3.元気な若い水夫
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 02:41:39.17 ID:Kia0C6X20
3.元気な若い水夫

その男はブーンと名乗りました。
悪いことなど一回もやったこと無いような、純粋な顔をした青年。
その優しい風貌としゃべり方がお嬢様の気持ちをくすぐります。
ブーンはそのまま縁に腰掛け、お嬢様はベッドの上の召し物を優しく退かして、ゆっくりとベッドに体重を乗せました。

夜を告げる風が部屋に吹きます。
薄暗い部屋に男女の声が静かに響いていました。


80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 02:52:43.90 ID:Kia0C6X20
( ^ω^)「こんなところでいつも何してるお?」

川 ゚ -゚)「暮らしてるのだ」

( ^ω^)「一人でかお?」

川 ゚ -゚)「いや、私は一人の世話係と暮らしていると思っている」

( ^ω^)「その人が親代わりなのかお? 一人ぼっちかと思ってたお! 良かったおー」

ブーンは安堵の声を上げ、一息吐きました。

川;゚ -゚)「なぜ喜ぶ。君には両親はいないのか?」

( ^ω^)「いないお」


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 02:54:30.85 ID:Kia0C6X20
川 ゚ -゚)

(;^ω^)「で、でも全然寂しくないお! それに、お父さんの残してくれたスカーフがあるんだお」

お嬢様の申し訳なさそうな表情を見て、慌ててフォローを入れました。
それでもお嬢様は、すまなかった、とだけ言って俯いてしまったのです。

(;^ω^)「気にしないでお! 元気出してお!」

(;^ω^)「僕は寂しくないし、一人でも生きていけるように育てられてたんだお」


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 02:56:42.52 ID:Kia0C6X20
川 - )

川 - )

川 - )「君は強いのだな」

お嬢様は俯きながら続けます。

川 - )「私は母が亡くなったときずっと泣いていた。父が狂い始めたとわかった時も涙が止まらなかった」

川 - )「今はドクオや兄様がいる。・・・でも本当に寂しくないと言われたら少し嘘になるのかな」

川 - )「この窓からは民家も見える。そこには平凡な家庭があって、たまにうらやましいと思うんだ」

川 - )「最近思うんだ。ドクオも兄様も私のことを考えてくれているのに、
     こんなに幸せなのに、どこか寂しい自分が罪だ」


84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:00:06.13 ID:Kia0C6X20
川 - )「私は君ほど強くない」

いつの間にかシーツを強くつかんでいた拳を、力なく和らげました。

( ^ω^)

( ^ω^)「それは多分普通のことだと思うお」

( ^ω^)「そしたら僕だって、弱いお」

( ^ω^)「周りのみんなには今みたいに全然寂しくない、とか言ってるけど
       強がってるだけなのかもしれないお」

( ^ω^)「強がって、自分に嘘ついて・・・・・・でもそれは弱いからやってることじゃないと思うお」

( ^ω^)「みんなを心配させないために一生懸命強がってるんだお」


86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:02:27.34 ID:Kia0C6X20
川 - )

川 ゚ -゚)「うん。勢いで恥ずかしいこと口走ってしまったな」

( ^ω^)「なあに。前向きに、お!」

川*゚ー゚)「ありがとう」

そういって二人はくすくす、と笑いあいました。
雲は晴れ、空には月が浮かんで見えます。

川*゚ -゚)「不思議なものだな。初めて会ったのにこんなにも暖かい」

( ^ω^)「おっお」


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:04:35.82 ID:Kia0C6X20
扉の向こうでは夕食を持って二人の会話を聞いている男がいました。
彼もまた俯いて話を聞いていたのです。

ゆっくりと扉が開きます。

('A`)「・・・・・・お嬢様」

川;゚ -゚)「聞いてたのか。恥ずかしい」

('∀`)「お友達、ですかな?」


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:06:29.25 ID:Kia0C6X20
ドクオは今すぐにお嬢様を抱きしめ、泣いて詫びたいぐらいでした。
自分が両親の代わりになりきれぬこと。
自分の優しさが葛藤を生ませていたこと。

ですが、そんなことをすれば余計にお嬢様は自分に気を使ってしまう。
そう思い、グッとこらえました。

( ^ω^)「ブーンですお。水夫をやっておりますお」

('A`)「私はお嬢様の・・・」


89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:08:50.15 ID:Kia0C6X20
川 ゚ -゚)「紹介しよう。私の父だ」

('A`)「・・・!」

かぶせるように言い放ったお嬢様の言葉にドクオは不意をつかれました。
私は親の変わりになりきれてなかったのではないか。

そのドクオの表情をみて、少し口角を上げながらお嬢様は続けます。

川 ゚ -゚)「確かに寂しいと思うときはある」

川 ゚ -゚)「だが、それを埋めてくれるのはやっぱりドクオだ」

川 ゚ -゚)「それが家族じゃなくてなんだ?」

川 ゚ー゚)「ドクオは私の父だよ。まぎれもなく、な」


90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:11:21.04 ID:Kia0C6X20
( A )

( A )「こんな私でも、父に、なりきれていますかな」

川 ゚ー゚)「あたりまえだろう」

(;A;)

ぽろぽろと涙がこぼれました。
嗚咽が漏れ、それは静かな部屋に小さく響きます。

ドクオは胸から取り出したハンカチで涙を拭いて、失礼、とだけ言い残し、
この部屋から外に出ていきました。

残された二人は顔を見合わせてクスクスと笑い合います。


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:13:15.54 ID:Kia0C6X20
川;゚ -゚)「なにも泣くことないだろう」

( ^ω^)「おっお。良いお父さんだお」

( <●><●>)「ふむ。本当に」

(; ゚ω゚)「うおっ!」

窓から顔を覗かせるのはお坊ちゃま。
背中から聞こえる落ち着いた声にブーンは飛び跳ねました。

( <●><●>)「はて、こちらの殿方はどなたでしょうか?」

皮の手袋を外し、こめかみをぽりぽりと掻きながらさっきまでブーンが座っていた窓の縁に腰掛けます。
ブーンはたじたじと落ち着かない様子で、お坊ちゃまをちらちらと見ました。


93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:15:26.49 ID:Kia0C6X20
川 ゚ -゚)「紹介しよう。今日仲良くなったブーンだ」

( <●><●>)「ほうほう。クーにお友達ですか」

川 ゚ー゚)「びっくりしたようだな。私の兄、ワカッテマスだ」

(;^ω^)「ブ、ブーンですお!水夫をやっておりますお!」

ブーンはお坊ちゃまの召し物、その風貌、体躯。全体から滲み出てくる貴族のオーラにたじたじです。
お嬢様は塔の窓からいつも見えていたし、年も離れてないようので緊張しなかったのですが、
お坊ちゃまの前ではガチガチになってしまいました。


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:18:49.74 ID:Kia0C6X20
( <●><●>)「ブーン君」

(;^ω^)「はいお」

するとニッコリと笑い、

( <∩><∩>)

( <∩><∩>)「クーをよろしく頼みます」

と優しく呟きました。

(;^ω^)そ

(;^ω^)「もちろんですお!」

笑顔が怖いとも思いましたが、元気良くそれに返事をしました。


95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:20:51.53 ID:Kia0C6X20
ドクオもお坊ちゃまもブーンが無断で侵入したことを責めませんでした。

二人は知っていたのです。
年の近い、遊んだり話したり出来る相手をほしがっていたこと。
お嬢様は口にこそ出しませんでしたが。
彼らはブーンがお嬢様にコンタクトを取ったことを喜んでいました。

('∀`)「やはり年を取ると涙もろくなっていけませんな」

鼻をすすり、下を向きながらドクオは部屋に戻ってきました。
その表情はどこか照れくさそうです。


96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:22:53.81 ID:Kia0C6X20
(;<●><●>)「泣かされたのですか! ブーン君、君って人は!」

(;^ω^)「僕じゃないですお」

( <●><●>)「わかってます。聞いていましたから」

( ^ω^)(変わった人だお)

するとお嬢様も照れくさそうに、兄様も聞いておられたのか、と聞こえるか聞こえないかわからないくらいの
小さな小さな声で呟きました。


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:24:25.92 ID:Kia0C6X20
ドクオは思いました。
慎ましく生きるお嬢様の姿勢に心を打たれる。
そのたびに自分も変わっていく気がする。
お嬢様の世話が出来て、本当に幸せだと。

( <●><●>)「さて、知ってましたかブーン君。この城は小さいながらも夜になると
      尋常じゃないほどの警備が敷かれるのですよ」

(;^ω^)「それってやばいんじゃないかお」

( <●><●>)「ですから私が送りましょう」

大きな目をもっとまん丸にして、しゃべり終わらないうちに窓の縁から立ちあがると、
ほっ、と声を上げてツタをするすると降りていきました。


98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:26:20.83 ID:Kia0C6X20
( <●><●>)「さぁ早いうちにいきますよ」

下におりたワカッテマス様のこえが部屋の中からでも聞こえます。

( ^ω^)「じゃ、また来るお!」

川*゚ー゚)「毎日でも来てくれ」

('∀`)「お嬢様をどうかよろしく」

最後にお嬢様に微笑んで、ブーンはするすると塔を下っていきました。
下に降り、お坊ちゃまの後を小走りで付いていきます。
見えなくなる前に、ちらっとこちらを見て手を振りました。
お嬢様もそれを見て小さく振り替えします。


100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:29:01.99 ID:Kia0C6X20
川 ゚ -゚)「ドクオ、星が綺麗だぞ」

お嬢様はいつものように縁に身を乗り出して空を見上げました。
空には満天の星。
今にも落ちてきそうなそれは、闇を明るく照らすのです。

('∀`)「左様にございますね」

ドクオも一歩前進して星空を見上げます。

川 ゚ー゚)「ブーン、また来るかな」

('∀`)「きっと来ますよ。きっと」

川 ゚ー゚)「ああいう人は今まであったこと無かった。自然と優しい気持ちになれるんだ」


101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:31:20.99 ID:Kia0C6X20
('∀`)「あの愛嬌のある顔のせいもありますかな」

とドクオがおどけてみせると、二人は星を見ながらクスクスと笑います。

('∀`)「お嬢様に素敵なお友達が出来て私はうれしいです」

('∀`)「あんな姿のお嬢様、滅多に見れるものではありませんしな」

川;゚ -゚)「あれはもう忘れろ」

お嬢様は茶色い髪をわずかに揺らして、はにかんだ様に空から目を離してまいました。



冷たい夜風が二人の体に吹き付けました。
不思議と寒くは無く、今まで顔を赤らめていた二人にとっては心地よく感じます。


102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 03:33:46.23 ID:Kia0C6X20
('∀`)「絶対に幸せにしてみせます」

('∀`)「つらいことも、みんなで乗り越えていきましょう」

('∀`)「私たちはお嬢様の見方ですから」

川*゚ー゚)「・・・・・・うん」



時折窓から見る満天の星。
お嬢様にとっては見慣れた光景です。
ですが、今日は特別輝いて見えました。



もうすぐ冬がやってきます。


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