( ∵)は( ^ω^)の遊園地にやってきてしまったようです その11

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:12:25.75 ID:MS+fQ/OK0

案内係さんが紹介してくれた、ヒートという女の子。
小さい背丈に、くりっとした大きい目。ここまでは普通。

ノハ;゚听)「……ああああ、案内係じゃないかああ!
     いやあああ、奇遇だなあああ! 」

おかしい点といえば、そのテンションくらいか。
何をするにも全力! っていうのがひしひしと伝わってくる。
だから今、全力で焦っているのが手に取るように解る。


ノハ;゚听)「今日はまた、どどどうしたんだ? 」

( ・∀・)「ゲストが時計台を見たいっていうからね」

ノハ;゚听)「そ、そそそうっすか! 好きなだけ見ていってくださいな!
     今なら質問とか、なんでもどんとこいだ!! 」

( ・∀・)「だってさ。ゲスト、何かある? 」


大きな目をくわっと開けたヒートさんと、いつもの通りの案内係さんが
僕の方を、何か期待に満ちた瞳で見つめた。



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:14:56.00 ID:MS+fQ/OK0

(;∵)「し、質問ですか? ええっと……」

質問って……どうしよう。いきなり言われても困るよ。
とりあえず、僕を圧倒的な高さと重厚間で見下ろしている塔を、改めて見てみる。

やっぱり目に付くのは、三角の屋根にぶらさがっている大きな鐘。
近所にあった、協会のそれによく似ている。

( ∵)「ん? 」

そういえば、ここは時計台(塔? )なんだよね。なら、時計はどこにあるんだろう。

( ∵)「……あ」

塔をぐるりと一回りすると、あった。
三角の屋根の側面に設置されいる、大きな時計が。

黒縁の、黒い針に、黒い文字盤。そのどれもがとても大きい。
大きすぎて、今にも屋根から落ちてきそう。そういう意味では少し怖いかも……。

それに加えて、照明がぼんやり照らしてくれている。
おかげで、ここからでもよく見える。よく見えるけど……



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:18:43.83 ID:MS+fQ/OK0

これ、見えても意味ないんじゃないか。


その時計は、いつまでたっても動く気配を見せない。
短針と長針共に、12の位置にぴったりと重なり留まっている。


( ・∀・)「どうかした? 」

(;∵)「! 」

いつのまにか真横にいた案内係さんが、僕の顔を覗き込む。
飛び跳ねそうになった心臓を落ち着かせて、もう一度時計の方を見直した。

( ∵)「あの時計って、ずっとあぁなんですか? 」

( ・∀・)「あぁって?」

( ∵)「……いや、なんでもないです……」


普通、時計ってのは一秒に一回うごくもので……
……ううん、やっぱりここで普通って言葉は不毛すぎる……
案内係さんも、少しも止まっていることに疑問を感じていないみたいだし。

ここじゃあこれが普通なんだきっと。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:21:11.74 ID:MS+fQ/OK0

……っていうことは。本当にここは時間が動いていない、進んでいないんだ。
鐘がなることも、閉演も開園も、朝も昼もこない。この時間にとどまり続けている。


それって、すこし……いやすごく、こわい。


( ・∀・)「この園の事を知りたいのかい? 」

( ∵)「え? 」

( ・∀・)「なら、見てみるかい? そこから」

指をまっすぐ上につきたてる。その指の先は、塔のてっぺんを指している。

( ・∀・)「本来ゲストには通しちゃいけないけど、特別だよ。ヒート、いいよね? 」

ノハ ゚听)「あ、あぁ。私は構わないが」

どういうこと? 塔に登って、上から園を見るって事?
自慢じゃないけど、僕にはそんな体力ない。真ん中につくまでに倒れてしまうのがオチだ。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:23:35.19 ID:MS+fQ/OK0


けど、園をあの高さから見れば、この位置から見ては知ることが出来なかった
園の外がどうなってるかを見ることが出来るだろう。

……

( ・∀・)「あ、でも僕は高いところが苦手だから。
      ヒート、連れて行ってあげてくれるかな」

ノハ ゚听)「了解した! 」


そう言うと、ヒートさんはポケットから古びたカギを取り出して、塔の扉を開けた。

塔の中は意外と広くて、幅の広い螺旋階段がてっぺんまで延びている。
壁にはぽつぽつと光が灯っていて、歩くのに不自由しない程度の明るさは保っている。

……これからこの長い長い階段を登らなきゃいけないのか、と思うと
くらくらしてその場で倒れそうになる。

ノハ ゚听)「大丈夫! 私が責任を持って運んでやりますよ! 」

ん?運ぶ?


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:24:32.85 ID:MS+fQ/OK0


気づけば僕は、自分より背の小さい女の子におんぶされていた。


( ∵)「あ……あの、これは一体……」

ノハ ゚听)「よぉぉぉっし! しっかり捕まっててくださいね!! 」

聞いてない。
ヒートさんは僕を背負ったまま、階段の一段目に足をかける。

まさか、こうやって登っていくって?
冗談。こんな小さな肩で僕を背負った状態で、その細い足でこれを登るなんて。


まさか……まs


ノハ ゚听)「うぉぉぉぉぉ!! 」( ∵)「ぎゃぁぁぁぁ!! 」



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:27:18.36 ID:MS+fQ/OK0


( ・∀・)「……」

ヒートが塔を駆け上がる音と、ゲストの叫び声がここまで響いている。
それを背に聞きながら、目を閉じて耳をすませる。


足音だ。こちらに向かってきている…… ?
誰かまではわからない。だが、確かに聞き覚えのある歩き方だ。


まぁ……いいか。

それよりも、考えなければいけないことは山程ある。

この園に起きている事。

園を上から見たとき、ゲストは気がつくだろう。
何も悲観することはない。解決策はもう見つかっている。

あとは……

「おいってばああああ!! 」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:30:00.86 ID:MS+fQ/OK0

( ・∀・)「……ん?」

(´<_`#)「ん?じゃない! 何故さっきから無視をする! 」

( ・∀・)「ごめんね。少し考え事を」

(´<_` )「あれだけ耳元で叫んだのに……。お前、どういう耳してるんだ……」

弟者は、半分諦めた様にしてため息をついた。


(´<_` )「まぁいいや。それより変な女が……」

( ・∀・)「変な女? 」

(´<_`;)「あぁ。知らない間にここに来ていたとかなんとか……」

( ・∀・)「ふぅん」

(´<_`;)「のん気だな……。
       とりあえず来てくれ。待たせてるんだ」

( ・∀・)「えー。だって僕は」

(´<_`;)「いいから! 」



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:35:48.21 ID:MS+fQ/OK0


ノハ ゚听)「つきましたよ、ゲスト! 」

ヒートさんは、まるでジェットコースターみたいに加速して一気に塔の頂上まで登っていった。

僕は気を失っていたらしく、ヒートさんに頬を叩かれ意識を取り戻すと
頭上には、さきほどの大きな鐘。

それは、下から見て想像していたよりずっと大きい銀色の鐘は、鯨が大きく口を開けて
僕らを飲み込もうとしている

……ような迫力と威圧感を持っている。


ノハ ゚听)「閉演と開園とお昼の時間になると
     このひもをはずして、このレバーを引っ張るんです! 」

ヒートさんが、レバーを引くまねをしながら説明をしてくれる。
こんな大きな鐘がこんな耳元で鳴るなんて、耳よりまず頭がどうにかなりそうだ。

ここの担当が一番大変だって言ってたけど、納得。



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:37:41.91 ID:MS+fQ/OK0

しばらく鐘を見ていると、その後ろに広がっている景色が目に留まった。

やっぱり高いなぁ。ほとんどまっくらな中にある、あのキラキラは
多分ツンさんのメリーゴーランドだろう。

( ∵)「……! 」


あれ? 何だろ、あれ

手すりに駆け寄り、身を乗り出す。
真っ暗な園内のその異変は嫌でも目に付いて、僕は息を飲んだ。

闇だ。

絶望しそうなほどに広く吸い込まれそうな闇が、園をすっぽりと包んでいる。
その闇は園の外にとどまっておらず、ところどころに飛び散っている。

その飛び散りは、白い布にインクをたらしたときのように
滲み、じわりと広がって 少しづつ、でも確実に白を蝕んでいく。


ノハ ゚听)「どうかしましたか? 」

( ∵)「え! あ、……な、んでもないです」

ノハ ゚听)「? 」



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 01:42:51.71 ID:MS+fQ/OK0

闇だ。

寒い。ほこり臭い。まぶたが重くて、ちゃんと開かない。足が痛い。

眠たい。でも寒いから眠れそうもない。


《ごめんだお……》


園長さんの声だ。

園長さん? そこにいるの?


《……僕のせいで……こんなところに入れられて……》


ようやく迎えに来てくれたんだよね。

ここは寒いし暗いし、最悪なんだ。早く外に出してよ。


《……》


園長さん?




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