( ∵)は( ^ω^)の遊園地にやってきてしまったようです その6

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 01:56:03.05 ID:3XNcivBR0


……勢いで飛び出したけど、これからどうしよう。
とりあえずうろうろして案内係さんを探そうか。

いや、何がおこるかわからないし、体力が回復するまでは休もう。
あわよくば、案内係さんの方から来てくれるかもしれないし。


( ∵)「……ん? 」

その時僕の耳が、しんとした静かな空気の中
何か異様な音を捉えた。

フライパンの裏をおたまで叩いたときの音に近い。
規則的で、でも少しづつ大きく、早くなっていく。

ってことは、近づいてきてる……ってこと?
え?近づいてきてるって、何が?

(;∵)「……」



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 01:57:37.53 ID:3XNcivBR0

あたふたしていると、遠くの方に小さな2つの光を見つけた。
音と比例してどんどん大きくなっていく光。つまり近づいてる。

やばい、なんだか知らないけど逃げたほうがいい。うん、逃げなきゃ。
にg……


思い立ち、ようやく光に背を向けたところで

僕の視界は真っ白になった。

遠のく意識の中で、聞えたのは低くて不気味な男の声。


 「やべえ、また……轢いちまった」





6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 01:59:06.05 ID:3XNcivBR0

うう、なんかここ来てから僕気失いすぎじゃない?

体もボロボロだし、あちこちすり傷だらけで痛いし……

それになんか体中が熱い……

  熱 い 

あつ……いt……ああ、ああああああ!!!!

(;∵)「あっあああああっdさkfsぽあふぇw!! 」


目の前に広がるのは火の海と、充満する蒸気。

その中でしきつめられた大量の石炭から火があがっていて
とっさに身を縮こませるけど、それはもう足元にまで来ている。
やばい。これ、死ぬ。焼け死ぬ。

うう、くるs

「あれ? もしかして生きてる? 」

外から聞えてくる男の声。

(;∵)「いい、いきてます!!! 助けて!!! 」

「今出すから」


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:01:01.97 ID:3XNcivBR0

止め具を外す音がして、重厚な扉がゆっくりと開いた。

と、同時に入ってきたのは、一人の男。
ボロボロの帽子、煤で汚れた顔、細い起きてるか寝ているかという目と
だらしなくぽかんと開けられた口。

そのいかにも冴えない青年は、「よっこらセックス」と呟きながら腰をかがめると
燃え盛る火の中に足を突っ込んだ。

(;∵)「ちょっ、あ、あし! 」

('A`)「足? 」

(;∵)「足が、ごほっ、ひ、火に浸かって……」

('A`)「あぁ、うん」

あれ、もしかしてこの世界の火ってのは熱くないとか?
……いやいや熱いよ! だって今現在進行形で熱いもん!

('A`)「ほら、出て」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:02:42.56 ID:3XNcivBR0

半開きになった扉を、僕が出やすいように少し大きく開けてくれる。

素手で。

……うん、異常に暑さに強い人なのかナー。って事で納得しておく。
どうせここの仕様は僕の知ってる世界のそれとは違うんだから。


(;∵)「ごほっ、はぁっ、はっ、ごほごほっ」

異様に大きな釜(さっきまで僕が入ってた)のある、小さな部屋。
釜から助け出された僕は、その場に倒れむせこんだ。

当たり前。
あんな場所でしばらく倒れてたんだから、煙もすいまくりんぐで、
よく声が出せたもんだ。というかよく生きてたもんだ。

('A`)「いや、すまん。てっきりひき殺しちゃったかと」

男とはいうと、謝罪(主に言い訳)に終始している。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:03:40.74 ID:3XNcivBR0

ぼんやりとした頭に入ってきた説明をまとめると、こう。


その日(というか今日)はとんでもなく何も無い日で
退屈しのぎに全速力で園内を暴走していた。

いつも誰もいないから、その日も当然誰もいないものだと思い
暴走を満喫していたわけだが、その時飛び出してきたのが僕だった。

いつもなら轢き逃げるのだが、今回はそうはいかない。
どうやらこいつは あ の 噂 の ゲストじゃないか。

一旦車内に保護して呼びかけてみたりしたけど反応はない。
やばい。殺ッチャッタなんて知られたら俺がヤられる。(生的な意味で)

 焼 い ち ゃ う しかない。


……と、つまり僕は、証拠隠滅のために焼き殺されようとしてたわけで……。

(;∵)「それより、ここはどこなんですか? 」



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:05:05.03 ID:3XNcivBR0


('A`)「ここは車内。さっきお前を轢いたブーントレインの中だよ」

(;∵)「ブーントレイン? じゃあこれ、電車なんですか? 」

('A`)「汽車。とはいっても普通のそれとはちと仕様が違うけどな」


確かに。

見た目は普通のミニSLだけど、仕様は大きく違うみたい。
だって線路の上走ってないし。
火をこうあれするとこも、普通人が入れる程大きくなかったと思うし。


('A`)「それにしても、久し振りだ。
   こんな風に自分以外の誰かを乗せて園内を走るのはさ」

( ∵)「? 」

('A`)「うん、園に客が来なくなってそれ以来だ」

( ∵)「何でですか? 」

('A`)「ん? 」

( ∵)「いや、だって。おかしいじゃないですか。
    パッタリ客が来ないって、ここは遊園地なんでしょ? 」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:05:53.25 ID:3XNcivBR0

('A`)「そんな事言われても……。
   当たり前になってたから考えもしなかった」


男は困ったような顔をして、帽子の上から頭をかいた。

どうやら、ここは昔からこんなだったわけじゃなくて
以前はちゃんと人が来て、それなりに賑わっていたらしい。

でも今はもう人は来ていない。僕は本当に久し振りのゲスト、らしい。

って事は、ここの世界には遊園地のスタッフ以外にも人がいるんだな。


もういいや。
……どうせわからない事だし、もう考えるのはやめよう。
無駄に疲れるだけだもんな。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:06:38.31 ID:3XNcivBR0

('A`)「ん、それ、スタンプカード? 」

( ∵)「あ、はい。あと1つでビンゴなんですけど。
    ジェットコースターが動かないらしくて」

('A`)「あぁ、ブーンのか。……まぁブーンは……いねぇからなぁ。」

( ∵)「……ブーン?」

('A`)「ブーンだよブーン。
   ジェットコースター、ザ・ブーンの担当でここの園長」

( ∵)「園長? そうなんですか……」(知らなかった)

('A`)「ほら、このスタンプカードのマーク。……これがブーン」

( ∵)「……」


( ^ω^)



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:08:14.95 ID:3XNcivBR0

このにこにこマーク、園長さんの顔だったのか。

( ∵)「そのブーンさんっていうのはどこにいっちゃったんですか? 」

('A`)「さぁ。あの時からいなくなっちまった」

( ∵)「あの時? 」

('A`)「あの時だよ。ほら、えーっと……」

煤だらけの顔を片手で覆って、考え事を始める。


('A`)「うん、なんか忘れたみたい」

しらばくして、思い出すのを諦めたらしく、男はあっけらかんと言った。
自分の園の園長がいなくなったきっかけを忘れちゃうなんて
……ちょっぴり忘れっぽい人なのかナー。あはは……


( ゚∀゚)「なるほどねぇ。忘れたから
     そんな糞野郎の名前を平気で口に出来るんだな、アヒャヒャ」


('A`)「……ん、お前 」

( ∵)「あ、案内係さん……? ですか? 」


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:09:08.40 ID:3XNcivBR0

いつのまにか僕らの後ろに座り込んでいた、見慣れた男。
やたら丈の長いスーツに、すらりと長い背。窮屈そうに腰をかがめている。

パッと見は案内係さんだ、けど。

( ゚∀゚)「よー、ゲスト! ようやく見つけたぜー! ヒャハハハ! 」

目深に被っているシルクハットの下からちらっと見える目。
色が数段薄くなっていて、まるで暗闇のなかにいる犬か猫みたいだ。

それに口調や仕草がまるで違う。
案内係さんなのに案内係さんじゃなくてすごく……不自然です。
でも僕の事をゲスト、というんだからきっと案内係さんなんだろう、うん。


('A`)「そんなことよりもだ、
   お前どういうつもりだよ、園長を糞野郎って」

( ゚∀゚)「糞野郎だから糞野郎って言ったんだよ。ヒャヒャヒャ!
     なんか文句あんのかよ? 」

(;'A`)「あ、え、いや、文句っつーか、
    どういう事なのかを聞いてるんだよ」



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:10:23.37 ID:3XNcivBR0

果敢に食って掛かってるけど、しっかり腰は引けてる。

( ゚∀゚)「悪ぃが俺は居ない奴の悪口を言うのは趣味じゃねぇんだヒャハハ!
     それにあんな人殺しなんか思いだしたくもねーよ」

(#'A`)「ひ、人殺しだと!? 」

男の煤だらけの顔がぐっと怒りに染まる。

( ゚∀゚)「おう、そういやドクオ、お前も園長信者だったっけっか。ヒャハハハ! 」

(#'A`)「ふざけんじゃねぇぞモララー! あれはブーンの責任じゃなk

( ゚∀゚)「ん、思い出したのか。ヒャハハ
     言っとくけど、あいつはもう園長じゃねぇんだぞ。ヒャヒャヒャヒャ! 」

男が怒れば怒るほどに、案内係さんはケラケラと楽しそうに笑う。

僕には話の半分も理解できないけど、案内係さんが
園長さんの事を嫌って(というか憎んで)いる事はよく分かった。

だから、今まで僕に園長さんの事を話してくれなかったんだな。
と妙に納得した。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:11:04.44 ID:3XNcivBR0

( ゚∀゚)「まぁいいや、ところで知ってるか。ドクオ」

(#'A`)「あ? 」

( ゚∀゚)「園の端にあった花壇、あれ無くなってるんだぜ」

('A`)「……それがなn







('A`)「……あれ?
   どこいった、あいつら……」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:13:34.52 ID:3XNcivBR0



( ゚∀゚)「ヒャヒャヒャヒャ! めんどくせーから逃げてきちゃったよ、ゲスト」

(;∵)「……」

( ゚∀゚)「んぁ、なんでボーッとしてんだお前」

(;∵)「案内係さんが急に飛び出したから……吐き気が」

遠くの方に汽車のライトが見える。
僕と案内係さんはというと、それをぼんやりと見ていた。

とは言っても僕は地面で、案内係さんは
きのこの形をした建物の屋根に座って、足をぶらぶらとさせているんだけど。

( ∵)「ところで案内係さん
   それ、どうしちゃったんですか? 」

( ゚∀゚)「何が? 」

( ∵)「その、帽子とか目とか……」

いや、主に聞きたいのは中身の方なんだけど……。

( ゚∀゚)「やー、わかんねぇ。ヒャハハハ
     この帽子被ったらさ、愉快でしかたねーんだ」


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:14:47.94 ID:3XNcivBR0

(;∵)「あ、そ、そうなんですか……」

どうやら、本人も自分がなんで変わってしまったかちゃんと分かってないみたいだ。
というより、変わった事自体イマイチ分かっていないのかな。


イキナリ観覧車につれていかれて、そんでいつのまにか腕の中にいて
汽車に轢かれて燃やされそうになって……

きっとその間に案内係さんにもいろいろあったんだろう。
それに楽しそうだしいいや。愉快だって言ってるし。

( ゚∀゚)「さて、これからどーすんのさゲスト? 」

( ∵)「どう……」

( ゚∀゚)「お前さ、ここから出たいんだよな?
     で、どこ行きたいの? 」

( ∵)「どこって、僕の住んでいた世界っていうか……
   そこに帰りたいんですよ」

( ゚∀゚)「帰りたい? 何で? 」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:15:42.81 ID:3XNcivBR0

(;∵)「な、何で? なんでって、」

案内係さんがきょとんとした表情で僕を見下ろす。

何で、と聞かれても困る。
だって、ここは僕の世界じゃないし、その、ええっと、

( ゚∀゚)「帰って何すんのさ」

( ∵)「何するって……それは 」

改めて、帰って何をするんだろ僕は。
いや、何をするとかじゃない。だって僕には家族とか、友達とかが……

……いたっけ?

カーチャン、トーチャン、可愛いペット、ジーチャン、友達。浮かんでは消えていく顔。
でも、今帰ってその人たちはいるんだろうか。

無性に不安になってきた。


忘れているけど、もしかして僕は


( ゚∀゚)「帰っても一人ぼっちなんじゃねーのか? お前は」



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:17:34.30 ID:3XNcivBR0

後頭部を鈍器でガンとやられたような衝撃。同時に脳内をかけめぐる断片的な映像。


::::( '::)し::「ビ::ーズは一:でも:平気y:ね」::::


:从:゚::::从:「死::ねww:::wwマ:ジd:うぜ:ぇww::ww今か:ら自殺しr:ww::::


:::::゚彡:「うr:せぇん::だよ!!::! ::んざいg:よ!!!消::えてk:れ頼むから!!:


そのどれもが、僕の心臓の音を大きく早くさせる。


( ゚∀゚)「そんなとこ帰って何になるんだ?
     誰もお前を必要としてねぇ。
     誰もお前が帰ってくることを望んじゃいねーんだぞ」


案内係さんが、きのこの建物から地面へ、ひょいと飛び降りて
僕の耳元で呟く。


( ゚∀゚)「だったら、ずっとここにいればいいんだよ」


一段と暗く、低い声で、泣きたくなるくらいに優しく。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:20:39.50 ID:3XNcivBR0

ξ )ξ「う……うう……」

(´<_`;)「ツン、大丈夫か!? 」

ξ゚听)ξ「……大丈夫よ
     ちょっと頭、打っただけだけだから」

(´<_`;)「……」

聞かなくても分かっている。
ずっと観覧車の上から見ていたんだから。

 言い訳をするわけじゃない。でも、助ける間なんて無かった。

は、っとした時にはもうツンは吹っ飛んでいて
案内係の姿はもうそこにはなかったんだから。


(´<_`;)「一体……どうしちゃったんだろうな、アイツ……

       多少横暴な所はあっても
       スタッフに暴力を振るうなんて事はなかったのに」

ξ゚听)ξ「ええ。私にも分からないけど……
      ……とりあえず、全部アンタのせいだからね……」

(´<_`;)「なんだと? 」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 02:21:40.57 ID:3XNcivBR0

ξ゚听)ξ「そうよ。
      そもそもアンタがくだらない計画思いたのが諸悪の根源じゃないの」

(´<_`;)「おいおい、それを言うならお前だって。
       あの時お前が突撃さえしてこなけりゃ目的を聞けたんだぞ」

ξ;゚听)ξ「いや、ちょっと熱くなっちゃってそれは悪かったけど
      それよりアンタ、……目的聞けてなかったの? 」

(´<_`;)「……」

ξ゚听)ξハァ「トコトン使えない男ね。……帰るわ、私」


(´<_`;)「へ、あ、ちょっ、ま、……ツ、」

( ´_ゝ`)「む? ふられたのか? 」

(´<_`;)「いや違う、そんなんzy……って兄者! いつからそこに!? 」

( ´_ゝ`)「最初からだが何か? 俺が鏡を伝えば
       どこへでも行けることを忘れていたのか? はっはっは」

(´<_`;)「流石だな兄者。俺もまさかそんな、ゴンドラの修飾品の
       小さな鏡の中にいるとは思わなかったよ」

( ´_ゝ`)「そんなことより俺らも家かえんない? 」

(´<_` )「そうだな。帰ろうぜ」


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