第二九話 『 ポセイドン ・ リベンジャー ── VS. ポセイドン④ 』
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[sage]:2012/07/08(日) 19:57:05.55 ID:hSJVUBmS0

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                  “ ボ─────────ッ ”







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5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[sage]:2012/07/08(日) 20:01:11.11 ID:hSJVUBmS0

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 燃えあがる空のもと、二人は揃って感嘆の声を漏らす。


「…………きれい…………」


 女は顔の前で両手を組むと、
 小首を傾げたアシンメトリィなポーズで、そう言った。


(君の横顔ほどではないけどね)


 長い汽笛が、男のこそばゆい呟きを、宙にかき消す。


「え? 何か言った?」

「いやいやなんでもないよ」


 不思議そうに見上げる女を前に、さわやかに笑う。
 きらり。  エナメル質がタイミングよく仕事をした。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[sage]:2012/07/08(日) 20:04:55.42 ID:hSJVUBmS0

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「んも〜〜〜〜〜。 意地悪なんだからぁ」


 女は両目を力の限り見開いた。 あひる口を作った。 
 鏡の前で何度も練習した渾身のスマイルだ。
 どこかのコスプレイヤーみたいな、究極の悩殺フェイスがそこにあった。


(うっ)


 男はたじろぎバランスを崩す。
 当然だ。
 キメ顔より放たれる女子力は圧倒的だった。

 潤んだ瞳、上目遣い、音速の瞬き。
 異次元の骨格。 アクロバティックに歪む輪郭。

 隣カップルの女のアイプチが弾け、男のメガネが割れた。
 カーステレオの音声が乱れた。
 街路樹から鳥が一斉に飛び立った。

 通りすがりの紳士のヅラが回転した。
 浮いた。
 爆発した。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[sage]:2012/07/08(日) 20:08:23.27 ID:hSJVUBmS0

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「ねえ〜〜〜〜ん?」
 

 女の声色が変わった。 急上昇した。
 1オクターブ半。
 お母さんが電話に出る際の『 もしもし? 』の音階だ。

 男は咳払いとともに、軽く目をそらす。

 彼女は僕にとっての太陽だ。
 だから直接見続けるのは危険だ。
 本能が告げていた。


「どしたのぉ?
 今日のタカフミくん、へ・ん・だ・ぞ?」


 赤焼けの空。 カモメのシルエット。
 茜に染まる船舶。 おだやかなる波の音。

 絶好のロケーション。
 ウッドデッキより望む、黄金のハーバー・ビュー。


 世界はいま、二人を祝福するためだけに存在していた。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:12:53.90 ID:hSJVUBmS0

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 男は女のほうへ向きなおると、その瞳を見つめた。
 女もまた、男の眼を見つめ返した。

 鼓動が重なる。

 売れないミュージシャンがギターをかき鳴らした。
 横で練習中のヴァイオン少年がそれに続いた。
 黒人ラッパーが口ベースを奏でた。
 汗だくのふんどし男が、和太鼓にばちを叩きつけた。


「…………」


 男のメトロノームは、針を振り切ろうとしていた。

 だがそれは決して、女の纏う霊圧のためでも、
 眼前に広がるパノラマのせいでもなかった。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:16:30.37 ID:hSJVUBmS0

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(今だ……!)


 至高のシチュエーション。
 ボルテージアップ。
 ミラクルコケティッシュタイム。

 脳内の議員団が、満場一致で「GO」のプラカードを掲げた。


「タカフミく」「ハナコちゃ」

「「 あっ……!」」


 互いに逆側にうつむく。

 “ ボーッ ”
 呑気な汽笛が、運命の二人を冷やかすように、悠然と響いた。


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:20:56.33 ID:hSJVUBmS0

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 短い沈黙のあと、照れくさそうに頭をかきながら、男は告げた。


「……ごめんね、どうぞ」

「ううん、そっちから」


 期を、逃すな。
 女に眠る野生の感覚が、瞬間的に命令を発した。

 女は肩をすくめ、ペロリと舌を出す。

 ざわ……

 不意打ちだった。
 大気が震えた。 ピンク色の伝達物質がシナプスを駆けた。


「!!」


 男の心臓を、ハート型のクロスボウが打ち抜いた。

 脳内機関、スタンディングオベーション。
 モテカワゲージMAX。
 

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:24:44.79 ID:hSJVUBmS0

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「それ、じゃあ……」


         クライマックス
 再び訪れた、最高潮。
                                        
 このタイミングしかない。
 ピック・スクラッチから入り、無遠慮にがなり立てるディストーション。


『 GO 』


 意を決した男は、背広のポケットに手を突っ込んだ。


「はい、これ」


 掛け声とともに、差し出された彼の手。
 そこには。

 給料の三か月分が、四角い顔を覗かせていた。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:29:03.70 ID:hSJVUBmS0

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「ほえええええええ?!
 あん、ひょっとしてこれぇ……!」


 女が飛び出さんばかりに目を見開く。
 正確には、三か月と賞与の半分とベルマークと豚の貯金箱いっこ分。
 こくり。 生涯最高のドヤ顔で、男は頷いた。

 この日のために断酒をはじめた。 滝に打たれた。 禁煙も決意した。
 最近は電子タバコとよっちゃんイカでどうにか凌いでいる。
 スーパーボールのような女の目が、三日月状にその形を歪めた。


「ああ」


 男は空いたもう片方の手で、未来の妻の肩を抱いた。
 対する女は、顔面の筋肉をフル稼働させ、将来の粗大ゴミの姿を見上げた。


「「 ……………… 」」


 オレンジ照り返す波間をバックに、
 見つめあう二つのシルエット。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:33:13.76 ID:hSJVUBmS0

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「……ハナコちゃん」

「タカフミくふん……?」


 渡り鳥が低空飛行で頭上を舞った。
 今までで一番長い汽笛が響いた。
 季節外れの花火があがった。


「僕と」


 通りがかりの小学生が持っている携帯ゲームから、
 レベルアップのファンファーレが鳴った。


 ──時は、満ちた。

 男は大きく息を吸い……、とうとう、その言葉を口にした。


「けっこしゅぴ」


 その瞬間。
 伸ばした男の手から、リングケースが消えた。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:40:11.74 ID:hSJVUBmS0

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                  ( ^ω^)つ■ 「────お?」









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23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:43:39.77 ID:hSJVUBmS0

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( ^ω^)つ■ 「お? おおお?」

男 「は?」

女 「へ?」



( ^ω^)つ■ 「………………………………」

男 「……………………」

女 「……………………」




       
( ^ω^)?
  つ■と



男&女 「ぬあああああああああああああああああああ!!」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:48:03.38 ID:hSJVUBmS0

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(;'A`)そ 「ブーン? それは……?」


 展望用のウッドデッキ上で、二人の悲鳴があがった直後。


(; ^ω^)つ■゙ 「おおっ! なんだおこれ! 失敗しちゃったお!」


 その下の歩道でも、
 若い男女が、素っ頓狂な声をあげていた。


(;*゚ー゚) 「ど、どっから出てきたの? そのはこ?」

「!」


 箱、という言葉にいち早く反応し。
 男は、丸太の柵から身を乗り出すようにして、下を見た。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:51:41.76 ID:hSJVUBmS0

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「タカフミくんっ、あれ!?」


 二人の視線の先。
 高校生だろうか、三人の若者が目を白黒させている。

 そしてその中の一人、ぽっちゃりとした少年が、
 男の汗と涙と残業の結晶を弄んでいる。


「ちょ、ちょちょちょちょちょちょちょっ! きみ!」


 男はすぐさま階段を降りると、


(; ^ω^) 「お? えーと、お?」

「それ! ぼ、僕のだ! 返したまえ!」

Σ(; ^ω^)つ■ 「ご、え、はいっ!」


 つかつか歩み寄り、引ったくるようにして、指輪を奪還した。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:55:01.44 ID:hSJVUBmS0

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「はぁ、はぁ」


 男はぽっちゃりボーイを睨みつけたあと、
 女の手を引き、ウッドデッキの2Fフロアへ駆けもどった。


「ま、まったく。 油断も隙もない」


 ハンカチで額をふきふき、そう呟く。
 女は唇を突き出し、眉間に皺を寄せた。


「えー、これってつまりぃ、どーいうコトぉ?」

「さ、さあ……?」


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 20:59:31.40 ID:hSJVUBmS0

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「いきなり消えちゃうからぁ? ハナちゃんちょぉ〜びっくりしたぁ〜〜〜!」

「はは……ミッシングリング、なんて」

「風で飛んじゃったのかなぁ?」

「ミッシ……あ、そ、そうかもね」


 腰をくねらせ、なおも首をひねる女。
 息を整えた男は、大きな咳払いのあと、その肩を軽くつかんだ。


「あン」

「あ、あー、あ゛ー。
 ……ハナコちゃん」


 ヴァリトン・ボイスの調整が終わると、静寂が訪れ。
 男女はみたび見つめあった。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:03:01.85 ID:hSJVUBmS0

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「ハナコっち……」

「タカフミ氏……」


 テイク3。  三度目の正直だ。
 今度こそ、キメる。

 昂りを悟られぬよう、できるだけクールに装いつつ、男は近づく。


「ちょっとしたハプニングもあったけど」

「うん」


 脳内で、髭の司令官が腕を高く掲げる。
 振り下ろされたこぶしはガラスカバーを粉砕し、
 ドクロマークのスイッチを勢いよく押し込んだ。


「君に、受け取って欲しい」


 ぱかっ。

 箱が開き、鎮座まします愛の結晶が、ブリリアントな光をはなった。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:07:02.47 ID:hSJVUBmS0

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「ほええええ〜〜〜〜〜〜〜……☆
 それってぇ、まさかぁ?」


 女は頬に手を当て、ムンクの叫びのようなポーズで驚いてみせる。
 空気を読んだ汽笛が、放屁みたいな音を響かせた。


「そう」


 沈みゆく夕陽は、一層その輝きを増し。
 短い吹鳴のあと、カモメ舞う展望デッキに、心地よい静寂が訪れる。


「つまり」


 風が吹いた。
 男の背広の裾が軽やかにそよいだ。
 女のツインテールがぼわっとなった。


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:10:40.03 ID:hSJVUBmS0

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「僕と」

「はい」


 まさにプロポーズが遂げられようとする、その瞬間。


「けっこむほ」


 二人の間を、黒い物体が勢いよく横切った。

.
「「    」」


 ばさばさばさ……。 


「「………………」」


 視線が中央で交差する。
 お互いゆっくり視点を下げると、差し出された手には、

 空のリングケース。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:12:12.92 ID:hSJVUBmS0

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「………………」

「………………」


 二人の間を抜けた影は、そのまま、空高く舞い上がる。
 頭上から間の抜けた鳴き声が響いた。


「………………」

「………………」


男&女 「「 ほわあああああああああああああああああ!?!? 」」


 二人の行動は早かった。


 男はデッキの階段を転げ落ちながら。
 女はそんなパートナーの尻を踏みつけながら。


 夕陽に向かって飛び去る、カラスの背を追った。


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:15:57.52 ID:hSJVUBmS0

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                                   http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
                         http://localboon.web.fc2.com/100/top.html


                                       纏 


                 http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
         http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html




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38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:18:55.78 ID:hSJVUBmS0

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 〜 〜 〜


 夕暮れ。

 黒まじりのグラデーションが、落陽湛えて穏やかに揺らぐ。
 ガードレール越しに広がる雄大な煌めき。


 反射する黄金を、体の前面で受け止めながら──。

 俺たち三人は、港の遊歩道を突き進んでいた。



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:22:35.36 ID:hSJVUBmS0

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 VIP港は景観スポットでもある。
 ウッドデッキの連なる観光エリアを抜けても、
 今の時間帯だとそこそこ人通りがある。

 カップルを中心とした若者の姿が多い。
 道の脇には、車がまばらに停まっている。


(;'A`)

(*゚−゚)

(; ^ω^) ドキドキ


 埠頭はその先。
 『 港湾関係者以外立ち入り禁止 』 というプレートのかかった、
 長い門扉の奥だ。


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:26:01.48 ID:hSJVUBmS0

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(;'A`) 「……んー、だいぶ暗くなってきちゃったな」

( ^ω^) 「ニーチャンがあんなコトさせてるからだお」


 俺たちが先ほどの広場で行っていたこと。
 それは、ブーンの能力である “ 物体転送(アポーツ) ” の検証だ。

 結論から言うと、ブーンは、
 離れた場所にある任意の物体を “ 引き寄せる ” ことができなかった。

 狙いを定めて能力を使ったつもりでも、
 さっきのように、能力が “ 暴走 ” するばかりで、なかなかうまくいかないようだ。


('A`) 「いつ役立つともわからんだろ。 こーゆー事態なんだしさ」

(; ^ω^) 「そうだけど……」


 こーゆー事態。

 前回投下から一年くらい経ってしまったのでここでおさらいすると、
 俺たちはいま、さらわれたギコを助けるために、
 犯人の指定場所である、VIP港にいる。


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:29:14.39 ID:hSJVUBmS0

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( ^ω^) 「退院したあと、家でさんざやって見せたお?」


 バスの中の話で、犯人像はおぼろげながら見えてきた気もする。
 それでもこの先、何が起きるのか全く分からないといっていい。

 とにかく今は、使える手段なら、
 猫の手だろうが赤子の手だろうが猿の……なんだって確保しておきたい。


(;'A`) 「そうだったなー。
     確かいきなり能力が暴走して、俺のブラジャーを……」

(; ^ω^) 「シャラップ!」

Σ(;*゚ー゚) 「ぶ、ぶら……“ 俺の ”!?」


 しぃちゃんの声がひっくり返った。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:32:27.69 ID:hSJVUBmS0

     そ
('A`;)ノノ て  「あ、いやソノ、ブラザーあるよブラザー!」

(; ^ω^)b 「イエース、マイブラザー!」

d('∀`;) 「オーケーマイブラザー!」


 HAHAHA! と肩を組んでごまかす。


 ……それに。
 ブーンの能力はまったく使えないかというと、そんな事はない。

 “ 引き寄せる ” ことは難しくとも、
 手元にある物体を “ 転送する ” ことは可能だったりする。

 せいぜい数メートルの範囲ではあるが、位置もそれなりに正確。
 さらに、一度 “ 転送した ” 物体であれば、 “ 呼び戻す ” ことができる。
 先ほど述べたが、転送したことのないモノは、引き寄せ不可能だ。


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:36:03.91 ID:hSJVUBmS0

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(; ^ω^) 「とにかく急がないとだお……」 アセアセ


 もちろん制約も山ほどある。
 基本的に、重いモノは転送することも、呼び戻すこともできない。

 じゃあどのくらいの重さなら……って話だが。

 巨大な金ダライを落とすことはできないけど、
 黒板消しならいけそうかも? とは本人の弁。

 その気になれば、いたずらに大活躍できそうな能力だ。


(*゚ー゚) 「大丈夫だよ、たぶん。
     約束の時間には、まだちょっと余裕があるから」

('A`) ダヨネー

( ^ω^) イラッ


 こうして考えてみると、チャネラーの能力には
 『 触れる 』 という動作が重要なファクターとなっているものが多い気がする。


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:39:38.79 ID:hSJVUBmS0

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( ^ω^) 「ホントかおー? ゆーちょーに構えてていいのかお?
       目的地の第三倉庫ってのも、どこにあるのかわからないのにかお?」

(;*゚ .゚) ンーット…
   ъ

( 'A`)( ^ω^)

(;*゚ー゚) 「……た、たぶん?」
  _, 、_
(; ^ω^) 「のんびりしてる場合じゃないお! 急ぐお!」

                     ブーデー
 しゃかしゃかと、珍しく機敏に動く我が弟。
 その緊張感を腹にも、なんて言いかけて、やめた。


−−−


 鉄柵を乗り越え、俺たちは門扉の中へ入った。

 区画整備されていた観光用エリアに比べて、
 こちら側は嘘のように人気がない。

 侵入を咎められる心配はなさそうだったが、
 同時に、言いようのない胸のざわつきを覚えた。


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:43:24.31 ID:hSJVUBmS0

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(;'A`) 「……」 ゴクリ


 だだっ広い敷地内を、しばし無言で歩く。
 周囲の建造物はほとんどが消灯している。
 街路灯の間隔も広くなり、辺りは不気味な雰囲気を漂わせはじめた。


(^ω^;≡;^ω^) 「な、なんかここ……暗すぎないかお……?」

(;'A`)b シーッ!


 落ち着きのない肉塊へ、ジェスチャーで「シャラップ」を告げる。
 隣を見れば、しぃちゃんもまた、唇に人差し指をちょん、と添えていた。

 同じ仕草のハズなのに、彼女がそうすると、
 なぜか和やかな空気が流れる。 ぶっちゃけ可愛い。

 困ったような表情も含めて、あざといまでに様になっている。
 もちろん、本人は全くそんなつもりはないのだろうけど。

 ほんの少し高鳴ってしまった鼓動。
 動揺を悟られないよう、大きな咳払いとともに、襟を整える。


 ……二方から同時に「しーっ!」が飛んできた。


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:47:29.76 ID:hSJVUBmS0

.
 そんなこんなのうちに、倉庫群の存在する区画へやってきた。

 建物の周囲には、貨物運搬用の機材が散見される。
 しかし、作業員の姿は一向に見当たらない。
 まだこんな時間──夕方の六時半くらいだってのに。


(; ^ω^)∩ (ギコー……?  おーい、お?
         どこだお、気付いたら返事してくれおー……) ボソボソ

('A` ≡ 'A`) (こんな時にギコがいてくれればなあ) ボソボソ

(;*゚ー゚) (二人とも、言ってることがおかしいです……) ボソボソ


 犯人は、こうなることを見越してあいつをさらったんだろうか──
 そんなことを考えていた時だった。


(*゚−゚) 「!」


 薄闇に立ちはだかる、三つの人影。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:49:40.12 ID:hSJVUBmS0

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「お待ちしておりました。 猫塚しぃさんですね」


 ふいに現れた男たちは、この上なく怪しい風体だった。

 黒スーツに黒ネクタイ、当然ながら靴も黒に揃えている。
 どう見ても観光目的の一般人ではない。
 もちろん、辺りの倉庫に従事する作業員とも思えない。


「そちらのお二人が、内藤さんご兄弟ですか」

(゚A゚;)彡 「!」


 続けざま、想定外の方向から声がした。
 はっとして振り返る。

 いつの間にやって来たのか、後ろからも二人。
 ──挟み込まれた。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:52:23.79 ID:hSJVUBmS0

 _,
(;*゚−゚) 「ギコくんは、どこですか?」


 問い返すしぃちゃんの声が、微かに震えているのが判った。
 俺の膝もわらっている。 肌寒さのせいじゃない。


「まあまあ、その話はまた後で──」


 黒服たちは不敵な笑みを漏らすと、
 今にも食ってかかりそうな様子のしぃちゃんを、掌で制した。


「例のモノは用意していただけましたか?」

(;'A`) 「……こ、こで、これでいいにょきゃ?」


 問いかけに対し、俺はポケットからこわごわと
 “ それ ” を取り出して見せる。


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:55:29.95 ID:hSJVUBmS0

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「確かに。 チェックのほうは、のちほど」


 男たちの一人が、俺の手から “ それ ” を受け取る。
 隣の黒服が、埠頭の方向を示し、言った。


「行きましょう。 我々の主人がお待ちです」


 黒スーツ集団に挟まれたまま、俺たちは移動を開始した。
 黄色く輝く係船柱(けいせんちゅう)を横目に、港湾バースをひた進む。

 拘束こそされていないものの、
 連行、という言葉がぴったりで、どうにも落ち着かない。


(;'A`) (しぃちゃん……、“ 主人 ” って、やっぱり) ボソボソ

(*゚−゚) (……だと思います) ボソボソ


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 21:59:15.93 ID:hSJVUBmS0

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 俺たちの会話が耳に入ったのだろう。
 黒服のうちの一人、角刈りの男が向きなおり、目を細めて言った。


「妙なことは考えるなよ?
 なにせ我々は、“ か弱い ”一般人だ。
 お前らに超能力を使われた日には、ひとたまりもないだろうが──」


 また別の男が、くっ、と口の端を歪め、


「ギコさんの無事が保障できなくなります」
 _, 、_
(*゚−゚) 「──!」


 告げた。

 しぃちゃんが眼光鋭く睨めつける。
 向けられた怒気を鼻であしらい、一団はふたたび歩きだした。


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:01:46.50 ID:hSJVUBmS0

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 目的の建物は、そこから少し進んだ場所にあった。

 数多の倉庫群の中で、唯一、窓から光の漏れている建造物。
 黒服の一人が、そこで携帯を取り出し 『 お連れしました 』 と告げる。
 いくらもしないうちに、眼前より大きな音が響いた。

 電動シャッターがゆっくり上がってゆく。
 足元に伸びた光は、やがて立体的に広がり、俺は眩しさに目を細めた。


(;'A`) 「こ、ここは──」


 △△株式会社VIP営業所所有 ・ 第三倉庫。
 大口を開けたその内部に、俺たちはギコの姿を求める。


「どうぞ」


 促されるまま、倉庫内へと歩を進めた。

 中には数人の黒服が立っており、
 比較的新しいグリーンの床材が、蛍光灯の光を鈍く反射していた。


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:05:05.45 ID:hSJVUBmS0


(;*゚−゚) 「ギコくん! どこ?」

('A`;) (う……なんつーか……)


 とにかく、まずは状況把握から。

 黒スーツたちの視線に居心地の悪いものを感じつつ、
 俺は周囲を見回した。

 倉庫の奥のほうには、コンテナ・トレーラーが一台。
 斜めに駐車され、でかいお尻をこちらへ向けている。

 トレーラーの背負うコンテナ以外、庫内に荷はほとんど見当たらない。
 ジャングルジムのようなパレット・ラックが、申し訳程度に立ててあるだけだ。

 当然、運搬設備も乏しく、
 ただ広々している、というのが第一印象だった。


爪 ゚〜゚)

/ ゚、。 /


 ギコの姿はない。
 そして……。

 周りの黒服とは明らかに違う男が、二人いた。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:08:50.16 ID:hSJVUBmS0

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 ホスト風、とでも呼ぶべきだろうか。
 よくわからないが、まず服装からして他と違う。

 一人は長髪の中肉中背、シルバーのモード系スーツ。
 もう一人は長身で、薄いグレーのストライプジャケットがキマっている。
                                        

爪 ゚〜゚) 「へっ」

/ ゚、。 / 「……」


 横を通り過ぎる時、小さいほうの男が鼻で笑うのがわかった。
 にらみ返すべきこの場面で、自然と視線を逸らしてしまうのが、我ながら悲しい。

 が、それ以上話しかけて来る様子がないことから、
 誘拐の首謀者というわけではないらしい。


(; ^ω^) 「……」 ドキドキ

( ゙A゙) (まぶしっ)


 シャイニースーツっていうのか、
 どちらの着ているヤツも、ナチュラルに目を攻撃してくる。

 なんだか気に入らないので、単に “ 白服たち ” と呼ぶことに決めた。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:11:58.35 ID:hSJVUBmS0

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 俺たちはそのまま、
 背の低いレール棚によって無造作に間仕切りされた、
 右奥の一角へと、案内された。


(;'A`) 「!」


 辺りには、パイプ椅子が乱雑に並んでいる。
 だが、その中に一つだけ。
 場違いで、不釣り合いで、悪趣味な……社長椅子が存在していた。

 先を行く黒服が、その片側に着くと、座る人物に耳打ちする。


「ふふふ……待ちくたびれましたよ」


 ものものしい動きで、椅子が反転した。


(;*゚−゚)そ 「! あなたは……!」


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:14:07.54 ID:hSJVUBmS0

.
(-[]3[]) 「お久しぶり。 ご機嫌いかがかな?」


 いかにも高級そうな、レザー張りのプレジデント・チェア。
 その中央に、メガネで小太りの少年が、どっかり腰をおろしていた。


(*゚−゚) 「やっぱりあなただったんですね。
     “ 海王 ”……いえ、田中くん」

(-[]3[]) 「懐かしい呼び名だね」


 田中と呼ばれたそいつは、
 顎に手を添えて含み笑いを見せる。


(-[]3[]) 「掲示板でのやり取りを思い出すよ。
       あの頃はなかなか楽しかった」


 ……が。

 ひじ掛けに両腕を預け、不遜に足を組む姿は、
 お世辞にも “ 決まっている ” とは言い難い。


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:17:22.46 ID:hSJVUBmS0

.
(-[]3[]) 「光栄だね。 僕のことを覚えてくれたなんてさ」


 忘れようにも、このルックスは簡単には忘れられそうにない。
 彼はそのうち椅子から立ち上がると、


(-[]3[]) 「明るい場所で間近に見るのは初めてだが……
      …………素晴らしい」
  _,
(;*゚−゚))) 「……!?」 ゾクッ


 しぃちゃんの傍らへ寄り、髪を撫でた。

 とっさに身を引くしぃちゃん、パイプ椅子に足をぶつける俺。
 黒服たちが俄かに色めき立つ。


(-[]3[]) 「“ サイアミーズ ” 。
       君はまるで、花園を舞う妖精のようだ」


 周囲の緊張を意に介さず、呑気にそう言ってのける
 ハンドルネーム “ 海王 ”。

 芝居がかった言い回しが、妙に鼻についた。


80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:21:08.85 ID:hSJVUBmS0

.
●第二九話 『 ポセイドン ・ リベンジャー ── VS. ポセイドン④ 』


(;'A`) 「ぎ、ギコは、どこだ?」

(; ^ω^) 「なんでこんなことするんだお? 目的はなんだお?」

(-[]3[]) 「まま、そう焦らずに」


 こいつが、田中ポセイドン。
 ギコ誘拐の首謀者にして、
 大手電気機器メーカーを中核企業とする、某企業グループの御曹司。

 落ち着いた口調といえば、確かにそうかも知れない。


(-[]3[]) 「ようこそ。 内藤ドクオさんに、ホライゾンさん」


 だが正直なところ、想像していたのとはだいぶかけ離れていた。
 少なくとも、しぃちゃんの言う
 『 大人びた 』 雰囲気とは、ちょっと違う。


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:24:53.81 ID:hSJVUBmS0

.
(-[]3[]) 「どうぞ固くならず。
      いっしょに楽しい夜を過ごしましょう」


 背が低くて小太りの体型。
 赤いほっぺにそばかす、分厚いメガネ、天然パーマ……。

 たらこ唇を突き出してボソボソ話す様子は、
 どこにでもいる、今時のオタク中学生といった印象だ。

 _,
(#'A`) 「楽しいだって!? そんなわけ……!」


 正面の黒服が、眉間に皺を寄せる。

    そ
:::(;'A`)::: 「な、なかデスヨ〜〜〜。 ……ハハ……」

(; ^ω^) 「何から何までわかんないことだらけだお!
       あんた一体何が目的なんだお」


 小さくなった俺に代わって、
 ブーンが当然であろう疑問をぶつけた。


83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:27:47.58 ID:hSJVUBmS0

.
(-[]3[]) 「順を追って説明するけど。
      正直、まどろっこしいね」


 ポセイドンはそう言って、椅子にふたたび身を預ける。


(-[]3[]))) ≡ ドカッ

(-[]3[]) 「ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」


 お坊っちゃん気質もはなはだしいというか。
 わざと尊大に構えているのか、元々こういう性格なのか。
 おそらく後者だと思う。

 人に好かれるタイプじゃないだろうな。 俺とはまた違った意味で。
 そう感じた。


(-[]3[]) 「まず」

(-[]3[]) 「君の兄、ギコは、ここにはいない」

(; ^ω^)「おっ……!?」

(;'A`) 「いない、って……」


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:30:25.68 ID:hSJVUBmS0

.
(#*゚ο゚) 「どういうこと!?
      ギコくんは、無事なんですか!?」


 しぃちゃんが語気を荒げた。


(-[]3[]) 「もちろんさ。
      そうでなきゃ、人質の意味を成さないだろ?」


 人質、という言葉が、ボディブローとなってハラワタに響く。


(-[]3[]) 「……けれども。
      君たちの態度によっては……ね?」

(#*゚ロ゚) 「ふざけないで!」

(-[]3[]) 「そんなに怒らないでよ。 ま、怒った顔も素敵だけどさ」
  ∩∩


 柔らかな物腰ではあるが、ポセイドンの仮面の下からは、
 すでに、隠しきれない悪意がにじみ出ていた。


90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:33:12.28 ID:hSJVUBmS0

.
(-[]3[]) 「ギコはね、ここからそう遠くない、別の場所にいる。
      ……といっても。
      彼が無事に帰って来れるかどうかは、
      君……いや」


 メガネの奥の視線が、こちらへ投げかけられる。


(-[]3[])σ 「ドクオさん次第かな」


( 'A`)


(;'A゚)そ 「お、俺ぇ!?」
   ъ


 思わず声が裏返った。


(-[]3[]) 「そうさ。 ギコを救いたけれb……」


92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:36:07.86 ID:hSJVUBmS0

.
 が、言葉の真意を問おうとしたところで、


    / ゚、。 / 「“ コトダマ ” って、知ってるか?」 ヌッ
  (゚A゚ )


 口から出たのは、
 ぎゃあ、という情けない悲鳴だった。


(; ^ω^)(;*゚−゚) 「「!」」

(-[]3[]) 「!?」


/ ゚、。 / 「ヒュプノシスの一種だケド。
       暗示を刷り込んで、相手の行動を制限する能力だケド」


 いつの間に接近したのか、白服の一人が背後に立っていた。

 ふいに肩へ乗せられた彼の手に、
 気づけば俺は2メートルばかり跳びすさっていた。


95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:39:08.72 ID:hSJVUBmS0

.       ....
/ ゚、。 / 「ごしじんの能力は、ソレ」

(-[]3[]) 「お、おい」

/ ゚、。 / 「肌に触れて “ フラグ ” と “ 実行内容 ” を刷り込むケド。
       あ、この場合、
       フラグってのはだいたい “ 勝負 ” のことを指すんだケド」


 後ろにいた人物──。
 長身のイケメンスーツは、淡々とそう続けた。

 いまだ早鐘を打つ心臓を押さえつけ、考える。

 “ コトダマ ”
 要は、マインドコントロール的なやつだろうか。

 屋上の男、そして、旧校舎の少女と同じような。


98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:42:09.98 ID:hSJVUBmS0

.
(^ω^ ;) 「に、ニーチャン……?」 アウアウ


 知らない間に顔が引きつっていたらしい。
 ブーンが不安げな表情を向ける。

 考えるのも嫌になるくらいに “ 体験 ” させられた、それらのESP。
 他人を巻き込み、その精神を冒す、クソッタレなチカラ。

       エ ン パ シ ッ ク
  ── “ 感情出力系能力 ”。 


/ ゚、。 / 「ギコだっけ?
       そいつを助けたければ、自分と勝負しろっつー、の。

       ……つまりはそーゆーコトだケド。
       ウチのごしじんが言いたいのは」


 唇すら殆ど動かすことなく。
 徹底した無表情で、白服は告げた。


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:45:24.43 ID:hSJVUBmS0

.
(;*゚−゚) 「そ、そんなコト……」

/ ゚、。 / 「シンプルだろ?
       いず べすとぅ」


 ただの復讐。
 それだけの理由。
 でも、それで充分な理由。

 見下ろす白服の瞳は、そう言っていた。


(-[]3[]) 「な、何のつもりだ。 オマエ」

/ ゚、。 / 「めんどう言ったでしょ? ごしじん。
       スズキ、代わりに説明してやったんだケド。
       むしろ感謝して欲しいケド」


 勝手に解説をこころみたイケメンのっぽに対し、
 ポセイドンのほうは、明らかに動揺を見せていた。
 彼にとっても想定外の出来事だったらしい。

 が、白服がポーカーフェイスを崩す様子はない。


101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:48:46.06 ID:hSJVUBmS0

.
(;-[]3[]) 「だからと言って、能力のことをぺらぺらと……。
       ま、まさか、裏切るつもりじゃあ」

/ ゚、。 / 「違うケド? 正々堂々戦いたいだけだケド」


 人を拉致しておいて正々堂々もあったもんじゃないと思うが。


  / ゚、。 / 「スズキ」
 σ


 / ゚、。 /+ 「サムライだから」


 相変わらずの無表情ではあったが、
 言いきった瞬間だけは、どこか誇らしげに見えた。


105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:52:17.28 ID:hSJVUBmS0

.
(;'A`) 「あ、アンタは……?」

/ ゚、。 / 「スズキ?
       スズキは、鈴木ダイオードだケド?」


 存外高い声で、そう答える。
 上背があると声帯も細くなるのだろうか。
 あまり関係なさそうだな。


(-[]3[]) 「……助っ人さ。 彼らは僕g」

/ ゚、。 / 「スズキはごしじんに雇われたねらーだケド。
       現代に生きるサムライだケド。 好きな食べ物は栗ようかんだケド。
       あ、お団子もけっこう好きで、夜爪はきらない。 目は両方1.8。
       あとコレは秘密だケド、へその横にちっさいホクロが……」 ベラベラ
  _,
(; ^ω^)(;*゚ー゚)

(;'A`) (いきなり饒舌に……)


 出来れば関わりたくない人種だということはよーくわかったが、
 この状況、そうも言っていられない。


109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:55:44.15 ID:hSJVUBmS0

.
(;-[]3[]) 「おい、ちょtt」

/ ゚、。 / 「とゆーわけで、信条は正々堂々、出されたものは残さないだケド。
       コレはスズキのおっしょさんが言ってたことで、
       だからスズキ的にこの展開は」 ウダウダ


 『 あーくっそ! 鈴木鈴木うっせー! 』


 長身のマシンガントークを遮るべく、後方から叫びがあがった。


爪#゚〜゚) 「だっっっっからイヤだったんだよ! 俺とこいつが組むのは!」


 声の主は白服の片割れだった。


爪;゚〜゚) 「ね? 言ったじゃないスか、坊っちゃん。
      ややこしーことになるのが目に見えてるんだから、
      コイツは “ あっち ” を任せることにして、愛しのマイハニーを……」

(-[]3[]) 「僕の采配にケチをつける気か?」

爪;゚〜゚)そ 「そ、そーゆーワケじゃねーですけどぉ〜〜〜」


110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 22:59:14.55 ID:hSJVUBmS0

.
 こちらが口を開くより先に、鈴木と名乗った白服が答える。


ρ/ ゚、。 / 「彼は鈴木タムラだケド。 スズキとおなじで、雇われのねらーだケド。
        スズキとは鈴木でおんなじだケド、まったくぜんたいスズキと無関係」

爪;゚〜゚) 「そーそー。 ……っておい!」

/ ゚、。 / 「キョーダイでもなんでもないケド。 誤解しちゃダメだケド。
       マイハニーってのはモチのロンでスズキじゃなく、
       タムラのケバい彼女のコトで……」

爪#゚〜゚) 「だあああああまれっっっっつってんだおよおおおおおお!」


 タムラと呼ばれた男が絶叫する。
 なんだかややこしい事態になってきた。


/ ゚、。 / 「……」

/ ゚、。 / 「せっかく紹介してやったんだケド?」

爪;゚〜゚) 「しなくていい!
      テメーだけならともかく、人の情報を勝手に漏らすんじゃねぇ!」


112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:02:39.43 ID:hSJVUBmS0

.
/ ゚、。 / 「ぷらいばしぃな部分は伝えてないケド」

爪;゚〜゚) 「……はあ。 やっぱりコイツとは合わねぇ」


 二人の 『 鈴木 』 ── 白服たちは、雇われ超能力者。


(;'A`) 「その、“ 彼女 ” ってチャネラーなのか!?」

/ ゚、。 / 「モチだケド。 あ」

爪#゚〜゚) 「だーかーら! ベラベラしゃべってんじゃねぇえあぁぁああ!」

/ ゚、。 / 「うっかり」


 どさくさにまぎれて、デカいほうの鈴木……
 ダイオードから情報を引き出す。


115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:05:48.70 ID:hSJVUBmS0

.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 (-[]3[]) 『 僕の采配にケチをつける気か? 』

 爪 ゚〜゚) 『 コイツは “ あっち ” を任せることにして、愛しのマイハニーを ……』

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 こいつらの仲間だという、女チャネラー?の居所。

 そのポイントこそ、ポセイドンの言った
 “ ここから遠くない、別の場所 ” ……。
 つまり、ギコが捕らわれているところだと、推察できる。

 誘拐グループには、ポセイドンを除いても、少なくとも3人のチャネラーがいる。
 彼らは雇われの身……つまり、素性も何もはっきりしない能力者なのだ。

 その事実は、ふたたび俺を畏怖せしめた。


(;*゚−゚) 「田中くん。
      あなた、超能力が……?」


 可能性の話だ。
 こいつらの中に、しぃちゃんの両親を手に掛けた超能力者が
 いない、とは言い切れない。


117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:08:32.16 ID:hSJVUBmS0

.
(-[]3[]) 「……まあね。
      厄介なおまけもついてはきたが。
      これで、君と同じ土俵だ」


 訝しげなしぃちゃんの問いに、ポセイドンは肯定を示した。
 厄介とは、おそらく “ 別人格 ” のことだろう。


(;*゚ο゚) 「それで私はどうしたらいいの?
      あなたと戦えばいいの?
      そうしたら、ギコ君は解放してくれるの?」

(-[]3[]) 「……」


 微かな逡巡を経て、ポセイドンは答える。


(-[]3[]) 「……使い勝手の悪い能力でね」

(; ^ω^) 「こ、答えになってないお」


 ブーンがこわごわ口を挟んだ。


118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:09:45.25 ID:hSJVUBmS0

.
(-[]3[]) 「わからないかな? まあ、わからないだろうね。
      その点も追い追い説明するが」

(;*゚−゚) 「……?」

(-[]3[]) 「結論から話そう。
      僕の目的は、しぃちゃん。
      キミを手に入れる事だ」

(;'A`)(  ゚ω゚) 「「 ! 」」

(;*゚□ ) 「!?」


 そう告げると、ポセイドンは勢いよく立ち上がり。


(-[]3[]) 「キミの。 全てをね……」


 ぶ厚い唇を、にたあ、と歪めたのだった。


 〜 〜 〜 


119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:12:58.90 ID:hSJVUBmS0

.


                                       「ひゃんっ!?」


    「ふぁっ、やぁっ……」


                       「あっ、ちょっ、そこはっ」




                    「んっ、う……ぁ?!」

.

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:15:33.13 ID:hSJVUBmS0

.





                      「はぁぁっ……!」





.

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:18:27.80 ID:hSJVUBmS0

.
::(;* A ):: 「 ら  め  ぇ …… !」


 数分後のこと。


爪i|i゚〜゚) 「だぁあぁあ気持ちわりいぃい! 変な声出すんじゃねえええっ!」


 俺たちは、遅まきの “ ボディチェック ” とやらを受けていた。


Σ(;'A`) 「しょ、しょうがないだろ! 出ちゃうもんは出ちゃうんだから……」

爪;゚〜゚) 「胸とズボンのサイドポケットをちょっと調べただけだーが!」


 俺の大腿骨付近をまさぐっていたタムラが、なんかすごい勢いで俺から離れる。


(;*'A`) 「昔っからソノ……そこ、弱くて」

((爪; 〜 ))) 「キメェキメェキメェキメェキメェ……」


 ドン引きされてるなう。


129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:22:13.28 ID:hSJVUBmS0

.
爪;゚〜゚) 「っったくっ! テメーの弟は大人しくしてやがんのにっ。
       アニキもちったぁ見習えや!」

('A`;)彡 「マジで?」


 俺はブーンのほうを振り返った。





 ∩( ‘ω‘)∩





('A`)

('A`) 「あぁ……」


131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:25:21.76 ID:hSJVUBmS0

.
 タムラは俺のほうに視線を戻し、深々とため息をつく。


爪i|l゚〜゚) 「あーくそ、マジ勘弁してくれ……。
      あとケツのポケットが残ってるってのに」

(;*'A`)そ 「ま、まだ調べるの!?
      ちょっとソノ、心の準備が……」

爪#゚〜゚) 「んなもんオレだって出来てねぇぇぇぇえぇわ!」


 どうせ見つかることはわかっていたので、
 上着のサイドポケットに入れていたオブラートは、
 あらかじめ取り出し、提示してみせた。

 当然、怪訝な顔をされたが、没収にまで至ることはなく。
 俺は内心ホッとしていた。


爪;゚〜゚) 「なんでオレがこんな役回りを……。
      誰が好き好んでオトコのケツなんざ撫でまわすかよ!」

「……ああ、そのくらいでいい」


 俺の尻を眺めていた黒服が、タムラに告げる。


134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:28:53.42 ID:hSJVUBmS0

.
爪 ゚〜゚) 「あ? じゃあもう調べなくていいんだな?」

(;'A`) ホッ

爪;゚〜゚) 「なに残念そうにしてやがんだこのドグサレM野郎!」

Σ(;'A`) 「してないし!」


 俺たちを倉庫まで連れてきた、そいつ──。
 角刈りの黒服は、ぶっきらぼうに言い放った。


「何も入ってはいない、だろう。 おそらく」


 ガタイのいいその男は、いつの間にかサングラスまでかけており、
 全身黒ずくめのパーフェクト黒服に進化していた。
 グラサンひとつとはいえ、威圧感は大幅にパワーアップしている。


爪#゚〜゚) 「ったく、なら最初からテメーで調べろよ……。
       オマエラそん為にいるんだろーがよ」 ブツブツ


 タムラの吐く呪詛にも、仁王立ちのまま。
 反応を示すことはない。


137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:32:46.43 ID:hSJVUBmS0

.
(;'A`) (……)


 黒ずくめ、といえば。

             オサム
(;'A`) (……くそっ。 兄者のやつ、どこにいるんだろ……?)

      カンオケ
 漆黒の痛PCを持つ、あの男。

 彼はこの近くで待機しているはずだが、
 どうやって連絡すべきだろうか。
 既に携帯は没収されてしまっている。


/ ゚、。 / 「終わったケド。 カラダのほうは」


 しぃちゃんの制服をぐしぐししていたダイオードが、こちらへ首を傾けた。


爪 ゚〜゚) 「チッ。 オレもそっちが良かったぜ……」

/ ゚、。 / 「ジャンヌにチクるケド?」

爪;゚〜゚) 「うるせぇ!  ……やめて」


139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:36:03.93 ID:hSJVUBmS0

.
「で、どうだったんだ」


 黒服がボディチェックの結果を問う。


/ ゚、。 / 「特に異常なかったケド? コレ以外は」


 ダイオードはそう答えると、掴んでいたものを床に落とす。


Σ(;'A`) (げっ)


 ちゃりん。

  _,, そ
爪 ゚〜゚) 「!?」


 跳ね上がった金属音の正体は、
 つー曰く “ 袖に仕込んでいる ” という、医療用メス。


156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:44:31.62 ID:hSJVUBmS0

.
/ ゚、。 / 「ん」


 ちゃちゃちゃちゃちゃりん。


Σ爪;゚〜゚);-[]3[]) 「「!?」」

(;'A`) (あちゃー……)


 計10本。


爪;゚〜゚) 「異常大アリじゃねぇぇぇえか!!」

「……や、殺る気満々だな……」


 無表情に徹していたのであろう黒服からも、さすがに動揺が見て取れた。

 しぃちゃんの常人離れした身体能力については、
 こいつらも十分聞かされていたはず。


爪;゚〜゚) 「っっっか〜〜〜〜、怖ぇ怖ぇ。
      もし不用意に近づいてたら……」


158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:47:41.57 ID:hSJVUBmS0

.
/ ゚、。 / 「もーちょいチェックすれば、まだまだ出てくるかもだケド。
       タムラ代わりにやるか?」

爪;゚〜゚)そ 「え! ……い、いや、遠慮しとくわ」


 加えて、これだけの凶器を隠し持っていたとあれば、
 いやが上にも警戒は強まる。


「おい、チェックの続きは……」

/ ゚、。 / 「冗談だケド。
       もう持ってないでしょ、だいたい調べたから」

(-[]3[]) 「……なら、あとは荷物か」


 彼女は制服姿(一度帰宅したはずなのに)だが、
 学校指定のとは違う、小さめのショルダーバッグを右脇に抱えていた。


(-[]3[]) 「悪いけど、調べさせてもらうよ」


161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:50:42.38 ID:hSJVUBmS0

 _,
(*゚−゚) 「……どうぞ」


 唇を噛んで、それを差し出すしぃちゃん。


([]ε[]- )゙ 「おい」


 ポセイドンの合図で、黒服がバッグを受け取り、無造作に手を差し入れる。

 中からは、可愛らしいポーチがひとつと、小さめの水筒。
 携帯、ハンカチなどの日用品。
 それから、ポータブル音楽プレイヤーが出てきた。

 少し意外な感じもしたが、しぃちゃんだって年頃の女の子だ。
 音楽くらいフツーに聴くだろう、そう思い直す。


爪 ゚〜゚) 「何が出るかな〜、っと?」


 そしてポーチの中身は、
 リップクリームとあぶらとり紙、ヘアピン、ヘアゴム。
 あ、あとなんかよくわからないお菓子がいくつか。


172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/08(日) 23:56:10.21 ID:hSJVUBmS0

.
 コスメ的なアレとかソレとかは、ほぼ入っていないに等しい。
 現役女子学生にしてはシンプルなほうだろう。
 “ ドクミ ” に至っては、これら数点すら持ち歩く気皆無だが。


爪 ゚〜゚) 「へっ。 ちぃと期待はずれだったな」

(*゚−゚) 「どういう意味ですか……」

爪 ゚〜゚) 「しっかしまー、改めて見てみりゃあ、な」

(;*゚−゚) 「……?」

爪 ゚〜゚) 「なるほどね〜〜〜。 ひひっ」
   ъ゙

 品定めとばかり、目の前の少女を眺め回し、
 タムラは口角を釣り上げた。


(-[]3[]) 「どうした? 何か言いたげだが」

爪 ゚〜゚) 「いやーね。 ダンナも隅にゃおけねーなー、ってね」

(-[]3[]) 「……だろ?」

(;'A`) (誉めてねー)


187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:09:58.67 ID:OFi1scAH0

.
 絡みつく複数の視線に、しぃちゃんはうつむき、身を固くする。

 室内灯の頼りない明かりにも、じゅうぶん映える、淡雪の白肌。
 ベビーフェイスを彩る各パーツはそれぞれに整った形で、
 かつ絶妙に配置され、調和を保っている。

 化粧っ気などなくとも、
 目の前の天然素材は、奇跡の完成度を誇っていた。

 ポセイドンが躍起になる気持ちも、少し、理解できた。


爪;゚〜゚) 「……だってのによ。
      天使の顔で近づいて、グサッ、てか。
      こえーこえー。 ほんっっと女はこえーわ〜〜」


 冷や汗を流しつつ、近くの黒服に語りかけるタムラ。
 彼の視線の先には、没収されたメスが鋭い光を放っていた。


(;'A`) 「もういいだろ? は、話を戻してくれ。
     ポセイドン、君は今からどうするつもりなんだ?
     し、しぃちゃんを手に入れるだとか、なんだとか……」


 痺れを切らした俺は、自ら切りだした。


190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:12:28.26 ID:OFi1scAH0

.
(-[]3[]) 「単純な話だよ。
      僕と勝負して、君たち──。
      つまり、ドクオさんとホライゾンさんがもし勝てたら、ギコは解放する」

(; ^ω^) 「え、負けたらどうなるお……?」

(-[]3[]) 「言っただろ?
       しぃちゃん。 彼女は明日から僕のモノになるのさ。
       ……身も、心もね」

(;*゚□゚) 「そんなコトっ!」


 当の本人が体いっぱい拒否を示す。
 しかし、


(-[]3[]) 「できるさ。
      そういう “ 能力 ” なんだから」

(;*゚ο゚)そ 「のっ! う……りょく……?」


 ポセイドンの言葉に、反論を封じられた。


193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:15:18.04 ID:OFi1scAH0

.
(i|i*゚□゚) 「だ、だとしてもっ」


 しばらく口をぱくぱくさせていた彼女だったが、立ち直りは早かった。
 眉間にしわを寄せ、声高に叫ぶ。


(#*゚−゚) 「どうしてドクオさんたちを巻き込むんですか?
      あなたの目的は、私なんでしょう!?」

/ ゚、。 / 「スズキが、呼んでくれ、って念を押したんだケド」


 返答は予想外の方向からだった。


/ ゚、。 / 「あんたら二人をこの場に招くコト。
       それが、スズキがごしじんに手を貸す条件だったんだケド」

(; ^ω^)(;'A`) 「「 !? 」」

(;*゚△゚) 「な、なんで……?」

/ ゚、。 / 「なしてだと思う?」


 ダイオードはやはり無表情のまま、スーツの襟を正し、続けた。


197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:18:59.36 ID:OFi1scAH0

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/ ゚、。 / 「スズキの目的っ。
       そりは、一人でも多くの “ ちゃねらー ” に遭うコトだから」


 や、戦うコトか? やっつけるコトかな?
 なんて、独りごちている。
                              
 ワイシャツにシャイニーストライプジャケットの、ボーイ風スタイル。
 スマートで非常に背が高く、切れ長の目が特徴的だった。
 シャープな輪郭でいて、マスクはどことなく甘い。

 容姿端麗といって問題ないその風貌。
 ……が、彼もまた、残念イケメンの類であるようだ。

 おそらくは180を越えるであろう大男が、
 無表情で首をかしげている様子は、シュールな光景だ。


爪 ゚〜゚) 「たァく……何様なんだか。
      付き合わされる身にもなれってんだ」


 同じホスト風でも、どこかやさぐれた感じのする鈴木タムラに比べ、
 鮮烈な存在感を与える風貌だった。
 そして不気味さも、頭いっこ上。


198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:23:00.29 ID:OFi1scAH0

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/ ゚、。 / 「相手は “ ねらー ” とはいえ、よわっちくて、能力もショボいケド。
       そんなんが一人二人増えたところで、
       対処できない程度の実力なら、最初から用はないケド」


 わかっていた事だが、仲間の悪態にもなんら動じる様子はない。

  _,
爪 ゚〜゚) 「そーゆーコト言ってんじゃねー!
      てめーのワガママのせいで、
      面倒ゴトが増えてることくらいは頭に入れとけってんだよ!」

/ ゚、。 / 「怖いのか?」

爪#゚〜゚) 「あぁー?」

(-[]3[]) 「……それくらいにしてくれ。
      内藤兄弟を呼び出すことを許可したのは僕だ。
      何の問題もない」


 口論する鈴木たちを、ポセイドンが宥める。

 彼らの会話からわかったこと。
 俺たち兄弟の素性や “ ねらー ” であることも、事前に調べられている。
 ……おそらくは、その能力も。


204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:26:38.88 ID:OFi1scAH0

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(-[]3[]) 「使い道なら充分……くくく。
      お前たちももう、ゲームの段取りは頭に入ってるだろ?
      彼ら二人は、今やこの場になくてはならない、大事な “ ゲスト ” さ」

爪 ゚〜゚) 「……チッ。
      ま、坊っちゃんがそう言うなら、俺ぁ別にいいんですがね」

.
 俺たちが “ ねらー ” であることを把握した上で、
 わざわざ呼び出しているのだ。

 雇われ超能力者──鈴木たち二人プラス、女性1名とやら──も、
 戦闘能力に相当の自信があるのだろうということは、
 会話の流れから窺い知れる。


(;'A`) (……)


 加えて、周りを取り囲む黒服たちも、屈強を絵に描いたような男が揃い踏み。
 俺は手汗をズボンでぬぐった。 

 意を決して入った虎穴だが、
 目的の虎児がいない上、虎に囲まれて身動きが取れないでいる。


211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:29:24.47 ID:OFi1scAH0

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(-[]3[]) 「しぃちゃん」


 ポセイドンは、立ち竦む我々のほうへ向きなおり、
 ぶ厚い眼鏡を光らせた。


(-[]3[]) 「あの夜から、僕の時計は止まったままさ」
 _,
(;* − ) 「……」


 多勢をもって、一人の女の子をさらおうと試みて。
 そのまま返り討ちにあった、あの夜か。

 挑発が喉元まで出かかったが、ぐっと飲み込む。


(-[]3[]) 「手に入れるって決めてるんだ。 欲しいと思ったモノは。
      絶対に。 何年かかっても。
      ……どんな手をつかっても」


 ── 最悪のストーカーに見染められてしまったもんだ。

 俺は目の前の少女に、心から同情を覚えた。


214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:32:24.11 ID:OFi1scAH0

.
 〜 〜 〜


(-[]3[]) 「さて。 外もすっかり暗くなった。
      そろそろゲームの準備に移ろうか」


 ポセイドンが気持ちの悪い笑みを浮かべる。
 押し黙る高校生ふたりを横目に、俺は無言で頷いた。
 提案を呑む以外、選択肢はなかった。


(*゚−゚) 「ゲーム? 私は何をすればいいんですか?」

(-[]3[]) 「しぃちゃん。
      さっきも言ったように、僕と “ 勝負 ” するのは、
      ドクオさんとホライゾンさんだ」
 _,
(*゚−゚) 「……?」

(;'A`) 「まさかとは思うんだが、
     さっきから君の言う “ 勝負 ” って、ソノ……」


 俺はこわごわと、黒服に手渡し済みの “ それ ” を指差した。
 ここへ向かう道すがら、俺たちが買ってきたアイテム。


217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:35:12.18 ID:OFi1scAH0

.
(-[]3[]) 「ご名答。 ま、薄々わかってはいたはずだろう?」


 黒服から受け取ったポセイドンは、
 “ それ ” の封を切り、中身を取り出した。


(-[]3[]) 「ん? プラスチックじゃないのか。
      折れ曲がらないように注意して扱わないとな。
      一応、こっちでも替えは用意してあるけど──」


 社長椅子の脇にはいつの間にか、
 レジャー用の簡易テーブルが用意されていた。
 “ それ ” を台上に広げ、しばらく眺めたあと、黒服につっ返す。
 

(-[]3[]) 「君たちはこっちが用意したものなんて使いたくないだろう?
      だからわざわざ買って来させたんだよ。
      フェアプレーが信条だからね、僕は」
 _,
(*゚−゚) 「家族を盾に脅迫している人が、フェアを語らないでください」

(-[]3[]) 「……」

/ ゚、。 / 「そりゃそうだ」


221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:39:06.90 ID:OFi1scAH0

.
 皮肉にもならないやり取りの中、
 “ それ ” のチェックを終えた黒服が口を開く。


「特に異常はないようです」

(-[]3[]) 「オーケー。 では……」


 緊張していないわけじゃあない。
 けれど、実感がわかない。
 どこかうわの空な自分がいた。

 “ こいつ ” で勝負する?
 勝ったらギコを解放し、負けたら、しぃちゃんを。


(;'A`) (はは、マジか)


 こんなおもちゃ一つに、兄妹の運命を託す、だって?

 相手の言うとおり、半ば想像はしていた。
 だが、実際に敵の口から聞かされると、
 それはとても現実味に乏しいストーリーだった。


224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:41:35.77 ID:OFi1scAH0

.
 ほんの数時間前のことを思い出す。
 あの時、脅迫状の暗号文から導き出したウェブページ。


 『 △△株式会社VIP営業所所有 ・ 第三倉庫 』


 そこで、場所とともに記されていた一文。


 『 なお 』

 『 上記場所へ来る際、新品の──── を一組、買ってくること 』



227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[]:2012/07/09(月) 00:45:36.06 ID:OFi1scAH0

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 あのページを作った人物は、いま、俺たちの目の前にいる。
 脅迫の首謀者たる中学生、田中ポセイドン。

 彼が両手で弄んでいるそれは、
 主に黒と赤の2色で構成される、52+2枚のカード。

  _, 、_
(;*゚−゚)(; ^ω^)

(; A )


(-[]3[]) 「ルールを説明しよう」



 ── トランプだった。



 (続く)
.

230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :[sage]:2012/07/09(月) 00:48:22.45 ID:OFi1scAH0

ただいま。


>>188
NGしている人には申し訳ないのだが、
「おんどりゃ」で堪え切れず麦茶を吹き、
「歌を歌います」で腹筋が捻じ切れるくらい笑っていた。アカン


ぶっちゃけバイさる回避に重宝したが、読む人に負担がかかるのは事実。
次話は素直に、創作板、あるいは別の場所にて。
それでは。

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