二話 −潭潭−
- 1 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:03:02.54 ID:E+6HYbv80
- 前スレ
URL http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1282323469/
dat http://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/146033
−前回のあらすじ−
内藤は死にました。
でも死人(しびと)というものになって仲間に出会いました。
モララーさんはいい人だなあと思ったら敵でした。
以上。
- 2 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:05:53.58 ID:E+6HYbv80
- 二話 −潭潭−
( ・∀・)「それで、君たちまた遊ぶだけ遊んで帰ってきたの?」
('、`*川「……すみません」
蛍光灯の明かりの元、コンクリートの壁に囲まれた部屋で、
彼らは先の襲撃事件について問責(もんせき)を受けていた。
窓は覗けども澱んだ藍色に阻まれて外が窺えない。
時刻も昼を過ぎた頃だというのに、陽の光一筋さえも差し込まぬのだ。
それは決して窓が特殊なわけではない。
窓の外が、決して地図に載っているような場所ではないのだ。
言うなればここはモララーを中心とする死人の町。
この建物から半径約二キロメートル程度の範囲すべてが知られずの土地。
陽の目を見ることの無い、地下に眠る文字通り死人の町。
とは言え、そこにいる人数といえば微々たるものだ。
なにせこの土地自体が既存のものを借りただけなのだ。
しかし土地の意思は確実にモララーに受け継がれている。
少なくともモララー自身はそう考えていたし、それを裏付けるものもある。
- 3 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:08:43.53 ID:E+6HYbv80
- ( ・∀・)「ふう……まあ君たちは余興みたいなものだし、期待はしてないよ」
ただ、今はまだ時期として未熟であるのだ。
彼はそれを承知で、彼女らになんら罰を加えることも無いのだ。
从 ゚∀从「俺はヒートが居なきゃちゃんと言われたとおりに出来たし」
ノパ听)「役立たずはよくそういう言い訳するよな」
从 ゚∀从「……なんだよ」
ノパ听)「なんだよ」
('、`*川「いい加減にしなさい」
二人もさすがに先の失敗を負い目に感じているのか、叱責されると素直に閉口した。
(,,゚Д゚)「モララー、暇」
そこへ断りも無しに一人の小柄な少年がやってきた。
ベージュのウインドブレーカーに身を包み、
両手をそのポケットに入れながらぶっきらぼうにモララーに話しかけた。
( ・∀・)「今はまだ準備期間だよ、ギコ。もう少し、ね」
(,,゚Д゚)「フン、早くジョルジュの奴ぶっ殺してえなぁ」
ギコと呼ばれた少年は舌打ちをするとその場で地面を蹴った。
一際大袈裟にガムを吐き棄てると、ボサボサの頭を掻き毟った。
- 4 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:11:35.76 ID:E+6HYbv80
- ( ・∀・)「元メンバーに酷い言い草だね。
君はあんなにジョルジュにべったりだったのに」
(,,゚Д゚)「……。なんかやることねーの?」
( ・∀・)「そうだなー。じゃあ例の女性、偵察してきてよ」
(,,゚Д゚)「偵察?」
( ・∀・)「そう、偵察。くれぐれも荒々しいことはしないように。
もし不安なら、つー、あるいはシューでも連れて行っていいよ」
(,,゚Д゚)「あんなの連れてけるかよ。あー、暇くせーな」
つまらなそうにそう吐き捨てると、ギコはペニサスの方を睨みつけた。
(,,゚Д゚)「変なこと考えて手抜いてんじゃねーぞ」
自分よりもいくつも年上のペニサスにそう言い放つと、
フードを被り、背を向けてその場を後にした。
ノパ听)「くそっ、あいつペニサスさんになんて口利いてやがんだ」
いつもなら口よりも先に手が出るヒートだったが、今は陰口を叩くことしかできなかった。
そこには自分自身の失敗の負い目もあったが、
なによりギコとヒートではその能力差が著しいというのが大きかった。
- 5 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:15:02.70 ID:E+6HYbv80
- ('、`*川「モララー、本当にジョルジュを殺すの?」
( ・∀・)「なんで?」
そう聞き返すモララーは大きく目を開き、弓なりに口元を曲げた。
形容するならば笑顔だが、それは決して愉快な時に見せる表情ではなかった。
('、`*川「あなた、ジョルジュを気に入ってるんでしょ?」
その問に表情を崩すことなく、モララーはペニサスに歩み寄る。
そしてネクタイの結び目を弄(いじ)りながら、空いた手をペニサスの肩に乗せ、
顔をぐっと近づけた。
( ・∀・)「そうさ。僕はジョルジュが大好きだ。
あれほどの男はそうそう居ない。
彼の話をするだけで機嫌が良くなるくらいだ」
('、`*川「私も同感ね」
( ・∀・)「でもさ、だから何?」
さらにモララーの表情が固くなった。
笑顔はさらに作り物のようになり、目はとうに笑っていない。
- 7 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:18:26.82 ID:E+6HYbv80
- ( ・∀・)「関係ないよね? どれだけの好漢(こうかん)でも罪は消えない。
好漢は好漢であり、罪は罪だ。
僕は相変わらず彼が好きだし、彼の犯した罪が憎い」
('、`*川「彼が好きなら、彼を失いたくないとは思わないの?」
( ・∀・)「思うよ」
ゆっくりと手を離し、モララーはペニサスに背を向けた。
( ・∀・)「彼が死んだら僕は泣くだろうね。
一日、いや、三日は立ち直れないかな」
('、`*川「それでも彼を許せないのね」
( ・∀・)「僕が許せないのは罪さ。
君たちはよく感情だのなんだのと色々なものを混ぜては難しく考え、
挙句の果てには訳の分からない決断をする。
これは僕のモラル。彼を好きな僕と、罪を憎むモラルの話さ」
('、`*川「もし私が彼と同じ道を選んだなら?」
- 9 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:21:30.91 ID:E+6HYbv80
- 一瞬の間。
発言の重みが、この場を押しつぶそうとする。
目を見開きペニサスを見るハインとヒート。
それを黙殺しモララーの背中をジッと見つめるペニサス。
やがてモララーは、ゆっくりと振り返り言った。
( ・∀・)「ギコが、すごく怒るだろうね」
笑顔。
先ほどよりは人間味のある、しかし紛う事なき作り笑顔。
そしてモララーはそれ以上言葉を重ねることなく、
部屋を後にした。
その様子をジッと見ていたハインとヒートが、
モララーが居なくなると同時に同じ質問を投げかけた。
从 ゚∀从「ペニサスさん、辞めるんッスか?」
ノパ听)「俺たちのこと、見捨てるんですか?」
それに対しペニサスは無言。
考え込んだまま、何も無い空間を見つめている。
- 10 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:23:44.62 ID:E+6HYbv80
- 从;゚∀从「お、俺、ペニサスさんがイヤだってんならもうコイツとケンカしません」
ノハ;゚听)「俺だって! 言われたことはちゃんとやります!」
从;゚∀从「次はちゃんとあいつら叩きのめしますから!」
ノハ;゚听)「俺も死ぬ気でやります!」
二人の必死の懇願にようやくペニサスが頬の筋肉を緩めた。
('、`*川「そういうことじゃないの。でも、ありがとう」
言ってペニサスは二人をまとめて軽く抱きしめた。
そうして照れ笑いを浮かべる二人を見て微笑むと、再び表情を引き締めた。
('、`*川「私は私の為に生きるの。
別に誰かを想って感傷的になってるわけじゃないから」
- 11 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:26:44.89 ID:E+6HYbv80
- 从 ゚∀从「俺はペニサスさんの為に生きます!」
ノパ听)「俺も!」
从 ゚∀从「パクんなよ」
ノパ听)「は? 先に考えてたの俺だし」
从 ゚∀从「おーおー、おチビちゃんは言うこともガキだねえ」
ノパ听)「うるせーよハゲ」
从 ゚∀从「は? どこをどー見たらハゲなんだ? ん、コラ」
ノパ听)「じゃあ今すぐハゲにしてやんよコラ」
ヒートの髪の毛が徐々に逆立ち、辺りに小さな破裂音が聞こえ始める。
それに応えるように眉間にシワを寄せて笑うハイン。
その体を蔓(つる)の様に青白い光の線が巻きついていく。
('、`;*川「ふう……もう止めるのも飽きたわ」
そう言うとペニサスは睨みあう二人の頭を掴み、激突させた。
曝ク;>∀从
「「痛っ!」」
繁ハ;><)
('、`*川「あんたらホントいい加減にしてね」
- 12 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:29:28.26 ID:E+6HYbv80
- 从;゚∀从「……ガツンと来ました。ガツンと」
ノハ;凵G)「痛い……血出たかも。骨も折れたかも」
両手で額を押さえてしゃがみ込み、
ヒートは恨めしげに潤んだ目でハインを睨みつける。
从 ゚∀从「お前は大袈裟なんだよ」
その視線に応えるようにハインもしゃがみ額を押さえているヒートの両手をどかすと、
その部位をじっと見つめ、手の先で軽く叩いた。
从 ゚∀从「はい、余裕。血なんて出てねーよ」
ノハ;凵G)「本当かー? くそー、お前石頭なんだよ」
既に二人からは戦う意思が消え失せていた。
それを確認するとペニサスは一人、部屋の外へ歩き出した。
从 ゚∀从「ペニサスさん。どっか行くんスか? なら俺も付いていきますよ」
('、`*川「ごめんね。ちょっと一人で行きたいの。今夜、現地で会いましょう」
ジョルジュたちとの再戦は今夜行う取り決めだった。
それを反故にして攻めに行こうと言う意見がハインやヒートから上がったが、
ペニサスはそれを断固として拒否した。
- 14 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:32:03.89 ID:E+6HYbv80
- 从 ゚∀从「……分かりました」
('、`*川「それから」
思い出したようにペニサスが何事かを付け加えようとした。
が、急に何かが喉に詰まったように言葉は続かず、無言のままペニサスは目を一度伏せ、
('、`*川「今夜はしっかり戦うこと」
そう言って部屋を後にした。
ノパ听)「おー……やっと痛くなくなってきた。
ん? 痛くなくなくなって? 痛くなくなくなく……なく?」
从 ゚∀从「ヒート。今日の戦いはちょっとマジで行こうぜ」
声のトーンを落としたハインが、ヒートの方を見ないでそう呟いた。
ノパ听)「俺はいつもマジだけどな」
从 ゚∀从「いや、マジのマジで」
ノパ听)「ガチか」
从 ゚∀从「ああ」
ノパ听)「そっか。ガチか」
二人はそれきりしばらく黙り込むと、
溜息を吐いたりその場で軽く跳ねたりして、来るべき今夜の戦いに思いを馳せた。
- 17 名前: ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 01:35:09.70 ID:E+6HYbv80
- 彼女らはモララーグループでは一番の新人で対死人の実戦経験は過去三回しか無く、
また、そのいずれもが途中で横槍が入り中途終了している。
そしてまた、このグループで人を殺したことが無いのも、彼女ら二人だけであった。
※
('、`*川「もしもし? ジョルジュ?」
('、`*川「こんな時までふざけないで」
('、`*川「うん。うん。そうね」
('、`*川「あのね、少し話があるの。そう、二人で」
('、`*川「……ありがとう。じゃあ今からあのお店で。うん」
続