242 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 20:41:36.64 ID:z8MDhwJsO
『ブーン! AC四機では分が悪い! コイツは俺に任せてブーンは退路を探してくれ!!』
 
兄者が囮となる決意を固めた刹那、彼女のAC、ホラーリングからパイルバンカーが繰り出される。
だがそう簡単に食らってはいられない。
右に避け、空振りしたパイルバンカーを余所にガトリングを撃ち込む。
その瞬間を見切られたのか、ホラーリングはすぐに後退して横なぎの雨をかわした。そして再びブラクラに迫る。
コアを狙えば仮に外れてもどこかしらのパーツに命中したかもしれないが、手足を狙って攻撃していたせいかなかなか当たらない。
今まで彼らが相手をしてきた敵は無人機だった。
しかし今回は違う。
それが彼の手を鈍らせる。
 
《新たな反応を確認。ランカーACガーゼフィクスです》
 
兄者の手が止まった。
 
(;^ω^)「ミルナまで…!?」
『誰かと思えば…何故貴様らがここにいる』
 
通信器からミルナの声が聞こえる。その声色からは訝しっているのと多少の驚き、そして怒りが混じっていた。

243 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 20:43:44.82 ID:z8MDhwJsO
『まさか貴様らのような雑魚に…このぬるい世界で満足している不抜けどもに参加を呼び掛けた訳ではあるまい…。
仮にそうだとしても貴様らに資格があるとは思えん。ここで死ぬがいい。
貞子、ニダー、ビロード。そのACを生かして帰すな』
 
《続いて将軍、その後にWKNI-DEATHが接近》
『ここがお前たちの墓場になるニダ。逃がさんニダ!』
『そういう事です。死んでもらいますよッ!』
 
数で勝負が決まる訳ではないがこのまま援軍が到着すれば不利は否めない。ガーゼフィクスとバーボンの動きは見られないが黙って見ているとも思えない。
今の内に数を減らした方がいいだろう。
 
( ^ω^)「兄者! やっぱり先に来たヤツを二人で全力で倒すお! 仲間が到着したら大変になるお!」
 
効率の良さや安全面からもブーンの提案は間違っていない。二対一なら撃破もかなり楽になるからだ。いつもなら兄者は即座に返答してきてすぐにも行動に移る。
だが、今回は違った。
先の声とは別次元の、気味の悪い笑い声が静かに響く。
 
『フ…フフフ…やっと…』
( ^ω^)「兄者…?」

248 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 20:57:10.65 ID:z8MDhwJsO
『やっとだ…これで…ハハハハハーッ!!』
(;^ω^)「ど、どうしたお!?」
『いやブーン。聞こえているさ…。これで堂々とミルナを殺す条件が整った! 弟者のカタキをなァ…ハハハーッ! 』
(;^ω^)「な、なるほど。それならおk」
『ブーンッ!! 着いて来いッッッ!!』
 
ブーンに命令するとブースターをフルスロットルに開いて走り出す。薄汚れたACは目前だ。数瞬後にはブラクラと白のACは衝突していた。突き出されるパイルバンカーと高熱のブレード。
どちらも高威力だがブラクラはかわし、もう一方はコアを斬り裂かれている。
それから切り刻むようにブレードが舞った。
 
『あなた……呪…まs……』
《ホラーリング 撃破》
 
ブーンは見ていた。斬り裂いた傷口に押し付けられたガトリングを。
一切のためらいもなく弾丸を発射するブラクラを。
 
『まずは一機…フフ…待っていろ…!』

251 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 20:59:05.28 ID:z8MDhwJsO
四散するホラーリングには目もくれずに新たな標的を目指して自らも接近するブラクラ。
やがて将軍とWKNI-DEATHが視界に入る。将軍は四脚に腕キャノンと核ミサイルといった高火力主体のACで、WKNI-DEATHは逆関節とこちらも腕武器の拡散レーザーを装備していた。
肩に積まれているのは高機動ミサイルだろうか。
注意すべきは拡散レーザーだ。近距離で連射を受ければ甚大な被害を被るだろう。
先に到着したWKNI-DEATHを肉眼で敵を確認するとブラクラは躊躇する事なく引き金を引いた。WKNI-DEATHも一斉にミサイルを解き放つ。
無数の弾丸とミサイルが交差し、いくつかは衝突して爆発する。
煙で視界を奪われた両者だったが被弾を恐れて一瞬停滞したWKNI-DEATHには弾の雨が突き刺さり、逆に怯まずに突き進むブラクラは軽被害で煙幕を越えた。
そこには全身の装甲を抉られたWKNI-DEATHがたたずんでいる。近距離戦は望む所なのか引きながら拡散レーザーを放とうとした。

253 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:00:24.55 ID:z8MDhwJsO
が、しかしブラクラはガトリングを休めてはいない。先手を打たれ、尚も続く攻撃にWKNI-DEATHの腕部は悲鳴を上げ、脚部も陥没し、コアからは破片が舞う。
最高速度に達しているブラクラはWKNI-DEATHの傍らを一方的に通り抜ける。
ブレードの残像を残しながら回転して向き直ると、既に力を失いつつあるWKNI-DEATHの背に再度ガトリングでの応酬を浴びせた。
 
『ち…ぽっ…さん…僕も…今かr…』
《WKNI-DEATHの撃破を確認》
(;^ω^)「兄者!! ミサイルが来てるお!!」
 
巨大なミサイルがブラクラに向かって飛行しているのを目にしたブーンは叫ぶ。それは兄者も気付いていた。
弾速は遅く、知っていれば回避するのはたやすいので放っておいたのだ。
 
(;^ω^)「兄者!! そのミサイルは──」

255 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:01:53.50 ID:z8MDhwJsO
視界が白に染まる。
巨大なミサイルが発散したエネルギーはかつて人々がこの地下で暮らしていたであろうビル群を薙ぎ倒し、吹き飛ばし、灰燼と帰した。
 
(;゚ω゚)「兄者ァ!!」
『心配するなブーン。俺は無事だ』
(;^ω^)「………」
 
レーダーを見るとブラクラが大きく旋回しながらやって来ている。速度からもオーバーブーストを発動しているらしい。
 
(;^ω^)「心配したお…」
(#^ω^)「それより急にどうしたんだお! 落ち着けお!! いつもの兄者に戻れお!!」
 
ブーンの目には怒り狂った兄者が突進し、運良く生き残ったように映ったかもしれない。怒った所で強くなる訳がないのだ。
だが兄者は格段に強くなっていた。
彼を強くしたのは激情に身を委ねる事なく冷静に状況を把握し、最も効率の良い攻撃を行った事。少ない攻撃を無駄なく命中させ、反撃の暇も与えず確実に息の根を止める。
 
これまでのように相手を殺す事に躊躇していた兄者に出来るはずがない。
それを可能にしたのが、ミルナが敵になったという事実だった。
ミルナを倒す機会が到来した事が兄者を変えた。怒りと恨みが人を殺すという禁忌を凌駕し、あのような行動を起こさせたのだ。

257 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:04:59.73 ID:z8MDhwJsO
『俺は…俺はこの時の為だけに訓練してきたのだ!!
八つ裂きにしてやる…粉々に踏みつぶしてやる…ここで死んでもらうぞッ! ミルナァ!!!』
(;^ω^)「兄者…ちょっと、かなり怖いお…」
 
あまりの豹変ぶりに怯えるブーン。彼が感じたものは奇しくもいつの日かツンが感じ、欲したもの。手に入れたくてもがき、手に入らずに失踪の道を選ばせたもの。
だが彼らはそれを知る由もない。
 
(;^ω^)「と、とにかくまだ敵は残ってるお。それを片付けないと…」
『ああ…分かっている。早く始末してミルナを…!』
《バーボン、接近。多数のMTを引き連れています》
『せっかく来てもらって残念だけどあまり時間がないんだ。尻を掘る時間もない。
計画を邪魔される訳にはいかないしね。悪いけど物量で圧倒させてもらうよ』

258 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:06:53.57 ID:z8MDhwJsO
業を煮やしたのか、動きのなかったバーボンが向かってくる。それもレーダーを埋め尽くす程のMTを連れて。
数で表すなら50機は出ているだろう。
それに触発されたかのように将軍もまだ崩壊していないビルの影から飛び出した。
即座に発射される大型ミサイル。
ロックに時間がかかる為に身を潜め、隙を伺っていたらしい。発射した途端に再び影へ引っ込んだ。
 
『ブーン。さっきのミサイルが来ている。落ち着いて避けろ』
(;^ω^)「分かってるお。でもこのMTの数は…」
『この数で固まって進軍されると厄介だな…。一斉に撃たれれば一瞬で蜂の巣だ。ミルナめ…。
せめてグレネードがあれば…』
 
ゆっくりと飛行し、しかし凶悪な牙を持つミサイルをかわして猛スピードで退避するブーンドライブ。
背後から聞こえる轟音を聞いてブーンは閃いた。
 
( ^ω^)「あのミサイルを上手くMTにぶつけるってのはどうかお?」
『それが出来ればいいがミサイルは標的を追ってくる。
つまりまず俺たちがあのMT群に突っ込まなければならん。そこまでは装甲が保たないだろう…。
何にせよ将軍を撃破しておくに越した事はないな』

259 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:08:18.99 ID:z8MDhwJsO
示し合わせたようにブーンと兄者は同時にアクセルを踏む。
ブラクラは直進し、ブーンドライブは後ろから回り込もうと旋回する。
しかし妙だ。二
人の接近に気付いているはずの将軍に動きはない。
怪訝に思いながらビルを曲がった兄者が目にした物は、地面に放置された核ミサイルだった。将軍の姿はない。
慌ててレーダーを見ると、赤かった反応が黄になっている。つまり自分より高い場所にいる。
上を見上げれば浮遊しながらキャノンを向けている将軍。ブースターはチャージを始めていた。
 
『しまったァ!! 引き返せブーンッッ!!!』
(;^ω^)「えっなんで──」
『もう遅いニダ』
 
放たれる高速の弾はミサイルを破壊した。
一瞬で膨張する爆炎。
高速で後退するブラクラ。
ブーンドライブはミサイルが炸裂する直前でブレーキをかけ、退避していたので装甲の表面が爛れた程度で済んだ。
だが、ブラクラは…

261 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:10:03.02 ID:z8MDhwJsO
(;゚ω゚)「兄者! 兄者!! 聞こえるかお!!?」
『あ……ザザ……聞こ…るぞ…』
 
ひとまずの無事を確認してブーンはブラクラを探す。爆心地からそう離れていない場所に彼はいた。
その右腕は完全に消滅しており、全体的に融解している。そして何故か丸腰だった。
 
(;^ω^)「武器はどうしたんだお…?」
『ああ、全て捨てた…。少しでも速度を上げようと思ってな…。捨てていなかったらコアもただでは済まなかっただろう…』
(;^ω^)「と、とりあえずこれを使えお!」
 
ブーンはレーザーライフルとバックユニットをパージして言う。直撃は免れたとはいえブラクラの損傷は激しく、近距戦は難しいと踏んでの行動だった。
 
『だが…』
( ^ω^)「いいんだお! 僕はまだほとんど無傷だし、それとも兄者はミルナを倒すのを諦めたのかお?」
『………そうだったな。俺はヤツを討たねばならん。弟者の無念を晴らす為にも!!』 
ブーンの好意に甘え、それぞれの武器を装備する。
そこに完全に馬鹿にしきった将軍からの通信。
 
『まだ生きてたニダ? しぶとい連中ニダ。でも片方はもうスクラップ寸前ニダwwwwホルホルホルホルwwwwwwwwww』

262 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:11:06.04 ID:z8MDhwJsO
(#^ω^)「あの野郎…! フルボッコにしてやるお!!」
『俺もそうしたいが…見ろ…』
 
兄者の呻くような声の意味する所は、レーダーに映る間近に迫っている敵反応に由来していた。
そして再びCOMの声。
今まで悪魔さながらのを知らせを伝えてきたCOMが救いの言葉を発するとは二人は思わなかった。
COMは告げる。
 
《新たな反応を確認。ランカーACツインテールです》
 
確かにレーダーには反応が現れている。だがそこは先の地震で埋まった通路だ。
そちらに意識を向けると爆発音が断続的に響いているのが分かった。
それは徐々に大きくなっていき、そして…
 
『うおりゃあぁぁ!!!!』
 
まだ幼さが残る、気合いの入った声と共に壁が爆裂した。

263 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:12:52.41 ID:z8MDhwJsO
煙幕とも粉塵ともつかない濁った空気が舞う穴から飛び出してきたのは、黄色とピンクが見事に調和している機体。
見た目は可憐と例えてもいいかもしれない程鮮やかだが、肩にある大型ロケットとスラッグガン、極めつけは両手にグレネードライフルという禍々しい武装が全力でその言葉を否定していた。
 
『助けに来たですよー!』
( ^ω^)「ヘリカルかお…? それにしても埋まった所をぶち抜いてくるなんて無茶苦茶だお…」
『他に道はなかったですよ…ってこのACは援護対象じゃないですね』
( ^ω^)「それ、敵です」
『なんだお前は? 乱入してくるとはとんでもないやつニダ』
 
ツインテールが現れた場所はちょうど将軍の退避した場所だったらしく、ニダーは振り向いてキャノンを乱射する。
 
『それもこんなガキとは舐められたもんニダ』
『…チッ』
 
ひょいひょいと攻撃をかわしながらニダーの嘲りを聞いていたヘリカルの舌打ちを、ブーンは聞き逃さない。

267 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:14:25.31 ID:z8MDhwJsO
『これ、殺っちゃっていいですか?』
( ^ω^)「どうぞどうぞ」
『遠慮するな』
 
軽い安堵感を覚え、傍観を決め込んだ二人を現実に引き戻したのはショボン。
 
『増援か…ニダーが相手している間に君たちだけでも始末させてもらうよ』
 
ヘリカルの登場に注意を怠った二人はその声で危機的状況である事を再確認する。あと僅かでMT群は射程範囲に到達するまで来ていたのだ。
一斉射撃が始まれば命はない。ひとまず物陰に隠れて敵を減らす事に専念する兄者と先行しているバーボンを迎え撃つブーン。
ブラクラは陰からレーザーライフルだけを出して連射していた。
 
( ^ω^)「兄者…その状態でキツいかもしれないけどMTは任せたお。
ショボン! 来いお!!」
『君たちの訓練の話は聞いてるよ。相当厳しかったってね。その成果を見せてもらおうか』
 
バーボンから目を逸らさず、MTの邪魔が入らないように離れるブーンドライブとそれを追うバーボン。ショボンもブーンと戦う事に決めたようだ。

270 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:16:38.84 ID:z8MDhwJsO
バーボンの両肩から四発のミサイルが同時発射される。おまけに連動ミサイルまで装備していたので正面から挑むのは得策ではない。
ブーンは物陰でやり過ごし反撃の機会を伺う。
ビルのコンクリートが粉となって炎と共に舞い上がり、砕けたガラスが落下する様はブーンの目には戦場には似つかわしくない程美しく映った。
だがそんな物に見取れてなどいられない。
まずは状況の整理だ。
こちらがブレードのみに対してバーボンは完全武装。ミサイルの他にレーザーライフル─偶然にもブーンと同じ物だった─とブレードを装備している、とCOMが告げた。
火力を奪うか機動力を奪うか───命を奪うか。
ツンならどうするだろうと考えている内に、バーボンは障害物のないポイントへ向かおうと行動している。
 
(;^ω^)(よし…まずは機動力だお…!)
 
現在優っているのは機動力だけだ。バーボンは重量二脚の重装備である。上手く撹乱して回り込み、機動力を奪えば充分に勝機はある。
これがブーンの弾き出した最善の戦法だった。あわよくばその際に火力も奪えるかもしれない。

283 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:44:15.64 ID:z8MDhwJsO
決意を固め、バーボンが目的のポイントに着く前にブーンドライブは発進した。
 
『自分から姿を晒すなんて良い的だ。でも間違っちゃいない。逃げてばかりじゃ勝利はあり得ないからね』
 
世間話をするような口調とは裏腹に、紛れもない殺意と一瞬にレーザーを撃ってくる。
エネルギーの奔流を食らうまいと左右に飛び跳ねながら距離を縮める。
近くになれば被弾率は高くなる。だが自分がかわせるギリギリまで接近する必要があった。
 
『どうしたんだい? 攻撃してきなよ。…とは言っても無理な話か。
どんな事情があったか知らないけど君はブレードだけ、僕はフル装備。
だからと言って僕は手を抜かない。全火力を持って君を撃破する。卑怯とは言わせない』
 
レーザーの雨が一瞬止んだ。
これが意味する事は明白──武器チェンジだ。
それを悟ったブーンはオーバーブーストを起動した。
バーボンの全身から発射されたかと見紛う程、大量のミサイルが視界を埋める。
獲物を見つけたピラニアの如くブーンドライブに突き進む火薬を搭載した塊。

285 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:46:03.83 ID:z8MDhwJsO
…飢えた無機物は、結局獲物に喰らい付く事は叶わなかった。
ブーンドライブから勢い良く噴出する圧縮エネルギーが彼らの食事を許さなかったのだ。
ミサイルの大群を大回りで避けながら敵ACに接近する。
まんまと出し抜いたと、笑みを浮かべるブーンの瞳に映ったのは、ライフルを構え、ブレードからはレーザーの刀身を出現させながら待ち受けるバーボン。
 
(;゚ω゚)(罠──!)
『そう来ると思っていたよ。君の攻撃手段はそれしかないからね』
 
読まれていた。
全身の感覚が麻痺したような浮遊感がブーンを襲う。
だが今更引けはしない。やるしかないのだ。
歯を食いしばってそのまま突撃した。


286 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:47:14.40 ID:z8MDhwJsO
レーザーがコアを焼く。激しい衝撃がブーンを責め立てるが無視して突き進む。
距離からしてもう一撃はない。
ブーンドライブのブレードが翻った。回り込みは不可能なのでブースターは狙えない。
目標は脚部。
だが惜しくも死に活を得たブーンの斬撃は、あらかじめ用意されていたバーボンのブレードに弾かれる結果となった。
弾かれた時に生じる僅かな隙にバーボンはブレードをパージする。
そして格納してあったのか、新たに出現したハンドグレネード。
 
(;;゚ω゚)「!!!」
『最後は武装がものを言う。これが戦場だ。卑怯とは、言わせない』
 
コアに銃口が向けられ、引き金は絞られた。

289 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:49:04.32 ID:z8MDhwJsO
一方、避けていただけのツインテールは既に攻撃に転じていた。
右手からグレネードを、左手からもグレネードを接近して容赦なく乱射する様は悪鬼のようであり凶悪さに満ちていた。
空中からの砲火は爆撃機にも引けを取らない破壊力だ。
 
『ま、待てニダ! ちょっと距離を取らせt…』
『待たないですよー! ガキ扱いしたお前が悪いんですよー! 死にやがれですこのハゲ!!』
『いや…謝るニダ! 死にたくな…っ!』
《将軍の撃破を確認》
 
『顔に似合わずえげつない攻撃だな。総火力が知りたいものだ』
『やっぱり武器はグレネードが最高です! 弾薬費がすごいですけど…』
『それより片付けたならこっちを手伝ってくれ。もう、保ちそうにない…!』
『了解したですよ! てかもう向かってます。今から──あれは…』

293 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:50:52.05 ID:z8MDhwJsO
ヘリカルが見たのは、バーボンのハンドグレネードに右手を突っ込むブーンドライブだった。
瞬間、爆発。
銃口を塞がれたハンドグレネードはブーンドライブの手を道連れに炸裂する。
当然バーボンも無事では済まない。ブーンドライブと同様、彼の手も失われてしまった。
 
( `ω')「ここで! こんな所で死ぬ訳にはいかないんだおおおおお!!!!」
 
残った手からブレードが突き出される。それは迷いなくコアに向けられていた。
これは弾き返せないと引くバーボン。
だが速い方でない彼の機体は、深くはないにしろ浅くもない突きを食らってしまう。
それでも尚、すぐに反撃に転じたのはさすがと言う他ない。
ブーンドライブはコアへのゼロ距離射撃を受けたがそれでも倒れずにレーザーライフルの銃身を切断した。

294 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:52:39.09 ID:z8MDhwJsO
『強くなったね…ブーン…。
何が君をここまで突き動かすんだろうね…?』
( `ω')「ツンに! またツンに会う為だお!!
ここで死んだらもう会えないお!!」
『…ツンさんか。それなら──』
『ショボン。作戦タイムオーバーだ。
起動準備は整った。戻れ』
『…了解。またねブーン。今回は君の勝ちだ。
総員に告ぐ! このACに対して一斉射撃を行え! 僕に当たっても構わない!!』
 
ショボンは叫ぶと撤退を開始した。追撃を目論むブーンだったが、邪魔をしたのは無数の弾丸。
射程外なので在らぬ方向へ飛んで行く弾丸が多かったが弾幕としては効果を発揮する。
 
『急に攻撃目標がブーンになったぞ! 何があった!?』
( ^ω^)「逃げられるお! きっとミルナも…」
『なんだと…? そうはさせんぞ!
ヘリカル! MTを蹴散らしてくれ!!』
『合点承知です!』
 
ヘリカルはMTに対して砲撃を行う。爆炎がMTを飲み込んではいるがバーボンは確実に遠ざかっている。
 
( ^ω^)「追うお!」
『ああ…ここで逃がしはしないぞ!!』

299 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:55:08.92 ID:z8MDhwJsO
深追いは危険という考えは今の兄者にはない。
グレネードによって塵と化すMTを踏みにじりながら後を追う。残っている敵も破壊しながら…。
今まで冷静を保っていたが逃げられるという状況が兄者を修羅に変貌させた。虫けらのように敵を破壊し、蹂躙する事も厭わない。
ブーンもゾッとしない思いでブラクラを追いかける。

猛攻を潜り抜け、やがてこれまでの都市のそれより一回り程狭い空間に出た。
そこに仰々しくそびえる巨大建造物。いくつもの砲台が設置されている事から、要塞と言えるだろう。
朽ちている様子はないので最近になって作られた事は明らかだった。
 
( ^ω^)「これは一体…」

『ハーハッハッハインリッヒィィィィィィ!!』
( ^ω^)「お前は…高岡博士!」
『どうだい気に入ったかい? これが長い歳月を賭して作り上げた無敵要塞フォックスさ!』
( ^ω^)「こんなものを作って何する気だお!!」
『それはだねぇ…』

301 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:57:05.79 ID:z8MDhwJsO
『高岡。そこまでにしてもらおう。
しかしホライゾンと兄者…まさかここまで来れるとはな…』
『ミルナ!! 貴様どこにいる!!』
『貴様らが目にしている要塞の中だ。残念だが貴様らの相手はしていられない。
だが兄者よ。貴様にはチャンスをやろう』
『チャンスだと…?』
『貴様の戦い、見せてもらった。貴様の持つ残酷性、暴力性、そして目的を成し遂げようとする決意。
どれを取っても申し分ない。是非その力を我々の為に使ってもらいたい。
単刀直入に言う。我々の仲間になれ』
『な…誰が貴様なんぞに組するものかッ!! 貴様が生きている限り俺が心変わりする事はないぞッ!!』
『弟者の事を根に持っているのか? そんなくだらん過去は忘れろ。
もう一度言う。我々の仲間になれ』
『くどいッ! ミルナ…貴様は俺が始末するッ!!』
『…それが貴様の答えか。いいだろう。ならばこの世界と共に滅びるがいい』
 
大地が揺れる。先の地震よりも大きい。遥か頭上から光が差し込み、要塞を照らした。
何層にも重なったゲートが重低音の声で開放の喜びを歌うと地震はまた激しくなる。

303 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:58:28.68 ID:z8MDhwJsO
『わぁ! 地震です! 大きいですよー!』
 
MTの相手を任されたツインテールもようやく到着した。肩にスラッグガンがないのは途中で捨てたからだろう。
 
(;^ω^)「や、やばいお! どっかに避難しなきゃ…ってどこに逃げればいいんだお!?」
『落ち着くですよ! よく上を見るのです!』
(;^ω^)「うおおおお!!!! よ…要塞が…!!」
 
小さな都市ほどの大きさを持つ要塞が浮上している。岩盤を持ち上げ、更なる振動を地に伝えた。この地震は自然に起ったものではなかったらしい。
 
『クソッ! 待てミルナ! 待たんかァ!!』
(;^ω^)「おおおおSUGEEEEEEEEEEEEE!!!!!
それよりもやっばいおおおおお!!!!」
『だ、だから落ち着くでs』
(;^ω^)「どっか…どっかに穴ないかお!!? てかもう穴の中だお!!!!」
『馬鹿な…ここまで来て………クソォ!!! クソッタレェェェェェェ!!!!!!』

304 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 21:59:53.05 ID:z8MDhwJsO
『…かぃ』
(;^ω^)「ああああああああああ!!!!!!」
『黙らんかい腐れピザ玉袋ッッッ!!!! 上見ろっつてるんです!! 何もないでしょう!!!?』
(;^ω^)「………あ…ホントだお…」
 
ゲートが完全に開放されて天井は見当たらなかった。代わりに広がるのは空。依然地震は続いているがそれも弱くなってきている。
物が落下してくる危険性は皆無だ。
ヘリカルはグレネードライフルの銃口をブーンドライブの頭部に押しつけて怒鳴った。
 
『それなのにギャーギャー騒ぎよってからに!!! 男のくせに情けないですッ!!』
(;^ω^)「め…面目ないお…。これからはちゃんと周りを確認しますお…」
『分かればいいですよー』
 
あっさり銃を下げ、兄者にも通信を入れる。
 
『とりあえず帰還するですよ』
『………』
『もしもーし! 聞こえてるですかー?』
『………』
『おいこらワレェ…』
『………ああ。帰還しよう…』

305 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:01:48.47 ID:z8MDhwJsO
意気消沈した兄者はかすれた声で答える。
ブーンは今ではすっかり小さくなっている要塞を眺めていた、その時である。
 
『ホライゾン、貴様に良い事を教えてやろう。貴様はツンを探しているらしいな?
ツンは我々のすぐ近くいる…』
(;゚ω゚)「な──」
『会いたければ追って来い。尤も、会って後悔するかもしれんがな…』
(;゚ω゚)「何言ってるんだお!? 答えろお!!」
 
いくら問うても彼は答えない。通信はそれきりだった。
ブーンを支配するのは今は何も出来ない歯がゆさと、あと一歩でツンとの再会を果たせたかもしれないのに、それを手放してしまったという己の不甲斐なさだった…。

308 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:04:45.88 ID:z8MDhwJsO
(´・ω・`)「ミルナさん。何故わざわざブーンを挑発するような真似を?」
( ゚д゚)「あの男…以前とは比べ物にならぬ程成長していたな」
(´・ω・`)「それは、ブーンを認めたって事かな?」
( ゚д゚)「…くだらん。
それより私やお前の裏切りはVIPの知る所となった。もう戻れないが未練はないな?」
(´・ω・`)「ないね。こっちの方が面白そうだから来た訳だし」
( ゚д゚)「酔狂な男だな貴様も」
 
ミルナは身を翻して吐き捨てる。その話に割って入って来たのは高岡だ。

310 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:06:29.78 ID:z8MDhwJsO
从゚∀从「戦線布告はいつにするのさ? アタシはいつでもいいんだけどねぇ」
( ゚д゚)「特功兵器はどうなっている」
从゚∀从「もう地上を滅ぼせるだけの数はあるね。今も量産中さ」
从*゚∀从「それより想像してごらんよ! 地上が特功兵器でボロボロにされるんだよ。ゾクゾクしないかい!?」
 
その光景を思い浮かべたのか、彼女は身を抱いて体をくねらせる。
熱くなった下腹部を押さえて恍惚した表情でミルナにすり寄った。
ミルナは彼女を押し返して言う。
 
( ゚д゚)「狂人め…。ナインボールはどうだ」
从゚∀从「あの子はダメだね! 思い通りに動かせないよ。うるさいから今は寝んねさ。
起動中なのは本体から独立したのが三機と、ああ、こっちはプログラムを書き換えてあるよ。それとまだ未調整のが一機。
ま、その内本体のプログラムも再構築してみるさね。それが出来れば全機が思いのままだよ」

314 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:09:16.18 ID:z8MDhwJsO
( ゚д゚)「本体が未調整…つまりアレは使えないという事か」
从゚∀从「そうだね。それにしてもあんなデタラメなAC初めて見たよ。
一応復元、強化しておいたけど、アレがもしあの子に渡ったら手が付けられなくなるかもね。起動しないからどうでもいいんだけどさ」
(´・ω・`)「じゃあ僕にくださいよ」
从゚∀从「いいけど…どうするのさ?」
(´・ω・`)「決まってるじゃないですか。レイヴンがACを手に入れてやる事と言えば一つ」
从゚∀从「ハッハ! アンタあれに乗る気かい? 止めときな、アレは人が乗るようなモンじゃない。
圧力や衝撃から人体を守る機能…まあ平たく言えば生命維持装置だね。そんな代物備えてないよ。
全部動力源やら武装やらに使っちまってるからね。飛ぶだけでアンタはお釈迦だよ。だからこそあの性能が実現した訳さ。
だいたい起動は出来ないし、人が乗る空間なんか残っちゃいないよ」

316 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:11:14.66 ID:z8MDhwJsO
(´・ω・`)「それは残念」
从゚∀从「ま、生物の限界って事で諦めなよ。強化手術でもすればある程度は耐えられるかもしれないけどねぇ。やってみるかい?」
(´・ω・`)「結構」
从゚∀从「賢明な判断だよ。どちらにしても乗れない訳だしさ。でも特功兵器だけで充分だろう?」
( ゚д゚)「そうだな。まずは我々の力を見せつけておこうか」
从゚∀从「最初の投下場所はアタシが決めるよ。文句はないね?」
( ゚д゚)「問題ない。どこだ?」
从゚∀从「どこでもいいけど、そうだねぇ…とりあえずラウンジに決定!」
(´・ω・`)「世話になった企業を第一に潰すなんて、悪い御人だ」
从゚∀从「ハハ…? 世話になったと来たよ。本気でそう思っているのかい?」
(´・ω・`)「違うんですか?」从゚∀从「冗談じゃないよッ! アタシが好きであそこに──まあいいさ。とにかくこれでラウンジは終わりだねぇ! ハーハッハッハインリッヒィィィィ!!」
(´・ω・`)(変な笑い方だなぁ…)
 
高岡の狂笑を纏い、フォックスは空路を行く。
その笑いは破滅への序曲であり終焉へ向かう旋律。それらを知りながらも彼女は歩むのを止めない。
彼女は、狂っていた。


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