- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:11:11.04 ID:imSEQ6jO0
- 11.
妹は新聞社勤めの父親のコネを使い、俺より先に就職した。
勤め先は同新聞社が持ってる劇場で、そこで係員をしてるらしい。
俺はいまだにフリーターだから、かなり肩身が狭い思いをして暮らしている。
J( 'ー`)し「あんた床屋行きなさいよ、みっともない頭して」
( ´_ゝ`)「へいへい」
風呂入って部屋に戻ると酔いが醒めた。
机に向ってノートパソコンを起動する。
( ´_ゝ`)「……」
ずっと前から小説家を目指してる俺だが、投稿したことはまだ二度しかない。
そして二つとも一次選考すら通過できずに落ちた。
むかーし投下した作品、『最期の二週間のようです』のドクオは俺がモデルになってる。
……わざとらしく作品名を出してみたりしたが、誰も知らないか。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:13:52.53 ID:imSEQ6jO0
- 12.
次の三月に狙ってる賞の締切が来るのだが、俺はどうしても小説を書けずにいた。
こうしてノートパソコンを開いても何もできない。
書きかけの自作品を見ては、
( ´_ゝ`)(……エミュでもやっかな)
こんな体たらく。
時折書く気になってもブーン系とか日記とかブログとか、一円にもならないようなもんばっか。
理由はわかってるんだ。
( ´_ゝ`)(つまり、俺は俺の取り柄は文章だけだと思っていた。
しかしそれですらまったく世間的に通用しなかったと。
俺には頼るがないんだ、自分の中に何一つ……本当になんにもねえんだ……
だからもう、何をやっても無駄って感じてて、それで書けないんだ、きっと)
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:15:29.19 ID:imSEQ6jO0
- 13.
今夜も何も書けないまま、俺はブーン系をちょこっと進めただけで布団に入った。
だけどまったく眠れない。
( ´_ゝ`)(このクソ就職難の時代に仕事があるとは思えん。
いや、就職難でなくても、俺に出来る仕事なんかあるのか……
俺が審査員なら学歴も資格も取り柄も人格すらもろくなもんじゃねえ俺を雇うか?)
( ´_ゝ`)(……)
( ´_ゝ`)(ダメだ……現実に目を向けると息が出来なくなる。楽しいことを考えよう)
こういう夜、俺は空想の中に逃げ込む。
「こんな筈じゃなかった俺の人生」を修正し、楽しい青春時代に思いを馳せるんだ。
例えば高校時代はクラブ活動に専念し、かわいい女の子と遠からず近からずの関係を楽しみ、悪友と一緒に
酒や煙草に現を抜かす。
現実ではどれ一つ手にできなかったもの。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:17:31.74 ID:imSEQ6jO0
- 14.
何かすでにブーン系とは思えないほどの辛気臭さだが、この話はもう少し続く。
さて、翌日。
眼が覚めると家には誰もいなかった。
俺の仕事はスーパーのバイトで、昼から閉店後の処理までだ。
だから起きるのが遅く、大抵家族はみんな出かけた後に家の中をうろつき始める。
( ´_ゝ`)(チクショー、夜中に目が覚めてかなわん)
夜中に繰り返し目が覚めるのは鬱病の始まりだっけな。
ともかく冷蔵庫にある適当なものを腹に詰め込みながら、ネットに勤しむ。
( ´_ゝ`)(検索、検索と)
自分が最近投下したブーン系のタイトル名を検索したり、まとめ情報サイトでページ内検索したりする。
また他のブーン系作者のブログを見て回るわけだが、目的はひとつだけだ。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:19:33.18 ID:imSEQ6jO0
- 15.
正直に言うが、俺は他の作者のブログなんかろくに読んじゃいない。
にも関わらずこうして開くのは、自分の作品の名前が出ていないか気になるからだ。
( ´_ゝ`)(ブログ内検索と……ねえな。次次)
某スレだか感想スレだかで「ブーン系作者は自分の作品にしか興味がない」みたいな発言があった。
ありゃあまさに真理を突いてる。
少なくとも俺はそうだからだ。
他の奴の日記なんか読んで何が楽しい?
作者が自分のブログで自分の作品語ってるのなんか見たいか?
俺は遠慮する。
俺が興味があるのは、俺の投下した作品だけだからだ。
そういうこと。
( ´_ゝ`)(今日も一つもない……)
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:21:30.27 ID:imSEQ6jO0
- 16.
現実の疎外感から逃げ出す為に始めたブーン系で、またも味わう疎外感。
まさに永遠に仲間はずれの国(by永野のりこ)。
( ´_ゝ`)(時間か……行くかな)
重たい体を引きずってバイト先へ向かう。
だがその前に俺はバイト先の向かいに建っている、ホームセンターに行ってみた。
刃物のコーナーを探してみると、それはすぐに見つかった。
(;´_ゝ`)(……)
ホース切りバサミだ。
ハサミと言っても片方の刃がプレート状になっていて、ここにホースを押しつけるようにして切るらしい。
確かに「柔らかいチューブ状のもの」なら何でも切れるだろう。
こりゃあ皮どころか本体でも簡単に切れそうだ。
モナーの話が益々現実味を帯びてきた。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:23:08.43 ID:imSEQ6jO0
- 17.
ホームセンターでひとしきり戦慄した後、バイト先に向かう。
俺が通っているところはデパートとスーパーの中間くらいの大きさだ。
地階が食料品売り場・薬局・フードコート(軽食が色々食えるところ)、二階が玩具・本・服売り場。
( ´_ゝ`)(くそ、ファミ通360にまでバンドが)
仕事が始まるまでは本屋で時間を潰すのだが、最近は立ち読み防止のゴムバンドが付けられている。
しょうがないので週刊誌のエログラビアなど見て過ごす。
さて、時間だ。
従業員用の出入り口から中へ。
(・∀ ・)「おはよー」
( ´_ゝ`)「おはよーございまっす」
('、`*川「おはよーございますぅ」
( ´_ゝ`)「おはよーございます」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:25:04.02 ID:imSEQ6jO0
- 18.
同僚に陰鬱な挨拶を返し、制服に着替えて売り場に出る。
( ´_ゝ`)「いらさいませー、いらさいませー」
俺の担当は乳製品とパンだ。
時間の大半をここで過ごすのだが、今日は別の仕事が来た。
(・∀ ・)「よー完全犯罪」
この人はチーフで、俺の上司に当たる。
実は俺よりも一つ年上なだけなんだが、信じられないくらい大人な社会人だ(おまけに既婚者)。
まあ……出来る人は世の中がどうだろうと出来る、出来ない奴はどうあっても出来ないってことさ。
( ´_ゝ`)「はいはいなんですか」
(・∀ ・)「ちょっとショボンとジュース出して来てくれよ、ケース売りのやつ」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:27:32.31 ID:imSEQ6jO0
- 19.
俺は裏手の商品置き場に回った。
ショボンがダンボール入りのジュースを満載したカートの前にいる。
(´・ω・`)「どうも完全犯罪さん」
( ´_ゝ`)(こいつがショボンか。チッ、童貞くせえツラだぜ)
自らもまた童貞ながらに俺はそう思った。
( ´_ゝ`)(だがこれはチャンスだな。この疎外感の突破口になるかやも知れぬ)
この店の労働力の大半は学生アルバイトと言う高校生だか大学生だかで占められており、純粋なフリーターと
言うのは俺を含めてもわずかしかいない。
特に高校生から見れば俺はかなり年上になるので、いまいち仲良くなれずにいた。
この童貞を切り口にそいつらと仲良くなりたかった俺は、精一杯の親しみを込めた。
( ´_ゝ`)「ああ、よろしくな。俺完全犯罪って言うんだけど自己紹介したっけ? フヒ
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:29:14.81 ID:imSEQ6jO0
- 20.
(´・ω・`)「いえ。してません」
( ´_ゝ`)「そーかそーか、俺は完全犯罪! カンザイって呼んでくれよな、よろしく」
(´・ω・`)「はあ……ショボンです、どうも」
( ´_ゝ`)「まあそうカタくなんな」
今にして思うと兄貴風吹かせてるただのイヤな奴だな俺は。
( ´_ゝ`)(ケッ、非リア充代表みたいなツラしやがって)
(´・ω・`)「ああ、そいじゃあ持って行きましょうか」
( ´_ゝ`)「おうよ」
カートを引っ張って売り場に向かう。
そこでジュースを並べていると、恐るべきことが起きた!
そう、俺とショボンは何事もなくケース売りジュースを床に積んでいたのだ。
すると誰かがショボンの背中を掌で叩いた。