:50:26.31 ID:suP0vWEc0
-
(;∵)「う……」
( ・∀・)「どうかしたかい? 」
言葉に詰まっている僕を、(たぶん無意識に)急かす案内係さん。
( ・∀・)「焦らず好きなだけ考えて、好きな答えを出せば良いんだよ。あ、でも……」
人差し指をぷらぷらと宙に浮かせて、僕の前で止める。
( ・∀・)「一応、閉園までっていう決まりだから。それは気をつけてね」
( ∵)「へ、閉園ですか?」
( ・∀・)「うん。閉園まで」
驚いた。この園にそんなもんがあったんだ。
( ∵)「その、閉園っていつまでなんですか?」
( ・∀・)「鐘がなるまでだよ」
( ∵)「鐘?」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 01:53:24.04 ID:suP0vWEc0
-
( ・∀・)「鐘。そういえばゲストは見たことがなかったっけ」
( ∵)「ええ」
( ・∀・)「園のちょうど真ん中に時計台があるよ。見たい?」
時計台があるんだ、知らなかった。
っていうか時計なんて必要なのかな?動いてるのかな。12時まであるのかな?ううん、想像が止まらない。
( ・∀・)「よし、じゃあ見に行こう」
( ∵)「はい、行きm」
( ∵)……
(;∵)「あ!!!!! 忘れてt ああああああああああ!!!」
( ・∀・)♪
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 01:55:47.28 ID:suP0vWEc0
-
(´<_` )「……えっと」
「……」
(´<_` )「……どちらさんでしたっけ」
「……」
(´<_` )「ここのスタッフじゃないですよね?」
「……スタッフ? え、あの、違います。
あ、あの……それより……」
(´<_` )「? 」
「……ここは、一体何なんですか?……」
(´<_`;)「はい? 」
「……わ、私、あの……」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 01:59:09.25 ID:suP0vWEc0
-
( ・∀・)「はいとおちゃーく、ここが時計台だよ」
( ∵)「へぇ、やたら高い以外は意外と普通ですねぇ」
( ・∀・)「……
あれ? 大丈夫みたいだね? 」
( ∵)「あ、はい。慣れって怖いですね。なんか平気です」
案内係さんは一瞬不服そうな、残念そうな顔をすると、時計台の説明を始めた。
( ・∀・)「ここはね
朝の開園時、昼の12時、夜の閉演時に鐘が鳴るんだよ
ほら、上を見てごらん」
すっと指を指す。
その指の先を見上げると、確かに塔のてっぺんに鐘らしきものがあるのがわかった。
へぇ、ここにも朝とか昼とかあるんだ。
……今のところ、そのどちらにもなる気配はないけど。
( ・∀・)「ここだけの話。ここの担当が一番大変だよ」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 02:00:59.94 ID:suP0vWEc0
-
( ∵)「へぇ、なんでですか? 」
( ・∀・)「だって
この階段を朝昼夜ずっと上り下りして鐘を鳴らさなきゃいけないんだから」
(;∵)「……えぇ
ってことは一日の殆どを移動に費やしてなきゃいけないんですね……」
じゃあ、この担当者さんは今も移動していたりするのかもしれない……。なんてね。
( ・∀・)「いや、今は好き勝手やってるよ。
何故か最近じゃあ閉演も閉演も昼も来ないからね」
(;∵)「……それはよかった」
最近じゃあ……か。
じゃあやっぱり、昔ここにはちゃんと朝昼夜が来ていたんだな。
そして、この夜の状態は僕が来るずっと前から続いてるって事だ。
……やんなったりしないのかな、ここの人たちは。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 02:02:10.15 ID:suP0vWEc0
-
ビコーズがそんな事を考えて、塔をぼんやり見ていた時だった。
「……な、なぜだ……」
そのすぐ後ろで、2人の様子を伺う一人の少女。
心臓が今にも破裂しそうなほど脈打っているのがわかる。
ノハ;゚听)「……な、なぜ私の塔に案内係達がいるのだ!!」
まさか、私があの話を聞いていた事がバレてしまったのか。
いやしかし、私が聞いてしまったことは兄者しかしらないはず。
うぬぬぬぬぬ……
ノハ;゚听)(……とりあえず)
に、逃げよう。一刻も早くこの場から離れなければ。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 02:02:48.80 ID:suP0vWEc0
-
少しの物音も立ててはいけない。そして、できるだけ遠くに。
大丈夫。私はバカだけど、かけっこだけは得意だから。
ゆっくりと向きを変えて、すぐに走り出せるフォームを作る。
ノハ;゚听)(……よ、よし。よーいどんで出発するぞ)
よーい……
( ・∀・)「丁度いいところに。彼女がヒートだよ」
ノハ;゚听)「……どわああああああああああああっ」
(;∵)「ど、どわあ!? 」
( ・∀・)「? 何をそんなに驚いているのかな、ヒート」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/06(火) 02:04:32.28 ID:suP0vWEc0
-
(´<_`;)「時に落ち着け、そしてもう一度状況を説明してください」
「……は、はい。あの、私気づいたらここにいて」
(´<_` )「それで? 」
「……それだけです」
(´<_`;)「そ、それだけって……。参りましたね」
「参りました」
(´<_`;)「とりあえず、俺には何がなんだかわからない。
案内係を呼んでくるからちょっと待っていてください」
「は……はぁ」
(´<_`;)「くれぐれも、ここから動かないでくださいね! いろいろと危険ですから、ここは」
J(;'ー`)し 「……はい」
前へ 次へ 目次