内藤エスカルゴ - 完結作品一覧 - ( ^ω^)は合成士のようです - 5話
5 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:00:03.19 ID:179Jk0IG0


--------病室--------

( ´ω`)「ここは・・・・・・病院かお?」

見慣れた天井が瞳に映る。
医者が、自分の体についている何かを的確にはがしていく。
しばらく無言で考え事をしていたが、なぜ意識を失ったのか思い出せない。

( ´ω`)「ブーンはなんでここに?」

医者に尋ねる。

/ ゚、。 /「覚えてないのか?では、私が知ってる限りで話そう」

北の国の敵に追い詰められた友人たちを救おうとして、何らかの合成を行い意識を失ったこと。
結果的に友人たちはブーンのおかげで助かったこと。
それからすでに三ヶ月がたっていること。
戦争は起こらず、一応けりがついたこと。
医者は淡々と語った。

( ´ω`)「そうですかお・・・・・・。全部思い出しましたお。
でも、合成を使ったっていうのは納得できないですお。
ブーンは合成できないはずですお」


7 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:03:09.23 ID:179Jk0IG0

/ ゚、。 /「はて、お友達もそう言っていたが、確かに使ってる。
君の意識がなくなってこんなに長い時間復活しなかったことが証明している」

( ´ω`)「どういうことですかお?」

/ ゚、。 /「無理な合成、自分の力を超える合成を行うと精神が圧迫される。
それによって意識を失うと覚醒するまで長い時間がかかるんだ」

( ´ω`)「でも・・・・・・」

バン!!

ブーンが異を唱えようとしたところで扉が思いっきり開く。

ノパ听)( ゚∀゚)('A`)「ブーン!!」

( ^ω^)「お、お。みんなどうしたんだお?」

( ゚∀゚)「どうした?じゃなえぇよバカ野郎!!心配かけさせやがって」

( ^ω^)「ジョルジュ・・・・・・」

('A`)「今度ばかりは・・・・・・いや、目が覚めて本当に良かった」

( ^ω^)「ドクオ・・・・・・」

ノハ;凵G)「ばかぁ。もっと早く目を覚ましなさいよ!」

( ^ω^)「ヒート・・・・・・」

8 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:05:49.47 ID:179Jk0IG0

三人が口々に喜びを伝え合う。
ブーンは自然と涙を流していた。

( ;ω;)「みんなぁ・・・・・・。ぐすっ、よかったお。無事で本当に良かったお」

/ ゚、。 /「みなさん、うれしいのはわかりますが、
ブーン君はまだ安静にしていなければなりません。
体調が良ければ明日には退院させてあげてもいいですよ。
ですから、今日のところはお話だけにしてください。
それと、ブーン君。あとで、お話があります。では。」

医者はそう言って部屋から出て行った。
それから四人はお互いの事を話し合った。
話が途切れることはなかった。
時間は過ぎ、気がつけば空が赤く染まっていた。

コンコン、とノックをする音が聞こえた。

( ^ω^)「どうぞですお」

ブーンが許可する。
入ってきたのはいつも首が傾いている医者だった。



9 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:08:13.73 ID:179Jk0IG0

/ ゚、。 /「さて、そろそろ面会終了ですよ。暗くなる前に家に帰りなさい」

('A`)「もう、そんな時間か」

ノパ听)「明後日、みんなで出かけましょう」

('A`)「なぜ、明日じゃないんだ?」

ノパ听)「明日は用事があるの、ごめん」

( ゚∀゚)「別に四人で遊べりゃいいだろ。四人で遊ぶのも久しぶりだしな。
明後日10時に迎えに来るよ。それまで病院でも満喫してろよ」

(;^ω^)「ここはもういいお。わかったお。それじゃあまただお」

三人は部屋を出て行った。

/ ゚、。 /「いい友達だな」

間をおいて医者が呟いた。

( ^ω^)「自慢ですお」

満面の笑みで応えるブーン。


11 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:11:45.55 ID:179Jk0IG0

/ ゚、。 /「さて、では本題に入ろうか」

医者は来客用のいすに腰掛けた。

/ ゚、。 /「君ははさっき合成が出来ない、と言ったね。
その理由は情報をしらないからか?」

( ^ω^)「そうですお」

/ ゚、。 /「ご両親の名字は?」

( ^ω^)(知ってるってことがバレないほうがいいかお?)「わからないんですお」

/ ゚、。 /「嘘をついたな?」

( ^ω^)「お、お?なんのことですお?」

/ ゚、。 /「医者はね、人を診る職業である以前に、人を見る職業なんだよ」

( ^ω^)「・・・・・・名前は知っていますお」

/ ゚、。 /「ふむ、聞いてしまったか。その二つは、つまり【原子】【順】は試してみたのか?」

( ^ω^)「まだですお」

/ ゚、。 /「なら、試してみるか」



13 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:14:08.14 ID:179Jk0IG0

医者は胸のポケットからメモ帳を取り出した。
メモ帳からページを二枚ちぎり、それぞれに"1"と"2"を書いた。

( ^ω^)「どうするんですかお?」

/ ゚、。 /「まずは【順】を試してみようと思う」

ここに順番を書いた二つの紙がある。
先ほどの紙をブーンに示す。

/ ゚、。 /「"1と書いた紙"に"3"の順序を合成してみてくれ。
そして、私に順番通りに並べるように尋ねるんだ。」

( ^ω^)「? わかりましたお。
【3の順序】と【1】を合成するお。
・・・・・・これでいいのかお。えーっと」

医者のネームプレートを見る。

( ^ω^)「ダイオードさん、この二枚を数字の順に並べてください」

/ ゚、。 /「いやだ」

(;^ω^)「お?お?」

/ ゚、。 /「冗談だよ。ほれ、これでどうだ?」

メモ帳は1、2の順番で並べられていた。


15 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:17:34.19 ID:179Jk0IG0

/ ゚、。 /「んー駄目みたいだな。次は【原子】だ。
紙は有機物だからCが多いかな。Cの質量とここにある鉄の質量を合成してみようか」

ダイオードさんはポケットからねじを取り出した。

( ^ω^)「やってみますお。【鉄の質量】と【Cの質量】を合成」

紙を持ち上げる

/ ゚、。 /「うーん。これも違う・・・・・・か」

紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ捨てた。
それは、放物線を描きふちに当たって落ちた。

( ^ω^)(入ってないお・・・・・・)

/ ゚、。 /「君ぐらいの年で使えないってことは遺伝の可能性は低いな」

( ^ω^)「・・・・・・遺伝じゃない情報は自分で気づくしかないのですかお?」

/ ゚、。 /「そうだろうな・・・・・・無理やり呼び覚ますってことはできない」



16 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:20:09.04 ID:179Jk0IG0

( ^ω^)「残念ですお・・・・・・自分で頑張ってみますお」

/ ゚、。 /「すまないね。もう真っ暗だな。それでは、私は失礼するよ」

ダイオードさんは部屋から出て行った。
相変わらず首がななめになっている。

( ^ω^)「結局ゴミをほっていきやがったお」

ブーンはベットに寝転がって考える。
その目は天井を見てはいない。
両親の事。
自分の情報のこと。
意識は夜の帳に沈んでいった。


肌が冷たい。
締め切った部屋の中でも冬の到来を強く感じる。

( ^ω^)「また、変な夢を見たお・・・・・・。」

自分を別の場所から見ている。
動けず、考えることしか出来ない。



18 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:22:17.19 ID:179Jk0IG0

( ^ω^)(どういうことだお?ダイオードさんに聞いてみるお)

ナースコールを押す。
静かな病室にピー、ピー、と単調な音が続く。
しばらく鳴って、とまった。

バタン、と大きな音を立ててダイオードさんが駆け込んできた

/ ゚、。;/「どうした?なんかあったのか?」

( ^ω^)「質問があるんですお、ってどうしたんですかお?」

目に見えて表情が暗くなる。

/ `、_ /「そんなことで呼んだのか?」

( ^ω^)「そうですお」

ダイオードさんは部屋を出て行こうとする。

(;^ω^)「待ってくださいお」

/ `、_ /「医者にとってナースコールがなんだかゆっくり考えるんだな。
それから、そこの時計を見なさい」



19 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:25:32.43 ID:179Jk0IG0

ダイオードさんの指し示す先にはまだ五時にもなってない時計があった。

(;^ω^)「ご、ごめんなさいですお!でも、どうしても気になるんですお」

/ ゚、。 /「どうせだから、聞こうか・・・・・・」

( ^ω^)「夢を、みたんですお」

/ `、_ /「帰って寝るよ」

( ^ω^)「ちょww情報に関係あるかもしれないですお!」

/ ゚、。 /「確かに、夢をきっかけにして目覚めた例はあるにはあるが・・・・・・どんな夢だ?」

( ^ω^)「寝ている自分を別の場所から見てるんですお」

/ ゚、。 /「ふむ、別の場所からか・・・・・・視野の合成か?
確実なことは言えんが、夢をメモしとくのがいいだろう」

それじゃあな、と言ってダイオードさんはふらふらとでていった。

( ^ω^)(夢をメモかお・・・・・・やってみるお。日があけるまでもう一回寝るお・・・・・)

ブーンはまぶたを閉じて、眠りに入った。



21 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:29:18.82 ID:179Jk0IG0

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(;−ω−)「はぁ、やめるお、そっちは駄目だお、当たるおッ!!」

(;^ω^)「はっ。はぁ、はぁ・・・・・・」

控えめにノックをする音で目が覚めた。

ノパ听)「ブーン起きてる?」

扉の向こうからヒートの声が聞こえた。

(;^ω^)「どうぞ」

ノハ;゚听)「どうしたの?すごい汗かいてるわよ」

(;^ω^)「大丈夫だお。それより、どうしたんだお?約束は明日の10時だお」

ノハ;゚听)「うん、あのね・・・・・・」

ヒートは頬を染めて俯く。

(;^ω^)(・・・・・・フラグきたお?ずっとジョルジュだと思ってたお。
も、もちつけお。こんなときは・・・・・・)

ノハ;゚听)「わ、私ね」

意を決したようにヒートは気持ちを告げる。

23 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:32:00.10 ID:179Jk0IG0

(;^ω^)「うん」

わずかな時間が長く感じられる。

(;^ω^)(よくあることだお・・・・・・)

ノハ///)「ジョルジュの事がすきなの」

(;・ω・)「お?」

(;川ω川)(あれ?予想と違うお。いや、むしろ予想通りだお)

冷水を頭からかけられた気分だった。
頭の血がおりて一気に冷静になる。

ノハ///)「き、聞いてるの?ブーン」

(;^ω^)「聞いてるお」

ノハ///)「そ、それでね、明後日、告白したいんだけど・・・・・・」

ヒートは勝手に話を進める。

ノハ///)「き、協力してほしいの」

もはや乙女心はとどまることを知らないらしい。



25 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:35:09.95 ID:179Jk0IG0

ノハ///)「プレゼントはなにがいいかなぁ?明後日はジョルジュの誕生日だから・・・・・・」

(;^ω^)「わかったお。協力してあげるお」

いまさら、ヒートならアリかな、とか思ってた自分が死ぬほど恥ずかしくなってきた。

(;^ω^)「それが今日の用事かお」

ノハ///)「うん・・・・・・。男の子って何をもらうとうれしいのか分からなくて」

( ^ω^)「わかったお。じゃあ、出かけるお」

ノパ听)「どこいくの?」

( ^ω^)「合成ショップだお。男のロマンがつまってるんだお」

ノパ听)「ふーん。あそこか」

( ^ω^)「胡散臭そうな目をするなお!手伝ってやらないお」

ノパ听)「わ、わかったわよ。どこにあるんだっけ?」

( ^ω^)「商店街の中にあるお」

二人は病院を出て、南の商店街に向かった。



26 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:38:31.39 ID:179Jk0IG0

-------VIP商店街---------


( ^ω^)「ここだお」

ノパ听)「はー」

その建物は周りの商店より少し大きいだけだが、多くの人でにぎわっていた。

( ^ω^)「感心してないで、入るお」

ノパ听)「わかってるわよ」

ブーンはどんどん奥に進む。

ノパ听)「何を買わせるつもりよ?」

( ^ω^)「あったお」

ブーンが棚から取り出したのは、宙に浮いたまま落ちないランプ

ノパ听)「これは・・・・・・すごいけど」

( ^ω^)「ブーンもほしいお。でも、どうやって合成しし続けてるんだお?
集中してないと合成はとけちゃうお」



27 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:41:51.12 ID:179Jk0IG0

ノパ听)「あんた馬鹿ねぇ・・・・・・合成士には二つの種類がいるのよ。授業で習ったでしょ?」

( ^ω^)「忘れたおww」

ノパ听)「はぁ・・・・・・すばやい合成できるけど、集中をといたと同時に合成もとける【アーリア】型と
時間をかけて合成する代わりに集中をといても長い間合成が残り続ける【レイティア】型があって、
レィティアのほうが少ないから、こういうのは高いのよ・・・・・・」

( ^ω^)「お、お。勉強になるお。で、これどうだお?」

ノパ听)「いらない。高いし。それに、ジョルジュの合成でできるじゃない。
あ、これがいいかも」

一冊の本を取り出した。

ノパ听)「開いたページを読んでくれる本」

( ^ω^)「ジョルジュは本を読まないし、だいたい眠くなるお」

ノパ听)「ブーンにしてはわりとまともな意見ね」

( ^ω^)(さらっといいやがったお)

二人は別々に店内を物色する。
出てくるのは魅力的な品ばかり。



29 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:46:14.28 ID:179Jk0IG0

暗闇で光るネックレス
持ち主の意思で重さが変わるダンベル
熱を持ち続けるマフラーや手袋

(;^ω^)「疲れたお・・・・・・ヒート、決まったかお?」

ノパ听)「うんっ。これにする」

ヒートは包装してもらったプレゼントを大事そうに持っている。

ノパ听)「ありがとう、ブーン」

( ^ω^)「どうってことないお。明日は頑張るんだお」

ノパ听)「うん。それじゃあ」

嬉しそうに商店街を走り去っていった。

( ^ω^)「ブーンも帰るお」

ヒートの背中を見送ったあと反対方向に向かう。
商店街のアーケードを出るといつのまにか曇り空が広がっていた。

( ^ω^)(さっきまで晴れてたのに・・・・・・雨が降らなければいいお・・・・・・。)

32 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:50:45.68 ID:179Jk0IG0

( ^ω^)「ただいまだおー」

病院がすっかり家のようになってしまった。
玄関から入ると見知った顔が並んでいるのに気づく。

( ^ω^)「みなさん、どうしたんですお?
ブーンならおかげさまで元気になりましたお」

( ФωФ)「ブーンか。早速だがこっちにきてもらいたい」

待ち受けの奥の小部屋に連れて行かれる。

( ^ω^)「お?お?真剣な顔してどうしたんですお?」

(;-_-)「落ち着いて聞いてほしいのですが、北の国がニダーの代わりに八本柱をもう一人寄越せっといってきました。
八本柱最強、の子供を寄越せ、と。」

( ^ω^)「!? ブーンの・・・・・・ことですか?」

(;-_-)「もう知っているんだな・・・・・。間違いないと思う。
何処で手に入れたのか知らんが、子供がいる、ということは確実につかんでいるようだ」

/ ゚、。 /「君に向こうにいってほしくありませんし、お友達もそれを望むでしょう。
ただ、向こうに行けばおそらくご両親に会えるかと・・・・・・。
もしかしたら、君の情報についても何か知っているかもしれません」



33 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:54:44.85 ID:179Jk0IG0

( ^ω^)「選べ、ということですかお?」

( ФωФ)「うむ。そして、こっちに残ったとしても今までのように自由に動き回ることはできない」

( ^ω^)「どういうことですかお?」

/ ゚、。 /「君は例の事件によっておかしくなった、と報告せざるを得ないからです」

( ^ω^)「そんな・・・・・・でも、子供がブーンだってばれてなければ・・・・・・」

(;-_-)「確かに、今は大丈夫でしょう。しかし、ばれたときに北の国との関係が大きく揺らぐことになります。それだけは避けたいのです」

自分を捨てたと思っていた両親は生きていて、会えるかもしれない。
でも、それは同時に友人と長いあいだ別れることになる。
今回など比較にならないほど・・・・・・。
しかし島に残っても自由は奪われ、友人と遊ぶことさえままならない。

/ ゚、。 /「君には悪いですが、できるだけ早く決めていただきたい」

( ^ω^)「一日・・・・・・一日だけ考えさせてくださいお」

/ ゚、。 /「明日はお友達と遊ぶお約束がありましたね」

( ^ω^)「ですお」

( ФωФ)「危険ではないであるか?」


34 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 22:58:06.00 ID:179Jk0IG0

(-_-)「子供に将来を大きく分ける選択肢を与えているのです。
取り乱さなかっただけ立派でしょう。それに、目覚めてからまだそんな時間はたっていません。
明日ぐらいまでなら大丈夫でしょう」

/ ゚、。 /「ヒッキーさんに賛成です。明日が最後になるかもしれないのです」

"最後"その言葉がブーンに重くのしかかる。

/ ゚、。 /「もう部屋に戻っていいですよ」

ダイオードさんに促され小部屋を後にする。
部屋についてすぐにベットに倒れこむ。

( ;ω;)「最後・・・・・・」

枕はすぐにずぶ濡れになる。
腹が立って、悲しくて、涙が止まらない。
ふと、窓の外を見ると鳥が止まっていた。

ポツ

ポツ

水滴が落ちてくる。
それはすぐに豪雨へと変わる。
緩やかに流れ出る涙と大きな音を立てて降る雨。
どちらもやむ気配はない。



35 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:02:03.46 ID:179Jk0IG0

( ;ω;)「雨・・・・・・きっとやむお」

鳥は飛び立たない。

( ;ω;)「ブーンもお前みたいに自由がいいお。雨が降ったら雨宿り。
晴れたら悠々と空を飛んで・・・・・・ひぐっ」

ぐすっ、ずずっ、うぅ

ザー、ザー、ザー

雨の音とブーンの嗚咽が悲しみを奏でる。

( ;ω;)「お前は、どんな世界をみてるんだお?」

鳥は飛び立った。
雨をものともせず。
気づいたら鳥の視点で見ていた。
鳥になって冷たい雨に打たれていた。
それでも鳥は飛ぶのをやめない。
それがなぜだかも分かる。
愛する子供が待っているからだ。
雨で卵が冷えてしまえば、孵ることは出来ない。
親鳥は子供を守るために自分は雨に打たれるのもためらわない。



36 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:05:06.95 ID:179Jk0IG0

( −ω−)「はっ!・・・・・・また、夢かお?」

( ^ω^)「雨は、きっとやむお。ブーンは信じて待つしかないお」

そう呟いて眠くなるまで楽しい明日の事だけを考えた。


--------翌日、a.m.9:30--------

目覚めた瞬間ブルッと震えた。
直感がいつもより寒いと告げていた。
窓を開けると薄い雪が積もっていた。

( ^ω^)「初雪だお。神様も粋なはからいをするもんだお」

体調には別段問題はなかった。あるとすれば、精神的なものだけだ。

( ^ω^)「みんな、早く来るおー」

布団に包まってじっとしている。
時間通りにノックする音が響く。

( ^ω^)「どうぞですおー」

ノパ听)( ゚∀゚)('A`)「おーっす」

いつも以上に重装備をした三人が一緒に入ってくる。



37 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:08:16.24 ID:179Jk0IG0

( ^ω^)「さぁ、行くお!」

( ゚∀゚)「よっし。公園でも行こうぜ」

( ^ω^)「賛成だお。去年は雪なんて降らなかったから楽しみだお」

('A`)「俺はここ数年雪を見た記憶がないぞ?」

ノパ听)「そんなことどうでもいいじゃない」

ヒートはブーンに目配せをする。
その視線にしっかり視線で応えてからブーンは言う。
悲しみは自分の中に閉じ込めて、今日と言う日を精一杯楽しもうと。

( ^ω^)「行くお!」

ブーンが最初に部屋を出て行く。
ついでジョルジュ、ドクオ、ヒートの順番に部屋を出る。
公園までは自転車で十分弱。
久しぶりの雪を満喫するため、自転車を使わず徒歩で公園に向かう。

病院から出て行った四人をダイオードは静かに見送った。



41 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:13:41.68 ID:179Jk0IG0

--------公園--------

道中でも雪を投げあいっこしていた四人はすでに雪まみれになっていた。

( ^ω^)「これでもくらうお!」

ブーンの剛速球がドクオに向かう。

('A`)「甘い!ってうわ」

華麗に避けようとして足を滑らす。

( ^ω^)「これでもくらうお!これでもくらうお!」

転んでもたついているドクオに雨あられのように雪球が飛ばす。

( ゚∀゚)「隙ありだ!」

ジョルジュによって合成された無数の雪球が飛んでくる。
ベクトルをブーンに向けてあるのだろうか、避けてもホーミングしてくる。

( ×ω×)「へぶぶぶっ!!」

初撃が当たると、避ける暇もなく雪の弾幕に襲われる。
雪だまは途切れることなく迫る。



42 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:17:45.04 ID:179Jk0IG0

( ゚∀゚)「はーはっはっは!俺最強!」

ノパ听)「合成を使うとは卑怯なやつめ」

ブーンに総攻撃しているジョルジュの真後ろにヒートが立つ

ノパ听(;゚∀゚)「しまった!」

ヒートは両手に抱えた雪を直接服の中に流し込む。

(;゚∀゚)「うぎゃぁぁぁぁ」

公園中にジョルジュの悲鳴が響き渡る。

(;゚∀゚)「とってぇ、誰かぁ助けてくれぇ!」

ノパ听)「正々堂々と勝負をしようじゃない」

(;゚∀゚)「わかった、わかったから。早く暖めてくれ!!」

ノパ听)「なら、いいわ。【人肌の温度】と【服】を合成、っと」



43 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:20:20.59 ID:179Jk0IG0

( ゚∀゚)「ほっ、あったけー」

( ^ω^)('A`)「ぶ、ブーンたちも頼むお」

雪をかぶった二人ががたがた震えながらヒートのところに来た。

ノパ听)「仕方ないわねぇ・・・・・・はいっ」

( ^ω^)「あったかいお」

('A`)「寒いっ!寒いぞ!!ヒートお前っ」

ドクオだけが依然としてがたがたと震えている。

ノパ听)「あ、間違えた」

('A`)「おおねねがいししますすす」

ノパ听)「ほいっとな」

('A`)「あ、ありがとう。(間違えるなんてあり得ねー)」


45 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:25:15.89 ID:179Jk0IG0
( ^ω^)「次は何するお?」

( ゚∀゚)「雪合戦はもう飽きたな。卓球でもやりにいこうぜ」

( ^ω^)「公民館かお?」

( ゚∀゚)「ああ。家の中だし寒くもねーだろ」

('A`)「賛成だな。あそこならここからでも近いし」

ノパ听)「じゃあ、早速出発ね」

雪の上に残った足跡は四人で遊んだしるし。
それは公園から公民館に向かう。

ノパ听)「着いたー! さ、中に入りましょ」

(;'A`)「お、お前ら歩くの早すぎだろ」

( ^ω^)「ドクオは運動不足だお」

( ゚∀゚)「部屋に閉じこもってアニメばっか見てるからだろ」

(;'A`)「だ、だからアニメばかに」

言い終える前に公民館の中に入って行った。

(;'A`)「くっそぉ」

ドクオも急いで駆け込む。

46 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:28:27.04 ID:179Jk0IG0

( ^ω^)「卓球台は一つだけ空いてるお」

中ではほかの子供たちも卓球をしていた。

ノパ听)「2対2で勝負ね」

( ゚∀゚)「負けたチームはジュースをおごる、でどうだ?」

( ^ω^)「おっけーだお。ブーンはドクと組ましてもらうお」

( ゚∀゚)「そいつ殆ど戦闘不能だぞ?」

( ^ω^)「ドクオの真の恐ろしさはここからだお・・・・・・」

カンコンカンコンカンコン

カンコンカンコンカンコン

小気味よい音が公民館の中に響く。
そのなかに一つだけ異様な台があった。

(;^ω^)「あ、あり得ないお・・・・・・」

スコアボードに表示された点差は圧倒的である。
ほかの子供たちも自分たちの勝負を中止し、こっちの台を見ている。



48 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:31:53.68 ID:179Jk0IG0

ノパ听)「行くわよ?」

ヒートはコンパクトに腕を振り、ボールの側面をかすらせて打つ

ギュルルルルル

音が聞こえてきそうなほど回転のかかったボールがブーンの側で大きく横に跳ねる。

スコンッ!

ラケットを出す時間もなく、ボールは真横に跳ねる。

(;^ω^)「あんなの打てるわけねーお」

(;'A`)「ど、同感だ」

ノパ听)「さ、あと一点であんたたちの負けよ?」

ヒートはボールを構える。ブーンはヒートの右腕にじっと注目する。

ノパ听)「おりゃ!」

右腕はブーンの確認できない速度でボールを打ち出す。

ヒュゥゥン   カン   ドグ

(;'A`)「いてぇ!」

ドクオの声で敗北を悟るしかなかった。目の前を通り過ぎていったボールはまったく見えなかった

49 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:34:32.21 ID:179Jk0IG0

ノパ听)「んじゃあ、ジュースよろしく」

公民館の中は静まり返っていた。ジョルジュでさえ表情が凍り付いていた。

( ゚∀゚)「よ、よろしく」

(;^ω^)「負けは負けだお。行くお、ドクオ」

(;'A`)「納得いかないが・・・・・・」

公民館の入り口でジュースを売っている。ブーンがヒートを見ると、目で合図してきた。
全身に緊張が走ってるのが離れててもわかる。目で合図を返して卓球場を出た。

( ^ω^)「ドクオ、ちょっと時間をつぶすお」

('A`)「なんでだ?」

( ^ω^)「ヒートが今日ジョルジュに告白するんだお」

('A`)「なんだ、そんなことか。んじゃあ、覗きに行こうじゃないか」

(;^ω^)「よ、良くないと思うお」

('A`)「言いよどんだってことは興味があるんだな?」

( ^ω^)「あう・・・・・・ないことはないお」

('A`)「そうと決まれば、おばちゃーん!あったかい飲み物四つください!」


50 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:36:51.46 ID:179Jk0IG0

ドクオは走って飲み物を買いに行く。
両腕に四本のほっとココアを抱えて、戻ってきた。

('A`)「さ、半分持ってくれ。行くぞ!」

( ^ω^)「ばれないようにしなきゃ駄目だお」

二本のほっとココアを受け取って応える

('A`)「わかってるよ」

卓球場のドアを覗き見が出来るくらいあける。



51 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:39:42.30 ID:179Jk0IG0

|'A`)「お、何か渡してるな」
|^ω^)「あれはたぶん誕生日プレゼントだお」

|'A`)「確かに今日あいつの誕生日だけど、何で知ってんだ?」
|^ω^)「昨日一緒に買い物行ったお」

|'A`)「なるほどね」
|^ω^)「お、喜んでるお!」

|'A`)「黙り込んじまったな」
|^ω^)「頑張るお、ヒート」

|'A`)「いまだ、そこだ言え!」
|^ω^)「・・・・・・ドクオうるさいお」

|'A`)「おっ、言ったか?」
|^ω^)「お。ジョルジュ真っ赤だお」

|'A`)「うなずいたよな?ブーン」
|^ω^)「間違いないお」

|'A`)「よっし!」
|^ω^)「よかったお」
| ゚∋゚)「なんかいいことでもありましたの?」

|'A`)「!?」
|^ω^)「!?」

知らない男が自分たちと一緒に覗いていた。

52 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:42:46.45 ID:179Jk0IG0

( ゚∋゚)「ごめんなさいねぇ邪魔しちゃって。でも仕事なのよ」

どぉぉん!

卓球場の扉が粉々に壊れる

( ゚∀゚)「な、なにがあった?」

さっきのが夢であったかのように一気に現実を体感させられた。

ノパ听)「え?・・・・・あ!」

友人が扉のあたりで倒れている。一瞬冗談かと疑ったが、周りの子供たちの悲鳴ですぐに現実を認識する。

(#'A`)「ブーン!!離せッこのやろう。ブーンに何をした!」

大男にドクオが捕まっている。

( ゚∋゚)「あんたはいらない。」

ブン

ドクオは軽々と放り投げられた。間一髪で壁を柔らかくし、重傷をのがれる。

(#'A`)「ぐっ」

突発的な合成で壁を十分に柔らかくできなかったため、痛みが全身をめぐる。


54 名前: ◆gMIGdyOjeA :2008/10/30(木) 23:46:14.16 ID:179Jk0IG0

( ゚∋゚)「うまいじゃな、い」

ジョルジュとヒートは高熱に熱せられたラケットを飛ばす。
大男はしゃべりながら腕の一振りしただけで触れもせずにラケットの起動を変えた。

ノパ听)( ゚∀゚)「え・・・・・・?」

( ゚∋゚)「あんたたちと遊んでもおもしろくないわ。それ」

男が腕を振る。
ごう、と風のうなる音とともに、三人は壁にたたきつけられていた。
痛みで顔を起こすことさえままならないが、意識はかろうじて残っていた。

( ゚∋゚)「命を奪いに来たわけじゃないから。でも、この子はもらっていくわね。
聞こえてないかもしれないけど」

大男はブーンを担いで悠々と公民館から出て行った。



選択肢はいつまでも待ってくれるとは限らない
時間切れ、は思わぬときにおとずれる


to be continued...


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内藤エスカルゴ - 完結作品一覧 - ( ^ω^)は合成士のようです - 5話
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