-2- 常
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:26:22.68 ID:oNGrT0ca0
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-2- 常
(#^ω^)「BoooooooooooN!!!」
<#`∀´>「二、ニダァァァァァァァァ!!!」
さながら二本の突撃槍は、互いにぶつかり合いながら壁に向かって突進を続ける。
その様子を後方で冷ややかな視線と共に眺めるいくつもの姿。
('A`)「さて、今日はどうなるやら」
ξ゚听)ξ「いつもと同じでしょ」
('A`)「だよなぁ」
学校の正門に勢いよく突っ込む二台の自転車。
その場に響く轟音。立ち込める砂埃。
(;^ω^)「き、記録は!?」
<#`∀´>「今日こそニダの勝ちニダ!」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:29:06.96 ID:oNGrT0ca0
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もの凄い勢いで壁に突撃したというのに、痛がる素振りも見せずに立ち上がる二人。
そしてその視線の先には、男の手中に収められたタイムウォッチ。
判定が、下る。
('A`)「コンマ0.3秒、内藤の勝ちだぜ」
沸き立つ歓声、飛び交う罵声。
(*^ω^)「イヤッッホォォォオオォオウ!」
<;`∀´>「ニ、ニダァァァァァァァァァァ」
右腕を振りかざし、勝利の雄たけびをあげる内藤。
苦虫を噛み、あちこちから飛ぶ野次に耐える二ダー。
(*,,゚Д゚)「よくやった内藤! 今日は俺のオゴリだぜ!」
(;゚ー゚) 「内藤君に賭けて得たお金なんだから当然でしょ」
(#´∀`)「二ダーは何やってるモナ! 一体、いくらお前につぎこんだと……」
(;゚ー゚) 「100円しか賭けてなかったじゃない」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:33:29.88 ID:oNGrT0ca0
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ξ゚听)ξ「全くあの馬鹿は……」
右腕を振り上げ、勝利の雄たけびを上げる内藤を後から眺める彼女に気付き、
その本人が急いで駆け寄ってくる。
(*^ω^)「ツン! 勝ったお! これで50連勝だお!」
ξ;゚听)ξ「いつの間にかそんなに差がついてたのね……」
(*^ω^)「足でも自転車でも、走ることに関しては負けらんないお!」
無邪気に笑う彼の作る力こぶは、なんとも頼りげの無い貧相なものだったが
それでも彼の笑顔を見ているとこちらまでつられて笑ってしまう。
ξ゚ー゚)ξ「ホントに馬鹿ね……」
仲間に囲まれながら教室へ向かう内藤。
後から眺めながら、ツンはゆっくりとそれを追う。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:34:17.18 ID:oNGrT0ca0
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教室の閉まりの悪いドアが鉄と鉄の擦れあう嫌な音を上げながら開かれる。
非常に五月蠅いため、ゆっくりと開けるのがクラスの中ではセオリーになっているのだが
それを守らないのはこの男である。
_
( ゚∀゚) 「授業始めるぞ、クズ共ー」
(,,゚Д゚)「教師の発言じゃねぇぞゴルァ!」
('A`)「そうだ、俺達がクズなのは担任の教えに問題があるからだぜ」
担任の長岡に向けて、次々に飛び交う批難の声。
基本的には、女子からの嫌われ具合に定評のある教師暦三年の長岡である。
_
( ゚∀゚) 「んだと? 俺のせいだってのか」
(,,゚Д゚)('A`)「おうよ」
_
( ゚∀゚) 「久々に切れちまったぜ……。いこうぜ、屋上によ」
(*゚ー゚)「……先生、早く授業を始めてください」
クラス委員長の言葉に、長岡が我に返る。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:36:24.88 ID:oNGrT0ca0
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(;゚∀゚) 「おう、悪かったな」
長岡は後ろ髪を掻きながら、教師の持ち歩く黒いアレを開き、出席を取っていく。
呼びかけに対し、元気な返事が返ってくる。
_
( ゚∀゚) 「よし、今日も全員出席だな。学生は何事も体が資本だから健康ってのは大事なことだ」
(,,゚Д゚)「うわっ。教師っぽいこと言ってやがる……」
('A`)「これは酷いな。教員面かよ……」
_
(#゚∀゚)「お前らマジでちょっとこい」
(*゚ー゚)「……先生」
委員長の視線が非常に痛々しいことに気付き、長岡は慌ててスマン、と謝る。
そして一つ咳をして取り直す。
_
( ゚∀゚) 「えーっと、一時間目は教室で視姦水泳だったな。女子は急いで着替えるように」
(*,,゚Д゚)(*'A`)「先生、素敵!」
(;゚ー゚) 「もうヤダ、このクラス……」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:41:18.42 ID:oNGrT0ca0
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その後、男子の猛烈なブーイングの中、いつもどおりの授業が行われる。
しかしいつまでたっても女子の長岡への視線は鋭い。
_
( ゚∀゚) 「えー。つまり、クオリティ社会において品質向上は非常に重要な役割を果たし……」
( ^ω^)(ツン、今日の放課後は暇かお?)
ξ゚听)ξ(空いてるわよ)
( ^ω^)(だったらみんなも誘ってカラオケ行くお!)
ξ゚ー゚)ξ(いいわね、人集めは任せるわ)
( ^ω^)「分かったお!」
_
( ゚∀゚)「お、なら内藤答えてみろ」
(;^ω^)「おっ?」
なんともタイミング悪く、長岡が生徒に答えを求めている最中に返事を口に出してしまった。
しかし、もう遅い。既に内藤は指名されているのだ。
( ^ω^)「……前者は文学。後者は人生ですお」
_
( ゚∀゚)「はい正解! ここテストに出すからなー」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:43:50.35 ID:oNGrT0ca0
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(#'A`)「みんみんみらくる! みのるんるん!」
(#,,゚Д゚)「みんみんみらくる! みのるんるん!」
( ^ω^)「テラキモスwwwwwwwww」
人数に対して他よりも少しだけ広く、ドリンクバーまで近い部屋。
最寄り駅にもカラオケ店はあったが、少し離れたところに内藤の知り合いがバイトしている店があった。
そこで都合をつけてもらったのだ。
ξ゚ー゚)ξ「今期は全部歌い終わっちゃったかー。次は何歌おうかな」
(*゚ー゚)「ツンちゃん、これ一緒に歌おうよ!」
ξ;゚ー゚)ξ「何でふぃぎゅ@が配信されてるのかしら……」
(#゚A゚)「いつまでも! いつまでも! 追い続けるんだァァァァ!!!11」
(#,,゚Д゚)「どこまでも! どこまでも! 燃えたぎるハートをォォォォ!!!11」
(#゚A゚)(#,,゚Д゚)(#゚ω゚)「お前とォォォォォォォォォ!!!11」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:47:27.80 ID:oNGrT0ca0
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(-_-)「お時間10分前ですー」
(#゚A゚)(#,,゚Д゚)(#゚ω゚)「延長ゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!11」
(-_-)「ん、分かった」
彼が内藤の知り合いで、名前はヒッキー。
「中学の頃からの付き合いだ」とドクオに話していたところを、
断片的に聞いたツンデレの左フックが内藤に炸裂したのは有名な話である。
( ^ω^)「今日は楽しかったお!」
ξ゚ー゚)ξ「アンタはあんまり歌ってなかったじゃない」
(;^ω^)「僕は歌うの上手くないからいいんだお」
(,,゚Д゚)「いやー。まさか俺の奢りだとは。あ、別にいいんですけどね」
(*゚ー゚)「内藤君のおかげで手に入ったお金だもんね」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:50:03.74 ID:oNGrT0ca0
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彼らが店を出る頃には時計の短針は『9』を指そうとしていた。
家の近い者どおしが固まって家路につき、最後の一人が女子にならないよう男子は家まで送る。
それが彼らの中で決まりになっていた。
ξ゚听)ξ「今日もかなり宿題出してくれたわね、長岡」
( ^ω^)「授業の進行の悪さを提出プリントで何とかしようとするなんて、教師としてダメだと思うお」
ξ;゚听)ξ「アンタ達のせいだと思うけど……」
習慣的に、自宅を目前とした近所のコンビニに寄って時間を潰す。
互いに口には出さないが、少しでも一緒にいられるようにという思いから自然と足を運ぶようになっていた。
( ^ω^)「……お」
ξ゚听)ξ「どうしたの?」
( ^ω^)「いや、ちょっと面白そうな記事だったから読んでみようと思っただけだお」
彼が珍しく漫画誌ではなく手に取った情報誌。
表紙からしていかにもマイナーな、読者よりも製作側の趣向で出しているような独特な雰囲気を持つそれに、内藤が指差す。
その先に記された煽り文句。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:53:44.12 ID:oNGrT0ca0
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( ^ω^)「『VIPの今後』だってお」
ξ゚听)ξ「随分とお堅い内容じゃない。どうしたの?」
振り上げた平手を垂直に落とし、頭部にチョップ。
そして右頬をぐいぐいと引っ張りながら顔を近づけ、その真意を確かめる。
(;^ω^)「な、なにすんらお」
ξ゚ー゚)ξ「何かいつものアンタじゃないから変だなーって」
(;^ω^)「僕だってたまにはこういうのも読むんだお。……これはたまたま目に付いたからだけど」
ξ゚ー゚)ξ「ふーん」
掴んでいた手を離し、少しだけ弛んでしまった頬を数度撫でて訪ねる。
ξ゚ー゚)ξ「それで。買うの?」
(;^ω^)「か、買うお」
そう言ってレジに一冊の週刊誌を持っていき、簡単な清算を済ませる。
週刊誌の入った袋を片手にツンデレの元へと戻る。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 20:56:17.20 ID:oNGrT0ca0
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( ^ω^)「それじゃ、また明日お」
ξ゚ー゚)ξ「ん、また明日」
真っ暗な住宅街。そう言ってツンデレの家から少しずつ離れていく内藤だったが
その数件隣りが内藤の自宅で、帰宅しても会おうと思えばいつでも会える距離だった。
ξ゚听)ξ「あ、そうだ」
玄関のドアを半分ほど開けたところで、ツンデレが急いで門前まで顔を出す。
まだすぐそこを歩く内藤。その手には先ほど買った週刊誌。
ξ゚听)ξ「内藤ー!」
( ^ω^)「お? どうしたお?」
ξ゚听)ξ「……明日」
ツンデレは言葉に詰まり、その続きを待つ内藤との二人の間に静寂が訪れる。
頬を染めながら彼女はボソッと一言だけ呟いた。
ξ*゚听)ξ「明日、アンタに賭けるから」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/26(水) 21:01:45.39 ID:oNGrT0ca0
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( ^ω^)「……お」
賭け、とは毎朝の通学で行われる『自転車競走』のことである。
以前はその日によって相手が変わっていたのだが、
内藤の速さに対抗できるものが居なくなってからはもっぱらVSニダー戦が当たり前になっていた。
それでも内藤が全勝しているのだが。
(*^ω^)「把握したお!」
そう言って張り切る内藤を横目に、隠れるように家の中に入ってしまうツンデレ。
彼女の性格が顕著に表れていた。
(*^ω^)「明日は頑張るおー」
そう言って家を目前に、右手を振り上げる。
内藤やツンデレ、彼らを含めた『VIP』は今日も平和に一日を終える。