( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです ―第九話・吸血鬼の家に遊びに行こう― 〜その2、赤石〜

2 名前:退魔師:2007/09/28(金) 20:30:14.85 ID:e766rkQN0
第八話・吸血鬼の家に遊びに行こう〜その1、領主〜あらすじ〜

十八代目・葛葉ライドウことクーの依頼によりブーン、ショボン、ドクオの3人は観光都市M王町へ訪れた。
この町に住む友人からのSOSを受けたというクーをサポートする形での訪問だった。
クーが言うには古くからM王町は吸血鬼に支配されている町だと言う。

数々の伝説に語られる魔物との接触の可能性。
それはブーン達3人に警戒させて余りある事態だった。
万全の準備と共にM王町へ乗り込む。
別行動を取ったクーとの合流まで時間があるため、ブーン達3人は町で聞き込みを開始したが一切の情報が得られない。
あまりの肩透かしに愕然としながらブーン達は予約した旅館にチェックインする。

ダメ元でそこの主人に吸血鬼の話を聞き込むショボン。
すると予想外に主人はM王町に伝わる伝承、そして最近起こった吸血鬼関連の事件の情報をもたらす。
しかしクーの話と微妙に食い違う主人の証言にショボンは一抹の不信感を抱いていた。

突如として襲撃は訪れる。
部屋に投げ込まれる岩石。
蹴破られる扉。
多数の襲撃者に囲まれる旅館。

そして姿を現した強大な魔、吸血鬼オトジャ・ヒロヒコ・バレンタイン。
ブーン達3人は連携して吸血鬼から先手を奪うが……

4 名前:退魔師:2007/09/28(金) 20:32:40.79 ID:e766rkQN0
闇に浮かぶ古びた旅館。
妙な頭巾で顔を隠した多数の暴徒、暴徒の標的である3人の対魔師、そして吸血鬼。
平和な観光都市M王町において、通常では考えられない面々がその場に存在した。
3人の対魔師は既に数十人の暴徒の脅威は眼中にない。
現時点における最大の脅威は多数の暴徒よりたった一人の男。

一切の攻撃を不可思議に回避する吸血鬼、オトジャ・ヒロヒコ・バレンタイン。

何をしても無駄なのではないかと言う疑心暗鬼に駆られる。
疑心暗鬼は緩やかに体を締め上げ、金縛りとなり次の一手を躊躇させる。
それにも拘らず、変わらぬ笑みの中には強者の不敵な笑みといういやらしい物は感じられない。
強者でありつつ一片の奢り高ぶりもない。
それがブーン達3人が対峙している吸血鬼の姿だった。


6 名前:退魔師:2007/09/28(金) 20:33:27.69 ID:e766rkQN0
疑いようもなく実力の一部しか見せていない弟者は、攻撃してくるでもなく明後日の方向に語りかける。
隙だらけにも見えるがブーン達3人は一先ず相手の出方を見ることを選択した。

(´<_` )「こちらだ。ん?あぁ、民よ。少しそこを空けて彼女を通してやってくれないか?」

('A`)「彼女?」

俄かに暴徒の集団が弟者が見ている場所で裂け始める。
人の谷間の奥には鬱蒼と茂った木々が夜を超える闇を作っていた。

直ぐにだったかそれとも十数秒後だったか、不思議な時間間隔を経て彼女は視線の先に闇から身を顕にした。
そろりそろりともったいぶったようなペースで、それでいて凛としたフォームで近付いてくる。
古めかしい外套に身を包み、絹のような長い黒髪が歩に合わせて揺れる。
彼女はブーン達の目の前で足を止め、右手の人差し指と中指を立ててビッと空を切った。

7 名前:退魔師:2007/09/28(金) 20:34:50.92 ID:e766rkQN0
( ゚ω゚)(゚A゚)「eeeeeeeeeeeee!!」

川 ゚ -゚)「よっ、遅くなってすまない。どうやら私の友人とはもう会ったようだな 」

ブーンとドクオの驚愕の叫びを聞き流しながら弟者の方を見る。
聞き違いでも空耳でもなく『私の友人』と言いながら。

(´<_` )「久しぶりだね、葛葉嬢。美しさは健在で何よりだ。妻に娶りたいくらいだよ 」

川 ゚ -゚)「残念ながらウチは婿養子派でな。それに相手なら既にいる 」

(´<_` )「おや、遅れを取ってしまっていたか。何百年も生きているとこういう細かいタイミングが分からなくてね 」

クーが自分の相手だと言いながら目をやった方向。
続いて弟者が世界一幸運な男だと言う視線をやった方向。
そこには当然この男がいた。

(´―ω―`)「クー…」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:35:40.50 ID:e766rkQN0



     ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです

   ―――第九話・吸血鬼の家に遊びに行こう―――


          〜その2、赤石〜




11 名前:退魔師:2007/09/28(金) 20:36:54.68 ID:e766rkQN0
M王町を見下ろす小高い丘、と言うより台地。
なだらかな丘陵の最上部に近代西洋風の城の優美な姿を見ることができた。
城門をくぐると短く刈り込まれた薄緑の芝に覆われた庭園が眼前に広がる。
そこに転々と立つ木々は城門から城の玄関までの直線を対称軸に、完全に左右対称の配置を取っている。
遥か先に見える城自体も、正面玄関を中心に対象に建てられていた。

歩く事数分、ようやく辿り着いた玄関を入ると柔らかな明かりに包まれたホールで十数名の使用人に出迎えられる。
そこから左右に幾つもの扉を持つ長い廊下を通り案内された先は巨大な応接室だった。
マホガニーのアンティーク調のソファに座ると、直ちに使用人がやはりマホガニーのテーブルに人数分のティーカップとソーサーを置いた。
そこに注がれる琥珀色の液体から発せられる甘く芳醇な香りが気分を落ち着かせる。

つまる所、ブーン達内藤退魔師ご一行様とクーはM王町領主・弟者の屋敷に招待されていた。


13 名前:退魔師:2007/09/28(金) 20:37:53.80 ID:e766rkQN0

(´<_` )「長旅でお疲れだろう?どうかこれを飲んでリラックスして欲しい 」

川 ゚ -゚)「うむ。頂こう 」

クーはスッとティーソーサーを手に取り、それに乗ったカップを逆の手で口に近づける。
口に含んだ紅茶の香気を十分に堪能しながら喉に流す。
ほぅ、と息を吐き出し心身ともにリラックスする、そんな紳士淑女のティータイム。

(;^ω^)(リラックスなんて出来るわけが無いお)

(;'A`)(何で俺らの周りは金持ちばっかりなんだ?)


15 名前:退魔師:2007/09/28(金) 20:38:47.14 ID:e766rkQN0
慎ましやかな庶民には逆にこれがプレッシャーとなる。
ブーンとドクオはリラックスどころかガチガチに硬くなっていた。

(´<_` )「おや、紅茶は嫌いかね?極上のオレンジペコーなんだが 」

全く手をつけない二人を見て弟者が聞く。
更なるプレッシャーに戦慄する2人だったが、それを制し、ショボンがティーカップを手に取り中身を一気に喉飲み干した。

(´・ω・`)「ハッキリさせておきたい事が2つある」

空になったカップを置き、一切のオブラートも被せずにショボンは問いかけた。
その目は疑いの光を秘めている。

(´・ω・`)「まず1つ。あなたは敵ではないのか?」

(´<_` )「いかにも。しかし君たちが攻撃してきた事については私も気になっていた。
       葛葉嬢は友人である私のことを君たちに伝えている物と思っていたが 」

あっさりと敵意はないことを示し、そしてクーを見る弟者。
ショボンは見向きもしないが、ブーンとドクオも同じようにクーを見た。


17 名前:退魔師:2007/09/28(金) 20:39:09.78 ID:e766rkQN0
川 ゚ -゚)「当然伝えてある 」

淀みの無い返答を即座に返すクー。
それだけ言うとクーは紅茶の次の一口を堪能し始めた。
一瞬静まり返る室内。
唖然とした2人の庶民が堪らず口を出す。

(;'A`)「待て待て待てーぃ!!お前この町が吸血鬼の脅威に晒されつつあるって言ってなかったっけ!?」

(;^ω^)「確かに聞いたお!!だからクーさんの友達が助けてくれって連絡してきたんだお!?」

川 ゚ -゚)「私は一言もそんな事は言っていないぞ 」

やはり躊躇なく言い放つクー。
あっさりと否定された庶民達はいきり立つ。

18 名前:退魔師:2007/09/28(金) 20:39:40.77 ID:e766rkQN0

(#'A`)「だってお前 川 ゚ -゚)『お前達にはM県S市M王町に行ってもらいたい。
                 実はここは吸血鬼に支配されている町でな 』」

(;^ω^)「 川 ゚ -゚)『そこ在住の私の友人から恐るべき危機が訪れつつあるとSOSを受けた。
             お前達は先に現地入りしてくれ。私もすぐに行く 』
       って言ってたお。前回のコピペだから間違いないお……」

揺ぎ無き証拠を突きつける。

一方、ショボンは目を瞑ったまま眉間に皺を寄せていた。
当のクーは何食わぬ顔でそれのどこがおかしいのだと首をかしげている。

川 ゚ -゚)「伝えているではないか。
     川 ゚ -゚)『お前達にはM県S市M王町に行ってもらいたい。
          実はここは( 私 の 友 人 で あ る )吸血鬼に支配されている町でな 』
     川 ゚ -゚)『そこ在住の( 吸 血 鬼 の )私の友人から恐るべき危機が訪れつつあるとSOSを受けた。
          お前達は先に現地入りして( 領主であり町長である吸血鬼と顔合わせして )くれ。私もすぐに行く 』
     間違いないぞ 」

21 名前:代九話:2007/09/28(金) 20:40:52.05 ID:e766rkQN0

超理論を展開するクー。

 ( ゚ω゚) ( ゚A゚)「何だってー―――――――!!」

予想の遥か斜め上の回答に驚愕する2人。

(´―ω―`)「大事なところを括弧で省略するなとあれほど……」

何度も同じ煮え湯を飲まされているショボンは最早攻める気にもならない。

(´<_` )「これは一杯食わされたようだな。ハッハハハ 」

弟者は何百年も生きた為かかなり寛容な性格をしているらしい。
爽やかに笑い飛ばしていた。

23 名前:代九話:2007/09/28(金) 20:41:46.16 ID:e766rkQN0

(´・ω・`)「あなたが敵ではないことがハッキリしたな。では2つ目の質問、良いだろうか?」

(´<_` )「どうぞ、ショボン君。何でも聞いてくれたまえ 」

ショボンは目を開き弟者と正対する。

(´・ω・`)「訪れつつある危機とは何だ?貴方ほどの実力者が我々に助けを求める程の脅威なのか?」

ショボンは刺す様な眼光を弟者に向けた。
気がつくと一瞬たりとも笑顔を絶やさなかった弟者の笑顔が曇っている。
俄かに空気が重く変質した事を肌に感じる。
聞こえるのはクーが紅茶を啜る音とティーカップがソーサーに触れる音だけになった。

(´<_` )「実は少々厄介な連中に目を付けられてしまってね 」

(´・ω・`)「詳しく聞こう 」

弟者は自分の話を聞かせる面々を見る。
ショボンとクーは変わった様子はないが、ブーンとドクオはガチガチに固まっていた。


24 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:42:25.12 ID:e766rkQN0
(´<_` )「私は君たちに気を使わせるような顔をしていたか。すまない 」

ふと弟者の顔に笑みが戻った。
途端に空気が柔らかくなりブーンとドクオは安堵の息を吐く。

(´<_` )「ちょっとやそっとの障害ならば十分に排除できるのだがね。
       今回はそうではないらしい。君たちの力が必要だ。助けて欲しい、ブーン君。ドクオ君 」

そう言うと弟者は頭を垂れた。
冷徹で高飛車、パンが無ければケーキを食べればいいじゃない。
そんなテンプレートな貴族ではないことを弟者は言葉ではなく態度で示した。

(*^ω^)「おっおっお。良いんですお良いんですお。さぁさぁ、頭を上げて 」

(*'A`)「あんたツイてるぜ。このドクオさんに任せてもらえれば一安心だ 」

途端に態度が軟化する2人の庶民。
弟者はにっこりと笑い、しかし真面目な顔で話を進めた。

26 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:43:31.71 ID:e766rkQN0
(´<_` )「『パンゲア』。この名を聞いたことはないか?」

( ・ω・)「知りませんお 」

(・A・)「シラネー 」

全く興味の欠片もない顔で2人はポケーっと言った。
吸血鬼の間では常識でも人間なら知らなくても仕方ないよね。
2人はそんな顔をしている。

(´・ω・`)「知っている 」

川 ゚ -゚)「私もだ。こんな商売してれば当然だがな 」

 (;゚ω゚) (;゚A゚)「・・・・・・」

勉強不足でした、ごめんなさい。
2人はそんな顔に変わった。

28 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:44:46.83 ID:e766rkQN0
(´<_` )「流石だ。君の知るところを聞かせて貰えるかな?」

(´・ω・`)「『パンゲア』……ギリシャ語で全ての陸地を意味する 」

(´<_` )「うむ。続けてくれ 」

(´・ω・`)「大陸移動説において世界の大陸が現在の形に至る前の太古の超大陸として定義されている。
        しかし我々のような者にとっては忌むべき名として付きまとう 」

弟者はそれを待っていたと言わんばかりに大きく頷いた。
ブーンとドクオはここぞとばかりに耳をかっぽじって備えた。


30 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:45:15.63 ID:e766rkQN0
(´・ω・`)「唯一の超大陸の名の通り、世界を統一しようとする狂信者の集団。
        それが『パンゲア』だ。
        彼らがいつ歴史上に姿を現したのかは諸説ある。千年前とも二千年前とも。
        だが一貫して同じ方法で人の世に仇成す。困ったことに歴史を変えるほどにな 」

川 ゚ -゚)「ここからは私が話そう 」

そういって、クーはショボンからバトンを受け取った。
ショボンが肩を竦め、しかしクーに一任する。

川 ゚ -゚)「ヤツらは魔を使う 」

クーの第一声はこうだった。
ブーンは空気が針の様に尖ったのを明確に肌で感じた。

(´<_` )「そうだな。葛葉嬢、君にとっては因縁深き相手だろう 」


32 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:46:05.96 ID:e766rkQN0
川 ゚ -゚)「ヤツ等のやり方は気に入らん。
     魔の自由を奪い良い様に利用する。
     それが叶わぬ時は力だけを搾り取る。
     中には力に魅せられ自ら取り入る魔も存在する 」

大して表情は変えないが相貌に異様な力を込めるクー。
ブーンとドクオは少しだけクーの感情の変遷が分かるようになってきた。

川 ゚ -゚)「ヤツ等は魔をただの力としか見ていない。
     魔は我ら人間と変わらない。時に喜び、時に泣き、時に怒り、そして共に笑う。
     葛葉は魔を使役しても彼らを道具だなどと思わない。
     だからこそ対等な友として古くより共存してきた。それが分からんクズどもは―――」

緊迫した声音で、静かに強烈に一点を見据えたままだったクーは不意に言葉を止める。

クーの肩にはショボンの手が置かれていた。
見上げたショボンの顔は笑いはしないが優しい目をしていた。
それを見てクーは視線の力を抜いた。
そして同時に言う。

(´・ω・`)川 ゚ -゚)「「ぶち殺す」」

強い言葉とは裏腹に、その声からは若干怒気が薄れていたように感じた。

34 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:46:43.02 ID:e766rkQN0
(´<_` )「君たちはどうかな?ブーン君、ドクオ君?」

ショボンとクーの決意を聞き、弟者は押し黙っていたブーンとドクオに問いかける。
2人は1度顔を見合わせて目線で何か交わすと、上気した顔でまくし立てた。

('A`)「悪いヤツ等なんだろ?当然ぶち殺ーす!!」

( ^ω^)「ふっふっふ。主人公として華麗に殲滅するお!!」

(´<_` )「フッ、心強いな。では本だ――『Qooooooooooooo!!!!』

突如として部屋の扉が開け放たれ、弟者のセリフを覆い被す絶叫が耳を劈いた。
鼓膜を掻き毟られるほどに大音量の声の暴力にその場の人間全員が耳を塞ぐ。
一瞬戸惑いはしたものの、この声の正体を知る弟者の顔には直ぐに笑みが帰ってきた。

脳を揺さぶられた衝撃からようやく立ち直った人間達は入り口を見る。

(*´_ゝ`)「Qoo!」

そこには頬を赤らめた弟者が立っていた。

     ・     ・     ・     ・     ・

37 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:47:34.75 ID:e766rkQN0
     ・     ・     ・     ・     ・

川 ゚ -゚)「だが断る 」

(;´_ゝ`)「そんなバカなっ!!」

(´<_` )「おめでとう兄者。これで通算30024回目の失恋だ。
       なお葛葉嬢にはジャスト1000回目の玉砕だったな。
       これは個人に関する記録としては揺ぎ無い1位だ 」

大声を出しながら突如として登場した弟者と同じ顔をした男は、クーの顔を見るなり運命論について語り始めた。
それを最後まで語り終える前に言葉の刃で一刀両断され、男は放心した。
3人の退魔師も違う理由で同じように放心していた。

(;'A`)「これは弟者の影武者か何かか?」

(;^ω^)「弟者さん、影武者はもっとキチンと育てないと……」

(´<_` )「これは私の双子の兄だ。だからどちらかと言えば弟の私の方が影武者かな 」

弟者はにこやかに笑いながらそう言った。

40 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:50:05.53 ID:e766rkQN0
(´<_` )「兄者。こちら内藤退魔師事務所の御三方だ。今回の件に関して助けを依頼した。自己紹介を 」

( ´_ゝ`)「バレンタイン。名乗らせていただこう。
       アニジャ・アラーキー・バレンタイン。
       この町の領主をしている。ん?今は町長だったかな?」

(´<_` )「両方だ兄者 」

( ´_ゝ`)「そうか、両方だったな。ちなみにバレンタインと呼ばれても返事をしない事が多いから兄者と呼んでくれ 」

( ^ω^)「メルシーポークー。自己紹介恐縮の至り。
       僕は内藤退魔師事務所・所長、内藤ホライゾンですお。
       ブーンと呼んで下さいですお 」

(;A;)「ドクオ。僕の名前は……僕の名前はドクオです 」

(´・ω・`)「お前らその辺にしとけよ。僕の名前は(まー、別に覚えてもらう必要はないけど)ショボン 」

(;^ω^)。o ○(頼りになる男のフラグが人知れず立ったような気がするお)

41 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:51:21.69 ID:e766rkQN0
自己紹介の後、6人は他愛のない話をワイワイと展開していた。
聡明な弟者に、どこか抜けている兄者。
どちらも長い年月を生きてきた凄みが感じられるが、それを必要以上に表に出そうとしない。

( ´_ゝ`)「KWAHHH!面白いなお前ら!馴染む!実に良く馴染むぞ!!」

(´・ω・`)「面白くなってきた…だから……1分……
        1分だ……1分だけお前にこのショボンと話す時間をやろう 」

初対面に関わらず、退魔師3人と吸血鬼達はすっかり打ち解けていた。
しかしそんな空気をクーの一言が凍り付かせる。

川 ゚ -゚)「流石は私のフィアンセだな 」

その時世界は止まった。

この時ばかりは弟者も目を見開いてクーを見た。
それはブーンやドクオも同じ。
何となく兄者に聞かせてはいけない様な気がして自重していた。

それを当事者があっさり言ってしまった。

――そして時は動き出す。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:52:04.08 ID:e766rkQN0
(#´_ゝ`)「UREYYYYY!!どういうことだSYOVON!?」

(´・ω・`)「何のことだ?分からないな兄者……」

(#´_ゝ`)「答えろよ……『質問』はすでに『拷問』に変わってるんだぜ 」

川 ゚ -゚)「私はショボンに惚れている。ただそれだけの事だ 」

何でもないかのようにクーが再び時を止めた。
クーの発言はまさに世界を支配する発言だった。
息巻いていた兄者はそれを期に押し黙る。

(´<_` )「どうした、兄者?随分大人しいよう――はっ!?」

( ;_ゝ;)「3歳のQooに振られてから20数年。積み上げてきた数は1000。
        だが!だが次こそはという気持ちだけが心の支えだった!」

咽び泣く兄者を弟者が慰める。
兄者は弟者の胸に顔をこすりつけ嗚咽を漏らしていた。
弟者はブーン達4人に目で合図し、『大丈夫、いつものことだから』と声は出さずに口を動かした。


45 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:54:07.68 ID:e766rkQN0
('A`)「待てよ?今3歳って言ってなかったか?」

川 ゚ -゚)「いかにも私が父に連れられて初めてここに来たのは3歳の時だ。
     兄者は私を見るなり妻に娶ると言い出した 」

( ^ω^)「コイツはくせぇーーーー!ロリコンの臭いがプンプンするぜぇーーー!!」

( ´_ゝ`)「待て、誤解だ。私は既に600年近く生きている。
       そんな私からしてみれば3歳も20歳も変わらない 」

泣き止んだ兄者がすぐさま弁解し始めた。

(´<_` )「残念ながら葛葉嬢への第一声は『ょぅι゛ょFoooooo!!』だったぞ、兄者。
       ブーン君の言う事はあながち間違ってはいない 」

すかさず入れられる弟者のフォローに親指をビッと立てて見せる兄者。
ニヤリと笑い合っているところを見ると、絶妙のパスに思い通りのツッコミが返ってきたようだ。
とすれば、涙を流したのも単なるパフォーマンスの一環に過ぎなかったのかもしれない。


47 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:55:22.49 ID:e766rkQN0
( ´_ゝ`)「全くめでたいぜ。2人とも幸せになってくれよ!
       オレはいつだって応援するし、困ったときはいつでもどんな所でも駆けつけるつもりだぜ!
       もっともかえって足手まといかな 」

川 ゚ -゚)「足手まといだ 」

( ;_ゝ;)「……兄者はクールに去るぜ 」

(´<_` )「待て兄者。まだ本題を話していなかった 」

パフォーマンスでもなかったのかもしれない。
再び大泣きする兄者は胸を借している弟者になだめられながらしゃくり上げていた。
ブーンとドクオは身のやり場に戸惑いオロオロしていた。
その為に

(´・ω・`)「一応言っておくがオレは了承してないんだからな 」

ショボンの独り言は誰の耳のも届かなかった。

     ・     ・     ・     ・     ・

48 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:56:50.95 ID:e766rkQN0
     ・     ・     ・     ・     ・

(´<_` )「では本題に入ろう。これを見てくれ 」

泣き止んだ兄者をソファに座らせ弟者は野球ボール程度の大きさの何かを取り出した。
それは幾重にも貼られた札で厳重に封印され、その上に封印鎖を何重にも巻きつけてあった。

度を超した封印。

しかし中身の濃い存在感はそれを押しのけて余りあるほどに強烈だった。
弟者は丁寧に封印を解き始めた。

 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

(´<_` )「兄者、何を言っている?」

( ´_ゝ`)「ゴゴゴ……ん?あぁ、気にしないでくれ。雰囲気作りだ 」

(´<_` )「そうか。では気にせず続けるとしよう 」

50 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:58:06.23 ID:e766rkQN0
弟者は次々と封印を剥ぎ取る。
テーブルの上にはその残骸が山のように積んである。
野球ボールほどの大きさだったそれは、既に半分の大きさになっていた。
そしてようやく最後の1枚の札が取り去られる。

( ^ω^)「この赤い宝石は?」

封印されていた物は小さな赤い宝石だった。
とは言え宝石としては馬鹿げた大きさだ。
同じサイズのダイヤモンドがあるとしたら間違いなく怪盗の類に狙われるようなビッグジュエル。
透き通った濃い赤のそれは、美しさのあまり香りさえするのではないかと錯覚させる。

(´<_` )「この赤石はエイジャといって自然界にも滅多にない美しい宝石。
       結晶内で光は何億回も反射を繰り返し増幅されて1点より放射する 」

そう言うと弟者は室内の照明に宝石をかざした。
その瞬間宝石から一筋の光線が放たれ壁に穴を穿った。
穴の周囲は高熱で溶かされたように僅かに溶解している。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:59:13.95 ID:e766rkQN0
(´<_` )「レーザーだ。世に出れば確実に軍事利用される。
       これほど高威力のレーザーは現時点において尚、完全にオーバーテクノロジー。
       それゆえ我々兄弟は長年これを隠匿し続けてきた 」

弟者は赤石に光が当たらないように布を被せた。
それを機に壁の穴から弟者に皆の視線が戻る。

(´<_` )「だがそんな事は赤石の力の片鱗に過ぎない 」

赤石の信じがたい力を目の前で展開され、ショボンやクーすらも例外ではなく目を見開いていた。
しかし弟者はそれより大いなる力が宿っていると言う。
室内に固い空気が流れる。

(´<_` )「パンゲアが赤石を求める真の理由……」

弟者の言葉は凝固していく空気を溶解させることなく淡々と続く。   
これから続く言葉は自体を深刻にするだろう。

それは全員が感じていたが甘んじて受け入れる決心は既に付いていた。

55 名前:第九話:2007/09/28(金) 20:59:48.46 ID:e766rkQN0
(´<_` )「赤石の真の力――それはあの世との道の開通だ 」

(´・ω・`)「『黄泉路』か……」

ただ耳を傾けていただけだったショボンが口を開く。
うむ、と首を縦に振り弟者は続けた。

(´<_` )「その先にあるのはのは地獄・魔界・冥府魔道……宗教によって異なるがそう呼ばれている。
       もし繋がってしまえば元々こちら側にいた魔はあちらの瘴気で凶暴化する可能性がある。
       召喚の儀式など煩わしい手順を踏む必要が無くなって神話の連中も姿を見せる可能性も否めない 」

(;^ω^)「死ぬwそれ間違いなく死ぬww」

(´<_` )「もっとも、そんな者達は大抵こっちの事など興味は無いだろうから心配は要らない 」

('A`)「興味があるヤツ等もいるってんだろ?そんなのがパスポートも無しで大量に押しかけてきたら問題だわな 」

(´<_` )「そうだ。そして魔がこちらに興味を持つ場合は大抵相場が決まっている 」

57 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:00:55.76 ID:e766rkQN0
弟者の口から言葉以外の音が漏れる。
それは歯軋りだった。
あくまで紳士としての態度を貫き通してきた弟者の顔が怒りに震えていた。

(´<_`#)「ヤツ等の――興味とは――」

( ´_ゝ`)「食いモンだよ。人間の事だ 」

黙って弟者に進行を任せっきりだった兄者が口を出した。
兄者が喋ると言う事を忘れそうになるほど黙っていたので一同は面食らった。
それを無視して兄者は話の主導権を握る。

( ´_ゝ`)「弟者はこの件に触れると熱くなるからな。落ち着けよ。らしくないぞ 」

ブーンは『え?これ兄者だよね』とドクオを見た。
ドクオは『黙って聞いてようぜ』と目で返す。

川 ゚ -゚)「人に善悪があるように魔にも善悪がある。悪サイドの魔の到来を危惧しているのだな 」

( ´_ゝ`)「そういう事。真の意味でこの世は地獄と化す。このM王町も例外なく 」

60 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:02:02.60 ID:e766rkQN0
(´<_` )「私はM王の民を愛している。危害を加えることは許さない 」

落ち着きを取り戻した弟者が言った。
怒りに向けていた力のベクトルを別の方向にシフトチェンジしたようだ。
いつもの弟に戻ったことを確認した兄は自身もいつもの道化へと返る。

( ´_ゝ`)「全く、しっかりしろよ。お前が周りを見失うとオレが好き勝手できない。
       このアニジャ・アラーキー・バレンタインには夢があるっ!
       M王町をオレの漫画で豊かにすると言う夢がっ!」

( ^ω^)「あれ?今なんか言ったお?」

('A`)「漫画……?」

ブーンとドクオは兄者の言葉の一箇所が妙に気になった。
そういえばショボンがバーボンハウスで言っていた。
M王町は『ある漫画の舞台となり近年急速に観光地として有名になった町だ』と。


62 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:03:04.67 ID:e766rkQN0
川 ゚ -゚)「そうか、言ってなかったな。兄者は『徐々に奇妙な冒険』の作者だ。
     ペンネームは兄弟のミドルネームから取っているらしいぞ。
     町中至る所にオブジェがあっただろう?アレだ 」

そしてショボンはこうも言っていた。
『漫画家自身も在住しているが、メディアには一切の露出が無いためその顔は誰も知らない』と。

( ・ω・)「へぇ……そりゃ凄いですお。でも僕は漫画とか読まないから知らんね 」

('A`)「オレもそっち方面には疎くて。そんなに凄いの?」

大して興味をそそられないのか、ブーンとドクオは薄っぺらい反応を見せる。
しかしこの2人とは圧倒的に温度差の違う人間がそこにいた。

(*´・ω・)「震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!」

そう言って分厚い書物を兄者に差し出すショボン。
表紙には『徐々に午ー後ー』と書かれている。


64 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:04:21.56 ID:e766rkQN0
( ´_ゝ`)「おや?SYOVON、それは?」

さらに『徐々に奇妙な冒険』最新巻とペンと取り出し兄者に渡す。
その表情は黄金のように輝いている。

( ´_ゝ`)「良ぉお〜〜〜〜〜〜〜しッ!
       よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし
       よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし
       サインか!?単行本にも欲しいのか!? 
       2個…いやしんぼめ!!」

サラサラと手馴れた感じで2冊の本にサインを書きショボンに渡す兄者。

( ´_ゝ`)「SYOVON!貴様この漫画読み込んでいるなっ!」

(*´・ω・)「答える必要はない!」


66 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:05:48.65 ID:e766rkQN0
( ´_ゝ`)「ふっふっふ、しかしオレは読者に共通する見分け方を知っているぞ!」

そう言って兄者は漫画の原稿を取り出した。
まだペン入れもされていない下書きのような原稿だ。

( ´_ゝ`)「ヘブンズドアーッ!第7部のネームだよぉ!鼻の頭に血管が浮き出ているぞSYOVOooooo!」

(*´・ω・)「シブイねェ…全くおたくシブイぜ 」

川 ゚ -゚)「よし、お前らその辺にしておけ。これはあくまでもベースは『孔雀王』だからな。
     それ以上やるとどっちが原作か分からなくなる 」

( ^ω^)('A`)「??」

ブーンとドクオの知らない単語がクーの口から発せられショボンは『しまった』と言う顔をしてばつが悪そうに押し黙った。
気になったブーンが後でショボンに聞くと『神の世界の言葉だから知らなくていい』と言われた。


67 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:06:51.70 ID:e766rkQN0
しかし兄者は止まらない。
弟者の首根っこを捕まえて原稿片手に第7部の説明をしている。

( ´_ゝ`)「第7部はなぁ…最初は第7部という記載はしない!『アレ』も最初は『呪われたやつ』とか言って誤魔化す!」

(´<_`;)「兄者……そろそろ自重した方が……」

( ´_ゝ`)「ククククク……ハハハハハハッ!傑作だ!なぁ弟者!」

川 ゚ -゚)「黙れ 」

トランス状態の兄者の口から、クーの一言と同時に肺から強制的に酸素が押し出される音が聞こえた。
外套から覗いたクーの右拳が深々と兄者の水月に突き刺さっている。
兄者はくの字に体を折り曲げ全身が弛緩した。

川 ゚ -゚)「仕方がなかった。後悔はしてない 」

ドサッとクーの腕から床に崩れ落ちる兄者。
その目は白目を向きつつも泡を吹く口は恍惚に歪んでいた。

     ・     ・     ・     ・     ・

68 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:08:27.58 ID:e766rkQN0
     ・     ・     ・     ・     ・

ブーン達がM王町を訪れて数日。
彼らとクーは吸血鬼の屋敷に滞在していた。
赤石を狙うパンゲアの襲撃に備えてだ。
とは言えそうそう相手が都合よく攻め込んで来るなどありえない。

ブーンとドクオは2人でM王町の観光を楽しんでいたし、ショボンは兄者の仕事部屋に篭もってアシスタントのような事をしている。
クーはショボンのストーキングやたまにブーン達と町に下りるなど、各々全く好き勝手に時間を潰していた。

この日はイタリアンレストラン『虎・猿・DAY』で昼食を取ったブーンとドクオ。
財布の中身が心もとなくなった2人はショボンに小遣いを貰うために一度屋敷に帰還した。

昼間のこの屋敷はファンタジーやメルヘンのように美しい。
青々とした木々の木漏れ日の中、色彩豊かな蝶が飛ぶ。
蝶は瑞々しく咲き乱れる花々の間を舞い、好みの密を溢れんほどに持った花弁に止まる。

良く手入れの行き届いた花々の中でも一際目を引くのが真紅の薔薇園だった。
濃いグリーンの葉に、深いビロードのような赤が陽光に映える。

70 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:09:18.71 ID:e766rkQN0
そこにはにこやかに手入れを行う弟者の姿があった。
貴族のような風貌の弟者が薔薇にハサミを入れる様子は実に絵になる。
弟者はブーンとドクオに気付くと木漏れ日に浮かぶ笑顔を一層際立たせて2人を手招きした。

ブーン達は絵画から抜け出したかのようなその美しい場面に溜息をついた。
そして

(;゚ω゚)(;゚A゚)「ッアー――――――――っ!!」

叫んだ。

(;゚ω゚)「オトッオトオトオトオト弟者さんっ!!」

(;゚A゚)「いいいいいいいいいっまままままままままままっ昼昼昼昼!!」

(´<_`;)「落ち着け君達。急にどうしたんだ?」

     ・     ・     ・     ・     ・

71 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:12:05.92 ID:e766rkQN0
     ・     ・     ・     ・     ・

夜の吸血鬼屋敷。
赤い満月はその身を膨張させ、冷たい光を庭内に注いでいる。
食堂にはブーン、ドクオ、ショボン、クー、そして吸血鬼兄弟が一同に会し料理の前に座っていた。

( ´_ゝ`)「お前ら弟者が日に当たって灰になるとでも思っていたのか?」

( ^ω^)「だって吸血鬼の弱点が太陽って事はデフォですお 」

( ´_ゝ`)「創作の話だろ?オレ達だってこの世に生を受けた生き物だ。太陽の光を浴びて灰になる生物など見たことあるか?」

妙に説得力のある答えが兄者から返ってきた。
確かに日の光で灰になるような生き物が存在するはずが無い。
それならばとドクオもこれに乗じる。

('A`)「聖水や十字架はどうなんだよ?」

(´<_` )「迷信だよ。兄者などはかっこいいからとロザリオを常備しているよ 」

そう言って兄者の方を見る弟者。
ドクオがそっちを見るとこれ見よがしに胸をはだけた兄者が首に下げたロザリオを見せ付けていた。


73 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:12:25.62 ID:e766rkQN0
(;^ω^)「ニンニクは?」

(´・ω・`)「うん。このペペロンチーノは良くガーリックが効いている 」

(;'A`)「心臓に杭は?」

川 ゚ -゚)「それはお前だって死ぬだろう。常識的に考えて 」

どうやら吸血鬼といっても長生きする事を除けば想像以上に普通の生き物らしい。
ブーンとドクオは築き上げてきた吸血鬼に対する認識が、自身の中でガラガラと音を立てて崩れるのが分かった。

( ^ω^)「そう言えば兄者さんも弟者さんも血を吸ってるとこ見てないような気がしますお
       まさかこれも創作ですかお?」

( ´_ゝ`)「いや、吸うよ 」

この言葉に椅子から転げ落ちるブーン。


75 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:12:51.47 ID:e766rkQN0
ドクオは顔を引きつらせて少しずつ距離を取り始める。
その両肩を背後から唐突に掴まれてドクオは身を飛び上がらせた。

(´<_` )「ニヤリ 」

(;'A`)「ゲッ!」

(´<_` )「すまないすまない。冗談だよ 」

普段の柔らかい笑顔に戻った弟者はドクオの肩から手を離しながら言った。

(´<_` )「私達は何でもいいんだ。このような普通の料理でも血液でも。何でもエネルギーとして摂取できる 」

( ´_ゝ`)「父より上は血も吸ってるがオレ達は口に合わなくてな。
       勿論父達も人間と同意の上でしか吸血しなかった。
       実家は住民達に愛される領主様でな。人間の方から吸ってくれと懇願されるくらいだ 」

(´<_` )「吸うと言ってもほんのちょっぴりだ。それに血を吸われたら吸血鬼になると言うのも無論創作だね 」

76 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:13:20.96 ID:e766rkQN0
( ^ω^)「だったら吸血鬼だなんて名乗らなきゃいいと思うお……」

( ´_ゝ`)「他に言い方がねぇんだもん。仕方なくね?」

(´<_` )「確かに我々を定義する言葉としては吸血鬼が最も近いね 」

('A`)=3「なんだ。オレ達とそんなに変わらないんだな 」

アナルにツララを突っ込まれたような顔をしていたドクオはようやく安堵の表情を浮かべた。

確かに自分の血を吸おうと思えばこれまでに何度もチャンスはあったはずだ。
寝込みを襲えば一瞬だろう。
未だに自分がカラカラのミイラになっていないと言う事実はつまる所そういうことだった。


78 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:13:46.79 ID:e766rkQN0
その時、食堂内に無機質な携帯電話のコール音が鳴った。
弟者の携帯だった。

弟者は通話ボタンを押すと瞬時に笑顔を押しやり、険しい表情を顔に浮かべた。
相手に礼と労いの言葉を告げて弟者は電話を置く。
そして食堂の全員に言った。

(´<_` )「町外れに住む愛する民からの連絡だ。パンゲアが来た 」

( ´_ゝ`)「ここに到達するまで約1時間といったところか。使用人たちは避難を 」

兄者は傍らに佇む執事にそう言った。
執事は一瞬躊躇するような仕草を見せたが『お気を付けて』と退室した。

しばらくすると大勢の使用人が食堂に押しかけてきた。
ある者は涙し、ある者は自分も残ると言い兄弟に縋りつく。
兄弟はその悉くを優しく諫め、避難させる事を選択させた。

80 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:14:14.68 ID:e766rkQN0
(´・ω・`)「敵の情報は?」

使用人が引き払い静かになった室内でショボンが弟者に問いかける。
その顔には先程ブーンとドクオをからかっていた表情は微塵も残ってはいない。

(´<_` )「ライカンスロープ。数は約20。幸いにも一切他の物には目をくれずここに向かっているらしい 」

(´・ω・`)「これはこれは。銀の弾丸を用意しておいて正解だったな 」

ショボンはほくそ笑んだ。

狼男と聞いてドクオも笑う。
こちらも吸血鬼に劣らず知名度の高い魔物だ。

クーは魔を封じた銀の筒のストックを確認する。
1本だけ空の銀筒を見ながら密かに笑った。

そしてブーンは窓から外を凝視している。
待ち合わせに遅れた恋人を今か今かと待つかのように。
その姿は訪れつつある戦いに高揚していた。

83 名前:第九話:2007/09/28(金) 21:14:41.94 ID:e766rkQN0
(´<_` )「諸君、直にここへ強敵が現れる。心の準備はいいかな?」

強敵、と口には出すものの弟者の表情に陰りは一切無い。
笑顔こそ無いものの普段の弟者の聡明さがそこにあった。

( ´_ゝ`)「これも領主様の務めだからな 」

(´・ω・`)「オレ達は仕事で来たんでね。しっかり働かないと 」

川 ゚ -゚)「ショボン。2回目の共同作業だな 」

('A`)「まぁ、死なないように頑張りますか 」

各々好きなように心の準備が完了している事を告げる。
そして少し離れた窓の側からブーンが言った。

( ^ω^)「最近はドクオやショボンやクーにいい所持って行かれっぱなしだったお。今夜はきっと僕のターン!」

全員の戦闘体制が整った事を受け、弟者は力強く頷いた。
そしてテーブルに手を着いて全員に聞こえるように言った。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:15:18.76 ID:e766rkQN0

(´<_` )「よし、では作戦を話そう 」




  ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです


―――第九話・吸血鬼の家に遊びに行こう―――


      〜その2、赤石〜終



前へ 次へ  目次 inserted by FC2 system