01 おつなぎさま
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 09:30:54.55 ID:Z7wNtsdk0


『文化祭は終了しました。生徒は実行委員の指示に従い片付けを済ませてから、各自帰宅してください』

『文化祭は終了しました。生徒は実行委員の指示に従い片付けを済ませてから、各自帰宅してください』


( ^ω^)「……」

( ^ω^)「終っちゃったお、文化祭」


 校内はなんだかがらんとしていた。下校時刻も迫っている。
 今日のところは簡単に済ませて、明日に本格的な片付けをする、という生徒が大部分をしめているようだった。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 09:38:23.59 ID:Z7wNtsdk0

(´・ω・`)「なんだかあっという間だったね」

('A`)「来年は受験だから、出し物できねぇしなぁ」

( ^ω^)「お」


 教室の片隅ではショボンとドクオが二人でダンボールを縛っている。
 ゴミを纏めて、明日ゴミ出しに行くつもりらしい。僕もそれに習い、ゴミ袋の口を縛った。
 クラスの女子が書いていたポスターがぐしゃぐしゃになってはいっている。

 窓の外はもう真っ暗だった。
 電灯がガラスに反射している。


('A`)「楽しかったなー」

( ^ω^)「楽しかったおー」

(´・ω・`)「まぁ、殆ど回れなかったのが心残りだけどね」

( ^ω^)「来年一杯回ればいいお」


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 09:44:19.34 ID:Z7wNtsdk0

 僕らのクラスはおばけ屋敷をやったのだ。
 試しに入らせてもらったときは不気味でしょうがなかったセットや人形も、電灯に照らされていると何だか間抜けだった。


( ^ω^)「お、もう六時だお」

(´・ω・`)「あー、本当だ。他の奴等は?」

('A`)「さっきこんにゃく捨てに行ったから、そのうち帰ってくるんじゃねぇか」

(´・ω・`)「あれ、生ゴミって今日中だっけ?」

('A`)「いや、っていうか臭いからな、ほっとくと」

( ^ω^)「バッドスムゥエル」

(´・ω・`)「滑らかな発音!」

('A`)「ゥバッドゥスムェィル」

(´・ω・`)「既に何語かわからない!」



ξ゚听)ξ 「……何やってんのよ」



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 09:50:01.29 ID:Z7wNtsdk0

( ^ω^)「バットスメール!!」

川 ゚ -゚)「良くない香り?」

(*゚∀゚)「何がだー?」


 振り向くと、ツンたちが教室を覗き込むようにして此方を見ていた。


('A`)「特に何もやってないけど」

ξ゚听)ξ 「えええ、今あんた思いっきり嘘ついたわね」

(´・ω・`)「こんにゃく捨ててきてくれたんだよね、ありがとう。こっちは大体片付いたからさ、そろそろ帰らない?」

川 ゚ -゚)「ん? そうだな、もうこんな時間か」

(*゚∀゚)「まだまだ六時だぞー」

川 ゚ -゚)「もう六時、だろ」


 言いながら教室?≪入ってくる。
 教室にはもう僕らしか残っていない。


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 09:56:44.38 ID:Z7wNtsdk0

ξ゚听)ξ「もう、おわりなのね」

川 ゚ -゚)「……ああ、そうだな。私のこの学校最後の思い出が、こんにゃく捨てだ」

ξ゚听)ξ「いやだから、嫌なら来なくていいって言ったじゃない」

川 ゚ -゚)「こんにゃくは好きです」

(*゚∀゚)「最後ー?」

(´・ω・`)「あれ、知らないの? クー、今月中に引越ししちゃうんだって」

(*゚∀゚)「……え? まじか?」

( ^ω^)「そっ、だお」


 重たい空気にならないように、軽々しく僕は頷く。
 其れを部活中に聞いたとき、クー本人はけろりとしていた。
「このご時世、引越 ??くらいで連絡が途切れたりなんてするもんか」と。


川 ゚ -゚)「引越し先の住所は教えるから、年賀状を頼むぞ」

('A`)「任せとけ」

川 ゚ -゚)「何時かプラズマテレビを当てるのが夢なんだ」


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 09:59:45.39 ID:Z7wNtsdk0


(*゚∀゚)「最後、最後……。離れ離れに、なっちゃうのかー」

川 ゚ -゚)「そんなドラマチックな言い方をするな。ドキドキしちゃうだろ」

('A`)「ロマンチックが止まらねー」

(´・ω・`)「胸が苦しくなるー」

( ^ω^)「切なさも止まらんおー」

ξ゚听)ξ「誰か止めてー」


(*゚∀゚)「そうだ」

 ぽん、と手を打った。



(*゚∀゚)「『おつなぎさま』しようぜ」




11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 10:06:46.90 ID:Z7wNtsdk0
( ^ω^)「……おつなぎさま?」

(*゚∀゚)「そー、『おつなぎさま』だ。知ってるだろー?」

ξ゚听)ξ「確か、恋人同士がやる縁結びのおまじないでしょ? それ」

(*゚∀゚)「うんうん、そーだぜー」


『おつなぎさま』というのは、僕らの学校に伝わるおまじないだ。
 いわゆる『キューピット様』『こっくりさん』の地方限定バージョン。

 用意するものはいたって簡単。
 きずな、と書かれた紙一枚と、縁結びをしたい人たち。
 床に置いた紙に手を置いて、「おつなぎさまおつなぎさまおつなぎしてください」と呪文を唱える。
  ??だそれだけの簡単な簡単なおまじない。


(*゚∀゚)「おれはそーゆー、おまじないとか好きなんだ」

(´・ω・`)「へぇ、初めて知ったよ」

(*゚∀゚)「へへへ」

('A`)「でもあれって恋人同士がやるやつなんだろ。こんな大人数でできんのか」

(*゚∀゚)「出来るぜー。あれは元々恋人達のためだけにあるまじないじゃあないからなー。寧ろなかまの結束を促すおまじないだ」

ξ゚听)ξ「……詳しいわね」


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 10:12:36.10 ID:Z7wNtsdk0

(*゚∀゚)「あったり前だろー」

(; ^ω^)「お……」

(*゚∀゚)「なんだよお前ー、どうしたんだよー」

 けらけらと朗らかに笑ってみせる。
 正直、僕はそういう、おまじないだとかいう類の話が得意ではなかった。
 だが周りの四人を伺うと、どうやら皆乗り気のようだ。

 逃げ場 が ない!


(*゚∀゚)「なぁなぁ、やろうぜやろうぜ」

(´・ω・`)「うん、まぁ面白そうだし、いいんじゃないの」

川 ゚ -゚)「おお、私も結構嫌いじゃないぞ。ひとりかくれんぼとか好きだったしな」

ξ゚听)ξ「んー、クーがそういうなら、いいんじゃないの」

(; ^ω^)「あうあう……」


 逃げ場 が ない!


(*゚∀゚)「よっしゃきまりー! じゃあ準備しようぜー」


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 10:19:03.75 ID:Z7wNtsdk0

(*゚∀゚)「知ってたかー? 今伝わってる遣り方じゃあちょっと不完全なんだ」

(´・ω・`)「不完全?」

(*゚∀゚)「そー、紙はただの紙ではなくて、和紙が好ましい。字の色は赤な」

('A`)「和紙? あー、裏に血糊ついてるけど、」


 ドクオがついたてに駆け寄って、張ってあった紙を一枚べりっと剥がす。
 入場者が壁に手を着いたときの質感がどうの、と大道具の高岡が嫌に拘っていたのを思い出した。
 高岡を呪いたくなった。


(*゚∀゚)「お、それいいじゃん! おっけーおっけー」

川 ゚ -゚)「赤か。マッキーでいいかな」

ξ゚听)ξ「書くときに下に何か敷きなさいね」

(´・ω・`)「き、ず、な、っと。書いたよー」

('A`)「よし、んじゃ手置くか」

(*゚∀゚)「あ、その前に鞄もってこいよ。終ったらちゃっちゃと帰ろうぜー」

(; ^ω^)


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 10:21:29.44 ID:Z7wNtsdk0
(; ^ω^)「あうあうあう」

(*゚∀゚)「鞄用意できたかー。そんじゃ皆手ぇ置いてー」

川 ゚ -゚)「置いたぞー」

(´・ω・`)「あれ、ブーン? はやくしなよ」

(; ^ω^)「お、おっお」

ξ゚听)ξ「皆置いたわよ」

(*゚∀゚)「よっしゃー、やるぜー」








「おつなぎさまおつなぎさまおつなぎしてください」









20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 10:22:48.89 ID:Z7wNtsdk0








(*゚∀゚)「おれたちがけっしてこころこわれることのないように!」











01 おつなぎさま



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