三話目 戦争1
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:10:08.40 ID:c/KRgsh/0
『三話目 戦争1』






[1.種]



空の騎士は、帰ってきた。闇の国から帰ってきた。
空王の背中に乗っかって、風を受けながら空の国へと帰ってきた。

闇の女神からもらった、大切な種を手に持って。


ξ゚听)ξ「ブーン様、お帰りなさい。それに空王様も…」

( ^ω^)「ただいまだお」


女神は騎士が帰ってくるのを待ち侘びて、
ずっと、ずっと、ブーンが出発した所から離れていなかった。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:11:11.20 ID:c/KRgsh/0


ξ;凵G)ξ「もう帰ってこないんじゃないかと思って、心配で心配で…」

(;^ω^)「お、大袈裟すぎだお」

―女神は相変わらずのようだな。

ξ;凵G)ξ「空王様まで…。もう本当心配しましたよ」


騎士の姿を見ると、安心したのか、女神は綺麗に光る涙を流した。


(;^ω^)「ツン、泣き止んでくれお。まだまだこれから戦争は続くお」

ξ;凵G)ξ「そ、そ、そうですよね…。ごめんなさい、涙を拭きます」


女神ツンは、密かに憧れていた。
海の国の、ドクオとクーのような関係に。
相手の名を名前で呼び合える、敬語ではなくタメ口でも良いような、
そんな関係に。

そして、ブーンに憧れていた。本当はもっと気軽に話したい。
でもどうしても敬語になってしまい、上手くいかない。

それが空の女神の良さでもあるけれど、当の本人は気付いていないようだ。



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:12:17.50 ID:c/KRgsh/0


( ^ω^)「…あ、そうだお。闇の国に偵察がてら、女神にめっかっちゃったお」

ξ;゚听)ξ「エッ!?」

―…よく殺されなかったな。


女神は驚き、空王は少しあきれ気味で、騎士の話を聞いた。


( ^ω^)「いやそれが…これをもらったんだお」


そして騎士は手を開き、もらった花の種を二人に見せる。


( ^ω^)「花の種だお。これを空の国に植えてくれと言われたお」

―実は人食い植物、とかはないよな?

ξ;゚听)ξ「それ、確かに花の種なんですか?」




54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:12:52.17 ID:c/KRgsh/0


一人と一匹の疑問も確かだけど、あの女神さんがそんなことするとは思えない。


(;^ω^)「そんなこと言わないでほしいお。きっと綺麗な花が咲くお。
       もし人食い植物だったら、僕が倒すから安心してくれお。
       だから、これを城に植えていいかお?」

―まあ俺は関係ないからどうでもいいが、いいんじゃないのか?

ξ゚听)ξ「ブーン様がそう言うなら…」


そして二人と一匹は、急いでお城へと向かった。
この種を、城の庭園に植えるために。




沢山の花が咲く庭園。そこに種が植えられた。
その様子を女神は横から、空王は上から眺めていた。


( ^ω^)「元気に育ってくれおー」



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:13:42.07 ID:c/KRgsh/0


土を掘り、種を植え、その上から土を優しくかぶせてあげた。
ジョウロで土に雨を降らせ、優しく、優しく、声をかけた。


( ^ω^)「毎日世話をしてあげるお」


そう言うと、花が喜んでいる気がした。


ξ゚听)ξ「綺麗に咲くといいですね」

( ^ω^)「だお。愛情を注げば、周りの花達みたいに綺麗に咲くお」

―出来れば果物が生ればより嬉しい。

(;^ω^)「これは花の種だって言ってたお…」


すくすく育て、すくすく育て。

綺麗なつぼみを実らせて、綺麗な花を咲かせておくれ。







56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:14:35.04 ID:c/KRgsh/0



[2.会議]




空の国、騎士の間、集められる。空の戦士達が集められる。
騎士の呼びかけで、戦士はそこへ集まった。
城の中はあわただしくて、カツカツと足音が沢山響いてく。

騎士の間、戦士は集まった。
大きな机を椅子で囲んで、それぞれが椅子に座りだす。


( ^ω^)「皆、集まったかお?」


城の下の方達ではなく、戦士£Bだけが集められ、
いそいそと会議が始まった。


ξ゚听)ξ「ここに集まってもらったのは、他でもない戦争のことについてです」


皆は騎士から女神に目をやり、真剣に、真面目に聞き入った。



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:15:29.44 ID:c/KRgsh/0

ξ゚听)ξ「さきほど海の国から連絡がありました。
     …海の国に、闇の国が下見程度に攻め入ったそうです」


周りはざわざわと騒ぎ出す。
騎士は 静かに と言った。すぐにざわめきはおさまった。

海の国と協力してはならない。けどこれは情報だ。
情報は協力と言えば協力になるかもしれないが、これは別。


ξ゚听)ξ「海の国は知恵≠もらっていたので、
     予定より早く撤退させることができたようですが…
     闇の騎士は討てなかったそうです」

( ^ω^)「それで、海の国の予想によると、
       闇の国は空の国が空王を味方につけていることを知っているそうですお。
       だから、しばらくは闇の国はここに攻め入らないだろう、ということですお」

ξ゚听)ξ「まだどうなるかは分かりませんが、今の内に鍛えておいて、
     次は我々が闇の国に攻撃をしかけてみる、という形になります。
     ブーン様が偵察をしに行って、今なら攻め入る隙があると
     判断した上での決断です。」


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:16:13.00 ID:c/KRgsh/0

その話をじっと聞いていた、一人の戦士が手を上げる。


( ФωФ)「あの、質問いいですか?」

ξ゚听)ξ「どうぞ」

( ФωФ)「もし我々が強化している間に、闇の国が攻めてきたらどうするのですか?
       あと、もし我々が闇の国に攻め入っている間、国民はどうするのです?
       逆に攻め込まれたら守りようがないのでは?」

( ^ω^)「それなら…」


と、一人の戦士の質問に、騎士はこう答えた。


( ^ω^)「この中の誰か一人を、国民をまとめる役にしますお。
       一人抜けるのは痛いけど、国民をまとめる人がいないと大変だお。
       それに国民は強いお。僕達が思っている以上に、
       この国に対する深い愛がありますお。
       …きっと国民は耐えてくれますお。僕は皆を信じているから」


国民は騎士達を信じてくれている。
だからこっちも国民を思いっきり信じるんだ。


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:16:47.27 ID:c/KRgsh/0

そんな騎士の思いに、先ほど質問をした戦士は、心打たれる。


( ФωФ)「……そのようなお考えでしたか。無礼を許してください。
       同意させていただきます」

( ^ω^)「気にしなくていいんだお。疑問を解決するのはいいことだお」


騎士は質問に答えると、他に質問は無いかと皆に呼びかけた。
どうやら、他に質問は無いようだ。


( ^ω^)「ではこれから、作戦について話し合うお」






60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:18:05.75 ID:c/KRgsh/0


[3.海の住人]



人魚になった騎士と女神、スイスイ、スイスイ、泳いでく。
向かった場所は、海の住人≠フいる場所。

闇の国が下見に来たとき、鯨と鮫が泳いできた。
それら二匹は海の住人≠フ一員で、海の国を様々な面で助けてきた。
だからこそ、海の国はその恩栄を忘れてはいない。


('A`)「住人さん」


騎士は住人に呼びかける。女神はアコーディオンを鳴らす。


川 ゚ -゚)―♪ー♪ー―


短いアコーディオンの音に、魚はどんどん集まって、
二人をぐるりと囲んでしまう。


('A`)「この前は協力ありがとうございました。
   せっかく鯨さんと鮫さんが来てくださったのに、何もできず仕舞いで…」


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:19:16.90 ID:c/KRgsh/0

#「いいのだ。我々は海の国に協力すると決めた」

#「我々は海の国を沢山助けてきたが、その分貴殿達も我々を助けてくれた」

#「恩返しには恩返しだ。それはずっと続くだろう」

#「気にすることはない。これはほんの些細な出来事だ。生きていただけマシだ」

('A`)「本当に、本当にありがとうございます」


感謝しても感謝しきれなかった。住人達は優しく、また騎士も優しく。
どちらもがいて、どちらもが支える。
それはきっと、理想の関係なのだろう。


川 ゚ -゚)「我々は必ず守る。そして勝つ。だから、ずっと我々を見守っていてください。
     我々が危機に陥った時は、また助けてください。
     貴殿達が危機に陥れば、また我々が助けます」


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:19:54.57 ID:c/KRgsh/0

#「おお、おお。もちろんだとも」


こうして騎士と女神は海の住人≠フいる場所から遠ざかり、海底都市へと帰っていた。
何度も何度も振り向いては手を振って、精一杯の感謝を住人に向けた。

人魚はスイスイ泳いでく。魚と一緒に泳いでく。

人魚はスイスイ泳いでく。元いた場所へと帰ってく。

人魚は時々振り返り、魚達へと別れを告げる。







63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:20:40.65 ID:c/KRgsh/0



[4.空の住人]



( ^ω^)「……ではこれで会議を終わるお。僕はこれから空の住人に事情を話してくるお」


長い長い会議が終わり、皆は次々席を立つ。
解散!と誰かが一声かけて、どんどん、どんどん、出て行った。
どんどん騎士の間から出て行く戦士達。そして騎士と女神は残された。


( ^ω^)「ツンも一緒に来るお」

ξ゚听)ξ「ええ、分かっています」




二人も後から騎士の間から出て、城の外で待つ空王に、空の住人のことを話した。


―…ほう、空≠ノ求めるのか。それなら俺も一緒に行こう。話しがつけやすくなるだろう?

( ^ω^)「ありがとうございますお」


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:21:33.78 ID:c/KRgsh/0




騎士と女神は竜の背に。流れる風は変わらず速い。


(;^ω^)「あぶぁあああぁぁあ速いおおおぉぉぉおおぉ」

ξ;゚听)ξ「空王様、もうちょいスピードダウン、スピードダウン!!」

―何を言う。更にスピードを上げるぞ!


すると風の流れは更に速くなって、勢いよく当たる風で息が出来なくなりそうだった。
風になれた感覚がした。でも、息は苦しかった。


(;^ω^)「ぎょうおぉおおおおえええええええええええええ」

ξ;゚听)ξ「きゃあああぁあああああぁあああああ」


それでも必死にしがみついて、住人のいる場所へと向かっていった。







65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:22:22.45 ID:c/KRgsh/0

やっと目的の場所へと辿り着いたが、二人はもうへとへとだった。


―このくらいでバテてどうするのだ…。

(;^ω^)「ゼー、ゼー、だ、だからって…スピード上げなくたって…」

ξ; )ξ「ゼー、ハー、……もうだめかも…」

(;^ω^)「ツン、ダメだお!しっかりするんだお!」


騎士は、目の白い女神を元気付け、女神はやっと起きることができた。
そして空王の背中で、女神はヴァイオリンの音を奏で始める。


ξ゚听)ξ「ごめんなさい…。じゃあ、いきますね」

ξ゚听)ξ―♪ー♪ー―


空の上で、綺麗な音色が響いてく。
綺麗な綺麗なヴァイオリンの音は、キリリキリリとその場を癒す。
アコーディオンと同じように、短く、短く音を奏でていった。

するとどこからか鳥達が現れる。ぞろぞろと沢山の鳥達が現れる。


―来たか、空の住人よ。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:23:19.28 ID:c/KRgsh/0


鳥達は空王と騎士と女神を見つめて、声をかける。


#「空王様に、騎士様に、女神様じゃあないですか」

#「どうしたんですか。こんな場所に来るなんて」


不思議そうな声を上げて、鳥達は次々二人と一匹の周りに集まった。
騎士は、ここに来た理由を話し始める。


( ^ω^)「実は、闇の国に戦争を仕掛けられましたお」

#「何!?闇の国に!?」

#「まさか本当に戦になろうとは…」

( ^ω^)「それで、僕達は少しでも国民への被害を減らしたいんですお。
       だから空の住人の貴殿方に、協力してほしいんですお」

海の国とは協力できないということ。
闇の国が海の国に攻め入ったこと。
色々話していった。



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:24:15.62 ID:c/KRgsh/0

#「…ふぅむ。我々とてあまり争いを好んではいないが…」

( ^ω^)「このままだと、貴殿方も巻き込まれてしまうかもしれないんですお」


騎士の言葉に、空王が付けたした。


―闇の国は何をしてくるか分からない。それに、あいつら何かを隠していそうだしな。
 危険なことに変わりは無い。どうだ、ここは協力してやってはくれまいか。


空の住人達は、空王がそんなことを言うとは、といったような様子で、
騎士と空王の言葉を受け入れた。


#「…そういうことならば仕方あるまい。我々は我々の為に協力しようじゃないか」

( ^ω^)「ありがとうございますお!」


こうして空王、空の住人と味方を得て、少し騎士は気が楽になった。
だが、まだまだ油断は出来ない。


( ^ω^)「…僕ががんばらなくちゃ、だお」


空王は空の国へと、二人を連れて帰った。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:24:54.68 ID:c/KRgsh/0



[5.騎士と戦士]



( ´_ゝ`)「本当、騎士様達はがんばってくれているよ」


城で、空王と騎士と女神の帰りを待つ戦士達。
家来の一人、戦士の兄者がそう言うと、次々皆は思いを吐き出した。


( ><)「そりゃあ僕だって戦争は嫌なんです!
      でも、騎士様達は必死になって国を守ろうとしてくれているんです!」

( ФωФ)「俺達がその気持ちに答えなければならないな」

爪'ー`)y‐「…闇の国と戦争か……。これは本当、どうなるか分かったもんじゃないな」

ζ(゚ー゚*ζ「きっと勝つよ。だって騎士様や女神様が信じてるんだもの。
      私も騎士様と女神様を信じてる」

( ´∀`)「海の国もがんばってるモナ。だから空の国もがんばるモナ。
       さ、訓練するモナ。強化するモナ!」


騎士が空の住人の所へ行っている間、戦士達の間ではこんな会話が流れていた。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:25:30.53 ID:c/KRgsh/0



優しい優しい騎士の周りには、優しい優しい戦士達がいる。
空の国も、海の国も、優しい人たちが沢山いる。

そんな人たちを苦しめる戦争の何が楽しいのだろうか。
全ての国を支配するがためにそんなことをして、何が喜ばしいのだろうか。

二つの国の騎士達は、国を守るために動いている。
一つの国の騎士達は、国を支配するために動いている。
人間の欲は恐ろしい。本当に、本当に、恐ろしい。




70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:26:06.52 ID:c/KRgsh/0


二つの武器と 二つの楽器が落っこちた

後から一つの武器と 一つの歌が落っこちた

どうしてそれは対立したのか どうして争いに発展したのか

誰かは答えを知っているだろうか

それとも誰にも分からないのか

ただ 二人の騎士は平和を望み

一人の騎士は 争いを求めた

思いの違いで争って 思いの違いで守ってく

だけどいつかは分かり合えると 信じてるから


信じてる から







『三話目 戦争1』end

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 02:27:15.79 ID:c/KRgsh/0
三話目 戦争1、終わりました。
今日はもう投下できそうにないか…。
また書き溜めしておきます。

それではおやすみなさいー

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