第29話「ツン・ディレイクの回想 −摩天楼の光−」
- 5 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 22:55:23.54 ID:6FBWOVnk0
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ようやく合作の世界から帰ってこられたお……
ィ'ト―-イ、 /\ /ヽ
以`゚益゚以 ヽ、 lヽ' ` ´ \/l
,ノ ヽ、_,,, ヽ `' /
/´`''" '"´``Y'""``'j ヽ | _ノ ̄/ l
{ ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l .l / ̄ / |
'、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ l  ̄/ / |
ヽ、, ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/ ヽ. /__/ .|
`''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r' |. レ
,ノ ヾ ,, ''";l | / ̄/ l
./ ;ヽ .|. / ゙ー-; l
.l ヽ,, ,/ ;;;l | / /ー--'゙ |
| ,ヽ,, / ;;;| .|. /_/ |
| ,' ;;;l l ;;'i, ;| |. _ |
li / / l `'ヽ, 、;| / / / l
l jヾノ ,ノ ヽ l ,i| / / / ヽ
l`'''" ヽ `l: `''"`i `l / / l
.l ,. i,' } li '、 ;;' | |  ̄ ヽ
l ; j / _, -― ' ̄ ̄`ー‐-、_ | ノ ̄/ /´
, .--、,,__,,-' ̄;;"`´ ;; __ __, -―- 、;; ̄`l / ̄ / |
;; ,__ ;;' r ' ´;;; ヽ_ゝ_;;| lヽ, / .  ̄/ / |
;, Y´| l __ /`'| | | l l;| l ヽ l . /__/ /
| |.;;l_,-'l | V | |.l .| .| l i i | ;lヽ| l
|.| ''.|/ l |;;;| | | | ;| | | ;l l| i ;;;; l | l !! /ヽ │
;; i / .il /| |.| | | i | | l i '`i l /  ̄\/ ̄ ヽノ
まとめはこちら 内藤エスカルゴ http://localboon.web.fc2.com/
( ^ω^)は街で狩りをするようです 第29話はじまるよー
- 9 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 22:57:41.43 ID:6FBWOVnk0
- 登場人物一覧
――― チーム・ディレイク ―――
( ^ω^)B00N-D1:通称ブーン。本名ホライゾン・ナイトウ。年齢20歳。戦闘員。
セカンドに対する強い免疫を持つサイボーグ、「システム・ディレイク」。
ボストンでの失態から続く襲撃事件は、全て己の弱さが引き起こしたと考える。
その唯一の贖罪方法が「セカンドを狩る事」だと信じる。
ビロードを正しい道に進ませるのも、スネークに託された自分の責務であると考える。
ξ゚听)ξツン・ディレイク:年齢19歳。チームリーダー。
ブーンを改造した弱冠19歳の天才科学少女。
先の演説で、セントラルが直面している危機と、一致団結の必要性を説いた。
幼馴染であるブーンに恋心を抱いている。
('A`)ドクオ・アーランドソン:年齢21歳。武器開発担当。
豊富なアイディアで強力な武器や乗り物を開発し、ブーンの戦闘をサポートする。
ショボン、阿部と共に、「クー・ルーレイロ」なる人物とクローンシステムの真相を暴こうと企む。
( ><)ビロード・ハリス:年齢9歳。
ウィルス騒動の孤児。セカンドに対する強力な免疫を持っている。
小学校の入学を拒否され、誰にも頼らずに生きる事が正しいと考えるが、
ツンに諭される。15歳になった時はサイボーグにさせてもらう約束をした。
ノパ听)ヒート・バックダレル:年齢26歳。
2048年にフィレンクト・ディレイクが手がけたサイボーグ。
量産型システム・ディレイクのモニターに立候補する。
なお、米陸軍に所属していた3年間の功績は目を張るものがある。
- 20 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:02:45.19 ID:6FBWOVnk0
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――― チーム・アルドリッチ ―――
从 ゚∀从ハインリッヒ・アルドリッチ:年齢23歳。チームリーダー。
対セカンド人型戦闘兵器「バトルスーツ」の理論提唱者であり、開発者である。
新型バトルスーツ開発プロジェクトを着手している。
ジョルジュに恋心を抱いている。
( ゚∀゚)ジョルジュ・ジグラード:年齢35歳。戦闘員パイロット。
深紅の機体を操るバトルスーツ隊隊長だったが、セカンドウィルスに感染してしまった。
「IRON MAIDEN」と抗体によりセカンド化を抑えこむが、無情にも変異は始まろうとしている。
しかし、もし人の心を保つ出来るのなら、人として生きていたいと考える。
ガイル:年齢33歳。戦闘員パイロット。
バトルスーツ隊隊長。
先の戦いでは数多のセカンドを駆逐した。
お調子者の一面もあるが、正直で人情深い男。
春麗:年齢25才。戦闘員パイロット。
バトルスーツ隊隊員。
チーム内ではハインリッヒと双璧を成す美貌の持ち主である。
- 23 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:05:46.69 ID:6FBWOVnk0
-
――― 新旧セントラル議会議員 ―――
/ ,' 3荒巻・スカルチノフ:享年63歳。セントラル議会・議会長。
白髪の男にウィルス実験の被験者にされる。 生死は不明。
63歳で人としての人生に幕を閉じる事になった。
( ´Д`)モナー・ヴァンヘイレン:年齢不明。
モララーと共に独裁制の「新セントラル議会」を設立し、独裁者となる。
カリスマ性を発揮し、市民を一つにまとめた。
しかし、強引な手段で軍の整備を進めている為、現在は批判の声を浴びている。
――― セントラルの人々 ―――
(´・ω・`)ショボン・トットマン:25歳。バーテンダー。
現在は、不味いと不評のバー「バーボンハウス」の店主であるダンディな男。
2040年代に量産された戦闘用サイボーグらしいが、詳しい経歴は不明。
ドクオに仕事を依頼されるが単独では困難であると判断し、阿部さんに助力を頼む。
阿部さん 阿部高和:28歳。カレー屋の店長。
ksmsカレー阿部というカレー屋を営むイイ男。
その実態はサイボーグで、ショボン曰く高性能ガチホモ型インターフェースらしい。
ハッキングなどに長けているようだ。
- 29 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:08:39.92 ID:6FBWOVnk0
- ――― ラウンジ ―――
( ・∀・)モララー・スタンレー:年齢30歳。
バイオテクノロジーの権威「ラウンジ社」の元社員で、優れた科学者。
自身の研究成果である「Hollow Soldier」を従える。
フォックスに従い、彼の為にモナーとセントラルをコントロールしようとする。
( 〓 )Hollow Soldier(虚ろな兵士):年齢不明
モララーにより生み出されたデザインドクローン。
量産され、部隊として編成された。
ギコとの総力戦で全滅したかに見えたが、フォックスらの武力としてストックが残っていた。
( ^Д^)プギャー・ボンジョヴィ:年齢不明。プギャー総合病院の院長。
フォックスに従事している模様。
ビロード・ハリスの免疫について研究を進める。
彼の使う医療器具がラウンジ社製であるが、社との関係は不明。
爪'ー`)y‐:フォックス・ラウンジ・オズボーン年齢不明。
元ラウンジ社の男。クローンを用いた抗老処置を施しており、見た目は若い。
人類の知恵と可能性に限界を感じ、セカンドウィルスをコントロールしようと考える。
フォックスは、彼が思い描く新たな人類を「サード」と名づけ、
人類サード化計画の障害「ビロード・ハリス」を己の手で管理しようと目論む。
- 35 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:11:36.13 ID:6FBWOVnk0
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LOG セカンドウィルス・パンデミック 2054年 1月5日〜
ウィルスが地球に―正確にはアメリカはフロリダの宇宙センター―到達し、48時間が経過した後、
政府首脳部は政治機能をホワイトハウスから大西洋上へ移転させた。
その約30分後に政府首脳部との通信は途絶え、
これにより人々は、海上での安全は保証されないと悟った。
同タイミング、政府機能移転の前に命じられていた感染拡大防止令「封鎖」が
滞りなく終了し、その後、警察と軍隊は沈黙した政府とは独断した行動を取る。
当初は勇敢にも義務を果たそうと人民を守るが、武力保持者達もまた恐怖して疲労を募らせ、
遂には義務を捨てて守るべき対象を己の命へと変更。「封鎖」は強化される。
秩序が崩壊する中、アメリカから友好国へ避難しようと大勢の人間が空港へ押し寄せた。
あるいは一般普及していた自家用の航空機で海を越えようとするも、
果たしてその何割が海を越えられたのか……一切のフライト記録が残っておらず、不明。
友好国の迎撃によって撃ち落されたという噂も流れたが、この真偽も不明。
この頃には世界各国でセカンドが発生したと言われているが、これも詳細不明。
フロリダ以外の場所で火星からの帰還は報じられていない点から、
米国の人民若しくは輸出品の渡海が世界的蔓延になった有力説とされているが、
これもあくまで推測の域でしかない。
- 44 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:14:52.14 ID:6FBWOVnk0
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WHOが未知のウィルスに対して公衆衛生学的対策を講じられるはずがなく、
無慈悲なまでに素早く、セカンドウィルスはパンデミック(世界的感染流行)を遂げる。
世界各国は前例たるアメリカの没落を倣うように政府機能を失い、
人類は秩序と道徳から解放され、強奪と強姦、殺人の狂気に身を投じ、急速的に数を減らす。
あるいは、奴等に喰われ、犯され……。
異形の生命体“セカンド”と変貌したあらゆる生物。
彼等に制圧された地球で、錆を知らぬ合成金属製の建造物でさえも、
大小様々な爪痕を付けられ、姿を変えずにはいられなかった。
そして2059年、1月9日現在。
大都市ニューヨーク・マンハッタンは、今日も明かり一つ灯さず、沈黙している。
- 54 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:20:04.57 ID:6FBWOVnk0
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第29話「ツン・ディレイクの回想 −摩天楼の光−」
ξ;゚听)ξ「ビ、ビロード……ちょっと、休憩……!」
お気に入りのチェックのスカートが砂で汚れるのを気にせず、
ツンは地べたに座り込んで息絶え絶えに呟いたが、
( ><)「僕を捕まえたら終わりにしてあげますツンさん!」
少年ビロードは砂埃を巻き上げるのを一向に止めようとしない。
第4階層第5公園と味気なく名づけられたこの公園に一切の遊具は無く、
ベンチと、薄暗くなれば自動的に点灯する照明、時間置きにパターンを変える
噴水が唯一の目玉である、完全な憩いの為の公園だ。
人工陽光が夕暮れを模し、続いて夜を演出し始めると
愛を語り合う場所を求めて恋人がやって来る……。
そんな公園で遊び盛りの少年と遊ぶとなると、走り回る以外にツンは思いつかなかったのだ。
ξ;゚听)ξ「ムリムリムリ! アンタどんだけ体力有り余ってんのよ!?
もう『ツンちゃんに捕まえられたら死亡ゴッコ』はオシマイにしましょ!」
( ><)「えー……結構楽しかったのに」
ギラリと光る義手を振り回して襲い掛かってくるのがスリリングだっただけに、
ビロードは露骨なまでに不満そうな溜息を吐いた。
- 60 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:23:52.28 ID:6FBWOVnk0
-
ξ;゚听)ξ「この後まだ仕事残ってるから今日はもう勘弁して!
なんか飲み物買ってあげるからさ、ね?」
(*><)「じゃあ終わりにしてあげるんです!」
勝ち誇ったような顔をして近づくビロード。
「やーい巻きグソまな板女! 僕を捕まえてみろなんです!」と煽られた時は
本当に拳骨を炸裂させようと躍起になったものだが……。
こうして無邪気に笑う彼を見ていると、自然と怒気が消沈してしまう。
やっぱり、子供とは可愛いものだ。こうあるべきだ。
ξ´゚听)ξ(っつーか巻きグソまな板女とか教えたのはドクオね……。
アタシがまず教育しないといけないのはアイツのようね……)
歯をぎりりと鳴らし、ツンは己の拳にドクオの修正を誓う。
「つ、ツンさん?」と尋ねられて、金属の拳に映る鬼のような形相に気づき、
ツンは柔らかな表情で咄嗟に取り繕う。
ξ;゚∀゚)ξ「あ、ああ何でもない! んじゃ、ちょっと近くで買ってくるから!」
「はーい」と返事をし、ビロードは噴水の縁石に飛び乗る。
まだまだ体力有り余ってるわねー、と、楽しそうに走り回るビロードの姿に、
ツンはふと、幼き頃のブーンの姿を重ねた。
ξ゚听)ξ(アイツも昔は無邪気に走り回ってたわよねー)
- 63 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:26:50.11 ID:6FBWOVnk0
- 時刻は17時を周った頃。
ここら一帯は都市郊外を指す区画で、閑静な住宅地以外に目ぼしい物は無く、
定時を迎えた働き蟻を家に送るアクセサーの他に音は存在しない。
ビロードくらいの子供は『セントラル』が定めた門限を厳守し、
携帯端末の通信ゲームをとうに終えて帰路に着いている頃であろうか。
中には親を失った悲しみに暮れて遊ぶ気にもならない子供も当然いるだろう。
そう想像する内に幼馴染が犯した罪が如何に重いのかを再認識し、ツンは暗澹する。
同時に、ブーンもまた親を失ったウィルス被害者である事も……。
ξ゚听)ξ(はあ……こういう時はココアね。どういう時でもココアだけど)
自販機の前に到着し、ツンは携帯端末を備え付けのモニターにかざした。
2000年頃より自販機の形状と機能は然したる変化を遂げておらず、
この長方形の分厚いボックスはひっそりと利用者が訪れるのを待っている。
自販機とのリンクを終えてアイスココアの注文を受けると、
チャリン、と小銭を落としたような音を鳴らし、最後に自販機は
商品を取り出し口に落とし「Thankyou」と録音された声を無感動に再生した。
缶を取ると、期待していた通り火照った手の平が冷たくて気持ち良い。
2つの缶を両手の中で転がしながら、ツンは来た道をのんびりと戻る。
冬の季節、地下は地上の太陽に倣って早々と姿を消す。外周と天蓋には夕焼けが反映されている。
ビルの谷間から覗く、外壁に描かれた赤い夕陽のヴィジョン。
あの日も、夕陽が大都市を真っ赤に染めていたっけ……。
ξ゚听)ξ(アタシ達が両親を失ってちょうど6年目か……)
- 66 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:31:13.77 ID:6FBWOVnk0
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LOG 2054年 1月7日 ニュージャージー州プリンストン
『セントラル』。
後にそう呼ばれる事となる、セントラルパークの地下に広がる全5層の巨大エンターテイメント施設。
そこがマンハッタンで唯一安全な場所になるだろうと知らされたのは、父からの電話だった。
前日、1月6日。
ロサンゼルスでの仕事を終えた父と母だが、アウトブレイク発生により、
ジョン・F・ケネディ空港で12時間の足止めを食った為にセントラルパークへの到着が遅れたらしい。
しかし、コネクション伝いでウィルスの危険性を細かに知っていた父は、感染ルートのシャットアウトを期待できる
『セントラル』のシェルター構造に目を付け、既に各方面に連絡して階層工事を施行させていたのだ。
父の判断と人望が無ければ『セントラル』の工事は遅れ、人類は今ほどの数を保っていなかっただろう。
汚れきったマンハッタンで上質な水と空気を得るには高水準のインフラが必要となる。
外部からの水源を利用しない完全独立かつ無人運営のインフラを『セントラル』は完備しており、
避難場所としてはまさに打って付けの施設であったと言えよう。
足りない物は感染者を完全にシャットアウトする強固な構造。
やっと繋がった父との電話は、既にYOGAのドロイドが鉄を打つ濁音が混雑していた。
ξ;゚听)ξ「それで、お母さんも一緒なの!?」
取り乱さずに受け答え出来ていたと思うが、
実はこの時、パニック状態で持ち物をバッグに詰め込んでいた。
後でバッグを開いてみると、パソコンとココア以外の物は不必要な物ばかりだった。
- 72 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:36:35.52 ID:6FBWOVnk0
-
『ああ、デレも一緒だ! 安心しなさい!
お前の事はナイトウさんに頼んであるから、一緒にマンハッタンへ渡ってくれ!』
ξ;゚听)ξ「向ってって……街は何処も彼処も危険なのに!
渡ってくれだなんてムリよ絶対!」
『そうかもしれない。だが、ニュージャージーからここまで来なければ
お前もナイトウさん達も、皆セカンドに殺されてしまう』
ξ;゚听)ξ「セカンド?」
『奴等の呼称さ。どこぞの誰かがそう呼んだらしい……そんな事はどうでもいい!
とにかく! 無責任だが何とかここまで来て欲しい!
すぐにプリンストンから脱出してマンハッタンまで来なさい! 後は父さんが絶対に守ってやる!』
「幸運を!」という言葉を最後に、通話は一方的に切られた。
ξ;゚听)ξ「軍隊が歯が立たないって噂なのに、どうやって守るって言うのよ……」
モニター通信を終えても尚、真剣な父の顔を容易に頭で描く事は出来たが、
「セカンド」と呼ばれる奴等を撃退する父の姿は想像できなかった。
現物はまだ存在していなかったものの、システム・ディレイクと題打った
サイボーグシステム理論で生物工学の権威に立った父だが、父自身は生身の人間だったから。
- 75 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:41:27.82 ID:6FBWOVnk0
-
ξ;゚听)ξ「と、とにかく! ナイトウと合流しなきゃ!」
通話を終えると急に心細くなったのを覚えている。
ポケットに銃を突っ込み、スニーカーを履き、玄関のドアを開ける準備が出来ても、
この向こう側に広がるパニックを嫌にも想像してしまうと、怖気づいて身体は動かない。
ドアのロックに手を近づける事すら叶わなかった。
ξ; )ξ「ひっ…………」
現に、酷い喧噪が壁とドアを突き抜けて聴こえていたのだ。
父から電話を受けた際、最初の父の指示は「家中のカーテンを締めろ」であり、
従順にその指示をこなした為に、外の情報は音が伝えるもの以外分からなくなっていた。
これが返って余計に恐怖を感じる原因になっていたのかもしれないが、
セカンドに見つからない為の正しい処置であったのは間違いなかった。
ξ; )ξ「はぁ……はぁ……ムリ、ムリよ、こんなの……!」
この家のすぐ近くで、奴等が闊歩しているのかもしれないんだ……。
ナイトウの家は走って5分足らずだというのに、外に出るのが堪らなく怖かった。
何秒、何分、じっと息を殺していたのだろうか。
その時の記憶は曖昧だが、突然ドアの向こうで物音が鳴ってからの記憶は鮮明に残っている。
- 78 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:44:06.62 ID:6FBWOVnk0
- 何者かが石畳の上を歩く音を確かに聞き、一歩後ずさりした。
数瞬の後、ドアノブが独りでにガチャガチャと動き始めた。
震えのせいもあるし、扱うのは初めてだから、銃のセーフティを外す手付きは覚束無かった。
ドアが開かないと知ったのか、ドアノブは動きを止めてくれてアタシは安心した。
しかし次の瞬間、不意に携帯端末が鳴り響き、心臓が止まりそうになるほど驚いた。
そしてすぐに「なんで音を切っとかなかったのよ! バカ!」と思わず大声で自虐した。
完全に恐慌状態に陥っていて、大声を出したのを後悔する気も回らなかった。
そんな状態のまま、モニターに映る「ホライゾン・ナイトウ」の文字に気づけたのは幸運と言える。
僅かにも残る冷静さでモニターを確認したとは、今となっては微塵にも思えない。
縋る様な気持ちで通話に応じる。
『ツン! ドアを開けるお! 僕だお! 早くドアを開けるお!』、耳を突く叫び声が
スピーカーと、そしてドアの向こう側から抜けて、静寂した廊下に響いた。
ξ;凵G)ξ「へ? じゃあドアの前にいるのって……」
『僕だっつってんだお! 早く開けるお!!』
それでも、恐る恐るな調子でドアの鍵を開ける。
ドアが勢いよく開かれ、ナイトウがアタシの事を抱きしめようと飛び込んできた。
そんな彼に対してアタシは、
- 81 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:47:08.09 ID:6FBWOVnk0
-
驚かすんじゃねええええ! ξ;凵G)三○)ω^) え、あ、なにすん!?
アタシは、渾身の左ストレートを炸裂させたのだ。よく覚えている。
今思えば、パニック状態に陥っていたとしても、酷い仕打ちをしてしまった。
尤も、今現在、アタシを「巻きグソ」と罵るアイツを殴る事に抵抗は無いが。
「ホ、ホライゾン! 奴等がいたのか!?」
(;^ω^)「ち、違うおトーチャン! 化物は化物だけど! いってええ……」
ξ;凵G)ξ「お、おじさん!」
大声を聞きつけ、近くで警戒していた“おじさん”が駆けつけてきた。
ああ、本当に懐かしい……今でも写真や映像を見なくとも、よく思い出せる。
- 83 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:50:00.71 ID:6FBWOVnk0
-
(;ФωФ)「やれやれ、ツンちゃんに殴られただけか……その様子だと、無事のようだね。
フィレンクトから話は聞いた。詳しい事は後だ、今は一刻を争う」
構えたショットガンから手を離し、アタシの身体を起こしてくれた“ロマネスクおじさん”。
J(;'ー`)し「早くなさい! あなた達が大声出すから、奴等に気づかれたかも!」
装甲車の運転席からだったが、いつも叱り付ける様に言った“カーおばさん”。
警察機関の特殊部隊に所属する二人は、種類様々な銃器を身体中に提げていた。
アタシの家もナイトウの家も両親が共働きだったのよね。
だから小さな頃から一緒に遊ぶようになって。
どちらかのお母さんが早く帰ってきた日は、一緒にご飯を食べて、また遊んで……。
勉強しなさい!って、ナイトウ、おばさんによく怒られてたわね。
( ФωФ)「カーチャンの言う通りだ。さあ、急いでマンハッタンへ渡るぞ」
そう指示するおじさんの顔はいつに無く真剣だった。
壁や窓の向こう側から聞こえる音は紛れもなく現実の物だったが、
しかし、ドアノブを開けるのも躊躇していたのは、現実を直視したくなかったという恐怖の表れだろうか。
おじさんのあの剣幕は、助けが来て浮き足立ったアタシへの忠告だったように思える。
同時に、初めて外の世界を目の当たりにするアタシに、
我々の街、プリンストンが、如何に危険な状況であるのかを伝えたかったのだろう。
- 86 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/13(日) 23:53:52.99 ID:6FBWOVnk0
- にも関わらず、装甲車に乗り込んだ途端、外見の頑強さと、
光を入れない車内の薄暗さ、エンジンなどが鳴らす喧しい走行音が働き、、
外界から再び遮断された事でおじさんに持たされた危機意識は薄れてしまった。
それどころか、対テロ用装備を身に纏ったベテラン2人と共に行動しているのだから、
既にアタシは無事が保証された気でいたのだ。
( ^ω^)「ツン、この銃、実は軍に導入されたばかりのレーザーガンなんだお。
射程距離は実弾の方がずっと優れてるけど威力はダンチだお!」
ナイトウはナイトウで、乱雑に積まれている銃を一つ一つ取っては、
何処ぞで覚えた知識を嬉々とした表情で説明してきた。
ξ゚听)ξ「んなもん知ってるわよ。戦術高エネルギーレーザー兵器のダウンサイジングは
アタシのお父さんが見出したようなモンなんだから」
アタシもアタシで、乗り気でブーンに返事を返していた。
ブーンに乗せられたという感じだったか。
全身に蔓延る恐怖は排除され、むしろ緊急事態中の慌しさや緊張感を
愚かにも楽しんでいたと、今なら省みることが出来る。
車内だけ、いや、運転席とはカーテンで区切られたアタシとナイトウの空間だけは、
遠足に行っているかのような雰囲気だった。
- 89 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:00:20.51 ID:FHNRtWY+0
-
( ФωФ)「呑気に喋ってるんじゃない。舌噛むぞ」
そこにおじさんの冷めい声が入り込んだ。
その時おじさんがどんな表情をしていたのかは分からない。
だが、居心地の良い空間を乱された気がして、態度を改めようとはしなかった。
( ^ω^)「でもトーチャン達、既にセカンドの巣と化した警察署から
この車を盗んできたんだお?」
( ФωФ)「……命辛々な」
( ФωФ)「奴等を甘く見るな。成長や進化に個人差があるようだが、
お前達が信頼するレーザーガンすら歯が立たない連中も多い」
ぴしゃりと言うロマネスクさんに少し気圧されるが、ブーンの緩んだ口は締まらなかった。
信じられない、そのようにタカをくったような余裕のある表情をアタシに向けた。
父と母をよほど信頼していたのだろう。
一方でアタシはようやく態度を改め、深刻さを思い出す。
軍隊すら敵わないというニュースは見ていたし、
それを思い返せばレーザーガンへの信頼など綺麗に消え去った。
- 91 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:02:21.35 ID:FHNRtWY+0
-
ξ;゚听)ξ「……お父さんはアタシ達を絶対に守るって言ってたけど、
どうやって奴等と戦うつもりなんだろう?」
そして胸の奥から吹き上がった不安を、耐え切れずに口に出した。
ロマネスクおじさんなら何か知っているかもしれない。
そう思って、疑問をどうにか発散させたかったのだろう。
( ФωФ)「アイツは自らにシステム・ディレイクを搭載するらしい。
今、アイツはデレさんと共に手術を行っている最中だろう」
ロマネスクおじさんは期待通り、知っている事を答えてくれた。
ξ;゚听)ξ「でも、システム・ディレイクったって、たかがサイボーグよ?
軍隊でも歯が立たない連中を相手に出来るはずが……」
しかし不安は拭えなかった。肉体組織を機械に置き換えた強化人間とはいえ、
奴等に対して万全な攻撃手段を持ち合わせているという訳ではないからだ。
( ^ω^)「武器はそれだけじゃないお、ツン」
それを懸念しているのを見透かしたように、ナイトウは言った。
ロマネスクさんがナイトウに続く。
- 94 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:05:47.29 ID:FHNRtWY+0
-
( ФωФ)「それについては順を追って話そうか……火星でのパンデミック発生の後の事だ。
バイオテクノロジーの権威ラウンジ社の協力により、
数多の血液サンプルからウィルスに対する免疫が発見されたんだ」
( ФωФ)「ウィルスを殺す唯一のワクチン……奇しくも、我々ホライゾン家と
ディレイク家が、その持ち主だったんだ」
ξ;゚听)ξ「じゃあ、アタシ達は感染しないのね!?」
一先ず、感染しないという事を知って安心を取り戻した。
( ФωФ)「感染経路は不明だが、我々が汚染区域で活動してもセカンド化する事は無いはずだ」
「尤も、奴等は容易に、我々に致命傷を負わす事が出来るがね」。
ロマネスクおじさんの後押しにより、消えかかっていた危機意識が再び胸の奥で蠢いた。
( ФωФ)「武器の話に戻そう」
( ФωФ)「先日、フィレンクトがロスに飛んだ事だ。
君は聞かされてないと思うが、あれはウィルス絡みの仕事だったんだよ。
フィレンクトは政府に直々に任命された一流の科学者の一人として、ロスに集った」
( ФωФ)「我々の血液から捻出した抗体を、攻撃手段へ変える研究の為に。
開発されたそれはブルーエネルギーと名づけられ、
その照射銃器は、この車にも転がっているレーザーガンを元に完成させたらしい」
ξ;゚听)ξ「ブルー……エネルギー……」
- 96 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:08:47.47 ID:FHNRtWY+0
- そこで突然、甲高い音を立てて車は停車した。
あぐらなどをかいていたアタシとブーンは、慣性に振り合わされて硬い壁に打ち付けられる。
気が動転する中、おじさんの声を聞いた。
(;ФωФ)「奴等だ! クソ! 車じゃ突破できそうにない!」
「お前達は車から出るんじゃない!」。
そう残して、おじさんとおばさんは車から飛び出していった。
( ;゚ω゚)「トーチャン! カーチャン!」
ξ;゚听)ξ「おじさん! おばさん!」
「出るんじゃないぞ!!」。
おじさんの叫び声は分厚いガラスを突き抜けて届いた。
アタシはまだ、外の世界をよく知らなかった。
薄暗い家の中から、薄暗い車の中へと。
そうして一切の光と情報がシャットアウトされた空間を転々とし、
奴等とはまだ一度も対面していなかった。
そんなアタシに現実を学ばせたのは、愚かな好奇心だった。
科学者の端くれである以上、生物の異常変異をどうしても見たかったのだ。
おじさん達を心配するよりも優る、奴等への興味が、アタシにカーテンを開けさせたのだ。
- 99 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:13:34.40 ID:FHNRtWY+0
-
ξ;゚听)ξ「ひっ!?」
( ;゚ω゚)「うおっ!?」
カーテンを開けた瞬間に、小さな防護ガラスは血に染まった。
血の飛沫に塗れたのではなく、奴等の蒼白い手に滴る血でガラスは汚されたのだ。
そいつは透明な壁があるとでも思ったのだろうか。
死体のように血の気を失った手がガラスを殴りつけた。罅は入らない。
諦めたのか、ガラスを殴りつけるのをピタリと止めた。
様子を見ようと、ナイトウとアタシは恐る恐る窓に顔を近づけた。
すると、前触れ無く、
ξ;゚听)ξ( ;゚ω゚)「「うわああああああッ!?」
蜘蛛のような頭を持った「何か」が、窓に現れたのだ。
凹凸の激しい頭にはびっしりと毛が生え、八つの人間の瞳が顔中に埋め込まれており、
大きく裂けた口には牙が均整無くずらりと並んでいた。
窓から、ではなく、その奇怪な生物からアタシ達は咄嗟に離れた。
- 102 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:16:31.77 ID:FHNRtWY+0
- アタシはひたすら叫びながら、車内のすみで縮こまった。
ナイトウは勇敢にも震える手で銃を握り、今にも撃ち出さんとばかりに銃口をそいつに向けていた。
がんがん、と大きな音の響きと共に車が激しく揺れ始めた。
小さな空間から逃げ出したい気分に駆られたが、逃げ場などどこにも無い。
アタシは目を瞑って泣き叫び、自分の声で恐ろしい衝撃音を掻き消す事でしか抵抗出来なかった。
(;^ω^)「落ち着けお! もう大丈夫だお!」
パニックを起こしていたアタシを落ち着かせようと、ナイトウは後ろから抱きしめてくれた。
ξ;凵G)ξ「もうだめ! あいつらに食い殺されて死ぬのよ!」
(;^ω^)「だから落ち着けって! もう車も揺れてねーお!」
ξ;凵G)ξ「へ?」
気づけば、あれほど揺れていた車は安定していた。
冷静さを取り戻すと、ガラスにへばり付いていた蜘蛛の顔も無くなっていた。
だが、ガラスの向こうには、まだ奇怪でグロテスクな蜘蛛人間の姿が見える――何かと対峙していた。
蜘蛛人間は、蒼色の光に全身を撃ちぬかれた。
すると銃創から泡だった血肉が溢れ、アタシが息を飲む間にはもう、奴等は跡形も無く溶けていた。
- 104 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:18:06.31 ID:FHNRtWY+0
-
(;^ω^)「あれがブルーエネルギーだお」
アタシはナイトウの手を振り解き、窓に詰め寄った。
光線の軌道を追うと、そこには記憶に無い型のハンドガンを持った、
おじさんとおばさんが無傷で立っていたのだった。
二人は周囲を見回した後、車に乗り込んだ。
(;ФωФ)「ふー……フィレンクトがコイツを寄こしてくれていなかったら、家族共々死んでいたな」
単なるレーザーでは、奴等は身体を再生させ、死に至らせるのは難しい。
しかし抗体によるウィルスの死滅効果を付与したレーザー攻撃なら、殺害は可能となった。
J( 'ー`)し「あら? 手柄はフィレンクトのブルーエネルギーだけかしら?
貴方、二匹しかやってないじゃない。襲ってきた奴等の大半を仕留めたのはアタシよ?」
(;ФωФ)「いやーハッハッ……面目ないなぁ。やっぱりカーチャンには敵わないよ」
緩やかなウェーブがかかったブロンドヘアーを掻き、
おばさんは口元を釣り上げて得意気にそう言った。
- 105 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:20:24.37 ID:FHNRtWY+0
-
ξ;゚听)ξ「警官って事は知ってるけど……あれ、本当におばさんよね……?」
逞しく、勇ましく、そしておじさんを尻に敷くような物腰のカーおばさんに唖然とした。
はじめて見るおばさんの一面だったが、妙に堂に入っていて、
キッチンで炊事をこなしている姿よりも何故かしっくりしているように見えたのだ。
(;^ω^)「プリンストンのガンマスター……ウチのカーチャンの正体だお。
僕も今、初めてその姿を見たお……」
「さあ、先を急ごうか」。
前部席から振り向いて見せたお二人は柔らかな笑みでそう言った。
いつもの笑顔。しかし少し得意そうな色を帯びていてた。
アタシは見直したとも思わず、お二人の笑顔から慣れ親しんだホライゾン家との日常感も取り戻せず、
ただただ「信じられない」と心の中で呟いていたのだった。
- 107 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:23:07.62 ID:FHNRtWY+0
- 道のりはアタシが想像していたような険しい物ではなかった。
化物を見るよりも生存者の姿を見るほうが遥かに多く、
車道を隙間無く埋める車は緩やかな水流の如く一方へと流れていた。
ビルの上層から望めば、青き海で隔たれた島と、海を縦断する巨大な掛け橋が見えるだろう。
ジョージ・ワシントン・ブリッジと、マンハッタン島である。
我々プリンストン市民の目的地はマンハッタン・ニューヨークで一致していた。
橋に近づくにつれ道は混雑の度を増していった。
進みの遅さと圧倒的とも言える車の数々がアタシに不安を抱かせた。
これは後に知ったことだが、軍が検問(サーモグラフィによるウィルスチェック)と
交通管理を実施していた為、プリンストン市民の渡島には途方も無い時間を要していたのだ。
プリンストン市民の多くが死亡、あるいは異形と化し、
安全を求めるべき生存者は少ない方だったのだろうが……それでも渡島は、
この時点で避難開始から6時間を迎えていたのだった。
( ФωФ)「まずいな……甘かったか」
窓から後方を見て、ロマネスクおじさんがそう呟いた。
つられてアタシとナイトウも後ろを見やる。
ξ;゚听)ξ「もうじき、夜になるのね……」
夜。その恐ろしい噂は何処からか伝わっていた。
遠くの空では夜の帳が落ち始め、恐ろしい夕闇の訪れを我々に告げていた。
ここまでアタシ達が無事に行けたのは、奴等の殆どが日を恐れていたからだ。
- 109 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:26:19.91 ID:FHNRtWY+0
- 橋と、摩天楼は見えている。
だが、橋へ辿り着くまでの猶予はそう残されていない。
そう認識したのは我々だけでなく、いや、市民全員がそうであった。
車を捨て、人が人を押し寄せて赤き摩天楼を目指す。
母親が我が子の手を引き、沈み消えようとする希望の光の方へと走る。
日の光とビルに灯された人工の光は、どちらもが眩しく見え、
彼等が橋の手前で蠢きながら届かぬ光に手を伸ばす、その気持ちが痛いほどに分かった。
同時に我々の渡島も、彼等と同様に困難だと痛感した。
絶望したアタシは思わずロマネスクさんの顔を仰ぎ見る。
彼の顔は確かに焦りを浮かべていたが、絶望に染まってはいなかった。
( ФωФ)「正規ルートではないが、リンカーントンネルを経由する。
既に軍の封鎖管理下にあるルートだが、
フィレンクトから貰ったこの紹介文があれば通してくれるに違いない」
(;^ω^)「違いないって、確証は無いのかお?」
( ФωФ)「確証は無いが、この紹介文で橋をスムーズに通過出来ていたんだよ。
本来なら採血をしてウィルスの潜伏有無をチェックするのだが、その手間を省ける」
それを聞いてアタシはホッとした。
夜の訪れに怯えながら採血の順番を待つだなんて、気が気じゃ無くなるだろうから。
果たして全員を避難させるのに何時間、何日かかったのだろうか……。
いや、数日経つ頃には、もう……。
- 110 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:29:22.33 ID:FHNRtWY+0
-
J( 'ー`)し「夜が来る前に軍も撤退を開始するよ。その後、橋は落としちまうのさ。」
ξ;゚听)ξ「え?」
J( 'ー`)し「封鎖作戦の完遂だよ。政府としてはこれでも譲歩した封鎖作戦を
行っているつもりだろうけど、彼等の殆どが犠牲になるだろうね」
「いや、これでも犠牲を最小限に留めた封鎖作戦、と言った方がいいかもしれないわね」。
毅然とした態度でおばさんはそう言った。
感情を悟られぬ風な言い方だったが、おばさんはいつも嘘がヘタだった。
それにおばさんの仕事は市民を守る仕事。
ご両親は本来守るべき者達を、見殺しにしようとしていたのだ。
さぞ辛い事であったろう。
アタシも罪悪感を感じていた。
でも、自分が助かるという事実は、アタシに安堵と愉悦を味わせていた。
邪悪な本性に、自己嫌悪する事も無かった……そんな余裕すら無かったのだ。
ただただ、奴等が恐ろしく、一刻も早くセントラルに辿り着きたいと、
その気持ちだけが逸っていたのだった。
- 112 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:33:10.53 ID:FHNRtWY+0
-
( ^ω^)「……早く行こうお」
ξ;゚听)ξ「ブーン……」
ぽつりと呟き、両親を急かすように、一人車に乗り込むブーン。
罪悪感に苛まれていたのはブーンも同様だったと思う。
あの群集の中に、一体何人の友人がいただろうか。
そう想像すると吐き気を覚えるくらい居心地が悪くなり、逃げ出したくなったのだ。
無言で皆が車に乗り込んだ。
バタンとドアが閉め、薄暗い空間で膝を抱える。
ξ; )ξ(怖い……早くお父さんのいるセントラルに行きたい……)
この時、外界と遮断された空間が、なんと安心できる場所なのだろうと思った。
免れようの無い大勢の死という現実から、一時的に目を逸らし、不安を拭う……。
この逃避行は荒巻スカルチノフが目指した偽りの安寧、限りある平穏と酷似していたと、今は反省できる。
そう……夕闇の街、そして夜が作り出す更なる暗黒の世界は、
目を逸らす事も、装甲車の中で縮こまる事も許されない、壮絶な現実へとアタシを連れ戻す事になる。
太陽の光を浴びたのは、この日が最後だった。
……おじさんとおばさんの笑顔を見たのも。
- 115 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:40:53.22 ID:xNreMag7O
- こ、こちらブラボーチーム!
SALの群れに囲まれた!
至急増援を…う、うわああああああああ!
- 117 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:44:48.60 ID:FHNRtWY+0
- ※
( ФωФ)「もうすぐリンカーントンネルだ。しかし妙に静かだ。
トンネルから渡島を試みる生存者も少なからずいると踏んでいたのだが……」
おじさんはアタシ達の不安を煽るつもりはなかっただろう。
きっと、万が一の危機に備えよ、そういう警告を発したかったのだ。
だが否応無く恐ろしい想像が脳をかき乱した。
角を曲がれば惨殺死体と、おぞましい容姿の化物がいるんじゃないかって。
J( 'ー`)し「悪い想像が当らなきゃいいわね……」
おばさんが銃のセーフティを外しながら呟く。
先の見えない角に差し掛かる。
アタシは目を瞑り、両手を握って無事を祈った。
(;ФωФ)「これは……」
嫌な予感の方が当ってしまったのだと、すぐに理解した。
内藤が外の様子を見ようとカーテンを開ける。
開けて欲しくなかった。何も知らぬまま渡島を遂げて欲しかった。
怯えきった心にも好奇心とは残る物だ。恨みすら覚える。
トンネルの付近で何が起こっているのだろう?
非力なアタシがそれを知ったところで泣き喚くしか出来ないというのに。
- 120 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:47:41.81 ID:FHNRtWY+0
-
ξ; )ξ「ヒッ!?」
( ;゚ω゚)「うっ……」
地面も、建物も、信号機も。
現実の世界は全てが血に染まっていた。
だというのに死体が一つも無かった。骨も残さず、何者かが喰らったのだ。
一方でトンネルに血痕は続いておらず、何かが潜んでいるような痕跡は見当たらなかった。
故に冷静なおじさんですら、この場で足止めを喰らっていた人々や、
封鎖管理していた軍人が襲撃を受けて絶命したのだろうと、想像したのだ。
(;ФωФ)「……奴等の襲撃の後だろう。周囲に気配は無い。
通過するなら今のうちだ。行こう!」
エンジンが再び高鳴りを上げる。
アタシ達は、その場から逃げるように、薄暗いトンネルへと進んだ。
- 121 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:51:05.38 ID:FHNRtWY+0
-
電源はまだ生きており、電光が灯ったトンネル内は明るかった。
奴等の多くが闇を好む習性を持つ為、人工の明かりは心強かった。
ξ;゚听)ξ「ほっ……」
気味の悪い血痕も見当たらない。
ようやく胃のあたりを満たしていた恐怖と緊張が消え去る。
脱力して壁にもたれると、酷く疲れていた事に気づいた。
もう安全だ。とでも思い、緊張感を手放してしまったからだろう。
だから、急に視界が流転した時は何が何だか分からなかった。
内藤や、ご両親が叫んでいて、アタシも悲鳴を上げていたのだろうか。
妙に車内が騒然としていたとしか、この瞬間は記憶していない。
だが今思えば、奴は獲物がトンネルに入り込むのを、身を潜めて待っていたのだろう。
トンネルの入り口に痕跡を残さず、獲物を油断させる狡猾な知恵を得ていたのかもしれない。
- 124 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 00:55:55.58 ID:FHNRtWY+0
-
まったく前触れが無く、そして瞬く間に起こった出来事であった。
突然、防護ガラスが甲高い音を鳴らして割れ、運転席の方で緑がかった触手が縦横した。
おじさんの体を締め上げるように巻き付くと、一気に車外へ引きずり出したのだ。
(;ФωФ)「うあああ―――――――ッ!!」
ぶちっ、と嫌な音が聞こえた後、おじさんの腕がフロントガラスの向こうで舞った。
( ;゚ω゚)「トーチャン!!」
J(;'-`)し「アナタ!!」
おばさんがドアを開けて救助に向おうとした。
だけどおじさんは、
(;ФωФ)「私が食い止める! 先に行け! すぐに追いつく!」
おばさんに向ってそう叫んで、援護を断ったのだ。
すぐにドアを力強く閉める音が響く。
愛する者を見捨てるかどうかを決断するには、短すぎるように思えた。
エンジンの快音と共に視界が再び流転する。
おばさんは車を走り出させたのだ。
- 129 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:01:03.13 ID:FHNRtWY+0
-
( ;゚ω゚)「カーチャン!? トーチャンを見捨てるのかお!?」
J(; - )し「…………」
( ;゚ω゚)「トーチャン! トーチャン!!」
窓を開け、身を乗り出してブーンは後方を見る。
同時に、おじさんの悲痛な叫び声が車内にまで入り込んできたのだ。
窓から見えるサイドミラーでアタシも、その光景を見ていた。
緑色の巨大な何かが、おじさんの足をもいだのを。
それまで、爆音と共に何度もトンネル内を蒼く染めていた光が、ぱたりと止んだのを。
( ω )「トーチャン! う、うああああっあ゙あああああああああああ!!」
アタシは無理矢理、内藤の身体を車内へと引っ張った。
愚かにもアタシは、気が狂ったように泣き叫び続ける内藤に、
「嫌! 嘘! こんなの嘘でしょ!!」と、慰めを貰おうと泣き喚いたのだ。
- 133 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:05:02.88 ID:FHNRtWY+0
- 「黙りなさい!」
思いもせぬ叱咤。
ビクリと大きく肩を浮かせ、おばさんの方を見やるアタシと内藤。
おばさんは前をじっと見据えて、嗚咽を漏らす事も無く、運転に専念していた。
おばさんは何かを語りかけようとしなかった。
バックミラーに映るおばさんの瞳に涙は無かった。
おじさんの意思を継ぎ、気丈に、冷徹になろうと、あえて何も喋ろうとしなかったのかもしれない。
それがかえってアタシには辛く、涙を止め処なく流させた。
ξ;凵G)ξ「う、くっ…………」
( ;ω;)「カーチャン……ううッ……」
だけど、おばさんの気も知らずに泣き喚くのは止めた。
おじさんは、自ら犠牲となる道を選んだのだ。
アタシ達を逃がす為に。
この時、ブーンがどんな思いをしていたのか、アタシには計り知れない事だった。
だが、現実は更に非情に、アタシ達に迫った。
- 137 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:09:38.95 ID:FHNRtWY+0
-
J(;'-`)し「チッ……」
バックミラーに何度も睨みつけるおばさん。
酷い汗を額に濡らし、額と頬に張り付いたブロンドの髪がくたびれて見える。
奴が追ってきている。
小さなバックミラーに映し出されたおばさんの表情が、そう物語っていた。
ξ;凵G)ξ「そ、そんな……」
( ;゚ω゚)「と、トーチャン! トーチャン!!」
窓から後方を覗き見る。
細長い緑色の管だけで人の形を成した巨大な異形が、
車よりも遥かに素早く這いずって我々を追ってきている。
そして、まるで見せ付けるように、四肢を失ったロマネスクおじさんの遺体を、
口を持つ数多の触手で啄ばんでいるのだ。
目玉をくりぬき、背骨を抜き、背骨に張り付いた肉を啄ばみ……。
もはや原形を失ったロマネスクおじさんの身体を見て、アタシは嘔吐してしまった。
- 140 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:12:00.58 ID:FHNRtWY+0
-
(; ω )「アイツ……ぶっ殺してやる……!!」
内藤は、転がっていたレーザーガンを手に取る。
再び窓から身を乗り出し、銃口を奴に向けた。
カチッ、カチッ、と乾いた音が僅かに聞こえる。
( ;ω;)「クソ……何で撃てないんだおこれ!!」
「セーフティの外し方も知らないのに、仇を討とうなんて」
J( 'ー`)し「アンタらしいと思えばそうね、ホライゾン。貸してごらんなさい。
ほら、こうして……」
目にも留まらぬ速度で安全装置を解除し、数回発砲。
弾丸は全て狙いを外さず、奴の触手を奪い去った。
だが、奴は「補給」を必要としないくらい栄養を摂取していたのだ。
それに、おじさんを喰らっている。
瞬く間に失った部分を再生させ、意に介さず我々を追走し続ける。
- 143 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:15:59.05 ID:FHNRtWY+0
-
J( 'ー`)し「覚えたわね? いい? このBlueBulletGunのセーフティ解除も同じ手順よ。
この先はアンタがツンちゃんを守りなさい。そして、一緒にセントラルに辿り着くのよ」
BlueBulletGun。そのプロトタイプを、おばさんはブーンに手渡す。
この時、アタシ達にとって最後のブルーエネルギー兵器だったそれを、託すかのように。
( ;ω;)「か、カーチャン? 何を言って――」
J( 'ー`)し「車を止めるわ。すぐにアンタが私に代わって運転をするのよ。
いいわね? でも安心なさい。アイツを倒して私も必ず『セントラル』に向うわ」
( ;ω;)「う、嘘だ! そう言ってトーチャンは死んだ!
あんな奴に敵う訳ないんだお! 皆ここで殺されるんだお!!
だから、最後までカーチャン、一緒に――」
甲高いブレーキ音が響く。
奴に対し車体を真横に向けながら、車は急停止した。
J(#'-`)し「行きなさい!」
おばさんは運転席から飛び出す。
奴はおばさんが車から躍り出るなり、対峙した。
すぐに襲い掛かろうとする気配が無かったように思える。
嬲り殺そうとでもしたかったのだろうか。はたまた、生物の本能が闘争を求めたのだろうか……。
- 146 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:19:32.40 ID:FHNRtWY+0
-
J(;'ー`)し「アタシの夫を返して貰うわよ、クソ野朗」
( ;ω;)「カーチャッ―――!!」
彼女の、両手に持ったサブマシンガンの炸裂音が内藤の叫びを遮る。
J(;'ー`)し「行って!!」
( ;ω;)「嫌だ! カーチャン! もど――」
ξ;凵G)ξ「うああああああああああああああああああああ!!」
アタシは無我夢中でハンドルとアクセルを操作した。
何故そうしたのかは分からない。
恐怖と、非現実的な事の成り行きから逃げ出したのではないと思いたい。
おばさんの尊い精神がアタシを駆り立てたのだ。
そう思う事が、あの悪夢のような現実から逃避しているのかもしれないが……。
だが、ナイトウはアタシを許してくれてた。
本当は過ちを犯したアタシを……。
- 147 名前:訂正 ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:21:51.60 ID:FHNRtWY+0
-
J(;'ー`)し「アタシの夫を返して貰うわよ、クソ野朗」
( ;ω;)「カーチャッ―――!!」
彼女の、両手に持ったサブマシンガンの炸裂音が内藤の叫びを遮る。
J(;'ー`)し「行って!!」
( ;ω;)「嫌だ! カーチャン! もど――」
ξ;凵G)ξ「うああああああああああああああああああああ!!」
アタシは無我夢中でハンドルとアクセルを操作した。
何故そうしたのかは分からない。
恐怖と、非現実的な事の成り行きから逃げ出したのではないと思いたい。
おばさんの尊い精神がアタシを駆り立てたのだ。
そう思う事が、あの悪夢のような現実から逃避しているのかもしれないが……。
だが、ナイトウはアタシを許してくれてた。
本当は過ちを犯していたのかもしれない、アタシを……。
- 149 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:23:18.26 ID:FHNRtWY+0
-
(#;ω;)「ツン! ふざけんな! カーチャンがあそこにいるんだぞ!?
戻せ! 戻せよ!! 戻せって!!」
ξ;凵G)ξ「わあああああああああああああああああああああ!!」
(#;ω;)「戻せよ……うっ、くっ……ああああああ…………」
「あああああああああああああ! ぐっがッ、あっ、は……」
(#;ω;)「カーチャン!!」
サイドミラーは映し出す。
巨大なハンマーのような形に腕部を纏め、おばさんを横殴りに叩き付けたのを。
壁に叩き付けられ、力なく座り込んだおばさんは全身を触手に覆われ、
アタシとブーンの目から消え去ったのだった。
- 150 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:25:26.61 ID:FHNRtWY+0
-
(#;ω;)「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
奴の悦に浸る醜い声が、遠くから聞こえてくる。
奴はおばさんを喰うと満足したようで、もう我々を追ってはこなかった。
(#;ω;)「殺してやる! アイツだけは絶対に僕が殺す!」
震える手で握り締めたBlueBulletGun。
蒼く光る美しい銃身を見つめて、内藤はそう誓った。
ξ )ξ「……外」
外の光が見えてきた。
摩天楼のほんの一端が発する人工の明かり。
外に出ると、開きっぱなしだった窓に、軍隊の物々しい喧噪が一気に流れこんだ。
- 152 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:29:12.73 ID:FHNRtWY+0
-
ξ )ξ「……ニューヨーク・マンハッタン」
途方も無く高く聳えたつビル群に、そう呟いた。
見慣れたはずの無愛想なビルが灯す数々光が暖かく、だが、頼りなく見えた。
数多の金と資材、知恵を持ち込んで作り上げた摩天楼も、奴等に掛かれば砂の城なのだ。
この光を何人が求めたのだろうか。そして、この光は何人を救えるのだろうか……。
サイドブレーキを引いた後、圧倒的なビルを前に呆然として、
そのような事を考えていたのを覚えている。
「生存者だ! おい! あちらの様子はどうなっている!?
急に連絡が途絶えたんだ! おい! しっかりしろ!」
「待て! その子はディレイク家の令嬢だ!
ロマネスク・ナイトウが連れてくる手筈と聞いていたぞ!? ロマネスク氏はどうした!?」
「フィレンクト氏の紹介文とIDを確認した!
この子はロマネスクの息子、ホライゾン・ナイトウ! 免疫を持つ少年だ! 早急に保護しろ!」
誰かが叫びながら車のドアをこじ開ける。
アタシも、ナイトウも、応じる気力など残っていなかった。
- 155 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:31:29.70 ID:FHNRtWY+0
- 数人の手で担架に乗せられ、別の装甲車に乗せられる。
車の心地よい揺れに身体を任せ、薄暗い天井を見つめている内に意識がまどろむ。
そこで記憶は途切れた。
ξ゚听)ξ「……ここは……?」
次に目覚めると、アタシは柔らかいベッドと毛布に包まれていた。
冬のニューヨークの風が頬を冷たく撫ぜる事も無かった。
四方形の白い壁に囲まれていたのだった。
重たい頭をゆっくりと起こす。
ナイトウがアタシのベッドに腰掛けていたのに気づく。
( ω )「ツン…………」
ξ(;−;ξ「ロマネスク……カー……感謝します……」
そして、泣きながらナイトウを抱きしめる母の姿があった。
第29話「ツン・ディレイクの回想 −摩天楼の光−」終
- 160 名前: ◆jVEgVW6U6s :2011/02/14(月) 01:36:25.99 ID:FHNRtWY+0
- 長時間にわたりお付き合い頂き、ありがとうございました!
ねみいwwwwwwww
支援お疲れ様でした。ありがとうございました!
回想の後は合作で描いた序編の話に流れていくと思われます。
次は一ヵ月後以内を目標に頑張るお・・・頑張るお・・・