十話 −夜−
27 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:02:25.49 ID:TzBnG8IpP
十話 −夜−


 時は遡ること一九九九年。
ノストラダムスによれば、
この年、空から恐怖の大王が降りてきて人類が死滅する予定だったらしい。
生憎そんなものは降りてきはしなかったのだが、
こと二人の少女(そこにめぐり合わせた幼い子どもたちも同様ではあるが)、
にとっては確かに死滅に等しい事象が引き起こされたのだ。

 この節の主人公は二人の少女。
その名をハイン、ヒートと言う。
当時、二人は児童養護施設に預けられていた。

 ハインは両親からの虐待、ヒートは育児放棄と、過酷な生い立ちではあったが、
不幸中の幸いは二人に重篤な障碍がない点である。
そんな二人は年こそ三つ違えど特に仲が良く、
ヒートはハインの事を姉のように慕っていた。
ハインもまた自らの願望を投影するようにヒートを可愛がっていた。


28 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:05:38.34 ID:TzBnG8IpP
 重ねて幸いなことに施設内での暴行等はなく、良い環境の中で二人は成長することが出来た。
しかしそれでも彼女らの中に大きな傷が一つあることには変わりなく、
ハインはしばしば情緒不安定に陥る事も少なくなかった。

 ヒートはといえば、自らが両親に棄てられたことはぼんやりと自覚していたが、
目の前でハインの苦しがる様を見ては、
日頃受けている世話の分、逆に自分がしっかりしなければと思うほどだった。
前後不覚に陥ったハインに何度か手を上げられたこともあったが、
ヒートは幼いながら、大人も目を見張るほどの寛容さでハインをなだめた。

 お互いが妹であり、そして姉のような相補的関係を維持していた。
二人が出会えたこと、それ自体は幸運であったが、
彼女らを取り巻く環境は再度不幸を呼び寄せてしまう。


29 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:08:48.96 ID:TzBnG8IpP

 養護施設爆発事件。
一九九九年八月、ハイン十五歳、ヒート十二歳の夏の夜にそれは起こった。
ガス管の老朽化が原因とされているこの事件であるが、その真相を知る者はいない。

 この夜、最初に目が覚めたのはヒートだった。
異常な暑さに加え、粘膜を刺激する臭いに不快感を覚え始めた頃
彼女はようやく目を覚ました。
昼の明るさとは違う光に照らされたいつもの部屋。
同室の者たちは未だ目を覚ましていないようだった。

 数秒間状況が飲み込めなかったヒートであったが、
火事であることに気がつき、すぐさま他の者たちを起こしにかかった。
一歩二歩進んで近くに寝ていた物の肩に手をかけた瞬間、
世界がホワイトアウトした。

 何が起こったのかと思った瞬間、続けざまに顔面および全身に凄まじい風圧の熱風、
そして打ち上げ花火のような、あるいはライオンの咆哮のような、凄まじい轟音が襲い掛かった。
鼻腔を焼かれ、瞼を焼かれ、全身が耐えられない熱さにさらされ続ける。
逃げることのできない痛みが全身を襲い、ヒートは床に蹲った。
反射的にくしゃみやせきが出そうになるが、
その反動でさらに痛みが増し、声にならないうめき声が出る。

33 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:13:02.01 ID:TzBnG8IpP
 一回、二回と呼吸をしようと試みて、
三回目の呼吸に失敗したときヒートの意識は混濁し始め思考がままならなくなってきた。
暑さから逃げたい。
その一心で手を伸ばす。
床に手を付け、体をずりずりと引きずる。
一刻も早く逃げだしたい。助かりたい。
痙攣する瞼をなんとか開けようとする。

 とにかく視界を確保しなくてはとこじ開けた目は、
薄ぼんやりと何かの物体があるのを見つけた。
おぼつかない焦点を気合で合わせると、それが手のひらであることがわかった。
まるで何かを差し出すように開かれていた手のひらには黒いタトゥーが入っていた。

 はっきりとした輪郭の、炎を模したトライバルタトゥー。
こんな手のひらは知らない。
そう思い顔を上げたヒートの眼前にいた人物はどうやら成人の男のようだった。
助けに来てくれたのだろうか。
そう思いもう一度視線を手のひらに落とした。



そこでプッツリと生前のヒートの記憶は無くなっている。
死後の記憶はハインの背中に負ぶさっているところから始まるが、それはまた別の話である。

34 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:17:10.17 ID:TzBnG8IpP

 場面は再び現代へと戻る。
例の男との約束の日、ジョルジュの家にはいつもどおりの三人がいた。

ξ゚听)ξ「ねえ、来るかなあ?」
  _
( ゚∀゚)「どうだろうな。あんまり興味は無いって感じもしたけど」

( ^ω^)「でも、モララーの側に付くっていう感じもしなかったお」
  _
( ゚∀゚)「中立かあ。参ったなあ。もうウチお手上げだよ。降参する?」

ξ゚听)ξ「いまさら何言ってんの。て言うか最近弱気だよね。
      最初はあんなに熱かったのに」
  _
( ゚∀゚)「なんかさ。な? 内藤」

( ^ω^)「僕に振られてもわからないお」

 内藤が首を横に振ったその時、呼び鈴の音が三人の耳に飛び込んできた。
思わず立ち上がったのは部屋の主であるジョルジュだった

39 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:21:34.63 ID:TzBnG8IpP
  _
( ゚∀゚)「あいつかな?」

ξ゚听)ξ「早く行きなさいよ」

 ツンに急かされ、ジョルジュはそのまま玄関へと向かった。
その様子を見ながら、内藤はもしあの男だったらなんと声をかけようかとそんなことを考えていた。

 そうして程なく玄関から戻ってきたのは、
  _
( ゚∀゚)「えーと、アピールタイムです」

('A`)「いや、アピールじゃない」

あの男だった。
しかし、ジョルジュはきわめて微妙な表情をしていた。

ξ゚听)ξ「入る気で来たって感じではなさそうね」

('A`)「断りに来た。礼儀だと思ったから」

( ^ω^)「どうしても、嫌だったのかお」

 どちらかというと加入に乗り気ではない内藤ではあったが、
それでもこの男にとっては加入することがプラスになるだろうと考えていた。
だからとりあえずその理由から聞いてみようと、問いを投げかけた。

40 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:26:14.29 ID:TzBnG8IpP
('A`)「いや、別に嫌じゃない。ただ、入ろうと思う理由も無い」

 伏し目がちにボソボソと男は呟いた。
悪意は無いようだった。
どちらかといえば無関心。
興味が無いし、困っていないから別にいいという印象を内藤は受けた。
そしてこういった輩をその気にさせるのは非常に難しいことを内藤は知っていた。

( ^ω^)「そう、かお」

だから潔く引いて彼を見送ることにした。

ξ゚听)ξ「じゃあ入ればいいじゃん」

だが、ツンは引かなかった。
  _
( ゚∀゚)「あれ、話聞いてた?」

ξ゚听)ξ「聞いてたけど? 嫌じゃないんでしょ? 入りなよ!」

('A`)「いやいや……」

諦めムードの男性陣と、まるで引かないツン。

41 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:28:19.65 ID:TzBnG8IpP
ξ゚听)ξ「これからさ、どうするの?」

('A`)「別に。どうもしない。今までどおりの生活を続ける」

ξ゚听)ξ「今までどおり? 誰かを襲い続けるの?」

('A`)「そんなことはしない」

ξ゚听)ξ「内藤クン襲ったじゃん」

('A`)「あれは別」

ξ゚听)ξ「何が」

 二人の会話がだんだんと熱を帯び始め、残る二人はそれを静観していた。
そこへ不意に玄関の扉の閉まる音が聞こえた。
ここへ来る可能性があるのは、後はヒートくらいなものだ。
依然会話を続ける二人を横目に、内藤はそう思い玄関の方へと視線をやった。
予想は外れることなく、顔を見せたのはヒートだった。
ところが次の瞬間のリアクションまったくもって内藤の予想外だった。

ノハ;゚听)「えええええええええええええええ!」

突然の絶叫。
その視線は男を凝視しており、口がぽかんと開いたままになっている。
白熱していた二人も会話をやめヒートの方を向いた。

45 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:31:50.62 ID:TzBnG8IpP
('A`)「……何?」

ノハ*゚听)「……かっこいい」

電光石火、衝撃の告白だった。

('A`)「……は?」

ノハ*゚听)「な、名前は?」

('A`)「ドクオ」

ノハ*゚听)「……かっこいい」

('A`)「なんでもいいのかよ」

誰がどう見ても一瞬で一目惚れをしてしまったヒートを前に、
ツンは一瞬で笑顔を作り、ヒートに声をかけた。

ξ゚听)ξ「今ね、仲間にならないって誘ってたところなの。だからヒートからもお願いして」

ノハ*゚听)「え!? 仲間になるの? ホント!? やったー!」

('A`)「え、いやいや、ならないから」

ノパ听)「え……」

紅潮していたヒートの顔の色が一瞬にして失せた。

46 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:35:08.94 ID:TzBnG8IpP
ノパ听)「だって今、仲間になるって……」

('A`)「いや、それは……」

次第にヒートの目は潤み、発する声がわずかにうわずりはじめた。
ついには二の句が継げぬようになり、下唇をぎゅっとかみ締めた。

ξ゚听)ξ「はい、もう一回。それは?」

そしてツンが男に再度尋ねた。
悪魔の交渉のようだが、ツンは内心これでヒートと貸し借り無しになったとも思っていた。

(;'A`)「あー、わかった。別にいいよ。なんだこれ。
   けどこんなんで仲間になったやつ信用できんのか? ほら、泣くな泣くな」

ノハ;へ;)「うー……」

ξ゚听)ξ「情に厚くて女の子にやさしい。とびきり信用できるじゃない」

('A`)「よく言うよ」

ヒートの頭をなでるドクオと、ドクオの服の裾を掴んで泣くヒート。
そんな二人を見ながら溜息を吐くジョルジュ。
  _
(;゚∀゚)「ところでヒート。お前、うちには入らないんじゃなかったのか」

ノパ听)「ドクオと一緒」
  _
( ゚∀゚)「そーかい。まあよかったよ。
     よろしくな、ドクオ。よし、細かい自己紹介がてら飯でも行くか。おごるぞ」

47 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:38:34.99 ID:TzBnG8IpP
( ^ω^)「焼肉!」

ξ゚听)ξ「寿司!」

ノパ听)「ラーメン!」
  _
( ゚∀゚)「ドクオは何がいい?」

('A`)「いや、別になんでも……」

ノパ听)「ドクオ! ラーメン!」

('A`)「あー……じゃあ、ラーメン」
  _
( ゚∀゚)「ラーメン二票入ったのでラーメンになります」

( ^ω^)「じゃあこてこてのラーメンで」

ξ゚听)ξ「ふん、ロリコンどもが相手じゃ分が悪いわ」
  _
( ゚∀゚)「なに、いまロリコン流行ってんの?」

 かくしてメンバーにドクオとヒートを加え、
一行はジョルジュ行きつけのラーメン屋へ向かうため部屋を出た。

51 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:41:48.00 ID:TzBnG8IpP
 既に辺りは暗く、空には真円に近い月が昇っていた。
風景のところどころが街灯の明かりを浴びて白く浮き出されている。
  _
( ゚∀゚)「だいぶ暗いなー。ラーメン屋開いてっかな」

ξ゚听)ξ「寿司にして差し上げてもよくてよ」
  _
( ゚∀゚)「どんだけ食いたいんだよ」

ノパ听)「そういえばよ、ジョルジュ」

 ドクオの横に付いて歩くヒートが突然口を開いた。

ノパ听)「ハインに会いに行ったんだけどよ、会えなかったわ」
  _
( ゚∀゚)「ん? どうして。消灯時間には早かっただろ?」

ノパ听)「なんか札が掛かってて、会ったら駄目だって。
     あの……面会……なんとか」

( ^ω^)「面会謝絶?」

ノパ听)「あ、それっぽい。どういう意味?」
  _
( ゚∀゚)「会うなって意味だ。……けど変だな。そんな急に面会謝絶ってどういうことだ?」

54 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:45:37.62 ID:TzBnG8IpP
ξ;゚听)ξ「わ、私足しか攻撃してないわよ?」
  _
( ゚∀゚)「熱が出たとか? うーん……まあ重症っちゃあ重症だからなあ」

ノパ听)「そうか。早く元気になんねーかな」
  _
( ゚∀゚)「心配か?」

ノパ听)「そりゃ心配だよ」
  _
( ゚∀゚)「ん、そうか」

 また反発してくると予想していたジョルジュだったが、
素直に心配だと口に出すヒートを見て、ばつが悪そうに頬をかいた。
そうしてそのまま遠くを見て何事か難しいことを考えているような表情をしていたが、
不意にその目を見開き「えっ」と声を漏らした。

ξ゚听)ξ「どうしたの」
  _
( ゚∀゚)「ギコだ……」

ξ゚听)ξ「え、ギコって……あの?」
  _
( ゚∀゚)「ああ。……ごめん。俺、ちょっと行くわ。ツン、あと任せた」

ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと! 行くって何言ってんの馬鹿!
       内藤君、ごめんあいつ追っかける!」

( ;^ω^)「え? え!? な、なんだかわからないけど、わかったお!」

55 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:47:35.52 ID:TzBnG8IpP
 全速力で走り出すジョルジュと、それを追うツン。
二人は瞬く間に走り去り、内藤、ドクオ、ヒートの三人が取り残された。

( ^ω^)「えーと……僕そのラーメン屋知らないんだけどどうしよう」

('A`)「いや、そもそもラーメン食うって雰囲気でもないだろ」

ノパ听)「言えてる。俺たちも追ったほうがいいんじゃないか? ギコは強いぞ」

( ^ω^)「うーん、確かに。あの二人といえど放っておくのは……お?」

 ふと、内藤は視界の隅に見慣れぬ人影を見つけた。
いや、そんなものあって当然なのだが、何故だか内藤は瞬間的に目を奪われた。

( ∵)「……」

 背丈はかなり小さい。一四〇センチあるかないかといったところだ。
辺りが暗く詳細はあまりわからないが、ぼーっと立っているその姿にまるで生気が感じられない。
ふわふわと漂うようにゆっくりと移動している。

('A`)「ん? 何か居たか?」

( ^ω^)「あれ、おかしくないかお?」

奇妙な人影を指差すブーン。

56 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:51:26.70 ID:TzBnG8IpP
('A`)「あれ? あれってどれ? 何も居ないぞ」

( ^ω^)「よく見るお。あそこに小さい人が」

ノパ听)「いないぞ」

('A`)「居ないな」

(;^ω^)「え、いや、ほらあそこだお!」

 いくら暗闇といえど、他に目立つものが無いのだからわからないはずがない。
人影は相変わらずゆらゆらと漂い、ゆっくりと曲がり角の向こうへと消えていく。

(;^ω^)「待つお!」

('A`)「おい!」

 逃がしてはいけない気になって、内藤はその人影を追った。
何故そんなことをしなければいけないのか内藤自身も理解ができない。
それでも肌を包む違和感と、胸の奥から湧き上がる僅かな衝動が確かにあった。

 そうして内藤が曲がり角を曲がった先、
そいつはまるで来ることをわかっていたかのように、じっと内藤の方を見て佇んでいた。

59 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:54:44.24 ID:TzBnG8IpP
(;^ω^)「はあ、はあ……死人かお?」

( ∵)「……」

 一歩、また一歩とそいつに近づいていく。
内藤の息が上がっていく。
それほど全力疾走しただろうか。
それほどの距離を走っただろうか。

(;^ω^)「はあ、はあ、はっ……ぁ……はぁ……」

 内藤の呼吸はどんどんと乱れていく。
一歩、二歩、三歩。
そいつに近づくにつれて内藤の視界は狭まっていく。

( ∵)「……」

(;^ω^)「はぁ、はぁっ! ……はぁ、はぁ」

 内藤は最早なぜここにいるかをも忘れて食い入るようにそいつだけを見ていた。
そして内藤の口からこぼれたのは、一滴の唾液だった。
ぽたり、ぽたりと半開きの口の端から唾液がこぼれる。

 内藤はそれを啜ろうともしないし、拭おうともしない。
至極当然な反射なのだ。
そして目の前のそいつは相変わらずぼーっと突っ立ったまま、
内藤の顔をじっと見つめているのだ。

62 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:57:07.41 ID:TzBnG8IpP
 だから、内藤は当たり前にそいつを「啜った」。
そう、当たり前なのだ。
少なくとも今の内藤には疑いようが無い。

べちゃ、べちゃ。
ず、ずずず、ずずず。
ぎぎ、ぎ、ぞぞぞ。

ただ、なにせ初めてなのだ。
少しばかりは乱暴になってしまったかもしれない。
最早原型が無いのだ。
ただ、それは内藤のせいなのだろうか?

( ^ω^)「お、お゛……ごぼっ……げぇっ! ……はあぁぁぁ……」

 一度咳き込み、啜れないモノを吐き出した。
そして天を仰ぎ恍惚と息を漏らす。

ぶるり。

一度大きく震えると内藤は声を上げて笑い出した。

63 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 22:59:46.03 ID:TzBnG8IpP
( ^ω^)「あはっ、あはははははははは!」

 内藤をいま圧倒的な多幸感が包んでいた。
そしてこの夜の街すべてが自身の部屋になるような感覚。

( ・∀・)

 脳裏をかすめるモララーの顔。
そして流れ込んでくる意識。

( ^ω^)「どこかに、シタイは、ないかなァ? くひっ」

 心の奥から言葉が漏れた。
イメージがあふれてくる。

( ^ω^)「シタイ。死体を前に、して、僕は――」

('A`)「悪いな」

 その言葉とともに内藤は意識を失った。
そして倒れる内藤の背後でふぅーっと息を吐きながらイヤホンを外すドクオ。

64 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 23:01:47.79 ID:TzBnG8IpP
('A`)「全然話が通じねえから思いっきり殴っちまったけど……死んだりはしねえよな」

ノパ听)「あんないつ発狂して暴れるかわからない状態なら殺してもオッケーだろ」

 ドクオはがっくりと肩を落として地面に寝る内藤を抱き上げた。
半ば自棄になってヒートに尋ねる。

('A`)「はあ……俺新人なんですけど。ヒート先輩、どうしたらいいですか?」

ノパ听)「えーと、俺と結婚しよう?」

('A`)「……まともな奴が居ねえ」

 ドクオはこれ以上無いくらいに眉間にしわを寄せ、
夜闇に向かって短く「あ゛あ」と吼えた。





68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 23:09:12.91 ID:TzBnG8IpP
今日はこれで終了です。
しばらく家を空けるので、次回は月をまたぐかもしれません。
間は開きますが、絶対に完結させます。
少なくとも年内には終わらせるつもりです。

それでは、読んでくださった方、支援してくださった方、
まとめのエスカルゴさん、ありがとうございました。
他スレの方、迷惑がかかっているようでごめんなさい。
ではまた。

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