1 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:17:11.19 ID:TvE3a1Nm0
不思議な夢

今日も天気は良い。冬の寒空が一面に広がっている。風も冷たく、外を歩いている人々はみな、家路を急いでいるようにも見える。

平和な毎日・・その日々には大半の人々が満足している。仕事があって、帰れば家族が出迎えてくれる。そこには何不自由なことはなかった。

だが、少しだがその日々に満足出来ない者もいた。

「いらっしゃいませー」

ここはとあるコンビニ。そこに彼はいた。ぶよぶよな体を気だるそうに動かして、やる気なさそうに仕事をこなしている。

心なしかクルーの目は彼に対して冷たく見えた。


3 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:17:56.83 ID:TvE3a1Nm0
( ^ω^)「・・あいつらは群れてなきゃ何も出来ない連中なんだお」

そのピザはクルーたちに聞こえない声で呟いた。どうやら自分以外の人間は完全に見下しているようだ。

( ^^ω)「内藤君、早く担当の仕事を終わらせてくれ。全くはかどってないじゃないか」

店長らしき人物が話し掛けた。

彼の名前は内藤ホライゾン。どこにでもいそうな20歳のピザフリーターだ。未だ、中二病が抜けきらない所があるらしい。

( ^ω^)「あ、はい。すいませんお・・」

( ^^ω)「全く・・何回目だい?君の代わりなんていくらでもいるからね。しっかりやってくれよ」


4 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:19:10.58 ID:TvE3a1Nm0
( ^ω^)(・・くしゃ顔のクセに。さっさと死ねばいいんだお)

ブーンは心の中でそう思っていた。確かに誰でも注意されれば嫌な気分にはなるが、しっかり改善しようと努力する。だがブーンは違う。

注意された事が自分の気に食わない事ならば全く直そうとしない。ブーンはここのクルーも店長も嫌いだった。もちろんクルーはブーンのことを快く思っては居ない。

ブーンは外見も良くはなかった。それに性格も曲がっていた。なぜなら彼は小、中学校とずっと同じ奴からイジメを受け続けていたからだ。


5 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:21:09.50 ID:TvE3a1Nm0
話は小学校までさかのぼる。

<ヽ`∀´> 「内藤、なんでお前そんなに太ってるニダ?」

彼は生まれつき太りやすい体質だった。そのおかげでドンドン太っていった。

( ´∀`)「やーい、デブ!!」

(# ^ω^)「デブって言うなお!!」

思い切りそいつに殴りかかろうとする。だが動きが遅く簡単にかわされてしまう。

( ´∀`)「くやしかったら痩せてみるモナ!」

そのままどこかへ走り去ってしまったその二人。ブーンはその姿を悔しそうに見つめている。


6 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:22:46.47 ID:TvE3a1Nm0
( ;ω;)「・・・・・・・・・・」

幼き心はダメージを受けやすかった。暴力こそふられなかったものの、体のことは小学校を卒業して中学に入ってもずっと言われ続けていたブーン。

いつしかブーンは自分の体がコンプレックスになってしまった。

ようやく高校に入って、イジメからは解放された。好きな人も出来て告白した。だが、

ξ゚听)ξ「ごめんね、ブーン君はいい人だと思うんだけど、太ってる人は・・」

ここでも自分の体が災いして断られてしまった。

( ^ω^)「・・・・なんで太ってるだけでこんなにされなきゃいけないんだお」

ブーンの心はボロボロだった。太っているだけで虐げられて、恋愛すらまともにさせてもらえない。

何もかも無理だと諦め、素直だった性格もこの頃になるとすっかり曲がってしまった。大学にも行かず、結局就職も出来ずに今に至っている。


7 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:24:56.86 ID:TvE3a1Nm0
( ^ω^)「早くバイト終わらないかお。帰ってエロゲしたいお」

そうつぶやくと同時にコンビニの自動ドアが開く。

('A`) 「よお、ブーン。遊びにきたぜ」

彼の名前はドクオ。高校からのブーンの親友だ。境遇の似た二人はすぐに友達になった。

友達になってから彼等はいつも一緒に行動し、苦楽を共にしてきた仲だ。

( ^ω^)「おいすードクオ、もうバイト終わったのかお?」

('A`) 「おう、なんか今日は早めに上がっていいって言われてさ。ブーンもそろそろ終わるだろ?ちょっと立ち読みでもして待ってるよ」

( ^ω^)「わかったお。エロ本は立ち読みするなお」

('A`) 「サーセンwwwwwwwwwww」

9 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:26:31.88 ID:TvE3a1Nm0
そういってドクオは読めるエロ本を探して、立ち読みし始めた。ハァハァいってるのでコンビニのクルーたちには嫌な目で見られた。

( ^ω^)「だから立ち読みして欲しくなかったんだお・・」

ブーンはため息を一つつくと、また残っている仕事を始めだした。そんな様子を見ていた店長は、

( ^^ω)(彼はきっと過去に何かあった人物だ。だから出来る限りは優しくしてあげたい・・)

店長は意外にブーンのことを分かっているようだった。だからあまり厳しくは注意しないし、クビにもしない。ドクオと話していてもあえて何も言わなかった。

だが、ブーン自身はその事には全く気が付いていなかったのだった。

時間も少したって、ブーンが上がる時刻になった。ブーンは店長にだるそうな感じに話しかける。

10 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:30:00.16 ID:TvE3a1Nm0
( ^ω^)「店長、もう上がってもいいですかお?」

( ^^ω)「ああ、いいよ。明日はもっと頑張ってくれ。期待してるよ」

ブーンは軽く会釈をして、待っててくれたドクオの方へ向かっていった。

('A`) 「フヒヒヒヒwwwwwあ、おせーよブーン」

( ^ω^)「ちょwwwwじゃあ早く帰ろうお」

二人はコンビニから出て、帰路につく。何気ない会話が繰り返されている。いつもの風景だ。


11 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:35:43.82 ID:TvE3a1Nm0
そして話は今日ブーンがやるのを楽しみにしていたエロゲの話になった。

( ^ω^)「あっ、ドクオ、今日貸してもらったエロゲに手出すお」

('A`) 「おっ、アレに手ぇ出すのか。あれは何か不思議な話で面白いぞ。何か主人公がな・・」

(; ^ω^)「その先は言うなお!!楽しみにしてるから!!」

('A`) 「サーセンwwwwwww」

しばらくその話で盛り上がる二人。そしてブーンはふと、おかしな事を思いつく。


12 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:37:13.59 ID:TvE3a1Nm0
( ^ω^)「ねぇ、ドクオ・・?」

('A`) 「なんだよ?」

( ^ω^)「世界から色を全て奪ってやりたいって思ったことあるかお?」

('A`) 「なんだよ、また例の中二病かよwwwww」

ドクオは笑いながらブーンに返事をする。だがブーンはその様子を気にせず、話し続ける。

( ^ω^)「ただ真っ白な世界・・一度いってみたいと思わないかお?」

('A`) 「おもわねーよwwwwwwなんだよ、変な話すんなよな」

ドクオに爆笑されたので、少し不愉快になったブーン。確かに自分でもそんな世界は無いと思っていたらしいが。

14 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:40:23.41 ID:TvE3a1Nm0
それでも楽しそうな様子で二人は歩いていた。楽しい時間が過ぎるのは早いもので、先にドクオの家へと着いた。

('A`) 「じゃあな、ブーン。明日もバイト頑張れよな」

( ^ω^)「ドクオこそだお。それじゃあだお」

ドクオと別れてすぐに小走りになって、家へと急いだ。相当エロゲが楽しみらしい。それに母親の晩飯も。

( ^ω^)「ただいまだお!!」

J('ー`)し 「あら、お帰りブーン。今日もお疲れ様」

暖かくカーチャンが出迎えてくれた。ブーンの家は母子家庭だ。父はブーンが幼かった頃に交通事故で亡くなった。

だからブーンは父に関する記憶はあまり残ってはいなかった。


17 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:42:26.41 ID:TvE3a1Nm0
J('ー`)し 「今日のご飯はサーモンステーキだよ。冷める前に早く食べた方がいいわよ」

( ^ω^)「カーチャンの料理は冷めてもおいしいお!でも今食べるお」

ブーンは速攻で晩飯を食べて、急いで自分の部屋に向かっていった。

( ^ω^)「さーて、エロゲやる前に2チャン開くお」

ブーンのお気に入り掲示板「2チャンネル」

ここには沢山、テーマ別に話すとこがあり、なかでもブーンはニュー速VIPがお気に入りですっかり住民化していた。

( ^ω^)「今日もクソスレ乱立してるお・・・」


20 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:45:13.48 ID:TvE3a1Nm0
ブーンはため息をついて、スレを見渡す。ふと、興味を引いたスレを見つけたブーン。

「世界中の色を消してみたいと思わないか?」

( ^ω^)「なんだお・・このスレ」

さっき自分が思いついたことが、にちゃんねるでスレとして立っている。

無性にそのスレが気になり、開いてみた。

「クソスレ立てんなボケ」

「中二病乙」

などなどそのスレには大したレスはされていなかった。期待した自分が思わず馬鹿馬鹿しくなったブーン。


21 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:47:02.31 ID:TvE3a1Nm0
( ^ω^)「・・仕方ないからレスしてやるお」

「僕は本当に色を消せる人間だお」

と、ありもしない事を書き込んでみて、そこの住人の様子を見てみることにした。少しして、

「ブーン乙」

これしかレスは帰ってこなかった。ブーンはがっかりした。

( ^ω^)「所詮こんなもんかお。もうエロゲやるお」

ブーンは2ちゃんをすぐに閉じて、ドクオにかしてもらったエロゲをはじめた。


22 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:49:33.81 ID:TvE3a1Nm0
だがブーンがこの書き込みをしてからこのスレが爆発的に伸びたのはブーンが2チャンネルを閉じた後だった。

そしてこのスレに気になる一言が書き込んであったこともブーンは知らない。

一方のブーンは呑気なもので、ドクオから借してもらったエロゲーをひたすら進めていた。だがこのゲームの出来がブーンは気に入らなかった。

( ^ω^)「この作品、昔も似たようなのがあったお」

と文句をいいつつもかれこれ二時間近くエロゲをやりこみ、ようやく濡れ場がきたと思って、ブーンは準備をした。

( ^ω^)「・・・何も興奮しないお。二時間やってこれかお」

またブーンはがっかりした。そのエロゲはブーンが満足できるほどのクオリティがなかったからだ。

24 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:51:27.57 ID:TvE3a1Nm0
( ^ω^)「もういいお。寝るお」

ブーンはふて腐れてしまって、すぐにPCを閉じ、布団へもぐりこんだ。今日は全くいいことがなかったブーン。すぐに眠りについた。

自分がこれから恐ろしい夢に襲われる事も分からずに。

( ^ω^)「・・ここはどこだお?」

ブーンは夢の中にいた。そこに広がる世界は、ただ真っ黒な世界。回りを見回しても、全て真っ黒だ。

( ^ω^)「とりあえず歩いてみるかお・・」

こんな暗いところにいても仕方が無いと思ったブーンは歩き出した。暗くて前が全く見えなかったが、幸い周りに物がなかったのでスムーズに歩けた。

だが、いくら歩いても出口はおろか、明るい所さえ見つからなかった。

26 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:53:44.11 ID:TvE3a1Nm0
( ^ω^)「なんなんだお、ここは・・」

夢にしてはなんだか自分の意識は、はっきりしている。なんだか、自力で出口を探さないと、この夢から目覚めることは出来ない気がした。

ブーンは恐ろしくなって、小走りで駆け出した。何かあてがあるわけじゃない。だが、静かに歩いてるだけじゃ恐くて仕方が無かった。

(; ^ω^)「ハアハアハア」

ブーンは今までこれだけ走った事はないと言うくらいに走った。ひたすら走った。

出口の無い暗闇を。だが非情にも、何も変化が無かった。暗闇は未だ、ブーンを飲み込もうと向かってくるようだった。

不安と恐怖に襲われた心が崩れるのはあまりにも早かった。ブーンはもう走れないと感じ、倒れそうになる。



29 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:56:35.37 ID:TvE3a1Nm0
 ^ω^)「もう・・ダメだお」

ゆっくりと暗闇の中に身を任せた。その時、自分の手が暗闇の所に触れたような気がした。だが今のブーンには何の意味も持たない。

( ^ω^)「ここで死ぬのかお。冗談じゃないお。まだセクロスしてないお・・」

ブーンは頭の中に、様々なことを思い浮かべた。自分のやり残して来た事を色々と。

あのエロゲまだやってないお。可愛い子とまだ付き合ってないお。などなど大した事ではなかったが。

( ^ω^)「・・・・・・・・・」

もう限界が近かったようで、静かに目を閉じようとした。だが、力を振り絞って、もう一度だけ目を開ける。そして自分の目の前を見てみた。

30 : ◆gk43jgqTBM :2007/01/14(日) 19:58:19.18 ID:TvE3a1Nm0
( ^ω^)「なんだお・・?」

ブーンがさっき触れた場所から、真っ暗だった所が真っ白な色に変わっていくのをブーンは発見する。

自分には何が起こってるのかは全く分からなかった。さすがに限界を感じたブーンは、目を閉じた。その時謎の声が聞こえてきた。

キーが高い。まるでソプラノ歌手のような透き通った女の声だった。

???「あなたに私の力をあげる・・どう使うかはあなた次第よ」

( ^ω^)「・・・・・・だれだお?」

???「ごめんね、誰かは言えないわ。あなたには私の力をあげる資格があるの。でも、使い方には気をつけて・・」

それだけ言い残して、その声は消える。その世界が白く、明るくなるのを感じた。

だがブーンの意識もそこで途切れてしまう。結局何が起きたのかを確認する事も出来ずに。

この力が後々のブーンを大きく左右するようになるとはまだ誰も知らない・・

不思議な夢 完


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