内藤エスカルゴ - 完結作品一覧 - ( ^ω^)カウボーイなようです - 【5th:開拓という名の】

( ^ω^)カウボーイなようです

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 00:30:58.73 ID:w01icdkDO

【5th:開拓という名の】



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 00:31:49.29 ID:w01icdkDO


ザザのとあるレストランにて。

从 ゚∀从「南部の鉄道開通計画早まる、……か」

新聞の一文に目を通し、ハインは髪を掻き揚げながら溜め息を吐いた。

从 ゚∀从「ったくよぉ、他を潰すしか脳に無いのかねぇ、ザザのお偉方は……」

?「お前も似たようなもんだろ?」

ハインの向かいに座っている男がコーヒーをかき混ぜながら言った。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 00:33:25.72 ID:w01icdkDO

从 ゚∀从「バカ言え、アタシは分別を弁えてるつもりだ」

新聞を畳みながら返す。

?「そうは見えんが?」

从 ゚∀从「うるせー、黙ってコーヒー啜ってろ」

畳んだ新聞を隅に置き、皿の上にあるサンドイッチを口に詰め込んだ。


−−−



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 00:34:46.61 ID:w01icdkDO


これは歴史書には残らない話。

数週間前の出来事。

ザザ南部の渓谷、先住民達の暮らす集落へザザの一個師団が向かう。
そして、先住民達に対してある契約書への署名を求めた。

その契約書に書かれた要求とは……




9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 00:37:21.65 ID:w01icdkDO

集落の一際大きなテントの中。
ザザからの使いが契約書を集落の長へ渡す。

「この、契約を結んでいただく」

一枚の紙切れを口髭を生やした男が差し出す。


( ∵)「無理だ」

しかし、集落の長であるビコーズ・ホークアイはそれを頑なに拒む。

「署名したまえ」


( ∵)「断る」

拒み続ける。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 00:39:59.44 ID:w01icdkDO

「どうあっても受けて下さらないと?」


( ∵)「……」

「ならばしかたないですな……」

使いは契約書を取り上げ、こう言い放った。

「貴様等は邪魔な障害物だッ! ゴミだッ!
   貴様等ゴミが一掃された後の事、知ってるかァ?
   この土地はザザ発展のために線路が、鉄道が引かれるのだよォ!」



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 00:42:43.50 ID:w01icdkDO

( ∵)「知っている」

「なら、もう一つ」

使いは人差し指を立て、ゆっくりとビコーズ・ホークアイに向けた。


( ∵)「……」

「契約書に署名しても結果は同じよ、ゴミ共の末路は決まっているのだァ!!」


( ∵)「ならばこちらも同じだ」

「どうしようと言うのだね?」


( ∵)「奴隷同然の扱いをされてまで生き延びたくはない」



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 00:49:27.14 ID:w01icdkDO

「何ィ……?」


( ∵)「私達は戦う! 槍を持ち、弓を引き、大地の神と共に戦う! この土地を守る為に!
   我等の血と怒りを持て、貴様等に恐怖を教えてやろう!
   貴様等には草の根一欠片もやらん! 早々に立ち去るが良い!」


ザザの決定は早かった。
寧ろ、初めから決めていた事と言うべきか。
それから二週間後、ザザの大部隊がその集落の押しつぶしに向かった。


−−−



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 00:52:56.02 ID:w01icdkDO


集落を見下ろす位置にある小高い丘。
ザザの大部隊が列を成している。

大部隊を率いて来るは、トム・コケティッシュ将軍。
鞘から引き抜かれたサーベルを掲げて声を上げた。
陽にあてられて、それは鈍く輝いている。

l`ム_´/「聞け、ザザの戦士達よ! この先がウジ虫の住処だ。
   ウジ虫は、見つけ次第潰せ! 叩け! 殺せ!
   我々の更なる発展と、ザザの未来の為にだ!!」

「「「「おー!!」」」」

大部隊の兵達もそれに併せて自らの持つ武器を高々と掲げた。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 00:57:22.10 ID:w01icdkDO

l`ム_´/「進め!」

トムの号令と共にラッパが吹かれる。
大部隊が先住民の集落へ向かい前進を始めた。

その中の切り込み役である騎兵隊の中にあの男、ギコの姿があった。

(,,゚Д゚)「また、先住民相手に戦うのか……」

「まだそんな事言ってんのか?」

「いつものように殺しまくれば良いだけだろ? 警備に比べりゃ楽しめる仕事だぞ」

「今日は俺が討ち取り人数トップになってやるからな!」

「お前に出来るかよ」

仲間の兵は何故か明るい。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:00:43.44 ID:w01icdkDO

「「「ハハハハハハハハハハ!!」」」

これか人を殺すと言うのに笑っている。

(,,゚Д゚)「……」

こんな戦いが正しい事なのか。
自分は何のために政府の軍に入ったのか。

これが正義なのか。

違う、自分の思い描いていたものとはほど遠い。
現実の相手は未だに弓や槍を使う先住民、時には女、子供さえも見境無く。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:03:50.95 ID:w01icdkDO

仕事だと自分に言い聞かせて何人、何十人、何百人と殺してきた。
だが、未だに消えない罪悪感は何だろう。

やはり思い描いた夢を、憧れを捨てきれないだけなのか。

夜になると殺してきた者たちにうなされる事だってある。
これが本当に戦いと言えるのだろうか。

仲間はそれを聞くと偽善だと言って酒の席での笑い話にする。

自分が間違っているのか。
他が間違っているのか

否、断じて違う。
この場ではそんな道理は通らない。
もうわかりきった事なのだ。

そうだろうギコ・ロードウッド。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:07:35.52 ID:w01icdkDO

(,,゚Д゚)「……」

考えている間に着いてしまった。

もう後戻りは出来ないのだ。
そう、絶対に。

(,,゚Д゚)「ッ……」

騎兵隊が駆け、蹄が砂埃を巻き上げる。
切り込み部隊は集落へなだれ込んだ。


−−−



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:11:53.60 ID:w01icdkDO


( ∵) ∵) ∵) ∵)「「「うおおおおお!」」」

先住民達は槍を持ち、トマホークをメチャクチャに振り回す。
その誰もが鬼気迫る形相でザザの群列へ襲いかからんと大地を踏みしめている。

「撃てぇ!!」

無数の銃声と共に先住民の攻撃は無駄なものとなった。

先住民達の死体が次々と積み重なっていく。
しかし、先住民達はそれでも抵抗を辞めない。

戦況は明らかに先住民が不利。
一方的な状況だというのにだ。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:15:19.51 ID:w01icdkDO

(#゚Д゚)「があぁぁぁぁぁあ!!」

その直中で雄叫びを上げながらギコは見境なく人々を殺していく。
武器を手にした男、何も持たぬ女子供も関係無しに殺していく。

(#゚Д゚)「あぁぁぁあぁああ!!」

その目は狂気に満ち、濁りきっていた。

集落のあちこちで銃声と、先住民の叫びと断末魔が木霊する。



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:17:41.78 ID:w01icdkDO

( ∵)「ぅぎいゃあああああ!!?」

武器を持たぬ者。

( ∵)「ぃやあああああ!!?」

( ∵)「パパ、ママあああああ!!?」

女、子供も。

無慈悲に、一方的に次々と殺されていく。

そして、無造作に死体が積み重ねられる。

大地は先住民の血で赤く染められた。


−−−



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:20:32.35 ID:w01icdkDO


l`ム_´/「ふん、張り合いがないな」

その様子を高見物するはトム将軍。

l`ム_´/「数でも作戦でもこちらが上、相手は低脳な蛮族……」

彼はテーブルと椅子に、ワインとチーズまで用意していた。

l`ム_´/「死にゆく者共の断末魔に……、乾杯」

トムは僅かに笑みを浮かべ、集落の方へ向けてワイングラスを掲げた。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:24:51.68 ID:w01icdkDO
その虐殺の最後はビコーズ・ホークアイの叫びで幕を閉じる。


( ∵)「呪われるがいい!」

血反吐を吐きながら言葉を続ける。


( ∵)「貴様等は我らの魂と、大地の神の怒りにより災厄に見舞われて死に絶えるのだ!」

数人の兵がビコーズ・ホークアイを地面に押さえつける。


( ∵)「呪われろ! 呪われろ! 呪われろ! 呪われろ! 呪われろおおおおお!!」

それでもビコーズ・ホークアイは叫び続けるのを辞めない。

そして、そのままビコーズ・ホークアイは生きたまま首を切り落とされ、絶命した。


−−−


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:29:15.40 ID:w01icdkDO


半日程で全てが終わった。

翌日には掃除人達が死体の処理を行い、全てを焼き払う。
当然の如く、墓などは残されない。

数日後にはザザ南部の渓谷に線路を引く工事が進められる。
そして、いずれは鉄道が走るようになる。

あとは何も変わらない。

ただ、一部の何も知らぬ人々の生活が便利になっただけ。

この話はこれで終わりだ。


−−−



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:34:43.55 ID:w01icdkDO


残ったコーヒーを飲み終えて、ハインと男はレストランの出口へ向かう。

从 ゚∀从「世の中ってぇのは面倒だなぁ……」

外に出て、空を仰ぎ右手を掲げる。

从 ゚∀从「ジョーもそう思うだろ?」

指越しに傾きかけの太陽を見上げながらハインは男の名を読んだ。

( ・ゞ)「あぁ、面倒な事この上ない」

ジョーと呼ばれた男は明後日の方向を向きながら返す。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:39:04.12 ID:w01icdkDO

从 ゚∀从「さて、と」

( ・ゞ)「行くのか?」

从 ゚∀从「おう」

( ・ゞ)「幸運を祈るよ、ハインリヒ」

从 ゚∀从「そっちもな」

二人は別々の方向へ歩きだし、そのまま街道の人ごみの中へ消えた。




34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/17(日) 01:39:23.74 ID:w01icdkDO

【5th:開拓という名の】 fin



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