( ∵)は( ^ω^)の遊園地にやってきてしまったようです その5

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:22:38.81 ID:dwPdmSYV0

震える腕を抑えると、少し汗ばんでいる事に気づく。
自分でも想像していないくらいにこの状況にビビってるみたいで、呆れる。

「その前に下に降りてきてくれないか。そっちの姿もよく見えないし、話しづらいよ」

(´<_`;)「えっ、な、何もするなよ!? 」

「しないよ」

(´<_` )「……」

「しないってば」

(´<_`;)「やっぱダメ」

「うん。まぁいいや。何だい? 質問って」


俺は決意を固めると、ゴンドラの扉を開け
足をかけてっぺんによじ登り、下にいる案内係に向けて出来る限りの声を張った。

(´<_` )「くれぐれも正直に答えろ。お前は何を企んでいる? 」

( ・∀・)「何を? 」

やはりりとぼけるか。

(´<_` )「あの少年を使って、何をしようとしているのかと聞いている」


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:24:59.47 ID:dwPdmSYV0

( ・∀・)「どうしても聞きたい?
       何れ判ることだからさ、内緒にしておきたかったんだけどな」

即答。しかも否定しない。むしろ肯定している。
ふざけた様子で、にやにやと笑うだけ。……少し腹立たしい。

( ・∀・)「僕がしばらくここを空けた時があっただろう? 」

(´<_` )「あぁ」

( ・∀・)「その時、あっちに行って探してたんだ」

(´<_` )「何をだ? この少年をか? 」

( ・∀・)「そういうわけじゃないが、結果的に見つけたのはこの少年だった」

探していたのは少年じゃないが見つけたのは少年。
なんだそりゃ。なぞなぞか?

( ・∀・)「僕は何となく興味を持って、しばらくこの少年と行動を共にした。
      とはいっても一方的なもので
      少年は僕の存在に気づいていなかっただろうけどね」

(´<_` )「何のためにだ」



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:26:10.52 ID:dwPdmSYV0

案内係は俺の言葉に耳を貸す素振りも見せず、勝手に話を進めていく。

( ・∀・)「彼は世間一般に言う、可哀想な子供でね。
       でも唯一無二の支えがあったことで、なんとか絶望に堕ちずにいられていた」

この男の口から世間一般という言葉を聞くと、すごい違和感だ。

( ・∀・)「でも、その支えは断たれた。すると、彼には絶望しか残されていない。
       這い上がる気力も無ければ、それを導く光すらもない。
       僕は思ったね。あぁ、なんてフビンなんだろうって」

(´<_` )「不憫? 」

( ・∀・)「だから彼はここに逃げて来たんだよ、きっとね」

(´<_` )「……さっぱり意味が分からん。
      お前がある目的の為に連れてきたんだろう? 違うのか? 」

( ・∀・)「ある目的? 」

(´<_` )「聞き返すな。それを聞いているんだこっちは」

( ・∀・)「そうだったっけ?
      そもそもボクは最初から目的があったわけじゃないからなぁ。
      それにさっきも言ったけど、僕が連れてきたわけじゃないからね」



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:27:55.55 ID:dwPdmSYV0

(´<_` )「どっちでもいい。その目的とやらを教えろ。じらすな」

( ・∀・)「えぇー、いいけどみんなには秘密だからね。
      特にツン。あれはああ見えて結構おしゃべりだかr……うぉ、」


言い終わるか終わらないか、という時だった。

流れ星の様な一筋の光が走り、案内係を巻き込む。

その光は勢いを保ったままガガガガとすごい音をたて、地面をえぐっていく。


(´<_`;)(な、なんだ……? )

数十メートルほど地面をえぐった後
光と動きは治まって、代わりに灰色の煙がもくもくとたった。

ξ゚听)ξ「つかまえたわよ……ふふ」

( ・∀・)「あいてて……あはは、容赦ないなぁ、ツンは」


壊れた地面の中に倒れこんでいる案内係と、その上に馬乗りになっているツン。

ツンの細くて白い手はしっかりと案内係の首にかかっていて
殺意の様な禍々しいオーラがゆらゆらと漂っている。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:29:33.68 ID:dwPdmSYV0

……すると、さっきのあの光線はツンか。

ξ゚听)ξ「降参する? ごめんなさいって言えばどいてあげてもいいわよ? 」

( ・∀・)「おや、ツン少し太ったんじゃないかい? 重いよ? 」

ξ#゚听)ξ「……」

案内係の一言に、ツンの真っ白い頬がかあっと赤くなる。

(´<_`;)「ツン、なんだか知らんがすこし冷静になれ。まだ何も聞けてないんだ」

ξ#゚听)ξ「知らないわよ! あああっ!! コロス! 殺してやる! 」

太った、っていうのはツンにとって押してはいけないスイッチだったらしい。地雷?
もうこうなるとダメだ。怒りが収まるまで落ち着いて話など出来そうにない。

一旦ゴンドラに戻って……

(´<_`;)「? 」


あれ?


なんで誰もいないんだっけ?



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:30:30.84 ID:dwPdmSYV0


薄暗い部屋、じめじめとした空気、うねうねと動く愛しい腕たち。
紅茶をすすりながらそれらを眺めていると、時間は驚く程早く過ぎていく。

とはいってもこの部屋の時計はどれも錆びて動かなくなっているから
自分がいつからこうやっているかなんて分からないわけだけど。

……そういえば


川д川「ギコが居ない……? 」

さっき久し振りにお客様が来て……その時はいたかしら?
……いた、わよね? ええっと……いた気がするわ。

ううん……思い出せない。いつからいないんだったかしら……

川д川「……ねぇ、ギコを知らない? 」

紅茶を一口含んで、腕に問いかけてみる。

川д川「え? ……案内係と一緒に? ……そう、そうなの」



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:32:07.10 ID:dwPdmSYV0

つまり……案内係についていっちゃったのね……
案内係に……私の可愛いギコが……ギコ……今頃案内係と一緒……
……案内……係さん……案内係とずっと一緒……ずっと……


川*д川「……え、えへへへ、へ……えへへえへ」


「何をニヤついている」


川д川「……! 」

川 ゚ -゚)「何をニヤついているのかと聞いている」

川д川「……クー」


川 ゚ -゚)「……」


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:33:42.01 ID:dwPdmSYV0


川д川「……何かしら、唐突に」

川 ゚ -゚)「いや何、特に用は無いのだが。少し相談事があってな」

川д川「……」

川 ゚ -゚)「これの処理を頼みたい」

川д川「……何、……それ」

川 ゚ -゚)「死体じゃね? 」

クーが死体と言った小脇に抱えているそれは、小さなボロボロの子供だった。
確かにぐったりとしていて、死んでいるようにも見える。


川д川(というか、どっかで見たと思ったらこれ、ゲストじゃない……)

川 ゚ -゚)「む? 」


川д川「……どこで拾ってきたのよ? 」



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:34:56.24 ID:dwPdmSYV0

川 ゚ -゚)「えっとだな、観覧車のあたりに落ちてた」

川д川「……よくわかんないけど。……生きてるよ、これ」

川 ゚ -゚)「そうなの? 」

川д川「いや、息してるし。……眠ってるだけよ。
     確か案内係と一緒にいたはずなんだけど」

川 ゚ -゚)「お前が大好きな案内係と一緒にか? 」

川*д川「……だっ、大好きとかじゃ……」

川 ゚ -゚)「とりあえずこれはここに置いていくぞ」


そういうとクーはぽいっと少年を放り投げた。それらを腕たちが上手いこと捕まえる。


川 ゚ -゚)「おっ、いい子だなぁ良美は」

川д川「腕に勝手に変な名前をつけるなってば……」



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:35:39.91 ID:dwPdmSYV0


体が何か生暖かい感触に包まれている。

何だろう、これ?気持ち悪いような、でもやけに居心地がいい。

春の日本海の、ゆったりとした波にゆられている様な。

そっと手を伸ばして、それの正体を探ってみる。

……濡れてる……この臭いは、血?……

血?誰の?僕の?これなに?爪?指?ってことはこれ、腕?











ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!1!1!!




23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:36:46.40 ID:dwPdmSYV0

振り払おうとしても、まとわり付いてくる腕。
動けば動くほど体の自由は利かなくなっていくけど、何もしないというわけにはいかない。

そうこうしてる間にも腕の数は増えていく。
息が苦しい。なんかもう動けない。指の一本さえも動くことを許されないみたいだ。
てゆうかそろそろ頭がボーっとしてきた。そろそろ僕死ぬなぁ、これ。


川 ゚ -゚)「「おい、なんか良美の動きが活発になってきてるぞ」

川д川「あら……。ご飯あげたばっかりなのに。何でかしら」


……ん、そこに誰か居る?


川 ゚ -゚)「食おうとしてるって事か? 」

川д川「食べるっていうか……取り込むっていうか、説明すると長くなるんだけどね」


……そうそう、説明とかいいからさ。とりあえず助けてください。


川 ゚ -゚)「長くなるならいい。さして興味もないしな。
     それより取り込む≠ニ言ったな?このまま放っておいたらどうなるんだ? 」



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:37:59.83 ID:dwPdmSYV0

川д川「……。一言では言い切れないほど難しいんだけど……。
     簡単に言えば……腕の数が一本増えるわね」

あぁ……そうですか、こ……のまま僕は腕の一部になるわけですか……。

川 ゚ ー゚)「それは是非とも……見てみたい」

……ちょ、……ま、……


川д川「……あら?」

川 ゚ -゚)「む? 」

……


丁度死を覚悟したその瞬間、視界がふわりと浮いた。
宙を舞って高く上がった後、そのまま地面に叩きつけられる僕の体。

( ∵)「あ、いててて……な、なんd」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:39:07.34 ID:dwPdmSYV0

川д川「……うでが、食べたくないって」

川 ゚ -゚)「? 」

川д川「……きらいな あじ だって言ってる」

背中を擦りながら、腕たちを見る。
さっきはあんなにうねうねしてたのに、心なしか元気が無い……?

川д川「……あなた、何があったの? どうしてそんな……――」

言いかけて止める。続きが気になったけど、怖くて促せない。


川д川「……気分が悪いわ。出て行って」

川 ゚ -゚)「おい、顔が青いぞ、大丈夫k」

川д川「出て行って、お願い」

さっきまでと同じようでまるで違う、青ざめた何かに怯えたような表情。


僕は無性に恐ろしくて


状況もなにもわからないまま、逃げるように館を飛び出した。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:41:29.29 ID:dwPdmSYV0


ξ#゚听)ξ「……いい? これが最後のチャンス。
       前言を撤回して土下座なさい。そしてこう言うのよ。

       『ツンさんは空気よりも軽くて、美しく気品に満ち、それでいて最強』とね」

( ・∀・)「長くて覚えらんないよぉ」


ξ#゚听)ξ「……」ググッ

( ・∀・)「アハハハハwww苦しい苦しいwwwもっともっと」

ξ#゚听)ξ「ドMかよ!! 」

( ・∀・)「! ん……? 」

ξ゚听)ξ「な、何よ。急に真面目な顔になっちゃって 」

( ・∀・)「……ニオイが」

鼻をクンクンと鳴らして、キョロキョロとする案内係。
飼い主を探す犬みたいに、少し不安な表情……にも見える。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:42:23.28 ID:dwPdmSYV0

( ・∀・)「ツンどいて。追いかけなきゃいけなくなった」

ξ゚听)ξ「追いかけるってn……」

突然変わった表情と張り詰めた空気に、ツンは困惑した。

――でも、どくわけにはいかない。だってまだ怒りは納まらな……

ξ゚听)ξ「……! 」


がっしりと捕まれた手首があんまり冷たくて、その力の強さにしばらく気が付かなかった。


( ・∀・)「どいて。手首、折れちゃうよ」

ξ;゚听)ξ「……」


――忘れてた。こいつ、人間じゃ……


案内係は、放心するツンの手首を持ったままするりと立ち上がると
にっこりと笑った。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:43:36.81 ID:dwPdmSYV0

( ・∀・)「じゃあ、また後でね」

ξ゚听)ξ「……ちょっ、」


 私がこの園で一番なはずなのに。

 私が

 私がこの園を守るって決めたのに。


ξ゚听)ξ「……弟者!! 」

(´<_`;)「はひ!? 」

ξ゚听)ξ「例のもの! 投げて! 」

(´<_` )「お、おう! 」

( ・∀・)「? 」



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:44:49.35 ID:dwPdmSYV0

黒いなにかがゴンドラの上からくるくると回って、すぽっとツンの手中に収まる。
絹張りで、円筒形の帽子。

( ・∀・)「……シルクハット」

ξ゚ー゚)ξ「形勢逆転かな……? アンタ、これ苦手でしょう? 」

僅かだが、案内係の顔が歪む。動揺しているみたいだ。

ξ゚ー゚)ξ「アンタ、頑なに被りたがらないわよね、コレ
      ねぇ、何でなの? 」

( ・∀・)「……」

ξ゚ー゚)ξ「答えないなら、試してみるしかないわよね」

( ・∀・)「それは……やめといたほうが、いい、よ? 」

ξ゚ー゚)ξ「問答無用……」


少し深めのシルクハットを、目元が隠れるまでかぶせるツン。

案内係は抵抗も暴れもしない。
ただ、そのままの状態でじっとしている。

……悲鳴の一つでもあげてくれたら面白いのに。なんだか……不気味。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/27(金) 02:45:32.65 ID:dwPdmSYV0

ξ゚听)ξ「ちょっと、案内係?」

(  ∀ )「……ヒャ」

ξ゚听)ξ「?」

(  ∀ )「……ヒャヒャヒャ……ヒャ」

ξ゚听)ξ「あんないがk……」

( ゚∀゚)「アヒャヒャヒャ!! 」


暗闇でもハッキリわかる。
さっきまで確かに黒かった瞳が、色素を失ったみたいに色を変えた。


( ゚∀゚)「アヒャヒャヒャ! なんだかしらねーが気分がいいや!
     なんつーか、異常にハイだ! ヒャヒャヒャ! 」

いつもの案内係からは想像できない言動、奇声にも似た哄笑に
ツンはようやく『自分がしてはいけないことをしたのだ』と気づく。



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