◆gMIGdyOjeA <><>2011/11/12(土) 19:04:49.45 ID:Jb2oj2pJ0<>

一言だけ言わせてください。

すいませんでした。





歴史 + ファンタジー 存分にお楽しみください。 <>ξ゚听)ξ 不可思議姫幻想記のようです 【月天封印】 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:06:56.31 ID:Jb2oj2pJ0<>

江戸より遠く離れた奥羽の地。
そこで一人の赤子が生まれた。

神の血筋として生まれたはずのその子は、悪魔と罵られることとなる。
生まれると同時に、傍にいた多くの人間の命を奪ったのだから。
小さな産声は誰の耳にも届かない。

赤く、ただひたすらに赤く、世界を染め上げる。

その時を知る村人はいない。
ただただ、事実だけが歴史書に記されることとなる。



――――火の中より赤子生まれ出でたる、と。




ξ゚听)ξ 不可思議姫幻想記のようです

       フカシギヒメ  ゲンソウキ


        【月ノ封印】


初幕────朔 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:09:13.27 ID:Jb2oj2pJ0<>

ξ゚听)ξ「退屈ねぇ」

広大な部屋に一人寝転がる幼い少女。
齢は十と少しぐらいだろうか。
着物の隙間から見える肌は白く、顔立ちは整っている。
町を歩けば、誰もが彼女に目を奪われるだろう。


生まれながらに彼女が持つ、雪ような真っ白い髪に。

ξ゚听)ξ「空姉様の書物でも読みなおそうか……」

実際には彼女が町人に見られることはない。
それは彼女が暇を持て余しているのと同じ理由である。

すなわち、白昼外出禁止。

彼女の父親は、そのあまりに特異な容姿が人目につくことを禁じた。
それだけにとどまらず、彼女の住処は奥羽のそのまた奥地。
小さな村から遠く離れた場所におかれた。


ξ゚听)ξ「内藤!」

( ^ω^)「はいお、なんでしょうかお?」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:11:20.23 ID:Jb2oj2pJ0<>
呼ばれて部屋に入ってくるのは、少し太めの男。
内藤は少女の世話役を任されている。

ξ゚听)ξ「まだ読んでない書をここに持ってきてちょうだい」

( ^ω^)「少々お待ちくださいお」

彼が向かうのは家から出れない少女のために、その姉が用意した膨大な量の書物を保管する部屋。
既読、未読だけではなく、少女のお気に入りやそうでないものと種類ごとに丁寧に整頓されてある。

( ^ω^)「お待たせしましたお」

ξ゚听)ξ「それから、空姉にこの前の続きを送ってもらうように頼んでおいて」

( ^ω^)「かしこまりましたお。それでは失礼しますお」

本を手に取り、寝そべって読む。
内藤がいくらはしたないと注意しても、その癖はなおっていなかった。

ξ゚ー゚)ξ「相変わらず、この物語は面白いわ。
      この中の世界に行けたらいいのに…」

ぱたぱた、と両の足を交互に動かす。
御伽の世界を歩くように。

ξ゚听)ξ「そうだっ! 内藤!内藤!」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:13:24.18 ID:Jb2oj2pJ0<>
便りを送る準備をしていた内藤は、その名が呼ばれるのを聞いてすぐに引き返す。
彼女のもとへ向かうのが遅くなればなるほど、その機嫌を損なわせてしまうためだ。

( ^ω^)「お呼びしましたでしょうかお」

この青年、我儘な姫様の世話をし続けて三年になる。
そうともなれば、何度も何度も呼びだされることにも慣れていた。

ξ゚听)ξ「内藤、今夜は旅行に向かいます」

( ^ω^)「旅行……ですかお。
      しかし、姫様に何かありましては困りますお」

ξ゚听)ξ「夜であれば、出掛けるのは構わないはずよ」

( ^ω^)「確かにその通りですお。ですが、どこに向かわれるのですかお?
      日が昇るまでには戻らないとなりませんお」

ξ゚听)ξ「近くに面白いところはないかしら?」

( ^ω^)「そうですおね……。変わった樹が、近くの山の麓にありますお。
      なんでも、二人の人が両の掌を合わせているように見えるそうです」

ξ゚ー゚)ξ「面白そうね。では、そこに連れて行きなさい」

( ^ω^)「わかりましたお。それでは今日の夜、向かいましょうお。
      それでは失礼しますお」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:13:56.16 ID:0fGnVpBQ0<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:15:29.15 ID:Jb2oj2pJ0<>
部屋を退出し、便りを書きはじめる。

( ´ω`)(空姫様には申し訳ないお……)

筆をとり、慣れた手つきで文章を書いていく。


空姫様

突然の便り、大変申し訳ございません。
姫様が次の書をお望みになられましたお。
どうか、可能な限り早く送っていただきたいですお。
お手数をおかけします。

雪姫様の使いの者より


手紙に失礼がないか確認してから、折りたたむ。
今回はどの位で届くだろうか、などと考え思わず身震いする。
以前、送られてくる途中で事故が起きたせいで、ひと月が経過してしまったことがあった。
その時の彼女の怒り様は表現するのも恐ろしいほどであった。

( ^ω^)「稚、いるかお?」

( <●><●>)「ここに」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:16:20.03 ID:tmCjyrlF0<> なんか前にも見たタイトルだな
リテイクなのか <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:17:36.87 ID:Jb2oj2pJ0<>
天井から顔をのぞかせるのは、内藤の使い。
特徴的な瞳を除いて、全身を隈なく黒い布で覆っている。
この時代になっても生き延びている数少ない使者である彼は、
内藤と空姫の手紙のやり取りや、情報の伝達などを行っていた。

( ^ω^)「これを空姫様に届けるお」

( <●><●>)「直ぐに」

男は手紙を掴むと、そのまま屋根裏に消えた。

( ^ω^)「まぁ、空姫様なら何とかしてくださるだろうお」

青年は机の上を片付け、別の紙を支度する。
筆に墨をつけ直し、すらすらと流れるように描かれるのは少女。

指先に蝶々を留めてほほ笑んでいる柔らかい表情が、
黒の濃淡だけでうまく表現されている。

( ^ω^)(昔は純真無垢な少女だったのにお……)

年々我儘に、高慢になっていくのが青年の唯一といっていい悩みだった。
とはいえ、教育を施しているのは内藤なのである。
誰に文句を言う筋合いもない。

( ^ω^)(うまくかけたお)

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:20:09.84 ID:Jb2oj2pJ0<>
青年の趣味の一つは絵を描くこと。
権力闘争には全く興味を持たず、
そういったしがらみから解放されることを望んだために、現在の立ち位置にいる。
任を与えられ、奥羽の地を踏んだ時、本人はむしろ自由な時間が増えたと喜んでいた。
実際には我儘姫のおかげで自分の時間をほとんどとれてはいないのだが。

( ^ω^)「さて、お昼御飯でも作るお」

絵を大切に仕舞い、硯と筆を片づける。
料理などの家事は全て内藤の仕事だ。

味噌をとかし、野草を煮、ほぐした魚の身を入れる。
次に干し肉に軽く火を通し、皿に盛って米と一緒に漬物を添える。
これを我儘なお姫様の元に運んで昼食は終わりだ。

( ^ω^)(だいぶ料理もうまくなったもんだお)

初めて料理を運んだ時、一口食べた後に器ごと投げつけられたことを思い出す。
それからニ三か月、味付けに関して文句を言われ続けた。

( ^ω^)「お昼御飯をお持ちしましたお」

ξ゚听)ξ「入って」

( ^ω^)「なっ…!」



<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:22:10.75 ID:Jb2oj2pJ0<>
襖を開け、愕然とする内藤。
少女は丁度服を着替えている途中であった。
足元には多くの服が束ねられ山のようになっている。

ξ゚听)ξ「あ、そこに置いといて」

( ^ω^)「お……言ってくだされば外に置いときましたお。
      ……失礼しますお」

軽い音を立てて襖が閉じられた。
少女は着替えを終え、食事に手をつける。

ξ゚听)ξ「怒らなくっても……」

( ^ω^)(立場を理解してほしいお……)

いまだに自己主張している心臓に手を当てて、調理場に戻る。
自分用に作った食事を平らげ、片づけを終わらせた。

( ^ω^)「今日は、これで終わりっと」

ξ゚听)ξ「作業は終わった?」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:24:14.94 ID:Jb2oj2pJ0<>
調理場にふらりと現れた姫の手に握られているのは賽。
次に何をすればいいかは、聞かずともわかる。

( ^ω^)「終わりましお。双六ですおね?」

内心、早く書物の続きが来ないかと待ちわびる内藤であった。
姫の双六の相手は普通にやるのでは勤まらない。

負けすぎても、勝ちすぎても機嫌を損ねるからだ。
賽の目を操れというのか、と毎回思わされる。

ξ゚听)ξ「では、今日は私の番から」

( ^ω^)「はいお」

白く細い腕から賽が零れる。
ただ、それだけの動作のはずなのだが、酷く儚い。

交互に賽を振り駒を進める。
しばらくして、少女の動かす駒が先に盤の終わりにたどり着く。


ξ゚听)ξ「では、今日は私の番から」

( ^ω^)「はいお」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:26:43.95 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚ー゚)ξ「……勝った!」

( ^ω^)「参りましたお」

どうやら最も望ましい結果に終わったようだ。
姫君は満面の笑みを浮かべている。
それを見て、まぁいいか、そう思ってしまう内藤であった。


( ^ω^)「ふぅ……」


すべき仕事を終わらせ、自室に戻り机に向かう。
机の上に地図を広げ、今夜の小旅行の旅路を考える。

( ^ω^)(夜中とは言え、村人に見つからないようにしないとならんお)

複数の道筋を検討し、最も有効な道を絞り込んでいく。
彼らが住む屋敷は町からは離れたところにある。
それ故に普段から外に人が見えることは少ない。
しかし、少女の姿は絶対に見られてはならない、と内藤は命ぜられていた。

( ^ω^)(この道がいいお……)

別の紙に、道の目印となるものを書き写す。


<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:26:45.76 ID:0fGnVpBQ0<> さらに支援
おもしろい <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:28:46.70 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「さて、馬に餌でも与えに行くかお」

有事の際に困るため、屋敷では一頭の馬を飼っていた。
この馬の世話も全て内藤が一人で行っている。

( ^ω^)「よしよし。お前には普段あんまり走らせてやれなくてすまないお。
      でも今日はきっと走れるから楽しみに待っててくれお」

身分の違う二人で暮らしている内藤は、いつしかこの馬が話し相手となっていた。
そのほとんどは愚痴であったが。
馬の臭いを嫌って、厩舎から最も離れたところに姫の部屋あるため、未だにばれていない。

( ^ω^)「しっかり食っといてくれお」

厩舎を後にし、自らの部屋に戻る。
ぼうっと窓の外を眺めていると、日がゆっくりと沈んでいく。

気づかない間に寝てしまった内藤は、夜の帳が下りると同時に、蹴り起こされることとなった。

ξ゚听)ξ「いい? 私が呼んだらすぐ来ること」

( ´ω`)「大変申し訳ありませんお」

既に何回目かわからない謝罪を口にする。
最初は烈火の如く怒っていた少女だが、夜中に出歩くことでその熱を奪われていった。

今では空を見上げながら、思い出したかのように口に出すだけであった。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:28:54.58 ID:XXFDFKae0<> なんという臭いタイトル
だが支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:29:04.55 ID:O6mfWd240<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:30:53.68 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚听)ξ「きれい……」

( ^ω^)「姫様、もうすぐ着きますお」

手綱を引き、馬の歩みを止める。
内藤は明かりをつけ、木に向けてかざす。
一本の木のはずであるそれは、根元から二つに枝分かれし、
噂どおりの大樹となっていた。

ξ゚听)ξ「すごい……本当に手を合わせているように見える」

( ^ω^)「これはこのあたりでは有名な大樹ですお。
      村人たちは再会の大樹と呼んでいます。
      二人の男女でこの大樹に祈ると、何かがあって別れてしまっても、
      必ずいつかこの木の下で会える、そういう伝説がありますお」

ξ゚ー゚)ξ「そうなの? じゃあ、内藤と祈ってみようかな。せっかくだからやってみないとつまらないし」

( ^ω^)「姫様、私のような身」

ξ゚听)ξ「ただの噂話でしょ。いいからさっさと来なさい」

言葉を遮って差し出された手を恭しく握る内藤。
その行為にため息をつきつつも、少女は残された手を大樹に預け瞼を閉じる。
少しの沈黙があり、手の温もりが消えた。

ξ゚听)ξ「もう帰るわよ。眠くなってきたし」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:33:01.36 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「わかりましたお」

来た道をそのまま辿って屋敷へ戻った。
ついた時には少女は寝息を立てており、起こさないように寝室まで運んだ後、自らも眠りに落ちた。



━━━━━━━━── →← ──━━━━━━━━


( ^ω^)「何の騒ぎだお……」

朝起きた内藤の耳に飛び込んだのは、町の方から聞こえる喧騒。
そして、怒気と怯えを孕んだ少女の声。

ξ゚听)ξ「内藤! 起きなさい内藤!」

( ^ω^)「申し訳ありません姫様」

ξ゚听)ξ「やっと起きたのね。内藤、外の様子を見てきなさい」

( ^ω^)「はい、お任せください」

安心させるように、できるだけ優しく話しかける青年。
家を出て、町の方へ向かう。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:36:26.50 ID:Jb2oj2pJ0<>
少し歩いて、原因はすぐに分かった。
町の一角から火の手が上がっており、
日の光を遮るように、黒い煙が激しくうねり立ち上っている。
幸いにして、この町は家と家の間が広く、隣の家に燃えうつることはなさそうだった。

( ^ω^)「……可哀そうにお」

少女の暮らす家に実害がないだろうことを確認すると、
背を向けその場を後にした。

すぐに、少女の部屋の前まで行き、起きていたことを話す。

( ^ω^)「ということですお。こちらに被害はなさそうなので放っておきましたお」

ξ゚听)ξ「……そう、ありがとう」

震えている少女をその手で包み込むことは許されていない。
扉越しに、ただ見守ることしかできない。

( ^ω^)「失礼しますお」

扉の前を去り、部屋に戻る。
朝飯を作るにはまだ早い時間だからだ。

( <●><●>)「緊急です」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:38:02.48 ID:yURATple0<> つまんね <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:38:10.52 ID:RlmRRvCB0<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:38:39.15 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「どうしたんだお?」

天井から声が聞こえた。気のせいか、少し早口で。

( <●><●>)「先程届きました、空姫様の便りにてございます」

( ^ω^)「これは……」

高貴な身分の者だけが使うことを許される、特別な手紙。
どんな連絡手段よりも早く、確実で、緊急時にしか使われないはずの物。

書いてあることを確認し、内藤の顔色は一瞬にして変わる。
手紙には一言だけしか書かれていなかった。



  今すぐ逃げろ

       空姫



(; ^ω^)「稚、ここを任せるお!」

内藤に普段の温厚な様子はすでにない。
手紙を掴んだまま、部屋を勢いよく飛び出した。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2011/11/12(土) 19:38:58.12 ID:nCRZrHQ20<> 追い付いた
おもしれぇ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:41:00.48 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「姫様!」

ξ゚听)ξ「ん? どうしたの?」

( ^ω^)「中、よろしいですかお?」

内藤から部屋の中に、といったのはこれが初めてになる。
今まではある程度の距離を保ち、つかず離れずを常に意識していたからだ。

ξ゚听)ξ「別にいいけれど」

( ^ω^)「失礼しますお。今、空姫様からの手紙が参りましたお」

許可をもらうとすぐに障子戸を開け、
その手紙を少女に差し出した。

ξ゚听)ξ「これ……は?」

少女の疑問は当然だろう。
手紙には立った一言しか書かれていない。
詳しい説明を求めるように内藤を見た。

(; ^ω^)「私にもわかりません。が、空姫様が嘘をお吐きになるとは思えません。
      ここを逃げましょう。お連れいたします」

ξ゚听)ξ「でも……」

少女は自分の周りにある物に目を移らせる。
歴史に残るであろう、数々の名品。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2011/11/12(土) 19:41:40.07 ID:2xtmst310<> しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:43:11.17 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「姫様!」

語気荒く、判断を促す。
緊急の手紙、ということは時間がないはずなのだ。
何が起きるのかは想像もつかないが、それが良くないことであるのは間違いない。

ξ゚听)ξ「……わかった。連れて行きなさい、内藤」

決心したように、強い眼差しを青年に向ける。

( ^ω^)「かしこまりました。昼間は目立ちますので、これを」

内藤は仕舞ってあった大きな布を取り出し、少女に差し出した。
それを頭から被ることで、少女が少女である証を隠す。

ξ゚听)ξ「どこに行くの?」

( ^ω^)「奥羽の西の方、山を越えてその先に隠れ家を用意しております」

ξ゚听)ξ「わかった」

では、と内藤が先導して家を出る。
すぐ後ろを少女が続く。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:45:19.05 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「失礼しますお」

少女の手を取り、厩舎にいる馬に乗せる。
自身も馬に飛び乗り手綱を掴んだ。

ξ゚听)ξ「どのくらいでつくの?」

( ^ω^)「私も頭に場所を叩きこんでいるだけで、正確な時間などはわかりません。
      ですが、さほど長い旅にはならないはずです」

食料も僅かではあるが用意してある。

( ^ω^)「稚……助かったお」

青年が馬の腹をけり、二人は家を後にした。
その様子を家の中から見守る男が一人。

( <●><●>)「無事逃げ切ってください……」


町はずれに立つ少し大きな家からは、
他所の火事の黒い煙とは対照的な、白い煙が空に伸びる。
いつも定刻にあがる煙は、今日だけ異なる意味を持つ。

二人が出発してから、数刻もたたず、
誰も訪れる者のなかったその家に、最初で最後の客が来た。

/ (% )/「失礼しますよ」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:47:32.71 ID:Jb2oj2pJ0<>
家を訪ねてきたのは数人。
格好は町人のそれとはかけ離れている。
全員が全身を覆う黒い布と、特徴的な面つけていた。
黒装束は返事がないとわかると、扉を蹴破り中に入る。

/ (% )/「もぬけの殻ですか……どこから情報が漏れたのでしょうかねぇ」

他と異なる奇妙な面をつけた人間は、どこか余裕を漂わせ呟く。

([◎])「っ!!」

甲高い金属音が鳴る。
突如現れた、同じく黒い布に身を包んだ男の攻撃を、
仮面を守るように後ろから飛び出した細身の男が防いだ。

/ (% )/「早いですね……」

呑気にその攻撃の感想を口に出す。
余裕の表れは人数差からだろうか。

([◎])「ここは俺が……」

/ (% )/「それなら、毒男に任せよう。ここはもぬけの殻だ! まだ遠くには逃げていまい!
      辺りをしらみつぶしに探せ!」

そう叫ぶと、ドクオと呼ばれた男を残し、他の黒装束は部屋を後にした。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:49:36.21 ID:Jb2oj2pJ0<>
( <●><●>)「なかなかの腕……」

([◎])「ふん、悪いな。お前に恨みはないが……眠ってもらうぞ!」

競り合う刀をドクオが引く。
もう一人の男もそれに応え、互いに距離を置き様子を見る。

先に動いたのは家の中にいた稚。
刀を納め、懐から複数の短刀を取り出す。
繰り出した動作は投擲。

([◎])「っらぁ!」

声と共に、鎖で繋がれた短刀を力を込めて弾く。
同時に襲いかかる刃は全てはじかれ、あらぬ方向へ突きささる。

([◎])「面白い武器だ……。お前はまさか……」

( <●><●>)「随分と余裕をお持ちのようですが、これで終わりです」

男は手元の鎖を操作し、その先の凶器を操る。
一度は壁に刺さった短刀は、鎖に引き寄せられ、背後から痩身の男を狙う。

([◎])「残念だったな」

が、すでにそこには毒男はおらず、その拳が腹部にめり込んでいた。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:51:45.89 ID:s/bCl1g80<> タイトル恥ずかしいしアクションシーン説明的だしちょっと微妙 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:52:31.41 ID:Jb2oj2pJ0<>
( <●><●>)「があっ!!」

意識を失い、稚はそのまま崩れ落ちる。
それを確認すると、火のついた薪を竈から取り出し、そこら中にばらまいた。
火は簡単に燃え移り、貴重な品々を喰らい大きく育つ。


([◎])「さて、戻るか」

毒男と呼ばれた男は真っ赤に燃える家を後にした。


━━━━━━━━── →← ──━━━━━━━━



( ^ω^)「姫様、大丈夫ですか?」

平坦な道を走ってはいても、慣れない者が馬に乗れば疲れるのが道理。
家を逃げ出してから既に数刻が過ぎていた。


ξ゚听)ξ「ええ」

先程から何度も同じことを尋ねているが、返ってくるのは決まってこの言葉であった。
内藤は馬の速度を緩め、歩かせる。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:55:00.33 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「この辺りで休みましょうお」

ξ゚听)ξ「私は大丈夫だって」

姫が強情なのは十分承知している内藤。
数年も一緒に暮していれば、相手がどんな状態かだいたいわかるものだ。

( ^ω^)「いえ、申し訳ございません。私が疲れてしまいましたので」

そう言い、半ば無理やり休憩をとった。
少女は木陰まで歩いて行き、座って空を見上げている。

日は高く上っているが、まだ肌寒い季節。
いつの間にか舟を漕いでいる少女に上から毛布を被せると、
内藤は馬にわずかな食事を与える。
移動中に食事を摂った少女と違い、馬は走りながら食べることができない。

( ^ω^)(向こうはどうなってるんだお? 人は住めるのかお?)

何もしていない時間は頭を働かす。
日常が失われた原因を考える。

しかし、それは始めて間もなく邪魔が入る。
青年の目視できるギリギリのところで、砂煙が上がっていた。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:57:04.47 ID:Jb2oj2pJ0<>
それは決して自然にできたものではなく……

( ^ω^)「姫様! 申し訳ございません」

少女の肩を強く揺すり、夢の中から連れ出す。

ξ゚听)ξ「ん……どうしたの?」

( ^ω^)「敵のような姿が見えました。場所を移します」

ξ゚听)ξ「わかった」

馬に乗り、全速力で駆ける。
内藤達の動きに気付いたのだろうか、移動速度が確実に上がっていた。

少女とはいえ二人を乗せているのため、明らかに速度が下回っている。
長距離戦になればいつか追いつかれてしまう。
そう考えた内藤は、咄嗟に右手に見える森の中へ駆ける。

( ^ω^)「山の麓の森の中に行きますお」

ξ゚听)ξ「大丈夫なの?」

心配そうに後ろの青年を見上げる。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 19:59:25.41 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「任せてくださいお」

夜中を山で過ごすことは避けたかったが、こうなってしまえば森で追手を巻くしかない。
そう冷静に頭の中で計算し、逃げる算段を付ける。

( ^ω^)「頑張ってくれお」

手綱を引きながら、優しく馬に声をかける。

ξ゚听)ξ「だいぶ近づいてきてる!」

少女の言葉で後ろを振り向くと、数人の黒装束がはっきりと見えた。

(; ^ω^)「間に合えおっ……」

目の前には広大な森林が広がっている。
どれだけ早く中に入るか、それが捕まらないために重要なのだ。

ξ゚听)ξ「がんばって」

しっかりと馬にしがみつきながら、小さな声を絞り出す。
それに応えるかのように、馬は速度を上げ、一気に森に突入した。
内藤の操る馬は木々の間を縫うように駆ける。

黒装束達も森の中に入ってきているようだが、生い茂る木々に苦戦しているのだろうか、差が開いていく。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:01:44.37 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「よくやってくれたお」

姿が見えなくなってから、少しの間走り続ける。

ξ゚听)ξ「もう大丈夫?」

( ^ω^)「おそらく、ですが」

辺りを警戒しながら、馬から降りた。

ξ゚听)ξ「そう、それなら少し休むね」

( ^ω^)「どうぞごゆっくりお休みください。私が見張っていますから」

家の高価な寝床で寝ていた少女が、こんなところでも寝れるのだから、
相当に疲れていたのだろう。

森の中は自然の音に満ちている。
鳥の囀り。
木の葉の音

それらは疲れを癒し、気持ちをほぐしてくれる。

( ^ω^)(あいつらは何者だお……?)

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:03:55.87 ID:Jb2oj2pJ0<>
突如現れた黒装束。
その目的が全くわからない。

( ^ω^)「必ず、守りますお」

少女を見つめながら、決心を固める。

( ^ω^)(空姫様はどうして気づけたんだお……?)

ξ゚听)ξ「んん…空ねぇ……」

そんな内藤の思いも知らず、少女は夢の中。
仲の良い姉といっしょに遊んでいるのかもしれない。

( ^ω^)「二三日後には……山向こうの家につける筈だお
      道中で食料を手に入れないと…」

逃げだすにあたって所持してきたのは細かな金貨とわずかな食糧。
隠れ家に着くまでに無くなってしまうことは誰の目にも明らかであった。

( ^ω^)「!!」

遠くに聞こえる足音と声に気付いた。
それは刻一刻と近づいてくる。

(; ^ω^)「まずいお……」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:06:32.98 ID:Jb2oj2pJ0<>
何やら言い合っているような複数の声が聞こえる。
内容を聞かずとも、黒装束であることは間違いない。
声の種類から、敵は三人だと確信する。

「一体どのにいるのか、このようなところでは見つけることも出来ん」

「黙って探せ」

「なぜあのような少女を狙う?」

「もう少し掟を読めばどうだ……。あの力は我々だけがもてばよいのだ」

力…?

( ^ω^)(何を言ってるんだお……)

内藤の頭の中を疑問が埋めていく。
入れ替わり立ち替わり現れる予想と仮定。

ξ゚听)ξ「ねぇ…逃げないの?」

姫が起きていたことに驚きながら、小声で答える。

( ^ω^)「近すぎるんですお。馬の走る音ですぐにばれてしまいますお」

ξ゚听)ξ「そう……」

「ここだ! 馬の足跡がある」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:08:01.25 ID:RlmRRvCB0<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:08:42.44 ID:Jb2oj2pJ0<>
「向きは!」

「向こうだ……」

茂みの奥で男がこちらを指差している。
それを理解し、咄嗟に少女を抱きあげる。

( ^ω^)「まずいお! 失礼します」

ξ;゚听)ξ「きゃっ」

もはや見つかるのも時間の問題であった。
内藤は、思い切って行動に移す。
少女を抱き、馬に乗せ手綱を引く。

突然のことに驚いて少女が声を出してしまう。

「声が聞こえたぞ!」

「こっちだ! 追え!」

(#^ω^)「走れお! 走れ!」

敵の姿は見えないが、真後ろに迫っているのがわかる。
少しでも気を緩めてしまうと、すぐに追いつかれてしまうだろうことは容易に想像できた。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:09:21.22 ID:qrNfmVvUO<> しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:10:59.01 ID:xBfXkSVL0<> オナニー小説のくせに地の文も下手糞、駄作乙 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:11:04.45 ID:Jb2oj2pJ0<>
「まわれ! まわれ!」

後ろから聞こえる音が小さくなった。
先回りする部隊を作って挟み打ちをする気に違いない。
手綱を握る手に冷や汗が流れ続ける。

( ^ω^)「!!」

森の木が途切れたところで、黒装束と目が合った。
横道にそれようと急停止したことで、後ろの集団に追いつかれてしまう。

「残念だったな」

「その姫を渡してもらおうか」

黒装束が一歩歩くごとに、二人を囲う輪は少しずつ狭まる。
内藤は馬を降り、その刀を抜く。

( ^ω^)「くっ……」

「それは飾りではなかったか。だが、殺して骸を持って帰ってもかまわんのだ」

ξ゚听)ξ「あなたたち、私に一体何の用?」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:13:20.86 ID:yURATple0<> AA荒らしはもう来ないのか? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:14:48.68 ID:Jb2oj2pJ0<>
少女の声は震えているのがはっきりとわかる。
武装し、今まで見たこともない奇妙な装束を身に付けた、誰ともわからない人間達に囲まれているのだ。
それも当然のことだった。

「お前は知らなくていいことだ」

( ^ω^)「させないお!」

「死にたいようだな……」

ξ゚听)ξ「内藤!」

( ^ω^)「雪姫様、落ち着いてくださいお。大丈夫ですお」

一度だけ振り向き、その愛想良い笑顔を向ける。
そして厳しい顔で数人の敵を睨む。

「覚悟はあるようだな」

( ^ω^)「覚悟するのはお前たちだお!」

馬から飛び降りた少女が必死に内藤の後ろに隠れる。
今にも泣きそうな顔で青年の服をつかむ。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:16:06.11 ID:xBfXkSVL0<> >>44
来て欲しいのか? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:17:08.56 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「姫様。ご安心ください。必ず」


「…ひめ………あら…たな」

決死の特攻をするために、大地を強く踏み締めた瞬間、
骨に響くような振動と共に、何かが響き渡った。
そして地響きとともに大地が揺れ……

「地震かっ!」

「うわっ!」

口を開けた。

ξ;゚听)ξ「きゃああああああ」

(; ゚ω゚)「おおおおおおおおっ」

その真上にいた二人は、なすすべもなく落下する。


「どうする」

「底が見えんな……。確認してこい。生きていて逃げられると面倒なことになる」

地面に開いた底の見えない穴を覗き込む男達。
穴の周りに黒装束達は取り残される。
膝をつき中を覗いている者もいるが、僅かにも見えはしない。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:19:31.16 ID:Jb2oj2pJ0<>
「冗談を……」

「行け! これは報告をする必要がありそうだ」

「……。行くぞ、命令だ」

数人が無言で飛び降り、最後まで抵抗していた一人は、引きずり落とされた。

一人残った黒装束は馬にまたがり、走り去って行く。
木々が生い茂る森の中、その異質な穴は存在していた。



( ^ω^)「っ……姫様! 姫様!」

ξ゚听)ξ「内藤、ここよ」

どこから落ちてきたのかを確認するために見上げると光は遥か頭上、
小さな米粒のようになっている。
何とか目の前が見える程度の明りが、そこから漏れてきていた。

( ^ω^)「私たちはあそこから落ちてきたのですおね……」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:22:17.81 ID:2G/LC4R80<> おう リメイク?ただの投下しなおし?

とりあえず支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:22:42.86 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚听)ξ「ここの土、かなり水を吸ってて柔らかいから」

( ^ω^)「落下の途中、木の枝みたいなものによって勢いを殺されたおかげでもありそうですお。
      姫様、お怪我はありませんか!?」

ξ゚听)ξ「私は大丈夫。内藤は?」

心配しているつもりが、逆に心配そうに覗きこまれていることに気づく内藤。
体を起してみると、傍に座っている少女よりも目線が高くなる。

( ^ω^)「大丈夫だと思いますお」

よくよく見ればきれいな着物は泥で覆われていて、
美しい白い髪さえも半分以上が黒く染まってしまっていた。

それから、自分も泥まみれだと気がつく。

( ^ω^)「周りが全く見えませんおね」

ξ゚听)ξ「うん……」

泥の水分を吸った服が体を冷やしているのだろう。
少女は小さく震えていた。

( ^ω^)「大丈夫ですお」

自らの着物を少女に被せ、立ち上がる。
足元は柔らかく、体重をかけると沈んでいくので、酷く歩きにくい。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:24:20.05 ID:xBfXkSVL0<> つまんね <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:26:04.12 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「少し周りを見てきますお」

ξ゚听)ξ「待って……ちょっと離れたらお互いどこにいるかわからなっちゃう」

( ^ω^)「そうですが……」


「ああああああああああ」


叫び声と物体がぶつかる音が数度。


「どこにいる! 出てこい……」

それが黒装束だと理解するまで時間はかからない。
泥を跳ね上げながら歩く音と風を切る音が空間に響く。
相当に歩きにくい地面であり、悪態をつきながら剣を振りまわしているのだろう。

内藤と少女は見つからないよう静かに、息を殺すことしかできなかった。
肌に感じる滑った泥の不快感に苛まれながら、じっと動かない。

複数の足音だけが断続的に繰り返される。
暗闇の中で動いているのは足音の主達だけのはずであった。

ξ゚听)ξ「なにか……いる」

( ^ω^)「どうされたのですかお?」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:26:40.84 ID:2G/LC4R80<> 支援しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:28:41.07 ID:Jb2oj2pJ0<>
少女が何かの存在に怯え出すが、周りを見回しても何の変化もない。
そもそも、暗くてほとんど何も見えない状況で、どうやってその存在に気づくのか。
しかし次の瞬間、内藤はその存在を理解した。


「……の魂よ……我は………ぬ」


闇の中から重みを持った声が響く。
全ての悪意を飲み込んだかのようなそれは、
体の骨の髄まで蝕んでいるのではないか、とさえ思わされる。
身の毛がよだつとは、まさにこのことを言うのだろう。

ξ;゚听)ξ(何……?)


「……ぬ。……ぬ」

その声を発している"何か"は暗闇の中、確実にこちらを見ている、脳が逃げろと叫ぶ。
だが、それに反して体は重く動かない。


地鳴りと共に、沼地が渦を描いて動き出す。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:30:30.09 ID:CsfrU7tZ0<> しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:32:52.10 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚听)ξ「!?」

( ^ω^)「っお!?」

二人の体は中心へと引きこまれていく。
捕まる物など近くには何もなく、為す術もなく中心へ流されていく。

「うあ、何だ何だ?!!」
「ひぃぃぃ!」


そして、それはその場にいた黒装束をも巻き込む。
より中心に近かった彼らは次々と泥に飲み込まれ、二度と出てくることはなかった。




「地底のさらに底に眠れ。侵入者達よ。
 地底のさらに底にに眠れ、……めよ」

内藤達も既に体の半分以上が泥沼に飲み込まれている。

(  ゚ω゚)「うあああああああ!」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:35:20.55 ID:Jb2oj2pJ0<>
「……ぬ」「あー」「助け…」「……」「ああああ」「……さぬ」

何十何百もの口が様々なうめき声を上げる。
新たな犠牲者を祝福するかのように。

ξ゚听)ξ「嫌……いや…」

胸まで飲み込まれるてしまう。
口と鼻がふさがり呼吸ができなくなるまで、もはや後僅か。


ξ;凵G)ξ「やめてええええええええええええええええええええええええ」

( ^ω^)「!?」

少女の叫びに呼応して現れたのは光。
それはただの光ではなく、一瞬にして地下の暗闇を真っ赤に染めあげる。

輝く炎とでも表現すればいいのか。

火の粉までもが消え去る直前まで光を放っている。
それが、まるで形を持っているかのように少女を包み、泥に埋まった体を持ち上げた。

そして蛇のように伸びてきた炎は内藤を包み込もうとする。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:35:29.67 ID:2G/LC4R80<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:36:30.78 ID:qrNfmVvUO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:37:30.38 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「おおおおお!??」

身の危険を察知して避けようとするが、半分以上泥沼に埋まっていては身動きが取れようはずもない。
そして内藤にたどり着いた燃え盛る炎は、少女と同じように中空に引っ張り上げる。

( ^ω^)「熱くないお……?」

ξ;゚听)ξ「何……これ……」

二人は想像の範疇から外れた光景に戸惑う。
そして、目をあげるとそこには、迸る明るい炎が照らし出された大樹があった。
異様なのは、その大きさだけではなく、その幹に何百何千もの醜い顔の文様が浮かんでいること。
絵巻にある地獄に来たのかと、少女は恐れた。
何千何万の人の怨念のようだと、内藤は震えた。

それは、地下の空間を支えているかのように、立ち聳えている。

「た、助かった……」

「はぁ、はぁ……」

輝く炎が出現したせいなのか、泥の渦は止まっていた。
地面に埋まってはいるが、存命を喜んでいるわずかに残った黒装束達を、
急激に成長していく大樹の枝が包み込む。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:37:59.10 ID:UKt0lj+F0<> ツーちゃんまだ? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:40:42.63 ID:Jb2oj2pJ0<>

「力をよこせ……」

「あああああああああああああああああああああああ」

この世のものとは思えない絶叫が響く。
枝に包まれた黒装束達は、数秒で物言わぬ屍となった。
木乃伊と化した屍は打ち捨てらる。

「・・・・・・め。おおおお……」

眼球のような光が二つ、こちらを捉えた。
成長し続ける枝は少女と内藤にも迫る。

ξ;凵G)ξ「いやあああああああああああああああ」

悲鳴と同時に炎がその質量を増し、全ての枝を飲み込んだ。
それだけにとどまらず、勢いを上げ炎は大樹を嬲るように包み込んでいく。
光が収まった時には、辺り一面に焼け野原であった。



「貴様!やはり……やはり……!!!」

木が焦げる臭いが広がり、悲痛な叫び声は先細りして消えていく。

「……ひめか」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:41:25.70 ID:yURATple0<> >>46
どうせすいとんされて来れないんだろ
バーカ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:44:09.36 ID:Jb2oj2pJ0<>
数分で炎は収まり、真っ黒に炭化した燃えかすと、
腕の長さぐらいの光輝く美しい枝だけがその場に残った。

水分がとび、泥は固まり地面がおちつく。大樹が燃え尽きたせいで
天井は崩れ始め、静かな月の光が差し込んでいた。

( ^ω^)「姫様!」

身に纏った炎がゆっくりと沈静化し、落下する少女の体を内藤が受け止めた。
意識はあるようで、一安心する内藤。

ξ--)ξ「ない…とう…?」

( ^ω^)「姫様……」

ξ゚听)ξ「火が消えない内に……早く、ここから出よ」

大樹があった場所の後ろには大きな穴があいていた。
新鮮な風の流れを感じることができ、外につながっていると予測できる。
手近にある木の棒に火をうつし、高く掲げる。

( ^ω^)「分かりましたお」

少女の体を背におぶさり、歩きだす。

ξ゚听)ξ「ちょっと待って。あの枝、とってくれない?」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:44:12.46 ID:2G/LC4R80<> 支援しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:44:47.60 ID:8JBwnHofO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:45:46.25 ID:RlmRRvCB0<> ほう <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:46:20.94 ID:Jb2oj2pJ0<>
地面に刺さっている七色の輝きを放つ枝。
内藤は丁寧にそれを引きぬき、少女に渡す。

ξ゚ー゚)ξ「ありがと」

( ^ω^)「お。では、外に向かいましょう」

空洞の中の道は荒れていて、多少の上り坂になっていた。
風を受けながら、先に見える光を目指し暗い横穴を行く。

ξ゚听)ξ「私、どうなったの?」

少女の問いは、先程の現象のことだろう。
それに対する明確な答えを内藤が持っているわけがない。

( ^ω^)「わかりませんお……でも、姫様のおかげで助かりましたお」

ξ゚听)ξ「そう…そうよね」

寂しそうな様子は相変わらずだったが、口の端は少しだけ上がっていた。
疲労いっぱいであった二人はそのことを話すのをやめ、無言になる。
先の光は段々と大きくなり、ついに全身で浴びるに至った。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:48:22.28 ID:HE044Mda0<> スレタイ見たことある気がする <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:48:57.02 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚听)ξ「出れた…」

( ^ω^)「よかったですお」

二人が立っているのは、穴に落ちた場所とは反対側の山の中腹。
空を見上げわかるのは、月が沈みかけている時間だということ。
随分と長いこと地下を歩いていたことが分かる。

ξ゚听)ξ「どこに行くの?」

( ^ω^)「山を下りて、麓にあるはずの小屋でしばらく休みますお。
      あの化け物にあったのは不運でしたが、おかげで予定よりもずっと早く山を抜けることができましたお」

ξ゚听)ξ「そう…。それなら、もう自分で歩ける」

内藤の背から降り、自分の足で立つ少女。
ふらふらと頼りない足取りだが、ゆっくりと前に進む。

ξ゚听)ξ「さぁ、そこに行きましょう」

( ^ω^)「多分、こちら方面ですお」

内藤は星の光を頼りに、山を下りるために道を開き、その後ろを懸命に少女は歩く。

ξ゚听)ξ「どうしてわかるの?」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:50:51.43 ID:/MvQ/yhG0<> 合成士帰ってきたのか

支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:52:03.71 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「星の位置で大体の方向が分かるんですお」

ξ゚听)ξ「ふーん」

曇ってたらどうするつもりなのか、そんなことを聞いても意味のないことだと少女はわかっていた。
今日は晴れていて、星はちゃんと瞬いているのだから。

無言で山を下りる二人。
尾根はそう長くは続かず、開けた場所に出た。
遠くには何軒もの家が見える。

( ^ω^)「もうすぐですお」

内藤が振り向いた瞬間、少女は倒れこむ。
すぐに手を出し、地面にぶつからないように支える。
驚いて脈を確認するが眠っているだけだった。
一度に多くのことが起き、身も心も疲れ切ってしまったのだろう。
優しく背負うと、できるだけ揺らさないように歩く。

( ^ω^)「ついたお……」


人里から大きく離れたところにあるぼろい小屋。
人が使っているようには見えないだろう。
実際に、この小屋は人に使われてはいない。
いざという時のために用意されていたものである。
中に入り、目を覚まさせないように少女を布団に寝かせる。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:54:07.05 ID:Jb2oj2pJ0<>
自分はもうひとつの部屋、少女の寝ている部屋よりはかなり小さな部屋だが、
に入り布団を敷いて倒れこんだ。

( -ω-)(あの火は一体……?)

疲れ切った体はそれ以上の思考を許さず、
柔らかい布団の上で内藤は静かな寝息をかきはじめた。



<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:56:43.68 ID:CsfrU7tZ0<> しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:57:11.80 ID:Jb2oj2pJ0<>




     ξ゚听)ξ 不可思議姫幻想記のようです【月天封印】
  
           フカシギヒメ   ゲンソウキ


        

初幕────朔

           

                     了
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 20:59:40.39 ID:/MvQ/yhG0<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:00:13.47 ID:Jb2oj2pJ0<>
みなさん、お久しぶりです。

この作品はエスカルゴ様、文丸様に纏められている

ξ゚听)ξ 不可思議姫幻想記のようです【月ノ封印】 (一話、二話で更新停止)

のリメイクとなります。
途中で投げ出した作品を完結させるべく、再びブーン系に戻ってきました。

物語の根幹からすべて変更しています。


このまま二話を投下する準備も出来ていますので、
興味がありましたら、よろしくお願いします。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:00:54.84 ID:UKt0lj+F0<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:01:43.80 ID:RlmRRvCB0<> 乙
連続投下だと・・・いいですね <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:02:56.45 ID:Jb2oj2pJ0<> 江戸より遠く離れた奥羽の地。
そこで一人の赤子が生まれた。

神の血筋として生まれたはずのその子は、悪魔と罵られることとなる。
生まれると同時に、傍にいた多くの人間の命を奪ったのだから。
小さな産声は誰の耳にも届かない。

赤く、ただひたすらに赤く、世界を染め上げる。

その時を知る村人はいない。
ただただ、事実だけが歴史書に記されることとなる。


――――火の中より赤子生まれ出でたる、と。

  

        【月ノ封印】



弐幕────三日月


<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:04:57.28 ID:Jb2oj2pJ0<>

( -ω-)「ん……」

日の光で目を覚ます。
あまりに眩しさに起きてみると、窓から入る光がちょうど頭のあった場所に当っていた。
脳内がもやもやするのは寝起きのせいだけではない。
昨晩の思考の続きを思い起こす。

( ^ω^)(結局、分からんことばかりだお……)

突如襲撃してきた謎の集団。
その会話の端々に内藤の理解できない言葉が語られていた。

( ^ω^)(それに、空姫様はどうして襲撃にお気づきになられたのかお?)

二人が何とか逃げることができたのも、空姫からの手紙があったからこそ。
それがなければ家にいた時点で掴まっていたかもしれない。
そして気になることは、もう一つ。

( ^ω^)(稚は無事なのか…?)

黒装束どもが家を知っていたとすると、残った稚の安否が気になる。
稚はその可能性も考え、身代りとなったに違いない。

( ^ω^)「朝…、昼食の準備でもするかお…」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:05:18.38 ID:/MvQ/yhG0<> おっとまだやるのか

支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:05:27.12 ID:O6mfWd240<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:05:52.56 ID:IRJxf5eO0<> >>77
死ねよ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:06:59.37 ID:Jb2oj2pJ0<>
格子の入った丸型の窓から太陽の位置を確認して、言い直す。
のそのそと緩慢な動作で布団から抜け出し、部屋から出て台所に向った。

( ^ω^)(お………?)

そこには、僅かばかりだが保存のきく食物が用意されていた。
よくよく見れば、部屋の中も長年放置されていたとは思えないほど手入れがいきとどいている。

( ^ω^)(空姫様、ありがとうございますお)

心の中で礼を言う。
ここに何もなければ、食べることさえままならない。
食料は乗せた馬と共に穴に落ちた時に失ってしまったし、
多くの銭など持ってくる余裕はなかったからだ。

( ^ω^)(昨日はほとんど何も食べてなかったお………)

米を火にかけ、野草を適度な大きさに切った。
同時に水を沸かし、汁物を作る。
味噌と漬物をそれぞれ別の皿に盛り、コメが炊けるのを待つ。

ξ゚听)ξ「内藤! どこにいるの?」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:10:26.04 ID:Jb2oj2pJ0<>
少女が部屋の中から大きな声で呼んでいる。
料理をそのままに、急ぎ足で部屋の前まで赴く。

( ^ω^)「ここにいますお」

ξ゚听)ξ「おはよう。いい匂いがするんだけど、もう出来てる?」

匂いにつられて起きたのだろうか、と内心苦笑する内藤。
そして、どうやら昨日のことで塞ぎこんではいないようだと一息つく。

( ^ω^)「もうすぐ完成しますお」

ξ゚ -゚)ξ「そう、なら待ってる。それから、一緒に食べたいのだけれど……」

( ^ω^)「お……構いませんが、よろしいのですかお?」

仕えて間もないころ、このような誘いは全て断ってきた。
そうすることが当然であったからだ。
しかし、今は少女を不安にさせないことこそが大事だ、と内藤は考える。

ξ゚听)ξ「ええ」

少女が望むのなら、それで安心できるのなら、後でどんな罰も受けよう。
そう誓い、内藤は任について初めて命令を破った。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:12:59.82 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「お持ちいたしましたお」

箱膳を向い合せに並べる。
雪姫が先に座ったのを確認してから自身も席についた。

ξ゚听)ξ「昨日のことなんだけど……」

話の内容は、前日のあまりにも日常離れした現象。
山の麓で黒装束に囲まれた時、いきなり地面が割れ、地下の世界に落ちた時のこと。
渦のように回転する泥に引き込まれ、体が完全に土に埋まってしまう直前、
少女の体から溢れんばかりの炎が現れたのだ。

それは地下空間を覆っていた意志ある巨木を焼き尽くし、
泥の渦から二人の窮地を救うところとなった。

ξ゚听)ξ「あれは何、って聞いてもわからないよね……。内藤から見て、どうだった?」

( ^ω^)「どうだった、と聞かれましても……。あの炎、全く熱くなく、
      何か柔らかい物に包まれているような感覚でしたお」

椀を置いて考え込む内藤。
しかし、それ以上は言葉になって出てこなかった。

ξ゚听)ξ「そう……。私は死にたくない、って思ったの。そしたら、体の中から何かが話しかけてきて。
      でも、なんて言ってるかわからなかった。だから、なんでもいいから助けてよ! って……」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:13:15.55 ID:2G/LC4R80<> 連投とな? 肩を壊さない程度に頑張れ!


そにしても時代劇風でファンタジーっていいよね
そんな支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:13:41.58 ID:RlmRRvCB0<> ふむ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:14:47.93 ID:B6RN6kmbO<> 久しぶりだな、しえん。
('A`)が厨二病で戦い抜くようです、続き待ってる。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:15:00.60 ID:j+izZ0lJ0<> しえんた <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:15:34.77 ID:Jb2oj2pJ0<>
普段よりもずっと饒舌なのは、話していないと落ち着かないからなのだろうか。
内藤はひとつひとつ丁寧に相槌を打つ。

同時に頭を回転させるのは忘れていなかった。

( ^ω^)(その結果表れたのがあの炎かお……。
      姫様の思いに応えるかのように、その力を現した?
      力に意志があるとでもいうのであろうか)

内藤は独り思考を加速させる。

( ^ω^)「空姫様なら、何かご存知かもしれませんお」

黙り込んだ内藤は姫に見つめられていることに気づき、
慌てて言葉を取り繕った。

ξ゚听)ξ「あの手紙は空姉が送ってくれたんだよね? 連絡取れる?」

( ^ω^)「申し訳ありません、わかりませんお。食事の後に手紙の類を探しておきますお」

ξ゚听)ξ「お願い」

姫様が最後の一口を口に含み、箱膳の上が空になる。
それを見計らって、内藤は席を立った。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:17:27.19 ID:lfWVhvoi0<> 支援(迫真) <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:17:57.14 ID:8JBwnHofO<> しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:18:10.91 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「それでは、片づけてまいります」

台所と部屋を二往復し、二人分の箱膳を下げ、
外に出て井戸から水を汲み、食器を洗った。
それらをものの数分で済ませると、次は家のあちこちを調べ始めるが、
手紙を書くための道具は見つからない。
そもそも、届けてくれる人間もいないのだ。

( ^ω^)(稚……)

空姫に聞きたいことがたくさんあった。
出来れば本人に聞きたいのだが、それは難しいだろう。
少女以外の姫はみな、特別な待遇を受けていて、おいそれと近づけない。
いや、少女もまた特別な待遇を受けているわけなのだが。

「内藤!!! 内藤!!!」

畳の下に何かあるかもしれない思い、所々叩いていると、
離れた町にも届いてしまうのではないか、と思えるほどの大声で呼ばれていた。
何かがあったのかと全力で姫の元に向かう。

( ^ω^)「姫様! どうなされました!」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:19:04.88 ID:xBfXkSVL0<> これの何が面白い? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:21:04.89 ID:Jb2oj2pJ0<>
あまりに焦るあまり、許可も得ず部屋の扉を開けてしまった。
そこには固まった顔の見慣れた姫と、もう一人。
机を挟んでその反対側に、一人の女性が座っていた。

ξ゚听)ξ「内藤……」

川 ゚ -゚)「駄目じゃないか、従者が許可も取らずに部屋に入ったら」

( ^ω^)「そ、空姫様!!
      ももも申し訳ございません」

己の軽率な行動を恥じ、土下座をする。

川 ゚ -゚)「冗談だよ、顔を上げろ内藤。むしろ我が妹の声を聞いて駆けつけたのだから正しい行為だ」

内藤は恐る恐る頭を挙げる。
彼が都でつかえていた頃、見かけたことのある姫君は五人。
実際に話したことがあるのは三人だったが、その中で最も空姫を尊敬していた。

理由はその公平な態度にある。
どのような身分の者にも同じ様に接する姿から、彼女を知る者は慈姫(ちかひめ)とも呼んだ。
ちなみに内藤が仕える姫は、その気性の荒さと扱いづらさから、荒姫と噂されていたのだが、
それを当人が知るよしはなかった。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:23:12.06 ID:Jb2oj2pJ0<>
少女の白と対照的な真っ黒の髪はとても長く、座っていると床についてしまうほど。
顔は似通っているが、空姫の方が豊かな体つきをしている。
なぜか服装は高価なものではなく、動きやすいものだった。

川 ゚ -゚)「そう一生懸命に見るなよ。照れるじゃないか」

ξ゚ -゚)ξ「内藤?」

姫の蔑む視線で我に返る内藤。
ひしひしと感じる謎の波動を耐えることに限界がきて、話を逸らすことを選んだ。

( ^ω^)「空姫様はその様な格好でいったいどうなされたのですか?」

川 ゚ -゚)「いや、お前達も色々知りたいだろうな、と思ったったから来た」

軽い調子で話してはいるが、彼女もまた天皇の娘なのである。
おいそれと自由にこんな所へ来れる筈がないのだ。

( ^ω^)「また、抜け出してこられましたおね……」

川 ゚ -゚)「まぁそういうな。ちゃんと影武者を置いてきた」

自信満々に胸を張られては、どうしてもそちらに目が行ってしまうのが男の性。
平然を装いつつ垣間見する内藤に静かな殺気が降りかかる。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:25:47.57 ID:xBfXkSVL0<> 思ったったから来たwwwwwwwwwwwwwwww <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:26:25.31 ID:Jb2oj2pJ0<>
  _,
ξ゚听)ξ「………」

( ;^ω^)「そ、それでは、私と雪姫様の疑問に答えてくださるのですね?」

身の危険を感じた内藤は、話を本題に戻した。

川 ゚ -゚)「可能な限りは、な。内藤、お前も気になることがあれば話に首を突っ込んでもいいぞ」

それまで楽に座っていた空姫は、居住まいを正した。
それだけで場の雰囲気が一変する。

川 ゚ -゚)「ちなみに、私も最近知ったことばかりなのだ。答えられない質問があっても怒らないでくれ」

ξ゚听)ξ「さっそくなんだけど、私の生み出した炎は何なの?」

川 ゚ -゚)「ふーむ………。炎が出たのか。炎ね、炎………」

腑に落ちない、といった顔で何度か炎、と繰り返す。
少女は返事を促すように呼び掛ける。

ξ゚听)ξ「空姉?」

川 ゚ -゚)「おっと、すまんな。少し考え事をな。私も詳しいことは知らないのだが、【感情】を引き金に現れる現象だということらしい」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:28:26.98 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「空姫様、よろしいでしょうか」

川 ゚ -゚)「口をはさんでいいと言ったはずだ、何度も言わせるな」

( ^ω^)「申し訳ございません。らしい、ということは空姫様も人づてにお聞きになられたのですか?」

川 ゚ -゚)「そうだ。だから最初に言ったように、私も詳しくは知らんのだ。
     そしてだ、父上に問い詰めたところ、かつて同じようなことが何度かあったと白状したよ」

ξ゚听)ξ「同じようなこと?」

川 ゚ -゚)「雪姫、お前のように不可思議な力を持つ者のことだ。特に京の近くで起きていたていたそうだ。
     ……内藤、喉が渇いたから茶を持ってこい」

話の途中ではあったが、茶を出せと言われ断る従者はいない。
内藤は不服そうにしながらも部屋を退出した。
それを確認して空姫は口を開く。

川 ゚ -゚)「いいか、落ち着いて聞いてくれ。………私もその内の一人だ」

ξ゚听)ξ「え………」

雪姫はあまりの驚きで言葉を失う。
まさか自分の姉も同等の力を持っているだろうとは予想していなかったに違いない。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:29:48.92 ID:BtH4b+L10<> 月天と言ったら守護月天 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:30:39.78 ID:Jb2oj2pJ0<>
川 ゚ -゚)「これは内藤には内緒にしておいてくれよ。私にも考えがあるのだ。
     今回、お前を狙った連中をどうやって一網打尽にするかのな。
     そうだ……私の力も見せてやろう」

くっくっと笑いながら空姫が取り出したのは、一枚の枯れた葉。
それを掌の上に乗せる。

川 ゚ -゚)「目を離すなよ?」

少女は言われた通りにじっと目を凝らして見つめていた。
しかし、あまりに一瞬のことに、何が起きたのか理解することができなかった。

ξ;゚听)ξ「!!」

確かにあった葉が、触れもせずに完全に消滅したという事実を。

川 ゚ -゚)「分かったか? いや、わからんだろうな。私の力は、物を消すことができる。跡形もなくな」

ξ゚听)ξ「空姉は、力を自由に使うことができるの?」

川 ゚ -゚)「残念だが、私は未だできない。この力も、生物に直接使うことはできないしな。
     ただ、念じれば発動させることはできる」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:31:38.65 ID:RlmRRvCB0<> 火と消滅の力か
中二臭くて良い <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:32:07.23 ID:2G/LC4R80<> 支援しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:32:50.00 ID:Jb2oj2pJ0<>
人間が瞬間的に消える想像をし、彼女はその力のあまりの恐ろしさに震える。

ξ゚听)ξ「それじゃあ、私が自由に力を使えるようにするにはどうすれば?」

川 ゚ -゚)「……雪姫。お前は何もしなくていい。この件は私が片づける
     だから、安心してくれて構わない」

ξ゚听)ξ「でもっ」

川 ゚ー゚)「お前は大切な妹だからな、必ず守ってやる」

じっと目を見て、安心させるように微笑む空姫。
それから内藤がお茶を持ってくるまで、どちらも一言足りとも発しなかった。

( ^ω^)「お茶をお持ちしましたお」

川 ゚ -゚)「ああ、御苦労。入っていいぞ」

ξ゚听)ξ「空姉ぇ………」

川 ゚ -゚)「さて、それでは内藤が戻ってきたから話の続きをしようか。
     お前たちが知りたいのは、どうして襲撃がわかったか、でいいか?」

ξ゚听)ξ「………はい」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:33:19.29 ID:O6mfWd240<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:34:52.87 ID:Jb2oj2pJ0<>
温かいお茶を受け取ると、空姫は一口分だけ飲む。
ほうっ、と吐息を吐いて話を切り出した。

川 ゚ -゚)「正直教えるつもりはない。今回の件は私が解決する。
     しばらくここで生活していてくれ。二人の安全を確保した時、再び連絡する」

( ^ω^)「どうして私と姫様が狙われるのでしょうかお?」

川 ゚ -゚)「奴らの目的はわからん。が、狙いは雪姫とその力で間違いないだろう。
     ともかく、二人は私からの連絡が来るまでここからでるんじゃないぞ?
     食料は足りなくならないようにする」

お茶を飲み、一呼吸置く空姫。

川 ゚ -゚)「さて、私からは以上なわけだが。まだ私に質問があるか?」

ξ゚听)ξ「………」

川 ゚ -゚)「これからしばらくは連絡も取れないし、会えもしないだろう。
     聞くのなら今のうちだ。ちなみに無駄だとは思うが、これも聞いておこう。
     父上に協力してもらって、以前の場所に住むこともできる。
     窮屈な生活にはなるだろうが………今よりはずっと安全だと思う」

( ^ω^)「話にお邪魔して申し訳ないのですが、雪姫様の力があればあのような敵は相手にならないのでは?」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:35:48.12 ID:xBfXkSVL0<> くだらねえ、地の文は下手糞、キャラクターはみんな無表情
これを受けると思って書いてる作者は凄いな
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:37:01.64 ID:Jb2oj2pJ0<>
川 ゚ -゚)「雪姫を狙う連中が、雪姫の力を知っている連中が、何の対策もなしに来ると思うのか?」

少女の手に握られた湯の身が震える。
二人の命を奪いかけた恐ろしい大樹のことを思い出す。
あれが、その集団の物とは限らないが、そういうものが、そういう悪鬼羅刹の類が存在することを知ってしまった。
それ故、空姫のかえしに対して内藤は黙るしかなかった。

( ^ω^)「………」

川 ゚ -゚)「奴らは………雪姫と同じような力を使う。私が調べてわかったことは、
     こういう力を遥か昔から所持し続けている集団があるということだ。
     できるのなら新たに用意される場所にいてほしい」

ξ゚ -゚)ξ「空姉………でも、私は、自由に暮らせないなんて………いや!」

川 ゚ -゚)「………。そうか………わかった。
     お前の意見を尊重する」

ぶつかる視線。
先に目を逸らしたのは空姫だった。

川 ゚ -゚)「雪姫の持つ力と同等の力を持つ敵が多いはずがない。ならば、おそらく見つかりさえしなければ大丈夫だと思う。
     最悪見つかってしまっても、複数相手でさえなければ大丈夫なはずだ。ただ………」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:37:45.91 ID:NGyVu6r10<> 支援
支援 <>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 21:37:46.62 ID:KrEXxFZ60<> リメイクってことでいいのかな <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:39:00.99 ID:xBfXkSVL0<> 1 : ◆gMIGdyOjeA :2011/11/12(土) 19:04:49.45 ID:Jb2oj2pJ0


一言だけ言わせてください。

すいませんでした。





歴史 + ファンタジー 存分にお楽しみください。

これを書いていいのは実力のある作者限定だろ、晒し <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:39:06.04 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚听)ξ「ただ?」

川 ゚ -゚)「どうにも不可解な話を聞いたのだ」

ξ゚听)ξ「不可解な話?」

空姫の言葉をおうむ返しで聞き返す。
どうやら彼女自身も話していいかどうか躊躇っているようだった。
決心したのか、再び話し始める。

川 ゚ -゚)「……竹取物語は知っているな?」

ξ゚听)ξ「竹から生まれた姫に、五人の皇子が求婚する話でしょ?」

川 ゚ -゚)「その中に出てくるかぐや姫が五人の求婚者に求めた宝。
     それが何らかの関係を持つらしい。実際にどれほどのこの件に絡んでくるのかは知らんが、
     奴らは躍起になってそれを探している」

竹取物語の宝は結局、誰一人としてつ見つけられなかった。
それがなぜ現代に繋がるのか、内藤も姫も全く理解できていなかった。

川 ゚ -゚)「私にもわからないんだ。なぜお伽噺の宝が……いや、その伝説の中ですら存在しなかった宝が関係してくるのか。
     蓬莱の玉の枝、火鼠の裘、仏の御石の鉢、龍の首の珠、燕の産んだ子安貝。
     現状どうしようもないし、もしかしたら杞憂かもしれないが、一応気にかけといてくれ」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:39:57.41 ID:RlmRRvCB0<> ほう <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:40:03.88 ID:xBfXkSVL0<> >>あれが、その集団の物とは限らないが、そういうものが、そういう悪鬼羅刹の類が存在することを知ってしまった。
それ故、空姫のかえしに対して内藤は黙るしかなかった。


日本語でおk <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:41:56.75 ID:O6mfWd240<> 枝か…… <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:42:33.60 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚听)ξ「五つの宝………? ちょっと待ってて!」

少女は慌てて部屋の隅に飾っていた枝を持ってきた。
七色に光る、美しい枝だったもの。
昨日、化物の樹を倒した時にその場に見つけたそれは、
今はただの棒切れであった。

川 ゚ -゚)「それは………なんだ? ただの綺麗な枝にしか見えないが」

ξ゚听)ξ「あれ? 昨日はあんなに光ってたのに………。襲われた後に落ちた穴の中で拾ったの」

川 ゚ -゚)「ふむ、確かに不思議な魅力のある………気がするが。
     それは持っていてくれ。さて、そろそろ帰る。
     今頃、私の身代りはこってりしぼられているだろうからな」

ξ゚听)ξ「わかったわ」

空姫は空になった湯のみを置くと、立ち上がった。
合わせて雪姫も立ち上がろうとするが、それを手で遮る。

川 ゚ -゚)「ああ、いい。内藤に来てもらうから」

( ^ω^)「お!?」

指名が来ると思っていなかった内藤は素っ頓狂な声を上げた。
空姫はそんな内藤に対し目で合図を送る。


<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:42:56.92 ID:xBfXkSVL0<> みんな同情で支援してくれてるね、よかったな作者 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:44:56.79 ID:Jb2oj2pJ0<>
内藤は空姫の一歩後に続く。

( ^ω^)「どうされたのですかお?」

家を出たところで、合図の真意を問う。
おそらく、姫の前では話したくないことだろうと考えていた。

川 ゚ -゚)「内藤、雪姫を絶対に守れ。力はあってもまだまだ幼い」

( ^ω^)「わかっていますお」

川 ゚ -゚)「そうか。あと一つ、力を無理に使わせすぎるな。
     力に関しては分からんことばかりなんだ。もしかしたら………いや、やめておこう」

歯切れ悪く言葉を切ると、背を向けて歩いて行った。
その先には男が馬を連れて立っている。
馬に飛び乗って駆けていくのを、見えなくなるまで見送っていた。

( ^ω^)(勇ましすぎるお………)

ξ゚听)ξ「遅いじゃない、どうかしたの?」

痺れを切らした雪姫が家の中から出てきた。
考えを巡らしていた内藤は、その声で現実に引き戻される。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:47:20.18 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚听)ξ「さて、家に入って話相手になって頂戴」

( ^ω^)「わかりましたお」

促されるままに家の中に入る。
空姫が最後に言わなかった言葉、それが内藤の頭を離れない。

ξ゚〜゚)ξ「それでね、内藤………火がでないのよ」

両手を上げたり降ろしたり、手を握ったり開いたり、
子供がはしゃいでいるようにしか見えないが、当人はいたって本気らしい。

( ^ω^)「出なくてもいいではないですかお」

そんなことは耳に入っていないのか、今度は全身を動かし始めた。

ξ><)ξ「えいっ!」

( ^ω^)「姫様………」

ξ゚〜゚)ξ「むぅ………なんで出ないんだろう」

今度は座り込んで考える雪姫。
せわしい姫である。
だが、それはいつもどおりに戻ったことを意味して………。

( ^ω^)(あんな危ないことは、もうなくていいお………平和に暮らせれば、それで………) <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:48:09.13 ID:8JBwnHofO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:49:27.13 ID:XXFDFKae0<> せっかくのAAなのに無表情とか、無いわ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:50:05.04 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚听)ξ「わっかんない〜」

音を上げた少女が仰向けにひっくりかえったせいで、服がはだけて白い太ももが露わになっていた。
従者兼教育役であるため、それを注意する内藤。

( ^ω^)「姫様、はしたないですお」

ξ゚听)ξ「内藤しかいないんだから、別に気にしない」

今までと同じく内藤の言うことは全く聞いていない。

( ^ω^)「………。それでは、用がありますので失礼しますお」

挨拶をし、部屋を出た。
自分の部屋に戻ると、壁にもたれかかり目をつむる。
春の陽気のように浮かんでは消えていく考え。

( ^ω^)(五つの宝………かお。枝、鉢、珠、衣、貝………。
      確か竹取物語によれば、かぐや姫が持ってきたに求婚を求めた皇子が与えられた無理難題。
      でも、それが何の関係を………?)

( ^ω^)「わからないことが多すぎるお」

結局、内藤にできるのは空姫からの手紙を待つことだけであった。
雪姫の話相手をして過ごす平和な日々。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:51:07.66 ID:xBfXkSVL0<> >>123
だよな、みんな無理矢理支援してて気持ち悪いよな
これはつまらんのに <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:52:18.17 ID:Jb2oj2pJ0<>
そうして、何も起こらず三日が過ぎた。


━━━━━━━━── →← ──━━━━━━━━


ξ゚─゚)ξ「暇ねぇ………」

家の中にあるのは空姫から送られてくる食物だけであり、
二人の時間を潰せるようなものはない。

( ´ω`)(絵が描きたいお………)

内藤は部屋に横たわりただ時間が過ぎていくのを待つ。
最初の頃こそ火を出そうと躍起になっていた姫は、
三日という時が経ちながらも欠片も兆候がないため既に諦めていた。

ξ゚听)ξ「内藤? 次食糧を持ってくる人が来たら、空姉に何か遊ぶものを持ってきてもらえるように頼んでおいて」

( ^ω^)「分かりましたお」

暇を持て余しているのは少女だけではない。
少女が暇を持て余しているせいで、外に出ることができず、
内藤もまた家の中でむやみやたらと時間を潰しているのだ。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:54:42.80 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚听)ξ「暇………ひまひまひまぁー」

( ^ω^)「お? ちょっと外に出てきますお」

玄関口に何者かの気配を感じ、部屋を出る内藤。
そこには、男が一人立っている。
差し出された手には手紙が握られていた。

( ^ω^)「あなたは………?」

「空姫の使いだ。馬はここにおいていくぞ」

内藤が手紙を受け取ると、一言と馬を残し去って行った。
その後で空姫を待っていた男だと思いだす。

( ^ω^)「姫様、空姫様からお手紙ですお」

ξ゚ー゚)ξ「本当!? 入って」

許可が出てから部屋に入り、手紙を手渡した。

( ^ω^)「それでは失礼しま」

ξ゚听)ξ「内藤、待って。二人で読むように書いてある。はい」

それだけ言うと手紙を差し出す雪姫。
教育方針を間違ってしまったのだろうか、と後悔する内藤だが、
諦めて手紙を受け取って読み始めた。
<>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 21:56:44.58 ID:KrEXxFZ60<> 江戸時代なのか
平安時代だと思い込んでた <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:57:19.30 ID:Jb2oj2pJ0<>

──────────


川 ゚ -゚)「この手紙は二人で読んでくれ。今後に関わることだからな。
     奴らはお前たちの居場所を掴めてはいないようだ、ひとまず安心してくれ」

ほっと一息ついたのもつかの間、手紙には恐ろしい事実が乗っていた。

川 ゚ -゚)「五つの宝は実在したようだ。その内の一つを奴らが手に入れたとの報告を聞いている。
     その能力は未知数だが、一つだけ分かったのは………」


────────────

ξ゚听)ξ「どうしたの、内藤?」

内藤はそれ以上読み続けることができなかった。
其処に書いてあるのは事実とは思えない内容。
手に力が入り、手紙が歪む。

( ^ω^)「雪姫様………」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 21:59:56.67 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚ -゚)ξ「続きを読みなさい、内藤」

その先に何があるのか、少女は理解していないだろう。
それでも、最も信頼できる姉からの手紙であれば、読まないわけにはいかない、
そういった心構えが、命令口調で続きを促させる。


────────────


川 ゚ -゚)「私たち人間を………呪い殺すことのできる道具だということ………」


────────────


大きく呼吸する。
それなのに、息苦しい感覚は続く。
暫く無言でうつむいていた二人だが、再び少女が内藤に視線を送る。


────────────


川 ゚ -゚)「奴らがなぜ今、宝を求めるのか。それとも、遥か昔から探し求めていたのか。
     何につかうつもりなのか。分からないことが多すぎる」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:02:32.46 ID:Jb2oj2pJ0<>
川 ゚ -゚)「もし、敵が襲撃をしてくるようなことがあったら逃げることを最優先にしてくれ。
     宝のさらなる秘密がわかれば便りを送る」

川 ゚ -゚)「大した報告ができなくて済まんな。だが、音沙汰なしよりは安心するだろう?
     調査は進んでいる。心配しないでくれ」


────────────

(  ω )「以上、ですお」

静寂が場を支配する。
内藤も、姫も、動かない。
姫は強くその両の手を握りこみ、
内藤は唇をかみしめる。

ξ;゚听)ξ「内藤………私たちはっ」

( ^ω^)「駄目ですお………それは、その行為は空姫様への裏切りに当たりますお」

少女の願いを聞き入れることはできなかった。
それは空姫への裏切りと同時に、少女の身を危険にさらす行為であったから。

(  ω )「どうか御辛抱ください、雪姫様」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:02:41.33 ID:/MvQ/yhG0<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:03:12.95 ID:Z+gK3USe0<> 支援 <>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 22:04:29.91 ID:KrEXxFZ60<> 一つだけでそんな効果があんのか <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:05:12.94 ID:Jb2oj2pJ0<>
どれほど手助けをしたくても、
内藤達には空姫の身の安全を願うことしかできなかった。


━━━━━━━━── →← ──━━━━━━━━


川 ゚ -゚)「どうやら情報が漏れていたようだな」

きっかけは、竹取物語の伝承を受け継ぐ人物がいる、そういった情報だった。
それを調べるために、自ら出張った空姫たちは、罠にかけられたことを知る。
突如現れた十数人に退路を断たれ、空姫と痩身の男は背中あわせに立つ。

('A`)「申し訳ない………。俺は腹を切って」

川 ゚ -゚)「今はそれよりも………」

空姫は会話に紛れて周りの様子を窺うが、
二人を囲む仮面装束たちには、鼠一匹通る隙さえ無いように見える。

((:●:))「人には過ぎた力、神へ返していただきましょう。ついでに裏切り者の処罰を」

代表格の男が口を開いた。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:06:49.68 ID:RlmRRvCB0<> お? <>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 22:08:00.81 ID:KrEXxFZ60<> ドクオが裏切ったのか <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:08:19.18 ID:Jb2oj2pJ0<>
川*゚ -゚)「それは残念だったな。私が神だ」

軽口で答えるその顔に、焦りは見えない。

「よくもまぁ、そのような世迷言を………」

「なんと恐れ多い………」

口々に反論する男達。

川 ゚ -゚)(使い手は一人………か?)

('A`)(私が隙を作りますので)

川 ゚ -゚)(いや、もう少し待て)

((:●:))「ここまで追い詰められているにもかかわらず、その余裕な態度は気に入りませんね」

川 ゚ -゚)「この程度では話にならないということだ。諦めて帰ったらどうだ?」

((:●:))「既にあなたが心の獣を飼いならしていることは十分知っていますよ。
       そして、私たちはその対策を怠るとでも?」
<>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 22:10:46.10 ID:KrEXxFZ60<> その命、神に返しなさい! <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:11:02.56 ID:Jb2oj2pJ0<>
川 ゚ -゚)「ふん、それが人数ってわけか? 思った以上に残念な発想だな」

くくく、と余裕を持った笑い声をもらす。
空姫の高慢な態度に、男は苛立ちをあらわにする。

((:●:))「あまり私を怒らせないでください………。既に宝の力は確認済みです。
       あれが人を呪うことなど副産物に過ぎない。あれの真の力は抑制すること!!
       さぁ、あなたも妹君と同じところへお送りしましょう!」

川 ゚ -゚)「毒男っ!!」

('A`)「潰れろ」

ドクオは両手をつきだし一言叫び、握りこむ。
その動作の直後、二人を囲っていた男達は次々と倒れていく。

「なっ?」

「ぐぅ…」

川 ゚ -゚)「魂が帰るのは虚ろな世界。其の地、不可視也」

その隙に、空姫は己の心へ呼びかける。

((:●:))「毒男の発生が早い………。腕を上げたようだが、無駄だと……?」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:12:23.61 ID:RlmRRvCB0<> 毒男とドクオはまた別なのか、それとも <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:13:26.55 ID:Jb2oj2pJ0<>
ドクオの業を理解していた男だけが、膝をつくこともなく立っていた。
懐から何かを取り出そうする直前に、男の前から二人の姿が忽然と消えた。
残ったのは地面が半球状に抉れた痕。

((:●:))「………はっは」

渇いた笑い声が響く。

((:●:))「これは間違いなく、毒男の言っていた空姫の力………自らの力に呑まれ消えるとは。
       やはり彼女は真の意味で、心の操り方を知らなかったのだ。
       あれの枷を外せば己自身を喰い殺すと言うのに………」

部下を連れ、男はその場から立ち去った。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:13:59.83 ID:EboxDa1B0<> 今北支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:15:28.41 ID:Jb2oj2pJ0<>

━━━━━━━━── →← ──━━━━━━━━


夜も更けたころ、妙な臭いが微かに漂い始めた。
眠りに落ちかかっていた内藤は飛び起きる。

(  ゚ω゚)「これは………っ!! 雪姫様! 雪姫様!」

廊下に出るとその明るさに目がくらむ。
すぐに異常事態に気付けなかった自分を責める。

(#^ω^)「くそっ!」

声もかけずに部屋の中へ飛び込む。
煌々と燃え盛る炎の中心に、少女は座っていた。

ξ;゚听)ξ「内藤………」

足元に横たわっているのは、人の形すら保っていない人体。
炭化したそれらを見て、出かかった吐き気をこらえる。
二人が無言で向かい合う間も、炎はその勢いを緩めない。

( ^ω^)「……姫様、まずはここを出ましょう。建物が今にも崩れそうですお」

内藤は建物のきしむ音を聞き、外へ連れ出す。
喋らない少女の手を握り、引っ張って。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:18:05.28 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ )ξ「………」

( ^ω^)「何が………起きたんですかお?」

ξ )ξ「分からないの。気づいたら………」

( ^ω^)「おそらく、以前襲ってきた敵ではないでしょうかお。
      空姫様の言いつけに従い、ここを離れた方がいいと思いますお」

表に結んでいた馬は大量の血液を撒き散らし絶命していた。
その首には深い切り傷が残っている。

ξ゚听)ξ「そんな……。これじゃあ、どこに…?」

行く当てがなかった。
移動手段はなかった。
お金も、食料も。

(; ^ω^)(何とかして、空姫様と連絡を取らないと………)

大きな音を立てて、建屋が崩れた。
今更ながら、何か持ってくればよかったのではないかと後悔する。

ξ--)ξ「ごめんね………私が、私のせいで………」

(; ^ω^)「何とかなりますお。どうかお気になさらず」

強がって見せるが、名案があるわけではなかった。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:18:47.43 ID:x1eJpMvm0<> ブーン系久しぶりに見たわ <>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 22:19:08.55 ID:KrEXxFZ60<> やってること的には悪役よりクー達のがえげつない気もする <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:20:14.38 ID:Jb2oj2pJ0<>
(; ^ω^)(馬もなし、外出用の服もなし………この状態で姫様の姿を見られないようにするのは
      至難の業だお………)

いざという時のため、服の裏に縫い合わせていた特別な通行証。
庶民などは決して目にすることはないであろう、天皇家専用のもの。

( ^ω^)(これをお金に変えて………)

ξ;゚听)ξ「内藤っ! あれっ!」

少女の指差す先に土埃を挙げて近づいてくる集団があった。
燃え上がる炎に照らされ、集団は不気味さを増している。
その特徴的な仮面が視認できた時、内藤は刀を構えた。

( ^ω^)「馬を一頭もらえれば好都合だお」

距離はあっという間になくなった。
内藤達と謎の集団は相対する。

((-■-))「ひっひっひっ。噂通りの可愛いおなごじゃ」

「彼女は殺さなければなりません」

((-■-))「わかっておるよい。勿論、たっぷりといたぶった後にの」


<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:21:27.48 ID:2G/LC4R80<> 前のとは大分違ってきたな


支援しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:22:53.47 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「どこの誰かわからんが、姫の命を狙うのであれば、容赦はしないお。
      大人しく馬を差し出せば、無駄に命を散らすこともないお」

((-■-))「勇ましい青年じゃ。蛮勇は早死にするぞい」

「囲め! 二度も逃がすわけにはいかない!」

逃げ道を塞ごうと数人が回りこむ。
じりじりと後ろに下がっていた内藤だが、その抵抗は無駄に終わった。

((-■-))「余計なことをするでない!!」

仮面の男が仲間に切っ先を向けた。
刃を向けられ、指示した男は前言を撤回する。

「も、戻れ。囲む必要はない……」

後ろに余裕ができたことに安堵した内藤だが、同時に恐怖を感じていた。

((-■-))「逃げるところを追い詰めるのがいいのじゃろうが。わからんかのぅ。
       必死に逃げるおなごを後ろから襲う………これが儂のやりかったじゃて。
       よもや、この儂の力から逃れられると思うてか?」

「申し訳ございませんでした」


<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:25:26.18 ID:Jb2oj2pJ0<>
((-■-))「おぬしは邪魔じゃ。死にとうなければどこへなりともいくがよい」

内藤を指差し、つまらなそうに言い放つ。

(#^ω^)「あんまり舐めるなお」

ξ;゚听)ξ「内藤、大丈夫?」

( ^ω^)「お任せくださいお」

((-■-))「仕方がないのう………。相手をしてやろう。
       武士に 届かぬはずの 我が刃 歪み曲がりて 彼の身を穿つ」

言い終わると同時に、正面から内藤にきりかかる。
内藤は外面からは想像できないほど確かな剣の腕を持っている。
敵が持つのは脇差であり、獲物の長さが異なれば、それだけ優位に戦えるはずだった。

長さに劣る小剣が届く前に、仮面の男が切って捨てられるはずだった。
しかし、少女の目が捉えたのは、崩れ落ちる内藤の姿。

ξ;゚听)ξ「内藤っ!?」

(; ^ω^)「どういうことだお………」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:27:55.73 ID:Jb2oj2pJ0<>
膝をつき、傷の深さを確認する。
すんでのところで致命傷を避けることができた。
刀を振り下ろす直前、目の前にあった小剣に気づき、身を捩らせて回避に専念したためである。

(; ^ω^)(なんで、あの長さの突きが先に届くんだお………?)

((-■-))「ほっほほう。一太刀目で避けるとは。なかなかいい腕じゃ」

対する男は傷一つ負っていない。

((-■-))「おぬしを殺して、儂は本懐を遂げさせてもらう。
       荒波が  堅岩穿つ その如く 此の一撃は 

男が一句唱えるごとに、小剣に風が巻きついていく。
砂埃が舞い上がることによって、内藤はその存在に気づき、戦慄する。
可視化されたそれは、さながら嵐のようであった。

(; ^ω^)「くそっ!!」

咄嗟に右手の刀を投擲した。
理由などなく、ただ何とかして恐ろしい攻撃を止めたかったのだ。
彼は目の前で起こっている現象に恐怖していただけであった。

しかし結果的にその行為は彼の命を救う。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:30:06.87 ID:Jb2oj2pJ0<>
((-■-))「風を歪ませ 敵を滅ぼす 大槍となぁっ!」

まっすぐに飛んだ刀は、吸い込まれるかのようにして男の腕に刺さった。

それにより砂嵐の目標が内藤から少しずれ、後ろにいた配下の黒服を直撃する。
それは悲鳴を上げさせることもなく、血と肉塊を撒き散らし、絶命させた。

((-■-))「お見事」

刀を引き抜き、投げ捨てる。
傷口からは真っ赤な血液が噴き出す。
それでも声からは余裕が消えない。

((-■-))「気づきおったのぅ?」

(; ^ω^)「はぁっ………はぁっ………。その力は………言葉を媒介にしてるお?」

((-■-))「ほっほっ。大した知識もないくせに、よく欠点に気づいたものじゃ。
       せっかくじゃ、この力の秘密を教えた上で殺してやろう。賞賛として受けとれぃ」

「石榴様っ!」

((-■-))「儂の言うことが聞けない部下はいらんぞぃ?」

黒服達に動揺が走るが、その一言で反論するものはいなくなった。
誰も彼もその命が惜しいのだ。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:32:31.65 ID:Jb2oj2pJ0<>
部下の制止も聞かずに、男、石榴は禁断の知識を披露する。
両手を広げ、二度、足を踏み鳴らす。
さながら自らの立つ地が舞台であるかのように。








((-■-))「それでは聞かせてしんぜよう。不可思議な物語。
       語り手は不肖、【偏愛】の石榴也」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:34:33.05 ID:Jb2oj2pJ0<>

「遥か昔へと時を遡る。とある村に一人の男がおった。
この男は神への供物として捧げるための作物を耕しておったそうな。まじめに働き、毎年たくさんの実りを得ていた。
村での評判もよく、嫁を貰ってくれという話は後を絶たなかった。


ところが彼には、既にその心に決めた娘がいた。
時の天皇の末娘にじゃ。彼は、ある日実りを見に来た少女に一目惚れをする。
少女の方も男を見て惹かれるものを感じておった。


しかしある日、不幸なことに、神がその少女の魂を望んだ。
青年は少女を連れ、逃げだした。
馬が倒れ、食料が尽き、ついに二人は捕まってしまう。


生贄の祭壇に少女は立たされ、青年はその目の前で磔にされた。
少女の必死の説得空しく、青年の処刑が決まる。
それはそれは恐ろしいものじゃった。


耳や鼻は削がれ、両の眼は潰され、数百もの切り傷が刻み込まれた。
ついに男がこと切れた時、少女は天を劈く叫び声をあげた。
彼女は内から溢れ出る力に身を任せ、周囲全てを焼き払ったそうな。
そして神に一矢報いるべく、荒れ狂う炎の力を用いて戦いを挑んだ」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:36:55.94 ID:Jb2oj2pJ0<>




((-■-))「この力こそが、記録の中で最初に顕現したもの。その後、現在まで続く【情】の系譜の始まりである」

二人は敵であることも忘れ、話を聞き入っていた。
石榴の語りはそれほどまでに洗練されたものであった。

( ^ω^)「話は分かったお………それで、どうしてそれが雪姫様を狙うことに繋がるんだお?」

((-■-))「急かすでない。まだ少ししか話しておらぬだろう。当然、続きがあるのじゃ」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:39:12.19 ID:Jb2oj2pJ0<>


「三日三晩戦い続け、少女はついに神に敗れた。
彼女は命からがら逃げ出したようだが、その後の史書に彼女の記述は見つからない。
神もまたその時の戦いで疲弊し、姿を隠した。


その十数年後、再び神がその姿を現した時、
五人の男達がその支配からの解放を叫んだ。
彼らは口をそろえてかつての少女の息子だと名乗った。


神は怒り、世界ごと男達を滅ぼそうとした。
雷鳴轟き大地が震える中で、五人の男達は人にあらざる力と、
五つの宝を使い、ついに神を封印することに成功した。


人々は彼らを英雄として迎え入れようとした。
しかし、この誘いを断り、彼らもまた表の歴史から姿を消した。
再びこの国に敵が現れた時に戦うことができるように」

<>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 22:39:41.63 ID:KrEXxFZ60<> 神に挑むとは大胆な <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:42:34.01 ID:Jb2oj2pJ0<>

((-■-))「これこそが歴史の真実。そして儂らこそがこの国を守るための力。
       なぜ自分達が狙われるのか、お主たちが知りたいのはこれであろう?
       儂らの持つこの力は遺伝するものでも、収奪できるものでもない。
       前任者が死んだ時、その特性を最も色濃く持つものに移るのじゃ。
       これで意味がわかったのぅ?」

( -ω-)「そういう………ことかお」

少女を殺し、その力をより自分たちが扱いやすい人物に移すつもりなのだ。
天皇の娘は扱いにくく、最も彼らが望まない適応者なのだろう。

( ^ω^)「それでも…この国を守るためだとしても、姫様は殺させはしないお!!」

心配そうな目で見つめる少女に対し、温かく微笑み、
立ちあがり、残っていた刀を抜く。
長さにおいて利するところは無い。
燃えていた屋敷は火は、既に沈静化していた。

((-■-))「残念だのぅ………。まあよい。久々に話せて楽しかったぞ」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:45:23.30 ID:Z+gK3USe0<> しえーん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:45:27.31 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「許せお」

言葉によって力が発動することは分かっていた。
ならば、その余裕を与えなければいいのだ。
一息で距離を詰め、袈裟掛けに斬りつけた。

((-■-))「いい判断じゃが、別に力なんぞに頼らずとも、儂は強いわい」

錐揉みして地面に叩きつけられる内藤。
全身に鈍い痛みが走り、投げられたのだと知った。

((-■-))「これでほんとにお別れじゃ、安らかに眠れぃ」

小剣が内藤の喉元に振り下ろされる。

ξ;凵G)ξ「やめてええええええええええええええええええええええええええ」

戦いをずっと見守っていた少女が、決着を否定する。
少女の叫びと同時に複数の火柱が上がった。
闇夜を支えるかのように、天高く突き上げる。
内藤をかすめ、仮面の男を焼き殺さんと蠢く。

((-■-))「やれやれ………青年を殺そうとしたのは失敗じゃったか………。
       もう良いわい。殺せ」


<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:50:27.94 ID:Jb2oj2pJ0<>
後ろに飛びずさり、炎から逃れた男は、長い間待機していた部下に指示する。
許可が出たことで、複数の銃口が少女と内藤に向けられた。

ξ;凵G)ξ「はぁっ………はぁっ………」

(; ^ω^)「姫様っ!!」

ξ--)ξ「………」

内藤の言葉に反応するそぶりも見せない。
虚ろな目で敵の集団を見つめ、右手を突き出す少女。

((-■-))「何をやっておる………さっさと撃」

言い終わる直前に、炎が全てを飲み込んだ。
唯一、石榴だけが荒れ狂う炎の中で生存していた。

((-■-))「くそがっ! 小娘め!」

己の力を駆使し、灼熱の火炎から身を守る。
それを見た少女は、左手も同様に突き出す。
熱量は一気に二倍以上に膨らむ。

((-■-))「くそくそくそくそくそおおおおおおおおお」

圧倒的な力の差に押し切られ、男は一瞬で燃え尽きた。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:51:50.95 ID:FHpz+16s0<> 初見だけど面白い 
よくぞ戻ってきてくれた 
支援 <>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 22:53:21.83 ID:KrEXxFZ60<> ちょっと強すぎやしませんかねえ……? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:53:35.80 ID:Jb2oj2pJ0<>
(; ^ω^)「姫………様?」

口元に笑みを浮かべる少女を見て、戸惑いが隠せない内藤。
屋敷の中で力を使った時とは別人に見えた。

(; ^ω^)「姫様っ」

前のめりに倒れる少女に駆け寄り、受け止めた。

(; ^ω^)「姫様っ。雪姫様っ」

ξ゚听)ξ「姫様姫様うるさい……。内藤………? どうなったの?」

( ^ω^)「おかげで助かりましたお。それよりも、増援が来る前にここを離れた方がいいと思いますお」

あれだけ派手な現象が起きたのだ。
近くで待機している集団が気づいてもおかしくはなかった。
無事な馬に少女を乗せる。

ξ;゚听)ξ「ちょっと待って、内藤。何か髪を隠すものがないと………」

( ´ω`)「全て燃えてしまいましたお。旅先で調達するしかないですお」

ξ゚听)ξ「そう………。これからどうするの?」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:56:18.02 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「西へ向かいます。以前、外界との接触を断ち生活している漁村があると聞いたことがありますお
      そこでなら、あるいは………」
  
ξ゚听)ξ「任せるわ。ちょっと、疲れちゃった」

内藤の胸を枕にし、静かに寝息をたてはじめる。
空を見上げ、大体の現在位置を読みとると、ゆっくりとその場を後にした。


━━━━━━━━── →← ──━━━━━━━━


翌朝、少女は鳥の声で目を覚ました。

ξ゚听)ξ「ここは………?」

あたりを見回していると、内藤が木の根を枕に寝ているのに気づいた。
足音をたてないようにそっと近づき、寝顔をのぞきこむ。

ξ#゚听)ξ「私を置いて寝るなんて………」

花の絨毯の上に寝そべり、空を見上げる。

ξ゚听)ξ(昨日は何があったの………)
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:58:37.55 ID:FHqAhs/B0<> 久しぶりだな
支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 22:59:19.48 ID:Jb2oj2pJ0<>
彼女には内藤の首にナイフが振り下ろされた時からの記憶がなかった。
気づいた時には内藤の腕に抱えられていたのだ。

ξ゚听)ξ(お腹が空いた………)

耳を澄ますと、流れる水の音が聞こえた。
背の低い木々の間を抜けると、きれいな川の流れが目に入る。
食べ物を探してうろつくが何が食べれるのかわからず、諦めて川の水を一口飲む。

ξ゚ー゚)ξ(おいしい………)

冷たい水は渇いた喉を潤す。
後ろを振り返ると、内藤が寝ているのが確認できた。

ξ゚听)ξ(少し、汗臭いし………)

あたりに誰もいないことを再三確認し、服を木にかけ、水に足を浸す。
川の水はほどよい冷たさで、心地のよいものだった。
彼女が水遊びをしたのは生まれて初めてであり、
時間を忘れ楽しんでいたのも仕方のないことだろう。

(  ゚ω゚)「姫様!? 姫様ぁー!! うおおおおおお」

目が覚めた内藤は、少女がいないことで半狂乱になっていた。
声をかけようにも、何も身に着けずに内藤に声をかけるのは躊躇われた。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:01:22.64 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「お?」

木に引っ掛けていた着物が内藤の目につく。
川の中で身を隠している少女にはまだ気がつかない。

(; ^ω^)「姫様、そこにいましたのか………お」

着物だけがそこにあると知って、再び顔面が蒼白になる。

ξ;゚听)ξ「内藤、私はここにいます。いますから、あちらを向いていなさい」

岩影から声だけをかける。
なぜか敬語になっていた。
それによって内藤は自分の失態に気付く。

( ^ω^)「もももも、申し訳ございませんお。水浴び中だとは思いもせず。は、すぐに」

落ち着きを取り戻し、すぐに後ろを向く。
背後から聞こえる水の音が妙に大きく聞こえた。

( ^ω^)(す、少しくらいなら振り向いても………)

横目で後ろを流し見ると目の前に足があった。
その意味を理解する前に、衝撃で頭が地面にぶつかった。

<>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 23:02:02.91 ID:KrEXxFZ60<> ナイフはちょっと南蛮風味すぎじゃないすか <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:02:28.02 ID:RlmRRvCB0<> 内藤さんなにしてはるんすか <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:03:44.83 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ#゚听)ξ「姫の着替えを除こうとするなんて、信じられないわ。それが従者のすることかしら?」

(#)^ω^)「すいませんでしたお」

ξ゚听)ξ「まあいいわ。帯だけ結んで頂戴」

(#)^ω^)「かしこまりましたお」

痛む頭を抑え、帯を結ぶ。

ξ゚听)ξ「で、ここはどこなの?」

( ^ω^)「わかりませんお。だいぶ海には近いと思うのですが」

ξ゚听)ξ「お腹が減ったのだけど……」

( ^ω^)「今朝集めておいた果実がありますお」

朝早くこの場に到着した時、内藤はすぐに食事を探し始めた。
たまたま果実のなる木を見つけ水洗いをし、いつでも食べれるようにしておいた。
大きな葉の上に並べて置いていたのだが、少女はそれに気付かなかったようだ。

ξ゚听)ξ「そう、食べたら出発してね」

( ^ω^)「分かりましたお」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:06:04.80 ID:Jb2oj2pJ0<>
拳ほどの果実を一口、齧る。
中からはたっぷりの果汁が出て、口の中を満たす。

ξ*゚听)ξ「おいしい」

( ^ω^)「お口に合ってよかったですお」

果実の山はあっという間になくなった。

( ^ω^)(今後のも食べられてしまったお………)

食べ終わった二人はすぐに移動を開始する。
川に沿って下るにつれ、木々はよりいっそう高く茂っていた。

ξ゚听)ξ「木が邪魔で……」

( ^ω^)(何で川を下ってるのに、森が深くなるんだお?
      こんなの、聞いたことがないお)

ついに馬が進むのを拒むようになり、内藤は川縁を進むのをあきらめた。
森の抜け道を探すため、川を背にする。

( ^ω^)(日の向きから、今は南に進んでいるお。これなら森を抜けるのにそんなにかからないはずだお)

<>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 23:06:25.60 ID:KrEXxFZ60<> 笹の葉で包んだおにぎり食いたくなった <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:08:10.53 ID:Jb2oj2pJ0<>
内藤の予想とは異なり、森の切れ目に出るまではしばらくかかった。
まるで区切られたかのように、突然森は終わりを告げ、そこからは海を一望することができた。
二人は高い崖の上に出てきていたのだ。
これからどう進むか迷っていると、背後から子どもの声が聞こえてきて振り向く。

「やめろっ! 離せよっ!」

( ^Д^)「いいから早く抜け道を教えろよ、なぁ。悪いことは言わねぇからさぁ。
      痛い目には遭いたくないだろ?」

「言わないったら言わないんだ!」

( ^Д^)「仕方ねぇなぁ。喋らないんじゃ仕方ない」

数人の子どもたちが山賊らしき男達に捕まっていた。
賊の一人が痺れを切らせたのか、子どもを張り倒す。

( ^Д^)「ほらほら、喋る気になったか?」

倒れた子どもの腹を容赦なく蹴飛ばす。

蹴られた子はうめき声をあげ、うずくまる。
他の子どもは泣きだしていた。

( ^ω^)「何があったのか知らんが、やめろお」

見過ごすことができなかった内藤は止めに入る。

<>
忍法帖【Lv=40,xxxPT】 <><>2011/11/12(土) 23:08:16.39 ID:p90kD4W10<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:10:13.60 ID:Jb2oj2pJ0<>
(#^Д^)「ああん? 手前らには関係のない話よ。
      それとも、代わりにこの森の抜け方を教えてくれんのかい?」

( ^ω^)「一体何の話だお?」

( ^Д^)「しらねぇのか。ならいい。さっさと金目の物を置いて消えな」

男が刀を抜き放ち、内藤に向ける。

( ^ω^)「抜いたおね?」

山賊の刀は真ん中で半分に折れた。
余りの速さに、折られた男は何が起きているのか理解できていなかった。
内藤の右手に握られた抜刀済みの刀を見て、思考が追いついたようだ。

(; ^Д^)「ひっ………命だけはっ」

( ^ω^)「もとよりそのつもりだお。さっさと消えるお」

折れた剣を投げ捨て、仲間を引き連れて逃げ去った。
それを見て鞘に納める。

ξ゚听)ξ「あなた達、大丈夫?」

「にーちゃん達………ありがとう。
村に来てけれ。お礼がしたいんだ」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:11:33.65 ID:FHqAhs/B0<> ヤマタノオロチみたいなのが出たとこまでは読んだっけ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:12:14.39 ID:Jb2oj2pJ0<>
内藤は視線で主に尋ねる。

ξ゚听)ξ「別にかまわないわよ。どうせ行く当てもないんでしょう?」

( ^ω^)「案内してくれるかお?」

「こっちだよ、ついてきて」

少年達は内藤達が来た道を辿り森の中を進む。
鬱屈とした森の中を躊躇わずに歩いてゆく。
突然、子ども達が左に折れた。

( ^ω^)(こんなところに曲がれる所なんかあったかお?)

「へっへー。ここの木はどけることができるのだ!」

少年が木に力をかけると、ゆっくりと横に移動し、
大人がちょうど通り抜けられるくらいの幅ができる。

「地面の下に滑車が埋まってるの。
さっきはお兄ちゃんを助けてくれてありがとう」

二人が驚いていると、年端もいかぬ少女が笑いながら説明してくれた。
そこからはずっと上り坂になっていたのだが、子ども達は難なくかけ登っていく。
姫は既に心折れ、内藤の牽く馬に乗っていた。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:13:27.05 ID:0PHB3/3G0<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:14:24.82 ID:Jb2oj2pJ0<>
侵入者に対する警戒からだろうか。
人の通ったような道が何本も交差しており、道を知らなければ迷ってしまうように作られていた。

「ここだよ」

再び少年が木を横にずらす。
そこには山に開いた横穴が隠されていた。

「中は暗いから気をつけて」

横穴の中は緩やかな下りになっており、何度も折り返している構造になっていた。
明らかに人工的に作られた穴だった。

( ^ω^)「痛っ」

「大丈夫ー?」

( ^ω^)「頭をぶつけただけだお、気にしないでくれおー」

前が見えないため、
内藤は気持ち前かがみで歩くことにした。

ひたすらと九十九折りの道を下り続ける。
後ろで馬に乗っている姫が折り返しを数えていたが、50を超えたところくらいから聞こえなくなった。

「見えてきたよ」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:17:30.90 ID:2G/LC4R80<> 支援しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:18:26.49 ID:Jb2oj2pJ0<>
また一つ角を曲がった時、洞窟内に光が見え始めた。
初めは弱かった光も、角を折れるごとにだんだんと強さを増していく。

「ようこそ、桃源郷へ」

突然、肌に圧迫感がなくなる。
何度か瞬きをし、外の明るさに目を慣らすと、
少年が桃源郷といった意味をすぐに知った。

鶴が翼を広げた地形をしているその地は、まさに桃源郷の名を冠するにふさわしい場所であった。
両翼は遥か上に向かって伸びており、所狭しと植物が生い茂っている。
外界との繋がりを断つかのように、背面と両側には高い壁が阻む。

眼下には果実のなる樹、畑、田、の順に綺麗に並び、その先は家が連なっていた。
さらに奥には入り江が見え、静かな波音を奏でていた。

( ^ω^)「ここが………。姫様つきまし………」

少女は馬の首に持たれるようにして寝ていた。

「おらの家に案内するから」

「田八! そいつから離れろ!」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:22:12.99 ID:Jb2oj2pJ0<>
数十もの長物が内藤達を囲む。
男だけではなく、女達もそれぞれの手に武器を握っていた。

「動くんじゃねぇ。この場所を知られたからには、村で生きるか、ここで死ぬかのどっちかを選んでもらおう」

( ^ω^)「そ、それは困るお」

「やめてけれ! 父ちゃん! 其の人達はおらを助けてくれたんだ!」

田八と呼ばれた少年が内藤達と大人の間に割って入る。

「母ちゃん! お兄ちゃんの言うことは本当だよ!」

盗賊に襲われてた子ども達が田八と呼ばれた少年の横に並び、二人を庇う。

「参ったな………。しかしこの場所を知られては………」

( ^ω^)「必ずや、この場所の秘密は守り抜きますお」

「息子達を救ってくれた主を信じぬわけではないが………宗兵衛!仁兵衛! 入口を使えぬようにしておけ。
客人よ、歓迎しよう。ここが地上の楽園である!! ………と言いたいところなんだが」

二人の大柄な男が内藤が来た穴に入って行った。

「近年は不作でな。もてなす余裕がないのだ」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:24:39.41 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ^ω^)「そんなの結構ですお。よかったら寝る場所を貸していただけませんお?」

「それならうちに寄ってください。子どもたちも喜びます」

等間隔で植えられた果樹地帯を抜け、作物が実を膨らませる畑を越える。
その先にある家はどれも全く同じ構造をしており、内藤には区別がつかなかった。

侵入者騒ぎは収まったものの、誰も彼もが外の世界から来た二人に興味を抱いており、
二人の後ろをついて歩いていたため、非常に落ち着かなかった。
部屋の中に布団をしいてもらい、そこに少女を寝かす。

「これからどうされる予定なので?」

簡易な食事を摂った後、話し合いの場が起こる。
村の大人が数人、内藤と席を並べた。

( ^ω^)「実は行く当てがなくて困ってるんですお。
      連絡をとりたい人がいるのですが、手段がなく……」

「この町はもうずいぶん長いこと外界との接触を断っております。
残念ですが、便りを届けると言うことは………」

( ^ω^)「そうかお………この近くに村はないのかお?」

「この一帯に村があると言う話は聞いたことがありませぬ。
外からの訪ね人も私の爺さんが子どもの時に来たことがあるとかないとかぐらいで」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:24:41.11 ID:RlmRRvCB0<> 雪姫の髪は隠さなくてもいいのか <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:26:43.65 ID:Jb2oj2pJ0<>
もはや八方ふさがりであった。
空姫と連絡はとれず、どこが安全なのかもわからずに、
たださまよい続けることはできないだろう。
内藤はともかく、少女がもたないだろうことは予想に難くない。

( ^ω^)(都に行けば空姫様に会えるはずだお。でも、雪姫様を連れて都には………。
      くそっ! 考えろお。………っ!)

( ^ω^)「……海を進むのはどうでしょうかお?」

海、の一言で村人の表情に緊張が走る。
疑問を投げかける内藤に答えたのは、町の長老。

「十数年前のこと。強い嵐がこの村を襲い、それ以来、年に数度は嵐が来て村の実りを奪っていくのじゃ。
この怪現象を恐れ漁に出る者がいなくなり、村は貧しい暮らしをしておる。
海を行くのはやめた方がよいじゃろう」

( ^ω^)「………海を行くのは危険だということですかお?」

「それだけではない。このあたりは複雑な海流で村の人間しか船を出せぬ。
見たところ武士であるお主では、すぐに沈んでしまうじゃろう」

( ^ω^)「そうですかお………。とりあえず、今日のところはもう遅いのでここまでにしましょうお。
      明日、海を見に行かせていただきたいですお」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:28:46.35 ID:Jb2oj2pJ0<>
「わかりました。それでは、私共は失礼しましょう」

「あの娘の隣に布団を敷いておきましたので、どうぞお使いください」

家の主に案内され少女が寝ている部屋に戻ると、横に布団が敷かれていた。
礼を述べ、布団を壁際までずらし寝る。


━━━━━━━━── →← ──━━━━━━━━


ξ゚皿゚)ξ「〜〜〜っ!!」

腹に走る衝撃で内藤は無理やり眠りから覚まされた。
痛みでうつむきながら、何が起きたのか確認するために頭をあげる。
そこには両手を腰に当て仁王立ちしている少女がいた。

ξ;゚听)ξ「お、おなか減った……」

昨日晩何も食べずに寝ていたのだ。
それも当たり前だろう。
だが、腹を蹴って起こすのはやめて欲しい、そう心から思う内藤であった。

(#)^ω^)「も、もう少しお慈悲を………」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:30:59.62 ID:Jb2oj2pJ0<>
ξ゚听)ξ「うー………」

少女の機嫌が悪いのを再確認し、すぐに食事をとりに行った。
痛む腹を抱えながら。

( ^ω^)(なんで今日はこんなに機嫌が悪いんだお………)

内藤は知らなかった。
布団を離していたにもかかわらず、寝ぼけた少女が内藤の布団にもぐりこんでしまったということ。
朝目が覚めた時にあまりの驚きでつい蹴っ飛ばしてしまったのだ。

( ^ω^)「お持ちしましたお」

昨晩内藤が食べたものと同じものが用意されていた。

ξ*゚听)ξ「あ、ありがとう。それで、どうするの?」

( ^ω^)「……どうもよくないですお。暫くはここにいるのもいいかもしれませんお」

体内時計とのずれに違和感を感じ、
外を見ると夜明け前のように暗いままであった。
その謎はすぐに解決する。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:32:43.01 ID:0PHB3/3G0<> 支援さ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:33:41.47 ID:Jb2oj2pJ0<>
「ここは東に高い山がありますので、日が差し込むのは少し遅いのです。
もしここに滞在されるのでしたら、仕事を手伝ってもらうことになりますが、構いませんかな?」

( ^ω^)「私が二人分働くと言うことでもいいですかお?」

「別に問題ないですよ」

多少驚いた顔をする家主だが、快諾してくれた。

「それでは、改めて子どもたちを紹介しましょう。
男の子が田七、女の子が七実です」

「にーちゃん、暫くよろしくな!」

「七実です、何かわからないことがあったら聞いてください」

( ^ω^)「こちらこそよろしくだお。それで、仕事は何をすればいいんだお?」

「子どもたちに外の話をしてやってください。昼ごろになれば海を見に行かれても結構ですよ。
その時は、田七、七実、案内してあげなさい」

「わかった(わかりました)」

内藤が外の世界の話を始めると、町中の子ども達が押しかけてきた。
大人達も興味を示し、あちこちで聞き耳を立てている。
随分と長いこと話したつもりが、空が一向に明るくならない。
疑問に思った内藤が口に出そうとした時、大粒の雨が降り始めた。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:35:42.39 ID:Jb2oj2pJ0<>
「嵐だ! 嵐が来るぞ!」

一人の男の叫びで村は混乱に陥った。
子どもたちは自分の家へと走り、大人は戸締りを確認する。

「あなた達も早く!」

「ぐるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる」

雷鳴とともに、獣の唸り声が町中にこだました。
吹き荒れる風の音の中ではっきりと聞こえた声。
内藤はその持ち主を嵐の中心に見つけてしまう。

( ^ω^)「なんだお………あれはっ………!!」

ξ゚听)ξ「内藤っ」

巨大な身体と爪牙に体が竦み動けなかった内藤だが、
少女の声で我に返り家に戻ろうとする。

( ФωФ)「これはこれは……」

内藤の目の前で少女の体が宙に浮く。

( ^ω^)「姫様っ」

村人の前であったが、もはや内藤に隠す余裕はなかった。
飛び上がり、助けを求める両手を掴む。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:36:32.82 ID:2G/LC4R80<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:37:44.30 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ФωФ)「ぬ……以外と重いな」

一層強い風が吹いたかと思うと、二人の体は宙に浮かび上がった。
みるみる間に地面が遠くなり、人の姿が視認できなくなる。

( ФωФ)「久しぶりだ………実に久しぶりだな。吾輩が城に招こうではないか、───姫よ」

雨と風の音でが邪魔をし、その声がなんと言ったのか最後まで聞こえなかった。
海の上を連れられ、二人はとある島の中に丁寧に下ろされた。
巨大な釜の形をした山の中心地に。
雨と風が止み、そこで初めて、声の主をしっかりと認識する。

古代より生存し、神に等しき力を持つと謂われる知識の獣。
全身に纏った強靭な鱗はどんな弓矢も通さず、
消して砕けることのない爪は山をも穿つ。

ξ;゚听)ξ(; ゚ω゚)「龍…………」

( ФωФ)「くっくっく。こうして話すのは久しぶりじゃのう。この地に縛られ、深き眠りにつかされたときはもう会えぬかとも思ったが」

龍のあまりにも友人然とした話し方に二人は開いた口がふさがらない。

(; ^ω^)(姫様、お知り合いですかお?)

ξ;゚听)ξ(そんなわけないじゃない。内藤こそ知らないの?)
<>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 23:37:58.89 ID:KrEXxFZ60<> 能力者か <> ◆gMIGdyOjeA <><>2011/11/12(土) 23:39:47.96 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ФωФ)「ふむ、長き年月が記憶を蝕んでしもうたか? かっかっか。まあよい。吾輩もたいして覚えとらん。
        ところで、その男は誰ぞ? 感じたことのない雰囲気だが」

( ^ω^)(やっぱり姫様のお知り合いみたいですお)

ξ゚听)ξ「えっえっと、召使い……みたいなものよ」

( ФωФ)「ほう。随分美味そうな匂いをしとるものだから喰ってしまおうかと思ったわ」

口を開けて笑うことで内藤の眼前に、不揃いな鋭い牙が晒される。
喰い殺されてしまうかもしれなかったのだから、内藤は笑うに笑えない。
せめて機嫌を損ねないようにと、引き攣った笑みを返していた。

ξ;゚听)ξ「た、食べちゃだめよ」

( ФωФ)「もう人を喰うほど力を欲してはおらん。ただ食うものは無くてはならんからな、あの島から頂いておるがの。
        それでも最低限にしておるぞ。どうせ封印で朽ちゆく此の身。
        今更暴れようなどとは思わん」

その爪で山の内壁をガリガリと削る。。
人間ならばらばらになってしまいそうなその動きさえ、壁には傷をつけることすらできていなかった。


ξ゚听)ξ「それが……封印なの?」

( ФωФ)「そうだ。これのせいでこの島からほとんど出れん。近年力が弱くなってきたような気もするが、
        吾輩も弱っておるので力関係はほとんど変わらずだな」

<>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 23:41:29.28 ID:KrEXxFZ60<> 龍だったか

ぼうや〜よいこだねんねしな〜 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:41:59.68 ID:Jb2oj2pJ0<>
龍の興味が少女に向いている間に出口を探す内藤。
二人が連れ込まれた場所は火山の噴火口のようなところだった。
鉢の形をしていると言えばわかりやすいだろう。
あまりにも深く、自力で壁を登ることはできそうにない。

壁に隙間もないほど書き連ねられている文字を読んでみようと試みるが、
そのほとんどは内藤の知らない文字であった。

( ^ω^)(今使われている文字と似通っているけど……全く読めないお)

結局出口を見つけることができず、内藤は諦め少女の後ろに座る。
龍に帰しててもらうように説得するしか手段がないように思えた。

( ^ω^)(姫様)

ξ゚听)ξ(分かってる)

ξ;゚听)ξ「り、陸地に戻りたいのだけど」

( ФωФ)「何を! まだ再会したばかりではないか! 今宵は酒でも酌み交わそう。
        そちらの下僕、お前もそう思うであろう?」

(; ^ω^)「そ、そう思いますお」

目の前に龍をして誘いに断れるやつがいるだろうか。
いや、いるわけがない、と自問自答する。
少女の責める視線を感じながら、それに気づかない風を装う内藤。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:43:01.52 ID:RlmRRvCB0<> 性質の悪いおっさんに絡まれた気分だ <>
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 <>sage<>2011/11/12(土) 23:44:47.41 ID:KrEXxFZ60<> 龍の火酒 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:44:59.76 ID:Jb2oj2pJ0<>
( ФωФ)「秘蔵の酒があるのだ。何せ吾輩が封印された時からずっと取っておいたもの。
        これほどの銘酒はあるまいて。どこの辺じゃったか……」

身体を少し起こし、辺りを探るようにする龍。
巨体の尾の部分にこの場所に似つかわしくない小さな瓶子が置いてあることに内藤が気づく。
それでも、内藤が持ち上げられるかどうかという大きさであったが。

(; ^ω^)「あ、あの尾の右側に瓶子がありますお」

( ФωФ)「おお、そんなところにあったのか。下僕よ、こちらに持って運べるか」

(; ^ω^)「やってみますお」

落とせば死。頭の中にその一文がぐるぐると回り続ける。
人の身には巨大な瓶子をゆっくりと持ち上げ、龍の頭の前においた。

( ^ω^)「お持ちしましたお……」

( ФωФ)「では、備え付けの酌で注げ。同じ場所に皿もあっただろう」

(; ^ω^)「あの、それが……」

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:47:17.44 ID:2G/LC4R80<> 支援しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:47:40.39 ID:Jb2oj2pJ0<>
龍の言うように瓶子の横には器がうずたかく積まれていた。
とても器と表現できるほど小さなものではなかったが。
それらは一枚を残して粉々に割れていたのだ。
内藤が恐る恐る事情を説明すると、龍は快活に笑いだした。

( ФωФ)「くっくっく……。かっかかかか!!
        何を恐れているか。とって食いはせぬと言ったではないか。吾輩をその辺の獣と並べて考えてもらっては困る。
        そのようなことで、怒って暴れなどせんわ。さっさととってこい」

( ^ω^)「これでよろしいですかお?」

( ФωФ)「これは姫が使え……ああ。汚れておるだろうな。少々待て。おっと酌もだな」

龍の前におかれた一枚の器と酌には幾層もの泥が表面にこびりついており、
洗わなければとても人には使えそうになかった。
器と酌は龍の力により天高くまで打ち上げられた後、嵐の洗浄を受けふわりと着地した。

( ФωФ)「下僕は吾輩が舌の上に直接酌めい」

逃げるに逃げられず、二人は龍の宴に参加することとなる。
龍が器用に窪ました舌の上に内藤はたっぷりの酒を酌む。

( ФωФ)「我らの再会に」

掲げられた酒が飲み干されることは無かった。

<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:50:53.28 ID:p90kD4W10<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:50:57.08 ID:Jb2oj2pJ0<>

激しい音と光で二人と一頭の五感は麻痺する。

(; ФωФ)「ぐあああああああああああああああああああああ」

最初に聞こえた音よりもずっと激しく、悲痛な叫び声が聞こえる。
目の前には質量を持ち、龍の翼を地面に縫いつける雷があった。

(; ФωФ)「ぐっ……何者っ……!!」

( (┃))「どーも、はじめましてだよ」

(´(◆)`)「これはついてるね。いや、ついてないのか。捜索中のお姫様も一緒だ」

壁の上に立っていたのは奇妙な面をつけた者達。
内藤は少女を庇うように間に立つ。

( (┃))「同時に相手して大丈夫なのかーよ」

(´(◆)`)「あの龍は死にかけ。恐れるに足りないだろう」
      (しかし、なぜ彼女がここにいたのか……)

(#ФωФ)「貴様ら……。誰を相手取っているのか分かっているのだろうな……」

( (┃))「ひっ……」

(´(◆)`)「残念ながら、長い年月を経て衰えたあなたの首を持って帰るのが僕らの仕事だ。
      白根、一々怯えるな鬱陶しい」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:53:44.86 ID:Jb2oj2pJ0<>
白根と呼ばれた男はがたがたと震えていた。
震えながらその両手を天に伸ばす。

( (┃))「来たれ雷光。敵の身体を奔りて、恐怖を教えよ」

(#ФωФ)「させるかっ」

龍が吐きだした高密度の水弾は仮面に届く前に消えた。
島内で最も封印が強い鉢の中では、満足にその力を振るえない。
その隙に、白根が詠唱を終える。

( (┃))「穿て! 貫け! 迸れ!」

雷雲が集まり日の光がさえぎられ、間を置かずして百を超える無数の雷撃が降り注ぐ。
それは龍の肉体のみならず、巣である噴火口をも削り破壊していく。

ξ;゚听)ξ「内藤っ」

少女は自らの意志で炎を出し、雷と落石を防ぐ盾とした。
火焔の傘は頭上にひろがり、雷を打ち消し合い、一時的に二人の身の安全を保証する。

ξ;゚听)ξ「どうすれば……」

相談を持ちかけられた内藤はどう答えればよいのかわからなかった。
仮面の男は明確な敵であり、戦わなければ殺されてしまう。
しかし、いかづちに苦しむ龍と共闘するべきなのかが判別できなかった。
そのためにすぐに答えを出せない。
少女もまた答えを出すのを躊躇っているようだった。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:54:30.55 ID:2G/LC4R80<> 支援しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:54:54.72 ID:RlmRRvCB0<> ファンタジーになってまいりました <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:55:48.05 ID:Jb2oj2pJ0<>
(´(◆)`)「実につまらない。僕の役目は無いじゃないか。水の五行に属する龍の相手など白根一人で十分なはずだ。
      たまたま居合わせた彼女の方は僕だと相性が悪す……!?」

(#ФωФ)「舐めるなよ小僧が!」

雷の降る中、それらを避けもせず火口付近に体当たりを行い、そのまま遥か上空へと飛び上がった。
雷雲は霧散し僅かな間だけ空が見えたが、それはまた異なる雲で埋められた。

(#ФωФ)「死ね」

( (┃))「ひぃ!」

剣を模した水の塊が何十も射出された。
それらは的確に仮面付近に直撃する。
激しく飛び散った水しぶきの後、そこには何かが残るとはとても思えなかった。

(  ゚ω゚)ξ゚听)ξ「!?」

しかし、実際には二人が五体満足で其処に立っていた。
水で作られた剣がその特性に逆らい、そのままの形で残っている。
時が止まったかのように。

(#ФωФ)「小癪なっ」

球形の水と線状の激流が縦横無尽に降り注ぐ。
海の水を巻き上げ、無限の嵐となり仮面を襲う。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:56:47.39 ID:0PHB3/3G0<> 支援だ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:57:45.78 ID:2G/LC4R80<> 支援しえん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/12(土) 23:58:53.59 ID:Jb2oj2pJ0<>
(´(◆)`)「零度の理を持って時を止めよ……無限氷葬! さっさととどめをさせこの役立たず」

水は男の周りで全て氷と化す。
龍退治に向けられた二人の能力は【氷】と【雷】。

どちらの能力も龍と戦うにあたって圧倒的優位性を持っていた。
それゆえ終始、圧倒し続ける。

二人を遣わした者に唯一誤算があったとすれば、それは内藤達の存在だろう。

(´(◆)`)「これで終わりにしよう。氷に閉ざされ凍え死ね……氷塊牢!」

内藤達の足元から鉢状の山の壁が氷で包まれていく。
それは上に上に伸び続け、ついに龍の足に絡みついた。
下半身から徐々に体温を奪っていく。
羽が氷に覆われた時、飛ぶ力を無くした龍は内藤達の目の前に落ちてきた。

(メФωФ)「ぐおおおお…………くっ……情けない……この程度の雑魚にやられるとは……」

( (┃))「そ、そこで永遠に寝てろっ!」

龍は半身を氷で包まれ、避け反撃する力は無い。
それを見越し白根は今までよりも一層強力な雷の力を頭上に集めていく。
もはやこれまでと、龍がその瞳を閉じた時。

ξ;-听)ξ「やめてえええええええええええええええ」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:00:57.04 ID:GKTj5O9M0<>
少女が叫び、激しく燃え上がった炎は釜の中の氷を一瞬で蒸発させた。
龍を覆う氷すらもゆっくりと融かしていく。

(´(◆)`)「白根っ!」

(; (┃))「あ……あ……詠唱なしであの威力だと……勝てるわけがない……」

突然の炎に恐怖した白根は、その力の源である言葉を途切らせてしまった。
故に集められた雷はその行く先を失い、散り散りになる。

(´(◆)`)「面倒なことになったな……」

山が揺れた。
振動は最初は小さく、次第に大きくなっていく。

(´(◆)`)「何だ?」

( (┃))「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ」

釜の壁にあたる所に書かれた文字が少しずつ光を放ちはじめる。
ちょうど龍の背面側の場所から時計回りに。
最初はゆっくりと、次第に速度を上げて。

(; ФωФ)「このようなこともしておったのかっ! ぬしらだけでも逃げよ……!」

瞬間、内藤達は島を見下ろしていた。
真下に見える山は外側から崩れていく。
巨体を持つ龍が、その身体よりさらに大きな岩石に押しつぶされていく姿を最後に、
見えざる力は二人の身体をその場から遠ざけた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:03:19.79 ID:GKTj5O9M0<>

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(´(◆)`)「っち。これじゃあ死体を掘り起こすことも出来ないや」

崩落から脱出し、凍らせた波の上に着地した男は口惜しそうに呟く。
隣には気絶している白根が寝ていた。

(´(◆)`)「こいつの力はやっぱり使い勝手が悪いなぁ……強いのにもったいない」

山が崩れ火口が埋まったことで、島は完全に水没した。
火口の海抜はどうやら零よりも小さかったらしい。
彼らの任であった龍の首は取れなかったわけだが、これでは生きているはずもない。
そう判断を下し、彼は男を引きずり帰路についた。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:05:21.43 ID:GKTj5O9M0<>





     ξ゚听)ξ 不可思議姫幻想記のようです【月天封印】
  
           フカシギヒメ   ゲンソウキ


        

弐幕────三日月

           

                     了
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:05:58.60 ID:Z8fVCmLC0<> 乙! <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:07:00.13 ID:egeVF1+p0<> 乙です <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:08:00.66 ID:q3JuixIo0<> えらく長い投下だったな
乙だよ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:08:55.17 ID:inlTm0cf0<> 乙
この先どうなっていくのか楽しみだ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:11:12.47 ID:h/bG0QKB0<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:14:22.88 ID:GKTj5O9M0<> >>8>>49>>69>>112>>149

作り直しです。
完結させるにあたってプロットをすべて手直ししました。

>>90
この作品を復活すると決めましたので
そちらも必ず完結させます。

>>170
完全にミスです。
まとめ様には修正をお願いしておきます。

>>178
彼らは首になりました。


長い間支援、乙ありがとうございました。

書きだめ情報、生存報告はこれまでのようにブログとツイッターによってさせていただきます。
一度逃げ出した作者ですが、最後までやりきります。

最後になりましたが、読んでくださってありがとうございました。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:14:37.01 ID:ZuJpPzGu0<> これはよかった 
乙ぱい <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:15:22.20 ID:fL6vaNAm0<> 前のも続き読みたかったが、ガラっと変わったこっちのもいいな
次も期待して待ってる



乙でした
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:18:33.62 ID:ZuJpPzGu0<> ブログ名はなんてやってるの? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/11/13(日) 00:21:45.47 ID:GKTj5O9M0<> >>224
「明日天気になぁレ」
というFcブログでやっております。

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