7.ロマネスク卿とダイオード卿
- 264 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 02:11:10.24 ID:tJz1Xvvy0
- 7.ロマネスク卿とダイオード卿
――――その日の晩。
この港町に簡素な武装をした異教徒たちが、どっと押し寄せました。
武器を高々と掲げ猛進する異教徒たち。
そして、大群の中には松明をもった異教徒が何人か。
人魂のように恨みを具現化したそれは、皮肉にも闇の中で美しく舞っているのでした。
町の人々はすぐに感づきました。
それが王国軍ではなく異教徒たちだと。
ついに皆が恐れていた日がやってきたのです。
- 265 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 02:15:06.25 ID:tJz1Xvvy0
- 大きな馬たちが街道を蹴りって力強く加速します。
蹄が地を打ちつけ、リズミカルな音が町中に鳴り渡りました。
民衆は感じたことの無い恐怖に冷静さを失うばかり。
_
( ゚∀゚)「王国軍をおびき寄せる! 町に火を放て!」
異教徒たちは大声を上げ町に火をつけて回ります。
逃げまとう民。
今日は一段と風の強い日です。
悲鳴と歓声の混じった絶望の中であっという間に一面火の海となりました。
町中が赤に染まり、熱が大気を支配します。
- 266 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 02:20:50.96 ID:tJz1Xvvy0
- ( ゚∀゚)「来い。呪われたこの地にて貴様を討つ」
城とはいえ、小さな城。
どれだけ準備をしていようと兵力など限られているものです。
それをおびき寄せ、城を手薄にしたところを攻め込むつもりでした。
特別風の強い日です。
火の強さは強まる一方。
まさに地獄でした。
_
( ゚∀゚)「・・・どうやらお出ましのようだな」
大男は目を凝らしました。
まだ火の上がってない暗い地平線から沢山の人影。
次第にそれは迫ります。
王国軍です。
- 267 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 02:23:49.59 ID:tJz1Xvvy0
-
_
( ゚∀゚)「勝利を掴め! クー・フーリンの子らよ! その怒りを剣に込めよ!」
火の光で赤くきらめく一回り大きな剣を高々と掲げます。
地鳴りのような異教徒たちの雄たけびが町中に響き渡りました。
興奮し、皆が皆目を血走らせ闘争心をむき出しにしています。
しかし、王国軍は怯むことなく突き進んでいきます。
/ ゚、。 /
先頭に立っているのはモララー卿でなくダイオード卿でした。
剣を片手に、まっすぐな顔で火の海を目指します。
- 268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/19(日) 02:27:58.09 ID:tJz1Xvvy0
- / ゚、。 /「・・・すでに火の手が上がっているか。これだけ急いで間に合わぬとは情けない」
/ ゚、。 /「だが狙い通りだな。彼らが誇り高き民族で助かる」
誇り高き民族に銃を使うという発想は無い。
銃を持たないダイオードたちにとって血を流さない戦いの舞台は整っていました。
/ ゚、。 /「行くぞ! 絶対に血を流させるな! 騎馬兵は異教徒どもの武器を奪え!
衛生兵は民の安全を確保!」
国王軍は、ごおおおっ、というような雄叫びをあげました。
血を流さないための戦い。
その響きがが兵士たちを鼓舞させるのです。
- 270 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 02:31:24.07 ID:tJz1Xvvy0
- 国王軍は勢いを落とすことなく、熱気に包まれた町へと入りました。
馬の蹄が地を打ち付け、音を立てます。
降りかかる火の粉を物ともせず異教徒たちに向かっていきました。
幾つかの火の粉が当たり、ダイオード卿の伸びきらない髭が多少焦げます。
国王軍の姿をを目視した異教徒たちも武器を構えます。
目を血走らせ、獣のような顔つきで。
_
( ゚∀゚)「モララー卿ではない・・・?何奴か」
大男は大きな剣の切っ先を、向かってくるダイオード卿に向けました。
それを見たダイオード卿は他の異教徒たちに目もくれず大男に向かっていきます。
- 271 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 02:35:28.06 ID:tJz1Xvvy0
- / ゚、。 /「異教徒の長とお見受けする。一つ手合わせ願おう」
ダイオード卿は大男の武器を弾く様に自らの武器を力を込めて当てました。
はじけた様な乾いた金属音が響きます。
_
(;゚∀゚)「くっ!」
大男は武器こそは弾き飛ばされなかったものの、強靭な力で当てられてバランスを崩し、乗っていた馬から
転げ落ちました。
とっさに受身を取り、地にしっかりと足を着いて体制を整えます。
ダイオード卿は馬を止め、大男に切っ先を向けました。
ダイオード卿の黒い大きな馬は落ち着いた様子で地に蹄を立てます。
- 275 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 02:41:54.97 ID:tJz1Xvvy0
- / ゚、。 /「我が名はベルウッド・ダイオード。貴様は?」
_
( ゚∀゚)「・・・ジョルジュだ。王国の腐った犬よ。我が民族の怒りを受けるが良い」
二人が名乗り終わると、ダイオード卿は乗っていた馬からゆっくりと下り始めました。
まるで、そこが戦場ではないかのように。自然に。
/ ゚、。 /
ダイオード卿は地に降り立ち、ジョルジュの興奮しきった顔を見ました。
そして、すでに皺くちゃの顔をもっと皺くちゃにして笑います。
/ ゚、。 /「ジョルジュ。貴様をここで食い止める。この私が聖なる地に血を流させはせんよ」
- 277 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 03:04:34.93 ID:tJz1Xvvy0
-
_
(#゚∀゚)「・・・抜かせぇ!」
周りの鍔迫り合いより幾分も激しい鍔迫り合いが始まりました。
_
(#゚∀゚)「ぬぉおぉおおぉおおお!!!」
/ ゚、。 /(この老いぼれの体には少々こたえるな)
それはまるで竜巻のようです。
平和だった町はどこもかしこも荒れ狂っていました。
この王国軍の登場をもって、兵士と異教徒が奏でる金属音が炎に包まれた町を支配し始めたのでした。
- 290 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 11:11:23.58 ID:9oLao2+Y0
- ―――― 一方、今しがたラウンジに着いたロマネスク卿は燃え盛る町とダイオード卿の戦いを見て、行く先を変えました。
直接城に行ってモララー卿を討つためです。
( ФωФ)「伝令、ダイオード軍に我が軍隊の三分の二を町に向かわせたことと、
我輩は少数の兵を引き連れ城に向かうことを伝えるのである」
ロマネスク卿は疾走します。
大きな赤黒い馬は息を荒げ、今にも崩れ落ちそうです。
夏にしては冷たい夜風がロマネスク卿を打ちつけます。
- 291 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 11:16:18.39 ID:9oLao2+Y0
- 夏にしては冷たい夜風がロマネスク卿を打ちつけます。
( ФωФ)「もっと速く・・・! 町が燃え尽きる前に・・・」
町から城まですこしだけかかります。
元は小さな軍事拠点だったものですから、丘の上に立っているのです。
それまでにモララー卿と鉢合わせれば、そこで討つ。
町が燃えているのでモララー卿は兵を繰り出してくるだろう。
そう考えていました。
- 293 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 11:20:09.66 ID:9oLao2+Y0
- ( ФωФ)「民よ、許せ。だが、今全てを終わらせよう」
独り言のように呟き、人影の無い闇の中を何頭かの馬が駆けます。
蹄が土を抉り、撒き散らして。
後ろには赤に輝く町。
夕日のように美しい輝きを見せていました。
しばらくして、遠くに城が見えてきました。
城はシンと静まりかえっていて、廃墟のような佇まい。
ロマネスク卿は不思議に思いました。
- 294 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/19(日) 11:24:50.39 ID:9oLao2+Y0
- ( ФωФ)「何故、兵が出ていない・・・。町が燃えているのがわからんのか?」
ロマネスク卿は、そんなはずは無い、というふうに馬に鞭を入れました。
鞭が入り、馬はいっそう加速します。
より土を抉り、撒き散らして。
シンとした闇の中で疾走する兵とその主。
焦る気持ちが体を駆り立てながらも、その不思議なラウンジの光景に、
危機感を感じつつ、しゃかりきになって城に向かっていくのでした。