- 28 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:47:14.56 ID:acgNlUDUO
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- 29 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:48:22.56 ID:acgNlUDUO
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※
二度、三度立ち止まり、軍人の目を確認する。
死と背中を合わせている様で、強く生を実感した。
いつしか、僕は街行く雑踏に紛れ、追っ手らしい者がいないことに気付いたのだった。
(;^ω^) 「ひぃひぃ…」
息は上がり、口腔には酸っぱいものを感じる。
バレなかった。
生まれて来てから、初めて「運がいい」と思えた。
いや、生まれたこと自体、運が悪いのか。
- 30 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:49:21.37 ID:acgNlUDUO
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※
( ^ω^) 「荒巻どういうことだ―――」
扉の奥から声がして来た。
( ^ω^) 「お?」
勢い余って、小さく語尾を垂れ流してしまった。
これ以上は音を立てない様に、僕は扉をほんの少し開け、ジッと凝視し、聞き耳を立てる。
- 32 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:50:47.33 ID:acgNlUDUO
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※
荒巻と、迷彩色をした軍服を着た軍人が話し合っていた。
/ ,' 3 「次が最後とはどういう意味だ?」
( ´∀`) 「そのままの意味だ。
次にお前に送る奴等の血で最後だ」
「信じられない」と荒巻は首を振る。
/ ,' 3 「用済みということか?」
( ´∀`) 「それもある。だが、それだけじゃあない」
( ´∀`) 「敵はお前を狙っている。
血潮の錬金術士本人の血で、魂で、刀を練成しようと躍起になっている」
- 33 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:52:04.46 ID:acgNlUDUO
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/ ,' 3 「血と鉄と魂の繋がりを何故知っている!?」
一瞬、荒巻は声を荒げた。
( ´∀`) 「さぁな…
わかっていることは、敵がお前を狙っているということ。
それだけだ」
/ ,' 3 「…」
荒巻は黙りこくってしまった。
僕は息を飲んでその様子を見守る。
( ´∀`) 「明日、血を送る。
明後日には、全て刀に練成しておけ。
明々後日に、俺が刀の回収ついでに、お前を殺す」
- 34 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:53:04.88 ID:acgNlUDUO
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お前を殺す?
この軍人が荒巻を殺すというのか?
/ ,' 3 「お前が…私を…殺すだと?」
荒巻は、ゆっくりと口を開く。
/ ,' 3 「残念だが、それは不可能だ。
お前はここで、私に殺される」
- 35 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:54:10.16 ID:acgNlUDUO
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※
( ´∀`) 「軍に背くか?
ならばいいだろう。明々後日などと悠長なことは言わない。
今ここで、お前を殺す」
軍人は、刀を鞘から抜き、構える。
( ´∀`) 「自分の作った刀で斬り殺されるってのは、どんな気分だろうな?」
荒巻は一言「知るか」と呟き、床に散らばる刀の中から一本を手に取った。
/ ,' 3 「来い」
軍人と同じ様に、荒巻も構える。
- 36 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:55:09.37 ID:acgNlUDUO
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※
(;^ω^) 「止めるお!」
気付くと、僕は叫び、二人の間に飛び込んでいた。
やはり、運が悪かった様だ。
軍人が荒巻に切り掛かった刹那に飛び込んだためか、僕の右腕は肘から下が、スッパリと斬り飛ばされた。
- 37 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:56:07.60 ID:acgNlUDUO
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(; ω ) 「ぎぃっ!!」
僕は金切り声を上げる。
/;,' 3 「ブーン!何故ここにいる!?」
一瞬、荒巻は僕に気を取られた様で視線をこちらに向ける。
だが、それがマズかった。
隙を突かれ、荒巻は背を大きく斬られたのだった。
/;,' 3 「ちぃっ!」
- 38 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:57:10.60 ID:acgNlUDUO
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※
止どまることなく、僕の腕は血を吹き出す。
部屋を染める血飛沫。
意識が遠のくのを感じる。
(; ω ) 「お…おお…お…」
体全体が痙攣している気もした。
耳に入るのは、荒巻の悲しげな声。
- 40 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:58:13.61 ID:acgNlUDUO
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「こんな出来損ないの刀が、私の最後になるとはな。
残念だ。だが、嬉しいよ」
「血の一滴は鉄の一塊」
「血の一滴は魂の破片」
「鉄の一塊は魂の破片」
「お前は生きろ。ブーン」
- 42 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 20:03:43.03 ID:acgNlUDUO
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※
痛みは消えていた。
残ったものは、歪な形をした右腕だった。
( ω ) 「う…お…おお…」
傷口からは、恨み人を睨むかの様に、鋭利に伸びる鉄が生えていた。
そして、それは今、憎み人を突き刺し、血と肉と静寂を貫いていた。
(;´∀`) 「荒巻…お前は最後に化け物を作ったのか…」
軍人は、この言葉を最後に完璧な沈黙を貫く。
- 43 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 20:04:48.80 ID:acgNlUDUO
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/ ,' 3 「すまん」
荒巻はたった一言の謝罪をした。
( ;ω;) 「荒巻…何でだお?」
聞かなければならないことがあった。
( ;ω;) 「何で、荒巻と軍との関係を、僕に教えてくれなかったんだお?
僕を裏切ったのかお?」
「信じていたのに」と僕は捲し立てる。
- 44 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 20:06:02.07 ID:acgNlUDUO
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「結果的には」と前置きをして、荒巻は言った。
/ ,' 3 「お前を永遠に刀という形で私の元へ置いておくつもりだった」
それは、僕の右腕と同様に―――
/ ,' 3 「だから、お前が軍に身売りした時、何も言わなかった」
/ ,' 3 「お前を、私だけのものにしたかった」
歪な形をした、愛だった。
( ;ω;) 「あなたを恨みますお」
( ;ω;) 「あなたを憎みますお」
( ;ω;) 「あなたを―――」
( ;ω;) 「愛しますお」
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