402 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:08:18.12 ID:z8MDhwJsO
(;'A`)「クソ…なんだこの強さは…。それに同士討ちまでしてやがる…どうなってんだ…?」
 
メランコリックハートは離れた場所から射撃を行っていた。
突然現れ、自分以外が敵だと言わんばかりに無差別攻撃を行うナインボール。
MTが群がる所にグレネードを放ち、近くのものは斬り捨て、離れた場所にいるMTにはパルスを撃つ。
両者のMTはことごとく破壊されていた。
 
(;'A`)(近付けねぇ…勘が告げてやがる。アレはヤバ過ぎる…)
(;'A`)「オペレーター! 何機が侵入に成功した!?」
《トリプルゼータ、ブーンドライブ、ブラクラの三機が侵入している》
 
ハスキーな女の声が聞こえる。そこからは思慮深さと冷静に物事を把握し、適格な指示を出す冷徹さが感じられた。

404 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:09:44.19 ID:z8MDhwJsO
(;'A`)(爺さんなら心配無用だが…ブーンと兄者か…。どうにか俺も行くしかねェな…)
('A`)「どうにか侵入を試みる。あのACの攻撃が手薄なルートを探してくれ」
《もうやっている。あと20秒待て》
(;'A`)(それにしてもあの野郎…どっちも相当な手錬だぜ…。しかも全く同じ機体ってのが気味悪ィ…)
《算出完了。施設を壁にして北西に進め。
2.2km進んだ所に高さ69mのビルがある。そこから北北東に向かえ》
 
ドクオは全エネルギーをブースターに回して疾駆する。どこもかしこもMTやそれの残骸だらけで走り難い。だが空を飛んでしまっては目標にされる危険があるので悪路を走るしかない。
 
『こんな所で…ゴルァ…この性能…本t…旧式……ザザ…』
《護流亜、大破。あの機体ではいい的だな》
(;'A`)「クッ…ギコ…」
 
喉の奥で唸り、感情を押し殺してひたすら走る。
やがてビルが見えた。

407 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:11:11.59 ID:z8MDhwJsO
《そこから北北東へ。お前の行動は直に気付かれる。迅速に行動しろ》
 
指示通りに方向転換し、更に進むと焼け落ちた施設が並んでいる。
これでは攻撃を防げないが、今更引き返す訳にもいかない。
腹を括って直進するメランコリックハート。
数m先をパルスが横切った。横を見ればナインボールが銃口を向けて乱射している。
やはり気付かれたようだ。
 
《これだけ離れていれば被弾しない。そのまま進め。
また一人死んだぞ。カマキリオンだ》
(;'A`)(カマキリオン…確かクーの…)
 
ドクオは飛んだ。
メランコリックハートに向けてパルスをばら撒いているナインボールの奥にある、もう一つの赤い機体を確認する。そして対照的な青の機体。
彼は体に電撃が走った錯覚を覚えた。
小さく見づらいが間違いない。
スナイパークールの姿が視界に入ったのだ。

409 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:12:51.18 ID:z8MDhwJsO
ナインボールは確実にスナイパークールを第一目標として攻撃している。
クーは何故わざわざ射程に入るような真似をしたのか。
それはすぐに分かった。
ドクオは以前ニューソクシティで特殊ACと交戦した日を思い出す。
接近戦を得意とするカマキリオンが危なくなった時、クーは自分から特殊ACに近付いた事があった。
恐らく今回もどうにかカマキリオンを助けようとしたのだろう。
彼女は感情の起伏をあまり見せないが、冷血ではないのだ。
 
《どうした。早く内部に侵入しろ》
 
パルスの中を駆け抜け、入口の前に立ったドクオは苦悩した。どうすれば任務が上手く進むか、それは分かっている。
いつもの自分ならどうするか──無論、作戦の成功を優先する。しかし別の感情が彼の足を引く。
歯の軋む音が機内に響いた。
 
《早く進め。何をしている》
(;'A`)「う…ぐうぅ…!」
 
こうしている間にもクーは危機に晒されている。
ドクオは、吹っ切れた。

414 :408 正解 :2007/02/07(水) 23:14:47.20 ID:z8MDhwJsO
('A`)「──止めだ」
《何を言って──》
 
ドクオはACをナインボールに向けた。そして走り出す。
 
《…お前らしくもない。どういう心変わりだ?》
('A`)「うるせぇ。アンタにゃ分かんねェだろうよ」
《解らんな。死にたければ死ぬがいい。だがそれまではサポートしてやろう》
('A`)「…頼むぜ」
 
スナイパークールの所に付くまで被害を受けるのは避けたい。なんとか安全な経路を探すが、来た道を戻るには時間がかかり過ぎる。
他の道は壁になる物はなく、時間もかかる。
ならば正面突破だ。
メランコリックハートからチャージ音が響く。
空を跳ね回るナインボール。
メランコリックハートも飛びながら接近する。
そして発動。
迫る無数のパルスに自ら高速で突っ込み、それでも左右に避ける反射神経は並ではない。
もうナインボールは目前だ。
赤の腕がレーザーブレードを放つ。
ドクオもブレードを放出した。

416 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:16:17.42 ID:z8MDhwJsO
(#'A`)「邪魔すんじゃねェッ!!!」
 
同時に一閃されたブレードがぶつかり、火花が散る。
弾き返されそうになるのを無理やり押し込む。
 
(#'A`)「どけェェェェェェェェェェェエ!!!!!」
 
一瞬、均衡状態であった二振りのブレード。
その均衡が崩れた。
ナインボールの肩口にブレードが食い込み、そして切断。
加速があった分、メランコリックハートが押し勝ったのだ。落下する腕部に目もくれずドクオは先を急いだ。
その背に撃ち込まれるパルス。
補助ブースターを起動させ、機体を反転させたドクオはミサイルを連続で叩き込む。
この程度で破壊出来るような相手ではないが、一瞬なら時間を作れるだろう。
思惑通りナインボールは回避行動の為に機体を動かす。
それを見届ける前にもう一度補助ブースターを起動して進路を調節し、クーの元へ向かった。

425 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:21:29.82 ID:z8MDhwJsO
( ゚д゚)「荒巻のダンナか…。ここまで来れたのは貴様だけだな…」
 
アリーナ程はある広い空間の中で二機の重装ACが対峙していた。お互いに一片の隙も見せずに睨み合い、ピリピリした空気が彼らを包む。
 
『侵入した者は他にもいるぞよ。ワシが最初に来ただけじゃ。
それにしてもこうして向かい合うのは何年ぶりかのう? アリーナ以来じゃな…』
( ゚д゚)「あの時はまたこうして戦う事になるなどと思わなかったがな」
 
ガーゼフィクスのロケットが牙を研ぎ始める。
いつでも発射可能な状態だ。
 
『待て待て、少しくらいこの老いぼれの話に付き合ってくれてもいいじゃろう?』
( ゚д゚)「………」
『ここに来る途中で…ナインボール…と言ったかのう? あのACが大量にあったんじゃが、あれは何じゃ? 抜け殻のようじゃったがの』
( ゚д゚)「フン…冥土の土産に教えてやろう。文字通りナインボールだ。VIPでもその程度の調べは付いているだろう?」
『はて? そんな物をあんなに作ってどうするつもりじゃ? ACなどレイヴンがいなければただのガラクタじゃが。
しかしお主の所はあれを乗りこなす優秀なレイヴンが何人かいるようじゃな』

428 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:23:33.11 ID:z8MDhwJsO
( ゚д゚)「クハハ…本当にそう思うのか? 私の知る限りではそのような腕を持つレイヴンはいない…。あれはハスラーワンだ」
『おかしな事を言うもんじゃな。ハスラーワンと言えばずっと昔に死んだはずじゃろう?
もし生きていても高齢どころか骨になっとるはずじゃ』
( ゚д゚)「AIだ」
『…今、なんと?』
( ゚д゚)「ナインボールにレイヴンなど乗ってはいない。全てAI──無人機なのだ」
『なんと…驚いたわい。オペレーター、この情報を全レイヴンに。
ミルナよ、お主もまだまだ未熟じゃな。口が軽いのぅ…ホッホッ…』
( ゚д゚)「どうでもいい事だ。AIだと知った所で貴様ら犬ごときに何が出来る」
『それもそうじゃな。しかしミルナよ、犬とは聞き捨てならんぞい』
( ゚д゚)「貴様らは誰に依頼された? いや依頼じゃないだろう。VIPの命令で出撃したんじゃないのか?」
『企業連合の決定を待ってはおれん事態じゃからの。VIPが先取って決定しただけの事じゃ。
VIPが不干渉でも、遅かれ早かれ企業もこうしたじゃろう。誰が先にやるか、それだけの問題じゃろうて』

432 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:26:36.92 ID:z8MDhwJsO
( ゚д゚)「思えば大半のレイヴンがVIPに所属した頃から変わり始めた…。
契約する事によって生きている限り生活には困らない制度…力のない者にとってはまさに待ち望んでいた制度だろう。
だが我々が支払った代償が自由だという事を理解している者がどれ程いる?
いつしか我々はVIP専属レイヴンと言っても過言ではないまでに低落していたのだ…反吐が出る。
何者にも縛られない自由な傭兵…VIPは今でもそう謳ってはいるが貴様らには首輪が付けられている。
VIPにとって有益な依頼だけが回され、そしてVIPの脅威となり得るもの──今で言う我々の事だ。
そのような勢力が現れればVIPは即座に出撃命令を出す…貴様らに拒否権はない。
やはり今の貴様らは、VIPの犬だ」

『そういう意味じゃったか。なら犬で結構じゃわい。時代が求めておるのじゃよ。
逆らった所でその先に何があるんじゃ? …と、そんな話をしても無意味じゃな。残念じゃが、お主には抹殺命令が下されたんじゃ』

( ゚д゚)「不抜けに成り下がった貴様など私の敵ではない。話は終わりだ。
いつか世話になった礼もある。せめて私の手で葬ってやろう」
『大きく出たの。言うようになったもんじゃなミルナよ。
昔と変わらずよく吠える吠える、ホッホッホ───のぼせ上がるなよ…小僧!』

435 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:29:13.80 ID:z8MDhwJsO
( ゚д゚)「その殺気…昔のままだな…。少し楽しみになったぞ。貴様の腕が衰えてないか確認してやろう。
来いッ! 荒巻スカルチノフ!!」
 
ガーゼフィクスのロケットとトリプルゼータのバズーカが咆哮したのは同時だった。
お互いこれくらいの攻撃をかわせないはずがなく、それぞれが壁を抉る。
トリプルゼータの両肩から都合16発のミサイルが同時発射された。
ガーゼフィクスも武器をスラッグガンに換え、無数の弾丸がミサイルを撃ち落とす。弾幕に次ぐ煙幕で視界は悪い。
ミルナがレーダーに目を向けると反応が近付いている。咄嗟に引き、ロケットを煙の中にある機体に連続で発射する。
装甲が飛び散る音からも命中はした。だがそれでも反応は接近。今度は煙の中からバズーカの弾が飛び出してきた。

437 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:30:45.71 ID:z8MDhwJsO
当然これも避けたが視界に映るはミサイルの雨。迎撃する暇はない。
避けるには機動力が足りない。
どちらにしても被弾は免れないと悟ったミルナは前進する。
激しい衝撃が彼を襲うが怯まずにパイルバンカーを繰り出す。もちろんレーダーで相手を確認し、軌道修正してからだ。
金属がはぜる鈍い音は装甲を貫いた証。
ミルナの口元が弧を描く。
そこに追撃のブレードを叩き込もうとした時だった。
彼より早くブレードを突き出したのはトリプルゼータ。
しかもパイルバンカーごと機体が引っ張られている。
バランスを崩したガーゼフィクスの斬撃は空を切り、コアを一文字に裂かれ、ついでとばかりに腕部も半ばから斬り付けられてしまった。

440 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:32:30.32 ID:z8MDhwJsO
(#゚д゚)「ぬぅぅンッ!!」
 
ミルナはどうにか距離と取ろうとするが動けない。何故なら、パイルバンカーが掴まれているのだ。
つまり先程貫いたのはバズーカであり、荒巻は武器を捨ててパイルバンカーを掴んだらしい。
それを瞬時に理解したミルナはロケットを撃ち続けるが、トリプルゼータは離れずにブレードを繰り出す。
これ以上コアにダメージを受けるのはまずいとミルナもブレードで応戦する。
 
( ゚д゚)(稼動が鈍い…伝達系をやられたか…)
 
半分裂かれた腕を酷使して斬撃を弾くが、自由に動けない中で迫る切っ先はガーゼフィクスを切り刻む。
トリプルゼータが一歩踏み込んで腕を振り上げた。
だがミルナはこれを待っていた。
パイルバンカーをパージし、一気に後退してからスラッグガンを構える。

441 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:34:00.11 ID:z8MDhwJsO
腕を振り切ったトリプルゼータは一瞬の停滞を見せ、間近で全ての散弾を受ける事になった。
そして衝撃でグラつく機体にもう一発。
勝利を確信したミルナだったが、彼の凶悪な笑みは戦慄に歪む事となる。
スパークしている機体が向かってきたのだ。
 
(;゚д゚)「なんだと!?」
『小僧め…驕るなよ…』
 
焦燥に駆られたミルナは更にもう一撃、スラッグガンを発射した。
既にボロボロの機体がまともに散弾を受け、それでも尚進撃を止めない光景はミルナにとって悪い夢のように感じた。
スラッグガンが斬り落される。
現実感は消失し、ただひたすら迫る死の感覚だけが彼を満たす。覚悟からか不思議と恐怖はなかった。
それでも撃とうとしているのは彼の闘争本能からの行為だった。
だがスラッグガンが既に破壊されている事は彼の頭から吹き飛んでいる。
無意味にトリガーを引く機体は動けない。

446 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:36:08.62 ID:z8MDhwJsO
『無様じゃな…ミルナよ…。ここで引導を──ウッ』
 
止どめを刺そうとしたACは突如停止した。
 
( ゚д゚)「私が我を失うとはな…。しかし何が起きた…?」
 
無防備な格好で固まるトリプルゼータは答えない。
 
( ゚Д゚)「ククク…そうか…ハッハッハーッ! レイヴンも歳には勝てないという事か…クックッ…。運命も私に味方しているようだな…」
『いいや、運命は残酷なものだ。貴様はここで終わりだッ!』
 
独り笑うミルナの前に現れたのは、憤怒と殺意を纏うブラクラだった───

451 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:37:49.23 ID:z8MDhwJsO
( ゚д゚)「兄者か…」
『やっと見つけたぞミルナ…! この時を何度夢見た事か…貴様を何度頭の中で捻り殺した事か!』
( ゚д゚)「負傷した私を倒して満足か、兄者よ」
 
満身創痍のガーゼフィクスに銃口を向け、兄者は吠える。
 
『黙れッ! この際プライドは抜きだ…! 貴様を殺せればそれで充分だッ!』
( ゚д゚)「そうだ…それがレイヴンのあるべき姿だ。どのような汚い手を使ってでも目的を果たす…見直したぞ兄者。やはり貴様はこちら側の人間だ」
『俺が貴様と同じだと!? 冗談じゃない! 貴様はここで死ぬのだッ!!』
( ゚д゚)「戦場で死ぬ覚悟は出来ている。だが貴様も道連れだ。
貴様に覚悟があるか見てやろう。来るがいい」

456 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:39:35.91 ID:z8MDhwJsO
悠然と構えるガーゼフィクスに、兄者と彼のガトリングは怒号を上げて突撃した。
殺意の弾丸と実弾が一つの塊となってガーゼフィクスを襲う。
それにミルナは慌てる様子もなくロケットを数発放ちつつ旋回する。
狂ったように距離だけを潰そうとする兄者にはこれを避けられない。否、もし完全に冷静だったとしても回避不可だったかもしれない。
それ程精確に、しかも避けるならどこに移動するかを読んだ上での砲撃だったのだ。
腐っても元トップランカー。
ガーゼフィクスも数発被弾したがガトリングの弾丸とロケットでは一発の重さが桁違いである。
結果として、ブラクラの方がより大きなダメージを受けてしまった。
 
( ゚д゚)「なんだその動きは。…貴様を買い被り過ぎたか」
『黙れッ!』
 
兄者は懲りずに同じ攻撃を繰り返す。
狙ったのか偶然か、ロケットはガトリングに直撃する。銃身には亀裂が入り、それでも掃射する兄者。

457 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:41:43.22 ID:z8MDhwJsO
( ゚д゚)「何が何でも私を殺そうとする意気込みは評価するがな…。だが動きが粗末すぎる。シュミレートと実戦は違うのだぞ…」
『黙れッ! 黙れ黙れ黙れぇッ!!』
 
ポロリとガトリングから一つの破片が落ちた。
周りを支えていた部分が崩れる事により、そこから崩壊は爆発的に進行する。落下した破片が起爆剤となってガトリングは弾け飛ぶ。
 
『ぐっ…! ならば次はこっちだッ!!』
 
撃ち上がる垂直落下ミサイル。しかしそれはガーゼフィクスに降り注ぐ事はなく天井を破壊したに過ぎなかった。
ブラクラに積まれたミサイルは非常に強力な兵器と成り得るが、地形次第ではただの重りと化す代物なのである。
 
( ゚д゚)「愚かな…貴様には失望した。貴様程度に殺される私ではない。
道連れは止めだ…貴様一人で死ねぃ!!」

459 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:43:07.13 ID:z8MDhwJsO
ブラクラは棒立ちだ。
このままブレードで形を付けるつもりなのか、漆黒の巨躯は直進する。
ガトリングを失い、ミサイルも役に立たないACなど正面突撃でも問題ないと考えたのだろう。
迫り来るガーゼフィクスに恐れを成したのか、ブラクラは退避しようと左に動く。
ミルナは最後となったロケットを撃ち出した。
彼の計算と、彼の考える兄者の操縦技術では十中八九命中する。被弾の衝撃でコンマ数秒は動きを止められるだろう。
戦場においてこの数瞬は途方もなく永い。
飛び道具はこれで全て撃ち尽くしたが後はロケットを捨て、一気に近付いて斬り裂けは始末には事足りる。
ミルナは侮蔑と共に鼻を鳴らし、ロケットをパージしようとした──その時、ブラクラの肩から垂直落下ミサイルが離れた。
そして落下を待たずにエネルギーをチャージしつつ右へ急速移動する。
ロケットはブラクラをかすめて通過し、足止めという目的を果たす事は出来なかった。

461 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:44:39.87 ID:z8MDhwJsO
(;゚д゚)(フェイントか──!) 
気付いた時には遅かった。
ブラクラが動き出した今、互いに接近している形である。ガーゼフィクスのブレードが熱を帯びるが相変わらず動きは鈍い。腕を振り切る前に二つのACは交差した。
ガーゼフィクスにダメージはない。
しかし背後で圧縮エネルギーが弾ける音がミルナの耳に入る。
振り返えろうとした刹那、青い刃を携えたブラクラが視界に飛び込んできた。
再び交差する機体。
鉄の焼き切られる不快な音が機内に響き、半ば切断された腕は今度こそ地に落ちる。
再度正面から高速で肉薄するブラクラは、もう片方の腕部も斬り飛ばした。
 
(;゚д゚)「ぬぐぅ…!」
『俺が本当に冷静を失っていたと思っていたのか? 全ては貴様を油断させる為に芝居を打っただけだッ!』
 
回り込むブラクラの勢いは衰えを知らない。攻撃力を全て失ったガーゼフィクスは両脚を切断され、仰向けに倒れ込む。

465 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:46:40.73 ID:z8MDhwJsO
( ゚д゚)「敢えて…無駄弾を使い攻撃を受けたのか…役者め…。
肝の座った男だな…兄者…」
『俺はずっと貴様を研究していた。貴様の戦闘データやアリーナでの映像…何度も繰り返し見たのだ。
貴様がその重装甲を活かして接近戦に持ち込む事は分かっていた。ロケットの弾幕を使ってな。
パイルバンカーを持っていない事は好都合だったぞ。さっきまでの腕では残されたブレードも上手く扱えなかっただろう』
( ゚д゚)「鋭いな…良い洞察力と観察眼だ…」
『それよりミルナ…その格好がどういう形か理解しているか…?』
( ゚д゚)「…四肢を切断、か」
 
ブラクラはダルマ状態のガーゼフィクスを踏み付け、ブレードを振り上げる。
 
『貴様が弟者にした仕打ちだッ!! 己の行いを後悔しろッ! そしてあの世で弟者に跪いて詫び続けろミルナァァァ!!!!』
(;゚д゚)「……ッ!」
 
どのようなレイヴンでも最期の瞬間は呆気ない。如何に高度な技術を持っていたとしても、如何に肉体を鍛え上げようとも、生身では対人用拳銃はおろか一本の縄でも死に至る。AC用兵器に耐えられる人間など存在しようはずもない。
モニターを突き破り侵入して来る高熱の切っ先が、彼の見た最後のものとなったのだった…。


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