( ∵)は( ^ω^)の遊園地にやってきてしまったようです その7
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:10:35.47 ID:dxenof3m0
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しばらく黙ってぼうっとしている僕の顔を
案内係さんがおおげさに腰を屈めて、覗き込む。
( ゚∀゚)「おっと、何を暗い顔をしてるんだゲスト。
ここは遊園地だぞ」
( ∵)「? 」
( ゚∀゚)「遊園地でそんな暗い顔してるなって言ってるんだよ。
ほれ」
(;∵)「ひゃ、いひゃいいひゃいでひゅ」
ニコニコといい笑顔で、人差し指で僕の右口角を強引に引き上げる。
細い指一本なのにやっぱりすごい力で、その後しばらく
僕の口角は上がったまま元に戻らなかった。
( ゚∀゚)「ま、こんな事しなくてもすぐ忘れるんだけどな」
( ∵)「え? 」
( ゚∀゚)「遊園地の空気ってのはあっちの世界と比べて少し特殊で
吸ってるうちに普通より早く嫌な事を忘れる様にできてんだ」
( ∵)「……じゃ、じゃあ、僕がここに来た時にすべてを忘れていたのは
この遊園地の空気のせいだったってことですか? 」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:13:37.13 ID:dxenof3m0
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( ゚∀゚)「そうだな。空気の効き目は時間と共に薄れていく。
逆を言えば、空気の効き目は入園時が一番効くってことさ」
( ∵)「へぇ……」
普通じゃ信じられない話もすんなりと納得できてしまうのは
僕がここの空気に常識まで吸い取られてしまったからかもしれない。
( ゚∀゚)「うし、世間話はこのへんにして、そろそろスタンプ集めに戻るか」
( ∵)「え? でもジェットコースターは……」
( ゚∀゚)「もう1個ある。
あれに比べたらちと規模は小さいが、まぁ良いだろ」
なんだ、もう一個あるなら(しかも小さいなら)
最初からそっちに行けばよかったじゃないか。
と言いかけた僕の口を、案内係さんの言葉が塞いだ。
( ゚∀゚)「ただ、ちっと……」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:15:50.06 ID:dxenof3m0
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間。
眉間にしわをよせ、何かを考え込んでいる。
( ∵)「あの、案内係さん? 」
( ゚∀゚)「いや、お前ってさ、蛇……」
( ∵)「え? 」
( ゚∀゚)「蛇って平気か? 」
( ∵)「へ、蛇ですか? えっと、別に嫌いでは……」
( ゚∀゚)「ならよし、行くぞ」
( ∵)「え? あ、ああああああああああああああ!! 」
やっぱり訳のわからない内に、猫みたいに襟首を捕まえられ、
そのままいつもの様にスピードの中へ放り投げられた。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:17:56.89 ID:dxenof3m0
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( ゚∀゚)「到着。ふー、さすがに少し疲れt」
( )「……」
( ゚∀゚)「……おーい」
( )
( ゚∀゚)
ペシペシ
( ∵)「っ、げほっ、げほっ、いっ……」
( ゚∀゚)「おかえり」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:19:55.96 ID:dxenof3m0
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どうやら、僕が意識を失っているうちに目的地に到着していたらしい。
目の前には、白いレールのジェットコースター。
レールは入り組んでいて、ぐねぐねと複雑な曲線が描かれている。
もっとも暗闇だから、その程度の事しか分からないわけだけど。
「あれれ? 案内係さんじゃないですかぁ〜」
( ∵)「? 」
( ゚∀゚)「お? 」
どこからか声がする。子猫の鳴き声のような、多分女の子の声。
「あ、ちょっと待っててください〜。っしょ、っと
今ちょっと、よっこらせっ、手が離せなくて〜」
( ゚∀゚)「おい、何でもいいから早く出て来いよグズ女」
「ひゃぁ〜い、もうちょっと待っててくださいな〜」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:23:00.53 ID:dxenof3m0
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声はするが姿は見えない。
このコースターの担当の子か?
時折カチャカチャと音がするが、何か作業でもしているんだろうか?
僕はプラットホームの階段を上ると、これから自分が乗らなければいけないのであろう
レーンを見上げて、ため息をついた。
……って、このコースター、よくみるとかなり古いものじゃないか?
このプラットホームだって、木製だし、歩くたびに軋むし……
从'ー'从「すみません〜。少しメンテに手間取っちゃって〜」
レールからひょっこり顔を出したのは、小さい女の子だった。
どう見ても僕と同い年か、2つくらい上にしか見えない。
こんな子供にジェットコースターのメンテナンスなんかやらせて大丈夫なのか。
いくらここが常識が通じない世界だからって、いくらなんでも……
从'ー'从「私はこの子の担当の渡辺です〜。メンテも担当してますよろしくぅ〜」
(;∵)「……」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:28:50.81 ID:dxenof3m0
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从'ー'从「あ、露骨に不安そうな顔しないでくださいよぉ。
大丈夫ですよ〜! 毎日一日に20回はメンテしてますから〜」
(;∵)「に、20回? 」
从'ー'从「なにぶんお客様がいらっしゃらないもので。えへへ〜」
そういえばさっき汽車にいた人も同じような事を言ってたっけ……。
詳しく聞きたいけど……
(∵ )チラ
( ゚∀゚)「あんだよ」
(;∵)「……い、いえ。別に」
聞いてはいけない気がして、僕は目をそらした。
从'ー'从「さて、メンテも完了したし
そろそろこの子を起こさなきゃですねぇ〜」
そう言って、渡辺さんがレールからプラットホームに降り立つ。
彼女は僕に一礼すると、座席との間をしきっていたチェーンを外した。
それをきっかけにポツン、と一つオレンジの光がプラットホームに灯る。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:34:07.98 ID:dxenof3m0
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座席、レール、柵と、その照明が飛び火していく。
( ∵)「! 」
僕は圧倒され、息をのんだ。
照明を受けて白光するそれは
まるで白くて長い巨大な蛇の様だったから。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:36:18.70 ID:dxenof3m0
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なるほど、さっきの蛇がうんぬんはこれの事だったのか……
最初に見たジェットコースターが陽だとするなら、これは陰ってかんじ。
大きさでいえば陽が勝つが、迫力は圧倒的にこちらが勝る。
从'ー'从「えとえと、改めて、うちに来てくれて、ありがとうございます。
最後に動かしてあげられるのは……ゲストのお陰です」
( ∵)「え? 最後ってどういう……」
( ゚∀゚)「こら渡辺。客の前でなんて顔してんだ」
从'ー'从「ひゃう、ひゅいまひぇん、いひゃいでひゅ」
少し涙目になった渡辺さんの口角を、案内係さんが引き上げる。
渡辺さんは一度うつむいて目をこすると、笑顔で僕らに言った。
从'ー'从「それでは出発します〜。座席にお座りくださいませ」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:37:55.89 ID:dxenof3m0
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座席に座った僕の目の前には、大蛇の背中、長くて白いレールが伸びている。
実際に近くで見てみると以外に大きくて長い……
レール、列車共に作りは古いけど、手入れは行き届いているみたいだ。
塗料の剥がれすら見当たらない。
ジリリリリリリリ
発車を知らせる警報ベルがどこからか鳴って、安全バーが降ろされる。
いまさらだけど、すごく贅沢なんじゃないか、これって。
僕一人の貸切でジェットコースターに乗れるなんて。
なんだかお金持ちになったみたいだ。いや、嬉しくないけど……。
( ゚∀゚)「どーだ、ここにいたら毎日これに乗れるんだぞ」
レーンの柵に片足立ちをしている案内係さんが、ニヤニヤと笑って言う。
なんというバランス感覚。ま、今更驚きもしないけどね、
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:38:50.35 ID:dxenof3m0
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やがて、僕一人を乗せた列車はゆるやかに走り出した。
徐々に加速して、最初の小さな山を昇っていく。
こういうのが好きな人って、この瞬間がたまらなく興奮するというが
僕にとっては、とてもじゃないが心地のいいものでは無い。
こんなもの、毎日乗りたいとは思わない、絶対に。
列車はゆるやかに坂を上がり頂点に登った後、一瞬止まって下降する。
( ∵)「ううう」
この、内臓が押し上げられる感覚も嫌いだ。
よく手を上げてウワーってやる人いるけど、理解できない。
僕は安全バーにしがみついて、目をぎゅっと閉じた。
( ゚∀゚)「おいおい、目ぇ閉じてちゃ何も見えないだろ」
( ∵)「だ、だって怖いじゃないですか……うう」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:41:33.10 ID:dxenof3m0
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( ゚∀゚)「それが楽しいんだろーヒャハハハハハ、ん? 」
从'ー'从「……」
( ゚∀゚)「おい、渡辺」
从;'ー'从「ひゃあ、案内係さん。
ゲストについてなくていいんですかぁ〜」
( ゚∀゚)「そんな顔してんなって言ったよな、さっき」
从'ー'从「ひゃい。ひぇもひぇも〜、ひょれひぇ」
( ゚∀゚)「なんていってるかわかんねぇよ」
从'ー'从「ひゃあひぇひゃにゃひてくだひゃいよ〜」
(じゃあ、手離してくださいよ〜
( ゚∀゚)「渡辺」
从'ー'从「ひぇ?」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:43:36.74 ID:dxenof3m0
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( ゚∀゚)「最後なんてことには絶対ならない」
从'ー'从「……」
( ゚∀゚)「俺に考えがあるんだ。任せとけ、な? 」
从'ー'从「ひゃんひゃえ? 」
(考え?
( ゚∀゚)「あぁ。ずっと、こいつも、お前も。なくなったりしない。
絶対にさせない。わかった? 」
从'ー'从「……うん」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:46:33.32 ID:dxenof3m0
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動きが止まった。僕はそろりと目を開ける。
( ゚∀゚)「おかえり。楽しかったろ? 」
と、僕の目の前に、ぬっと現れたシルクハット。
呑気に問いかける。
( ∵)「……た、楽しいわけない……うう、吐き気が」
( ゚∀゚)「吐いちゃえ」
( ∵)「……何いってるんですか、う、ほんと気持ち悪い……」
案内係さんは呆れような笑った顔をして、
体が動かない僕の腕を引っ張るとプラットホームに戻してくれた。
( ゚∀゚)「さ、スタンプ貰いな」
( ∵)「……あ、はい……」
降りるなり促されて、僕はポケットに入れていたカードを取り出す。
( ∵)「そうだ、これで最後、なんですね」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:47:59.09 ID:dxenof3m0
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最後。
ビンゴになれば、願いが適う。
( ∵)「……どうしよう」
僕は、ただここから出たくて、ゲートのカギがほしくて
いろんな施設を回ってきた。
ようやくこれで、ここから出られる。現実に帰れる。
……のに、何を悩んでるんだろう、僕は。
( ゚∀゚)「願い事、決まったか? 」
( ∵)「……決まってます。当たり前じゃないですか……僕は……」
現実に帰りたい。
……に、決まってるじゃないか……
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:54:31.69 ID:dxenof3m0
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なのに、さっきの案内係さんの言葉が僕を迷わす。
“誰もお前が帰ってくることを望んじゃいない”
( ゚∀゚)「迷ってるなら、教えてやろうか? 」
( ∵)「……え? 」
( ゚∀゚)「俺が見てきた、お前をだ」
僕を、見てきた?
( ゚∀゚)「猫。覚えてるか」
( ∵)「……ねこ? 」
( ゚∀゚)「“はなちゃん”だよ」
心臓が跳ねる。
( ゚∀゚)「雨の日だ。お前は母親と歩いていたな」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:56:05.45 ID:dxenof3m0
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お前は嬉しそうに、母親の横を歩いていた。
母親もまた、お前といて嬉しそうだった。
J( 'ー`)し「ねぇビコーズ、今日の晩御飯は何がいい? 」
( ∵)「カレーがいい! 」
J( 'ー`)し「カレーね、ふふふ。じゃあ帰りはスーパーに寄って行かないとね」
にゃぁー
( ∵)「あっ、お母さん、猫がいるよ! 」
J( 'ー`)し「あら、本当ね。小さくてかわいい」
( ∵)「首輪してないよ。捨て猫かなぁ」
J( 'ー`)し「そうだねぇ。かわいそうに。びしょ濡れじゃないの」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 02:59:32.27 ID:dxenof3m0
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( ∵)「ねぇお母さん、この子、飼ってあげようよ」
J( 'ー`)し「ううん……そうねぇ……」
( ∵)「おねがい! 大切にするから! 」
にゃあーん
猫は腕の中で、ぷるぷると震えていた。
J( 'ー`)し「……そうだね、わかった。大切にしようね」
( ∵)「やったぁー! 」
その猫は、“はな”と名づけられ、大切に、本当に大切にされていた。
母親は、“はな”と仲良く遊ぶお前を見ているのが一番の幸せだった。
お前も、“はな”を妹のように可愛がっていたな。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 03:02:42.30 ID:dxenof3m0
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しかし、平穏ってのは長くは続かなかった。
( ∵)「それじゃあ僕、はなちゃんの餌買って来るね」
J( 'ー`)し「うん、でも国道は危ないからね。お母さんも一緒に……」
( ^Д^)「ただいまー、今帰ったぞ」
J(;'ー`)し「! 」
父親の存在。
( ^Д^)「おい! ビール冷やしてねぇぞ!!!! 」
J( 'ー`)し「す、すみません。今日は少し病院に行っていて 」
父親はちゃんと仕事もしているし、ビコーズの学校行事にも積極的に参加する。
加えて、人当たりもいい。
(#^Д^)「言い訳すんじゃねぇよ! 」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/13(木) 03:05:24.88 ID:dxenof3m0
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何も知らない者は彼を当たり前に、いい父親、理想の父親と評価するだろう。
それは、ただ外ヅラがいいってだけの話で
内面は、全くどうしようもない人間だった。
J( メ'ー`)し「ごめんねビコーズ。いやなところ見せちゃったね」
( ∵)「ううん、カーチャン、……僕もごめん、ごめんね」
J( メ'ー`)し「ううん、大丈夫だよ。心配しなくていいよ。
ビコーズとはなちゃんのためなら
お母さん、これくらい我慢できるから」
たまに帰ってきては、当り散らし、妻に暴力を振るい
うさを晴らしてはまたどこかへ消えていく父親。
母親は文句も弱音も言わずただ耐え、それどころか、笑ってみせる。
お前は大好きな母親をそんな目に合わせる父親を恐れ
同時に心底憎んでいた。
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