( ,,゚Д゚)ギコの大地は乾かないようです 3

3 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:27:33.70 ID:cNcZMxKU0





夏休みは、もう明日となっていた。
暑さは日に日に勢いを増し、ギコ達の神経に埃を押しつけていく。

生きる事にすら、疲労を感じるようになる。
去年は冷夏だと騒がれていたが、今年は打って変わって猛暑らしい。

全開にされた窓からなだれ込む風は、掌で掴めそうなほどに生暖かい。

きっとこの空気を映像化するならば、どろりとした油のような液状のものだろう。

放課後は毎日、誰もなにも言わなくても屋上に集まるようになった。
扉の開け方もフサギコから学び、ギコ達は不法侵入を繰り返した。

わざと扉を開け、同志を待つ日もあった。

そんな毎日の中で、四人の輪はやがて五人となり、六人となった。
アレに参加する同志が、もう二人増えたのだ。



4 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:29:41.62 ID:cNcZMxKU0

ミ,,゚Д゚彡「ペニサス、ギコ、行くぞ」

終業式が終わり、通知表が渡され、ざわめく教室の中でフサギコの声がした。

顔をあげると、かばんをかついだフサギコが立っていた。
隣にいるペニサスは成績表を見て重い溜め息をひとつ、ついている。
きっとフサギコの声なんて聞こえていないのだろう。

( ,,゚Д゚)「ああ、行こう。今日が最後の集まりだな」

ギコがそう言うと、フサギコが「おう」と言い、ペニサスの背中を叩いた。

('、`*川「いったいな! 何なのよ」

ミ,,゚Д゚彡「屋上行くって」

('、`*川「あ、そっか」




5 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:31:01.58 ID:cNcZMxKU0

三人は、屋上までの階段を、思いっきり駆け上がった。
長い、長い階段。この息切れの感触が、癖になる。

バレー部がオールコートを使用し、バスケ部が筋トレとなった日は、よく階段を駆け上がったりしていた。
その感触が、ギコの中のなにかを沸き立たせていた。

きっとペニサスも同じなのだろう。

男に負けない脚力で階段を駆け上がるペニサスの目は、子供みたいに、きらきらしていた。

( ゚∀゚)「ハイ来たー!」

ぱちぱちぱち、と乾いたような音を鳴らし拍手をするジョルジュ。
ジョルジュは新しい面子の一人で、なんだかとてもハイな奴だった。


6 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:33:12.51 ID:cNcZMxKU0

そのジョルジュの隣には、ツンがあぐらをかいて座っていた。

ξ゚听)ξ「ジョルジュうっさい! 耳元で大声出さないでよ!」

('、`*川「ジョルジュ君とツン、早いね。私達、ホームルーム終わってからダッシュで来たんだけどなっ」

ペニサスが肩で息をしながらそう言うと、背後から、たんたんたんと軽い足音が聞こえてきた。

ミ,,゚Д゚彡「ミセリじゃない?」

フサギコがそう言ったのと同時に、ミセリがひょっこりと顔を出した。
短く切った黒い髪の毛が、少しだけ耳にかかる。

ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは」

これで、メンバー全員が揃った。


7 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:37:10.58 ID:cNcZMxKU0

六人は、中心にある何かを囲むかのように、円を描いて座った。
ギコの両隣は、フサギコとジョルジュ。

目の前には、ペニサスがいる。
ペニサスと手を繋ぐように寄り添っている、ミセリとツンの髪が、風にさらさらと流される。

ミ,,゚Д゚彡「さて、と」

フサギコは一息おいて、

ミ,,゚Д゚彡「一学期終わりました――――っ!」

ξ゚听)ξ( ゚∀゚)「終わりました――!」

空に向かって叫びながら、三人は通知表を放り投げた。
ギコがいち早く駆けだし、三人の通知表を開く。

三人とも、似たりよったりの成績だった。

( ゚∀゚)「おいギコ、勝手に見んなよ!」

ジョルジュがそう叫ぶのをよそに、ギコはミセリとペニサスにそれを見せる。

( ,,゚Д゚)「まじやばくね?」

('、`;*川「うわやっばい特にフサギコ君!」

ミセ*;゚ー゚)リ「高校行けるのかな、それ」


11 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:39:21.46 ID:cNcZMxKU0

ミ,,゚Д゚彡「ハイお前等、頭の悪い子を馬鹿にしなーい!」

ξ゚听)ξ「アンタもでしょ!」

ツンに突っ込まれながらも、フサギコは続けた。

ミ,,゚Д゚彡「ついに来ました。夏休み! 明日から、俺達の計画が始まるんだ」

フサギコの声が、深く、低くなった。
まるで、張り詰めはじめたその空気自体を、大きく撫でるような、声だった。

五人は、激しくなった動悸を抑え、フサギコの声に耳を傾ける。

ミ,,゚Д゚彡「今まで夢物語みたいに話してきたことが、明日ついに現実になるんだ」

自分自身が放った言葉の意味を、自分自身が一番噛み砕いている。
フサギコはゆっくりと、自分の言葉を呑み込んだ。



12 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:42:17.44 ID:cNcZMxKU0

( ,,゚Д゚)「俺達がこうやって集まったことは、多分偶然とかじゃないと思う」

フサギコの視線を受けとって、ギコが言葉を続けた。

( ,,゚Д゚)「俺達は同じこと考えて、ここに集まった。ジョルジュとか、ミセリやツンだって、
     初対面とは思えないほどに、打ち解けた。俺、こういうのはじめてなんだ」

ギコがゆっくりそう言い一息おくと、五人は同時に頷く。

( ,,゚Д゚)「今まで型にはまった生活しかしてなくて、こうやって仲間と一緒にレール踏み外すのとか、
     はじめてなんだ。だから今、すごいどきどきしてる」

('、`*川「わ、私も」

ギコの言葉が終わるが早いか、ペニサスが言葉を受け取った。

('、`*川「私も、こういうのはじめて。今まで親に言いなりばっかりで、もういやだったの。
     だけどいつまでたっても抜け出せなくて……今年は、がんばるよ。
     なんか、今までの分、取り戻そうって思ってる」

ペニサスがそう言うと、ミセリが「うん」と小さく呟き、続けた。

ミセ*゚ー゚)リ「私……は、病弱で入院とけ結構してて、ちゃんとした友達……
      親友とか、いなくて、こういう友達ははじめてなんだ。
      だから今年の夏は、もうからだも壊さないようにして、皆とがんばるって、思うよ」




13 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:44:46.62 ID:cNcZMxKU0

ギコは、こうやってミセリがちゃんと語るのをはじめて聞いた気がした。
今までの集まりでも、ミセリは自分から進んで発言しようとはしなかった。

なぜ、これに参加する気になったのだろうと思ったことも、あった。

だけど、こういうわけだったんだな。
まだ友達に慣れていないがために、一歩退いてる部分があったんだ。

少し、恥ずかしそうにはにかむミセリの言葉を、今度はジョルジュが受け取った。

( ゚∀゚)「おーれーは……あれだよ、家でいても一人だからさ、なぁんとなく寂しかったりとかしてたんだよね。
     だからこれにも参加しようって思ったんだけどさ。今年の夏は楽しくなりそうだなって思ってマス。ハイ」

( ゚∀゚)「いや、俺こういう真面目に話す場面とかホントダメなんだけどww」

ジョルジュはそう呟きながら、ツンへとバトンタッチした。

ξ゚听)ξ「こほん」

ツンは、自分の右手をマイクに見たて、勢いよくたちあがった。
そして、思いっきり息を吸い、

ξ゚听)ξ「本気で、青春するから! 嫌なこととか全部、忘れちゃおー!」

と、叫んだ。


14 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:46:00.27 ID:cNcZMxKU0

ミ,,゚Д゚彡b「オッケー!」

フサギコは、そう答えながら拍手をした。
ツンは満足そうな笑みを浮かべ、座りなおす。

('、`*川「ツンの言うとおり! 嫌なことなんて捨てる!」

ミセリが隣でくすくす笑っている。
ジョルジュはツンと肩を組み、ブルーハーツの「リンダリンダ」を歌いながら左右に揺れている。

ギコは五人を見て、世界が回るということを感じていた。

今こうやって皆で騒いでいる時間は確実に流れており、上から見てしまえば今も昔も全て同じだということを。

今日が来て、また「今日」が来て今日が巡り、それは全てのものに対して平等だということを。

今までの今日が、流れ去ったはずの今日が、今と平等に輝き出すことを。
ギコは、感じていた。


――……


―…




15 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:48:17.29 ID:cNcZMxKU0



ミセ*゚ー゚)リ「ふう……」

夕陽が、揺れている。
虹彩を麻痺させるかのような紅色をした光が、街全体を撫でるように広がっていく。

鞄の重さなど、忘れていた。
細い両腕に大きなボストンバッグを抱え、ミセリは、ひとり学校へと歩いていた。

なんとなく着てしまった制服にバッグが擦れ、制服には無数のしわが出来てしまっている。

ミセ*゚ー゚)リ「制服着てきたのは間違いだったかなぁ」

別に公式な学校行事ではないのだから、制服なんて着てくるんじゃなかった。
きっとみんな、かわいい私服で来るんだろうな。

ミセリは、中を見透かすように鞄を見た。

ミセ*゚ー゚)リ(どんな着替えを入れたっけ……。どきどきしすぎて覚えてないや)



16 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:50:28.02 ID:cNcZMxKU0

外灯の光に群がっている虫が、力もなく舞っている。
ふわんふわん、となめらかな曲線を描きながら、虫は飛ぶ。

外灯の光に時々姿を消されながらも、ぱっと現れ、またぱっと消える。

虫は、ミセリの真っ黒な髪にも群がってくる。

ミセ*゚ー゚)リ「うっとうしいなぁ」

ミセリは、かろうじて片手を鞄から放し、自分の頭上で掌を動かした。
虫は去っていったかのように見えたが、きっとまだふわんふわんと飛んでいるのだろう。

ミセリは、自分の頭のうえを見上げた。
そこには、二匹の虫と、自分の白くて細い腕があった。

白く透け、腕の向こうに広がる空の色が見えてしまいそうな、腕。




18 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:52:19.76 ID:cNcZMxKU0


    ――三日に一度は、必ず来て下さい。そうじゃないと――


ミセ*゚ー゚)リ「!!」

ぼすん、と鈍い音をたてて、ボストンバッグが路上に落下した。
ミセリは、自分の右腕を抱き、その場にしゃがみ込んでいた。

ミセ*゚ー゚)リ(う……また、思い出しちゃった)

あの、白い薬臭い部屋での言葉を思い出すと、いつもこうして体の力が抜ける。


    ――そうじゃないと、もたないかもしれません――


鼓動の速まりと共に、頭の中が大きな掌でぐちゃぐちゃに掻き乱されていくような感触に溺れた。
左腕で、右腕を強く握り締めた。肉の軋みが、聞こえる気がした。

ミセ*;゚ー゚)リ「大丈夫……きっと、大丈夫……」

ミセリは、制服で汗をふくと、鞄を抱えもう一度歩き出した。
重さを忘れていた先ほどとは裏腹に、鞄はとても大きく、そして重く感じた。

それを抱え込むように歩くミセリの背中を、夕陽は先ほどと同じように、やさしく撫でていた。




19 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:55:27.44 ID:cNcZMxKU0



( ,,゚Д゚)「頼むぜ、一つ位、見落としておいてくれよ」

ギコは、予め開けておいた三つの窓を、順に回っていた。

一つ目は、一階の一番西に位置している家庭科準備室の窓。
二つ目は、一階中央にある生徒用中央トイレの窓。
三つ目は、一回の一番東にある第一多目的室の窓だ。

六人で、先生の見まわりの際に死角になりそうな窓を話し合い、そこの鍵を予め開けておいたのだ。

昨日の放課後、窓空け役を分担し、先生に見つからないように鍵を開けた。

この作戦がうまくいかなければ、全ての企みは全く形を無くす。

ギコは速まる鼓動を抑え、一つずつ窓を回っていた。

二つ目の、生徒用中央トイレの窓の鍵は、かかっていなかった。

( ,,゚Д゚)「よしっ!」

ギコはガッツポーズをし、待ち合わせとなっている体育館脇の自転車置き場へと急いだ。



20 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:57:20.36 ID:cNcZMxKU0

( ,,゚Д゚)「ふう、まだ誰も来てないか」

自転車置き場の手すりに、ボストンバッグを置いた。
大きく息を吐き、ギコはその場にあぐらをかいた。

( ,,゚Д゚)(皆、親になんていったんだろう……)

ジョルジュは親に言う必要が無いからよしとする。
きっと、ツンやフサギコも親には言わずに来るのだろう。

問題は、ミセリとペニサス……。

ミセリの家庭事情はわからないが、ペニサスの家はアレだ。
すんなりと家を出られるとは思えない。
もしかしたら、今日ここに辿り着けないかもしれない。

( ,,゚Д゚)「あいつ、大丈夫かな……」

考えれば考えるほどに、現実的な焦りがギコを襲う。

( ,,゚Д゚)(まぁ、といっても俺だってほぼ家出同然で出てきたんだけど)




21 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 17:59:13.75 ID:cNcZMxKU0

今日の夜、母親が仕事から帰ってきたらどれだけ驚くだろうか。
広いリビングの中心に位置しているテーブル、の中心に置いてある紙、の中心に書いてある文字。

それを見た瞬間、きっと母の顔の中心に位置している鼻の穴は大きく膨らむことだろう。
ギコはできるだけギャグタッチにその顔を想像したが、どうしても笑えなかった。

( ,,゚Д゚)(まぁ、いいか……。一応、偽造はしておいたし)


     『勉強道具は全て持参して行きます。家庭にいるときと同じように、いや更に仲間と切磋琢磨しながら……』


書置きの内容が、ふと頭を過ぎる。
うちの母親なら、十分信じるだろう。

( ,,゚Д゚)「……」

きっとうちの母親は、成績と内申さえよければ、「ギコ」が息子じゃなくても構わないんだ。
だからきっと、勉強さえきちんとしていれば、俺は俺を維持できる。

落胆にも似た格言が、ギコの中には存在していた。




22 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 18:01:32.12 ID:cNcZMxKU0

うちの母親は、高校の判定でAを取り、内申点四十以上を持続し続ける十五歳の子供ならばきっと、
マネキンだろうが抱き締めるだろう。

こっそりと俺とマネキンがすりかわったとしても、気付かないんじゃないだろうか。

( ,,゚Д゚)(俺はここにいる。ギコという名の自分は、ここにいる。俺はひとりしかいない。そして俺は、ここにいるんだ)

必死に必死に、こうやって祈りを飛ばさない限り、自分自身をマネキンと見間違えてしまうような気がした。


('、`*川「ギコ君」

ふと、頭上から凛とした声が聞こえた。
雨が降った次の朝、庭の葉から零れ落ちる雫のように、その声は落ちてきた。

( ,,゚Д゚)「ペニサス?」

顎を突き出すようにして、上目づかいで声の主を見る。

('、`*川「声だけで、わかっちゃった?」

ペニサスが、はにかむように笑っていた。
汗によって、束となり固まってしまった髪の毛を、ピンで綺麗にまとめている。

少し闇を帯び始めてきた空をバックに、ペニサスの笑顔は少し眩しかった。


24 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 18:04:01.68 ID:cNcZMxKU0

('、`*川「皆、まだ来てないんだね」

ペニサスは、そう言いながらギコの隣に腰をおろした。

('、`*川「私、てっきり一番最後かと思ったよ。あまりに荷物が重くって」

そういうペニサスの脇には、大きなスーツケースがあった。

( ,,゚Д゚)「いやお前、重かったっていってもゴロゴロ転がしてきたんだろ?」

('、`*川「バレた?」

そう言いながら、ペニサスはいたずらっ子のようなやんちゃな笑顔を見せた。

かすかに、星が見える。
太陽や雲なんかよりも、もっともっと奥深くで光っているような、かすかな光。

( ,,゚Д゚)「星だ」

('、`*川「きれいだね」

ギコがひとりごとのように何か呟くと、ペニサスはすかさず言葉を返してくれる。
それは、冬の夜、誰も知らない森に静かに降り積もる雪のように、深くやわらかな時間だった。



25 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 18:06:14.06 ID:cNcZMxKU0



ξ゚听)ξ「ここが、あたし達の家?」

ツンが、どさり、と乱暴に鞄を置いた。

ξ゚听)ξ「あたし、保健室より屋上の方が元気になれるんだけどな」

ぶつぶつ言いながらも、ツンは満足そうに床へと腰を下ろした。

( ゚∀゚)「俺、保健室なんて来た事ねぇ」

ジョルジュは、俺って健康優良児だからさ、などと冗談ぽくいいながら、ベッドへ飛びこんだ。

( ゚∀゚)「痛ぇっ! えっ、保健室のベッドってこんなに固いの!」

ペニサスとミセリは、もうここは私達の家ですからといった顔で、保健室内を物色しまくっていた。
まず手始めは冷蔵庫から。



26 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 18:08:10.70 ID:cNcZMxKU0

('、`*川「あ、やっぱなんにも入ってないんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「一応学校の備品だから……」

('、`*川「私一応飲み物とかは持ってきたんだ」

遠足のようなノリの会話を繰り返したのち、ベッドではしゃぐジョルジュを横目に他のベッドへと足を運ぶ。

ミセ*゚ー゚)リ「いくつあるんだろ」

( ゚∀゚)「三つだ! 三人は床で寝なきゃ」

('、`*川「やっぱここはオンナノコがベッドを使わせていただくべきよねぇ」

ペニサスがそう言いながら、ギコとフサギコへと向かってあやしく微笑んだ。


( ,,;゚Д゚)ミ,,;゚Д゚彡「……」




27 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 18:10:34.84 ID:cNcZMxKU0

――――


あれから、小さなからだに大きな鞄を抱えたミセリ、小物入れくらいのサイズの鞄で現れたジョルジュ、
そして、最後にフサギコ、というように全員が待ち合わせ場所に集まった。

ギコは事前に開いている窓を調べておいたと報告し、五人を生徒用中央トイレまで連れて行った。

ミ,,;゚Д゚彡(;゚∀゚)ミセ*;゚ー゚)リ('、`;*川ξ;゚听)ξ「えっよりによってココ?」

という五人の表情を完全に無視し、ギコは鞄を窓から投げ入れ、器用にからだを捻じ込ませた。
やはりトイレの窓は狭く、中学生男子のからだでは少し肩幅がきつかったが、根性でなんとかそれを乗りきった。

「早く来いよ」とトイレの中から顔を出すと、ちょうどツンが鞄を投げ入れる場面だったらしく、
ギコの顔に鞄が激突するトラブルもあった。

ξ゚听)ξ「あ、悪い」

( ,,#゚Д゚)「……」



29 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 18:12:50.32 ID:cNcZMxKU0

――……


そんなこんなで、ギコ達は、とりあえず保健室を「家」とした。

ベッドもあるし冷蔵庫もあるし、なによりクーラーがあることが決め手となった。


  ξ゚听)ξ「どっかの教室なんて絶対嫌! なんで休みなのに暑い思いしなきゃなんないのよ」


……ツンの発言にはなんともいえない権力がある。

ご飯などはいちいち家庭科室まで行って作る事になった。

  ξ゚听)ξ「しょうがないわね、こればっかりは。ていうか誰が作るんだろう」

  ( ゚∀゚)「女子だろ!」(当たり前のようにそう言ったジョルジュを、ツンが睨んだ)

銭湯の場所を、ミセリが持ってきた地図で確認し、六人はとりあえず一段落ついた。

濃いオレンジ色だった空は、もう黒いマントをかぶっていた。



30 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 18:15:15.79 ID:cNcZMxKU0

ξ゚听)ξ「……あのさ」

口火をきったのは、ツンだった。

ξ゚听)ξ「夏休みっていっても、先生たちはまぁ割と仕事してるわけじゃん。
    学習相談日とかもあるしさ。確か、日直の先生が、毎日日替わりで来るんだよね?」

ツンが確かめるように皆を見れば、ジョルジュが怯えたように頷く。

ξ゚听)ξ「だったらさ、そういう日直の先生が書いてある表とか、持っといたほうがいいんじゃない?
     そのほうが絶対動きやすいしさ。クックルの日は気をつけろ! みたいな。
     できたらどの部活がいつ活動するのかってやつも、ほしいな」

('、`*川「あっ部活のやつは特に必要かも。だって、ブラスバンド部とかいろんな教室使ってパート練習するじゃん?
     まぁまさか保健室使うことはないと思うけどさ……とにかく、ブラスバンド部は危険だよ」

ツンの言葉を受けとって、ペニサスがそう言った。


31 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 18:17:11.41 ID:cNcZMxKU0

( ゚∀゚)「じゃあ、取ってこようぜ」

早速立ちあがったジョルジュの尻を、フサギコがぱちんと叩いた。

ミ,,゚Д゚彡「ここで生活してるときは、そんな勝手に行動すんな。連帯責任なんだぜ」

(;゚∀゚)「あ、スマン」

ここで生活する。
この意味が、ギコのからだにじわじわと染み込んでいく。

自分の行動は、全て返ってくる。自分に、そして皆に。

ここで生活するということは、自分自身を自分自身が一番見つめなければいけないということだ。
授業よりも部活よりも、学校生活の中で学ばなければいけないことが、この生活に凝縮されている気がした。

( ,,゚Д゚)「今日はまだきっと、日直の先生がいるだろ。……あーでも時間的に微妙かもしれないな。
     三つ開けておいた鍵が一つしか開いてなかったってことは、もう鍵の見まわりは終わったんだよな。
     じゃあもう日直もいないか。それだと、職員室も入れないんじゃねぇか?」

('、`*川「なら明日でもよくない?」

そういうペニサスに、

ミ,,゚Д゚彡「いや、明日になったからといって職員室に侵入できるわけじゃねえよ」

と、フサギコは独り言のようにぶつぶつと呟く。


34 :◆Cc1bIwcvOk :2007/07/13(金) 18:20:18.38 ID:cNcZMxKU0

フサギコって案外、こういう場面ではリーダーに向いているのかもしれない、とギコは感じた。


なんとなく、頼れる。

なんとなく、信じられる。


そういう「なんとなく」なオーラが、フサギコには漂っている。
これはきっと、本人も気付いていない微妙な匙加減によるものなのだろう。

ミセ*゚ー゚)リ「……あのさ」

また、暗闇に蝕まれつつあった雰囲気を救ったのは、ミセリの幼い声だった。

ミセ*゚ー゚)リ「印刷室とかに残ってるかもしれないよ。だって、先生達全員に配るじゃん、日直や部活の表なんかは。
      てことは、印刷だってもちろんするよね……。
      だから、印刷のときに失敗したやつとか、捨ててあるかもしれないよ」

ミ,,゚Д゚彡「……それだ!」

フサギコが顔を上げ、指をパチン、と鳴らしながら言った。




――続



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