ξ゚听)ξ 不可思議姫幻想記のようです【月ノ封印】
1 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 19:58:28.01 ID:biPDQDTX0


みなさん、お久しぶりです。



     ξ゚听)ξ 不可思議姫幻想記のようです
  
          フカシギヒメ   ゲンソウキ


時代+ファンタジー、存分にお楽しみください。



新しい物語が、今始まる。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:01:33.67 ID:DZcIhUMGO
だれ?

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:01:34.09 ID:8JoPJVNHO
支援

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:01:38.10 ID:biPDQDTX0

江戸より遠く離れた奥羽の地。
そこで一人の赤子が生まれた。

神の血筋として生まれたはずのその子は、悪魔と罵られることとなる。
生まれると同時に、傍にいた多くの人間の命を奪ったのだから。

その時を知る村人は堅く口を閉ざし、誰にも話そうとしなかった。
ただただ、事実だけが歴史書に記されることとなる。



――――火の中より赤子生まれ出でたる、と。

  

        【月ノ封印】


初幕────朔

5 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:02:48.01 ID:biPDQDTX0


ξ゚听)ξ「退屈ねぇ」

広大な部屋に一人寝転がる幼い少女。
年は十と少しぐらいだろうか。
着物の隙間から見える肌は白く、顔立ちは整っている。
町を歩けば、誰もが彼女に目を奪われるだろう。

もっとも、それは美しさのせいではなく、
生まれながらに彼女が持つ、年老いた翁のような真っ白い髪が原因であろうが。

ξ゚听)ξ「さてさて、どうしようかしら。昼は外に出れないし・・・・・・」

実際には彼女が町人に見られることはない。
それは彼女が暇を持て余しているのと同じ理由である。

すなわち、白昼外出禁止。

彼女の父親は、そのあまりに特異な容姿が人目につくことを禁じた。

ξ゚听)ξ「内藤!」

( ^ω^)「はいお、なんでしょうかお?」

呼ばれて部屋に入ってくるのは、少し太めの男、
内藤は少女のお世話役を任されている。

6 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:04:12.60 ID:biPDQDTX0

ξ゚听)ξ「暇。何とかして」

( ^ω^)「と、申されましても・・・・・・」

ξ゚听)ξ「そうねぇ」

指先で髪の毛を弄りながら考え込む少女。

ξ゚听)ξ「んーっと、そうだ! 踊りを覚えてみたいわ!」

この青年、我儘な姫様の世話をし続けて五年になる。
そうともなれば、いきなり突飛なことを言いだすのにも慣れていた。

( ^ω^)「踊り・・・ですかお」

青年とて一応生まれは高貴な人間である。
当然、庶民の踊りなど知るはずもない。

ξ゚听)ξ「ええ、どうせ暇なのだから、そのくらい構わないでしょ?」

( ^ω^)「しかし、庶民の踊りなど私は存じませぬゆえ・・・・・・」

ξ゚听)ξ「誰が庶民の、と言ったの。私の言う踊りは西洋のものよ」

彼女たちの生きる時代は、一部の国を除き外国との交流を断っている。
その様な状況下で、西洋の踊りを知っている者など、東北の地域ではいないだろう。

7 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:06:06.51 ID:biPDQDTX0

( ^ω^)「しかし、西洋の踊りを知っている者など・・・・・・」

ξ゚听)ξ「いいから連れてきなさい! そのくらい出来ないの?」

( ^ω^)(無理を言うお・・・・・・)

確かに彼女には権力がある。
父親が時の天皇であるからだ。

その力を使い少女の欲望を満たしてきた。
部屋の中にはありとあらゆるものがその恩恵である。
並べられ、飾られている、

掛け軸

漆器

染物

無名の物などそこには一つもない。
紛うことなく全てが一級品。

ξ゚听)ξ「むぅ・・・・・・それなら一週間待つわ。それまでに何とかしなさい」

( ^ω^)「わかりましたお・・・・・・」

8 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:07:22.69 ID:biPDQDTX0

無理難題を吹っ掛けられ困惑しながら、内藤は自分の部屋に向かう。
仕方なしと思い、手紙を書く準備を整える。

( ^ω^)(空姫様がいいかお?)

多くの姉妹の中で少女が最も親しくしているお方。
何か困った時に内藤が頼るのはいつも空姫であった。

( ^ω^)「それが一番いいおね」

筆をとり、慣れた手つきで文字を書いていく。



空姫様

いきなりの手紙、大変申し訳ございません。
いつものことなのですが、西洋の踊りができる者を送っていただきたいのです。
お手数をおかけします。

雪姫様の使いの者より



手紙に間違いがないか確認してから、折りたたむ。

9 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:09:20.49 ID:biPDQDTX0

( ^ω^)「稚、いるかお?」

( <●><●>)「ここに」

天井から顔をのぞかせるのは、内藤の使い。
特徴的な瞳を除いて、全身を隈なく黒い布で覆っている。

( ^ω^)「これを空姫様に届けるお」

( <●><●>)「直ぐに」

男は手紙を掴むと、そのまま屋根裏に消えた。

( ^ω^)「まぁ、空姫様なら何とかしてくださるだろうお」

青年は机の上を片付け、別の紙を支度する。
筆に墨をつけ直し、すらすらと流れるように描かれるのは少女。

指先に蝶々を留めてほほ笑んでいる柔らかい表情が
黒色の濃淡だけでうまく表現されている。

( ^ω^)(昔は純真無垢な少女だったのにお・・・・・・)

年々我儘に、高慢になっていくのが青年の唯一といっていい悩みだった。
とはいえ、教育を施しているのは内藤なのである。
誰に文句を言う筋合いもない。

10 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:11:48.13 ID:biPDQDTX0

( ^ω^)(うんお、うまくかけたお)

青年の趣味の一つは絵を描くことだ。
権力闘争や媚を売ることをしなかったせいで、現在の立ち位置にいるのだが、
本人はむしろ自由な時間が増えたと喜んでいる。

( ^ω^)「さて、お昼御飯でも作るお」

絵を大切に仕舞い、硯と筆を片づける。
料理などの家事は全て内藤の仕事だ。

魚の骨からダシを取り、野草を浮かべ、ほぐした魚の身を入れる。
次に干し肉に軽く火を通し、皿に盛って米と一緒に
我儘なお姫様の元に運んで昼食は終わりだ。

( ^ω^)「お昼御飯をお持ちしましたお」

ξ゚听)ξ「入って」

襖を開け、愕然とする内藤。

( ^ω^)「なっ・・・!」

少女は着替え中だった。
足元には多くの服が束ねられ山のようになっている。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:12:31.07 ID:8JoPJVNHO


12 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:13:25.03 ID:biPDQDTX0

ξ゚听)ξ「あ、そこに置いといて」

( ^ω^)「お・・・言ってくだされば外に置いときましたお」

ξ゚听)ξ「照れてるの?」

いたずらに微笑みながら、身につけている最後の布切れをゆらゆらと揺らす。

( ^ω^)「・・・失礼しますお!」

軽い音を立てて襖が閉じられた。

ξ゚听)ξ「怒らなくっても・・・・・・」

( ^ω^)(立場を理解してほしいお・・・・・・)

いまだに自己主張している心臓に手を当てて、調理場に戻る。
自分用に作った食事を平らげ、片づけを終わらせた。

( ^ω^)「今日は、これで終わりっと。休憩してから洗濯でもするかお」

ξ゚听)ξ「作業は終わった?」

調理場にふらりと現れた姫様の手に握られているのは賽。
次に何をすればいいかは、聞かずとわかる。

( ^ω^)「終わりましお。双六ですおね?」

13 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:15:24.74 ID:biPDQDTX0

内心、早く踊りの講師が来ないかと待ちわびる内藤であった。
姫様の双六の相手は普通にやるのでは勤まらない。

負けすぎても、勝ちすぎても機嫌を損ねるからだ。
賽の目を操れというのか、と毎回思わされる。

ξ゚听)ξ「では、今日は私の番から」

( ^ω^)「はいお」

白く細い腕から賽が零れる。
ただ、それだけの動作のはずなのだが、酷く儚い。

交互に賽を振り駒を進める。
しばらくして、少女の動かす駒が先に盤の終わりにたどり着く。

ξ゚ー゚)ξ「・・・・・・勝った!」

( ^ω^)「参りましたお」

どうやら最も望ましい結果に終わったようだ。
姫君は満面の笑みを浮かべている。
それを見て、まぁいいか、そう思ってしまう内藤であった。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:15:59.27 ID:8JoPJVNHO


15 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:19:19.26 ID:biPDQDTX0



( ^ω^)「ふぅ・・・・・・」

すべき仕事を終わらせ、自室に戻り机に向飼う内藤。
夜も遅く、小さな明かりだけで書物を開こうとしたとき、
すっと、音もなく天井が開いた。

( <●><●>)「只今、戻りました」

( ^ω^)「早いおね。返事はどうだったお?」

( <●><●>)「ここに」

上から一枚の巻き手紙が落ちてくる。
それを中空で掴み、開けられてないことを確認し内容に目を通す。


( ^ω^)「お・・・・・・困ったお」

手紙の返事には簡潔に、こう書いてあった。

16 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:21:03.25 ID:biPDQDTX0


異国の踊りの講師?

そんな人間は今のような時代にいるはずなかろうに。

どうしようもできん。以上だ。

       空姫

いつも通り砕けた言葉使い。
違うのは、その答えが否定だということ。

( ^ω^)「これは・・・・・・困ったおね・・・・・・」

( <●><●>)「どういたしましょうか」

( ^ω^)「うーん・・・・・・。何とか話してみるお。ありがとうだお。今日は下がっていいお」

( <●><●>)「は」

男は天井裏に消えた。

17 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:22:55.63 ID:biPDQDTX0

( ^ω^)(正直に話すしかないおね・・・・・・)

そうは思っても、すでに町は静まり返っている。
少女もとうに寝てしまっているだろう。

( ^ω^)「明日でいいかお・・・・・・」

そう一人呟き、自身も布団に身を沈めた。




( ^ω^)「何の騒ぎだお・・・・・・」

朝起きた内藤の耳に飛び込んだのは、町の方から聞こえる喧騒。
そして、怒気と怯えを孕んだ少女の声。

( ^ω^)「申し訳ありません、姫様」

ξ゚听)ξ「やっと起きたのね。内藤、外の様子を見てきなさい」

( ^ω^)「はいお、お任せください」

安心させるように、できるだけ優しく話しかける青年。
家を出て、町の方へ向かう。

18 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:24:27.94 ID:biPDQDTX0


少し歩いて、原因はすぐに分かった。
町の一角から火の手が上がっている。

幸いにして、この町は家と家の間を広く、隣の家に燃えうつることはないだろう。
日の光を遮るように、黒い煙が激しくうねり立ち上っている。

( ^ω^)「・・・・・・可哀そうにお」

少女の暮らす家に実害がないだろうことを確認すると、背を向け
その場を後にした。

すぐに、少女の部屋の前まで行き、起きていたことを話す。

( ^ω^)「ということですお。こちらに被害はなさそうなので放っておきましたお」

ξ゚听)ξ「・・・・・・そう、ありがとう」

障子戸越しに震える声が聞こえ、またか、と思う。
その生まれに起因するのか、火事のような、火関連のことに強く怯える少女。

当然、覚えているはずなどないのだが。

( ^ω^)「心配する必要はありませんお」

19 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:27:16.70 ID:biPDQDTX0


ξ゚听)ξ「もう大丈夫」

震えている少女をその手で包み込むことは許されていない。
障子越しに、ただ見守ることしかできない。

( ^ω^)「失礼しますお」

扉の前を去り、部屋に戻る。
朝ごはんの時間まではまだあるからだ。

( <●><●>)「緊急です」

( ^ω^)「どうしたんだお?」

天井から声が聞こえる。気のせいか、少し早口で。

( <●><●>)「手紙です。先程届きました」

( ^ω^)「これは・・・・・・」

高貴な身分の者だけが使うことを許される、特別な手紙。

どんな連絡手段よりも早く、緊急時にしか使われないはずの物。

書いてあることを確認する内藤の顔色は一瞬にして変わる。
手紙には、一言だけしか書かれていなかった。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:28:22.15 ID:A3nztz3MO
支援

21 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:30:35.50 ID:biPDQDTX0



  逃げろ

       空姫



( ^ω^)「稚、ここを任せるお!」

内藤に普段の温厚な様子はすでにない。
手紙を掴んだまま、部屋を勢いよく飛び出した。

( ^ω^)「姫様!」

ξ゚听)ξ「ん? どうしたの?」

( ^ω^)「中、よろしいですかお?」

内藤から部屋の中に、と申し出たのはこれが初めてになる。
今まではある程度の距離を保ち、つかず離れずを常に意識していたからだ。

ξ゚听)ξ「別にいいけれど」

22 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:33:15.27 ID:biPDQDTX0

( ^ω^)「失礼しますお。今、空姫様からの手紙が参りましたお」

許可をもらうとすぐに障子戸を開け、
その手紙を少女に差し出した。

ξ゚听)ξ「これ・・・・・・は?」

少女の疑問は当然だろう。
手紙には立った一言しか書かれていない。
詳しい説明を求めるように内藤を見た。

( ^ω^)「私にもわかりません。が、空姫様が嘘をお吐きになるとは思えません。
     ここを逃げましょう。お連れいたします」

ξ゚听)ξ「でも・・・・・・」

少女は自分の周りにある物に目を移らせる。
歴史に残るだろう、数々の名品。

( ^ω^)「姫様!」

語気荒く、判断を促す。
緊急の手紙、ということは時間がないはずなのだ。
何が起きるのかは想像もつかないが、それが良くないことであるのは間違いない。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:35:43.56 ID:i+JclyH3O
合成士の新作か

24 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:37:23.39 ID:biPDQDTX0

ξ゚听)ξ「・・・・・・わかった。連れて行きなさい、内藤」

決心したように、強い眼差しを青年に向ける。

( ^ω^)「かしこまりました。昼間は目立ちますので、これを」

内藤は懐から大きな布を取り出し、少女に差し出した。
そして、それを頭から被ることで、少女が少女である証を隠す。

ξ゚听)ξ「どこに行くの?」

( ^ω^)「奥羽の西の方、山を越えてその先に隠れ家を用意しております」

ξ゚听)ξ「わかった」

では、と内藤が先導して家を出る。
すぐ後ろを少女が続く。

( ^ω^)「では、失礼しますお」

少女の手を取り、家の前にいる馬に乗せる。
自身も馬に飛び乗り手綱を掴んだ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:38:58.03 ID:i+JclyH3O
支援支援

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:39:40.75 ID:8JoPJVNHO
支援

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:39:53.30 ID:VgiQuKPsO
ずいぶん読みやすくなったなー
支援です

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:41:51.58 ID:xOYP1HLa0
ラノベを幼稚にした感じだな・・・

29 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:42:20.58 ID:biPDQDTX0

ξ゚听)ξ「馬なんか持ってたの?」

( ^ω^)「もしものために、備えておきましたお」

食料も僅かではあるが用意されている。

( ^ω^)「稚・・・・・・助かったお」

青年が馬の腹をけり、二人は家を後にした。
その様子を家の中から見守る男が一人。

( <●><●>)「無事逃げ切ってください・・・・・・・」




町はずれに立つ少し大きな家からは、
他所の火事の黒い煙とは対照的な、白い煙が空に伸びる。

二人が出発してから、数刻もたたず、
誰も訪れる者のなかったその家に、最初で最後の客が来た。

ル(%)川「失礼しますよ」

家を訪ねてきたのは数人。
格好は町人のそれとはかけ離れていた。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 20:45:34.18 ID:i+JclyH3O
支援

31 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:45:35.06 ID:biPDQDTX0

黒装束は返事がないとわかると、扉を蹴破り中に入る。

ル(%)川「もぬけの殻ですか・・・・・・どこから情報が漏れたのでしょうかねぇ」

奇妙な面をつけた人間は、どこか余裕を漂わせ、呟く。

('A`)「ッ!!」

甲高い金属音が鳴る。
突如現れた、同じく黒い布に身を包んだ男の攻撃を、細身の男が防いだ。
そして、仮面を守るようにその前に立ちふさがる。


ル(%)川「なかなか早いですね・・・・・・」

呑気にその攻撃の感想を口に出す、仮面。
人数だけではなく、それ以上のものが感じられる。

('A`)「ここは俺が・・・・・・」

ル(%)川「それなら、ドクオに任せましょう。ここはもぬけの殻です! まだ遠くには逃げていないはず!
      辺りをしらみつぶしに探しなさい!」

そう叫ぶと、ドクオと呼ばれた男を残し、他の黒装束は部屋を後にした。

32 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 20:48:26.72 ID:biPDQDTX0

( <●><●>)「なかなかの腕ですね・・・・・・」

('A`)「ふん、悪いな。お前に恨みはないが・・・・・・・眠ってもらうぞ!」

競り合う刀をドクオが引く。
もう一人の男もそれに応え、互いに距離を置き様子を見る。

先に動いたのは家の中にいた男。
刀を仕舞い、懐から複数の短刀を取り出し、繰り出した動作は投擲。

('A`)「っらぁ!」

声と共に、鎖で繋がれた短刀を力を込めて弾く。
当然、衝撃を受け短刀は明後日の方向に向かう。

( <●><●>)「終わりです」

男は手元の鎖を操作し、その先の凶器を操った。

('A`)「残念だったな」

が、すでにそこにはドクオはおらず、その拳が腹部にめり込んでいた。

( <●><●>)「があっ!!」

33 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 21:44:38.66 ID:OVq4PdRa0

意識を失い、男はそのまま崩れ落ちる。
それを確認すると、火のついた薪を竈から取り出し、そこら中にばらまいた。
火は簡単に燃え移り、貴重な品々を喰らい大きく育つ。




('A`)「さて、戻るか」

黒装束は真っ赤に燃える家を後にした。







( ^ω^)「姫様、大丈夫ですか?」

出来るだけ平坦な道を走ってはいても、慣れないものが馬に乗れば疲れるのが道理。

ξ゚听)ξ「ええ」

先程から何度も同じことを尋ねているが、返ってくるのは決まってこの言葉であった。
内藤は馬の速度を緩め、止まらせる。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 21:46:17.69 ID:aGLnoIPz0
復活支援

35 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 21:48:03.63 ID:OVq4PdRa0

( ^ω^)「この辺りで休みましょうお」

ξ゚听)ξ「私は大丈夫だって」

姫様が強情なのは十分承知している内藤。
数年も一緒に暮していれば、相手がどんな状態かはだいたいわかるものだ。

( ^ω^)「いえ、申し訳ございません。私が疲れてしまいましたので」

そう言い、無理やり休憩をとった。
少女は木陰まで歩いて行き、座って空を見上げている。

日は高く上っているが、まだ肌寒い季節。
いつの間にか舟を漕いでいる少女に上から毛布を被せると、
内藤は馬に食事を与える。

( ^ω^)(向こうはどうなってるんだお? 人は住めるのかお?)

何もしていない時間は頭を働かす。
それが彼の日課。

しかし、それは始めて間もなく邪魔が入る。
青年の目視できるギリギリのところで、砂煙が上がっていた。

それは決して自然にできたものではなく・・・・・・

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 21:52:56.66 ID:aGLnoIPz0
しえーん!

37 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 21:52:57.78 ID:OVq4PdRa0

( ^ω^)「姫様! 申し訳ございません」

少女の肩を強く揺すり、その夢から連れ出す。

ξ゚听)ξ「ん・・・・・・どうしたの?」

( ^ω^)「敵のような姿が見えました。場所を移します」

ξ゚听)ξ「わかった」

馬に乗り、全速力で駆ける。
こちらの動きに気付いたのだろうか、むこうの速度も確実に上がっていた。

こちらは、子供とはいえ二人を乗せているのだ。
長距離戦になればいつか追いつかれてしまう。

( ^ω^)「山の麓の森の中に行きますお」

ξ゚听)ξ「大丈夫なの?」

心配そうに後ろの青年を見上げる。

( ^ω^)「任せてくださいお」

38 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 21:55:21.53 ID:OVq4PdRa0

夜中を山で過ごすことは避けたかったが、こうなってしまえば森で追手を巻くしかない。
冷静に頭の中で計算し、逃げる算段を付ける。

( ^ω^)「頑張ってくれお」

手綱を引きながら、ひたすらに願う。

ξ゚听)ξ「だいぶ近づいてきてる!」

少女の言葉で後ろを振り向くと、数人の黒装束がはっきりと見えた。

( ^ω^)「間に合えおっ・・・・・・」

目の前には広大な森林が広がっている。
どれだけ早く中に入るか、それが捕まらないために重要なのだ。

ξ゚听)ξ「がんばって」

しっかりと馬にしがみつきながら、小さな声を絞り出す。
それに応えるかのように、馬は速度を上げ、一気に森に突入した。
内藤の操る馬は木々を縫うように駆ける。

39 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:00:42.97 ID:OVq4PdRa0

黒装束達も森の中に入ってきているようだが、生い茂る木々に苦戦しているのだろう、差が開いていく。

( ^ω^)「よくやってくれたお」

姿が見えなくなってから、少しの間走り続ける。

ξ゚听)ξ「もう大丈夫?」

( ^ω^)「おそらく、ですが」

辺りを警戒しながら、馬から降りた。
少女の手をとり、安全に馬から降りれるように補助する。

ξ゚听)ξ「そう、なら少し休むね」

( ^ω^)「どうぞゆっくりお休みください。私が見張っていますから」

家の高価な寝床で寝ていた少女が、こんなところでも寝れるのだから、
相当疲れていたのだろう。

森の中は自然の音に満ちている。
鳥の囀り。
木の葉の音。

それらは疲れを癒し、気持ちをほぐしてくれる。

40 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:04:11.38 ID:OVq4PdRa0

( ^ω^)(あいつらは何者だお・・・・・・?)

突如現れた黒装束。
その目的も、規模も全くわからない。

( ^ω^)「必ず、守りますお」

少女を見つめながら、決心を固める。
姫様を思いながら、意志を固める。

( ^ω^)(空姫様はどうして気づけたんだお・・・・・・?)

ξ゚听)ξ「んん・・・空ねぇ・・・・・・」

そんな内藤の思いも知らず、少女は夢の中。
仲の良い姉といっしょに遊んでいるのかもしれない。

( ^ω^)「明日には・・・・・・山向こうの家につける筈だお」

見える筈のない場所を見る。

( ^ω^)「!!」

その時、遠くに聞こえる足音と声に気付いた。
それは刻一刻と近づいてくる。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:04:19.59 ID:aGLnoIPz0
しえーん

42 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:06:07.78 ID:OVq4PdRa0

( ^ω^)「まずいお・・・・・・・」

何やら言い合っているような複数の声が聞こえる。
内容を聞かずとも、黒装束であることは間違いない。

「この辺にいるんすかねぇ」

「黙って探せ。あの娘は危険なのだ」

「それはどう危険なのですか?」

「聖典を読め・・・・・・。アレは悪魔なのだ。目覚める前に何とかしなければ」


聖典・・・?

悪魔・・・?


( ^ω^)「何を言ってるんだお・・・・・・・」

内藤の頭の中を疑問が埋めていく。
入れ替わり立ち替わり現れる予想と仮定。

ξ゚听)ξ「ねぇ・・・逃げないの?」

43 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:07:41.69 ID:OVq4PdRa0

姫様が起きていたことに驚きながら、答える。

( ^ω^)「近すぎるんですお。馬の走る音ですぐにばれてしまいますお」

ξ゚听)ξ「そう・・・・・・・」

「こちらに来てください! 馬の足跡を見つけました」

「向きは!」

「あちらだと思いますが・・・・・・」

( ^ω^)「まずいお! 失礼します」

ξ゚听)ξ「きゃっ」

見つかるのも時間の問題だ。
そう思った内藤は、思い切って行動に移した。
少女を抱き、馬に乗せ手綱を引く。

突然のことに驚いて少女が声を出してしまう。

「声が聞こえたぞ!」

「こっちだ! 追え!」

( ^ω^)「走れお! 走れ!」

44 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:11:24.72 ID:OVq4PdRa0

必死で馬に向かって叫ぶ。
敵の姿は見えないが、真後ろに迫っているのだ。
少しでも気を緩めてしまうと、すぐに追いつかれてしまうだろうことは容易に想像できた。

「まわれ! まわれ!」

後ろから聞こえる音が小さくなった。
先回りする部隊を作って挟み打ちをする気に違いない。
手綱を握る手の中を冷や汗が流れ続ける。

( ^ω^)「!!」

森の木が途切れ、山の麓にいる黒装束と目が合った。
横道にそれようと急停止したことろで、後ろの集団に追いつかれてしまう。

「残念だったな」

「その姫を渡してもらおうか」

黒装束が一歩歩くごとに、二人を囲う輪は少しずつ狭まる。
内藤は馬を降り、その刀を抜く。

( ^ω^)「くっ・・・・・・・」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:14:55.10 ID:aGLnoIPz0
支援!

46 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:15:24.55 ID:OVq4PdRa0

「それは飾りじゃなかったか。だが、お前を殺してからでもいいんだがな」

ξ゚听)ξ「あなたたち、私に一体何の用?」

声が震えているのがはっきりとわかる。
誰ともわからない人間に囲まれているのだ。
それも当然のことだった。

「お前は知らなくていいことだ。早くこちらへこい」

( ^ω^)「させないお!」

「死にたいようだな」

ξ゚听)ξ「内藤!」

( ^ω^)「雪姫様、落ち着いてくださいお。大丈夫ですお」

一度だけ振り向き、その愛想良い笑顔を向ける。
そして、厳しい顔で数人の敵を睨む。

「覚悟はあるようだな」

ξ゚听)ξ「内藤! やめて!」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:15:47.95 ID:czKRitxZO


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:17:08.55 ID:bT4pKm5QO
面白い
支援

49 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:18:50.87 ID:OVq4PdRa0

( ^ω^)「やめれませんお!」

馬から飛び降りた少女が必死に内藤を掴む。
目からは大粒の涙がこぼれていた。


( ^ω^)「姫様・・・・・・。なっ・・・?」


「・・・くま・・・め・・・・・・・あら・・・たな」


骨に響くような振動と共に、声が聞こえる。
突然、地響きとともに大地が揺れ・・・・・・

「地震かっ!」

「うわっ!」

大口を開けた。

ξ゚听)ξ「きゃああああああ」

( ^ω^)「おおおおおおおおっ」

その真上にいた二人は、なす術もなく落下する。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:22:15.59 ID:Pg0j8cqmO
支援

51 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:23:23.72 ID:OVq4PdRa0


「どうしましょうか」

「底が見えんな・・・・・・。お前、確認してこい。生きていて逃げられると面倒なことになる」

地面に開いた底の見えない穴を覗き込む男達。
巨大な穴の周りに黒装束達は取り残される。
膝をつき中を覗いている者もいるが、僅かにも見えはしない。

「冗談すよね?」

「さっさと行け! お前らもだ! 死んでいた場合に備え私は戻り、封印師を呼ぶ」

「行くぞ、命令だ」

数人が無言で飛び降り、最後まで抵抗していた一人は、引きずり落とされた。

一人残った黒装束は馬にまたがり、走り去って行く。
木々が生い茂る森の中、その異質な穴は存在していた。

52 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:28:26.23 ID:OVq4PdRa0

( ^ω^)「っ・・・・・・姫様! 姫様!」

ξ゚听)ξ「内藤、ここよ」

どこから落ちてきたのかを確認するために見上げると、光は遥か頭上
小さな米粒のようになっている。
何とか目の前が見える程度の明りが、そこから漏れてきていた。

( ^ω^)「私たちはあそこから落ちてきたのですおね・・・・・・」

ξ゚听)ξ「ここの土、かなり水を吸ってて柔らかいから」

( ^ω^)「姫様、お怪我はありませんか!?」

ξ゚听)ξ「私は大丈夫。内藤は?」

心配しているつもりが、逆に心配そうに覗きこまれていることに気づく内藤。
体を起して、傍に座っている少女よりも目線が高くする。

( ^ω^)「大丈夫だと思いますお」

よくよく見ればきれいな着物は泥で覆われていて、
美しい白い髪さえも半分以上が黒く染まってしまっていた。

それから、自分も泥まみれだと気がつく。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:28:39.75 ID:aGLnoIPz0
支援支援

54 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:31:04.74 ID:OVq4PdRa0

( ^ω^)「周りが全く見えませんおね」

ξ゚听)ξ「うん・・・・・・」

泥の水分を吸った服が体を冷やしているのだろう。
少女は小さく震えていた。

( ^ω^)「大丈夫ですお」

自らの服を少女に被せ、立ち上がる。
足元は柔らかく、体重をかけると沈んでいくので、酷く歩きにくい。

( ^ω^)「少し周りを見てきますお」

ξ゚听)ξ「待って・・・・・・ちょっと離れたらお互いどこにいるかわからなっちゃう」

( ^ω^)「そうですが・・・・・・」


「ああああああああああ」


徐々に大きくなる叫び声と、巨大な質量がぶつかる音が数度。

55 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:34:37.77 ID:OVq4PdRa0

「どこにいる! 出てこい」

それが黒装束だと理解するまで時間はかからない。
泥を跳ね上げながら歩く音が空間に響く。

内藤と少女は見つからないよう静かに、息を殺すことしかできなかった。
肌に感じる滑った泥の不快感に苛まれながら、じっと動かない。

複数の足音だけが断続的に繰り返される。
暗闇の中で動いているのは足音の主達だけのはずであった。

ξ゚听)ξ「なにか・・・・・・いる」

( ^ω^)「どうされたのですかお?」

少女が何かの存在に怯え出すが、周りを見回しても何の変化もない。
そもそも、暗くてほとんど何も見えない状況で、どうやって存在に気づくのか。
しかし、次の瞬間、内藤はその存在を理解した。


「悪魔の魂よ・・・・・・我は許さぬ」


闇の中から重みを持った声が響く。
全ての悪意を纏めて飲み込んだかのようなそれは、
体の骨の髄まで蝕んでいるのではないか、とさえ思わされる。
身の毛がよだつとは、まさにこのことを言うのだろう。

ξ゚听)ξ(何・・・・・・?)

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:34:47.43 ID:Pg0j8cqmO
支援支援

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:36:28.14 ID:aGLnoIPz0
支援だぜ

58 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:37:57.35 ID:OVq4PdRa0


「許さぬ・・・・・・許さぬ・・・・・・」

その声を発している"何か"は暗闇の中、確実にこちらを見ている、脳が逃げろと叫ぶ。
だが、それに反して体は重く動かない。


地鳴りと共に、沼地が渦を描いて動き出す。

ξ゚听)ξ「何!?」

( ^ω^)「っお!?」

二人の体は中心へと引きこまれていく。
捕まる物など近くには何もなく、為す術もなく吸い込まれる。

「うあ、何だ何だ!!」

そして、それは黒装束をも巻き込む。

「ひぃぃぃ!」


「地底の底に眠れ。侵入者達よ。
 地底の底にに眠れ、悪魔よ」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:39:14.52 ID:Pg0j8cqmO
支援

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:41:11.29 ID:aGLnoIPz0
支援だ

61 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:41:45.24 ID:OVq4PdRa0

泥の流れはあまりもの荒々しく、
既に体の半分以上が泥沼に飲み込まれている。

(; ^ω^)「うあああああああ!」

ξ゚听)ξ「嫌・・・・・・いや・・・・・」


「許さぬ」「許さぬ」「許さぬ「許さぬ」「許せぬ」

順々に胸までも飲み込まれてしまう。
口と鼻がふさがり呼吸ができなくなるまで、もはや後僅か。


ξ;凵G)ξ「いやああああああああああああああああああ」

( ^ω^)「!?」



少女の叫びに呼応して現れたのは光。
それはただの光ではなく、一瞬にして地下の暗闇が真っ赤に染めあげられる。

輝く炎とでも表現すればいいのか。

火の粉までもが消え去る直前まで光を放っている。
それが、まるで形を持っているかのように少女を包み泥に埋まった体を持ち上げた。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:43:08.11 ID:Pg0j8cqmO
支援支援

63 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:44:44.13 ID:OVq4PdRa0

そして蛇のように伸びてきた炎は内藤をつまみあげようとする。

( ^ω^)「おおおおお!??  熱くないお・・・」

身の危険を察知して避けようとするが、半分以上泥沼に埋まっていては身動きが取れようはずもない。
そして内藤にたどり着いた燃え盛る炎は、少女と同じように中空に引っ張り上げる。

ξ゚听)ξ「何・・・・・・これ」

迸る明るい炎が照らし出したのは大樹。
ただ大きいだけではなく、その幹には何百何千もの醜い顔があった。

地下の空間を支えているかのように、立ち聳えている。

「た、助かった・・・・・・」

「はぁ、はぁ・・・・・・」

輝く炎が出現してから、泥の渦は止まっていた。
地面に埋まってはいるが、存命を喜んでいる黒装束達を、
急激に成長していく大樹の枝が包み込む。


)゚王゚(「力をよこせ・・・・・・」

64 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:46:33.05 ID:OVq4PdRa0

蛇のように伸びてきた炎は内藤をつまみあげようとする。

( ^ω^)「おおおおお!??  熱くないお・・・」

身の危険を察知して避けようとするが、半分以上泥沼に埋まっていては身動きが取れようはずもない。
内藤にたどり着いた炎は、少女と同じように中空に引っ張り上げる。

ξ゚听)ξ「何・・・・・・これ」

迸る明るい炎が照らし出したのは大樹。
ただ大きいだけではなく、その幹には何百何千もの醜い顔があった。

地下の空間を支えているかのように、立ち聳えている。

「た、助かった・・・・・・」

「はぁ、はぁ・・・・・・」

輝く炎が出現してから、泥の渦は止まっていた。
地面に埋まってはいるが、存命を喜んでいる黒装束達を、
急激に成長していく大樹の枝が包み込む。


)゚王゚(「力をよこせ・・・・・・」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:48:03.86 ID:Pg0j8cqmO
支援支援

66 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:49:13.68 ID:OVq4PdRa0

「あああああああああああああああああああああああ」



この世のものとは思えない絶叫が響く。
枝に包まれた黒装束達は、数秒で物言わぬ屍となった。

)゚王゚(「・・・・・・久しぶりに人を喰うた。やはり旨い」

成長し続ける枝は少女と内藤にも迫る。
四方八方から地下空間を覆いきらんとするほどの枝が現れた。


ξ゚听)ξ「いやあああああああああああああああ」


悲鳴と呼応するように大きくなった炎は、全ての枝を飲み込む。
眩しさに目をおおい光が収まった時には、辺り一面に焼け野原であった。

それだけにとどまらず、勢いを上げ炎は大樹を嫐ように包み込んでいく。

)゚王゚(「くっ! やめろ・・・やめろおおおおおおおおおおおお」

木が焦げる臭いが広がり、悲痛な叫び声は先細りして消えていく。
数分で炎は収まり、真っ黒に炭化した燃えかすと、
腕の長さぐらいの光輝く美しい枝だけがその場に残った。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:51:02.81 ID:aGLnoIPz0
しえーん

68 名前:雪くじら ◆Kuzira0ng. :2009/11/29(日) 22:51:26.52 ID:qOj/U3SZP
しえん

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:53:10.34 ID:Pg0j8cqmO
支援

70 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:53:32.93 ID:OVq4PdRa0

水分が消え泥は固まり地面が安定し、大樹が燃え尽きたせいで
天井は崩れ始め、静かな月の光が差し込んでいる。

( ^ω^)「姫様!」

身に纏った炎がゆっくりと沈静化し、落下する少女の体を内藤が受け止めた。
意識はあるようで、一安心する内藤。

ξ゚听)ξ「ない・・・とう・・・?」

( ^ω^)「姫様・・・・・・」

ξ゚听)ξ「早く、ここから出よ」

大樹があった場所の後ろには大きな穴があいている。
新鮮な風が流れ出てきているから、外につながっているのだろう。

( ^ω^)「分かりましたお」

少女の体を抱いたまま、歩きだす。

ξ゚听)ξ「ちょっと待って。あの枝、とってくれない?」

地面に刺さっている七色の輝きを放つ枝。
内藤は丁寧にそれを引きぬき、少女に渡す。

ξ゚听)ξ「ありがと」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:54:23.59 ID:aGLnoIPz0
この枝は何だろう?
支援

72 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 22:57:33.32 ID:OVq4PdRa0

( ^ω^)「お。では、外に向かいましょう」

空洞の中の道は荒れていて、多少の上り坂になっていた。
風を受けながら、先に見える光を目指し暗い横穴を行く。

ξ゚听)ξ「私、どうなったの?」

少女の問いは、先程の現象のことだろう。
それに対する明確な答えを内藤が持っているわけがない。
ある程度の予想はあるのだが、それを話しても少女を悲しませてしまうだけだ。

( ^ω^)「わかりませんお・・・・・・・でも、姫様のおかげで助かりましたお」

ξ゚听)ξ「そう・・・そうよね」

寂しそうな様子は相変わらずだったが、口の端は少しだけ上がっていた。
疲労いっぱいであった二人はそのことについて話すのをやめ、無言になる。
先の光は段々と大きくなり、ついに全身で浴びるに至った。

ξ゚听)ξ「出れた・・・」

( ^ω^)「よかったですお」

二人が立っているのは、穴に落ちた場所とは反対側の山の中腹。
空を見上げわかるのは、月が沈みかけている時間だということ。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 22:57:44.31 ID:Pg0j8cqmO
支援支援

74 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 23:00:29.24 ID:OVq4PdRa0

ξ゚听)ξ「どこに行くの?」

( ^ω^)「山を下りて、麓にある家でしばらく暮らしますお」

ξ゚听)ξ「そう・・・・・・。もう自分で歩ける」

内藤の手から降り、自分の足で立つ少女。
ふらふらと頼りない足取りだが、ゆっくりと前に進む。

ξ゚听)ξ「さぁ、そこに行きましょう」

( ^ω^)「多分、こちら方面ですお」

内藤は星の光を頼りに、山を下りるために道を開き、その後ろを懸命に少女は歩く。

ξ゚听)ξ「どうしてわかるの?」

( ^ω^)「星の位置で大体の方向が分かるんですお」

曇ってたらどうするつもりなのか、そんなことを聞いてもせんのないことだと少女はわかっていた。
今日は晴れていて、星はちゃんと瞬いているのだから。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 23:00:46.60 ID:aGLnoIPz0
支援でござる

76 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 23:02:09.48 ID:OVq4PdRa0

無言で山を下りる二人。
森はそう長くは続かず、開けた場所に出た。
遠くには何軒もの家が見える。

( ^ω^)「もうすぐですお」

内藤が振り向いた瞬間、少女は倒れこむ。
地面にぶつかるらないように支え、驚いて脈を確認するがなんら問題はなく、眠っているだけだった。
一度に多くのことが起き、身も心も疲れ切ってしまったのだろう。
優しく背負うと、できるだけ揺らさないように歩く。

( ^ω^)「ついたお・・・・・・」

町から少し離れたところにある屋根の高い家。
中に入り、目を覚まさないように少女を布団に寝かせる。

自分はもうひとつの部屋、少女の寝ている部屋よりはかなり小さな部屋だが、
に入り布団を敷いて倒れこんだ。


( ^ω^)(あの火は一体・・・・・・?)

( ^ω^)(悪魔ってなんだお・・・・・・?)

疲れ切った体はそれ以上の思考を許さず、
柔らかい布団の上で内藤は静かな寝息をかきはじめた。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 23:02:46.87 ID:Pg0j8cqmO
支援

78 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 23:05:25.18 ID:OVq4PdRa0




     ξ゚听)ξ 不可思議姫幻想記のようです【月ノ封印】
  
           フカシギヒメ   ゲンソウキ


        

初幕────朔

           

                     了

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 23:06:21.65 ID:aGLnoIPz0
乙! 期待してます!

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 23:09:24.10 ID:Pg0j8cqmO
乙ー

81 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/11/29(日) 23:09:56.14 ID:OVq4PdRa0

支援、乙ありがとうございました。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 23:35:51.56 ID:8tVal2moO
おもしろそうなんだけどちょっと時代について無知すぎ
端々で冷めてしまう

83 名前:雪くじら ◆Kuzira0ng. :2009/11/29(日) 23:38:00.19 ID:qOj/U3SZP
雰囲気が好き

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 23:39:14.06 ID:phs+ZLvC0
色々と痛い

inserted by FC2 system