第零章・内藤退魔師事務所、営業再開!! 〜その1、鬼神楽〜
- 2 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:17:29.21 ID:Yth8QX5N0
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生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く
死に死に死に死んで死の終わりに冥し
―――弘法大師 空海―――
- 3 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:18:31.57 ID:Yth8QX5N0
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テレビにはサーチライトに浮かぶ高いビルと、飛行する多数のヘリが映っていた。
周囲の然るべき個所には、ライフルを構えた狙撃要員の1個小隊。
しかし、その全員が困惑にあった。
アレにこんな物が通用するのか……?
(-@∀@)「今晩は。アサピ新聞社本社ビル前から、緊急ライブでお送りしております 」
この国有数の新聞社。
普段から多くのジャーナリストで賑わうこの魔天楼は、今夜、別の意味で賑わっていた。
日本中のテレビ局、新聞社が一堂に会している。
サーチライトに照らされ、昼間のように明るい周囲。
入口を大きく弧を描くように囲んでいるのは、機動隊の面々。
彼らは防御用の盾越しに、緊張した視線を入口に向けていた。
その光景を映すテレビ画面には、このようなテロップが張り付けてある。
『緊急特番!! 悪霊に占拠された新聞社!!』
(-@∀@)「緊迫した状況は依然として続いております。
先ほど警察のテロ対策部隊が突入したとの報告がありましたが……」
- 5 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:19:28.11 ID:Yth8QX5N0
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(-@∀@)「占領された本社ビル内は不気味なほど静けさを保っておりm――っ!!」
カメラに映ったアナウンサーの言葉を遮る破砕音。
上階のガラスが割れる音。
砕けたガラスはシャワーのように地面に降り注ぎ、待機していた機動隊の面々を下がらせる。
――結果としてはそれが幸運だった。
ガラスの次にそこへ落ちたモノ。
もし頭上に落ちていたらまず命はなかっただろう。
(;-@∀@)「こ、これは!? うっ!!」
それを見てアナウンサーはカメラの前で口を押さえる。
カメラは嘔吐する彼の向こうにあるモノを鮮明に映し出している。
それは、ビル内に突入した部隊の変わり果てた姿だった……
- 6 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:19:54.40 ID:Yth8QX5N0
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Presented by
━━━━━━┛
内藤エスカルゴ
━━━━━━┓→ http://www.geocities.jp/local_boon/index.html
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
Escargot Naitoh
━━━━━━━┛
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/30(日) 21:21:20.97 ID:Yth8QX5N0
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<ヽ`∀´> 「これは……。彼らを至急退避させるニダ 」
(-@∀@)「ニダー・エバラさん!!」
ゆったりとした和服に身を包む恰幅の良い男が現れた。
これを見たアナウンサーの表情はパッと輝く。
アナウンサーだけではない。
カメラは、ニダー・エバラに多大なる信頼の表情を見せる人々を映し出していた。
ニダーならこの事態を解決出来る。
あろうことか機動隊ですらもそういう顔をしている。
<ヽ`∀´>「これまでに見た事もないほどに強力な悪霊のようニダ。
ウリが行って会話して来るニダ 」
(;-@∀@)「そんな危険だっ!! ニダーさん1人であの中へ行くなんて!!」
<ヽ;`∀´>「え? 1人?」
(-@∀@)「テレビの前の皆さん!!
ニダーさんこうおっしゃっています!!
『あれは古の悪霊である!! 素人の手に負える相手ではない!!
オレが1人で行って叩きのめしてやる!!』と!!」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/30(日) 21:22:34.50 ID:Yth8QX5N0
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アナウンサーの叫びに、場の一同は歓声を上げる。
『極楽への手紙』、『ソウルカウンセラー』と言った心霊タレントとして名を馳せているニダー・エバラ。
そのニダーがやる気になっている。
これでは凶悪な悪霊もひとたまりもないだろう。
(-@∀@)「さぁ!! この勇気溢れる戦士エバラを悪霊の巣窟に送りましょう!!
エバラの前に最早悪霊は脅威に非ず!! 尽く地獄の淵に叩き返されるのです!!」
<ヽ;`∀´>「ちょ、ちょっと待つニダ!! 待てって、オイ!!」
アナウンサーの煽りを受けて、期待に目を輝かせた人々がニダーに一斉に群がる。
人々はニダーを担ぎ上げ、神輿を担ぐようにビルの入口へと向かう。
(-@∀@)「舞い降りた神の戦士エバラ。対するは卑劣極まりない霊のテロリスト。
まさに構図は神VS悪魔。
ハルマゲドンの再現か。このアサピ新聞社は現代に蘇るヴァルハラか。
さぁ!! 21世紀のジャンヌ・ダルク、ニダー・エバラがついに出陣です!!」
<ヽ;`∀´>「お前ら止めるニダ!! チクショウ、訴えてやる!! 絶対に訴えてやるニダよ!!」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/30(日) 21:23:48.99 ID:Yth8QX5N0
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人々はニダーを正面玄関から投げ入れ、即座に機動隊の隊列がそこを塞ぐ。
ニダーは何か叫んでいたが、カメラを見ると泣きそうな顔をして内部へと消えて行った。
(-@∀@)「死してなお、この世に縋る悪霊共に神の鉄槌を!!
極楽へ……いや、地獄に叩き返せ、ニダー・エバラ!!
それでは一旦CMです 」
ハイテンションと無難な笑みを浮かべていたアナウンサーは、CMに切り替わったことを確認した。
途端に醜悪な表情に変わり、煙草に火を付けて舌打ちする。
(-@∀@)「ちっ、タヌキ親父が。今まで散々稼がせてやったんだ。
最後くらい精々立派な数字を稼いでくれよ、ってのwww」
ギラリと光る眼鏡の下には、凍てつくような冷たい目があった。
この男、アサピーはアサピ新聞社と同じ系列であるアサピ放送のアナウンサーだった。
視聴率のためなら捏造や買収など屁とも思わない。
それは人の命にしても同様だった……。
- 15 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:27:24.54 ID:Yth8QX5N0
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原作
━━━
荻野真
━━━━
孔雀王
孔雀王 退魔聖伝
孔雀王 曲神記
- 16 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:28:05.86 ID:Yth8QX5N0
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?「あのー、ちょっとよろしいですお?」
(-@∀@)「あ? 部外者は入って来ちゃ駄目だよ。しっし!!」
間延びした声に振り向いたアサピーは、ニコニコと締まりのない表情の青年を見て煙たそうに追い払おうとした。
?「いや、あの人早く連れ戻さないと死にますお? 冗談じゃなくマジで 」
(-@∀@)「うっせーな。仮に死んだとして何か問題でもあるんでしょうかね?
寧ろそっちの方がテレビ的にはおいしいんだよ 」
?「これはこれはwww。清々するほどに外道だな。おい 」
?「はいよ 」
眉の下がった男に促され、冗談のように人相の悪い男がアサピーの前へとにじり出てきた。
あまりの顔の怖さに絶句し硬直するアサピー。
次の瞬間、アサピーは顔面の真ん中を堅い拳で殴られ、そのまま後ろへ倒れた。
- 17 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:29:17.15 ID:Yth8QX5N0
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(;-@∀@)「なっななな、何をするんだ!!
おいカメラ!! 今のちゃんと撮っただろうな!?」
アサピーは割れた眼鏡越しに、カメラのレンズが乱入した3人をしっかりと捉えている事を確認し口を歪める。
傷害罪で訴えれば多額の賠償金を得られるだろう。
証人はテレビの前に腐るほどいる。
(´・ω・`)「おや、まだ意識があるぞ。さては手を抜いたな、ドクオ 」
('A`)「ん? おかしいな。じゃ、もう1発 」
今度は革のブーツの底で蹴りつけられた。
潰れてしまった鼻から噴水のように血を吹き出しながらアサピーはこう思った。
コイツら、生放送でありえねぇ、と。
- 18 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:30:31.07 ID:Yth8QX5N0
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(´・ω・`)「あー、スッキリした。このアナ、前から嫌いだったんだよね。
テレビの前の良い子の皆。
根性が腐ってると、このオジチャンみたいになるから気を付けるんだよ 」
垂れ眉の男は、気絶したアサピーを撮り続けていたカメラの前に割り込んだ。
そしてカメラの向きを無理やり変える。
そこには最初にアサピーに話しかけた笑顔の青年が、やはり人好きのする笑顔のまま立っていた。
( ^ω^) 「え〜とですね。僕達はこれからあのビルの中に入って悪霊をぶっ飛ばしてきますお。
先に入って行ったオッサンも、まだ生きてたら助けてやりますんで、心配せずに待っててくださいですお 」
それだけ言うと3人は真っ直ぐにビルの入口へと歩いて行った。
一部始終を見ていたマスコミも機動隊も、唖然として彼らに道を譲る。
微塵の緊張感もなく、コンビニにでも行くような素振りで談笑などしながらビルに入る3人。
突然アナウンサーを殴り飛ばし、蹴りつけた3人組の男。
テレビの前でこの光景を見ていた人々の目には、彼らはただの暴漢にしか映らなかった。
しかし、彼らの本当の顔は別にある―――
- 21 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:32:49.40 ID:Yth8QX5N0
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闇に蠢き、人に害為す人ならざる存在を撃滅する狩人。
―――その稼業は退魔師―――
- 22 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:33:18.89 ID:Yth8QX5N0
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<ヽ;∀;>「嫌だぁー―――!! アイゴー―――!!」
鼻汁と涙と涎と何かワケの分からない液体で顔を汚し、豚のような悲鳴を上げる。
ニダーは俗に言う霊感のある人間だった。
霊の姿を見て、意志の疎通を図る事だけは出来る。
時には説得が成功し、迷える霊魂を成仏に導くこともあった。
近年はそれが功を奏しメディアへの露出も増え、テレビ局お墨付きの霊感商法で私腹を肥やしていた。
肥やしすぎた。
いつしかニダーは霊の声を聞くことが出来なくなり、それでも富に執着した。
<ヽ;∀;>「嫌ぁー―――!! 死゛に゛た゛く゛な゛い゛ニ゛タ゛ー―――!! オ゛モ゛ニ゛ー―――!!」
そして今、ニダーはこの場所に居る。
目の前には声も届かない、恐ろしい悪霊の群れがニダーを取り込もうと集いつつあった。
- 23 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:35:05.47 ID:Yth8QX5N0
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『寒い寒い寒い寒い寒いさむいさむいさむいサムイサムイサムイサムイ……』
<ヽ;∀;>「ごめんなさいごめんなさい!! もうインチキも捏造も模倣も盗作も覗きも痴漢もしないニダ!!
これからは真っ当に生きるニダ!! だから見逃してくれニダぁー―――!!」
ニダーは土下座し、地面に額を擦りつけて懇願する。
そうすれば悪霊を見ずに済むからだ。
ニダーにとって幼い頃は周囲に居て当然だった霊魂。
しかしそれを食い物にしていた負い目からか、今となっては恐怖の対象でしかない。
不意に悪霊達の囁きが止む。
願いが届いたのか?
ニダーは僅かに残った勇気の残りカスを振り絞って顔を上げた。
<ヽ;`∀´>「分かってくれ―――」
顔を上げる。
そこには舐めるほどに近い距離でじっとニダーを見つめる半透明の顔、顔、顔、顔……
『生きてるカラダ……暖かい。チョウダイ……チョウダ……』
<ヽ;`∀´>「ひぃぃー―――っ!!」
- 24 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:36:53.89 ID:Yth8QX5N0
-
腰を抜かしたニダーに悪霊達は群がる。
触れられる場所には骨の髄から冷えていくような感覚。
この感覚が脳に達したとき、自分は死ぬのだとニダーは実感したが……
<ヽ;∀;>「お゛願゛い゛ぃ゛ー―――!! 神゛様゛ぁ゛ー―――!!」
それでも生に執着する。
霊の何たるかを知っているからこそ同じモノにはなりたくない。
その時、
―――ナウマリ サンマンダ バサラ タンカン!!―――
ニダーは聞いた。
生気に満ち溢れた声の真言を。
そして見た。
激しくも優しい熱と炎が悪霊を薙ぎ払う様を。
- 25 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:38:46.69 ID:Yth8QX5N0
-
<ヽ;`∀´>「か、神……?」
(´・ω・`)「やってる事はクソだが、その何が何でも生きたいという姿勢は評価してやろうか 」
( ^ω^) 「死にたくなけりゃ、死ぬ気で僕達に着いて来るお 」
('A`)「死にたくないのに死ぬ気でとは、これいかに 」
現われたのはバッチリと高そうなスーツを着込み、白木の鞘に納めた刀を持った男。
このような超常の中にありながら、柔らかい笑みを絶やさない大学生風の男。
そして目を合わせただけで因縁を付けられそうなレザーのロングコートのヤクザ。
<ヽ;`∀´>「あなた達は……?」
腰を抜かしたニダーに手を差し伸べる崩れない笑顔。
その手を取りながら、この男達の正体を問う。
その青年はニダーを乱暴に引き上げこう言った。
( ^ω^) 「別に……。
ただ一応言っておくと、オッサンと違って僕らは本物ですおwww」
- 28 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:41:57.23 ID:Yth8QX5N0
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All Demons may scream.........
────┼→
All Devils may escape.........
────────┼→
But Any Evils cannot escape.........
─────────────┼→
- 29 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:42:24.16 ID:Yth8QX5N0
-
('A`)「おぉぉぉぉぉらぁぁぁぁー―――――っ!!」
悪霊の集団を見るや否や、単身その中心に駆け込むロングコートの男、ドクオ。
自ら死地に踏み込む。
しかし実際には違う。
悪霊達は死地を迎え入れた……。
('A`)「成仏しやがれ!! ナンマンダブだこの野郎!!」
生きた人間に取り憑こうと、わらわらと集る悪霊達。
その半透明な体を、ドクオの翻ったマントのようなコートが通り過ぎる。
死によって物理的な干渉から解放されたはずのその体。
コートに仕込んだ煌く退魔の刃は、悪霊達を切り裂き浄土へと送る。
- 30 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:42:52.89 ID:Yth8QX5N0
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|
|They defeat All Demons.........
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|
|They kill All Devils.........
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|
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|And They never forgive Any Evils.........
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┼
↓
- 31 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:43:26.30 ID:Yth8QX5N0
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(´・ω・`)「全く……。相変わらずムサ苦しい奴だな、ドクオ 」
雄叫びを上げながら悪霊達の間を駆け抜けて行くドクオを遠目に、ショボンがふらりと前に出る。
ドクオが討ち漏らした悪霊が、生ある体に反応し我先にと襲いかかった。
死んでしまった彼らには、最早人をとり殺す以外の意思はない。
もし意思があったならば、襲いかかるどころか逆に逃げ出しただろう……。
(´・ω・`)「もっとクールでスマートでスタイリッシュでエレガントにやれよ。こんな風にな 」
その場に響く金属音。
刀を鞘に納める鍔鳴りの音。
その瞬間、ショボンに迫った悪霊達は露へと消えた。
ショボンの刀。
その昔、妖獣・鵺を封殺した退魔師に時の帝が与えた最強の退魔の剣、妖刀百足丸。
その超高速の居合の一閃が哀れな死霊達を昇天させる。
- 35 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:47:33.63 ID:Yth8QX5N0
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|
└────────┐
Ghost Busters have returned.........
└────────┼→
- 37 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:48:20.95 ID:Yth8QX5N0
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\::^o^::/「オワタオワタ……人生オワタ……。オワタオワタ……」
<ヽ;`∀´>「あれはヤバいニダ!! もう手が付けられない……」
3人の退魔師と1人のインチキ霊能者の前に、他とは一線を画す強大な負の気が現れる。
この桁違いの無念の思いが他の悪霊を呼び寄せた原因だろう。
その周囲には悪意にしか見えない、黒い霧のような恨みが邪悪に渦巻いている。
( ^ω^) 「ホントだ、こいつはヤバいお。だからオッサンはさっさと下がるお 」
ブーンの言葉と共に、ショボンとドクオも下がる。
悪霊は1人立ちはだかるブーンを見て、その若く生気の溢れた体を欲する。
\::^o^::/「人生……オワタ……?」
その死者はブーンを求め襲来する。
震え上がるほどにおぞましい表情。
しかし、それに対して襲われそうになっている側は、相も変わらない柔らかい笑顔を浮かべている。
- 39 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:49:12.00 ID:Yth8QX5N0
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( ^ω^) 「よっぽど悔しい思いをして死んだんだろうけど、生きてる人間に迷惑かけちゃ駄目だお 」
\::^o^::/「人生オワタオワタオワタオワタオワタ!!」
迫る悪霊をチラッと見て、ブーンは両手で印を組んだ。
1度、気合を込めるように息を吐く。
9つの真言、9つの印。
( ^ω^) 「臨 兵 闘 者!! 開 陳 烈 在!! 前!!」
最後の真言を声に、最後の印を両手に。
瞬間、ブーンの両手の印から眩いばかりの閃光が走る。
九字神刀。
法力が生み出す神の刀が、一瞬にして不浄を切り裂く。
- 41 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:49:51.14 ID:Yth8QX5N0
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その時、ビル内に立ち込めていた重苦しい空気が晴れた。
照明は未だ消えたままだが、心なしか少し明るくなったようにも感じる。
茫然と立ち尽くすニダーは、自分の命が救われた事に気付いた。
<ヽ;`∀´>「あ、あの……」
何とか絞り出した声。
それを聞き、たった今まで悪霊達と死闘を繰り広げていた男達がニダーを見る。
うっかり忘れていたという顔で。
('A`)「そういや居たな、アンタ。まぁ、これに懲りたら少しは真っ当な仕事に鞍替えしろよ 」
(´・ω・`)「おぉ、先に出てていいよ。オレはさっき面白い物を見つけてね 」
特に興味もないと2人はニダーを置いてどこかへ行ってしまう。
インチキでのし上がってきたにすぎないが、それでも有名人の彼は近年記憶にないスルーをかまされた。
しかし困惑が怒りに勝る。
- 42 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:50:54.61 ID:Yth8QX5N0
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<ヽ;`∀´>「アンタら一体何者ニダ……?」
ニダーはブーンに顔を向ける。
その場にブーンが残っていたのは、恐らくニダー1人で外まで歩いて行く事は厳しいと踏んでの心遣いだろう。
何者か?
そう聞かれるとこう言うしかない。
( ^ω^) 「元裏高野 退魔師 内藤ホライゾン!!
しつこいようだけど、オッサンと違って本物の退魔師だお 」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/30(日) 21:52:15.94 ID:Yth8QX5N0
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第二部
━━━━━
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
- 48 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:53:38.91 ID:Yth8QX5N0
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<ヽ;`∀´>「裏高野!? 本当に実在していたニダ!?」
( ;^ω^) 「まぁ、逃げて来たから今は『元』だお 」
その道に生きる人間なら、裏高野の名を知らない者は無い。
古の昔より妖魔から日本を守護する退魔のスペシャリスト。
とはいえ、実際に確認した人間は皆無に近く、その存在は都市伝説の類と化していた。
( ^ω^) 「今は内藤退魔師事務所 所長、というのが僕の肩書きですお。
困った事があったらここに連絡くださいお。
注文は『シルバーバレット』で 」
ブーンはジーンズのポケットから、クシャクシャになったビラを取り出しニダーに握らせた。
『不可解な出来事に関する相談承ります』
どれだけ好意的に見ても、清々しいほどに怪しさ全開のビラ。
しかしニダーにの目には、これが何よりも霊験あらたかな護符に見えた。
<ヽ*`∀´>。o ○(裏高野……。かっけーニダ!!)
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
- 51 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:56:10.84 ID:Yth8QX5N0
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▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲
( ^ω^) 「あれ? 何やってるんだお、ドクオ?」
ブーンがニダーを連れて外に出た時、一足先に出ていたドクオに食って掛かっている人間が居た。
さっきカメラの前で失神させたアナウンサー。
それが鼻いっぱいに血に染まったティッシュを詰めて、ガミガミと何かを言い寄っている。
(#-@∀@)「この野蛮人!! テレビの前の皆さん御覧ください!!
これが法治国家日本で堂々と暴力を振るう者の顔です!!
我々は許すわけにはいきません!!
この男を許すという事は即ち、民主主義の敗北と───」
('A`)「おー、ブーン。遅かったなー 」
(#-@∀@)「この期に及んで無視!!
この男に反省の2文字はありません!!
これが現代の日本の教育システムが育てた人間の姿です!!
無能な政治家が生んだ無能な日本人!! 延いては国際社会から遅れを───」
( ^ω^) 「うるせーwww。何だお、コイツ?」
- 52 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:58:12.51 ID:Yth8QX5N0
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少しも悪かったという素振りを見せない2人。
これを見てアサピーはますますいきり立つ。
それでも痛くも痒くもないという顔をしている2人を見て、さらにさらにいきり立つ。
(#-@∀@)「貴様ら、いい気になっているのも今のうちだぞ!!
そうですよね、テレビの前のみなさん!!
みなさんがこの暴漢の所業を見届けた証人です!!
私は暴力に屈することなく、この野蛮人たちと裁判で戦い───」
(´・ω・`)「裁判? お前ら何かやったの?」
('A`)「知らん 」
( ^ω^) 「別に……」
遅れて出てきたショボンが憤るアサピーの言葉を遮る。
完全に人事という顔の3人にアサピーはもんどりうって癇癪を起す。
(#-@∀@)「ムキィー───ッ!! お前ら覚悟しろよ!! 2年3年で出てこれるなんて思わない事だな!!」
- 54 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 21:59:42.68 ID:Yth8QX5N0
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(´・ω・`)「ホントにうるせーな、コイツ。中嶋さーん 」
ショボンが人ごみに向かって名を呼ぶ。
これを聞きニヤニヤと笑うブーンと、アチャーと額を抑えるドクオ。
その横で青筋を立てながら、アサピーは1人の老紳士が近付いて来るのを見た。
( ,'3 )「初めまして。いつもテレビで拝見させて頂いております。
裁判となれば、今後ちょくちょくお会いする事になりましょうな 」
やっと話の分かりそうな人間が来た。
アサピーはほくそ笑みながら、その紳士が差し出した名刺に目を遣った。
もう1度目を遣った……。
(;-@∀@)「モ、モモモモッ、モナー財団の顧問弁護士、中嶋バルケンだとぉー───!!」
( ,'3 )「そのようですな。そして此方におわす御方が、モナー財団現当主、ショボン様でございます 」
(´・ω・`)「どーも 」
モナー財団。
日本中のあらゆる産業に関連会社を持ち、戦後最大のフィクサーと言われたモナーが一代にして築き上げた財団。
その巨大な支配力は政財界を一握し、当然アサピーが属するアサピ放送も財団の小さな歯車の1つだ。
- 57 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 22:01:11.26 ID:Yth8QX5N0
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( ,'3 )「覚悟はよろしいのでしょうな?
モナー財団を敵に回した以上、一族郎党末代に至るまで満足な生活はお諦め下さいませ。
さ、ショボン様、ホライゾン様、ドクオ様。お車を用意しております 」
('A`)「うーし、帰ぇるとすっか 」
( ^ω^)「じゃ、精々頑張ってくださいおwww。権力に楯突くジャーナリストの鑑さんwww」
(;-@∀@)「ちょ、ちょっと待ってください!!」
冗談ではない。
自分が言いたい放題言えるのは、自分に危害が及ばない時だけだ。
アサピーは形振り構わず、必死にショボンに縋りつき懇願した。
(´・ω・`)「テレビ映ってるけどいいの?」
言われてアサピーは気付く。
そして自分の今の情けない姿を把握する。
長年に渡り築いてきた、知識人としての仮面がガラガラと崩れていく音を聞いた気がした。
- 60 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 22:03:26.03 ID:Yth8QX5N0
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(´・ω・`)「そうそう、それからコレなんだけどさ 」
ショボンがジャケットの内ポケットから出したのはUSBフラッシュメモリー。
アサピーの耳に届いているかどうかは定かではないが、一切構うことなく続ける。
(´・ω・`)「アサピグループが過去行った捏造や隠滅の証拠データが入ってる。
今回の幽霊騒動は、お前らがアサピって死に追いやった人間達の恨みが発端だ。
さて、これは放送免許の剥奪でも考えんといかんですなぁ 」
ショボンはそれだけ言うと、足に絡み付いていたアサピーを撥ねて行ってしまった。
その姿と泣き崩れるアサピーを見てニダーは
<ヽ*`∀´>。o ○(内藤退魔師事務所……。かっけーニダ!!)
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
- 62 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 22:05:00.09 ID:Yth8QX5N0
-
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲
退魔師達が事件を解決したアサピ新聞本社ビル。
社員達は早くもそれぞれの部署に飛び込み、明日の朝刊の準備に追われている。
戦争のような慌ただしさ。
しかし皆、まともに仕事が出来る事に喜びを感じている顔だ。
風のように現れ、去っていったあのヒーローは、この会社が捏造に腐っていると言った。
それを甘んじて受け、社員達は誓う。
まずはこれまでの責任を正々堂々と果たし、これからは決して不正を許さないクリーンな報道局になると。
(-@∀@)「………」
新たなエネルギーに満ち溢れた社内に、1人だけそぐわない人間が居た。
生の全国放送で失態を晒し、あろう事かモナー財団に喧嘩を売ってしまった男。
おぼつかない足取りでふらふらと社内を徘徊する。
- 64 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 22:06:34.41 ID:Yth8QX5N0
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(-@∀@)「終わった……人生終わった……」
ブツブツと何事かを呟きながら、足の向くままに移ろい歩く。
その眼はもう何も捉えてはいない。
まともに見えていれば、ショボンやバルケンが冗談で言っていた事くらい簡単に分かったのだが。
(-@∀@)「オレの人生……終わった……」
アサピーは知らぬ間に、まだ誰も居ない区画へと足を踏み入れていた。
そこは今回の騒動で最悪の悪霊が居た、建物内でも最も痛みの激しい場所で、まだ復旧が間に合っていないのだ。
新しい蛍光灯もまだ来ておらず、ここは依然として暗い。
(-@∀@)「オレの人生と同じ、真っ暗だな……」
どうやらそれ以前に電気系統もやられているらしい。
暖房が効いていないようで異常に寒い。
寒い?
夜とはいえ、春もうららなこの時期に寒い?
- 68 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 22:08:33.31 ID:Yth8QX5N0
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アサピーはその不自然な寒さに気付き、ふと辺りを見回す。
知らない間に何か妙な場所へと迷いこんでいる。
(;-@∀@)「あ、あれ? おかしいな。早く戻ろう 」
アサピーは気付いていなかった。
知らず知らずのうちに自分が口に出していた言葉。
それがラジオの波長を合わせるように、自分とある者の波長と合わせてしまっていた事を。
そのせいで足が勝手にこの場所へと向かっていた事を。
その場を後にしようとするアサピーの足は動かなかった。
まるで地面から手が生えて、足を掴まれているかのような感覚を受ける。
(;-@∀@)「―――っ!!」
足元を見たアサピーは、即座に見た事を後悔した。
足を掴まれていたような感覚。
これは気のせいではないと証明するように、青白い半透明な腕がアサピーの足をしっかりと握りしめていた。
\::^o^::/「人生……モイチド ハジマタ……」
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- 70 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 22:09:28.31 ID:Yth8QX5N0
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( ^ω^)「ドクオー。こないだのアナウンサーがテレビに出てるお 」
('A`)「お? 何のニュースだ?」
( ^ω^)「アイツ、アサピ系列が今までにアサピった一切合財をゲロっちゃったらしいおwww。
人って変われば変わるもんだおwww」
決して、絶対に、何が何でも、是が非でも客が来る事はないバー、バーボンハウスの昼下がり。
どれどれと好奇の眼差しをテレビに向けるドクオ。
確かに、アサピーが大げさな記者会見を開き、これからは全てにおいて生まれ変わるだのなんだのと言っている。
その裏のない真摯な態度は、本当に人が変わったように見える。
('A`)「ふ〜ん。ま、どうでもいいや。そういえばあのオッサンはどうしたんだ? エラの張った 」
( ^ω^)「さぁ? 田舎に帰って白菜でも育ててるんじゃないかお?」
話を適当に切り上げて、ブーンとドクオは席を立つ。
今日もショボンから大量のお使いを言いつけられているからだ。
見る者がいなくなったつけっ放しのテレビ。
生まれ変わったアサピーが誰にも聞こえないような小さな声でこう呟いた……。
- 72 名前:第零章 ◆FnO7DEzKDs :2008/03/30(日) 22:10:33.81 ID:Yth8QX5N0
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(-@∀@)「1回オワタ ケド……マタ ハジマタ……。ヒヒッwww」
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━
――――第零章・内藤退魔師事務所、営業再開!!―――─
終