4.ラウンジ公園
114 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 11:52:49.33 ID:VqFtaIxD0
4.ラウンジ公園

それからというもの、ブーンは毎日のようにお嬢様に会いにきました。

( ^ω^)「空けておー」

川*゚ー゚)「今空けるから待って」

('A`)「ブーン、スカーフが緩んでるな・・・。お嬢様の前だというのに」

( ^ω^)「おっおー。くすぐったいおー」

('A`;)「ええい、動くな!」

川 ゚ー゚)「ふふっ」

時には新鮮な魚を持って。
町の楽しい話を持って。
亡くなったお父さんの話。
優しかったお母さんの話。
塔に暮らしているお嬢様にとっては毎日が斬新そのもの。

それはまぎれもなく幸せな日々でした。

115 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 11:54:29.33 ID:VqFtaIxD0
―――それから三年と半年たったでしょうか。
二人の関係は縮まり、ついに恋愛感情が芽生え始めました。
純粋な恋愛。
もちろんドクオもお坊ちゃまも知っています。
お嬢様たちの幸せが二人の幸せであるのです。
ドクオたちは何も言わずにそれを見守っていました。





そんな中、あることが起こりました。


116 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 11:56:59.85 ID:VqFtaIxD0
( <●><●>)「これ以上父を抑えることは不可能です。近いうちに戦争が起きるでしょう」

塔の一室にて静かな声が響きました。
いつもとは違う声色。
いつもとは違う顔つきで。

川 ゚ -゚)「・・・・・・ここが戦場になるのか?」

('A`)「残念ですが、なるでしょうな」

リー、リー。
外では、闇の中で夏虫たちの美しい音色が鳴り響きます。

( <●><●>)「このままでは町の人たちが戦渦に巻き込まれます。私が至らなかったばかりに・・・」

117 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 11:59:32.35 ID:VqFtaIxD0
川;゚ -゚)「違う! 兄様のせいではない」

声をかぶせる様にお嬢様が力強く言い放ちました。
その声は少し震えて、今にも泣き出しそうな声です。

川  - )「ここから見えるあの家族も、ブーンも、みんな」

川  - )「戦争に巻き込まれてしまうの?」

('A`)「・・・私が掛け合って、何とかなら・・・」

( <●><●>)「ならないでしょう。もう無理です」

お坊ちゃまの口から珍しく弱気な声が漏れました。




そこから塔の一室は凍りつくかのように一切の音を失いました。

118 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 12:01:39.08 ID:VqFtaIxD0
そして、ワカッテマス様が沈黙を破り、無表情でこう言ってのけました。

( <●><●>)「クー。ドクオ。私たちの父を」


( <●><●>)「狂った父を殺そうと思う」

しかし、声が震えていました。
その大きな目は赤く、十二分に潤ったそれから涙がいまにも零れ落ちそうでした。

大いに悩んだ結果です。
眠れぬ夜も過ごしました。
何をしていても考えることはそればかり。


119 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 12:05:54.88 ID:VqFtaIxD0
川  - )

お嬢様は何も言いませんでした。
ただただ俯いていて、二人にはどんな顔をしているのかわかりません。

少しだけ間をおいてお坊ちゃまは続けます。

( <●><●>)「明日、毎年行われる狩りの行事があります。
       場所はいつもと同じでラウンジ公園です」

( <●><●>)「どうにかして私は父と二人っきりになります」

( <●><●>)「ドクオ」

('A`)「はい」

( <●><●>)「猟銃で父を撃ってください。終わらせましょう。全てを」

120 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 12:08:52.25 ID:VqFtaIxD0
('A`)「望むのならば・・・私は撃ちます」

ドクオはまっすぐと見つめるお坊ちゃまに目を合わせました。
何時にも増した彼の目力は、たじろぐほどの妙な力強さを感じます。
決意の力でしょうか。

( <●><●>)「私はこの地を統治できるほどの権力を持っていません。
       ですが、狂った父をそのままにしておくことはとても危険な行為です」

( <●><●>)「そして、この先もっと狂うでしょう」

( <●><●>)「あなたたちは知らないでしょうが、父は夜な夜な異教徒の淑女を連れてこさせて、その手で殺します」

( <●><●>)「それほどまでに・・・もう・・・・・・」

121 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 12:10:56.17 ID:VqFtaIxD0
川  - )

今まで動かなかったお嬢様が少しピクッと反応しました。

( <●><●>)「せめてこの家のもので決着をつけたい」

涙こそは出ていませんでしたが、声が上ずり、感情が溢れていました。
そして一つ咳払い。

( <●><●>)「わかってくれるね、クー」





低く落ち着いた声。
それに引き込まれるようにお嬢様は、コクリと頷きました。


126 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 12:32:07.93 ID:VqFtaIxD0
( <●><●>)「ドクオ。あなたには迷惑かけます」

('A`)「いえ・・・」

うまく答えることができませんでした。
しかし、その与えられた仕事に不思議と葛藤はありません。
まるで泥を掴んでいるような、なんともいえない不思議な気持ちが、ドクオをいっぱいにします。



( <●><●>)「では、そろそろ戻ります。後は頼みました」

そう言うとお坊ちゃまはいつもの様にツタをくだり部屋を後にします。



再び部屋に静寂が訪れました。
お嬢様はずっとずっと俯いたまま。
起こっているのかも、泣いているのかも、わかりません。

128 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 12:34:09.98 ID:VqFtaIxD0
川  - )

('A`)「お嬢様・・・」

お嬢様はずっと強く拳を握っていました。



理解はできるのです。
理解はできるのですが、ただやるせない。



同じ血の流れている兄が、自分たちに生を与えた父の命を奪うのです。
困惑しないわけがありません。


129 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 12:36:27.74 ID:VqFtaIxD0
お嬢様はスッと立ち上がって窓に寄ります。


もう大人といっても差し支えないほどはっきりとした顔立ちが、月の光に照らされます。
可憐な顔立ちに垣間見える深く、悲しい表情。目には涙を溜めて。





川  - )「どうか・・・」

('A`)



川  - )「どうか、終わらして」


130 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 12:38:35.18 ID:VqFtaIxD0
搾り出した言葉がそれでした。
決意したかのような低い声。
細く白い手で目に溜まってた涙をぬぐい窓を閉めます。



そして、凛とした姿勢でドクオに振り向き、

川 ゚ー゚)「私は大丈夫」

川 ゚ー゚)「この家を守って」

と微笑みました。
強く、どこか優しい微笑です。


134 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 13:15:30.01 ID:VqFtaIxD0
月に照らされたそれは暗い室内の中で何よりも煌びやかで、どんな勇敢な者よりもたくましい。
ドクオにはその様に感じました。



('A`)「必ず・・・」

('∀`)「遂げて見せます」


夏の夜風が窓を叩いて音を立てます。
その生暖かい風に吹かれて、木々がざわめいていました。

いつまでも、いつまでもざわめいていました。


135 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 13:18:38.76 ID:VqFtaIxD0
――――狩りの行事。
毎年、夏に行われるラウンジ地方からサロン地方までの爵位のある者だけで行われる、
伝統ある狩猟祭です。


その中にはモララー卿とお坊ちゃまも入っています。
領主たちの交流を深めるという名目で始められたそれは、領主制が失われてもなお、続いているのでした。
今年の狩りの行事も人数が集まり、それなりの規模で行われようとしています。


昔、ラウンジ公園にはオーロックスなどの動物が沢山いたのですが、今となっては狩れる動物は激減。
猪くらいしか満足に狩れないのです。
それは、ほとんど狩りという名目だけを借りた、交流の行事と成り果てているのでした。

136 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 13:23:46.60 ID:VqFtaIxD0
ドクオはモララー卿とお坊ちゃまを馬車でラウンジ公園へ送った後、自分も猟銃を持ち、公園へと入ります。


('A`)


ドクオは茂みへと身を隠しました。


城を出るときも、馬を操っているときも、こうして猟銃を片手に身を潜めているときも。
これほどまで落ち着いた気持ちは初めてでした。
目の前の茂みから臭う土の香りと、草の匂いが混ざったのがドクオの嗅覚を刺激します。

137 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 13:27:37.46 ID:VqFtaIxD0
お坊ちゃまの言うとおりなら、モララー卿とお坊ちゃまは二人っきりになる。
それを信じてドクオはじっと待ちます。

偉そうな人たちが集まり始めました。
久方ぶりに顔を合わせるわけですから、ただの挨拶でも話は弾みます。


| ^o^ |「らうんじの もららー きょう おひさしゅう ございます」

( ^Д^) 「今年はどれだけの猪が狩れますかな」

( ・∀・)「はっはっは。そんなに期待しないでいきましょう」



しばらく経ち、沢山の偉そうな人と一通り話し終わったモララー卿は、お坊ちゃまと一緒に
人のいる場所から離れました。
それを見ていたドクオは、少しだけ体が震え始めます。

138 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 13:29:56.66 ID:VqFtaIxD0
震えに反応するように木々がざわめきました。
生暖かい風。湿気を帯びたような夕暮れの風です。


お坊ちゃまとモララー卿は二人きり。
今がチャンスでした。
ドクオは猟銃を構えます。

川 ゚ー゚)『この家を守って』

('A`)(この家を守って、か)


構えた瞬間、脳裏にお嬢様の顔が浮かんだ気がしました。

139 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 13:32:48.58 ID:VqFtaIxD0
ゆっくりと狙いを定めます。
動作の一つ一つが慎重そのものでした。

狙いはモララー卿。
お坊ちゃまとお嬢様の父であり、ドクオの主人です。



ドクオの耳から一切の音が無くなっていきます。
視界に雄大な自然が映し出されることはありませんでした。
周りから黒いふちのようなものが真ん中へと迫り、眼中にはモララー卿。

引き金に指をあわせます。


141 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 13:35:41.69 ID:VqFtaIxD0
パン。


乾いた低い破裂音が遠くの山に跳ね返り、こだましました。


木に止まっていた鳥たちが一斉に逃げ始めます。
自然が、ざわつきました。



(;<○><○>)「んぐぅ!」



( ・∀・)

('A`)


142 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 13:38:21.84 ID:VqFtaIxD0
お坊ちゃまは静かに倒れこみます。


その口からはどす黒い血がとめどなく流れていました。
手足は痙攣し、反り返ったような体制で緑に色づいた地をのたうち回っています。



ドクオは引き金を引いていませんでした。
猟銃からは煙も出ていません。硝煙の匂いも立ち込めていません。

144 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 14:04:28.98 ID:VqFtaIxD0
( ・∀・)「ワカッテマス?」

(;<○><○>)「んごっ・・・・・・ごご・・・」

( ・∀・)

モララー卿はすばやくお坊ちゃまを抱き寄せました。
抱き寄せた枯れ枝のような手はプルプルと振るえ、支えるのが精一杯であるかのように頼りなさげ。
衰弱しきった手でお坊ちゃまを強く強く抱きしめます。



( ;∀;)「だ、誰ぞ・・・」

( ;∀;)「誰ぞ在れぇ!!」

モララー卿の声に気づいた近くの護衛が駆けつけました。


護衛たちがお坊ちゃまのもとに駆け寄り、懸命に何かを叫びます。

145 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 14:08:44.58 ID:VqFtaIxD0
ドクオには何がなんだかわかりませんでした。

その血はなぜお坊ちゃまから出ている?
引き金を引いてないのにどうして倒れる?

いくら考えても、混乱しきった彼の頭の中では疑問は解決しません。



ドクオは、その慌しく騒ぐ貴族たちを茂みに混ざって、ただただ眺めるしかありませんでした。
力なく、虚ろな目で。


146 名前: ◆24es8un4MA :2010/12/17(金) 14:11:42.03 ID:VqFtaIxD0
( ;∀;)「・・・・・・おぉ・・・おお・・・・・・」



すでに日は暮れ始め、空は綺麗な紫色に染まっていました。
薄い雲が流れる中、鳥たちが歌声を奏でます。
風が優しく吹き、つられるように木々たちの歌声。


幻想的な空の下、公園に響き渡るのは自然の息吹とモララー卿の嗚咽だけでした。


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