第31話「B00N-D1の回想 −フォックスとの出会い−」
- 125 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:20:23 ID:gwXyOzmw0
- 登場人物一覧
――― ホライゾン家 ―――
( ^ω^)B00N-D1:通称ブーン。本名ホライゾン・ナイトウ。年齢20歳。戦闘員。
セカンドに対する強い免疫を持つサイボーグ、「システム・ディレイク」。
2054年のウィルス・パンデミックで、両親をセカンドに殺害される。
( ФωФ)ロマネスク・ホライゾン:享年43歳。プリンストン市警官。
2054年に死亡。フィレンクトから連絡を受けた彼は、ツンとブーンを連れて
ニュージャージー・プリンストンからマンハッタン島へ渡ろうとする。
しかし、道中で大型セカンドに遭遇し、命を落とす。
フィレンクトからはブルーエネルギー兵器の雛形BlueBulletGunを贈られていた。
J( 'ー`)しカー・ホライゾン:享年41歳。プリンストン市警官。
2054年に死亡。ブーンとツンを逃がす為に大型セカンドに立ち向かい、
夫の後を追った。彼女の尊い犠牲心がツン・ディレイクに行動させる。
プリンストンのガンマスターの異名を持つ、射撃の名手であった。
- 126 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:20:43 ID:gwXyOzmw0
- ――― ディレイク家 ―――
ξ゚听)ξツン・ディレイク:年齢19歳。チームリーダー。
ブーンを改造した弱冠19歳の天才科学少女。
2054年のパンデミックにおいては、ブーンの両親の意思を尊重しようと
マンハッタンへの渡島を敢行した。
ξ(゚ー゚ξデレ・ディレイク:享年42歳。生物工学者。
ツンの実母である彼女は、夫、フィレンクトと共にセントラル改装工事を進める一方、
システム・ディレイクの完成と実現を危機的状況下で目指した。
(‘_L’)フィレンクト・ディレイク:享年46歳。生物工学者の権威的存在。
後に絶大な戦闘能力を有するサイボーグシステム「ディレイク」の基礎は、
彼自らがサイボーグ化し完成させられた。
更に人類最後の砦たる『セントラル』の工事も指揮し、完成を間近にして死亡する。
また、ブルーエネルギーの開発にも大きく関わるなど、セカンド対策の大部分に貢献。
- 127 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:21:21 ID:gwXyOzmw0
- ――― 米軍残党、政治家など ―――
/ ,' 3 荒巻・スカルチノフ:享年63歳。元セントラル議会議会長。
2054年、米陸空両軍の残党では最高位であった大佐として、軍を指揮。
また、当時の重要会議でも大きな決定権と発言力を有していた。
ジョージ・ワシントン・ブリッジ爆破作戦の指揮者でもある。
( ´∀`)モナー・ヴァンヘイレン:年齢不明。新セントラル議会議会長。
現在のセントラルにおいては独裁的な権限を持つ彼だが、
2054年当時は民主党所属のニューヨーク州司法長官として活躍していた人物。
- 128 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:22:06 ID:gwXyOzmw0
- LOG 巨大地下エンターテイメント施設『セントラル』の概要と歴史
ニューヨーク市マンハッタンに所在するセントラルパークは、
南北4Km、東西0.8Kmの面積を持つ都市公園だ。
北はセントラル・パーク・ノース、東は五番街、西はセントラル・パーク・ウエスト、
南はセントラル・パーク・サウスからなる摩天楼に囲まれている。
この巨大な摩天楼で働き暮らす人々達のオアシスとして親しまれていたが、
それは本格的な宇宙開発と移住が開始される前までの話である。
爆発的な科学技術の発展により、地球上の開発と廃棄、娯楽の比率も並行して跳ね上がると、
ニューヨークのような大都市では特に娯楽と観光が求められるようになった。
一方、開発と廃棄は地方で行われるようになったのだが、
これはクローン技術の発達が齎した人手による農作業の不要が起因している。
こうして自然が失われていく中、まだ緑生い茂っていたセントラル・パークもまた、
自然の美しさではなく、人工の利便性と機能性、更なる刺激を人々に求められたのだ。
広告とエンターテイメントの都市に似つかわしくない景観と機能だ、と。
しかし地上の外観はさほど変わらず、その緑はあたかもカモフラージュかのように利用されるようになる。
人々は木々の匂いを嗅ぎながら垣間見える摩天楼を眺め、さほど背の高くない樹林を抜ける。
するとデラコート劇場を派手に改装して作ったエントランスに辿り着くのだ。
- 129 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:22:31 ID:gwXyOzmw0
- エントランスからエレベータに搭乗し、薄暗い管の中をスピーディーに400メートル降下する。
管の向こう側は複雑に配管と配線、基盤やコンピュータが羅列したインフラが隠されている。
そこを抜ける管は透明になり、南北は8Km、東西4Kmに及ぶ、眩いギャンブリング・タウンが広がる。
当時はインフラを設備した第一階層を含む全4階層で構成され、
最下層は今と変わらず地上から優に20Km離れた地点に存在する。
この広大な地下施設にはギャンブルを始めとする娯楽施設の他、
ホテル、レストラン、医療機関、あらゆる専門店を構えるショッピングモールなどが備えられている。
メイン階層の3つ全てを見て回るには半年掛かると言われていたが、
世界各国のブランドがここに参入しようと目論んでいた為、更なる拡大が予定されていたのだ。
また、当時は、世界規模で展開されていた戦争が激化するとも予想されていた。
地上から第一階層まで100メートル以上に及ぶ特殊合金を挟むセントラルは、
大規模な戦術核兵器による攻撃にも耐えうる設計となっており、
そして十分すぎるほどの電力生産能力を誇るインフラを実装している事も加え、シェルターとして絶賛されていた。
しかし、開園を目前にパンデミックが発生し、夢の半ばで多くの企業が撤退……正しくは“放棄”した。
この事が返って、シェルターへの改装工事をスムーズにしたのである。
- 130 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:22:54 ID:gwXyOzmw0
- ※
ツン・ディレイクがビロード・ハリスと夕暮れを過ごしている頃――――
ブーン達「ディレイク&アルドリッチ一派」は彼等を案じながらも、ブーンの修理に急いでいた。
今年10歳になる少年ビロードは、まだ思考も幼く、危うい。
確かに、『セントラル』で過ごした時間の方が長い少年に比べ、ビロードは特殊な状況に身を置き、
そして壮絶と言える戦いと死別を経験したせいか、彼の人格は急激に成長しているかもしれない。
とはいえ、その人格に問題を抱えている事を、一連の彼の言動と行動からブーン達は気づいた。
『自分の事くらい自分で出来る』。
事実、我々は多忙で、彼を預ける学校や教育機関が無い状況下、
彼に十分な学習をさせる事は難しいのが現状だ。
ビロード自身もその事を悟っているようで、幼いにも関わらず、
この現状を打破しようとしているのは感心に値すると、口に出さずも誰もが同様に思った。
だが、彼の思考はやはり幼く、直情的だ。
何をしでかすか分からない。そんな危うさを孕んでいるのでは、と、誰もが危惧している。
無言が作り出す重苦しいムードを変えようと、
ドクオに修理を受けているブーンが通信回線を開く。
( ^ω^)『ドクオ。ツンはビロードを捕まえられたと思うかお?』
- 131 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:23:20 ID:gwXyOzmw0
-
('A`)「そりゃ簡単に捕まえられただろうさ。ツンはマジで早いんだぜ?
俺が『まな板』だの『巻きグソ』だの『カップ詐称』だの馬鹿にしてやると、
鬼の形相を浮かべて物凄い速度で追跡してくるんだ。あれは超スリリングだぜ」
(;^ω^)『お前、完全にツンで遊んでるだろ』
('A`)「あのリアル鬼ゴッコはクセになる。
もしかしたら既にビロードは味をしめてるかもしれんな」
ガイル「あのムードでそれは無いだろう、JK」
ドクオのジョークが温和な空気を作り出すと、
ガイルも盛り上げようとスラングを交えつつフランクに話した。
酷く落ち込んでいた表情に、少し笑顔が戻っている。
( ^ω^)『子供と子供同士で案外盛り上がってるかも』
ガイル「俺から見たらお前らもガキなんだけどな。
とはいえ、お前らもツン博士もやる時はやるってのは知ってる。
安心してビロードを任せられる。お前らもそう思って後を追わないんだろ?」
- 132 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:23:46 ID:gwXyOzmw0
-
( ^ω^)『僕は見ての通り動けないんですけどね。まあ、仰る通りですお。
ツンなら何でも信頼して任せられるお』
ブーンのその言葉に対し、ドクオは物思いに呟いた。
('A`)「あいつも色々あったからな」
ガイル「ああ、フィレンクト氏と、デレ女史の事?」
('A`)「ええ。あいつ自身も両手を失っているし、セカンドに奪われた物は多い。
先日のクイーンズでの衛星打ち上げ作戦以前は、
あまり表に出す事はありませんでしたが、仇に執着してたと思います」
ξ#゚听)ξ「こんなの、誰がどう見てもセカンドじゃない……!
殺すのよ! 何であろうとセカンドは全部殺してやるのよ!」
アルドボール打ち上げ作戦中。
その時は知らぬ事実とはいえ、セカンド化したハインリッヒの兄ミルナに対し、
ツンが機械仕掛けの義腕を大きく広げて訴えていた事を3人は思い出す。
- 133 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:24:06 ID:gwXyOzmw0
-
ガイル「ドクオ、あまりクイーンズの話題は……」
ガイルが口元からマイクをずらし、ドクオに耳打ちする。
(;'A`)「あっ」
ドクオは思わず、ブーンの顔色を伺う。
(;^ω^)『いいんだおドクオ。
あれはセカンドの恨み云々を抜きにして、やらなきゃならない事だった』
その様子を手術台から眺めていたブーンは、むしろ焦った表情を浮かべて取り繕う。
('A`)「いや、すまねえ。軽々しく話題にする事じゃなかった」
( ^ω^)『水臭いお。お前と僕の仲じゃないかお。そんなに気にするなって。
それよりほら、手が止まってるお。さっさと直してくれお』
(;'A`)「おおっと、こいつぁすまねえ!
直すどころかパワーアップさせてやんねーといけねーのにな!」
ホロパネルをタイプする手が僅かに早くなるのを見ると、ブーンは口元を上げた。
- 134 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:24:33 ID:gwXyOzmw0
-
( ^ω^)『にしても、ビロードを見てると昔を思い出すお。
僕とビロードは少し似てるかもしれない』
唐突に切り出すブーンの言葉に、ドクオとガイルは耳を奪われる。
ガイル「昔?」
( ^ω^)『ええ。セントラル完成以前……というか、サイボーグになる前の頃を』
('A`)(へえ……お前の『セカンド闘争記』に描かれてないエピソードか。俺も詳しく知らないが)
( ^ω^)『あの頃はめちゃくちゃだったお。
両親を殺害したセカンドを何としてでも殺してやりたかった。
そしてフィレンクトさんが開発を進めていたシステム・ディレイクが、欲しかったお』
( ^ω^)『……せっかくだお。ツンとビロードが戻ってくるまで聞いててくれお。
僕の経験から、ビロードを諭す良い手がかりが見つかるかもしれないし……
ドクオ、タバコ吸わせてくれお』
ドクオは胸ポケットからタバコを一本取り出しながら、
操作パネルが並ぶスペースとはガラスで隔たれた手術室に入る。
ブーンにタバコを咥えさせてジッポライターで火をつけてやると、作業に戻る為そそくさと退出する。
ブーンは満足そうに煙を吐くと、徐に続けていった。
- 135 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:25:02 ID:gwXyOzmw0
-
第31話「B00N-D1の回想 −フォックスとの出会い−」
――――デレさんがツンを抱擁する光景が憎たらしかった。
ツンが僕の母親を見殺しにしたというのに、ツンは母親に慰められているのが、恨めしかった。
正常に物事を思考する冷静さなど当時の僕には無く、
例えようの無い喪失感を忘れる為に、ツンとセカンドへ怒りを燃やす他無かったのだろう。
そうしなければ、否応無く脳裏にトーチャンとカーチャンの顔が浮かぶのだ。
だが、一瞬でも眼を開けば、嫌でもデレさんとツンが視界に入ってしまう。
ますます恨めしくなり、思わず視線を落とす。
「うわああああああああああああ!」
事の成り行きを思い出したのか、ツンが泣き叫び始めた。
自分の罪深さに苦しめ!
……そんなどす黒い感情が溢れそうになった。
ツンとデレさんに悪態を吐こうとしたりする前に、部屋を退出すべきだと気づいたのだ。
デレさんは悪くないのだ。デレさんに憤りをぶつけても意味が無い。
ベッドを降りる前に、傍らに置かれたバッグを取る。
バッグ越しに銃の所在を確かめる……銃の感触だ。母の形見であるBlueBulletGunは没収されていない。
- 136 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:25:30 ID:gwXyOzmw0
-
ξ(゚−゚;ξ
「ほ、ホライゾン君! 何処に行くの?」
( ω )「フィレンクトさんは? 少し、話したいことがあって」
ξ(゚−゚;ξ「……研究室にいるわ。ここを出て、右手に真っ直ぐ進めばわかると思う」
頷きもせず、背を向けてその場を立ち去った。
フィレンクトさんに会いに行かねばならない目的があった。
僕はトーチャンの話をよく覚えていた。
「フィレンクトさんが、自分自身にシステム・ディレイクを搭載しようとしている話」を。
( ω )(奴等と戦う力があるんだ……それさえ手に入れれば……)
フィレンクトさんを説得し、僕にその戦闘用サイボーグ技術を施させる。
そうすれば強力なブルーエネルギー兵器を操る事が可能となり、
地上へ出て奴を探索する事だって出来るのだ。
奴を何としてでも狩る。
それが僕の生きる理由で、ボストンへ行く前までもそうだった。
- 137 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:25:58 ID:gwXyOzmw0
-
やらなければならない。
仮にフィレンクトさんを説得できなくとも――――奴に一矢を報うのだ!
例え自分が死のうが、それでも良いと僕は考えていた。
それほど僕は喪失に暮れ、絶望していた。
( ω )(ここを出て右手に真っ直ぐ、だったお)
簡易病棟の出入り口が開く。
すると、それまで窮屈だった世界が一転し、物々しい通りが目の前に広がった。
雑誌やニュース番組で紹介されていた物と酷似したショッピングモール。
軒並みに並ぶブティックや専門店はドロイドの手によってバラされた後のようだったが、
その残骸や名残りだけでも流石に心が弾むのを感じた。
( ;゚ω゚)(本当にこんな街を地下に作っていたのかお!)
もっとこの街を見てみたく、思わず足が速まる。
ドロイドや作業員の邪魔にならぬよう、なるべく歩き道の端を通りながら周囲を眺める。
……目を奪われることの連続であったのは、取り壊されている店がそう目立たず、
無人のまま残された店が多かったからだ。
( ^ω^)「……おおっ」
ストリートの突き当りの手前に構えられたカフェテリア。
その背景の壮麗さに気づき、嫌な事を忘れて走り出した。
- 138 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:26:18 ID:gwXyOzmw0
- 左右に続く全面ガラス張りの別れ道。
ガラスの向こうに広がる光景に心を奪われたのだ。
広漠とした空間の中心で、圧倒的な存在感を放つ巨大エレベータ。
機械仕掛けの内壁に描かれた夜空。
そこに次々と休み無く打ち上げられる花火。
ニューヨークの何処から眺めようとも叶わぬこの美しい夜景をバッグに、
洗練された建築様式を施されたホテルやカジノ、ビルの数々。
( ^ω^)「すっげえ……こんなもん地下に作っちゃう人間も凄いお」
ガラスに手をつき、しばらく見耽っていると、強固なガラスを振るわせる程の轟音が鳴った。
すると上方から巨大な何かが高速で目の前を過ぎり、不意を突かれた僕は声を上げて仰け反ってしまった。
YOGA製の飛行ドロイドだ。4本のアームで自分の巨体を上回るコンテナを運んでいる。
何機もの飛行ドロイドが瞬く間に中央エレベータの方へと飛んでいく……
改装工事は急ピッチで進められているようだ。
それにしても、ここから街を見下ろすのは飽きない。
秒単位で景色に新たな物が加わるし、姿を変えない洗練された建物を一つ一つ眺めるのも面白い。
次第に僕は、あの店に行ってみたい、だとか、
あのビルの頂上に行って街を見下ろしてみたいだとか、
この広大な街を一日かけて歩き回ってみたいだとか、胸の中で妄想を膨らませていったのだ。
その妄想の光景の中には僕と、トーチャンと、カーチャンがいた。
- 139 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:26:38 ID:gwXyOzmw0
-
( ω )「トーチャン、カーチャン…………」
永遠に、こうして胸の中でしか言葉を交わせぬ父と母。
妄想の中の僕達家族は次々と甘ったるい言葉を吐き出してゆく。
再び、最悪な気分が僕の全身を満たす。
わなわなと震える手、煮えたぎるように熱くなる頭、止まらぬ涙。
( ω )(許せない……許せないお……)
何を? 誰を?
セカンドを? セカンドウィルスを? ツンを? 無力な政府と軍を?
( ω )(ツンが、ツンがカーチャンを見殺しにしなかったら、カーチャンはここにいた)
分からなかった。
何が本当に悪いのか、本当に憎むべき相手が何なのか。
だから僕は、怒りの矛先をツンに向けるしかなかったのだ。
僕が怒鳴りつければ彼女は怯えたり、泣いたり、言い訳をしたり、何らかの反応をするだろう。
聞く耳を持たぬだろうセカンドや軍に何か言っても僕の気は晴れやしない。
ツンは、僕にとって手ごろな存在だったのだ。
- 140 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:26:58 ID:gwXyOzmw0
-
( ω )(そうだ、ツンだ。ツンは、フィレンクトさんを説得する打って付けの材料になる)
そして狡猾にも、ツンを交渉を進める上での材料にしようと閃いたのだ。
( ω )(フィレンクトさんに会いに行かないと)
眩い街並みから目を離して歩き出そうとした時、傍らで僕を見下ろしている誰かに気づいた。
( ^ω^)「……何か?」
「君、ホライゾン・ナイトウ君だよね?」
(;^ω^)「え、ええ。そうですけど……」
その男は若々しくも見えたし、長く伸びた白髪のせいか、
老いているようにも見える不思議な男だった。妙に落ち着いた物腰のせいかもしれない。
とにかく、妙な迫力と雰囲気を纏った男で、彼がポケットに手を突っ込むと、
僕は意識的に後ずさりしてしまった。
- 141 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:27:22 ID:gwXyOzmw0
-
「セカンドウィルスに対抗できる免疫細胞を持つ少年。
免疫細胞を持つ人間は君以外にも多くいる事が私のリサーチで明らかになっているが、
有効と言えるレベル、つまり完全に感染しない免疫を持っているのは、どうやら君だけらしい」
「いや、君の父もそうだったか」。
ポケットから取り出した煙草に火をつける仕草と共に、そう付け加えた。
言動から父の死を知っている事に気づくと、この無神経な態度が酷く癇に障った。
(#^ω^)「……アンタ、何なんだお……?」
爪'ー`)y‐「申し遅れた。私はフォックス・ラウンジ・オズボーン。
バイオテクノロジーを多岐に渡って追求する、ラウンジ社の会長だ」
(;^ω^)「……あっ! そういえばテレビで見たことあるような」
爪'ー`)y‐「私を知っているとは光栄だな、免疫少年」
得体の知れない迫力は、彼が世界的な著名人だから、だと納得した。
ラウンジ社が世界に齎したクローン技術や製薬の数々は余りにも有名だったし、
その名声を得るまで倫理的問題から様々な団体と裁判をしている事も知っている。
正直、あまり好きになれない企業だった。
- 142 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:28:05 ID:gwXyOzmw0
-
( ^ω^)「……そんな超有名人が、僕になんか用? 急いでるんだけど」
そんな企業の頂点は、やはり僕に社と同様の嫌悪感を抱かせる。
長く話をしたくなければ、係わりも持ちたくないと僕は思ったのだが、
爪'ー`)y‐「簡潔に言おう。君の血液が欲しい。
ロサンジェルス支部との連絡路が絶たれてしまってね。
君とロマネスク氏の血液サンプルがもう届かなくなった。手元にも無い」
爪'ー`)y‐「しかし、君が生きてマンハッタンに辿り着いた。
人類を代表して、君のご両親に感謝を申し上げる」
(#^ω^)「…………」
何も知らずに父と母を英雄視するような言い方に腹は立ったが、
しかし彼の話を無視する事はできないと思えたのだ。
爪'ー`)y‐「君の血は人類の希望になるかもしれんのだよ、ホライゾン君」
(;^ω^)「……希望? 僕の血が?」
言葉に詰まる。
世界の頂上に立つ男が、僕に不釣合いのスケールを持ち出してきたのだから。
なんと返せばよいのか眉を顰めていると、フォックスからまくし立ててきた。
- 143 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:28:27 ID:gwXyOzmw0
-
爪'ー`)y‐「現状で分かっている、唯一の対抗手段だからね。
そして幸いな事に、『セントラル』には我が社が提供した医療施設と食料の生産プラントがある。
その機材を応用すればブルーエネルギーの生産体制も整えられる」
爪'ー`)y‐「研究体制と君の血液サンプルさえ揃えられれば、
私達ラウンジの残党と、生き残ったあらゆる科学者が治療法を研究する事も可能になる。
それが私の言う、人類の希望だ」
爪'ー`)y‐「君の血で、きっとウィルスから人々を守れるようになるだろう」
( ^ω^)「……しかし、セカンド化した人々を人間に戻せるのは難しいんじゃ?
化物のような身体になってしまった人は救えないでしょう?」
爪'ー`)y‐「感染初期段階の感染者なら救えるだろう?
複雑に変異した感染者は……断言は出来ぬが無理だろうね。
まあともかくだ、救える命が増えるのは明るい事じゃないか」
爪'ー`)y‐「クローンについて様々な風評が流れているのは知っていると思うが、
いつだって我が社は人命を救う為に活動していた。
その為ならローマ法王だって敵に回した」
この言葉で彼を胡散臭いと思う気持ちは払拭されなかった。
でも、これから治療法を研究する者の1人である事に間違いなさそうなので、僕は、
- 144 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:28:59 ID:gwXyOzmw0
-
( ^ω^)「……どうすりゃいいんだお?」
そう尋ねると、彼はポケットから針の無い注射器を取り出した。
奴等との対抗手段を探る手がかりとならば……僕は彼の要望に応える為、袖をまくった。
フォックスは恐ろしく素早い手際で僕の血液を採取し、
爪'ー`)y‐「感謝する」
愛想の良い笑みと共に意を伝え、
胸元に下げていたサングラスをかけると、僕の横を過ぎていった。
「待て、待て待て待て」
( ^ω^)『なんだおドクオ』
- 145 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:29:24 ID:gwXyOzmw0
-
(;'A`)「フォックス・ラウンジ・オズボーンだって!?
そんな雲の上の人物が『セントラル』にいるのかよ!?」
叫び声に近い声量でドクオが食いかかってきた。
ドクオと並んでブーンの話を聞き入っていたガイルも、こればかりは衝撃的だったようで、
ガイル「お、俺も初耳だ。彼はウィルス騒動より早く火星に移住していたと思っていたが。
彼ほどの実力者なら旧議会でも相当な発言力があったろうに、
なりを潜めているのはどうしてだ? もしくは当時命を落としたのか?」
ブーンは二人の質問に対して少し間を置く。
( ^ω^)『恐らくガイルさんの言った後者だお。多分死んだ。
彼自身、優れた科学者だというのはよく知っていたから、
何かしらの成果を挙げてくると思っていたもんだけど……』
( ^ω^)『数年経っても音沙汰が無いものだから、
モナーさんに頼んで彼の戸籍や通院記録、死亡記録なんかを調べてもらったけど、
一切の記録がなかったんだお。だから当時死んだんじゃないのかお?』
- 146 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:29:48 ID:gwXyOzmw0
-
ガイル「その線が高いだろうな……ジョージ・ワシントン・ブリッジ爆破作戦の時は、
マンハッタン島も極めて危険な状況に陥ったからな」
当時の記憶を思い起こしたガイルは、深く溜息を吐いた。
頭を乱暴に掻いた後、ぱっと明るい表情を浮かべて続けた。
ガイル「なりを潜めるにしても、彼ほどの人物が全く姿を見せないのもおかしい。
もっとも、当時のラウンジにあった『黒い噂』通りの、えげつない生物実験でもしてるなら別か」
ガイルはジョークのつもりでそう述べた。
ブーンは彼のブラックジョークが面白く思えたが、一方でドクオは神妙な顔付きを浮かべて、
('A`)「……待てよ、後継者は?」
( ^ω^)『後継者?』
('A`)「そうだ。ガイルさんの推測とジョークで思い出したんだが、
この街には元ラウンジ社の人間がいる。それも議会の席に座りながら、
デザインドクローンという、えげつない実験をやってやがった人物が」
- 147 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:30:09 ID:gwXyOzmw0
-
( ^ω^)『……モララー・スタンレーかお』
いつになく厳しい表情でドクオが頷いた。
('A`)「そう。現セントラル議会で総統モナーに次ぐ支配力を持つ、モララー・スタンレー。
これも推測の域を出ないが、奴がフォックスから血液サンプルを、
あるいは、その研究を受け継いだとすると、クローン部隊のレーザー兵器の合点が行く」
(;^ω^)『ドクオ、お前もあれを、ブルーエネルギーだったと思うかお?』
クイーンズ区脱出作戦、ギコ・アモットとの総力戦で活躍した、クローン部隊の対セカンド兵器。
ドクオは、二度に渡った彼女等のレーザー照射の詳細データを得る事は出来ていないが、
セカンドの反応からブルーエネルギーだと確信していた。
「ああ、間違いない」と力強く返し、ドクオが続ける。
('A`)「セカンドに対し有効な抗体を所有しているのは俺達だけのはず……。
もっと正確に言えば、ブーンの免疫を利用してるのはチーム・ディレイクだけ」
('A`)「他チームがブーンの免疫を拝借しようとしなかったのは、
独自の兵器でお株を上げようとしてた為だろ?」
- 148 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:30:31 ID:gwXyOzmw0
-
その発言に対し、ガイルが苦笑しながら補足する。
ガイル「特にウチのリーダーがそうだったな。
結果として、対大型セカンド兵器、広域攻撃兵器としてバトルスーツが完成した」
('A`)「もう一つ理由、というか目的もあります。ガイルさん達のバトルスーツもそうですが……
抗体が効かないセカンドが万が一現れた場合の攻撃手段の模索を、
議会から期待されていた……という目的がありました」
ガイル「ああ、そうだな。だからバトルスーツに寄せる議会の期待は大きかった」
( ^ω^)『……フォックスは頭が回る男だと思ったお。システム・ディレイクに掛かるコストを懸念し、
デザインドクローンの開発とその生産体制を当時から予定していたかもしれない。
40年代のクローンソルジャーなら、多くのブルーエネルギー兵器を扱えると思うお』
('A`)「サイボーグやドロイドよりも遥かに安く戦力を産出できたのは、
過去の大戦でラウンジが明らかにしているしな」
実際、実戦配備されたヒューマンソルジャーの割合は、
いわゆる「人の子」よりも戦闘用に洗脳・教育されたラウンジ社の“商品”が多くを占めていた。
もっとも、人の感情を完璧に操作する事はデザイン段階でも薬物でも叶わなず、
戦場での命令違反、性的暴行、虐殺、自殺といったトラブルは絶えなかったという。
そういった事情の下、フィレンクトは軍部からその手のサイバーウェアの開発を頼まれ、
System-Hollowを生み出したのだが、これはドクオもツンも知らぬ話である。
ドクオが続ける。
- 149 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:30:54 ID:gwXyOzmw0
-
('A`)「そして、モララー・スタンレーという後継者に自分の研究を譲渡した、と。
ブーンとフォックスの会話から、フォックスは当時からラウンジの社員と行動していたと推測できるし、
血液サンプルが他のラウンジ社員の手に渡っていたとしてもおかしくない」
('A`)「……なあブーン。当時のモララーについて何か知らないか?」
( ^ω^)『いや、モララーについては……』
( ^ω^)『にしてもドクオ、どうしてモララーに固執するんだお?』
不意にブーンに問われたドクオは一瞬言葉を失う。
誤魔化すように首をかしげて油っこい頭を掻き回している。
ブーンとガイルが訝しげに見ていると、急に挙動不審な動作をぴたりと止め、
('A`)「なんか、怪しいからだ。今の話を聞いて余計怪しいと思う」
無造作にカッコ良いポーズ――右手を腰に、左手を顎に添えた――をキメながら、そう言った。
- 150 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:31:17 ID:gwXyOzmw0
-
ガイル「えええェ!?」
(;^ω^)『そ、それだけ?』
('A`)「ま、後はあれだ……俺、人クローンって嫌いなんだよね。
人をイチから作り出しちまうとか、作った人間なら死んでもいいって戦争に出したり。
モララーがやってる事がまさにそうだ」
('A`)「クローン部隊の元となった奴が、デザインされて生み出された人間じゃないとしたら……。
って考えると、許せない気持ちになるんだよな」
ガイル「気持ちは分かるが……奴のクローン研究も『セントラル』を防衛する為だったろ?
それに、こりゃお前の言う前提を踏まえてだが、
クローンの元となった人物が『セントラル』の為に、と言っちまえば、それまでじゃないか」
('A`)「モララーにとってそれは無い……と言い切れないですが、
あいつの腹はどす黒いに決まってる」
ガイル「そう思うのは何でだよ?」
('A`)「……同じ科学者だから、ですかね」
- 151 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:31:40 ID:gwXyOzmw0
- ガイル「うーん……そういうもんなのかねぇ。
俺のようなパイロットにゃ理解の及ばん部分が少なからずあるんだろうが」
二人が納得してくれそうな言葉で取り繕った。
……奴が黒だと疑う根拠はある。
荒巻スカルチノフ暗殺の容疑。
議会のデータベースにハックして入手した、スタンレー・ラボ研究員の死亡事故記録。
そして、ミス・セントラルの準優勝者であるチーム・スタンレー所属のクー・ルーレイロと、
同一の声を持つクローン兵の存在……。
あとは証拠。
数々の悪事を隠蔽、捏造してきた証拠さえ押えれば、クー・ルーレイロを救えるはずだ。
( ^ω^)『……なんかお前、企んでるのかお?』
('A`)「企み?」
沸々と湧き上がる思考を、ブーンが止める。
- 152 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:32:13 ID:gwXyOzmw0
-
('A`)「いや、別に何も企んじゃいないさ」
( ^ω^)『そうかお』
('A`)「…………」
嘘を吐いた事で、心拍や発汗の変化を悟られただろう。
ブーンの情報処理システムの万能さを誰よりも理解しているドクオは、
あえて彼の問いに対し、嘘で応えた。
ああそうさ! 企んでるさ!――――と、あえて。
( ^ω^)「…………」
('A`)「…………」
「お前はお前の事だけやってりゃいい。
俺も俺で、少しやらなければならない事が出来ちまったんだ」。
ドクオの目が放つ力強さが、そう代弁しているようにブーンには思えた。
ツンを除き、ドクオは誰より信頼できる唯一無二の友人だ。
友がこれから何をしでかすか不明なのは、正直なところ不安だ。
それでもブーンは、友の意思を尊重したく、それ以上何も言わなかった。
ドクオが、自分を信じてくれているように――――。
- 153 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:32:40 ID:gwXyOzmw0
-
('∀`)「悪い、話を折っちまったな。続けてくれよ、ブーン」
( ^ω^)『お、分かったお……それでだ、
僕はいよいよフィレンクトさんのいる研究室の前に着いたんだお』
( ^ω^)『ここからは少し、口にし難い事を話すお。恥ずかしいけど聞いて欲しいお』
――――
――
―
−
- 154 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:33:02 ID:gwXyOzmw0
- ※
漏れて聞こえる、複数人の怒号。
お偉いさん方が今後の作戦か何かを熱論しているんだと想像するのは簡単だった。
しかし、実力者を想像して臆する事もなければ、入室を遠慮しようという気も起こらなかった。
フィレンクトさんが会議に参加していようが、僕は僕の話をお構いなくするつもりだった。
( ω )「…………」
( ω )(システム・ディレイク……)
入室する。
通路を往く者達が、怪訝な目で僕を見てくるが、皆一瞥しては先を急ぐ。
訳の分からんガキを相手にする余裕は無い、といったところだろう。
緊迫した空気をより強く感じたが、僕にはどうでもよい事であった。
「――――!」 「――――!!」
激しい論闘が響いてくる。
しかし会議を行っている場へ何人もの人が行き交いしているので、
入室しても邪魔にはならないようで、僕は素直に安心した。
だが、会議室のドアを開くと同時、僕は予想外の出来事に面食らった。
- 155 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:33:44 ID:gwXyOzmw0
-
「あ! ホライゾン・ナイトウ! 免疫を持った少年だ!」
「おお! 彼がそうか! ようこそ、セントラルへ! よく来てくれた!」
( ;゚ω゚)「え……?」
「奴等に対する唯一の切り札!」
「人類の希」「彼が生きていたお陰で治療法が」「血液を採取でき」
( ;゚ω゚)「あ、あの」
白衣、スーツ、軍服。
異なる衣服を着た連中が僕を取り囲み、
戸惑う僕を余所に興奮気味に言葉を発していた。
「ロマネスクでなくて問題は」「こちらの方が強い反応が」「細胞実験の再開を」
( ;゚ω゚)「ちょ、ちょっと―――」
まるで物を扱うかのような言動が聞こえ、たまらず怖くなった。
入室するまでの確固たる意識も吹き飛び、僕は完全に萎縮して良い様に言われ続けていた。
「やめないか!」
すると、誰かが机を激しく叩きつけて、大声で制してくれた。
- 156 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:34:26 ID:gwXyOzmw0
-
(#´Д`)「子供一人に寄ってかかって、恥ずかしくないのか!?」
「しかし、彼の血液をまだ採取しておらず――」
(#´Д`)「それがなんだ!? それが今我々がすべき事か!?
それに何という物の言い方だ……!」
モナーさんだった。
今も昔も、彼の道徳と人命を遵守する姿勢は何一つ変わらない。
/ ,' 3「モナーの言うとおりだ。
彼の到着は喜ぶべき事であったが、
ここを防衛出来なければ何もかも終わる。細胞実験など二の次だろう」
モナーさんに続いたのは荒巻。
軍服に身を包んだ彼は屈強な老戦士に見え、この時は荒巻に心から感謝した。
- 157 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:34:49 ID:gwXyOzmw0
-
モナーさんと荒巻が大人達をそれぞれの持ち場へ追い返し、
解放された僕は二人に感謝の意を伝えた。
( ´Д`)「すまなかったね……ホライゾン・ナイトウ君。
しかし、彼等の気持ちも分かってくれないか?
……情けないが、君の血が奴等を止めるのなら、正直私も縋りたい」
モナーさんはかなりまいっていたようだった。
ウィルス騒動以前はニューヨーク州司法長官を務めていた彼が、
最後の砦の未来を左右する立場に立たされていたのだから、無理もなかっただろう。
しかし、人命救助を呼びかけていた懸命な姿を、僕は今でもよく覚えている。
( ^ω^)「……いえ。それより、フィレンクト氏は、どこに?」
( ´Д`)「彼を訪ねに来たのか。彼なら、奥の部屋で作業を。
だが、今の彼を見たら少しショックを受けるかもしれないが――」
( ^ω^)「自己改造中なんでしょう? 僕はその話をしに来たんです」
( ´Д`)「システム・ディレイクの話を? 一体、なんで君が?」
( ^ω^)「今すべき事があるんでしょ? 僕の事なんか気にしないでください」
(;´Д`)「あ、ああ。そうだな。すまない」
「では」。
軽く会釈し、モナーさんの前を横切って僕は奥へ向った。
- 158 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:35:09 ID:gwXyOzmw0
-
会議室を抜けた後も、通路で出会った白衣、スーツ、軍服達は、
相変わらず好奇の視線を僕に注ぎ続ける。
だが、いざ僕が彼等の傍を往こうとすると、何か得体の知れない物を見たのように、彼等は一歩後を引く。
あるいは、丁重に扱おうと、触れぬようにしていたのか。
腹立たしさを感じずにはいられなかったが、彼等に文句を言ったりする事はしなかった。
時間が惜しいのは僕も同じ。
一刻も早く、フィレンクトさんに会い、奴等と戦える身体へ改造して貰わなければ。
それだけが頭の中にあった。
フィレンクトさんがいる作業室の前に着き、息を深く吐く。
僕はこれから、共に何度も食卓を囲んだ者に対し、暴言を吐かなくてはなならない。
そう一瞬思いもしたが、トーチャンとカーチャンの事を思い返すと躊躇いは消え去った。
( ω )
――ツンは自分の命欲しさに、カーチャンを見捨てたではないか!
再び頭が煮えたぎるような感覚を覚える。
僕は意を決して、ドアを開いた。
- 159 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:35:41 ID:gwXyOzmw0
-
( ; ω )「……ッ!?」
用途の分からぬ大小様々な機器に囲まれた中、変わり果てたフィレンクトさんの姿を見た。
僕は息を思わず呑んだ。
顔の大部分が銀色の金属に作りかえられ、そこに新しく埋め込まれた赤い左目が、
不気味な動きを伴って僕を捉えたのだ。
( _L゚)「ホライゾン君か……見苦しくて、すまないな」
恐る恐る彼に近づく。
透明なカバーに覆われた脳を間近で見ると、生理的な気持ち悪さが僕を襲った。
切開された腹部からは飛び出ていたのは腸ではなく、配線。
ふと、辺りを見回すと、綺麗に並べられた臓器が隔離されていた。
( ;゚ω゚)「う…………!」
( _L゚)「大丈夫か? 君には辛い光景だったか」
( ;゚ω゚)「い、いえ……」
一気に吐き気が込み上げてきたが、何とか堪えた。
- 161 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:36:51 ID:gwXyOzmw0
-
( ;゚ω゚)(これが、人をサイボーグに変える手術なのか……)
人体の中身を、頭の天辺から爪先まで作り変える手術。
僕はもっとスマートな手術光景を想像していたが、現実は違った。
最先端の技術や機器によって操作されているものの、やっている事は臓器移植に近いのだ。
僕は良いタイミングで来たのだろう。
切り落とされた右肩から血や血管は見当たらず、配線のような物しか見えない。
彼は手術の大部分を既に終えていたのだ。
つまり、もっとも血生臭い段階を終えた後だった。
( _L゚)「ホライゾン君……ロマネスクと、カーさんの事は……」
フィレンクトさんから切り出され、僕は不意を突かれる。
( _L゚)「君達は軍に保護してもらう手筈だったのだが、急速に変じてゆく状況で、
それは叶わなくなってしまった……ご両親の事は、本当に残念だった……」
その言い様は、酷く無責任に聞こえた。
- 162 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:37:19 ID:gwXyOzmw0
-
( ゚ω゚)「残念……だと?」
僕は怒りに我を忘れ、フィレンクトさんに食いかかった。
( ゚ω゚)「ああ、アンタはよくやってくれたかもしれない。
通行許可証まで事前に用意してくれたし、武器も寄こしてくれた」
( ゚ω゚)「だがアンタの娘は! セカンドに立ち向かったカーチャンを見殺しにしてここに来たんだ!」
( ゚ω゚)「僕はカーチャンを置いてこんな所に来たくなかった!
ツンは、自分の命欲しさに、カーチャンを見捨てたんだ!!」
( ゚ω゚)「何が残念だ! お前の娘がカーチャンを見捨てやがったんだぞ!
知った風にカーチャンの事を言うんじゃねえ!」
( _L゚)「見捨てた、か」
( _L゚)「そうだな……その通りだ。我々は誰かを見捨てて、今生きている」
( _L゚)「それは、君も同じだ」
- 163 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:37:40 ID:gwXyOzmw0
-
( ゚ω゚)「同じだと!? 冗談じゃない! 僕はカーチャンを犠牲になんか、」
( _L゚)「君も見たはずだ。ジョージ・ワシントン・ブリッジで足踏みする大勢の人々を。
君は彼等の行く末に気づきながらも、渡島しようとした。違うか?」
( ;゚ω゚)「それは――」
( _L゚)「……間もなく、ジョージ・ワシントン・ブリッジは爆破される。
司法長官のモナー・ヴァンヘイレンは反論しているがな」
( ;゚ω゚)「やはり……救うつもりはないのかお……?」
( _L゚)「無理だ。もう日が落ちてしまった。
軍も生存者に帰宅を命じ、秘密裏に爆破準備を進めている」
( ;゚ω゚)「帰宅だって!?」
( _L゚)「彼等を救う手立ては無い。見捨てるしか無いのだ」
( ; ω )「…………僕には、」
- 164 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:38:20 ID:gwXyOzmw0
-
( ;゚ω゚)「僕には関係ない事だ!」
( #゚ω゚)「誰が死のうが僕にはもうどうだっていい!
アンタの代わりに僕を今すぐ改造しろ! 改造してもらうぞ!」
(; _L゚)「――無理だ! ロマネスクとカーさんの仇を取りたいんだろうが、そんな頼みは聞けない!」
( #゚ω゚)「黙れ! ツンが負った罪はアンタに清算してもらう! いいから言う通りにしろ!」
(; _L゚)「ロマネスクとカーさんの仇なら私が取ってやる! いいかホライゾン君!
そんな事をして君のご両親が浮かばれると思うか!?
カーさんは君に生きて欲しく、セカンドに立ち向かったのだろう!? 違うか!?」
( # ω )「……違う」
(; _L゚)「何……?」
( # ω )「カーチャンは免疫細胞をここに届けたかったんだ……そうだ、そうに決まってる」
(# _L゚)「そんな訳があるか! 馬鹿な事を――」
( #;ω;)「アンタだってそうだ!!
僕とトーチャンの免疫が欲しいから手を尽くそうとしたんだろ!?
そうだろう!? ここにいる皆がそうだ! 物を見るような目で僕を見やがって!」
- 165 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:38:47 ID:gwXyOzmw0
-
(# _L゚)「馬鹿な事を言うんじゃない! ホライゾン!」
( #;ω;)「ッ!」ビクッ
(# _L゚)「カーさんは純粋に君を案じて守ったんだろうが!
君が母の死を侮辱してどうする!?」
( ; ω )「……そういうつもりで、言ったんじゃ、無い……。
何で、分からない?……いいから、改造しろっつってんだ……」
(# _L゚)「無理だ。君を戦わせる訳にはいかん。私が戦う。戦って君を守る」
(# _L゚)「死んだロマネスクとカーさんの為にな!」
( ; ω )「なんで……どうして……」
――なんで、わかってくれない……。
こんな歪んだ自己主張と逆恨み、願いを、フィレンクトさんが聞くはずがなかった。
とにかく僕は、誰かの気持ちを考えたりする余裕が無く、復讐に心を燃やしていた。
( _L゚)「……仇を討ちたい気持ちは分かる。だが、君を危険な目に遭わす訳にはいかん。
さあ、ツンとデレのところに戻りなさい。君には休息が必要だ」
- 166 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:39:16 ID:gwXyOzmw0
-
( ω )「……もう、いい。これ以上貴方と話しても無駄のようだ」
( ω )「ああ、僕の血が欲しいならフォックスって男を頼るといい」
交渉は決裂。今なら当然と思える事だが……。
僕は諦めて場を後にしようとするが、
(; _L゚)「待て。今、フォックスと言ったのか?」
フィレンクトさんは、フォックスという男の名に反応した。
驚いていたような……過剰な反応を示したのだ。
( ω )「……ええ。フォックス・ラウンジ・オズボーンです」
(; _L゚)「……彼に血液を渡したのか?」
( ω )「ええ、それがどうかしましたか? 彼はラウンジの社長でしょう?
きっと『セントラル』の為に役立たせてくれるでしょう」
(; _L゚)「…………いや、彼はそういう男ではない」
フィレンクトさんは、フォックスをよく知っているようだった。
僕が冷静さを欠いていなければ、彼に血液を渡した事を後悔したかもしれないだろう。
でも実際には、無関心だった。どうでもよい事だった。
- 167 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:39:35 ID:gwXyOzmw0
-
( _L゚)「ホライゾン君。彼は危険な思想を持つ男だ。君は特に用心しなさい。
彼はセカンドウィルスにすら興味を示し、研究しようとしている奴だ」
( ω )「ご忠告どうも」
( _L゚)「待ちなさい。何処へ行く?」
( ω )「街の様子でも見て回ろうかと。正直、ツンとは会いたくない」
( _L゚)「そうか……」
( ω )「では」
――そうして僕は研究室を後にした。
サイボーグに転化する事は聞き入れてもらえなかったが、それならそれでいい。
重宝されている血液ならフォックスにやった。僕のやる事は唯一つ。
( ω )(僕にはまだ、奴等と戦える力が残っている)
バッグの中に隠していた母の形見を確かめる。
( ω )(カーチャンの形見で、奴を何としてでも殺す……!)
- 169 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:40:34 ID:gwXyOzmw0
- 来た道を辿り、会議室に戻る。
「ジョージ・ワシントン・ブリッジ爆破作戦」について、
先刻と変わらず、いや、より白熱して討論していた。
(#´Д`)「まだニュージャージーに救える命が大勢ある中!
フィレンクトの作戦を果たしてこのまま実行してよいのだろうか!?
多くの人命が犠牲になる作戦ゆえ、もっと慎重な意見を聞かせて頂きたい!」
/ ,' 3「救出作戦を展開すれば、残り僅かな軍隊を失うリスクが伴う。
ブリッジ爆破は現状では最も慎重で的確な作戦であるはずだ」
橋を落とす作戦がフィレンクトさんの案だったのは意外だった。
元々ジョージ・ワシントン・ブリッジ爆破作戦は政府から通達された「封鎖令」の一環だが、
政府機能を失い、総司令官のその発言も無効となった。
しかしフィレンクトさんは橋落としの効果に期待し、作戦の継続を薦めたらしい。
この時は、モナーさんよりも荒巻が正論していたように思えた。
事実、モナーさんを味方する者は殆どおらず、
傍から聞いていても爆破作戦が取り止めになる事は無さそうだった。
彼等も僕も、一刻の猶予も無い。
橋を落とされてしまえば、奴を殺しに行けなくなってしまうのだから。
- 170 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:40:58 ID:gwXyOzmw0
-
急ぎ足でフィレンクトさんの研究室を出ると、
一番顔を合わせたくない相手がそこに立っていた。
ξ;゚听)ξ「ッ、ナイトウ……」
( ω )「……ツン」
ξ;゚听)ξ「ナイトウ、その、アタシ、」
(# ω )「黙れ! 放っておいてくれ!!」
ξ;゚听)ξ「あ……まっ……」
僕はツンの話に耳を傾けようとしないどころか、
目を交わそうともせず彼女の横を過ぎた。
- 171 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:41:18 ID:gwXyOzmw0
- フィレンクトさんと話して、僕がツンに対してしている事がただの逆恨みだと分かっていた。
怒りの矛先を向けるべきはツンではなく、セカンドだと理解していた。
にも関わらず、僕は、まだツンを恨んでいた。
カーチャンを救えたかもしれないと思うと、どうしてもツンを憎んでしまうのだった。
だから顔を合わせたくなかった。
僕達は幼馴染だ。何年もの長い時を共に過ごしてきた友、家族と言える関係だ。
そんなツンに、これから僕がしようとしている事を話しても反対されるだろうし、
打ち明ければ全力で僕を止めにかかるだろう。
それに、こんな酷い逆恨みをしても僕に何も言わないツンの優しさに、
僕は心の何処かで感謝だとか、感動といった気持ちを芽生えさせていたのかもしれない。
いや、ツンは、僕の酷い態度を抜きにしても、自分の罪に苦しんでいた。
( ω )(ツン……)
彼女には何の責務も無いのに。
僕には合わせる顔が無かったのだ。
- 172 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:41:42 ID:gwXyOzmw0
-
( ω )(ツン、ごめんよ。君の為にも、あのセカンドは僕が必ず討ち取ってみせる)
遠くに見える、巨大な塔を見つめる――中央エレベータだ。
資材を抱えた飛行ドロイドが一斉にあそこに向っている……となれば、
地上への出入り口はあそこに違いないだろう。
天井から投影されている標識を頼りに、僕はこの広大な街を駆けた。
恐ろしき異形が闊歩する、夜の地上へ出る為に。
奴等に対する恐怖など、微塵も無かった。
再度燃え上がった恨みと憎しみ、決意が、僕の足を動かしていた。
第31話「B00N-D1の回想−フォックスとの出会い」終
- 173 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:43:10 ID:gwXyOzmw0
-
LOG 「2053年 12月 火星からの通信」
政府の命令により、ロサンジェルスに呼び出された私とデレは、
他の科学者と共に、ラウンジ社が抱える膨大な血液サンプルの中から有効な物を探していた。
《ぐううううううううううううううううああああああああああああああああああああ》
宇宙から一足早く、秘密裏に届けられた、生きたセカンドを相手に。
いくつもの拘束具によって動きを封じられた感染者は、
強化ガラス越しの我々に向かい、凶暴な叫び声をひたすらあげていた。
彼の感染は、これでもまだ初期段階にあるらしい。
大きな変異の様子が無いにしろ、真っ赤に血走った目や、
発達した牙や爪は、彼の強烈な殺意と食欲を感じさせる物だった。
少し気分が悪くなった私とデレは、用意された自室で休息を取る事にした。
一刻も早く撃退法を発見しなければならないのは理解しているが……。
人間がああまで変貌したのを見ると、たまらない気分になる。
- 174 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:43:55 ID:gwXyOzmw0
-
(;‘_L’)「火星の映像は見ているが……恐ろしいな」
ξ(゚ー゚;ξ「え、映画に出てくるようなゾンビならまだしも……
彼等は、化物のような身体に変貌するのよね……」
(;‘_L’)「デレ、ゾンビだなんて……少し不謹慎だぞ」
ξ(゚ー゚;ξ「ご、ごめんなさい。つい」
『はははは。ゾンビか。まあ怒ってやるなよフィレンクト。
ウィルスを物凄い速度で感染させていくのは、ゾンビもこいつらも同じだ』
モニターに映る私の友人。
彼は、火星の都市部から避難した場所で、私達の為に音声通信を行ってくれている。
『こいつを社で管理していた時は、正直落ち着かなかった。
だが、どうやら変異に個人差があるらしく、彼の場合非常にそれが遅かったのは幸運だ」
『それと化物のような身体に変異するのは条件がある。
生きた生物を喰わない限りは、人に近い姿のままなんだよ』
- 175 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:44:47 ID:gwXyOzmw0
-
ξ(゚ー゚;ξ「へえ……じゃあ、送られてきた感染者がこれ以上変異する事は無いのね?」
『君達が生きた動物でも虫でも与えない限りね』
ξ(゚ー゚;ξ「そんな事するわけ無いじゃない」
フフ、と、からかうように笑い、彼は続ける。
『それと、彼の場合は小さな噛み傷を負って感染した。
傷の度合いで感染速度に差があるかもしれないが、感染経路も様々だ。
空気感染する者もいれば、引っかかれたくらいじゃ感染しない者もいる』
『まあ、火星のパンデミックの原因は傷口の流体接触よりも、
ウィルスに汚染された水が流れた事だろうな。
農業プラントや運送機関にも問題があったかもしれんし』
『ともかく、患者を扱う際はくれぐれも慎重に。
廃棄するなら徹底的にウィルスを殺してからだ』
(‘_L’)「私からこんな事を言うのも今更だが……君も用心してくれ」
『心配するな。私は感染の無い地区に避難している。
ここも時間の問題だと思うがな』
- 176 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:45:12 ID:gwXyOzmw0
-
(‘_L’)「地球に帰還しないのか?」
『そっちから私の船を送り返すか、今ここで組んでるシャトルが完成するまでは無理だ。
検疫上の問題でシャトルの運行が停止されたからな。
と言っても、既に空港は地獄と化しているらしいがね』
(‘_L’)「……正直なところ、私とデレは君が好きじゃない」
『おいおい、なんだよ。友人に向ってそんな告白は酷いぞ。
しかもこんな状況で。励ましの言葉をくれよ、フィレンクト』
友人……私には彼に対して友情といった感情を持ち合わせていない。
本当なら関わりたくない人物だ。
だが、私も彼も高名な科学者同士、軍から請け負った仕事で、よく顔を合わせていた。
そうしている内に彼は、私の事を数少ない友人に定めてしまった。
倫理と法、秩序を遵守する私にとって、彼は私と相反する存在と言ってよいだろう。
私は彼が嫌いだ。
己の好奇と目的の為なら、人体まで容赦なく切り刻んだ彼が。
- 177 名前: ◆jVEgVW6U6s:2011/07/28(木) 01:46:04 ID:gwXyOzmw0
-
恐ろしい男だ。
現に、モニターに映る彼にウィルスを恐怖している様子など無い。
それどころかこの騒動とウィルスの存在を楽しんでいるように見える。
(‘_L’)「しかし、君の頭脳だけは買っている。
ウィルスによるバイオハザード下において、君は必要不可欠な存在だ」
『ありがとう。私もそう思う』
(‘_L’)「なんとしてでも、地球に帰って来てくれ」
爪'ー`)y‐『ああ。こんな落ち着かない所じゃ研究もままならん。
こんなに研究意欲をそそられる病原体は二度と無いぞ!』
(‘_L’)「……フォックス……やはり君のそういうところが、私は好きになれない」
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/28(木) 01:39:59 ID:uASn/fSs0
- 今回は早かったな支援
- 178 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/28(木) 01:52:39 ID:gwXyOzmw0
- 以上です。
>>168
時間はあるのでこのペースでやれればいいと思ってます。
今回は45レス程度でしたし、
ブーン視点で前回の内容を書き直した部分もあるし、
そのせいでスラスラ書けたんでしょうけど・・・
次はVIPでやろうと思います
- 179 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/28(木) 01:53:12 ID:ZThcj.HI0
- 乙乙
楽しみにしてます!
- 181 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/28(木) 02:07:16 ID:ArgF1h5gO
- 街狩りはたまに早く来るよねwww
乙! やっぱり面白い
回想の続きも気になるし、ドクオの活躍も期待できるしあああああ続きが早く読みてえ!
- 180 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/28(木) 01:56:01 ID:uASn/fSs0
- オツイトーイ
こっちはこっちでさるなくて投下快適だろうけど、VIPはVIPでいいとこあるしね
遭遇したら支援させてもらうよ
- 182 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/28(木) 02:10:30 ID:gwXyOzmw0
- >>180
センキューイトーイ
心強いです。では、次からはVIPで会いましょう