202 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 19:22:50.95 ID:z8MDhwJsO
( ´ω`)「ツン…どこにいるんだお…」
( ´_ゝ`)「…死体やACの残骸は見つかっていないが、VIPはツンを死亡したものとして捜索を打ち切るそうだぞ」
(#`ω')「ツンは死んでなんかないお! きっとどこかで生きてるお!!」
( ´_ゝ`)「ああ。俺もそう信じている。何か事情があって出て来れないだけさ」
 
ツンが失踪して早二ヶ月。
VIPは総力を挙げてツンを探し出そうとした。
だが、彼女の足取りを辿ろうにも足跡すら残っておらず、捜索の甲斐なく何の手掛かりも見つけられなかった。
そこでVIPはツンを死亡と断定、仮に生きていたとしても彼女の実力からしてAC一機だけではそれほど大きな脅威にらないと、捜査を打ち切ったのだ。
そのようなレイヴンの為にこれ以上無駄な労力や時間を割く訳にはいかないというのがVIPの本音なのだろう。

208 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 19:37:47.06 ID:z8MDhwJsO
なにしろ問題は山積みだ。

大本でさえ特殊ACの起動数は十機だった事もあり、他の施設で動いているのは極めて少数だと思い込んでいたVIP。
だが実際には各地に点在する施設では、その特殊ACが予想以上に起動していたのだ。
動いていなければ一人のレイヴンでも事足りるが、ゲートを潜った先には現役起動中の特殊ACが数機。
結果として殲滅に赴いた多くのレイヴンが命を落し、敵を解き放つ事になってしまったのだった。
焦ったVIPは各地に溢れ出した敵をどうにか破壊しようと躍起になった。
その度にまた戦死するレイヴン。
かつて飽和状態だったレイヴンも、日に日に少なくなってきている。
目の前にぶら下がっている一番の問題とは、レイヴンズVIP存続の危機なのだ。

209 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 19:39:18.98 ID:z8MDhwJsO
( ´_ゝ`)「…とにかく次の任務だ。ラウンジ西のセピア砂漠で無人機が確認されている。
半人前と言えないくらい強くなって帰ってきたツンを驚かせてやろうではないか」
( ^ω^)「…おk」
 
ブーンにただ待つ事は出来なかった。
ジッとしていると体が疼き、もどかしい気持ちが襲ってくる。動いていなければ嫌な考えが浮かんで不安に押し潰されそうになる。
これまでも気を紛らわせるように、がむしゃらに任務をこなし多数の特殊ACを破壊してきたブーンと兄者。
少なくとも戦っている間は忘れる事が出来るので悪い想像で気が滅入る事もない。
敵が現れたとなれば真っ先に依頼を受け、二人の撃破数は上位にまで登り詰めている。
VIPにとってもこの二人の力はなくてはならない存在となり、いつしかあらゆる企業から一目置かれるレイヴンにまで成長していたのだった。

210 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 19:41:00.27 ID:z8MDhwJsO
《無人機の反応を確認。砂嵐で視界は最悪です。気をつけて下さい。
しかし敵は何故このような砂漠にいるのでしょうか?》
( ^ω^)「機械の考えてる事なんか分からんお。
兄者、いつも通りいくお」
『了解した』
 
砂地を回りながらブラクラが打ち上げるのは垂直落下ミサイル。当然一次ロックで発射するような愚は犯さない。
この敵に限らず多くの敵の攻撃は、小さく跳び続けながら旋回していればかわし易い事を、度重なる戦闘で学んでいた。
小さく跳ねながら兄者は時折逆方向への旋回を織り交ぜながらミサイルとガトリングによる射撃を続ける。
装備が変わったのはブラクラだけではない。
ブーンドライブも以前とは異なっている。
ブレードは同じだがショットガンから名銃と名高い強力なレーザーライフルに、グレネードから妨害電波発生装置へと変わっていた。

212 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 19:43:12.05 ID:z8MDhwJsO
『いいぞ。敵は完全にブーンを見失った。止どめを』
 
無人機は機体反応を識別して攻撃を加える。つまりレーダーは目、反応を消せば攻撃されないのだ。
妨害電波を発生させたブーンドライブはもはや敵に見えていない。
後は近付いてコアを斬り裂けば終わりだ。
 
( ^ω^)「兄者、攻撃をミサイルだけにしてくれお。目印が欲しいお」
『了解した』
 
吹き荒れる砂の中、レーダーを頼りに接近すると炎が見え始めた。
そこに敵はいる。
ブーンはブースターを限界まで開放して一気に肉薄、背後からコアを刺し貫いて瞬時に離れる。
特功兵器に巻き込まれるのを防ぐ為だ。
 
《敵反応の消滅を確認しました。最初に無人機と戦った時とは見違えるようですね》
( ^ω^)「さすがに慣れたお。攻撃パターンも似たり寄ったりだし、それに…」
( ´ω`)(それに、ツンが僕たちを鍛えてくれたから…ツンがいたからこそ今の僕たちがあるんだお…ツン…)
《それに、なんですか?》
( ^ω^)「…なんでもないお。機体の回収を頼むお」

213 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 19:44:59.49 ID:z8MDhwJsO
ブーンは頭を振って考えないようにする。考えてしまうとどこまでも想像が悪い方向に一人歩きしてしまう。
そんなものは幻想だと信じているが、それによって精神をすり減らすのは避けたかった。
こんな時は体を動かすに限る。ブーンは兄者に通信を入れた。
 
( ^ω^)「兄者、輸送車が到着するまで対戦するお」
『またか…。先日はそれで死にかけたからな…』
 
当然ながら現在の武装も訓練用ではない。同じ実弾を使用するアリーナでは救護部隊が常に待機しているが、このような場所ではそれもあるはずがない。
危険度は雲泥の差があり下手をすれば命に関わるが、彼らはツンが失踪してからはこうした生死をかけた戦いを続けていた。
 
『まぁ、断ってもやるのだろう? …俺も強くならねばならないからな。いいぞ、相手をしよう。
ただしそのバックユニットは使わないでくれよ。視界が悪いからな、それを使われたら勝負にならん』
( ^ω^)「把握した。じゃあ始めるお!」

216 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 19:46:32.00 ID:z8MDhwJsO
開始の合図を伝えた瞬間、高速の弾丸が砂の壁を突き破りながら迫る。
速射性で劣るブーンは引き撃ちで距離を離しながら応戦する。
ブーンドライブが連発するエネルギーの塊はブラクラの脇を通り過ぎ、地面に着弾すると巨大な衝撃波を発生させた。
速射性が劣るのはガトリングと比較した場合である。威力を考えるとこの武器の発射間隔は恐ろしい。
さすが名銃と謳われるだけはあり、その名に恥じない性能を有していた。
兄者も被弾しまいと左右に跳びながら武器を切り換え、ミサイルを撃ち上げた。
かわせないものだけ迎撃レーザーで破壊しながら発砲を続けるブーン。
砂漠にミサイルの雨が降り注ぐ。

224 :220 ただのステルス:2007/02/07(水) 20:05:50.76 ID:z8MDhwJsO
( ^ω^)「…お? 兄者、ちょっと待tt…」
 
視界の端に何かを発見して注意が逸れた。僅かな攻撃と動きの停滞。
それを好機と見たのか、ブラクラが詰めて来る。迫りながらオーバーブーストを起動し、発動されると数秒で距離はゼロになった。
その数秒間でブーンは体勢を立て直しているものの、完全ではない。
超高速で疾駆するブラクラから逃げるのはこちらもオーバーブーストを発動しなければ難しい。だが発動には時間がかかる。
恐らくブレードでの斬撃が来ると予想したブーンもブレードからレーザーを放出してレーダーを見た。そこにあるのは既に真横にある機体反応。
 
(;^ω^)「兄者ストッ──」
(;^ω^)(左──!)
 
勘を頼りに腕を一振り。
ブレードとブレードのぶつかる、エネルギーの弾けた音が響く。だが上手く弾き返したのも束の間、次の一閃が来るのは簡単に想像出来た。
瞬時に引くと想像通りエネルギーの閃きがコアをかすめて通過した。
このままでは危ないと更に下がるブーンドライブだったがブラクラはピタリと着いて離れない。
またブレードが翻り、ブーンドライブを斬り刻もうと迫るがこれもなんとか弾く。

226 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 20:07:29.02 ID:z8MDhwJsO
僅かに持ち直したとはいえ崩れた体勢が想像以上に足を引っ張るのだ。ブーンは叫んだ。
 
(;^ω^)「ちょ、ストップ! ストッーーープッ!!」
 
聞こえていないのかブラクラは止まらない。何度も斬撃を弾かれて戦法を変えたのか、砂を突き抜けた弾丸がブーンドライブに突き刺さる。
ブーンは咄嗟に妨害電波を展開する。
 
『む! 汚いぞブーン。これではどこにいるか分からないではないか』
(#^ω^)「だからさっきからストップって言ってるお!」
『なに、本当か? レーダーに全神経を集中してたからな。そのせいか聞こえなかったぞ。何か不具合か?』
 
まだ回転しているガトリングを下げ、ブラクラは停止する。
 
『コアにでも当たったか? それとも計器の故障か?』
(;^ω^)「確かにコアはちょっと斬られたけど…」
『むぅ。相手が見えないのはキツいな。危うく殺してしまう所だったか』
( ^ω^)「それはどうでもいいんだお。いや、よくはないけどさっきいた場所で何か…」
『何かとは?』
( ^ω^)「知らんお。なんか地下への扉みたいだったお」
『こんな砂漠に? ふむ…一応見てみるか』

228 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 20:11:26.18 ID:z8MDhwJsO
ブーンが最初に斬り付けられた所まで戻る二人。おおよその場所は覚えているが、なかなか見つからずに二人は手分けして探す。
やや難航したが、懸命の捜索によってそれは発見された。
砂地にある人工物は今も吹き荒れる砂嵐の影響で半分ほど隠れている。あと少し時間がかかったならば完全に隠れてしまっていただろう。
 
『ふむ…確かに扉みたいだな』
( ^ω^)「きっとミサイルで砂が吹っ飛ばされて出てきたんだお。オペレーター、これについて何か情報はあるかお?」
《セピア砂漠にそのような施設があるという報告はありません。恐らく、未探査区画でしょう》
( ^ω^)「じゃあ調べてみるかお?」
《そうですね。直接的な依頼はありませんが未探査区画となれば話は別です。報酬も用意されるでしょう。
広範囲の調査と無人機の出現が予想されます。援軍を要請しましょうか?》
( ^ω^)「う〜ん…一応頼むお」
《了解しました。もうすぐ回収班が到着するので軽い修理と弾薬を補給して下さい》
( ^ω^)「把握したお。
兄者、この中を調べる事になったお」
『うむ。こっちもオペレーターから聞いた。未探査区画らしいな。中には無人機が蠢いているかもしれん。気は抜くな』

229 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 20:13:42.79 ID:z8MDhwJsO
やがて到着した輸送車と補給車が列を成して到着する。
二人は補給車から補給を受け─普通は回収班に補給車が同行するのは希だが、ブーンたちは毎回任務後に実戦さながらの訓練をしているので、彼らにとっては見慣れた光景である─未探査区画の入口に舞い戻った。
 
『どうやって開けるんだ?』
( ^ω^)「ロックされてるし…ぶっ壊すお!」
 
ブーンの過激は発言と同時に入口へライフルを向ける。強力なエネルギーの弾丸を続けて撃ち込まれた扉は、ものの数発で爆砕した。
 
『深そうだな…。とにかく降りてみるか』
 
ブラクラが先陣を切って縦穴に飛び込む。ブーンもそれを追った。
 
『かなり深いな。どこまで落ちるんだ?』
( ^ω^)「こんな地下に施設を作るなんて…まさか地底人?」
『なにを馬鹿な…お、底が見えたぞ』
 
機体の落下速度を殺してから着地し、周りを見渡す二人。
そこには広大なドーム状の空間が広がり、施設と言うより街と言った方が正しい。それほどの広さがそこにはあった。

230 :愛のVIP戦士\:2007/02/07(水) 20:15:34.06 ID:z8MDhwJsO
『なんと…こんなに広い施設が地下にあるとは…』
( ^ω^)「地底人説再浮上」
『確かにここは集落みたいだな…。一体誰がこんな地下に…』
( ^ω^)「やっぱ地底じn」
『ちょっと黙っていてくれブーン。オペレーター、聞こえるか?
………通信不可能領域か』
( ^ω^)「だから地t」
『そうだ、もしかするとここは旧世代の人々が暮らしていた居住区かもしれんぞ。
ラウンジが旧世代の施設を発掘したのもこの辺りだし、そこと繋がっているかもしれん』
( ^ω^)「t」
『とりあえず奥に進んでみよう。任務は探索だからな』
 
冷静に状況を把握しようと思考を巡らせる兄者とまだ何か言っているブーンは、まずはこのドームをくまなく調べた。
特に変わったものはなかったが、ドームの両端に奥へと繋がる通路がある事は発見した。
どうやら複合都市らしい。
かなり老朽化が進んでおり今にも崩れそうだ。それに追い討ちをかけるように、同じような都市を三つ越えて次の区画に続く通路に入った所で地面が揺れ動く。
地震だ。

232 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 20:18:02.51 ID:z8MDhwJsO
(;^ω^)「うおお…!? ……結構デカかったお…」
『これは早めに済ませて帰還した方がいいな…』 
( ^ω^)「そうするお。こんな所で生き埋めには──」
『ッ!? ブーン! 早くこっちに来るんだ! 崩れるぞッ!!』
 
先行していた兄者が叫ぶ。天井を支える壁にヒビが入り、亀裂が大きくなるのを目にしたのだ。
亀裂は次第に壁から天井を走り、瓦礫の落下が始まる。
 
(;^ω^)「ぬあああああ!!!! 死ぬおおおおおお!!!!!」
 
必死で通路を走るブーンドライブを落下物が襲う。いくつもの巨大な瓦礫が通路を塞ごうと立ちはだかったが、レーザーで粉砕して突破した。
無事兄者の下へ辿り着いた頃には通路は完全に崩落してしまった。
 
『間一髪だったな』
(;^ω^)「地震とは想定GUYだお…」
『しかし無事で良かったがもう戻れんぞ。進むしか道はないな…』
 
突然の災難を経験した二人の口からは自然とため息が漏れる。その吐息をかき消すように二人のCOMが何かの反応を感知した。
 
《ACです。ランカーACバーボンを確認。
ロビー重工所属、WKNI-DEATHを確認。ロビー重工所属、将軍を確認。
無所属ACホラーリングを確認》

240 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 20:40:17.58 ID:z8MDhwJsO
(;^ω^)「えっ!? なんでこんなにACが…!?」
『ただの任務にしては多過ぎるな。俺たちの知らない所で何かが起きているようだな…』
 
二人のレーダーに二つの機影が映った。その内の一つは急速接近しており、すぐにでも二人の前に現れる。
第一に姿を見せたのは白のAC。ツンデレビウムの輝くような純白ではなく薄汚れた白の機体だった。銃器は装備していないらしい。
 
『ここで…死んで下さい…』
 
世界の全てを恨んでいるのかと思わせる、かすれた不気味な声で囁いたのは白のACに乗っている者だろう。判別はしにくいが女のようだ。
彼女は誰よりも早く二人の前に姿を現し一切のスピードを緩めずに肉薄する。武装からも接近戦を望んでいると見える。
 
『壁に…張り付けます…藁人形のように…』


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