( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです ―第八話・吸血鬼の家に遊びに行こう― 〜その1、領主〜

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:27:03.58 ID:MiWvuKLb0
第七話・悪魔召喚師〜あらすじ〜

ある日突然バーボンハウスに訪れた容姿端麗の女。
女の名は『葛葉ライドウ』、クー。
古くから魔と共に戦い魔を祓ってきた由緒正しきデビルサマナーの家系の現当主で自称ショボンのフィアンセだった。
困惑するショボン以外の面々は無駄に気を使って席を外してしまう。
早くも結婚式の予定を組み始めるクー。
窮地に追い込まれたショボンだったがそこに救いの手が差し伸べられる。

弐経路警察署殺人課 警部フサギコがバーボンハウスの扉を開けた。
フサギコはたった今発見されたばかりの猟奇殺人事件の解決の糸口を掴むためにショボンを頼ってきたのだった。

ショボンは助けを求めるフサギコに何度も助言し解決に導いてきた実績があった。
そしてショボンと関わる内にフサギコは人に仇成す人外の存在も認識していた。
フサギコは今回の殺人にそのような闇の部分が関わっていると直感で感じバーボンハウスに来たのだった。

ショボンは現場写真を見るなり、被害者が悪魔召喚の生贄にされたことに気付く。
更にデビルサマナー、クーが被害者の霊と対話する。

そしてクーとショボンの恐怖の制裁が始まる……

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:32:26.33 ID:MiWvuKLb0
(´・ω・`)「ただいまっと。お?ブーンにツン、先に帰ってたのか 」

(;^ω^)「お、お帰りだお、ショボン。勘違いしないで欲しいお!2人きりだからって病しい事は何もしてないお!」

ξ;゚听)ξ「ちょ、ブーン!そんな言い方したら逆に勘違いされちゃうじゃないの!」

(´・ω・`)「心配は要らないぞツン。このチェリーボーイにそんな度胸は無い 」

ショボンと一緒に帰ってきたクーを見ると、全く興味を示していないようだ。しかし後でショボンに聞いたところ、大爆笑だったらしい。
その内この辺の判断が付くようになるのだろうか。少なくとも、ブーンとツンには現時点では判別不可能だ。

(;^ω^)「シ、ショボン達の方が怪しいお!こんな遅くまで二人で!」

ξ;゚听)ξ「ブーン!何てこと言ってんのよ!?
       そもそも婚約者同士なんだからそれくらい当たり前、って私に何言わせんのよ!」

(#)゚ω゚)「ぶべらっ!」

慌ててブーンを諫めつつ、墓穴を掘るツン。
照れ隠しに鉄拳を見舞う。

川 ゚ -゚)「私達が何をしていたのか気になるのか?まぁたった二人でだな…(いかれた殺人犯を退治してきた) 」

(;^ω^)ξ;゚听)ξ「「な、なんだってー――――――!!」」

(#´・ω・)「コラ。その括弧の中を省略するんじゃない 」

ξ////)ξ。o ○(や、やっぱり大人だわ。私もいつかそうなるのかしら?)

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:32:50.77 ID:MiWvuKLb0
妄想が暴走して赤面するツン。
ブーンはといえば、日々そのときの為に重ねてきたイメージトレーニングの登場人物が自然にショボンとクーに置き換わっていた。

いつも自分が主人公で、最近は専らヒロインはツン。
イメトレの中ではブーンは完全無欠。
スマートにツンに接し、ウィットに富んだジョークでツンをころころと笑わせる。
不意にツンは目を瞑り、顎を少し上げ…

この21歳チェリーボーイの妄想はこれ以上進展しない。
孤独な素振りは特殊な文献にて行う。
妄想の中で、ブーンの相手役はあくまでも純粋な少女なのだ。

(*^ω^)(僕のスッウィートエンジェール、ツン。いつかきっと君の唇は僕が…)

そうこうしていると、ドクオとでぃが帰ってきた。

('A`)「帰ぇったぞー 」
∧_∧
(*゚;;-゚)「にゃー、今帰ったにゃーwww」

何故かデキ上がっているでぃ。
ドクオによると安マタタビで悪酔いしているらしい。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:34:38.81 ID:MiWvuKLb0
('A`)「よぅ、クー。二人の時間は満喫できたか?」

川 ゚ -゚)「お陰様でな。
     まさかあんなにたくさん…(スライムがいたとは)それにあんなに早いなんて…(スライムを片付けるのが)」

(;^ω^)ξ////)ξ「「な、なんだってー――――――!!」」

(#´・ω・)「だからその括弧の中をちゃんと言えよ 」

妄想爆裂進行中のブーンとツン。
クーに他意は無いためその様子を見ても2人の真意を汲み取りはしない。
完全にスルーして『ところで』と話し始めた。

川 ゚ -゚)「実は今回こっちに来たのはお前達に頼みたい事があってな 」

(´・ω・`)「だが断る。お前に関わると昔から碌な事が無い 」

(;^ω^)「ちょ、ショボン。仕事の選り好みは駄目だお 」

(´・ω・`)「黙れ小僧。オレがどれだけ苦労したかも知らないで 」

('A`)「おいおい。婚約者の頼みくらい聞いてやれよ 」

(´・ω・`)「黙れチンピラ。一応言っておくがな、フィアンセなんて話はオレはさっきまで知らなかったんだぞ 」
∧_∧
(*゚;;-゚)「おい、ショボン。ちょっと首の下かいて欲しいにゃwww」

(´・ω・`)「あー、ツン。頼む 」

ξ゚听)ξ「え?うん、いいけど。でぃさん、こっちおいで 」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:36:33.34 ID:MiWvuKLb0
川 ゚ -゚)「何だショボン、夫婦最初の共同作業を済ませてしまって変に意識しているのか?」

(#´・ω・)「お前わざと言ってるだろ?」

(*^ω^)。o ○(こwwれwwwはwwww)

心底分からないという顔で人差し指を顎に当て首をかしげるクー。
照れが出ているんだろうな、クーは精々そう思う程度だ。
それがショボンにはもどかしくて堪らない。

なお、ブーンはクーのこの仕草を見て卒倒しそうになっていた。
ただでさえ容姿端麗なクーだ。
美の中に垣間見る可憐さ。
ブーンはツンにコレを求めて止まない。
まだツンの何でもないのではあるが。

川 ゚ -゚)「まぁ、どうしてもというのなら仕方が無い 」

聞いただけでは諦めたとも取れる発言。
ショボンは面倒事が避けられたと胸を撫で下ろした。
しかし次の瞬間、クーを計り損なっていた事を強制的に思い知らされる。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:38:35.27 ID:MiWvuKLb0
川 ゚ -゚)「なぁ、ブーン、ツン。ブーンのフルネームは『内藤ホライゾン』だろう?
     『内藤』の『藤』を取って、これからはブーンの事を『とーちゃん』と呼ぶのはどうだろう?」

(´・ω・`)「はっ!まさかっ!?」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「とーちゃん?別にブーンがいいならそれでも…」

川 ゚ -゚)「はい、そこで元気良ーく。『とーちゃん!とーちゃん!』」

(#´・ω・)「それだけは止めろをぉぉぉぉっ!!」

川 ゚ -゚)「なぁ、ドクオ?海へ 行 か な い か?

('A`)「おいおいw婚約者の前で何言ってんだよwwまぁ、あんたみたいな美人に誘われちゃ、嫌とは…」

(;´・ω・)「そいつだけは海に誘うんじゃない!!ドクオ!君は海へ行っちゃならねぇ!!」

('A`)「へ?何で?」

川 ゚ -゚)「ところででぃさん。ひまわりは好きかな?」
∧_∧
(*゚;;-゚)「にゃ?マタタビの方が好きにゃwww」

(´+ω+`)「もう…勘弁してください……仕事引き受けますから……」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:40:22.92 ID:MiWvuKLb0
クーの何でもないセリフに振り回されるショボン。
ブーン、ドクオ、そしてツンはその様子を見てキョトンとしていた。
でぃはツンの膝の上でゴロゴロ言っていた。
ショボンは放心してブツブツと何かを呻いている。
気になったブーンが耳を澄ましてみると、パラレルワールドがどうとかこうとか……
ショボンはどうかしてしまったのだろうか?

川 ゚ -゚)「さて、コレで気持ちよく仕事を引き受けてもらえるわけだな 」

( ^ω^)「何かショボンの様子がおかしいから所長の僕がお受けしますお 」

川 ゚ -゚)「お前達にはM県S市M王町に行ってもらいたい。
     実はここは吸血鬼に支配されている町でな 」

('A`)「・・・・・・」
     
川 ゚ -゚)「そこ在住の私の友人から恐るべき危機が訪れつつあるとSOSを受けた。
     お前達は先に現地入りしてくれ。私もすぐに行く 」

そう言って『私は準備があるから』とバーボンハウスを出るクー。
後に残された4人と1匹はこの依頼について相談していた。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:42:38.58 ID:MiWvuKLb0
('A`)「おい、吸血鬼だってよ 」

中々面白そうな事が始まるな。
ドクオはそう思った。
退魔師としてのトレーニングはドクオにとって有意義な時間だったと本人は思う。
ならばその成果を発揮したいもの。
相手がより強敵ならそれに越した事はない。

( ^ω^)「お、ショボンが復活したお。ショボン、吸血鬼について何か知ってるかお?」

(´・ω・`)「M県S市M王町。ある漫画の舞台となり近年急速に観光地として有名になった町だ。
        なお、その漫画家自身も在住しているが、メディアには一切の露出が無いためその顔は誰も知らない。
        戦国時代の領主の家系が今でも続いており、現在はその末裔が町長を勤める。
        だが、吸血鬼に脅かされているなど初めて聞いたぞ 」

( ^ω^)「でもクーさんの態度からするにデマではなさそうだお 」

正気を取り戻したショボンを確認して、ブーンは話をそっちへ振った。
その様子をでぃを膝の上に乗せたままツンが見ていた。

ξ゚听)ξ「んー、M県かぁ。行ってみたいけど私はパスかな。学校もあるし 」
∧_∧
(*゚;;-゚)「ワシもパスにゃwwwツンと一緒にいるにゃwww」

(´・ω・`)「オッケーだ。今回はオレとブーンとドクオでやる 」

('A`)「ktkr!気ぃ入れていくぜ!」

ドクオが自身の意気込みを必要以上に主張した。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:43:07.20 ID:MiWvuKLb0

( ^ω^)「内藤退魔師事務所、久々の長距離出張だおw」


  ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです


―――第八話・吸血鬼の家に遊びに行こう―――


       〜その1、領主〜


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:44:41.77 ID:MiWvuKLb0
M県S市M王町。
牛タンの味噌漬け以外に大したウリもなかったこの町は、カルト的人気を誇る『ある漫画』の舞台となって以来大きな観光資源を得る事になった。

新幹線で首都駅から数時間。
ローカル線に乗り換え更に数十分。
何やら無理のあるポーズを取っている彫像の群れが見え始めたら、そこはもうM王町だ。

駅を降りると不自然にそっくり返った男と、その脇に佇む妙な衣服を身に付けた巨大な筋肉質の男の彫像がブーンたち3人を出迎えた。
その周囲に群がって同じポーズで記念撮影する観光客の間を縫って彫像のタイトルを見る。
彫像の名前は『売りぃ』。
何人かの観光客はその名前を盛大に叫んでいる。

この町の彫像の多くは、1人の人間と1人のおかしな格好をした人間、たまに人間ではない物もいるが2人1組になっている。
マフラーやアメリカンクラッカーを持つ単体の彫像は、ほとんど噴水などの水場に触れて配置されていた。
そのような彫像はどういう仕組みか、たえず水面に波紋のビートを刻んでいる。

真っ白の大理石で出来たそのような彫像群。
やはり白を基調とした総タイル張りの歩道に建造物。

車道と歩道は完全に隔離され、町の全てが1つの方向に向けて互いを昇華し合っているように感じる。

( ^ω^)「はぁ……こういう風景ってホッとするお。老後はこういう所で子供時代を思い出しながらノスタルジーに浸りたいお 」

(´・ω・`)「バカな事言っとらんでまずは聞き込みだ。行くぞ 」

ブーンが溜息交じりに呟いたセリフは、ショボンにあっさりと無かった事にされた。
きょろきょろ辺りを見回すお上りさんの観光タイムが始まった。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:46:26.60 ID:MiWvuKLb0
( ^ω^)「あ、カフェオレ1つ下さいお 」

ブーンたちは聞き込みの一環で町のオープンカフェに立ち寄った。
赤レンガの建物が白い町並みに嫌味のない程度に映える。
ここ『カフェ ドゥ・孫』では、平日の午前中にも拘らず多くの人々が雑談に花を咲かせる。
ブーンは近付いてきたウェイターにこの町の吸血鬼について訪ねた。

( ^ω^)「ちょっとすみませんお。僕達はこの町が吸血鬼に脅かされてると聞いてきましたお 」

(‘_L’)「吸血鬼?失礼ですがお客様。頭大丈夫かあんた?」

(;^ω^)「別に変じゃないですお……」

カフェオレをテーブルに置いたウェイターは、腫物を触るようにブーンを見て他のテーブルの方へ行ってしまった。
その様子を見ていたショボンとドクオ。

('A`)「確かにいきなり吸血鬼だのなんだのと言われたらアレが当然の反応だよな 」

(´・ω・`)「だが吸血鬼による脅威があるのならばああ言うだけで事足りるはずだ。
        何にせよ、もう少し情報を集める必要があるようだ 」

(;^ω^)「何か、凄い可哀想な人に見られた気がするお 」

('A`)「でも吸血鬼って言葉を出さねぇ限り、それについての情報も得られないだろ。根気良く行かねぇとな 」

(´・ω・`)「そうだな。吸血鬼が存在し、その脅威を受けている者がいるのならば、いずれ辿り着くだろう 」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:48:14.17 ID:MiWvuKLb0
( ^ω^)「あ、コーヒー1つ下さいお 」

(゜ー゜)「オー、カピートゥ。カシコマリマシタ 」

('A`)「……オレ達の分も頼めよ……」

昼食時になって3人は小さなイタリアンレストランへ立ち寄った。
2つしかないテーブルに掛けられた真っ白なテーブルクロスや整然と配置された食器類。
清潔感抜群のこの店『虎・猿・DAY』は、どうやらイタリア人シェフが一人で切り盛りしているらしい。
厨房に姿を消すシェフの背中を眺め、ブーンは出された水を口に含んだ。

( ;ω;)「こ、これは…!」

(´・ω・`)「あー、その話は止めとけ。ややこしくなるから 」

何日も砂漠で彷徨った後に初めて水を飲んだような感動を伝える前に自重させられたブーン。
溢れる涙を拭うと、シェフが3杯のコーヒーを手に厨房から出てくるところだった。
にこやかに接するシェフに、ブーンたち3人は思い思いの料理を注文する。

期待以上の本場のイタリアンに舌鼓を打つ3人。
シェフは柔らかい表情のまま、傍らでその様子を嬉しそうに見つめ続けていた。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:49:15.78 ID:MiWvuKLb0
('A`)「あの、すんません。ちょっといいスかね?」

(゜ー゜)「ハイ、何デショウカ?」

('A`)「実はオレ達、依頼でこの町で悪さしてるっていう吸血鬼を退治しに来た退魔師なんスけど 」

(;゜ー゜)「っ!!?」

(´・ω・`)「おや?何か心当たりでも?」

(゜ー゜)「イ、イエ……突然デビックリシマシテ……
      シカシ吸血鬼デスカ?私、ココデオ店出シテ数年ニナリマスケド初耳デス 」

( ^ω^)「ショボン、これは何か奇妙だお。吸血鬼が猛威を振るっているならここまで誰も知らないってのはおかしいお 」

('A`)「クーは嘘言ってるようには見えなかったけどなぁ。でもこの町はどう見ても平和だぜ?」

(´・ω・`)「随分話と違うな。とにかくクーの到着を待とう 」

('A`)「ああ、出来る事だけしてようぜ。ごちそーさん。会計で 」

3人はテーブルで会計を済ませると、揃って店を出た。
終始人懐こい表情を崩さないシェフを見て、帰る前にもう1回くらい寄ってみるかなどと思いながら。

3人の姿を見送り、シェフは電話を手に取る。

(゜ー゜)「モシモシ、私デス。少シ御耳ニ入レテオキタイ事ガ……」

その表情は俄かに真剣身を帯びていた。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:50:37.53 ID:MiWvuKLb0
おかしな形をした岩の前で待ち合わせをしていたカップル、町立図書館の係員、靴屋の店主、地元高校の生徒。
内藤退魔師ご一行様3名は様々な場所で様々な世代の人々に聞き込みをして回った。
しかしその成果はゼロ。
悉く養豚場に並ぶ豚でも見るかのような冷たい目で見られ、3人は軽く凹んでいた。
日が暮れる頃、3人は予約していた『M王グランド旅館』にチェックインした。

(;^ω^)「グランド……?」

('A`)「どう考えても名前負けだよなw」

(´・ω・`)「昨日の今日だからね。ここしか予約が取れなかったんだ。観光地だし 」

(;^ω^)「モナー財団の息の掛かったホテルとか別荘とかなかったのかお?」

M王町の外れの外れ、美しく区画整理されていた中心部とは大きく異なり、昭和臭漂う地区の鬱蒼と木々茂る山の麓にブーンたちが泊まるホテルはあった。
ホテルと言うのもおこがましい、旅館と呼ぶのも旅館に失礼だ。
それがショボンが予約を取り付けたホテルだった。
ギシギシとうるさい廊下を踏みながら3人は自分達の部屋に案内された。

('A`)「それにしても1日中聞いて回って収穫ゼロとは萎えるぜ 」

( ^ω^)「代わりにM王町を満喫できたから良しとするお 」

('A`)「ま、確かに綺麗な町ではあるよな。うぉっ!畳が凹んだ!」

無造作に荷物を置いたドクオは、その部屋のあまりの痛みように奇声を上げた。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:52:20.36 ID:MiWvuKLb0
( ・□・)「いらっしゃいま―― 」

丁度それを挨拶に訪れた旅館の主が見てしまった。
気まずそうに苦笑いを浮かべるドクオは余分な請求をされないことをひたすら祈った。

( ・□・)「すみませんねぇ。そこは床板が腐ってまして……」

(;'∀`)「いや、オレももうちょい気を付けます 」

( ・□・)「M王町には観光ですか?」

(´・ω・`)「いえ、仕事でしてね。変な事を聞くと思われるかもしれませんが吸血鬼についてご存知ありませんか?」

(;^ω^)(ちょwショボンwwまた変な目で見られるだけだお)

(´・ω・`)(もしかしたらってのもあるだろ?人の目を気にしてこんな商売やってられないさ)

ブーンとショボンがブツクサ言ってると旅館の主は『知っていますよ』と答えた。

(´・ω・`)( ^ω^)「「ですよねー!」」

(;'A`)「え?ちょ、待てよ 」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:53:49.91 ID:MiWvuKLb0
( ・□・)「吸血鬼でしょう?古くからこの杜王町に巣食い、人をさらい食い散らすと言われています 」

何もなく一日が終わろうとしていたところで唐突に舞い込んで来た朗報。
遂に今回の一件に進展がと、3人の視線を一身に浴びた主。
しかしまだこれだけでは民話や伝承の域を出ない。
3人は主の次の言葉を息を飲んで待つ。

( ・□・)「最近また被害者が出まして私共もほとほと困っております。お客様方はもしや名のある退魔師様では?」
 
(*^ω^)「実はそうなんですおー♪」

('A`)「オレ達に任せとけばもう安心だぜ 」

( ・□・)「それは心強い。ですが今夜はもう遅いのでお休みください。明日、ご相談に上がらせていただきます 」

(´・ω・`)「・・・・・・」

最近被害者が出た。
これはタイムリーな話だった。
間違いなく吸血鬼の被害が生じている。
それだけ伝えると主は退室し、後には3人だけが残された。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:55:03.77 ID:MiWvuKLb0
( ^ω^)「やっぱりクーさんの言った通りだったお。吸血鬼はいるんだお!」

('A`)「なんだ。町中探し回ってないでさっさとここに来ればよかったんだな 」

(´・ω・`)「少し妙だと思わないか?」

進展があったと浮かれる2人をよそに、ショボンは妙な違和感を感じていた。
ショボンが妙だと言えば全てが妙に感じる。2人はショボンの答えを待った。

(´・ω・`)「ここの主人は『最近被害者が出た』。そう言ったな?なぜあれだけ聞き込んで回ってこの事件を誰も言わないんだ?」

( ^ω^)「お…言われて見れば……」

(´・ω・`)「妙なのはそれだけじゃない。クーは『危機が訪れつつある』と言った。だがさっきの話だと『危機は既に訪れている』事になる。この食い違いは何だ?」

ショボンの言葉が不穏な空気を生み出す。
言いたい事を言ってしまったショボンはいつも通り無表情を決め込んでしまった。

('A`)「言った以上の事をあのおっさんは知ってるかもしれねぇって事か……」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:55:55.32 ID:MiWvuKLb0
( ^ω^)「ん?ショボン何してんだお?」

ショボンは持ってきた旅行鞄に手を突っ込んでゴソゴソと中を引っ掻き回すと、何枚かの白い紙を取り出した。
紙にはいくつかの梵字と呪文が記入されている。

( ^ω^)「それは依り代?」

(´・ω・`)「あぁ、念の為に『式鬼』を飛ばしとこう。ブーン、頼む 」

( ^ω^)「オン アビラ ウンケン ソワカ。みんな、いってら〜♪」

ブーンが作った5羽の折鶴は、真言により魂を与えられ方々へ飛び去った。
ちなみに、ブーンは鶴の折り方を完膚なきまでに忘れていたのでドクオに教わりながら折った。

('A`)「ところで『式鬼』って何?」

(´・ω・`)「使い魔みたいなもんさ。ブーンが法力で折った鶴がこの建物の周囲を偵察する。魔の気配を察知すればブーンにすぐに分かるようになってる 」

(*^ω^)「鶴は専ら偵察用に使うお。他にはやっこさんとか戦力になってくれるのもあるんだお 」

顔を上気させながらブーンは『式鬼』についての説明を始める。
元々は裏高野密法の術ではなく『呪禁道』と呼ばれる分野の術らしいが、暇潰しにやってみたら出来たと言う。
正式な修行を積めば、依り代に鬼を宿らせる事すら可能だという事だった。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:57:11.66 ID:MiWvuKLb0
('A`)「まだまだオレの知らない事なんていくらでもあるんだな 」

(´・ω・`)「知らないなら知ればいい。誰もが通る道だ。無知は罪ではないさ 」

( ^ω^)「これで1つ知識が増えたお。少しずつ増やしていけばいいんだお 」

ドクオは2人の言葉を耳に入れつつ自分の荷物を手元に寄せ、中の道具類の確認とメンテナンスを行った。
ショボンに作ってもらった刃のコート。
ブーンに書いてもらった不動明王の守護札。
そして妖刀、骨喰いの小太刀。

('A`)。o ○(そう言えばこいつもショボンに貰ったんだったな)

使用者の命を食らう刀だから扱いには気を付けろとショボンが渡してくれた。
当初はそんな危険な物をとも思ったが、よくよく考えてみるとショボンの信頼を得られたからこそ任せてくれたのだ。
刀の乱れ波紋に映ったドクオの顔は少しだけにやけていた。

(´・ω・`)「何にせよ、式鬼が飛んでる間は吸血鬼が近付いてきてもすぐに――危ない跳べっ!!」

その時、部屋の窓ガラスが粉々に砕け散った。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:58:44.38 ID:MiWvuKLb0
ショボンの声で反射的に身を空中に踊らせていたブーン達は、窓を突き破り畳に穴を開けた人の頭ほどの石を見た。
着地と同時に壁際に寄った3人は現状を確認し合う。

(´・ω・`)「ブーン!式鬼の反応は!?」

( ^ω^)「ないお!」

(´・ω・`)「チッ!何モノだ!?」

('A`)「チラッと見えたぜ!外にズラッと敵さんが居やがる!この分じゃ囲まれてるな!」

その時、部屋の入り口の戸が蹴り破られた。
続いて頭からスッポリと目の部分に2つの穴を開けた黒い頭巾を被った何者か達が乱入してきた。
金属バットや、スコップ、ハンマーと思い思いの武器を手にしている。

(●1●)「こいつらだ!ぶっ殺せ!」

(●2●)「絶対ニ許スナ!生キテコノ町ヲ出スナ!」

(●3●)「油断するな!こいつら退魔――っ!」

入ってきたのは3人。
そのうちの1人がドクオの鉄拳で完膚なきまでに吹き飛ばされた。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 21:59:53.27 ID:MiWvuKLb0
('A`)「おいおい、何だこれは?弱すぎるぞ?」

入り口付近にぶっ飛ばされた敵はそのまま動かなくなる。
残された2人は頭巾のせいで表情こそ見えないが武器を振り上げたまま硬直している。
他の敵はまだ部屋の前にいないようだ。

(´・ω・`)「待てドクオ!」

(;^ω^)「この人たちはっ!?」

ショボンは残りの2人の首筋に背後から手刀を叩き込んだ。
瞬時に意識を刈り取られた2人はその場に崩れ落ちる。

(´・ω・`)「ふぅ、これは人間だな。ただの人間。魔ではないから式鬼の偵察もすり抜けた 」

(;'A`)「ただの人?」

ショボンは部屋の外の様子を見ながら言った。
ドクオは退魔師としては日が浅くとも、極道生活で素手喧嘩には一日の長がある。
人間相手なら例え武器を持っていても初めから勝負は決まっている。
問題はどうしてただの人間に襲われるかだ。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:01:02.41 ID:MiWvuKLb0
( ^ω^)「せいっ!お?ショボン、ドクオ。これ見るお 」

ブーンは伸びている3人のうちの1人の覆面を脱がした。

( -□-)「・・・・・・」

( ^ω^)「ここの主人だお。ちょっとサービスがなってないんじゃないかお?」

('A`)「じゃ、こっちのヤツ等はどうかなっと 」

ドクオは残りの2人の覆面を剥ぎ取った。
一片の慈悲もなく剥ぎ取ったために2人は無造作に床に転がる。

(-_L-)(-ー-)「・・・・・・」

('A`)「ありゃりゃ、こいつら……」

(´・ω・`)「カフェの店員にレストランのシェフか。少しだけ見えてきたな 」

旅館の主人にレストランのシェフ、そしてカフェの店員。
いずれもブーン達がこの町に自分達が何をしに来たのかを伝えた面々だった。
そしてこのM王町の住人でもある。
これは即ち、旅館を取り囲んでいる多数の襲撃者もM王町の住人である可能性が高いという事だった。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:01:45.65 ID:MiWvuKLb0
(´・ω・`)「はて?何かオレ達ここの住民を怒らせるような事したか?」

( ^ω^)「さぁ?」

('A`)「オレも分からんね 」

それならば、とショボンはブーンとドクオに目線を遣る。
片や肩を竦め片や溜息を付きながら、しかし2人とも頷く。

(´・ω・`)「直接聞くとしよう。面倒だから窓から出るぞ 」

( ^ω^)('A`)「「うぇーいwwww」」

3人は同時に窓から飛び出した。
旅館を取り囲んだ数十人の暴徒達は、先に遣った3人が出てくる物と思っていたので完全に不意を付かれる形になった。
偵察の3人がやられた事に気付いた暴徒達は一斉に蜂起の声を上げる。
農作業の道具や木刀など、手にしているものは人を傷付けるのに十分な能力がある。
固まったブーン達3人に今にも襲いかからんと暴徒達が詰め寄ったときドクオが雄叫びを上げた。

(#'A`)「テメェらこの町のモンだろうがっ!!まさか極道に手ぇ出してただで済むと思ってるんじゃねぇだろうなぁっ!!」

( ^ω^)(ちょwドクオwwいつまでそのネタ使うんだおwww)

('A`)(いいんだよ。カタギの衆は相手がヤクザだと思ったら縮み上がるんだからw)

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:02:39.54 ID:MiWvuKLb0
コソコソと喋りながら辺りを見回す。
なんと凶悪な武器を所持している暴徒は揃って金縛りにあったように止まっていた。
頭巾で隠した顔はドクオの言う通り縮み上がっているような気もしないではない。

(●4●)「だ、大丈夫だ!覆面で顔が割れることはない!」

(●5●)「この数で掛かれば何とか――」

(#゚A゚)「なるとでも思ってんじゃねぇだろうな!?あぁーん!?」

再び暴徒は借りてきた猫のように大人しくなった。

( ^ω^)。o ○(こりゃ楽しんどるおw全くこの元チンピラはww)

ひん剥いた目で睨みを利かせるチンピラの横からショボンが一歩前に出る。
爛々と目を光らせるドクオとは一変、冷たいが力のある光を目に宿らせたショボンは低く通る声で言った。

(´・ω・`)「我々が何者かはご存知のようだな?しかし我々は何故君たちに襲われるのか見当も着かない。教えて貰えると助かるんだがね 」

(#゚A゚)「おうおうおう!ウチのショボンさんが聞いてるんだ!何とか言ったらどうだ、オラ!!」

( ^ω^)。o ○(ドクオ自重しろおww)

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:03:52.77 ID:MiWvuKLb0
ショボンの静かなる迫力、そしてドクオのあまりにも分かり易すぎる勢いに暴徒達はオロオロするばかりだった。
勇気を出して発言しようと一歩前に出ると途端にドクオに睨み潰されてしまう。
また、ドクオの視線を掻い潜って発言しようとしても……

(●6●)「あんたら領主さm――」

(#゚A゚)「なんだとコラァッ!!」

チンピラが発言権をくれない。
ドクオは完全にトランス状態に入ってしまっていた。
弱者を蹂躙する自分に酔うドクオは既に当初の目的を見失っている。
ショボンは眉を寄せ眉間に指を当てた。

( ^ω^)「ドクオさんドクオさん。そろそろ――っ!? 」

ブーンはその時、5羽の式鬼が消滅した事に気付いた。
その直前、その全てがブーンに送ってきた情報。
それは途方もない強大な魔の気配。

( ^ω^)「ショボン!ドクオ!何かが来るお!!」

警報を発するブーン。
声に乗せた緊迫感は近付いている何かが只者ではない事をショボンとドクオに知らせた。
ショボンは静かに周囲を伺い、ドクオは着込んだコートの襟を立てる。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:05:44.11 ID:MiWvuKLb0
(    )『 あまり私の民を虐めないで欲しいのだがな 』

突然に、あまりにも突然に声が聞こえてきた。
その声は静かだがゾッとするような冷たさを含んでおり、洞窟の中で発した声のように空気に反響した。
反響のせいで音源がどこにあるのか見当が付きにくい。

(    )『 退けM王の民よ。お前達では相手にならないだろう 』

頭巾を被った暴徒達は一斉に活気付いた。
しかし声の命じる通りにブーン達3人から距離を取り始める。
ブーン達は辺りを見回し声の主を探した。

(´・ω・`)「ちっ……見つけたぞ……」

ショボンが呟く。ブーンとドクオはショボンを見て顔が向いている先を見て目を見開いた。
目線の先には古ぼけたM王グランド旅館があり、顔の角度はその5〜6階ほどの高さを見ている。
ショボンの顔から目線を辿りそっちを見る。
そこには柔らかい表情を浮かべた、透き通るような白い顔の男がいた。

(´<_` )「おや?ようやく気付いてくれたか。M王町へようこそ、内藤退魔師事務所の諸君 」

落ち着いた物言い――
顔に浮かべたアルカイックスマイル――
紳士全とした立ち振る舞い――
そこには絵に描いたような上流階級の男が両手を広げて立っていた。
唯一つおかしな点があるとすればその男が立っている場所。
そこは……


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:07:05.40 ID:MiWvuKLb0
('A`)「おいおい…なんだアレは?」

( ^ω^)「本物だってことだお 」

その男は重力を無視して壁に垂直に立っていた。
あたかも両足から壁に根を張っているかのように。

そして男は落ちることなく足を踏み出す。
壁面を歩きながら男は語り始めた。

(´<_` )「はじめまして、私はオトジャ・ヒロヒコ・バレンタイン。人は流石の弟者と呼ぶから君たちもそうしてくれると嬉しい 」

弟者は話しながら壁面を下まで歩き切った。
その両足は壁面と地面、常人では体験し得ない垂直の曲がり角を何の躊躇もなく通り過ぎる。
その身体はその時点から通常の重力に縛られ、なおも足を止めずにブーン達3人に歩み寄る。

(´<_` )「所長のブーン君に、助手のショボン君。そして期待の新人ドクオ君かな?」

('A`)「てめぇ…どうしてオレ達の名を……?」

(´・ω・`)「領主か。この町のことは何でもお見通しとでも言いたげだな 」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:08:03.63 ID:MiWvuKLb0
『ハハッ』とそこに一握の嫌味も乗せずに弟者は笑い声を漏らした。
奢り高ぶる様子もブーン達を侮る様子も一切ない。
ショボンはこの男が厄介な相手であることを認識し、そういう相手に対する心構えを取った。

(´<_` )「御察しの通りだ。私はこの町の町長にして数百年の間ここを治めてきた領主。そして……」

そこまで言うと足を止め不意に笑った。
それまで顔に貼り付けていた無難な笑みではなく、口の両端を持ち上げた白い歯を覗かせて笑った。
常人のそれより遥かに長い犬歯が口から覗き、月光に反射して白く冷たく輝いた。

(´<_` )「ノスフェラトゥ。君たちの言う吸血鬼だ 」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:08:53.85 ID:MiWvuKLb0
ショボンは舌打ちした。それはブーンも同じ。
伝説に語られるような魔物が一筋縄で行くわけが無い。
ドクオだけがまだ見ぬ敵の実力に湧くが、ショボンは真剣な顔で小声で指示を出す。

(´・ω・`)(いいか、厄介な相手だ。オレが注意を惹きつける。その間に……)

('A`)(オッケー。オレが突っ込んで……)

( ^ω^)(僕は後ろから大発勁をブチかましてやるお )

(´<_` )「1つ言わせて貰おうか 」

唐突に弟者が口を挟んできた。
相変わらず人当たりの良い笑みを貼り付けているが、3人は警戒レベルを最大限に上げる。
そもそも自分は吸血鬼であるとカミングアウトした相手に対して警戒を解けと言う方が無理な話だ。

(´<_` )「ショボン君が囮で、そこのドクオ君が突っ込んでくる。そして最後にブーン君が法力で攻撃か?吸血鬼は耳が良くてね 」

(´・ω・`)「失敗するから止めておけとでも?」

(´<_` )「その通り。私は博愛主義者でね。言うだけで止めさせる事が出来るならそれに越した事はない 」

(´・ω・`)「忠告はありがたく頂戴しよう。だが作戦が筒抜けだって事はな……」

ここで初めてショボンが硬く結んだ口元を緩めた。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:10:19.46 ID:MiWvuKLb0
その表情に思わず釣られる弟者。
しかし瞬間ブーンが飛び出る。

( ^ω^)「分かってる事だお!ナウマリ サンマンタ バサラ タンカン!!」

(´<_` )「ぬっ!?」

突撃しながらの不動明王火炎呪。
噴き出す炎は弟者の目を眩ませ、猛烈な熱が降りかかる。
炎が弟者を飲み込もうとする瞬間炎が裂ける。

('A`)「ぬぅりゃぁっ!!」

(´・ω・`)「聖水浄化処理済シルバーバレットだ!!」

熱を切り裂きドクオが飛び込む。
ドクオのコートはそのまま弟者の体に深く食い込んだ。
それと同時にドクオは跳躍し炎の熱の伝達範囲から回避。
ドクオが裂いた炎の切れ目に弟者が姿を露わにする。
寸分違わずそこにショボンが抜いた拳銃のマガジンが空になるまで破魔弾丸を打ち込んだ。
一度切り裂かれた炎は瞬時にその隙間を埋め、弟者を中心とする巨大な篝火となった。


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:11:59.99 ID:MiWvuKLb0
(●7●)「何と言うこと!領主様が!!」

(●8●)「私達の守り神が!!」

後には燃え盛る炎の音と暴徒達の嘆きだけが聞こえていた。

煌々と燃える天界の炎を眺めながら、ブーン達は胸を撫で下ろしていた。
奇襲が成功しこちら側に被害がなかったのは幸いだった。
卑怯だとは微塵も思わない。
魔を相手に戦う場合、負ければ即ち死なのだ。

( ^ω^)「やったお。これで仕事は万事完了。さっさと寝るお 」

(´・ω・`)「クーがいつこっちに着くか知らんが、それまではのんびり観光でもするか 」

('A`)「って言ってもよ。オレ達町中に嫌われてるんじゃねぇの?」

(´<_` )「心配は要らない。誤解はすぐに解ける 」

('A`)「そうか?それなら安心――っ!?」

一斉に声のした方に振り向いた。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:15:57.19 ID:MiWvuKLb0
変わらない笑みを浮かべた弟者がそこにいた。
弟者は手を叩く。
『パチパチ』と乾いた音を響かせながら弟者は声を発した。

(´<_` )「素晴らしい。何の打ち合わせもなく言った事と別の事を実行するとは。3人の信頼のなせる業か 」

今すぐにでも飛び掛ってきそうであり、友愛の握手でも求めてきそうでもある態度。
弟者の声に偽りの色が全く感じられない事が不気味さに拍車を掛ける。

(´<_` )「流石は元裏高野退魔師・内藤ホライゾンの一味といった所か 」

(;^ω^)「どうして裏高野の事まで?」

(´・ω・`)「それ以上にどうして無傷なんだ?」

(´<_` )「ふむ。それは持って当然の疑問だ。それ説明をする機会を与えてはくれないだろうか?」

('A`)「そいつはどうも――ありがとよっ!」

ドクオの拳が弟者を襲う。
大振りなヤクザパンチだったが、チンピラ時代から相手をなぎ倒してきた打撃だ。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:17:39.59 ID:MiWvuKLb0
しかしその拳は何者にも触れることなく虚しく空を切る。
ドクオは手に受けるはずの感触を得られず盛大につんのめった。

('A`)「は?」

(´<_` )「やれやれ、話を聞いてもらいたいのだが 」

(;^ω^)「僕は目を離してないお。目を離してないのに!」

(´・ω・`)「一体何をした……?」

ドクオは後ろから肩に手を置かれ戦慄した。
血の気が引くのが分かる。
間違いなく目の前にいた弟者が今背後から自分の肩に手を掛けている。

(´<_` )「私の話は聞いてもらえそうもないな。悪いがお願いできるかな?」

弟者はドクオでもブーンでもショボンでもない誰かに話しかけた。
その言葉と共に闇から姿を現す人物。
その人物は……

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/14(金) 22:18:14.31 ID:MiWvuKLb0
  ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです


―――第八話・吸血鬼の家に遊びに行こう―――


       〜その1、領主〜終

77 名前:九話予告:2007/09/14(金) 22:20:59.52 ID:MiWvuKLb0
第九話、予告

M県S市M王町。
内藤退魔師事務所、ブーン、ショボン、ドクオの3人は吸血鬼にしてM王町領主、弟者との邂逅を果たした。

(´<_` )「私はM王の民を愛している。危害を加えることは許さない 」

怒れる吸血鬼。

川 ゚ -゚)「私は一言もそんな事は言っていないぞ 」

クーとの合流で明らかになる真の依頼内容。

( ´_ゝ`)「ククククク……ハハハハハハッ!傑作だ!なぁ弟者!」

もう一人の吸血鬼、アニジャ・アラーキー・バレンタイン。

( ^ω^)「この赤い宝石は?」



次回

( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです

―――第九話・吸血鬼の家に遊びに行こう―――


       〜その2、赤石〜


78 名前:元ネタ解説:2007/09/14(金) 22:22:43.55 ID:MiWvuKLb0
M県S市M王町:
第4部w
反省はしてない。後悔もしない




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