317 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:13:15.58 ID:z8MDhwJsO
激震が走った。
上位ランカーであるミルナとショボンの裏切り。その彼らが高岡と繋っていた事実。
そして巨大空中要塞フォックスの脅威。帰還したブーンたちの持ち帰った映像データはレイヴンズVIPにかつてない衝撃を与える。
それに追い討ちをかけるようにその翌日、ラウンジ・ファウンデーション本社とそれに属する都市が壊滅的な打撃を受ける。建造物は例外もなく倒壊し、生存者はただの一人もいなかった。
衛星からの映像で、それを成したのが特功兵器である事が判明すると、レイヴンズVIPは攻撃される前に打って出る事を決定し、力のあるレイヴンを急遽召集した。

321 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:15:31.35 ID:z8MDhwJsO
( ´∀`)「今日みんなに集まってもらったのは他でもない、世界的危機を打破してもらう為モナ。
もう知ってるとは思うけど特功兵器によってラウンジは壊滅したモナ…」
('A`)「ニュースで見たよ。さすがに特功兵器の事までは報道されなかったがとんでもない兵器だな、ありゃ。想像を遥かに超えてるぜ…」
( ´∀`)「聞くだけと現実に起こったのを見るのでは全然違うものモナ。
これで分かったと思うけど、特功兵器の威力は凄まじいものなんだモナ。
君たちの任務は空中要塞フォックスに向かって撃墜してもらう事モナ」
(,,゚д゚)「そう来ると思ったぜゴルァ。でもフォックスの場所は分かってるのか?」
( ´∀`)「今朝、ハインリッヒ高岡博士からメールが届いたモナ。場所はセピア砂漠近海に属するメンヘル孤島上空モナ。
最後の足掻きを見せろと言ってるモナ」
川 ゚ -゚)「最後の足掻き、か…。その足掻きで没落していった組織もある事を教えてやろう。私たちレイヴンを敵に回すとどうなるかをな」

322 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:17:30.17 ID:z8MDhwJsO
( ´∀`)「向こうにはミルナ君もいるモナ。舐めてかからない方がいいモナ」
('A`)「ショボンもいるらしいな。知り合いを殺したかねーけど、敵となれば話は別だ。
少なくとも俺はそんな愚かな真似はしない。敵ならどんな相手であろうと全力で葬るぜ」
( ´∀`)「頼んだモナ。…VIPを、世界を救ってくれモナ」
('A`)「どのみち何とかしないと俺らも終わりだからな。やられる前にやるのが最大の防衛法だ。
そういえばブーンと兄者はどうしたんだよ? アイツらもかなりの戦力になると思うが…まさかこの作戦に組み込んでないのか?」
( ´∀`)「帰ってからずっと戦いっぱなしだったモナ。召集はかけたけどたぶん寝てるんじゃないモナ?」
*(‘‘)*「あの二人、あれからずっと対戦してたですか?
僕も付き合わされそうになったですけど、断ってよかったです」

324 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:18:53.53 ID:z8MDhwJsO
('A`)「断るなよ…。お前やたらと攻撃力だけはあるけどその他はイマイチじゃないか。
将軍を倒したからって有頂天にならなるなよな。たぶん動きはブーンたちの方が上だぜ?」
*(‘‘)*「だったらお兄ちゃんと訓練したいですよ」
('A`)「俺にはモララーがいるしなぁ…。まァこの作戦に生きて帰れたら相手してやるよ」
*(‘‘)*「約束ですよ!」
 
嬉しそうに瞳を輝かせるヘリカルの頭を適当に相槌を打ちながら撫で、ドクオは本題に戻る。
 
('A`)「そんで敵勢力はやっぱあの無人機か?」
( ´∀`)「そこまでは分からないモナ。でもブーンたちが持ち帰った映像から、ロビー重工が一枚噛んでいる疑いがあるモナ」
*(‘‘)*「そういえば将軍はロビー所属ですし、あそこにいたMTも全部ロビー製だったです」
 
モナーはヘリカルに向かって頷いてから続ける。
 
( ´∀`)「ロビー重工に使者を向かわせたんだけど、本社はもぬけの殻だったモナ。そこで疑いは確信に変わったモナ。恐らく全員フォックスに…」

327 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:21:16.52 ID:z8MDhwJsO
('A`)「あの広さなら数万人は収容出来るしな。
しかし本社の部隊か…。となると総数は100や200じゃねーぞ。敵はロビーのMTとAC、それと運が悪ければ無人機か…。
支援は期待出来るか?」
( ´∀`)「もちろんモナ。でもその為にはまず君たちが乗り込んで砲台を破壊してくれないと無理モナ。
安全を確認し次第、こっちもMTを投下するモナ」
/ ,' 3「つまりMTが出て来る前に砲台を破壊すればいいんじゃな?」
('A`)「あのデカさだと外面にある砲台以外にも、かなりの砲台が格納されてるだろうな。MTもすぐに出て来るだろうしよ…。
最初からシビアな戦いになるな…」
 
眉間にシワを寄せて唸るドクオ。迅速に行わなければMTの集中砲火を浴びてしまうのだ。
しかし最も危惧すべきは、事がうまく運んだ時に高岡が特功兵器を起動してしまうかもしれない事にある。
そうなる前に生産装置を破壊しなければならず、やはり時間との勝負である事には変わりないとモナーは伝えた。
 
( ´∀`)「と、ここまでが大まかな作戦内容モナ。詳しくはオペレーターから通達があるからそこで確認してくれモナ。
最後に一つ…ジョルジュ!」

333 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:24:43.81 ID:z8MDhwJsO
皆の視線がジョルジュに注がれた。
 
( ゚∀゚)「んあ?」
 
モナーの話などそっちのけで渡辺の胸を揉みしだいていたジョルジュは、間抜けな声で返事をする。
 
( ´∀`)「君はいつもいつも…不真面目というか無関心というか…その前に堂々とセクハラを働くなモナ」
( ゚∀゚)「この神聖な行為がセクハラとは俺は思わないぜ! それにおっぱいを揉むのに理由がいるかい?」
(;´∀`)「君は本当に…てか渡辺さんもちょっとは嫌がれモナ」
从'ー'从「でも、これはレイヴンは通らなければならない道だって教官が…」
 
沈黙。
皆ドン引きしている中、ヘラヘラ笑うジョルジュがやけに浮いている。
 
(,;゚д゚)「…なんつー嘘教えてんだゴルァ…」
(;'A`)「やっていい事と悪い事があるだろ…」
川 ゚ -゚)「本来ならツンの役目だが彼女はもういない。私がやろう」
*(‘‘)*「僕も手伝うです。渡辺お姉ちゃんはちょっと出てて下さいです」
(;゚∀゚)「ちょ、お前ら来んな! 誰か助け…」
 
クーとヘリカル、そしてジョルジュを残し、他の者はポカンとしている渡辺を引きずって退室する。まるで打ち合わせたような手際の良さだった。
間もなくして、一人の男の悲鳴が上がった。

334 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:27:29.22 ID:z8MDhwJsO
《…ヴン…レイヴン! お願いですから起きて下さいレイヴン!!》
( -ω-)「うー…ん…あと…五時間だけ…」
《五時間も待ってられません!》
 
オペレーターの必死の訴えがそろそろ三桁に迫ろうとした頃に、ブーンはようやく目を覚ます。
ACの中で眠ってしまったらしい。前にはブラクラが仁王立ちしている。
 
( ^ω^)「おはようございますお」
《おはようじゃありませんよぉ…》
( ^ω^)「…お? なんで泣いてるんだお?」
《貴方が全然起きないからです!! もうすぐ作戦が始まるんですよ!!!》
(;^ω^)「ナ、ナンダッテー! どうして起こしてくれなかったんだお!?」
《だから…起こしてたじゃないですかぁ…》
 
おいおいと泣きながら呟く声からは疲労感が滲み出ている。今すぐにでも今度は自分が眠りたい心境だろう。
しかしそこはプロのオペレーター。ブーンが完全に覚醒したのを確認するとめげずに指示を出す。
 
《まずは兄者さんを起こして下さい。先ほど…いえ、随分前から彼のオペレーターが呼び掛けていますがまるで起きる気配がありません。
恐らく貴方が呼んでも無駄でしょう。叩き起こして下さい》

337 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:28:52.81 ID:z8MDhwJsO
(;^ω^)「叩き起こすって…まあ死にはしないお、たぶん」
 
そう高を括り、フルパワーでブラクラを押し倒す。派手な音と共にブラクラは地面に倒れ込んだ。
 
『ぬぁ!? なんだ! 敵襲か!!?』
( ^ω^)「兄者おはいお」
『なんだブーンか。どうしてこんな真似をする』
( ^ω^)「兄者が起きないからだお。もうすぐ作戦が始まるらしいお」
『ナ、ナンダッテー! 何故起こしてくれなかったんだ!?』
(;^ω^)「僕と同じ事言うなお…」
 
二人とも、オペレーターのため息が耳に残ったが無視し、装備の切替えの為に一度ACを格納した。
 
 
( ^ω^)「さて…この間にやる事を忘れてないかお?」
( ´_ゝ`)「無論だ。行くぞッ!」
 
二人は気合いを入れると勇んでトイレに向かうのであった。

339 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:30:13.44 ID:z8MDhwJsO
『投下ポイントに到着。ここからは輸送機です、レイヴン。幸運を』
( ^ω^)「こちらブーンドライブ、待たせたお」
『こちらブラクラ。遅れてすまない』
 
輸送ヘリから二機のACが投下された。下には断崖絶壁とその先に広がる海。海岸沿いに、多数のACが集結していた。
これだけ遅れれば文句の一つも言いたくなるものだが、緊張しているのか闘気を高めているのか…或いはその両方か。口を開く者はいなかった。
赤く大きな太陽が沈む穏やかな光景は、嵐の前兆を表しているのかもしれない。
ブーンと兄者が到着して間もなく各オペレーターから通信が入る。出撃前の最終確認である。

341 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:31:36.33 ID:z8MDhwJsO
( ^ω^)「ブーンドライブ、いつでも行けるお」
『こちらブラクラ、こっちも問題ない』
『こちらメランコリックハート。モラリストも準備は出来ている』
『トリプルゼータじゃ。いつでも行けるぞぃ』
『こっちは護流亜だ。リディキュルフィンガーもOKだ。腕が鳴るぜゴルァ!』
『こちらスナイパークール。カマキリオン共に問題なく行けるぞ』
『BOINだ! ナチュラルフールも大丈夫だぜ』
『ツインテールです。アルエ・アルェも大丈夫ですよー!』

343 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:32:43.58 ID:z8MDhwJsO
《全員の準備が整ったみたいです》
( ^ω^)「アイツらの野望を必ず阻止するお! そしてツンに…!」
《…貴方はいつもツンさんの事ばかりですね…》
( ^ω^)「そうだお。僕をここまで強くしてくれたのはツンだお」
《こんな時に立ち入った質問ですが…貴方はツンさんを──》
( ^ω^)「え? なんだお?」
《…いえ、なんでもありません。必ず、生きて帰って下さい、レイヴン》
 
それぞれが輸送機に乗り込む。ブーンと兄者は例外だが、各々の教官と生徒は一つの輸送機を利用する。
全員が、もう二度と目にする事が出来なくなるかもしれない外を、ハッチが閉じるまで見つめていた。

347 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:33:36.73 ID:z8MDhwJsO
《これよりハインリッヒ高岡博士抹殺および空中要塞フォックス撃墜作戦を開始します!》
 
飛び立つ輸送機。
…残されたAC。
 
『あれれー? 私の輸送機がないよー?』
《ナチュラルフールの離脱を確認》
(;^ω^)「ちょwwwwwwジョルジュ! 渡辺さん置いてくなお!!」
『おう! 忘れてたぜ!』
《《《『『『忘れんなァ!!!!!』』』》》》

350 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:35:16.30 ID:z8MDhwJsO
この場にいる全レイヴンとオペレーターが怒鳴った。皆、口々に説教を始めたのでBOIN内は騒音で溢れ返る。
だが彼は本当に忘れていた訳ではない。
この数ヶ月でジョルジュは渡辺の実力をよく知っていた。この作戦はかつてない程死亡率が高いと予想される事も知っている。
それらを照らし合わせ、彼女では命を落とすだろう、そればかりか皆の足を引っぱるかもしれないと、そう考えた末の行動だったのだ。
 
( ゚∀゚)「まーまー落ち着けって! アイツの分まで俺がやってやるからよっ!
オペレーター、アイツを回収してやってくれ!」
《はぁ〜…了解…。アンタみたいなレイヴンは初めてよ…》
( ゚∀゚)(貴重な美巨乳が損失したらエラい事だからな! あれは後世に残すべきだ、うん!)
 
説教を軽く聞き流しつつ、ジョルジュは帰還後の己の行為に思いを馳せた。

354 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:38:10.20 ID:z8MDhwJsO
空気を切り裂いて飛行する輸送機のはるか下にはメンヘル孤島。
だが厚い雲が邪魔になりそれを見つける事は出来ない。
太陽は海へと姿を隠した。
闇を背景に浮かぶ要塞は、不敵な威圧感で彼らを出迎える。
 
《目標を確認! ハッチが開いてからは自分で飛び移って下さい!》
( ^ω^)「ここにツンがいるはずだお…」
『なに…? 何故ツンがいると?』
( ^ω^)「ミルナが言ったんだお…。その時の音声だけでは敵に回った確証は持てないって事でモナーは伏せといてくれたけど…」
『そうか…。ブーンはツンを探すつもりだな?
だが俺の第一目的はミルナだ。お前には手を貸せんかもしれん』
( ^ω^)「分かってるお。元々砲台を破壊してからは単独で行動する事になってるし、それぞれの目的を果たすお」
『ああ、ブーンはツンを、俺は必ずミルナを…!』
 
かくして、レイヴンたちは闇夜へ羽ばたいた。
輸送機操縦士の腕がいいのか、被弾はしていないが砲撃は始まっている。

356 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:39:30.16 ID:z8MDhwJsO
外に出た時、ブーンは初めてフォックスの全貌を見た。
高く聳える巨塔を取り囲むように施設と思われる様々な建造物が建ち並び、いずれも砲台を備えている。
以前は正面からフォックスを見たブーンだったが上から見るとその巨大さに圧倒されそうになる。今は禍々しい砲撃を行っているので尚更だ。
バルカン砲、グレネード、ミサイル、レーザー。
多種多様の砲火を掻い潜り、ブーンドライブはフォックスに降り立った。続いて他のレイヴンも。
だが止まってはいられない。砲身が彼らに向けられては瞬時に掃射してくる。各自散開し、砲台を破壊せんと攻撃を開始した。

359 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:41:17.97 ID:z8MDhwJsO
《援護部隊は既に向かっています。一刻も早く砲台の破壊を!》
 
言われるまでもなくブーンはACと同等の巨躯を誇るバルカン砲に肉薄する。
一台に二門の砲台が三組立ち並び、迫る敵を鉄屑に変えようと唸りを上げている。
その丈に見合った直径を持つ弾丸の秘める破壊力を想像するのはたやすく、続け様に浴びればACであろうと簡単に再起不能に陥るだろう。
ブーンドライブは回避行動を取りつつレーザーを叩き込み、ブレードの届く範囲まで来た頃には残り一台。
回り込んだブーンドライブを追うように砲台は回転するが再び目標を捉える事はなかった。
 
《後ろに反応が!》
(;゚ω゚)「!!」
 
無傷で三台沈めたブーンが一息つく間もなく後ろの地面が割れ、新たな砲台が三台出現する。

360 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:42:48.28 ID:z8MDhwJsO
彼が気付いた時にはブーンドライブに照準を合わせている。一秒も経たない内に砲撃が始まるのは必須だ。
種はグレネードで距離は近い。
が、それは上からの多弾頭ミサイルの爆撃によって大破する。
ミサイルの主はメランコリックハートであり、ブーンが上を向いた時には別の目標に攻撃していた。
 
(;^ω^)「あ…助かったお。やっぱドクオは──」
『うるせぇ! 話しかけんなッ!!』
 
一括した彼は一台になった砲台に急速接近して斬り裂く。そのままブレーキをかけずに別の砲台へと飛んで行った。
 
《少し、ひやっとしましたね》
(;^ω^)「なんか今日のドクオ怖いお…」
《任務中の彼はいつもあのような態度だと聞きます。僚機が危なければ助け、しかし自分は誰の助けも求めない。それが彼の強さの所以でしょうか》
(;^ω^)「トップランカーの名は伊達じゃないお」
《さ、貴方も負けないように頑張って下さい。間もなく、援護部隊が作戦領域に到達します》

361 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:44:15.45 ID:z8MDhwJsO
周りを見渡せば少なくともブーンの周囲にあった砲台はあらかた破壊されている。
しかし驚く事ではない。
そもそもVIPの最大戦力が集結しているのだ。これくらいやって退けずに何が上位ランカーか。
まだ一割程度しか破壊していないとはいえ、輸送機が無事に援護部隊を投下できるくらいまで駆逐されるのは時間の問題だった。
ブーンも再び戦線に復帰しては破壊活動を繰り返した。甲板部の砲台はほぼ沈黙し、建造物が建ち並ぶ区画に移動するブーンドライブ。
着々と数は減ってきている。調子に乗ったブーンは目に入る反応を片っ端から撃って回った。
 
だが調子に乗るのは良くない。
施設の陰から飛び出す一つの機影。すかさずブーンはレーザーを撃ち込んだ。
 
『グワッ! テメェ何しやがんだゴルァ!!』
 
護流亜だ。
腕武器であるキャノンをブーンドライブに向けて怒鳴るギコ。

364 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:46:01.56 ID:z8MDhwJsO
(;^ω^)「す、すまんお! 誤爆だお…MTかと…」
『MTなんざまだ出てねぇだろうがゴルァ!!』
(;^ω^)「以後気をつけるお…」
『ったく…しかしまるで市街戦だなコリャ。空にいるのに妙な気分だぜ…』
 
ギコだけでなく皆がそう感じているだろう。
施設といえども形状は様々で、都市で見られるビル状の物もある。整備された道路まで通っているのだ。
何も知らぬ者がこの地に立たされた場合、まさか雲より高い場所にいるとは思うまい。
 
《敵反──》
 
再び地面が割れて砲台の出現をオペレーターが伝えようとした時、護流亜のキャノンが火を吹く。
今度はブーンも遅れを取るような愚は犯さず、周囲に現れた砲台にレーザーを叩き込んだ。
どうやら各地に大量の砲台が生え出たようで、爆発音が四方八方から轟く。他のレイヴンも襲われているようだ。
 
『プ…ギャ…ふ、不覚…撤退す──!』
《識別信号消滅。リディキュルフィンガーの撃破を確認》
『チッ! プギャーの野郎気ィ抜きやがったな…!』
 
ギコが舌打ちした時、爆発が起きた。それも何度も。次いで倒壊する施設。
障害物が無くなった先に立つのは鮮やかな色合いのAC。

366 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:47:43.84 ID:z8MDhwJsO
『あれは…ヘリカルの奴だな』
(;^ω^)「過激だお…」
『だが悪くないぞ。砲台に一発一発撃ってたら弾が保たねぇ。
ここは一つ見習うとするか!』
 
ブーンドライブには合わない戦法である。
ブーンは巻き込まれまいとこの場を立ち去る。別の標的を探していると、
 
《敵…! 反応多数! 敵部隊が出て来たようです!》
(;^ω^)「こっちの増援は!?」
《安心して下さい。現在投下中です! ここは一旦引いて!!》
 
それは各レイヴンにも伝わったようで、撤退するACが何機か見えた。
遅れれば一斉射撃を受けてしまう。ブーンも元いた甲板へと後退する。
 
《MTが交戦している間に補給を行います。機体を補給機にセットして下さい》
 
補給機の中では作業ロボが簡単な修理を行う。同時に至る所に接続されたコードからエネルギーが送られた。

368 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:50:03.73 ID:z8MDhwJsO
《弾薬 エネルギーチェック…………………オールクリア 補給完了》
 
COMが全快を告げる。
残すは装甲の取り換えだけだ。
一時の休息を全て体力の回復に回そうとブーンは目を閉じた。
瞼に浮かぶ教官の顔。
百の厳しさの中にあった一の優しさが彼を焦らす。いても立ってもいられないとはこの事であると、ブーンは感じた。
思い出とは美化されるものだ。しかし仮に彼女との美しい思い出が偽りだと知っても、ブーンの決意は揺るがないだろう。そこにあるのは尊敬、あるいは崇拝めいたものかもしれない。
彼女が、ブーンの全てだったのだ。
 
《レイヴン、補給が完了しました。現在MT部隊が交戦中です。敵部隊の出現ポイントから内部への侵入が可能なはずです。近い順に1km、3km、6km、8km先にあります。任意の場所から侵入して下さい》
( ^ω^)「………了解したお!」

385 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 22:59:57.29 ID:z8MDhwJsO
補給機を出るとそこはまさに修羅場。
湧いて出たMT群とMT群の激突。
彼らが放つ光は闇を退け、夜という事を忘れさせる程に明るく要塞を照らす。
灼熱の閃光の中をブーンドライブは突き進んだ。弾丸の雨に晒されぬよう、オーバーブーストで一気に空を駆る。
最初の侵入経路を空から眺めると、未だMTが溢れ出している。
ここから侵入すれば被害は免れない。先の3km地点を目指す。
見えた。
しかしやはりそこも敵で溢れていたが、一機のACが次々とMTを破壊していた。
最初のポイントに比べればかなり敵機は少ない。共に殲滅し、ここから侵入するのが得策とブーンは判断した。
 
( ^ω^)「こちらブーンドライブ、援護するお!!」

『アルエ・アルェ了解。助かったZE』
 
地表に降りるのはまずい。
エネルギー残量は僅かだが空中で戦うしかない。ブーンは武装をミサイルに切り換えた。
アルエ・アルェはフロートタイプのACで、こちらも空中から砲撃している。
なかなかに射撃精度は良く、吸い込まれるように弾丸はMTへと食らい付いた。ブーンドライブからのミサイルも確実に敵を破壊する。
やがて、敵数が少なくなった事を確認するとアルエ・アルェが先陣を切って入口へ突入する。

386 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:00:44.25 ID:z8MDhwJsO
ブーンも攻撃しつつ、内部への侵入を果たす。
 
『どうやら俺とお前が一番乗りのようだNA』
(;^ω^)「エネルギーがやばかったお」
『まだ先に敵はいるはずDA.
ひとつ、派手にやってやろうZE』
 
通路は真っ直ぐ伸びており、早々に分岐点が見える。
手分けして進んだ方が良いと、二人は別れた。

389 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:02:42.50 ID:z8MDhwJsO
『こ…コイツは…! レイヴン! 気をつけRO! ここには──』
(;゚ω゚)「どうしたお!?」
《この反応…! 間違いありません! ナインボールです!!》
(;゚ω゚)「な…なんでこんな所に!?」
『ウァーッ!! ここで終わりKAー!』
《識別信号消滅、アルエ・アルェの撃破を確認!》
(;゚ω゚)「………」
《ちょっと待って下さい…………え? どういう事!?》
(;゚ω゚)「なんだお…?」
《異常事態です。外にもナインボールが出現しました。それも、二機…》
(;゚ω゚)「は?????」
 
言っている意味が分からずにブーンは混乱した。
 
《言葉通りの意味です。現在調査中───モナー氏からの通信です!》

393 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:04:30.42 ID:z8MDhwJsO
『まさかこんな所にナインボールがいるとは思わなかったモナ。
詳しい事は調査中だったから伝えなかったけど、VIPはあのACを構成しているパーツを手掛かりに時代を逆上って調べてみたモナ。
すると驚くべき事実が分かったモナ』
 
モナーは語り出す。
あの真紅のAC、ナインボールは人類が地下に移り住んだ頃に『レイヴンズ=ネスト』という組織─今のVIPにあたる組織である─が存在した時代まで逆上る。
当時にもアリーナはあり、多くのレイヴンが己の実力を競い合った。そのアリーナで頂点に立った者だけに与えられるナインブレイカーの称号を持つ、全てのレイヴンの憧れであり、また恐怖の存在だった最強のレイヴン“ハスラーワン”の操るACがナインボールだったという。
彼は永きに渡ってトップの座に君臨し続け、ある日、一時的にレイヴンズ=ネストが全機能を停止した時を境に唐突に姿を消した。
VIPはこれらを一月前にはつき止めたのだが、そのナインボールが現れたなどと言っても誰も信じる訳がなく
自身も半信半疑だったのでこれまで明かされなかったが、現場に再びナインボールが現れた事は事実である。
敵の情報は多い方がいいので、この際伝えるとモナーは言った。

399 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 23:06:52.61 ID:z8MDhwJsO
『これだけじゃ役に立たない情報かもしれないけど…何とか切り抜けてくれモナ…!』
 
(;^ω^)「あのACが凄いってのは分かったけど…何でそんな昔のレイヴンが生きてるんだお…? それにどうして何機も…」
《私も驚きましたが、これではっきりしました。恐らく別人ではないでしょうか》
( ^ω^)「でもVIPで戦った時は旧式なのに凄い強さだったお。そんなレイヴンがいるなんて聞いた事ないお」
《こちらでも未確認──新たな情報です。ナインボールが…え? し、失礼しました。
ナインボールが敵味方関係なく無差別に攻撃しているとの連絡です》
(;^ω^)「マジ意味分からんお…。僕はどうすれば…」
《貴方が向かった所でどうにもなりませし、それより先に進んで下さい。いつ特功兵器が使われるか分かりません》
 
言ってみたものの、実の所ブーンに戻るつもりはない。彼には目的があるのだ。
ツンを探し出すという、重大な目的が。
彼にとってその目的の前では、本来の作戦目標である特功兵器を食い止める事や高岡抹殺など何ら意味を持たない事柄だった。
ブーンは止めていた足を動かし、更に奥へと侵入する…


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