九話 −毒−
2 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 20:57:02.39 ID:TzBnG8IpP
代理ありがとうございました。


まとめ 内藤エスカルゴ様
http://localboon.web.fc2.com/099/top.html
いつもありがとうございます


−前回のあらすじ−
黄泉がえりの噂
ノパ听)がうろうろ
从 ゚∀从が( ・∀・)にぶすり

けっこうのんびり投下します。
そして話の展開もスローなので今日も二話投下。

4 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:03:03.12 ID:TzBnG8IpP
サブタイミス。訂正

九話 −毒−


  _
( ゚∀゚)「と、いうわけで会議を始めまーす。パフパフ」

(;^ω^)「……」

ξ--)ξ「……」

ノハ;゚听)「……」

 ヒートの居候騒動から二日。
目まぐるしく変化した状況の把握と、
これからの事を相談するべく四人は集まった。

 最初にこの提案をしたのはツンだったが、
みな思いは同じだったようで、今こうして会が開かれている。
が、それとはまた別な問題が、
少なくとも二人の心を重くしているようであった。


5 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:06:38.69 ID:TzBnG8IpP
ノハ;゚听)「そ、そうだ! お、俺、とっても大事な用事が出来たんだった?」
  _
( ゚∀゚)「俺に訊くな」

 一番落ち着いていないのはヒートであった。
今まで敵同士であったことや、この前の一件など、
どうにもツンを意識せざるを得ない様子であった。

ノハ;゚听)「いや、ホント! マジ! マジのマジ! ガチ!
     今日ハインのとこ行かなきゃ。あれから行ってないし。
     それに俺仲間じゃないし、聞いたらまずいし! よくないし!」
  _
( ゚∀゚)「いやあ、でもこれから話し合いがさ」

ξ゚听)ξ「行ってきたら?」

ノハ;゚听)「え?」

ξ゚听)ξ「別に止めない……て言うか、私は止めれないよね」

ノハ;゚听)「う、あ?」

 困ったようにチラチラとジョルジュの顔を見るヒート。
それを見たジョルジュは眉をひそめて唸ると、ため息をついた。

6 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:10:03.23 ID:TzBnG8IpP
  _
( ゚∀゚)「ま、ハインも何かと心細いかもな。
     行っとけ行っとけ。夕方までには帰って来いよ」

ノハ;゚听)「え、あ、うん」

 そんな遣り取りを聴きながら、

(;^ω^)(逃げられたぁぁぁ!)

内藤は苦しみを分かち合う存在の逃亡に愕然としていた。

ノパ听)「えーと、じゃあ、いってきます」
  _
( ゚∀゚)「いってら」

バタン、と玄関の扉の閉まる音がして、
部屋は再び静かになった。

ξ゚听)ξ「……」

(;^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「じゃ、再開ということで」

 一人内藤だけが苦悶の表情を浮かべながら会議が始まった。

7 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:14:04.88 ID:TzBnG8IpP
 まずは現状の把握。
内藤が加わるまではといえば、ツンとジョルジュの二人が、
ペニサス率いる三人組に襲撃を受ける日々がただ続いていただけだった。
防戦一方の日々で、攻めに転じようと思うことも少なくは無かったが、
策も無ければ力も無かった。
加えて、死人の出現ペースが速まり、
かつそれらほとんどをモララー側に取り込まれているという最悪の事態だった。

( ^ω^)「死人って定期的に現れるものなのかお?」
  _
( ゚∀゚)「昔はどっちかってーと、偶然現れるってイメージだったんだけど、
     最近は頻度が高くなってるんだ。丁度ツンが死人になったあたりから、
     月一、今だと月二か三くらいかな」

ξ゚听)ξ「そうね。今月はまだ内藤クンだけだけど、
      そろそろ次の死人が出てきてもおかしくないかも」

( ^ω^)「はあ……そうなのかお」

 ジョルジュが抜けた後、内藤が現れるまでにモララー側に付いた人数は恐らく五人。
その内ペニサス、ハイン、ヒートの三人は先の件にてほぼ無力化したと言ってもいい。
結果として今現在、モララー側には四人いることになる。
モララー、ギコ、そして不明な二人。

9 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:18:58.36 ID:TzBnG8IpP
  _
( ゚∀゚)「ただ、もしかしたらもっと居るかもしれない」

( ^ω^)「えっと、まだどっちにも付いていない人のことかお?」
  _
( ゚∀゚)「いや、そもそもツンが今の力で死人を探知し始めてからの情報しかないんだ。
     つまり、俺が抜けてからそれまでの情報は無いし、
     ツンも全部を把握出来ているかは分からない」

ξ゚听)ξ「一応気を付けてはいるんだけど、それにしたって地球全部を把握は出来ないし。
      この街と付近一帯は何かあればすぐに分かるはず」

( ^ω^)「へえー、結構すごいお。
      ちなみに今どっちにも付いていない人はどれだけ居そうなんだお?」

ξ゚听)ξ「多分、二人。自信無かったんだけど、
      内藤クンの話からして多分あってる」

( ^ω^)「もっと居る可能性も?」

ξ゚听)ξ「ある。けど、今は気にしなくていいってとこ」

 そして話題はそのどちらにも付いていない二人へと移った。
一人は中立を守るクーという女。
もう一人は内藤を急に襲ってきた小柄な男。

11 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:22:24.43 ID:TzBnG8IpP
  _
( ゚∀゚)「その男の方はモララー側かとも考えたんだが、
     どうもしっくり来ないんだよなー」

( ^ω^)「どうして? 僕を襲ってきたのに」
  _
( ゚∀゚)「ひとつは、お前はモララーと一回会ってるけど、何もされていないこと。
     もうひとつは、その男が敵じゃなかったのかって言ったこと」

( ^ω^)「あー……なるほど。じゃあなんで僕を襲ってきたんだお?」
  _
( ゚∀゚)「さあなあ……。そればっかりはわからん」

 話の流れが一旦止まり、沈黙が訪れた。
それを機にツンは立ち上がりキッチンへと向かい、
ジョルジュはトイレに立った。

ξ゚听)ξ「あれー、ジョルジュ飲み物はー?」

( ^ω^)「今トイレ行ってるお。てか勝手に漁ってるのかお」

 キッチンから聞こえて来た声に、内藤が返事をした。

ξ゚听)ξ「いいのいいの。私も置いてったりしてるから。
      ちょっとコンビニ行って来るけど、何かいる?」

 内藤が首を横に振ると、ツンは「あ、そ」と短く言って、
そのまま靴を履いて外へ行ってしまった。
それと入れ違いにジョルジュが戻ってくると、
内藤はツンが出かけた旨を彼に伝えた。

12 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:25:50.05 ID:TzBnG8IpP
  _
( ゚∀゚)「そか。じゃあ男だけになったところだし、猥談でもするか、猥談」

( ^ω^)「なんでだお……それに猥談って言ったって何も無いお」
  _
( ゚∀゚)「おいおい、お前その歳でもう枯れちゃってるわけ?
     寂しい男だなー」

( ^ω^)「ジョルジュみたいに見境無く小さな子を家に泊めたりしないお」
  _
( ゚∀゚)「お、言うねえ言うねえ。俺をそんなにロリコンキャラにしたいのかお前は。
     ははあ、さては仲間が欲しいんだな? 妙に反応すると思ったら、お前そうだったのか」

(;^ω^)「ち、ちが! 僕は正常だお」
  _
( ゚∀゚)「焦るな焦るな。俺は理解のある男だから大丈夫だ」

( ^ω^)「でもツンは理解の無い女のようで」
  _
( ゚∀゚)「あ! お前俺のSOSコールシカトしただろ!」

( ^ω^)「いや、二人を邪魔しちゃいけないかなと」
  _
(;゚∀゚)「お前、マジでやばかったんだからな……。
     この部屋がちょっとした戦場だったぞ、マジで」

( ^ω^)「おっおっお。で、本命はどっち何だお?」
  _
(;゚∀゚)「おいおい、なんだよそのクラスの女子風な質問。お前そう言うの好きなのか?」

13 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:29:22.71 ID:TzBnG8IpP
( ^ω^)「いや、これから共に戦う仲間として、
      気を使うべきかどうかの見極めが必要な場面も多々あると考えて……」
  _
( ゚∀゚)「ありません」

( ^ω^)「ないですか」
  _
( ゚∀゚)「恋愛なんてご無沙汰だな。枯れてたのは俺だったか。
     死人になる前は……あ、いやなってから……って話題ずれてね?」

( ^ω^)「いえ、続きをどうぞ」
  _
( ゚∀゚)「また今度な。今度酒でも飲みに行った時にさ」

 今度と言わず今、と追い込みを掛けようとしたところ、
玄関のドアが閉まる音がして、内藤は言葉を飲み込んだ。
ところが玄関から中々ツンが来ない。
しかし耳をそばだててみれば、確かにツンの声はする。

( ^ω^)「誰か他にいるのかお?」
  _
( ゚∀゚)「っぽいな」

 どうやらその声は独り言の類ではなく、傍にいる誰かに向けているものらしい。
意識してみると確かに男の低い声が聞こえるような気もする。
 そして程なくして開かれたドアの向こうから現れた人物に、内藤は目を見開き驚いた。


14 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:32:34.03 ID:TzBnG8IpP
ξ゚听)ξ「死人とっ捕まえてきた」

 そう言ってツンが、服の上腕の辺りを引っ張って連れてきた男の顔が、
ついこの前見た顔だったからだ。

('A`)「……」

ξ゚听)ξ「いやー、さっきそこでばったり出会ってさー。
      実は高校の頃クラス同じだったんだけど、
      雰囲気変だなーと思って調べたら死人でさ。
      もうビックリして連れて来ちゃった」

(;^ω^)「……」

 興奮した様子のツンとは対極的に、内藤は深い海の底に沈められたような気持ちだった。
こうも幾度と無く対面させられると何か運命めいたものさえも感じる。
勿論それは色恋の類ではなく、死神の握る綱に絡め取られたようなものだ。
  _
(;゚∀゚)「連れて来ちゃったって……すげえ承諾を得られてない感じが……」

ξ゚听)ξ「だってモララーに捕まったら厄介じゃん。
      どうもまだ捕まってないみたいだし、今は数が大事なの」

(;^ω^)「あの」

 内藤が恐る恐る声を上げると、
男の方も内藤の顔に何か思うところがあったようで眉間にシワを寄せたが、
それを言葉に表すことは無かった。
そうして途切れた会話を引き戻すために、内藤は改めて男に向けて口を開いた。

15 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:36:04.66 ID:TzBnG8IpP
( ^ω^)「あの時の人……ですよね?」

('A`)「ああ」

ξ゚听)ξ「え、なに、知り合い?」

( ^ω^)「えーと、この間襲われたって言ってたあれだお」

ξ;゚听)ξ「はい? え、襲ったの?」

('A`)「ああ」

ξ゚听)ξ「ま、なんか誤解解けたんでしょ? 問題ないない」

(;^ω^)「いや、そんな」
  _
( ゚∀゚)「はぁー。なんつーか世の中狭いなー。
    ついさっきまで話してた奴が目の前に出てきて、おまけにツンの知り合いってか」

ξ゚听)ξ「うーん、知り合いって言うほどでもないかな。
      名前は覚えてるってくらい。あんまり話したこと無かったよね」

('A`)「まあ……」

16 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:40:05.03 ID:TzBnG8IpP
ξ゚听)ξ「ま、これから仲良くなっていけば良いよね。よろしく」
  _
( ゚∀゚)「オッスよろしく」

('A`)「はい?」

 事態が飲み込めないのか、差し出されるジョルジュの手を茫然と見つめる男。

('A`)「いや、よろしくって、え、どうして?」
  _
( ゚∀゚)「ん? 一人より沢山がいいだろ?」

('A`)「え、いや何が……」

ξ゚听)ξ「いいじゃん。どうせ戦うなら仲間いた方が心強くない?」

('A`)「だから、仲間とかどうとか、そういうのよくわかんないんだけど」
  _
( ゚∀゚)「……ん? もしやツン、状況説明とかまったくしてない?」

ξ゚听)ξ「あ、してない。ま、なんとなく感じ取ってくれてるでしょ?」

そう男に問いかけたツンだったが、男の表情は固い。
  _
( ゚∀゚)「そりゃ滅茶苦茶だろ。
    よし、とりあえず俺たちが何者なのか。その説明だけでも聞いてくれ」

 そう言うとジョルジュは男の返事は待たずに、これまでの経緯を簡単に話した。
男がモララーの仲間であるという可能性が捨て切れていない以上、
あくまでも話せる範囲のことのみではあったが、それでも男は静かに耳を傾けてくれた。

17 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:44:55.50 ID:TzBnG8IpP
('A`)「結構居たんだ」
  _
( ゚∀゚)「ああ、ここに居るみんなが同じ境遇だ。
     余程考え方が合わないなら別として、グループに属しておくのは悪くないと思う
     特に逸脱してしまった俺たちだからこそ、困ることは沢山あるはずだ」

('A`)「一緒に戦う気がなくても?」
  _
( ゚∀゚)「勿論」

ジョルジュは深く頷き、男の顔をじっと見た。
一方の男は目を伏せ、なにやら思案に暮れているようであった。
すぐに答えは出ないだろう。そう考えたジョルジュは、
  _
( ゚∀゚)「じゃあ、明日返事聞かせてくれ。
     申し訳ないけど俺ちょっと用事あるから、夕方ここを訪ねてくれ。
     勿論その気がないなら来なくてもいい」

そう言ってその場を締めくくった。

 男がジョルジュの家を後にした後、
話の筋は変わることなく男についてツンが話す時間が続いた。
高校時代の印象や、その後の進路など、
時折それぞれが自分の思い出を挟み、場はそれなりに盛り上がった。

18 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:49:33.27 ID:TzBnG8IpP
ξ゚听)ξ「――まあそんな感じで、正直よく分かんないんだよね。
      目立たないって言うか、特別話すようなことも無いって感じ」
  _
( ゚∀゚)「ふーん、それでよく会った時にすぐ分かったな」

ξ゚听)ξ「顔自体は大体憶えてるでしょ。
      あ、そうだパソコンが得意だったかもしれない。よくそんな話をしてた気がする」
  _
( ゚∀゚)「おー、現代っ子」

( ^ω^)「あ、そうだお。ツン、音楽をよく聴いてたイメージは無いかお?」

 初めて対峙した時の事を思い出し、内藤はそんなことを訊いてみた。

ξ゚听)ξ「音楽? うーん……別に。
       あんまり歌手の話とかもしてなかったと思うけど」

 しかしどうやら当てが外れたようだった。
そうなると戦うときにまで音楽を聴いていたあれは何だったのか、
内藤の中で消化不良の謎が残ってしまった。

19 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:54:09.17 ID:TzBnG8IpP





ノパ听)「あれ? なんかある」

 一方、ハインの病室へと辿り着いたヒートの目の前に、
先日来た時には無かったはずの赤字で書かれたプレートがぶら下がっていた。

ノパ听)「めん……かい……面会……し……えーと、なんだっけこの漢字」

「お見舞いですか?」

ノパ听)「あ、えーと、はい」

「ごめんなさいね、ちょっと今ハインちゃん疲れちゃってて、会わせられないの」

ノパ听)「え、そうなんですか。疲れて?」

「そう。ごめんなさい」

ノパ听)「えと、どうしよう。明日は、会えますか?」

「ごめんなさい、それもわからないの。ところで、あなたハインちゃんの妹さん?」

ノパ听)「……いや」

「そう。ご家族の方に連絡がつかないのよ。幾ら電話しても留守で」

22 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:58:01.03 ID:TzBnG8IpP
『そりゃそうだ』という言葉と同時にヒートの心に怒りがこみ上げてきた。
偽物の保険証を掴まされている目の前の看護師に非は無いが、
それでも腹は立つのだから仕方ない。

ノパ听)「帰ります」

 看護師の言葉に耳をくれず、ヒートは踵を返した。
悪態の一つでも吐いてやりたかった。

『気付いたハナから居なかったんだ。連絡がつくわけがない』と。

 そして申し訳無さそうにする看護師の様子の一つでも見たかった。
だがそれは間違っている。
看護師は別に無神経だったわけじゃない。
偽物の保険証に記載された架空の両親の話をしているのだ。
彼女らを捨てた両親の話をしているわけではない。
勝手に盛り上がって勝手に怒っているだけなのだ。

 ペニサスに何度も言われたことだった。
憎むべき相手を間違えるなと。
悪意を小出しに撒き散らしたところで自らの品位が落ちるだけだと。
いつしか憎しみは孔だらけになり、腐り、癒着し、方向を失ってしまう。

 憎む対象は一つ。
鋭く、力強く、それだけを見つめていなければならない。
だからこその点。
そのために与えられたこの力。
唯一点を以って仇を為す。

その教えを鎖に、ヒートの肉体はこの世界に繋がれていた。

24 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/09/12(日) 21:59:44.07 ID:TzBnG8IpP
ノパ听)「大丈夫。まだキレない。まだ我慢できる。俺たちの苦しみはこんなもんじゃなかった。
     あの火に焼かれるのに比べれば、涼しいくらいだ」

 脳裏に焼きついた赤く焼ける視界。
思い出すたびに喉を焼く熱風と鼻腔を突く焦げ臭さが蘇る。
そして一連のフラッシュバックの締めくくりには、
いつもトライバルタトゥーをいれたそいつが居た。

 仇はそいつに間違いないのだ。
あの時焼かれた以上の熱さで仇を焼き殺す。
それだけをただヒートは考えていた。





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