十二話 −よみがえり−
1 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 00:54:49.83 ID:D0AFGSED0
まとめ 内藤エスカルゴ様
http://localboon.web.fc2.com/099/top.html
いつも本当にありがとうございます


今回はややグロ。

3 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 00:57:50.89 ID:D0AFGSED0
十二話 −よみがえり−


 時間はそろそろ朝日がその顔をすべて出すだろうという頃、
今なお薄暗い町にジョルジュは居た。
そこは死人の町。
モララーグループの拠点となっている場所である。
ジョルジュはツンに内部の人数を確認させ、
モララーのみが居ることを確認した後この場所へ向かった。

 その町の中でも深部に位置する地下室がある。
ジョルジュはかつての記憶を頼りにそこへたどり着き、蓋を開けた。
地下へと続く階段を一段一段降り、
やがてたどり着いた先にある鉄の扉をゆっくりと開けた。

( ・∀・)「何か?」

 そこには、まるで驚いた様子も無いモララーが後ろに手を組んで立っていた。
それに対しジョルジュはといえば、
こちらも最初からわかっていたかのような落ち着きぶりだった。
  _
( ゚∀゚)「話をしに来た」

( ・∀・)「ふーん。そう」

 真剣な様子のジョルジュに対し、モララーはどこかそっけない様子であった。
しかし構わずジョルジュは話を始める。

4 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 00:59:43.40 ID:D0AFGSED0
  _
( ゚∀゚)「死人の国を作るらしいな」

 短く、相手の出方を伺うようにジョルジュは言ったが、
モララーの反応は無い。
仕方なくジョルジュは言葉を続ける。
  _
( ゚∀゚)「やる気なんだな。この世を変える、とでも思ってるのか?」

( ・∀・)「そこまで大それたことなんて考えてないよ。僕は彼らの罪を示すだけだ」
  _
( ゚∀゚)「……しかし国を作るにしては、ちょっと人手不足じゃないか?」

( ・∀・)「そうだね」
  _
( ゚∀゚)「何か考えがあるんだな。それかもう行動しているか」

( ・∀・)「さあ」
  _
( ゚∀゚)「でもお前らがそういう腹積もりなら俺たち――」

( ・∀・)「ジョルジュ」

 突然ジョルジュの言葉を遮るようにしてモララーがその名を呼んだ。
その顔には悲嘆の色が浮かんでいる。

6 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:03:15.36 ID:D0AFGSED0
( ・∀・)「迷っているのかい?」
  _
( ゚∀゚)「何がだよ」

( ・∀・)「君はここに何をしに来た。僕とおしゃべりしてさようなら?
     違うだろう。早く僕を殺しなよ」
  _
( ゚∀゚)「……」

 ジョルジュが黙り込み、モララーの顔をジッと睨んだ。
ジョルジュの狙いは半分が情報収集、もう半分が話し合いであった。
勿論馬鹿げた行動を止めさせるのが目標だが、
ジョルジュ自身それが無理であることくらい承知の上であった。

 だから彼は話し合いの後、刺し違えてでもモララーを殺す気で居た。
モララーが居なくなれば、後は残された者たちでも何とかなるはずである。

 しかし、『死人を殺す』。
その事象を把握したことの無い彼にとって予測不可能なことがたくさんある上、
彼自身に果たしてモララーを殺せるのか、実際のところ不安だった。

 とにかく事が起こってからでは遅いのだ。
ジョルジュは一撃でモララーを仕留めるべく集中し始める。
モララーまでの距離は五歩程度。
周りに仲間は居なく、絶好のチャンスだろう。

 今ならまだ間に合う。
そう心の中で唱えながら隙をうかがう。

7 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:08:13.74 ID:D0AFGSED0
( ・∀・)「君に一ついいことを教えてあげよう」

 ジョルジュの手がじわりと汗ばんできた頃、モララーが口を開いた。

( ・∀・)「死人は二度死ぬ」
  _
( ゚∀゚)「なに?」

( ・∀・)「僕は未だに死人が死んだところ……ただの肉の塊になったところを見たことが無い。
      ただ、新しくわかったんだ。死人は二度死ぬ。あるいは、二度死ぬ死人が居る。
      そのどちらかの事実があるということに」
  _
( ゚∀゚)「なんだよそれ。見たのかよ」

( ・∀・)「見たよ」
  _
( ゚∀゚)「つまり、やったのか」

( ・∀・)「やったよ」

 ジョルジュの拳が硬く握り締められた。
やはり自分は間違っていない。目の前の存在を放っておくことはできない。

 しかし、二度死ぬと言われて手を出せなくなったことも事実である。
ハッタリかも知れないが、もし一撃で殺したとして、
またすぐに復活するのであればそれを確認しなければいけない。

 それはいつなのか。
モララーが確認できたのだから年単位ということは無いだろうが、
仲間が帰って来てしまっては自分の身が危ない。

9 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:13:09.26 ID:D0AFGSED0
( ・∀・)「迷ってるんだね」
  _
( ゚∀゚)「……」

( ・∀・)「ジョルジュ。君の負けだよ。
      君は迷ってしまったんだ。今この瞬間だけじゃない。これまでも含めて」
  _
( ゚∀゚)「何の話だよ」

( ・∀・)「物事は決断力とスピードが大事なんだ。
      それを支えるものは君も分かっているはずだろう。
      君と僕とじゃ信念も行動力も違う。そして君はもうすぐそれを痛感する。
      ……いや、説教する気は無いんだ。そろそろ帰ってもらおうか」
  _
( ゚∀゚)「それは無理だ」

( ・∀・)「わかってるさ。だから君に魔法をかけよう。帰りたくなる魔法を」

 何か攻撃が飛んでくると予感し、ジョルジュが身構える。
しかしモララーに動く素振りは無い。

( ・∀・)「どうして、ここに誰もいないんだと思う?」
  _
( ゚∀゚)「……どういうことだよ」

 その言葉を聞いた瞬間、ジョルジュは嫌な予感がした。
気にしないようにはしていたが、明らかにおかしいことなのだ。

11 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:18:40.08 ID:D0AFGSED0
( ・∀・)「聞いてるのは僕さ」
  _
(;゚∀゚)「おいおい……まさか全員で襲撃ってことはねぇよな?」

( ・∀・)「どうする? 僕をどうにかするチャンスであることは間違いない。
      けれどもここでぼーっとしている場合でもないのかもしれないね」
  _
(;゚∀゚)「う……」

( ・∀・)「がっかりさせないでよジョルジュ。君はもっとできる男だ」
  _
( ゚∀゚)「……モララー、俺は絶対にお前を止めるからな」

( ・∀・)「わかってるよ」

 ジョルジュはモララーに背を向け、来た道を戻った。
鉄の扉が重々しく閉まり、モララーが一人その空間に残される。

( ・∀・)「ふふふ、そうかそうか。
      やっぱり君は気づかれなかったみたいだよ。ハイン」

从 ゚∀从「……」

 部屋の奥、暗闇の中にひっそりと佇むハインが、
そのうつろな瞳を宙に泳がせていた。

13 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:23:33.49 ID:D0AFGSED0





 時を同じくして街を歩く内藤。
謎の集団が学校へ向かうのを目撃して、ジョルジュの家へ帰る途中である彼だが、
そこで意外なものを目にする。

(;^ω^)「あ、あれ? この喫茶店……」

 内藤の視線の先にはつい先日倒壊したはずのモナーの喫茶店が、
位置こそ違えど確かにあったのだ。

(;^ω^)「えーと……」

 今日はおかしなことばかり続くと首を傾げながらも、
内藤はその店に入らずにはいられず、ゆっくりとドアを開けた。

( ´∀`)「いらっしゃい」

(;^ω^)「そんな馬鹿な」

 店を見た時点で思ったことだが、
何食わぬ顔で客を迎え入れる店主を見て思わずそんな言葉が口から漏れた。

( ´∀`)「あ! 内藤さん。この間はどうもモナ。
      お好きなところに座ってください。コーヒーご馳走するモナ」

( ^ω^)「そ、それはどうもだお」

15 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:27:26.13 ID:D0AFGSED0
 店内は新築特有の塗料臭さもなければ、設備もそれ程新しくは見えない。
動揺の収まらない内藤は促されるままカウンター席に着くと、ジッとモナーの顔を見つめた。

( ´∀`)「コーヒーの好みは?」

( ^ω^)「酸っぱくなければ……」

( ´∀`)「了解モナ」

 微笑んでモナーはサイフォンのアルコールランプに火を入れた。
その頃になってようやく落ち着いてきた内藤はゆっくりと尋ねた。

( ^ω^)「喫茶店、建てたんですかお?」

( ´∀`)「まさか。ちょっとツテがあってまたこうして出来ることになったモナ」

 もしかするとすごい人なのだろうかと、内藤はじっくり観察してみたが、
剃り残しのあごひげがあったり、後ろを向いたとき一束跳ねたままの髪の毛が残っていたりと、
まるでそんな雰囲気はせず、謎だけが宙ぶらりのまま残っていた。

( ´∀`)「どうぞ。今ケーキも出すモナ。果物は食べられるモナ?」

( ^ω^)「大丈夫だお」

 なんとも香ばしい香りの立つコーヒーにミルクを入れると、
内藤はゆっくりと口を付け、少しばかり啜った。
口の中に微かにフルーティーな後味を残し、コーヒーが喉を通る。

 そして、深く、一つため息を吐くと、
それに合わせるようにモナーが真っ白な皿に乗った木苺のタルトを差し出した。

16 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:31:36.38 ID:D0AFGSED0
( ´∀`)「何か悩み事モナ?」

( ^ω^)「いや、そういうわけじゃないお」

( ´∀`)「そうモナか。……ところで内藤さん、今朝の新聞はご覧になりましたか?」

( ^ω^)「いや、まったく」

( ´∀`)「内藤さんは、『黄泉がえり』ってご存知モナか?」

( ^ω^)「黄泉がえりって、生き返るってことかお」

( ´∀`)「ええ、勿論そういう意味モナ。そして過去にそう呼ばれていた事件があるモナ」

( ^ω^)「事件? それが新聞に?」

( ´∀`)「いえ、事件はもう何十年も前モナ」

( ^ω^)「はあ」

 トーンダウンしたモナーに何も言えず、内藤はタルトをフォークで切り一口食べると、
口の中にタルトを残したままコーヒーを啜った。

( ´−`)「あれは最低な事件だったモナ。関わった人間、全て罰せられてしかるべきモナ」

( ^ω^)「どんな事件なんだお?」

( ´−`)「……ある大手重工による公害事件モナ」

 モナーはゆっくりと息を吐き、カウンターに両腕を乗せ少しばかり身を乗り出した。

17 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:35:59.76 ID:D0AFGSED0
( ´−`)「当時近くの農村が被害を被り奇病が蔓延したモナ。
      公害の事実は当初隠蔽され農村はすぐに疫病が発生したとして隔離されたモナ。
      その後は……追い詰められた住民が市庁や重工へ襲撃をかけたもの、
      すぐに鎮圧されたモナ。けれどそのお陰で公害事件が明るみに出て運動が活発化したモナ」

( ^ω^)「それは結局どうなったんだお?」

( ´∀`)「原告側の勝訴で終わっているモナ。
      ただし、重工側からの補償、謝罪はなし。正直やりきれないモナ」

 モナーは苦渋の色を浮かべていた。
普段の温厚な顔が崩れたさまを見て、事件に対する相当の憎悪が汲み取れるようであった。

( ´−`)「絶対に風化させてはいけないモナ。
      事件の加害者はそれ相応の罰を受けなければいけないモナ。
      ……生ぬるいものではなく、一生がつぶれる様な」

 内藤はその言葉を聞いた瞬間、モナーの影に深い闇が揺らめいたように感じた。
これに似たものを内藤は過去に感じた覚えがあったが、どうにも思い出せなかった。

( ´∀`)「あーいやいや、なんて、こんなことを君に言っても仕方ないモナ」

( ^ω^)「……黄泉がえり事件かお。憶えておくお。
      あれ、ところでなんでそれが黄泉がえりなんて名前なんだお?」

( ´∀`)「亡くなった人が蘇ったからモナ」

( ^ω^)「え?」

 その言葉に内藤は一瞬目が眩むようなショックを受けた。

18 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:39:21.77 ID:D0AFGSED0
( ´∀`)「……と言っても、もちろん噂話、都市伝説のようなものモナ。
      息を吹き返した人は常人離れした力で暴れまわった、
      みたいな話が当時流行して黄泉がえり事件だなんて呼ばれるようになったモナ」

(;^ω^)「その人たちは今どうなっているんだお?」

( ´∀`)「多分、亡くなったモナ。ずいぶん昔の話な上、健康被害が顕著だったから」

(;^ω^)「……」

 自分、そして今まさに身近にいる死人と同様の者がいたらしい都市伝説。
それを偶然とは内藤にはとても思えなかった。
しかしだからといって自分がその農村に住んでいたわけではないし、
他の死人だってそもそも生まれていないだろう。

 それに似た何かが起きている。
そう結論付けて内藤はじっとりと汗ばんだ手でコーヒーカップを取り、
その中にあったものをすべて飲み干した。

( ´∀`)「おかわりはいかがモナ」

( ^ω^)「いや、もういいお。ごちそうさま」

 内藤はそう言って財布を取り出したが、
すかさずモナーに断られたため、礼をしてそのまま喫茶店を後にした。

19 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:44:12.18 ID:D0AFGSED0
( ^ω^)(黄泉がえり事件……モララー……死人……)

 何か繋がりはないか、歩きながら内藤は考えていた。
もし仮に黄泉がえり事件の噂が本当だとしたら、生き返った住民が力を得た引き金は何だったのか。
そして数十年の時間を経てなぜ今になって同様の死人が生まれたか。

 現代における事の発端であるモララーに鍵があるのは間違いなかった。
彼が力を得たことにより始まった現在の状況と、
過去に起こった黄泉がえり事件。
この二つの間に繋がりがあるのは疑いようが無いだろう。

 渡ろうとした横断歩道の信号が点滅し始め、内藤はその足を止めた。
内藤はモララーが黄泉がえり事件の生き残りだという線を考え始めていた。
しかしどう考えても年齢が足りない。
あるいは、死人は年を取らず既に数十年の時を生きているとしたら。
だとしたら何故今になって活動を始めたのか。

 尽きぬ疑問に夢中になっていた内藤の脇を二つの風が通り過ぎた。
続いて内藤を襲う不安感。
顔を上げると、目の前の横断歩道を駆けていく学生が二人。
信号の色は赤。近づくエンジン音。

(;^ω^)「あぶない!」

 とっさに内藤は駆け出していた。
耳を劈くブレーキ音。
近づいてくる車体とそれに気づき立ち止まる学生。
「助かれ!」と念じながら内藤は必死に手を伸ばし、跳躍した。

 恐怖に顔を引きつらせる学生の肩に指が触れ、次の瞬間そこには赤い車のボディがあった。

20 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:48:25.57 ID:D0AFGSED0
 地面に顔を強く打ち付けたが、内藤はすぐ様立ち上がり辺りを見回した。

 そこには黒いブレーキ痕を残して大きく右にそれた車体と、
その脇に横たわる二人の体があった。

( ^ω^)「あぁ……」

 瞬間脱力し膝が折れそうになったが、
すぐさま自分を奮い立たせ、二人の安否を確認するべく歩き出した。
するとどうだろうか、まるで何事も無かったかのように二人は立ち上がり、
その片方、高校生くらいの少年と内藤の目が合った。

(;´・ω・`)「えと、そのごめんなさい。遅刻しちゃうんで。行こう、しぃ!」

(*゚ー゚)「え? う、うん」

 「すいません! 大丈夫ですか」と慌てて飛び出してきたドライバーにも少年は、
「ごめんなさい!」と謝り、少女の手を取って駆け出した。

 二人が居なくなった後もあっけに取られた内藤とドライバーはしばらくそこに立ち尽くし、
警察が来てからは内藤も一緒に説教を食らい、見つけ次第すぐに連絡するようにと念を押された。

(;^ω^)「最近の子は体が丈夫とか? そんな馬鹿な」

 時間が経ってもなお狐につままれたような感覚の抜けない内藤は、
首を傾げながら何度も繰り返し事故の瞬間を思い出していた。

 するとポケットの携帯電話が震えた。
画面に表示されている『ツン』という名前を見て、内藤はすぐに電話に出た。

22 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/11/09(火) 01:53:02.15 ID:D0AFGSED0
( ^ω^)「もしもし」

     『内藤クン? 今どこ!?』

( ^ω^)「え、街だお。もうすぐジョルジュの家に着くところ」

     『よかった。なんかジョルジュが襲撃かけられるかもしれないって』

(;^ω^)「え、どういうことだお」

     『わかんないけど、モララー以外みんな出払ってて、
      多分ヒートの残ってるジョルジュの家に向かってるんじゃないかって』

(;^ω^)「ツンはその動きはわからないのかお」

     『いまやってる! とにかく、内藤クンはどこかに避難してて。
      あっちは居場所まではわからないはずだから』

(;^ω^)「わかったお」

 乱暴に切れた電話をしばらく耳に当てたまま、内藤は迷っていた。
行くべきか、行かないべきか。

 しかしすぐに、二人を助けようとしたさっきの自分を思い出し、内藤は全速力で駆け出した。
足を引っ張るかもしれない。
けれどもそんなことを悩んでいたって行動しないと結果は生まれないのだ。
遠くから学校のチャイムの音が内藤の耳にかすかに届いた。




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