- 18 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:25:57.75 ID:acgNlUDUO
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- 20 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:31:20.38 ID:acgNlUDUO
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数十の薄汚れた人の列の真ん前に、唯一軍人らしく鎧を装備している男がいた。
その鎧は真新しいのか、綺麗な白銀で、僕たちのみすぼらしさを、より演出していた。
从 ゚∀从 「志願兵の皆、軍へようこそ」
男は自身をハインリッヒと名乗る。
階級は小隊長だとも続けた。
从 ゚∀从 「お前らは金で買われた奴隷と同じだ」
事実だが、何かが胸にめり込むのを感じる。
从 ゚∀从 「だが安心しろ。無駄死にはさせない」
- 21 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:32:29.69 ID:acgNlUDUO
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('A`) 「無駄死にはさせないだってよ。
俺たちが死ぬことに変わりはないのにな」
隣りの男が、僕に話し掛ける。
その男は、僕よりも頭一つ小さく、僕よりも一回りやつれていた。
貧相という言葉がよく似合う。
自分もこんな様かと思うと、無下に嫌悪が押し寄せる。
('A`) 「死ぬことに変わりはない。
飼い殺される」
( ^ω^) 「飼い殺される?
まぁ、軍属になったからにはしょうがないことだお」
- 22 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:33:36.41 ID:acgNlUDUO
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('A`) 「殺されて、飼い殺される」
男は不可解なことを言う。
('A`) 「血の一滴は鉄の一塊」
('A`) 「血の一滴は魂の破片」
荒巻。
('A`) 「鉄の一塊は魂の破片」
血潮の錬金術士、荒巻。
('A`) 「血潮の錬金術士って知ってるか?」
「あぁ」と僕は首を縦に振った。
- 23 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:35:56.09 ID:acgNlUDUO
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※
('A`) 「俺たちは血を搾り取られる。
そうして、その血は、血潮の錬金術士の元に送られる」
('A`) 「あとは―――」
男の言葉に割って入る。
( ^ω^) 「刀へと練成されるだけだお」
荒巻の仕事はよく見て来た。説明されるまでもない。
('A`) 「あんた、なかなか詳しいな」
だが、最後の最後まで、自分が軍とこういう形で関わっているということを、僕に話してくれなかった荒巻に失望した。
裏切り。
それは、酷い裏切りだった。
- 24 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:37:01.75 ID:acgNlUDUO
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※
( ^ω^) 「血潮の錬金術士とは知り合いだお」
男は、一瞬呆気に取られた後、僕に聞く。
('A`) 「どんな奴だ?」
( ^ω^) 「最低な爺さんだお」
僕は空しく微笑した。
そして続ける。
( ^ω^) 「今から僕は、ここを抜けて血潮の錬金術士の所へ行くお」
- 25 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:38:03.27 ID:acgNlUDUO
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('A`) 「正気か?バレたらその場で殺されるぞ」
( ^ω^) 「どっちにしても殺されるお」
( ^ω^) 「あんたも付いて来るかお?」
男は嘆く。
('A`) 「あぁ…」
男は悲しむ。
('A`) 「…」
男は認める。
('A`) 「俺は止めておくよ。
死に急ぐことはない」
- 26 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:39:28.31 ID:acgNlUDUO
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( ^ω^) 「連れないお」
('A`) 「貧しく生まれた時点で、俺は死んでいたのかもな」
('A`) 「でも、俺は一分一秒でも長く生きていたい」
「矛盾してるよ」と言いたかった。しかし、言えなかった。
男の気持ちは痛い程わかる。
- 27 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:40:31.56 ID:acgNlUDUO
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※
('A`) 「あんたはいくらで身売りしたんだ?」
「最後に」と男は僕に聞く。
( ^ω^) 「銀貨一枚だお」
「そっか」
「俺は銅貨一枚だ」
「これで兄弟が、三日間は死なずに済む」
糞以下の優越感を背負い、僕は列から離れ、駆け出していた。
名も知らぬあの男が今後どうなるか、僕に知る術はない。
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