第二話「出発」
- 17 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:20:22.01 ID:u+QqTs4N0
- 第二話「出発」
9月11日。
ブーンは早速、旅支度を始めていた。
( ^ω^)「この少し大きめの鞄にするお。お土産はドクオから貰ったパンにするお」
この鞄はブーンが随分と前に買った物なのだが、傷一つ無く新品そのものだ。
それもそのはず、一度も使ったことが無いからである。
値段が高いためもあるが、気に入ったため汚したくなかったからなのだろう。
( ^ω^)「でも、こんなにパンを持っていってあげても食べきれないと思うお。
少し食べるかお」
ブーンは一枚のパンを手に取り、頬張った。
- 18 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:21:41.28 ID:u+QqTs4N0
- (=Oω^)「やっぱりおいしい、幸せだお」
パンはあっという間に胃袋の中へ吸収されてしまった。
(;^ω^)「幸せとは、かくも儚きものなのかお。
うむむ、もう一枚食べてもいいかお」
ブーンは一枚のパンを手に取り、頬張った。
(=Oω^)「パン職人は天才、憧れちゃうお」
パンはあっという間に胃袋の中へ吸収されてしまった。
(;^ω^)「あわわ……もう一枚、もう一枚だけなら食べてもいいかお」
- 19 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:22:22.32 ID:u+QqTs4N0
- こんなことを繰り返しているうちに、10枚あったパンは無くなってしまった。
時間にして10分ほどの出来事である。
(;゜ω゜)「ぜ、ぜ、ぜ、全部食べちゃったお」
我に返るも後の祭り、ブーンは落ち込むも必要な物を鞄の中へ入れていった。
旅の準備が終わると部屋の戸締りを確認し、家を出た。
向かう先はグランド・セントラル駅。
駅へと歩くブーンの後ろ姿をドクオは優しく見守っていた。
( 'A`)「ふふ……」
- 21 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:25:49.81 ID:u+QqTs4N0
- ――グランド・セントラル駅。
ニューヨークの玄関口と言われるだけあって人であふれている。
この頃の交通手段と言えば鉄道であったためでもあるのだが。
人が出たかと思えば、また人が入ってくる、まるで寄せては返す浜辺の波のようだ。
( ^ω^)「あいかわらず人がいっぱいだお。切符を買うのも一苦労だお」
ξ `ε´ ξ「待ちなさいよ、マルセオ!」
(;´д`)「違うって、浮気なんてしてないよ。信じてくれよ、アン」
ξ#`ε´ ξ「フ ル ボ ッ コ に し て や ん よ」
(;´д`)「じゃ、じゃあな。俺もう行くから。信じてくれよ」
ξ#`ε´ ξ「あっ、待ちなさい! まったく私の気持ちも考えなさいよ」
- 22 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:26:53.21 ID:u+QqTs4N0
- Σ(;^ω^)「これなんて修羅場?」
人が集まると同時に感情が集まる場所でもある。
ブーンが見た別れ、再会、旅立ちなど実に様々だ。
人混みをかきわけて切符売場までたどり着いたブーンだが、すでに疲れていた。
(ι^ω^)「はぁはぁ、疲れたお。だから、駅は嫌いなんだお。
すいません、ホルックまで行きたいんですお」
_[◎]
(-。- )「はい、ホルックまでですね。3ドルになります」
(ι^ω^)「はい、3ドルですお」
_[◎]
(-。- )「はい、確かに3ドルですね。では、良い旅を」
(ι^ω^)「ありがとうだお」
- 23 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:34:54.57 ID:u+QqTs4N0
- 流れるように客へ対応している駅員だが、ブーンには機械のような態度が不快に感じた。
さっと切符を受け取るとブーンはホームへと向かった。
(#^ω^)「ふぃ〜、何だお。人と話す時は心で話すんだお」
手紙によるとモナーが住んでいるのはウエストヴァ−ジニア州ホルック。
ホルックは炭坑都市として知られている。
( ^ω^)「ぬぬぬぬぬぬ、ぬぬぬぬぬるぽ」
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「ガッ」
Σ(;^ω^)「あう、あう、その」
- 24 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:36:29.43 ID:u+QqTs4N0
- ブーンに突っ込みをいれたのは黒いスーツを身に纏い、黒い帽子を被った男。
重たそうなアタッシュケースを持っている。
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「すまないね、謝って許してもらえるとは思っていない。
でも君はぬるぽと言った時、ガッを期待していたと思う」
( ^ω^)「これはこれは親切にありがとうございますお」
ブーンは表面上は冷静に振舞ったが、心臓の鼓動が早くなっていた。
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「私の名はショボルフ。これも何かの縁だ、よろしく」
( ^ω^)「僕の名前はブーンですお。よろしくお願いしますお」
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「ブーン君か。良い名だ」
- 25 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:37:43.75 ID:u+QqTs4N0
- (*^ω^)「そ、そんなことないですお」
二人が他愛のない会話をすること数分、
騒がしいホームを裂くように機関車が近づいてきた。
車輪の回転する音、甲高い汽笛、黒い車体。どれをとっても存在感がある。
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「来たようだね。では乗ろうか」
(♪^ω^)「はいですお」
乗客が降りると、ホームにいた人々は次々と乗り込む。
その波に乗るように二人も機関車の中へと入っていった。
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「ここに座ろうか」
ショボルフは座る席を決めるとさっと座った。
- 26 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:40:12.42 ID:u+QqTs4N0
- ( ^ω^)「では、失礼しますお」
ブーンも慌てて座席に座った。
( ^ω^)「あ、あの、ショボルフさんの――」
ブーンは途中で口を結んだ。
アタッシュケースの中身は一体何なのか、出会ってからずっと疑問に感じていた。
だが、大事そうに抱えるショボルフの姿を見て聞かない方が良いと思い、
その先を言うのはやめたのだった。
_[ニニニ]r_
(*´・ω・`)「私の何かね?」
ブーンの思いを知ってか知らぬか、ショボルフはとぼけた返事をした。
(;^ω^)「ちょ、顔赤くなってますお。
帽子は高そうですが、いくらですかお?」
- 27 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:41:46.58 ID:u+QqTs4N0
- _[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「この帽子か。父親から貰ったものだから値段は分からない。
だが、お金で買えない物もある。父親の帽子、プライスレス」
(;^ω^)「そ、そうですお。心がこもった物は値段なんてつけれないお。
すいません、失礼なことを聞いてしまいしたお」
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「いや、気にしてはいないよ。そうだ、このパンでも食べるかね?
お土産に駅近くの店で買ったんだが、少し小腹が空いたから食べようかと思う」
(;^ω^)「おぉ、食べたいですお」
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「では食べようか。二袋買ったから一袋食べてもいいか」
Σ(;゜ω゜)「あぁ! 思い出したお。お土産買うの忘れてたお。
ナンテ/(^O^)\コッタイ」
- 28 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:42:30.21 ID:u+QqTs4N0
- _[ニニニ]r_
( ´^ω^`)「ははは、面白いリアクションだね。
どれ、パンでも食べて元気を取り戻すと良い」
ショボルフはアタッシュケースに手にかけると神妙な顔つきになった。
_[ニニニ]r_
( ^・ω・`)「……」
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「すまない、見ないでくれるかな」
( ^ω^)「あ、はい、分かりましたお。窓の景色を眺めてますお」
ブーンが窓の方へと顔を向けるのを確認し、
他の乗客を見回すとショボルフはゆっくりとアタッシュケースを開けた。
その中から素早くパンの袋を取り出すと、再び閉める。
ショボルフのパンはパンではあることは色で判断出来るのだが、
潰れて一枚の板状に変形してしまっていた。
- 29 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:43:51.28 ID:u+QqTs4N0
-
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「……」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)(……アウアウ!)
_[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「すまない、パンが潰れてしまった」
(;^ω^)「いえ、形は味には関係ないですお。
パンは好きだから嬉しいですお」
__[ニニニ]r_
( ´・ω・`)「そうか。では食べようか。どうぞ」
ブーンはショボルフからパンを受け取り、頬張った。
( ^ω^)「ありがとうございますお。おいしいですお」
- 30 : 不動産鑑定士(神奈川県):2007/03/19(月) 18:44:15.99 ID:u+QqTs4N0
- _[◎]
(-。- )「間もなく、セントラル駅を出発します」
発車時間になると機関車はセントラル駅を後にした。
汽笛を鳴らしながら、まるで名残惜しむかのように。
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