476 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:51:25.03 ID:z8MDhwJsO
侵入したブーンドライブはセキュリティや残存する敵MTを破壊しながら通路を進む。
内部構造など分からないので闇雲に調べるしかない。
 
( ^ω^)「けっこう奥まで来たはずだけど…お?」
 
レーダーに反応が一つある。小さく見えるゲートの奥には広い空間があるようだ。
 
《ロビー重工所属、ヤラナイカーを確認。
敵も貴方の反応を感知しているでしょう。交戦は避けられません》
 
ツンを見つけるまではなるべく被害を最小に抑えたかったがAC相手だとそうもいかない。
こうなってしまえば大きなダメージを受ける前に片付けてしまう短期戦が望ましい。
ブーンはゲートを開くと即座にレーザーを放った。ばら撒かれた光の弾丸がAC襲う。
しかしがむしゃらに撃ったので全弾命中とはいかず、ヤラナイカーの背後にあるコンピュータも爆砕した。
破壊活動も任務内容に含まれているので咎められはしないだろうが、そのコンピュータの傍らにあるACを見てブーンは硬直する。
 
(;^ω^)「な…ナインボール…!?」
 
見間違うはずがない。そこにあったのは確かにあのナインボールだ。
だが起動していない事から、操縦するレイヴンは乗っていないとブーンは考え、ひとまず安堵の息を吐く。

481 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:52:57.42 ID:z8MDhwJsO
『いきなりとはご挨拶だな。ここでやり合うのはまずい──とは言っても制御コンピュータは壊されちまったみたいだが…これ以上は破壊される訳にはいかない。
場所を移動させてもらおうか』
 
ヤラナイカーが動いた。
リニアガンを放ちつつ逃げるように奥にある─ブーンが潜ったドアの反対にある─通路へと去って行く。
 
(#^ω^)「あっ! 待てお!」
 
ブーンも追跡の為に走り出す。この場所には恐らく何もないと判断したからだ。
だが彼は気付いていなかった。ナインボールの全身に電力が供給され始めている事を…。

483 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:54:10.48 ID:z8MDhwJsO
『よかったのか、ホイホイついてきて。
俺は罠にだってかまわないでハメちまう人間なんだぜ』
(#^ω^)「うるさいお! 罠でもいいお!
どこまでも追いかけてコイツをぶち込んでやるお!」
 
レーザーライフルを構えながらブーンは怒鳴る。通路は一本だが曲がりくねっているので撃つ事が出来ない。
その上、ヤラナイカーの機動力はブーンドライブよりも高いので追い付く事も出来なかった。
 
『うれしいこと言ってくれるじゃないの。それじゃあとことん着いて来てもらうからな』
(#^ω^)「てかどこまで行く気だお!?」
 
奇妙な鬼ごっこは数分であったがブーンには何十分にも感じられる。
長い通路に出た。
かなりの距離が開いていたが頭にきたブーンはレーザーを乱射する。

486 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:55:43.23 ID:z8MDhwJsO
『ん? もう我慢の限界かい? 意外に早いんだな』
 
レーザーをひょいひょいかわしながらの言葉が、ブーンは完全にコケにされているように感じた。
 
(#^ω^)「コイツ…!」
《レイヴン、落ち着いて下さい。これでは敵の思う壺です。
そしてたった今、ナインボールに関する新たな情報が入りました。ナインボールにレイヴンは搭乗していません》
( ^ω^)「…どういう事だお?」
 
不可解な言葉がブーンの頭を僅かに冷やす。
 
《AIシステムです。つまり無人ACという事でしょう。これは恐るべき事実です》
( ^ω^)「じゃあ…なんでさっきの場所にいたナインボールは止まってたんだお…?」
《分かりません。しかし敵レイヴンの言っていた制御コンピュータという言葉。
もしかするとコントロールが不可能なのかもしれませんね》
(;^ω^)「そんな危ないモンを置いとくなんて…高岡博士の気が知れないお」
『最初の勢いがなくなったな。もうバテたのかい?』
(#^ω^)「………」

489 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:57:13.04 ID:z8MDhwJsO
《トリプルゼータから生体反応消滅。レイヴン、荒巻スカルチノフの死亡を確認しました》
(;゚ω゚)「!!!」
( ´ω`)「荒巻さんまで…」 
その言葉でブーンの頭は完全に冷えきった。
こんな事をしている場合ではない。
己の目的を果たし、本来の作戦を遂行せねばまた仲間を失うかもしれない。
 
『どうした、追って来ないのか?』
( ^ω^)「もう鬼ごっこは終わりだお。逃げたきゃ勝手に逃げればいいお」
『そうか…それは予定外だな…。まぁ、ここでもいいだろう』
 
追っても徐々に離れていたヤラナイカーが足を止めた。
ブーンは戻るつもりはないのでそのまま進む。
立ち止まり、構えもしないヤラナイカーを発見するブーン。
 
《なにか企んでいるかもしれません。用心して下さい》
( ^ω^)「分かってるお…」
『しかしこの状態では…。
………いいこと思いついた。お前、俺の機体の中でレーザー撃て』

496 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:59:40.35 ID:z8MDhwJsO
(;^ω^)「急に何言い出すんだおコイツ…」
《私にも訳が分かりません》
『どうした、早くしなよ。早くしないと…』
 
何か切羽詰まった声色で背を向ける。無防備もいい所だ。
ブーンは戸惑いながらも、言われるままにライフルを機体の隙間に差し込んだ。
 
(;^ω^)「は…はいったお…」
『ああ…次はレーザーだ』
(;^ω^)「それじゃ、撃つお…」
 
高エネルギーのレーザーは次々と機体に破壊をもたらす。
 
『いいぞ、内部からどんどん装甲が抉られているのがわかるよ』
 
電気系統が狂わされ、全身に送られた多量のエネルギーが暴走し、ヤラナイカーは火花を散らした。

498 :愛のVIP戦士:2007/02/08(木) 00:01:38.15 ID:Xv2bAOreO
『よし、そこまでだ。機体ダメージが90%を越えた。これなら離脱する理由に充分だな』
(;^ω^)「一体なんの意味があってこんな事を…」
 
当然の疑問を投げ掛けるブーンを無視し、ヤラナイカーは壁にパイルバンカーを放つ。それも、弾が切れるまで。
今度はもう片方のパイルバンカーだ。
これも撃ち尽くした頃には壁にヒビが入っていた。そこを全力で押し出す。
壁は崩壊し、突風が吹き荒れた。どうやら外壁だったらしい。
 
『この場所に誘い込んだのは逃走の為だったのさ。守る暇もなくお前が制御コンピュータを破壊しちまったからな。
お前良いヤツみたいだから一つ教えてやる。もうすぐあのナインボールが動き出すぜ。
じゃ、俺は帰らせてもらう』
 
それだけ言い残すと、ヤラナイカーは外に飛び出して行った。

502 :愛のVIP戦士:2007/02/08(木) 00:03:02.90 ID:Xv2bAOreO
(;^ω^)「だからそんな危なたモン置いとくなお…」
《ナインボールは身内の間でも脅威だったようですね。
あっ、ブラクラから通信です》
『こちらブラクラ、武装の大半を失った。すまないが帰還する』
《ブラクラの離脱を確認。しかしレイヴン、朗報です。
たった今ガーゼフィクスの撃破が確認されました。ブラクラによる戦果です》
( ^ω^)「本当かお!? 兄者…ついにやったのかお…」
( ^ω^)(後は僕だけだお!)
 
兄者は戦線から離脱したが、彼の残した戦果はブーンに勇気を与えた。自分もツンを探し出す決意を更に堅め、この先に彼女がいるであろう事を願って先を急ぐのであった。


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