( ∵)は( ^ω^)の遊園地にやってきてしまったようです その8

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:03:42.98 ID:fdaW2oCl0


そうだ。

僕は、アイツを心底憎んでいた。
殺したいと思ったことも、正直一度や二度じゃない。

でも結局、カーチャンが殴られ、怒鳴られるのを見て
ただただ怯えている事しかできなかった。
自分に、あの鋭く大きな拳が向けられるのが恐ろしかったからだ。

カーチャンが殴られている間、頭の中で「消えろ」と何度も唱えた。
当然、視界は目を塞げば消えるけれど
目を開けば、新しく出来たカーチャンの傷が痛々しく現れた。


J( 'ー`メ)し「ごめんね、怖かったよね」

カーチャンは殴られた後いつも謝った。そして、僕の頭を撫でた。
謝られるたびに、傷を見るたびに、心臓がぎゅう、と痛んだ。

同時に、なんで謝るんだろう。と思った。



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:04:12.93 ID:fdaW2oCl0


それは、雨の日だった。

たたきつける雨音と、付けっぱなしのテレビから流れるニュースの映像。
雨が降っている所為もあってか、肌寒く、電気をつけているのに部屋も薄暗い。

どうして雨音っていうのはこうも、眠りを誘うんだろう。

……ふぁぁ……ちょっとだけ、横になろう……


……


……





10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:07:29.99 ID:fdaW2oCl0

( ゚∀゚)「お前はここで眠ってしまった。
     その後、すぐその家に来訪者が現れていたんだが……」


確かに僕は眠りに落ちていた。でも、ぼんやりとは覚えている。

J( 'ー`メ)し「……」

大きな旅行かばんを持った、カーチャンの姿。
無言で僕を見下ろしている。

J( 'ー`メ)し「……ごめんね」


なんで謝るの?といいたいけど、口が開かない。


J( 'ー`メ)し「ビコーズは一人でも平気よね」

?どういう事?

J( 'ー`メ)し「出来れば、お父さんの事、許してあげてね。
      これからは2人で仲良く暮らしていくんだよ」

ち ょっと 待って


J( 'ー`メ)し「……さようなら」


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:09:23.34 ID:fdaW2oCl0



( ∵)「…… 」

目が覚めると雨は止んでいて、いつのまにかテレビも消えていた。
静かで真っ暗な部屋で、はなちゃんが僕に寄り添って眠っている。

今、カーチャンが帰ってきたような……

……夢か。

ん? 夢? どんな夢だったっけ? ……ま、いいや。

眠気眼で、玄関の方を見つめる。と、タイミング良くドアが開いた。

( ^Д^)「……」

( ∵)「!! 」

アイツだ。なんで急に……
慌てて隣の部屋に逃げ込もうとした僕を「おい」と呼び止める父さん。

( ^Д^)「……ビコーズ。お母さんは……」

いつもと違う、ぼんやりとした顔と口調。

( ∵)「えっ、ま、まだ帰ってきていないけど……」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:10:07.39 ID:fdaW2oCl0

( ^Д^)「……そうか……はは……」

そのまま崩れるように、玄関に座り込んだ。両手で顔を覆って、うなだれている。

( ∵)「どうしたのお父さん。お母さんに何かあったの? 」

(  Д )「……あいつはもう帰ってこないぜ」

いつもの剣幕はどこへ行ったのか、虫の鳴くような声だ。

( ∵)「え? 」


(  Д )「……出て行ったんだよ。男と一緒にな」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:12:48.89 ID:fdaW2oCl0

( ∵)「ど、どういうこと……」

(  Д )「あぁ……そうか。お前は知らないんだったな。

     ふ、今更隠すこともねぇか……」

ふふ、と不気味に笑って、顔を上げる。

( ^Д^)「あいつには俺の他に男がいたんだよ。ずっと前からな」

( ∵)「……」

( ^Д^)「ほれ、これ見ろよ」

ぽい、と投げられた携帯電話が、フローリングを滑って
僕の足元でぴたりととまる。父さんの黒い携帯電話だ。
恐る恐る手に取って、画面を見る。

そこに映っていたのは、メール画面。
送信者にはお母さんの名前。時間は今から2時間程前。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:14:32.10 ID:fdaW2oCl0

本文を見て、僕は数秒動けなくなった。

( ^Д^)「“あの人と行きます。ビコーズをよろしくお願いします”」

( ∵)「……な、……どういう意味……」

( ^Д^)「どういう意味かって?
      簡単だろ。俺とお前を捨てて男を取ったって事だよ」

( ∵)「……」

( ^Д^)「……なんとか言えよ……」

( ∵)「……」

(  Д )「……」


その日、僕は捨てられた。
一番大好きで、一番信頼していたカーチャンに。


「にゃあん」


はなちゃんが一度鳴くと、また、ぽつりぽつりと雨が降り始めた。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:17:23.10 ID:fdaW2oCl0


次の日の朝、僕と父さんは久しぶりに2人で同じ家で寝て、ご飯を食べた。
そして、一緒に家を出た。

( ^Д^)「……学校、今日くらいは休んでいいぞ」


僕は何も答えなかった。

何でアイツは平然と僕に話しかけてくるんだ。
カーチャンが出て行ったのはお前の所為じゃないか。

カーチャンに男がいたなんていうのも、アイツの作り話にきまってる。
自分のしてきたことを正当化しようとしてるだけだ。
絶対に、許さない。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:19:19.06 ID:fdaW2oCl0



学校から帰るとアイツが先に家に帰ってきていた。
これからの事を話し合う、とか行ってきたけどずっと無視してた。

それから僕と父さんはしばらく一緒に暮らしはじめた。

最初こそ父親面して馴れ馴れしくしてきていた。

でもずっと無視していた。しばらくして、話をするどころかお互いの顔すら見なくなった。
そのうち、父さんはまた家に帰ってこなくなった。

風の噂を聞いた。

父さんは会社を辞めて、毎日パチンコに明け暮れているらしい。
あとは知らない。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:21:30.38 ID:fdaW2oCl0


从 ゚∀从「おい、来たぞ」

「クスクス……クスクス」

( ∵)「……」

それでも、学校での僕へのイジメは続く。
イス、机、ノート、教科書、ジャージ、いろんな物が無くなった。
暴力も受けた。トイレの水飲まされた事もあった。

僕は特に何の反応もしないっていうのに、何が面白いんだか。


从 ゚∀从「おい
     お前の父さん、昼間からパチンコ屋に入り浸ってるってマジかよぉ〜」

( ∵)「……」

从 ゚∀从「人間のクズだな! さっすがお前の父親wwwwwww」

クラス中の、僕を哀れむような、蔑むような目。

でも慣れてるし、クズだって事は僕が一番知ってるから
別にどうとも思わない。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:23:59.18 ID:fdaW2oCl0

从 ゚∀从「確か、お母さんも家族捨てて男と逃げたんだってなァ」

( ∵)「……」

そこまで知ってるのか。誰から聞いたんだか。

从 ゚∀从「クズとクズから生まれたからお前はクズなんだなぁ。
    かわいそーにwwwwwwww」

クラス中を、爆笑の渦が包む。

クズ、と、クズ。

確かに父さんはクズだ。

でも

カーチャンはクズなんかじゃなかった。

  J( 'ー`)し 

少なくとも、僕の前では。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:27:32.62 ID:fdaW2oCl0

从 ゚∀从「何とか言えよおいwwwwwwww」

ハインがイスごと僕を蹴飛ばす。
クラス中爆笑。みんな僕を見て狂ったように笑っている。

倒れた僕を、ハインがもう一度蹴って狂った様に笑う。

从 ゚∀从「おらっwww死ねwwwwマジでうぜぇww
     今から自殺しろよwwww生きてる価値ねぇんだからよwwww」



( ゚∀゚)「傍から見れば、お前は絶望の淵にいた。
     家族は誰もいねぇ、学校でもイジメられるわで
     何の救いも無ぇ。まさに自殺しか残されていない」

そう。勿論、お母さんがいなくなって絶望は感じていた。
でもまだ、小さな希望はあった。


( ∵)「おじいちゃん、来たよ! 」

/ ,' 3 「ビコーズ、学校はもう終わったのかい? 」

( ∵)「うん。おじいちゃんの具合はどう? 」


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:32:07.66 ID:fdaW2oCl0

僕にはおじいちゃんがいた。

おじいちゃんは、いろんな話をしてくれた。
昔勤めていた仕事の事、仲間のこと、おばあちゃんとであったときのこと。
そのどれもが楽しくて、きらきらしていて、同じ話をされても全く飽きなかった。

/ ,' 3 「快調じゃ。もう少しで退院できると
     担当のお医者さんも言っておったわい。ほっほっほ」

( ∵)「ほんと!? やった! じゃあもうすぐ一緒に暮らせるんだね! 」

/ ,' 3 「そうじゃのう。退院したら、おじいちゃんの家で
     一緒に暮らそうのう」

おじいちゃんの家は秋田の山奥にあって、退院したら、その家で一緒に暮らす約束をしてくれた。

それが、僕の唯一の生きる希望だったのかもしれない。


( ゚∀゚)「おっと、それと もう1つあった。猫の“はなちゃん”だな。

     お前はその2つだけを生きがいに毎日を暮らしていた」



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:34:18.58 ID:fdaW2oCl0

いつか、はなちゃんとおじいちゃんと三人で暮らす。
そのいつかは遠い未来じゃない。そう思ったら生きていくことが出来た。

( ゚∀゚)「だ け ど 、だ」


その希望は、ある日突然絶たれた。


(´・ω・`)「……残念です」

/ 3

(´・ω・`)「……最善は尽くしましたし、出来るだけの処置はしました。
     しかし、……いや、残念です……」

( ∵)「……」



おじいちゃんがしんだ。



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:34:53.48 ID:fdaW2oCl0


幸い、苦しまずに逝けたらしい。なんだかすごくあっけななかった。
あんまりあっけなくて、涙も出なかった。


お父さんとは連絡がつかないし、僕は未成年だから
ということで、喪主は葬儀社の人が代行してくれることになった。

僕は何もしなくても、勝手に話は進んで言った。
ぼんやりと、便利な世の中だなぁ、と思った。

真っ暗な家に帰って、コンビニで買った冷やし中華を食べた。
そろそろ、お金がなくなってきた。



お父さんとお母さんは、今頃何をしてるんだろう。


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:37:35.08 ID:fdaW2oCl0


おじいちゃんの死をきっかけに、僕は施設に入ることになった。

僕の今の状況を知った遠い親戚の人が手配してくれた。
はなちゃんは、その親戚の人が引き取ってくれるらしい。

「にゃあ……? 」

( ∵)「……」

 さようなら。もう、これでお別れた。きっともう会えない。


はなちゃんをゲージの中に入れると、僕も自分の荷物をまとめた。

洗面用具や歯ブラシなんかは向こうで用意してくれるらしいし
教科書やなんやらは後で送ってもらえばいい。
とりあえず、入るだけの下着や洋服だけをバックにつめこんだ。

施設の人が迎えにきてくれるのは夕方の5時らしいから、まだしばらくある。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:38:12.37 ID:fdaW2oCl0

心なしか不安そうな顔で僕を見つめるはなちゃんを
ゲージから出してやると、「ふにゃあ」と弱弱しく鳴いた。

親戚の人の家には、10歳になる女の子がいるらしい。
きっと、うちにいるよりよっぽど幸せに暮らせる。
少し、いや、すごくさびしいけど。かわいがってもらうんだよ。


と、玄関のチャイムが鳴る。
施設の人かな、それとも、親戚の人が猫を取りに着たんだろうか。

( ∵)「はい」

スコープを覗く。


ミ,,゚Д゚彡


誰だ? 親戚の人……じゃないな。じゃあ、施設の人?

ミ,,゚Д゚彡「ビコーズ、父さんだ」



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:40:34.48 ID:fdaW2oCl0

(;∵)「と、父さん? 」

明らかに別人だと思った。顔がぜんぜん違う。
確かに声はよく似ている。服も、父さんの着ていたもの。

でも髪はボサボサ、汚らしい無精ひげ、頬はげっそりとこけている。
あんなに世間からの目を気にしていた父さんとは信じられない。

ミ,,゚Д゚彡「あけてくれ」

(;∵)「……」

チェーンをはずして、カギを開ける。と、ドアがゆっくりと開いた。

ミ,,゚Д゚彡「……久しぶりだな」

( ∵)「父さん……」

ミ,,゚Д゚彡「……」



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:42:41.86 ID:fdaW2oCl0

( ∵)「……今までどこに行ってたの」

ミ,,゚Д゚彡「……」

返事は無い。

( ∵)「……僕施設に行くから……
   お父さんは自分の好きなように暮らしていいから」

ミ,,゚Д゚彡「……」

リビングのソファーに座って
何も言わずに、あさっての方向を見つめている父さん。

静かだ。なんだか気味が悪い。
時計を見る。もうすぐ5時。施設の人が迎えに来る。

( ∵)「……じゃあ、僕そろそろ行くから」

沈黙に耐えかねた僕はカバンを抱えて
はなちゃんをゲージに入れた。

とりあえず部屋を出て、迎えはマンションの前で待ってよう。
父さんとはもう一緒にいたくない。


ミ,,゚Д゚彡「おい、ビコーズ」


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:49:10.56 ID:fdaW2oCl0

唐突に呼ばれて、僕はおどおどと振り返った。

ミ,,゚Д゚彡「今まですまなかった。母さんにも、悪い事した」

と、深々と、頭を下げて謝罪する父さん。ありえない光景に、僕は呆然とするしかない。

( ∵)「……な、なに」

ミ,,゚Д゚彡「お前には、最後に謝っておきたかったんだ。父さん決めたんだ。

      もう、死のうって」

( ∵)「! 」

ミ,,゚Д゚彡「どうせ俺はゴミみたいなもんだ。生きてても仕方ない
      だから俺はお前を殺して死ぬ」

( ∵)「な、なに……言って……」

ミ,,゚Д゚彡「こっちに来いビコーズ。一緒に死ぬぞ」

アザができるほどの力で、腕を掴まれ引っ張られる。

(;∵)「……は、はなし……」

そのまま、僕の首に父親の大きな手がかかった。
そして、ぐいと持ち上げるようにして締められる。

(;∵)「……っ、う……ぐ! 」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:52:23.39 ID:fdaW2oCl0

 ……

 僕は父さんに殺されるのか。

苦しい。意識がぼんやりとしてくる。

でも特に抵抗はしなかった。
死ぬのは怖いし苦しいが、そこまでして生きている理由も無い。

 もういいや、死んでも……。っていうか苦しいし、早くしにt

「にゃあ」

意識が薄れていく中で、ゲージの中の猫が一度鳴いた。


ミ,,゚Д゚彡「……そうだ、お前のせいだ」

猫の声を聞いた父さんは一言つぶやくと、首にかかっていた手を離した。

(;∵)「げほっ、げほ、げほっ」

僕はその場に倒れ、むせこむ。

ミ,,゚Д゚彡「おかしくなったのはお前が来てからだ!」


ゲージの中の猫に向かって、狂ったように怒鳴る父親。


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/10(水) 00:52:48.86 ID:fdaW2oCl0

狂ったように、じゃない。実際に狂ってる。

鳥肌が立った。これは、母親に当り散らしていた頃とは違う恐怖。

この男の殺意の対象は、僕からはなちゃんに変わっている。

(;∵)「は、はな、」

ふとしたはずみで、ゲージからはなちゃんが飛び出した。
それを捕まえて、罵声を浴びせながら蹴る父さん。


(;∵)「や、や、やめ、」


止めなくちゃ、守らなくちゃ思うのに、恐怖で体が動かない。





やがて、僕の目の前ではなちゃんは動かなくなった。
足先に、小さくて白いふわふわの毛の塊が転がった。



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