六回目
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:33:07.15 ID:APMbqGoj0
- ・・・昔、昔のお話。
遥か昔の勢力図を説明すると、今現在の魔界と人間界の間を挟む境海域"サイアク"を大きく大きく飛び超えて、
魔界の領域は圧倒的な広さを誇り、人間界というのは、ごく一部の小さな大陸のみとなっていました。
人間達は、いつ魔族に滅ぼされてもおかしく無いといった程に、内戦や敗戦でボロボロになり、
あとは魔王の指揮棒が振り下ろされるのを待っている、という程に消耗していました。
だがしかし、その後人間はそんな勢力図を大きく大きく盛り返し、"魔界"の領域を削って、削って、削り続けて。
一時期は今の境海域、サイアクを大きく超えて、魔界の大陸の大半まで、支配し返しました。
―――人間が勢力を盛り返したのは、1人の"勇者"の存在のおかげでした。
人が、永遠に死なないと言われる伝説の聖獣と交わり、"聖人"が生まれ、
その聖人が人を纏めて"勇者"となり、魔王を討ったのです。
「魔王墜つ」―その事実が魔界に与えた衝撃は、それはそれは大きく。
魔物達は、支配者が居なくなり総崩れとなりました。
魔物は、かつての人間界と同じ様に大きく大きく領土を取られましたが、
勇者が死んだ後、勇者の子孫達を魔界の全勢力を掛けて滅ぼすと、勢力を大きく盛り返し、
結局は、人間界と魔界の勢力はサイアクを挟んで均等を保たれるようになりました。
魔物達は、一生恐れ続ける事でしょう。
今もなお、史上最強と言われる魔王を討った、聖人―"勇者"の存在の誕生を・・・
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:35:10.22 ID:APMbqGoj0
- 【 ( ー ) 「・・こうして勇者は、ついに魔族を人間界の外へ押し出す事ができましたとさ。
めでたし、めでたし。」
( ^ω^)「とても面白かったお!勇者って凄いお!魔王を倒して世界を救うなんて!
かっこいいお!」
( ー ) 「フフ、そう思うでしょう?
けどね?ブーン。勇者って、そんなにいい人では無かったのよ。」
( ^ω^)「・・・?
どうしてだお?」
( − ) 「・・・勇者は、魔王と魔族を沢山殺したわ。
だけど、勇者はそれ以外にも、人間とか動物とかも沢山殺したのよ。」
(;^ω^)「・・・それは酷いお・・・」
( ー ) 「第一、魔族だって何もしなければ殺す必要も無いのにね。
勇者はね、見境が無かったのよ。
・・・いい?ブーン」
――貴方だけは、そんな人には絶対、なっちゃ駄目よ。
貴方のその強い意思があれば、絶対、勇者みたいにはならないのだから・・・】
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:37:13.39 ID:APMbqGoj0
- パチパチ・・・パチパチ・・・
夜。
| l| -。-ノlzzz...
ばつが寝静まった、夜。
この時間は、デレとドクオとブーンの作戦会議兼コミュ時間となった。
( -ω-)「んん・・・師匠・・・zzz...」
・・・記念すべき初回。
ブーンは、先の戦いからずっと眠っている為、不参加だ。
('A`)「・・・寝言言ってるな、こいつ。」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンさん・・・お師匠さんがいたんですか?」
('A`)「・・・知らねぇな。
第一、こいつの事は謎だらけだ。
人懐っこい癖に、過去というものを話したがらねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんですか・・・
けど、こんなに強いブーンさんのお師匠さん・・・
会って見たいですね。どんな人か。」
('A`)「そうだな。
どんな奴なんだろうなぁ・・・こいつの、師匠。」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:39:01.90 ID:APMbqGoj0
- ζ(゚ー゚*ζ「・・前から聞いてみたかったんですけど・・・
ドクオさんとブーンさんって、どうやって知り合ったんですか?
仲良くなったきっかけは?」
('A`)「・・・そいつを話すと、ちと長くなるな・・・
良ければ話すけど、いいか?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい!是非聞きたいです!」
('A`)「・・・そうだな。
あれは、何年前の話だったか・・・
俺は昔、ちっとは名の知れた悪党だったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「・・・へぇ。
ドクオさんが、悪党・・・
なんか、想像しずらいですね」
('A`)「あの時の俺は、半場ヤケクソだったからな・・・
そう・・・」
あのときの俺は、諸事情あって乱れに乱れて、
殺人こそしなかったが、悪行に手を染めてた頃だった・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:41:01.48 ID:APMbqGoj0
- (一般人A)「出たぞー!
"強盗オクド"だー!!」
((WWW))「ヒャーッハッハッハッハハ!!
金だ!!金を出せよオラァ!!」
(一般人B)「キャアアアアアア!!!」
((WWW))「手前らの金ェ!全てこの強盗!オクド様が頂きだぁ!!
ハハハハハハ!!残念だったなぁ!!!」
(警備隊)「糞ッ!奴を追えーッ!!」
((WWW))「手前らみたいなのうすのろに捕まるかよ!バーカ!!
ヒャハ!ヒャハハハハハハハハハ!!!」
・・・正直、どうかしていたと思う。
この時の俺は、余り余って滲み出るこの憎しみを、この世に撒き散らしたかった。
やり方なんてなんでもいい。対象は俺でも誰でもいい。誰かが、誰かを憎んでほしかったんだ。
憎しみの悔しさ。やりきれなさ。虚しさを。
他人に共有してもらいたかったんだ。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:43:06.22 ID:APMbqGoj0
- 「・・・おい、また出たらしいぞ」
「何やってるんだよ!国営の護衛軍どもは!!」
「クソッ!俺の貯金、本当に返ってくるんだろーな・・・」
俺は「強盗オクド」として有名になった。
この時点で既に、俺の腕前は中級冒険者級の腕前で、
余程の腕利きが来ない限りは、追手なんて簡単に振り払っていた。
・・・そう、余程の腕利きが来るまでは、な。
(#'A`)「チッ・・・つまんねぇ・・・
強盗しても、大して街は騒がねぇじゃねーか・・・」
この頃の俺は、常に金が無かった。
強盗も金が目的な訳じゃない。
適当にそこいらにばら撒いたりもしたし、近くにいた乞食に全てやった事もある。
ただ酒場で飲んだ暮れるか、強盗オクドで悪行をするか。
どちらかひとつだけの、荒んだ生活だった。
(#'A`)「おい酒はまだか!糞ったれ!!
こちとら金払ってんだよ!!さっさと持って来いやコラァ!!!」
―あいつと出会ったのは、いつもの如く酒屋で酒に溺れていた時だ。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:45:07.15 ID:APMbqGoj0
- ( ^ω^)「・・・ほら、酒だお」
あいつは、そう言いながら何気ない顔でとぼとぼと俺の隣に来て、
自分が買った酒を、トクトクと俺のグラスに注ぎ込んだんだ。
(#'A`)「何だテメェ!!俺に文句でもあんのか!?あぁ!!
俺はオメェに言ってんじゃねーんだよ!まずい酒を!俺のグラスに淹れんじゃねぇ!!」
パリィン!!
あいつの顔面で、俺のグラスが粉々に砕ける。
( ^ω^)「・・・」
俺は、あいつが無傷だった事よりも、あいつのその、悲しい表情の方が強く印象に残った。
('A`)「・・・んだよテメェ・・・」
( ^ω^)「・・・自分が赦せないのかお?あんた」
('A`)「・・・!」
俺は一瞬、言葉を失った。
俺がずっと見つける事ができなかった憎しみの根本を、こいつはいの一番に当てやがったからだ。
(#'A`)「ハッ!なんでそう思う!?
テメェの知った事じゃねーだろうが!!ダボが!!」
・・・が、この頃の荒んだ俺は天邪鬼で。
その事実を、すぐに認める事ができなかった。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:47:12.31 ID:APMbqGoj0
- ( ^ω^)「・・あんた、悲しい眼をしてるお
耐え切れないくらい、悲しい目にあったって眼をしてるお
・・・何があったんだお?」
(#'A`)「て め え よ ぉ ・・・」
グシャ
俺はぶっきらぼうに奴の胸倉を掴む。
(#'A`)「人に容易く!!干渉すんじゃねーよ!!!」
( ^ω^)「こういう事は、人に言ったほうが、すっきりするお?」
(#'A`)「俺の!!勝手だろうが!!!」
バッ!!
俺は殴るつもりでいたが、実際に行動にとったのは掴んだ胸倉を突き放す事だった。
本能的に、殴る事を躊躇したんだ。だが、当時の俺はそんなん知った事じゃねぇ。
(#'A`)「チッ・・・気分悪ィ・・・
テメェのせいで気分最悪だ!!
二度と俺の前に姿現すんじゃねーぞ!!」
と吐き捨てて、俺は奴から逃げるように酒場を後にした。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:49:25.93 ID:APMbqGoj0
- (#'A`)「あぁ・・・?"自分が赦せない"だとぉ・・・!」
【――ウフフ ねぇ、ドクオ?
"今度は早く"、戻ってきてね!】
(#'A`)「・・チッ!!なんだよそりゃぁ!!どういう意味だよチクショウが!!!
ムカつく野郎だぜっ!!たくよぉ!!!」
ダァン!
近くにあったゴミ箱が粉々に砕けて、中にあったゴミをそこら中に散らばせながら遠くへと飛んでいく。
なんでぇ俺は、あの時殺しておかなかったんだ!アイツをよぉ!!
ムカつくぜ!!あぁムカつく!!!
(#'A`)「チッ・・・気分悪ィ・・・
どうしてやろうか・・・」
そんなの決まってる。
(#'A`)つ(WWW)「・・・」
(つ(WWW)とミ スチャ
・・・ムカついたら、吐き散らしゃいいんだ。
思う存分よぉ。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:51:04.70 ID:APMbqGoj0
- ((WWW))「退けよオラァ!!!」
パシィン!!!
キャアアアア
俺はそこいらにいた女性の頬を強く叩き飛ばした。悲鳴が上がる。
いつもの背徳感からくる、強い快感が俺を襲う。
・・・だが違う。今日の俺は、快感と共にふつふつと、「違う感情」が俺の心の底から湧き出てくる。
((WWW))「ククク・・・そうだ!もっと悲鳴を上げろォ!!
"俺を楽しませろォ"!!ククク・・・クハハハハハハハ!!」
元々やってはいけないという背徳感が、徐々に強い快感へと変わっていくのは薄々感じてはいたが、
今日の俺は、それだけじゃなかった。
"もっとやれ!" "もっと快感を!!" "もっと!!!"
・・・つまり今日の俺は、快感が強い欲求へと変わっていたのだ。
俺は目の前で倒れる涙目の女を、どういう風に痛ぶってやろうか考えていた。
―そう。その時の俺は、まさに理性が壊れる一歩手前だったんだ。
「やめるお!!」
その時、俺の後から、やけに聞き覚えのある声が聞こえた。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:54:00.45 ID:APMbqGoj0
- ((WWW))「あぁ!?誰だテメェは!!!」
俺は寸でのまったにすっかり気分が害され、
今日一番の怒鳴り声を発しながら振り返った。
( ( U ))「な、名前・・・?
え、えと!凄いブーン!いや、ブーンスーパー!!
・・あ!やっぱスーパーブーンにするお!!!」
((WWW))「あぁ!?スーパーブーン!?」
正体を隠す為にお面を被り、全身を鎧で囲む。
右腰には剣を、左腰には盾を身に纏って、
全身を黒に染め、完全な武装をしている、この俺に対して。
そこらで売ってる様なお面。
ただの布の服に半ズボン。おまけに何の武装もしていない。
Σ(レ( U ))ノ ビシィ!「スーパーブーン!参上!!」
奴のその格好は、俺の神経を完全に逆撫でしていた。
てかこいつ、あの時の酒場の奴だろ絶対!!
何様だこいつ!?毎度毎度邪魔ばっかしやがって!!!
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:56:14.57 ID:APMbqGoj0
- ((WWW))「なんだオメェ!!俺様は"強盗オクド"様だ!!
舐めてんのかテメェ!!殺される前に帰れ!!」
( ( U ))「舐めてはいないお。
けど強盗オクドとか言われても知った事じゃないお。
駄目な事が誰がやっても駄目なんだお。」
((WWW))「テ メ ェ ・・・
そんなに死にてぇのか・・・!」
チャ。
俺は、最近すっかり振るっていない、剣を久しぶりに抜いた。
かつて冒険で使用した様な、障害物を廃する為に使うんじゃない。
( ( U ))
人を、廃する為に。
((WWW))「・・・最後の警告だ。
退いてろ。お前、殺すぞ。」
俺は、もはや紙より脆い理性をピンと引っ張り、奴に最後の警告をした。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/15(木) 23:58:09.64 ID:APMbqGoj0
- ( ( U ))「嫌だお。」
・・・だが奴は、ピンと張った紙のような理性に鉛筆を突っ込む様に、俺の忠告を断ったのだ。
((WWW))「じゃあ死ね。」
俺の理性が完全に壊れる。
これまでの人生で、最速の動作でブーンに詰め寄り―
―――俺は、人生で初めて明確な殺意をもって人に斬りかかった。
パチパチ・・・
パチパチ・・・
( -ω-)
ζ(゚ー゚*ζ「・・・それで、どうなったんですか?」
('A`)「どうもこうもねぇよ。
相手はあのブーンだぜ?」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:00:01.08 ID:b3dBs4/00
- ・・・この後の10分は、実に異様な光景だった。
それなりに有名で、それなりに実力もある筈の強盗が、本気を出して丸裸同然の奴に斬りかかってるのに。
かすらない。当たらない。剣を振り下ろす時には、既にその場にいない。
素人目にも、実力差は雲泥な事は一目瞭然だった。
((WWW))「ハァ・・・ッ
ハァ・・・」
・・・糞ッ!糞糞ッ!!糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞ッ!!!
何故だッ!!何故当たらないッッ!!こんな!!こんなふざけた奴に!!
まさか!鎧の重さの差か!?
違う!!俺は!既にそんなレベルは!!通り越えた筈だッッッ!!!
( ( U ))「・・・まだやるかお?」
奴は、息一つ乱さず、涼しい顔で俺にそう尋ねてくる。
((WWW))「ダマレ!ダマレダマレダマレダマレダマレ!!
俺に斬り殺される分際が!俺に指図するなッ!!」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:02:02.45 ID:b3dBs4/00
- ((WWW))「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
俺は雄叫びを挙げ、全力であいつに斬りかかった。
一回。二回。三回。四回。五回。六回。七回。八回。九回。十回。
その間・・・ブーンに斬りかかってる時の奴の台詞を、俺は今でも鮮明に覚えている。
( ( U ))「悲しみを紛らわす為に剣を振っても、そんなの当たる筈も無いお
何故なら、あんたの剣は、そんな理由で振られてた訳じゃないから。
剣筋で解かるお。「守る為に振られた剣」が、相手を斬る事を拒否してるんだお」
【|゚ノ ^∀^)「ドクオの剣は・・・なんていうか、"優しい"。
そんな印象ね。」】
Σ(゚A゚) ハッ
レモナ―――
その言葉を聞いて、俺の剣の動きが一瞬止まる。
ドッ!
((WWW))「ウッ――
それと同時に、俺の意識も一緒に途切れた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:04:00.57 ID:b3dBs4/00
- ((WWW))「んん・・・」
( ^ω^)「お。起きたかお。」
・・・目を覚ますと。
そこにはやつがいた。その場は奴の家じゃなく、どうやら宿屋の一室の様だ。
((WWW))「・・・」
( ^ω^)「・・・暴れないのかお?」
((WWW))「俺は、全てを壊す破壊神じゃねーんだよ・・・」
( ^ω^)「・・・そうかお。」
・・・・・・・・・・・・コトリ。
ブーンは、俺の目の前に、暖かいお茶の入ったコップを置いた、
((WWW))「・・・俺を役所に連れてかねぇのか?
死んでてもで500万イッタ。生きてりゃ1000万イッタらしいぜ?
スーパーブーンさんよ」
俺は、ヤケクソ気味に奴に尋ねた。
( ^ω^)「ブーンでいいお。
それに、僕はお金の為に君を倒した訳じゃないお」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:06:00.75 ID:exKm4PxP0
- ((WWW))「・・・じゃあ何の為だよ」
ガシッ
俺は、ブーンの胸倉を掴む。
( ^ω^)「・・!」
(#(WWW))「何の為に俺に構った!!
何が目的で俺の邪魔したんだよ!!
俺がてめぇに!一体何をしたんだ!!あぁ!!?」
( ^ω^)「何度もいってるお。
あんたがいけない事をしようとしてたから。
ブーンは、ただそれを止めただけだお。」
((WWW))「・・・はぁ?
ただ、それだけ?」
( ^ω^)「だお。」
((WWW))「・・・・・・ッ」
( ^ω^)「?」
((WWW))「・・・フフッ・・・ククククク・・
アーッハハハハハハハハ!ハハハハハハハ!!」
( ^ω^)「・・・? ??
何がおかしいのかお?」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:08:04.44 ID:b3dBs4/00
- ('A`)ノシ ミ(WWW)
('A`)「あまりにも馬鹿らしすぎて、怒る気力もなくなったわ・・・」
( ^ω^)「・・・まぁ、いいお。
あんた、名前は?どうして、こんな事をしたのかお?」
ブーンがそう尋ねると、
俺は、ふぅーと大きく息を吐き出した。
・・・こいつには勝てねぇ。・・・そう、俺は観念したんだ。
('A`)「・・・俺の名はドクオ。ちょっと前まで、しがない冒険屋をやってた。
実力はさっきやった通り、あんたの足元にも及ばなかったが・・・
これでも、一応名前が挙がる程度には有名な冒険屋だったんだ。」
( ^ω^)「・・・」
('A`)「・・・ある冒険の時の話だ。
超簡単な仕事で、報酬もそれに応じた糞みてーな額のダンジョン。
俺は、完全に暇つぶしでそいつに参加したんだ。」
( ^ω^)「・・・」
('A`)「・・・その時、レモナに出会ったんだ。」
【|゚ノ;^∀^)「ワ、ワワワワワ!こ、この!やられちゃえ!この蛇!!」】
('∀`)「アイツのドジっぷりといったら、そりゃぁもう見てられなくてな。
"実善魔職"(福祉=ほぼ補助・回復専門の職の事)の癖に、ひとりでダンジョンに潜ってるし、
一般人でも、鍛えた奴なら棍棒一つで倒せるような蛇の魔物に手こずって殺られかけてるしでよ・・・」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:10:02.13 ID:exKm4PxP0
- 【(= 蛇 )「キシャアアアア!!」
|゚ノ;>△<)「キャアアアア!」
ザシュッ!!
|゚ノ;>〜<)「・・・・・・・」
|゚ノ;^∀^)「・・・え?」
('A`)「・・・こんな雑魚、逃げちまえばいいんだ。
一般人でも逃げれるんだからよ」
|゚ノ;^∀^)「あ、そっか・・・」
('A`)「ったく・・・」
|゚ノ^∀^)「あ、まって!」
('A`)「・・・あ?」
|゚ノ^∀^)「・・・名前。
名前を、教えて頂けませんか?」
('A`)「・・・ドクオだけど。」
|゚ノ*^∀^)「・・ドクオさん!
助けてくれて、どうもありがとうございました!」
(*゚-゚)「・・・!」 】
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:12:00.83 ID:exKm4PxP0
- (*'A`)「・・・一目惚れだった。」
( ^ω^)「・・・」
('A`)「俺は、その後半ば強引に一緒に冒険して、
冒険が終わった後は、実善魔職の仕事の探し方、獲り方とか説明してさ、
仕事以外でも、観光名所とか、穴場スポットとかめいっぱい巡ってよ・・・
気に入られようと必死で頑張ってたら、気がつけば恋人同士になっていた。」
( ^ω^)「・・・」
('∀`)「幸せな毎日だったよ。
一緒にダンジョン潜って、一緒に戦って。
笑い。苦しみ。喜び。悲しみ。全てを分かち合ったよ。」
('A`)「ある時だ。
俺はレモナに、世界で一番綺麗な宝石とされる、「奇跡の石」―ミラクル・カラーストーンを見せてやりたくて、
奇跡の石があるとされる、トップクラスの難易度のダンジョン"地獄発掘場"へ挑む事にした。」
( ^ω^)「冒険者の墓場と呼ばれている、あそこかお・・・」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:14:07.33 ID:exKm4PxP0
- 【|゚ノ^∀^)「え・・・ダンジョンへ潜るの?」
('A`)「あぁ。なぁに、ちょいと時間は掛かるかも知れないけど、
ちゃんと生きて帰ってくるさ。」
|゚ノ^∀^)「まぁ、ドクオなら大丈夫だと思うけど・・・
最近、強盗団が物騒だし・・・」
('A`)「大丈夫だよ。あんな格下共が、俺らを襲う事はねぇよ。」
|゚ノ^∀^)「・・・そうかしら・・・」
('∀`)「・・・そこにはな、今までには無いくらい、とっておきの宝があるんだ。
帰ってきたら、見せてやるよ!」
|゚ノ^∀^)「・・・今度のは、凄いの?」
('∀`)「あぁ。とっておきだ。」
|゚ノ*^∀^)「・・・ウフフ ねぇ、ドクオ?
今度は早く、戻ってきてね!」
('∀`)「・・あぁ。約束だ。」】
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:16:02.04 ID:exKm4PxP0
- ('A`)「・・・流石に、「世界に名を馳せた冒険者さえ、そこでは命を落とす」とまで言われる難所だ。
結局結論から言うと、俺の腕では最下層まで行く事はできなかった。
だが俺は諦めなかった。どうしても、どうしても奇跡の石を手に入れたかったんだ。
・・・俺は決めていたんだ。奇跡の石を、アイツへの婚約指輪にしようって」
( ^ω^)「・・・」
('A`)「俺は足掻いて、足掻いて、足掻き通した。
最下層手前まで逃げ廻り、体力も限界。魔物も血の匂いに釣られて寄って来ている。
もう駄目だ!ここが限界だ・・・と思った時。
"こいつ"を見つけたんだ。」
ス・・・
ドクオは、袋の中から何か小さな物を取り出した。
( ^ω^)「おぉ・・・!
七色に輝いてるお。これは・・・」
('A`)「・・・ミラクル・カラーストーンの欠片から作った、指輪だよ。
俺は最下層寸前で、死に掛けの時にこれの欠片をふたつ拾った。
大喜びだったよ。その時の疲労なんて吹き飛んで、どうやって地上に帰ったのかも覚えてない位、
俺は大はしゃぎでそこから脱出した。」
( ^ω^)「・・・」
('A`)「俺は加工屋に寄る事も忘れて家に飛んで帰った。
アイツの喜ぶ顔が見たくて。アイツに、こいつでプロポーズするんだって。
あの時の俺は完全に浮かれてたんだ。」
【('∀`)「ただいまー!!」】
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:19:36.45 ID:exKm4PxP0
- ('A`)「ドアを開けた瞬間。俺は、自身の現状のわかってなさを痛感したよ。
俺は、まがりなりとも名を挙げて、有名人だったんだ。
当然、俺の近状も調べられる。俺の友人関係も、アイツの実力も。
俺は「有名になる」という事を、完全に侮っていたんだ。」
【('∀`)「おーいレモナ!
お前に見せたい物があるんだ!」
('∀`)「レ・・・」
|゚ノ■/。. ..。/■■■)
('∀`)・・・・・・・・・
('∀`)・・・・・・・・・
('∀`)・・・・・・・・・
('∀`)
・・ッ
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――――――――――――――――ッ!!!】
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:21:54.44 ID:exKm4PxP0
- ('A`)「・・・後で話を聞けば、俺が第一発見者だったそうだ。
ご丁寧に、強盗団は俺のいないこの一瞬の隙を狙ってレモナを襲い、
その強盗団の決まり事「Z」の文字跡を、わざわざレモナの血で書きやがってよ。
・・・俺から文字通り、全てを奪っていったんだ。」
( ^ω^)「・・・」
('A`)「俺は・・・復讐に駆られたよ。
自分でもよくわからない雄叫びを発しながら剣を手に取り、
涙と、現状の意味のわからなさに顔をぐちゃぐちゃにしながら、
奴らを探しに、外に飛び出したんだ。」
【(#;"皿";)「うわああああああああああ!!!!
―――ッ!!!???」
(#゚"皿"゚)「・・・・・・」】
('A`)「外で、俺が見たもの。
・・・それは。その強盗団の死体が、一体残らず轟々と燃やされている場面だ。」
( ^ω^)「・・・」
('A`)「俺はこの怒りを、どこにぶつければいいかわからなくなったよ。
俺の全てを奪った仇が、目の前で燃やされてるんじゃあな。
俺は、もう生きる意味がわからなくなった。死のうと思った。」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:23:27.31 ID:exKm4PxP0
- (;A;)「・・・だがな、俺は・・・。俺は、卑怯な男だったんだ。
・・・死ねなかったんだよ・・!生きる意味も無いのに!
こんな意味のない指輪も!!己の命も!!!
俺は捨てる事ができなかったんだよ!!!!」
( ^ω^)「・・・」
(;A;)「俺は!そんな自分に絶望し、どうすれば死ねるかとか考え始めた!!
俺の最たる屑な部分・・・!それは!!「悪行をすれば、いつか誰かに殺される」なんて考えついた事だ!!!
俺はあらゆる盗みを働き!そして、死にたい癖に逃げ回った!!」
(;∀;)「ハッ!!やってる事は!俺から全てを奪った奴らとまったく一緒さ!!
俺は意味がわからない!!!意味がわからないうちにぃ!!暴れて!!!暴れてぇ!!!暴れてまわってえぇ!!!
・・・はぁ・・・はぁ・・。俺は・・・今に、至ったんだ。」
( ^ω^)「・・・そういう、事だったのかお」
( A )「・・・俺は、最低な男だ。
俺を殺してくれ。ブーン。」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:25:25.97 ID:exKm4PxP0
- ( ^ω^)「・・・よし。わかったお。」
そう言うと、ブーンはこの時初めて、自分の剣を取り出した。
その剣は、柄の部分の模様からして、とても立派な剣である事がわかった。
( ^ω^)「この"竜殺しの剣"で、お前を殺すお。」
( A )「・・・」
はっ。大層な剣だ。
・・・俺の、子供の頃の憧れの剣で死ねるなら、上等だぜ。
ブーンは剣を上に上げて―
ヒュッ
――――下に、振り下ろした。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:27:01.33 ID:exKm4PxP0
- コツン。
( A )「ッ・・・?」
ブーンの剣の横っ腹は、正確にドクオの脳天に命中した。
('A`)「おい・・・?何やってんだ?お前。」
( ^ω^)「今、この瞬間。
この"竜殺しの剣"で、ドクオの言う"屑"な部分を殺したお。」
('A`)「・・・なんだよお前」
(#'A`)「俺をさんざ弄んで、何が楽しいんだ!!」
( ^ω^)「僕は殺しはやらないお。
死ぬなら、勝手に死ねお。僕に押し付けたら駄目だお。」
('A`)「ッ・・・
・・・・・・そうだな。」
( ^ω^)「・・・けどその前に、ちょっと僕に付き合えお。
ドクオ。」
・・・こんな俺に、まだ何か用があるのか、こいつは。
・・・・・・・・・まぁ、いいさ。もうどうせ、あと少ししたら終わる命なんだ。
('A`)「・・・・・・・・・・はっ
勝手にしやがれ。」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:29:01.62 ID:exKm4PxP0
- パチ・・・
パチパチ・・・
ζ(゚ー゚*ζ「・・・それで?」
('A`)「奴は宿屋を出て、街の外へ歩きはじめたよ・・・」
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・
獣道を進むブーンとドクオ。
( ^ω^)「・・・どっくん。」
('A`)「・・・あ?
どっくんって、俺の事か?」
( ^ω^)「そうだお。」
('A`)「・・・ま、どうでもいいや。
何だ?ブーン。」
( ^ω^)「どっくんは、何で婚約指輪に奇跡の石を選んだんだお?」
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:31:48.40 ID:exKm4PxP0
- ('A`)「レモナに昔、聞いた質問だ。
"一番見てみたい!って宝物とかはある?"
・・・その答えがそれだったんだよ。
俺が有名になるまで、腕を磨いた原因でもあるな。」
( ^ω^)「・・・よし、決めたお」
('A`)「あ?何がだよ?」
( ^ω^)「どっくんの遣り残した事。
今から達成させるお」
('A`)「・・・?」
ミ⊂( ^ω^)つ
ヒュッ――
('A`)「お、おい!」
奴は、そういうと俺の全速力とほぼ同じ速度で、"あそこ"へと向かい始めたんだ。
・・・そう。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:33:02.51 ID:exKm4PxP0
- ―"地獄発掘場"。
「世界に名を馳せた冒険者さえ、ここでは命を落とす」とまで言われる、通称"冒険者の墓場"。
炎がいたる所から吹き荒れ、安全な壁、地面等は存在しないといわれている。
その光景は、まるで地獄絵図に描かれている"灼熱地獄"と酷似しているため。
また、過去最上層でレアメタルが取れた為、炎に焼かれながら地面を掘る冒険者が続出したため。
そんな光景を比喩して"地獄発掘場"と名づけられたのだ。
地獄発掘場は、全部で7つの階層に分かれるとされる。
1つ。突炎地獄。
2つ。熱風地獄。
3つ。炎竜地獄。
4つ。マグマ地獄。
5つ。獄炎地獄。
6つ。地獄の宝物庫。
7つ―奇跡の石と地獄の主。
最下層に眠るとされる"奇跡の石"―ミラクル・カラーストーンがある為に、今でもなお、冒険者を地獄へと誘い続けている。
('A`)「・・・懐かしいな。
何もかもが懐かしい・・・」
( ^ω^)「・・・いくお、どっくん。」
('A`)「・・・」
俺とブーンは、地獄発掘場の中へと、足を踏み入れていった・・・
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:35:00.20 ID:exKm4PxP0
- ( ^ω^)「・・・どっくん。
初めに言っておくお」
('A`)「・・・なんだ。」
( ^ω^)「ここでは、僕はアドバイスしかしないお。
どっくんが、最下層まで自力でたどり着いて、奇跡の石を手に入れるんだお
いいおね?」
('A`)「・・・好きにしろよ。
俺はもう、生きるのも死ぬのも、どうでもいいからよ。
お前の言った通りにやってやるよ。」
( ^ω^)「・・・よし。
じゃ、制覇するお。地獄発掘場を。」
・・・こうして、俺とブーンの初めての冒険が始まった。
ブーンは、初めてここに来たと言っていたが、
まるで何回もここを制覇してるんじゃないかと疑う位、明確で正確なアドバイスを何度も飛ばし、
俺は前回の挑戦がまるで嘘の様に、軽々と最深部・・・第7層まで辿りついた。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:36:59.57 ID:exKm4PxP0
- ( ^ω^)「・・・ついに来たお。
第7層。「奇跡の石と、地獄の主」・・・。」
('A`)「・・・」
俺はこの時、実に不思議な気分だった。
俺はただ、ブーンの言われたままに、手足となって動いていた筈だった。
そこに感情はない。思う事もない。
・・・そう思っていた筈なのに。
('A`)
胸の底から湧き上がる、この思いはなんだ。
この爽快感はなんだ。この達成感はなんだ。
|゚ノ^∀^)
どうして俺は、レモナの顔を思い出すんだ。
何度も何度も浮かんでくるんだ。頭から離れないんだ。
(;A;)
・・・眼から溢れ出る、涙の理由はなんなんだ。
( ^ω^)「いくお。奇跡の石を手に入れるお。」
(;A;)「・・・お゙ゔ!」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:39:25.77 ID:exKm4PxP0
- グルルルルル・・・
そこには、このダンジョンの主がいた。
ここまでこれた、冒険者を歓迎する為。
奇跡の石を狙う、不届き者を喰らうため。
その巨大な身体は、石がある小部屋を完全に塞いでいた。
クシュゥゥゥ・・・
地獄の主が、ブーン達を威嚇する。
( ^ω^)「今のどっくんなら、アドバイスが無くても十分だお。
・・・思う存分暴れるお」
グオオオオオオ!!
地獄が、雄叫びを挙げた。
(;A;)「うおおおおおおおおおおおお!!!」
ドクオも負けじと雄叫びを挙げる。
ガキィイ!!
主の爪とドクオの剣が激しく交差する。
―決闘が、始まった。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:41:21.07 ID:exKm4PxP0
- 炎を吐き、空へ舞い上がり、その鋭利な爪で幾度と無くドクオを襲う地獄の主。
だが、ドクオも負けてはいなかった。
炎は避わし、地を這って、鋭利な爪は盾で塞いだ。
(;A;)「あたれえええええ!!!」
キィイン!
防御した筈の、主の自慢の爪がドクオの剣によって真っ二つにされた。
直撃すれば斬れる。
そのドクオの強烈な攻撃力は、主に恐怖心を与える事に成功した。
主は地上を嫌い、空へと逃げ始める。
(;A;)「うおおおおおおおおおおおお!!!」
ドクオは雄叫びを挙げ続けた。
駆けずり回り、岩を投げ、斬りかかった。
だが、斬りかかるにも相手は空だ。直ぐに上へと逃げられて、ドクオの斬りは当たらない。
攻撃は、いつしか炎と岩だけになった。
だが流石の主も、その大きい身体で、飛んでくる岩を全て避わすのは無理がある。
少しづつ。少しづつ主の体力を削っていく。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:46:02.09 ID:exKm4PxP0
- (;A;)「おおおおおおお!!!」
ドクオは戦いの最中。泣き叫び続けた。
久しぶりの冒険。久しぶりの戦い。
道中でもそうだったが、「久しぶり」という感覚が、ドクオに思い出させるのだ。
そう、その身体が。
【|゚ノ^∀^)「危ない!
ドクオ後ろ!」
('A`)「うおぉ!?」】
その動きが。
【|゚ノ^∀^)「待っててね、ドクオ!
その傷、今癒してあげるからね・・・!」】
その考えが。
【|゚ノ*^∀^)「フフフ。可愛い魔物ね。この子。」
('∀`)「あぁ。だけど気は抜くなよ、レモナ。」】
楽しい、楽しい想い出を。
二人で分かち合った、全てを。
「冒険に生きる」事の素晴らしさを。
ドクオに思い出させるのだ。
4時間にも及ぶ激しい戦い。流石の主も、疲れが見え始めた。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:48:05.81 ID:exKm4PxP0
- その瞬間。
(;A;)「うわああああ!!!」
タッ
ドクオは空高く飛び上がった。
ドクオは、主が疲れで段々と飛ぶ高さが低くなってきている、この一瞬の隙を狙ったのだ。
壁を踏み台にし、三角飛びで空高く舞い上がるドクオの躰。
ドクオの躰はぐんぐんぐんぐん飛んでいき、
遂にドクオは、主の首まで辿り着いた。
ギャアアアス!!
迎撃せんと、主の口が大きく開く。
口の奥底から、炎の光が見える。
(;A;)「うおおおおおおおおおおおお!!!」
ザクゥ。
だがドクオの剣は、その大きく口を開いた主の口に釘を刺すように。
脳天から顎へ。ズブリと突き刺さった。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:50:11.46 ID:exKm4PxP0
- その巨体は、全てを終えて動きを止める。
ドクオと共に、空から地へと落ちていく。
魂は、天に昇っていくのだろう。
ドオオオオオオン・・・
(;A;)「・・・」
ドクオは、最早動かない地獄の主を静かに見つめ、
( -A-)
―眼を閉じた。
【|゚ノ^∀^)「・・・まだ子供なのに・・・可哀相な魔物ね。」
('A`)「・・・?どうして可哀相なんだ?レモナ。
こいつは自分の意思で、俺達に襲いかかってきたんだぜ?自業自得だろ。」
|゚ノ^∀^)「たしかにそうだけど・・・
この子は、生きる為に、食料を得る為に襲っていただけ。そこに善悪は無いわ。
・・・実善魔職ではね、こういう魔物にはこう言って悼うのよ。」
|゚ノ -A-)「弱肉強食という――】
( -A-)「弱肉強食という、生ける為の宿命に挑み、挑まれ、闘って。
そして敗れさった哀れな命よ、今は静かに眠り給え。我は天に祈ろう。
もしこの命に来世あるならば、その時は多大なる幸福と祝福がこの命にあらん事を・・・」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:52:22.19 ID:exKm4PxP0
- ( ^ω^)「・・・終わったかお。」
('A`)「・・・あぁ、終わった。」
( ^ω^)「・・・じゃ、いくかお!」
('A`)「・・あぁ、いくか。」
地獄の主が必死に守った小さな部屋に。
それがあった。
・・・その七色に光輝く"宝石"は、
"美"という全てを体現している様だった。
誰もが瞳奪われる。石。
虹よりも綺麗なその色、光から、"ミラクル・カラーストーン"と呼ばれる。
('A`)「・・・」
ドクオは、その鉄球大の大きさの石を、丁寧に手にした。
( ^ω^)「・・・じゃ、いくかお。
遣り残した事がある、目的地まで。」
('A`)「・・・そうだな。」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:54:59.56 ID:exKm4PxP0
- ・・・会って4日かそこらの筈なのに、
俺とブーンの考えは、奇妙な事に完全に一致していた。
俺はブーンを連れて、急いでここに帰って来た。
「ようこそ!アキース・サロンへ!」
('A`)「・・・」
レモナがいた、この土地に。
俺が手にしている、その鉄球程の大きさの石に人々はすぐに気がついた。
「おいあれ!ミラクル・カラーストーンじゃないか!?」
「七色に輝くとされる!あの石か!?」
「冒険者の墓場のあれか!?いやまさか!!」
「けどすっげぇぜ!!あんな石みた事ねぇ!!」
人々がワラワラと寄ってくる。
・・・が。
人々が俺のすぐ傍まで寄ってくる事は無かった。
リハ´∀`ノゝ
彼女が・・レモナの友人が、制してくれたのだ。
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:56:03.15 ID:exKm4PxP0
- リハ´∀`ノゝ「やっと帰ってきたわね・・・ドクオ。
色々問い詰めたい事はあるけど・・・
ま、なんとか間に合ってよかったわ。」
('A`)「・・・モナ子・・・俺は・・・」
リハ´∀`ノゝ「・・・もう、いいのよ。ドクオ。
ほら、レモナが待ってるわよ?
・・・さっさと行ってきなよ」
( ^ω^)「僕も、ここで待ってるお。
・・・行ってくるお。どっくん。」
('A`)「・・・あぁ。わかった」
俺は、ブーンに暫し別れを告げて、
ひとり目的の地へと向かった。
・・・街外れ。
街から少し離れた所にある場所に、ドクオはいた。
そこは、生を終えた者達が眠る所。
『レモナ、ここに眠る。』
・・・レモナの墓標がある所。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 00:58:49.11 ID:exKm4PxP0
- ('A`)「・・・レモナ。
まず、言うよ。」
ごめんな―――――――――
・・・俺は、そこでレモナと、ほぼ一年振りに話をした。
何を話したか・・・あまり覚えてはいない。
レモナに問いかけた気もするし、何かを誓った気もする。
だが。
ただひとつ。確かな事実がある。
それは。
俺はそこで、たしかにレモナに「サヨナラ」をしたんだ。
俺の、長い長い追憶の日々は、ようやくここで終わりを告げたんだ。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 01:00:03.29 ID:exKm4PxP0
- ( A )「・・・ブーン。」
( ^ω^)「・・・お。
帰ってきたかお。どっくん。」
リハ´∀`ノゝ「・・・ドクオ。今日は何の日か・・・当然覚えているわよね?」
( A )「あぁ。レモナの命日、だろ?モナ子。
・・・お供え物、してきたよ。」
リハ´∀`ノゝ「・・・そっか。」
( ^ω^)「・・・どっくん。」
( A )「・・・ん?」
( ^ω^)「"終わった"かお?」
( A )「・・・ふぅー」
('ー`)
―――――――――――あぁ。やっと終わったよ・・・ブーン。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 01:01:29.55 ID:exKm4PxP0
- ('A`)「・・・とまぁ。ちと長くなっちまったが、
これがブーンと俺の出会いだったな」
ζ(゚ー゚*ζ「へぇ。そんな事があったんですか・・・」
ζ(^ー^*ζ「・・・クスッ
ドクオさんは、ブーンさんに助けられた訳なんですね」
('ー`)「あぁ。そうだな。
結局、理性が壊れた瞬間がブーンじゃなきゃ、
俺は人を殺して、もうまともな人間には戻れてなかったかも知れねぇしな」
ζ(゚ー゚*ζ「ホライゾンを始めたきっかけは?」
( ^ω^)「・・・僕が、人助けをしているうちに指名手配されちゃって、
それを見兼ねてどっくんが手助けしてくれたんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンさんっ!?」
・・・いつからか。
ブーンは、この想い出話に参加していたのだ。
('A`)「・・・おはよう、ブーン。
いつから聞いてた?」
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 01:03:00.87 ID:exKm4PxP0
- ( ^ω^)「・・・どっくんと、闘う所辺りからだお」
('A`)「・・・こりゃ、恥かしい暴露話になっちゃったな」
ポリポリと、
ドクオは気恥ずかしそうに頭を掻いた。
ζ(゚ー゚*ζ「指名手配・・・ブーンさん、何やったんですか?」
( ^ω^)「いやちょっと、富豪が強奪した宝を取り返してさ。
その時に、ちょっと」
('A`)「その時は、なんだっけなぁ・・・
"ブーンスペシャル"、なぁんて名乗ってたな・・・」
( ^ω^)「顔も隠してたのに、何故バレたか今でも不思議だお」
ζ(゚ー゚*ζ「・・・」
('A`)「・・・ま、こんな奴なんだよ。こいつは」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 01:05:02.48 ID:exKm4PxP0
- ('A`)「あーあ すっかり遅くなっちまった。
さっさと寝るかぁ。寝よ寝よ。」
ドクオは、どうやらブーンに話を聞かれた事が相当恥かしいらしく。
逃げるように、そうそうと布を被って横になった。
ζ(゚ー゚*ζ「・・・そうですね。」
( ^ω^)「僕は今起きたから、このまま見張りしてるお」
('A`)「お。頼むわブーン。
じゃおやすみ。ふあぁ〜・・・」
布の中から声がする。
ζ(゚ー゚*ζ「・・・おやすみなさい。
ブーンさん。ドクオさん。」
デレも、そういうと布を被って横になった。
そのまま10分程立つと、それぞれの布から寝息が聞こえ始める。
( ^ω^)「・・・懐かしい、昔話だお。」
ブーンはその夜、ずっと星空を見上げていた―――――――――――
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 01:06:54.72 ID:exKm4PxP0
- ――――――手記は、ここで途切れている。
ってね^q^
書き溜めなくなったからまた出直すお
C、どうもありがとうございましたですお!^q^ノシ
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 01:07:50.34 ID:/udQFrBu0
- ドクオは墓に宝石を供えたの?
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/16(金) 01:09:57.25 ID:exKm4PxP0
- >>85
ドクオは、ブーンに見せた指輪の方を墓に供えました。