(´・ω・`)は狼少年のようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:31:11.93 ID:zT1L7QXv0
まとめサイト様
http://www.geocities.jp/local_boon/shobo_WolfChild/top.html

第四話投下します。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:31:43.25 ID:kPpkjKoq0
ガボ

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:33:02.72 ID:zT1L7QXv0


「オオオォォ――――……ン!」


深夜の街に遠吠えが響く。
その辺の犬がするそれとは違う、力強い野生と気高さを帯びた遠吠えだった。

川 ゚ -゚)『大分慣れてきたようじゃの』
 ∧  ∧
(ミ`・ω・´ミ)「お陰様でね」

遠吠えの主、ショボンは楽しそうに笑った。
大きく裂けた口から白い牙をむき出し、大きな尻尾と尖った耳を立て、
月夜の下にその黒い巨躯を――――、威風堂々たるオオカミの姿へと変わり果てた、その身を晒しながら。









「(´・ω・`)は狼少年のようです」



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:34:22.56 ID:zT1L7QXv0


第四話『POWER』







ショボンがクーと出会ったあの日。
つまり、ショボンが初めてオオカミへとその身を変えたあの日から、既に一ヶ月が経過していた。
その一ヶ月の間、ほぼ毎夜のようにショボンはオオカミへと変身していた。

(´・ω・`)「街中を駆け回るのは序の口」

川 ゚ -゚)『一晩中遠吠えを続けたり』

(´・ω・`)「野犬の群れを叩き伏せたり、深夜たむろってるDQNたちを脅かしたり」

川 ゚ -゚)『あっはっはっはっ!ありゃ最高じゃったのう!』

勿論最初のうちは気味が悪く、何度も抵抗を試みた。
が、その度に例の頭痛に襲われ、結局変身を受け入れざるを得なくなる。
なによりオオカミとして風になる楽しみを知るうちに、恐怖より快楽がショボンを支配していった。
今では寧ろオオカミへと獣化できる夜が待ち遠しく感じる程だ。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:35:37.08 ID:zT1L7QXv0


獣化能力―――オオカミへと変身する能力。

この力がクーによってもたらされたものだと、ショボンが気付いたのは最近のことだった。
今にして思えば初めに彼の中に入ってきた『何か』はクー自身だったのだろう。
ショボンがオオカミへとその姿を変えるときに、彼女の声が頭の中に響くのがよい証拠だ。
なにより初対面のときに彼女は『体を借りる』と言ったではないか。

それよりも分からないのはクーのことだった。
日が沈むと共にどこからともなく姿を現し、朝日が昇る頃にはいつの間にか消えている彼女。
獣化能力といいその行動といい、本当に謎の多い女性だ。
そんな謎だらけの彼女の正体に、ショボンが疑問を持つのは当然のことだった。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:36:48.11 ID:zT1L7QXv0


(´・ω・`)「ねぇクー、聞きたいことがあるんだけど」

川 ゚ -゚)『なんじゃ?スリーサイズなんぞ聞かれても困りんす』

(´・ω・`)「君のことなんだけど……」

川 ゚ -゚)『そういえば初めて変身したときのぬしの腰抜けっぷりには笑えたのう。
     泣きながらもうやめてもうやめて、となどと連呼しおって。
     ぬし、本当に玉は付いておるのかや?』

(´・ω・`)「ぐっ……な、なんだと!」

そしてこのように、その疑問はいつも強引にはぐらかされる結果に終わる。
何度かこのやり取りを経るうちに、ショボンもクーの正体などどうでもよくなってきた。

彼女は獣の力を、自分は体をお互いに差し出す。それで十分だ。
今やオオカミへと獣化して夜の街を跋扈するのは、ショボンの最大の楽しみになっていた。

 ∧  ∧
(ミ`・ω・´ミ)「……アオオオオオォォォォ――――ン!!」

そして今夜もまた、オオカミ少年の夜が始まる。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:38:03.30 ID:zT1L7QXv0


いつものように長い遠吠えを終え、夜の街を走り出すショボン。

 ∧  ∧
(ミ`・ω・´ミ)「でも、流石に一ヶ月も同じ街だと飽きるなぁ」

この一ヶ月、既に彼の住むVIP街は走り尽くした。
走るのは相変わらず楽しいが、さすがに同じ道に同じ風景ともなれば少し味気ない。
どんな豪華な料理でも毎日食べていれば必ず飽きが来る。

 ∧  ∧
(ミ`・ω・´ミ)「……よし、今夜はラウンジ町までいってみよう」

ラウンジ町はVIP町の隣町だ。
隣町といっても人の足で歩いていけば丸一日ほどかかり、中々の距離がある。
しかし、今のショボンの体を運ぶのは「人の足」ではないのだ。

一時間も経たない後、ラウンジ町に巨大なオオカミが姿を現した。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:39:42.01 ID:zT1L7QXv0


 ∧  ∧
(ミ`・ω・´ミ)「……久しぶりだなぁ」

ショボンは以前にもラウンジ町に来たことがあった。
中学生の時の遠足で少し離れたこの町の観光に訪れたのだ。
班行動を密かに抜け出して一人で町を見て回ったことを思い出し、ショボンは苦笑を浮かべた。

あの頃から自分は孤独だった。
自分が孤独になったのはいつからだっただろうか。

 ∧  ∧
(ミ`・ω・´ミ)「……あの時はどこに行ったんだっけな」

記憶の糸を辿り寄せ、以前自分が見て回った場所を再び巡りだす。
市役所、美術館、博物館。
どれもつまらないところばかりだった。
そして、後は――――

 ∧  ∧
(ミ`゚ω゚´ミ)「――――ッ、痛ァッ!!」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:41:18.47 ID:zT1L7QXv0


頭を抱えてしゃがみこむショボン。
アイスピックで頭を貫かれたような鋭い痛みが突然頭に走った。
この頭痛は以前に経験したことがある。
これは、確か……

川 ゚ -゚)『……こっちには、行くでない』

 ∧  ∧
(ミ`・ω・´ミ)「クー!?一体どうして……」

川 ゚ -゚)『黙りんす』

再び走る激しい頭痛に、ショボンは泡を吹いて地面をのた打ち回った。
一体何故?
自分は抵抗するわけでもなく、ただ町を見て回っていただけなのに。

だが、この激痛はその問いを立てかけることすら許してくれそうになかった。
地を這うようにして道を引き返すショボン。
ショボンとて限りある夜の時間を地面とダンスして過ごすのは本意ではない。
なによりこの頭を克ち割りそうなこの痛みから一刻も早く逃れたかった。
よろよろと立ち上がると、ショボンは踵を返して夜の街へと消えていった。


川 ゚ -゚)『……』



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:42:42.68 ID:zT1L7QXv0


早朝。
温かな太陽の光がショボンの部屋に差し込み、一日の始まりを告げる。

(´-ω-`)「ふぁ……、もう朝なのか」

結局昨夜はほとんど活動できず、すぐにベットに潜り込むはめになった。
夜の街を楽しめなかったのは、ショボンにとって非常に残念なことだった。

一体何故クーはあのようなことをしたのだろう。
ラウンジ町の匂いでも気に入らなかったのだろうか。
だがその問いに答えうる人物は日が沈まねば現われない。

(´・ω・`)「……ふぁぁぁ……」

大きな欠伸をかき、のそのそと温もりの残るベットから這い出る。

(´・ω・`)「さて、行きますか」

今日も新たな一日が始まってしまった。
憂鬱で退屈で、つまらない一日が。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:44:13.81 ID:zT1L7QXv0


オオカミに変身するようになってからというものの、ショボンが学校をサボることはめっきりなくなった。
夜の街での快感に比べれば学校でのストレスなど取るに足らない、という理由が一つ。
そしてもう一つはこれだ。

(´-ω-`)「zzz……」

机に突っ伏し、授業そっちのけで惰眠を貪るショボン。
夜は殆ど外を走っているため、その分代わりに昼間の授業で睡眠を取っているのだ。
最初は何度か先生から注意を受けたが、注意が終わった次の瞬間に再び寝息を立て始める
ショボンにあきれ果てたのか、最早注意されることもなくなってしまった。

退屈な講義を行う教師の言葉が心地よい子守唄となり彼をより深い眠りへと誘う。
ショボンにとって昼間の学校など夜のお楽しみに比べたら一片の価値もなかった。


きーんこーんかーんこーん。


(´・ω-`)「……んにゃ。もう授業終わりか」

むくり、と顔をあげるショボン。
気が付くと殆どのクラスメイトが教室から姿を消している。
おそらく更衣室に向かったのだろう。
次は体育の授業だ。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:45:21.89 ID:zT1L7QXv0


場面は変わり、体育館。
今日の体育はバスケットボールだった。
動きやすい体操着に着替えた生徒たちは既にボールを持ち、
準備運動も兼ねてか広い体育館を所狭しと走り回っている。
  _
( ゚∀゚)「うおおおおおっしゃあああああ!!」

( ・∀・)「おおおおおおおるあああぁぁぁぁぁ!!」

雄叫びを上げながらボールを奪い合うのはジョルジュとモララー。
一際気合が入っているこの二人はバスケ部に所属しており、
球技大会や体育でバスケの試合をやる度に空気を読まないワンマンプレーに走る。
そしてミスをした者には容赦なく暴言を吐き掛けるという典型的なDQNである。

ノハ#゚听)「クォォラァァァァ!!さっさと集まらんかお前らァァァァ!!」

やがていつものように体育教師の怒号が響き渡り、その大騒ぎは幕を閉じた。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:46:44.75 ID:zT1L7QXv0


ノパ听)「はーい、じゃあ二人組み作ってー!!」
  _
( ゚∀゚)「おーし、組もうぜモララー!」

( ・∀・)「おーよ」

戦力を均衡させるために実力の近い二人が組みを作り、グーとパーで二チームに別れる。
手間を掛けずにバランスのよいチームが作れる良い方法だが、
この教師は自分の言葉がある種の人間にとっていかに残酷なものかに気付いていなかった。

(´・ω・`)「……」

そう、ショボンのようなぼっちにとって。
組むものがいないために必然的に一人だけ取り残され、
否が応にも自分が孤独であるということを改めて実感させられるのだ。
いくら孤独に慣れていようと、この号令が掛けられたときの気まずさにはいつまでも慣れることはない。

ノパ听)「ん、またショボンは余ったのか。しょうがないな、先生と組むぞ!!」

そしてこのありがた迷惑な気遣いがさらにぼっちの心を傷つけるということにも、
またこの教師は気付いていなかった。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:48:08.88 ID:zT1L7QXv0


組み分けが終わり、それぞれのチームが集まって作戦会議を始める。
ショボンはジュルジュと同じチームになった。
おずおずと自チームの輪に近づくショボンを、チームメイトの露骨な嫌悪の表情が迎える。
  _
( ゚∀゚)「んじゃあ大体こんな感じのフォーメーションで。
     相手チームにはモララーがいる。気合入れて行こうぜ」

('A`)( ^ω^)( ´∀`)「了解」

(´・ω・`)「……あの、僕は?」
  _
( ゚∀゚)「あ?」



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:48:54.81 ID:ax7DnuzBO
つまんね〜の歌〜

はい!

( ^ω^)「つまんね♪」

ξ゚听)ξ「つまんね♪」

('A`)「つまんね♪」

川 ゚ -゚)「つまんね♪」
( ФωФ)「つまんね!!♪」

( ^ω^)「めちゃくちゃ〜♪つまんね〜♪」

ξ゚听)ξ「本当に〜♪」

('A`)「ガチでつまんね〜♪」

( ФωФ)「はい!」

姿慎めよ>>1



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:49:25.24 ID:zT1L7QXv0


(;´・ω・`)「……あ、う、ごめん」
  _
( ゚∀゚)「オメーはすっこんでろ。ボール拾ったら俺によこせ。
     邪魔だけはすんじゃねーぞ」

(´・ω・`)「……うん」

ドリブルをすればボールをこぼし、パスをすればカットされ、シュートを打てばリングにすら当たらない。
そんな典型的な運動音痴のショボンが同じチームにいること自体、ジュルジュにとっては鼻持ちならないのだろう。
各自がジュルジュの仕切り通りのポジションに付き、けたたましい笛の音が鳴り響く。

試合開始だ。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:50:30.43 ID:zT1L7QXv0

  _
( ゚∀゚)「おおおおおおっしゃあ!!」

先手必勝とばかりにジャンプボールを制し、早速暴走するジョルジュ。
単身相手コートに切り込み、すかさず先制シュートを決める。
単なる自信過剰ではなく、流石に上手い。

( ・∀・)「負けっかよ」

負けじと特攻をかけて点を奪い返すモララー。
こちらもバスケ部所属という名に恥じない良い動きだ。
試合開始から一分経たずにコートは二人の独壇場となっていた。

(´・ω・`)「……」

それをコートの端からじっと見つめるショボン。
二人の邪魔をすれば後で何を言われるか分からない。
時折ボールが来ない位置まで動くだけで、あとはひたすらボールが来ないように祈るだけだ。
いつもどおり、蚊帳の外にいるだけだ。

バスケの試合に限ったことではない。
いつだって世界は、自分と関わりの無いところで動いていく。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:51:54.29 ID:zT1L7QXv0


いつものように他人事のように自分の試合を観戦に興じるショボン。
それが彼の決められたポジションである。
……だが。

(´・ω・`)「……あれ?」

何かがおかしかった。
どこか、いつもと違う。

ジュルジュとモララーの動きは相変わらず目を見張るものがある。
彼らの動きに他の生徒は全くついていけていない。
でも。

(´・ω・`)(……あいつら、こんなに遅かったっけ?)



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:53:10.79 ID:Q2BZJB+80
私怨


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:53:18.25 ID:zT1L7QXv0


そう、ショボンには彼らの動きがはっきり見えていた。
曲芸のような華麗なドリブル、他を寄せ付けない完璧なフェイント。
だが、彼らの手と足のわずかな動作からその全てが容易に予測できる。
あの程度の動き……獣の俊敏性に比べたら止まっているようなものだ。
いつの間に彼らはこんなに下手になったんだ?

そして、その困惑がショボンに一瞬の呆けを与えた。
  _
( ゚∀゚)「ショボン、ボール行ったぞォッ!!」

(´・ω・`)「!!」

我に返ると、目の前に飛来するボール。
ばし、とボールをキャッチしてしまう。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:53:40.09 ID:2GF/j0PL0
支援

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:55:29.54 ID:zT1L7QXv0


どうする、どうする。ボールを持ってしまった。
思わずうろたえるショボンに早くもチェックを掛けるモララー。

( ・∀・)「へへっ、ラッキー。ボール頂きー」
  _
( ゚∀゚)「パスだ!早く俺にパスしろ!!」

そう、パスだ。
モララーに奪われる前にジュルジュにパスを通し、再び傍観に徹するべきだ。

それが、自分。
それがぼっちであるショボンとしてすべきこと。
今までだってそうだったし、これからもそうするべきなのだ。


……それで、いいのか。本当に?


一瞬の逡巡。
どくん、と心臓が高鳴る。
体の中に獣の血が巡った気がした。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:56:27.96 ID:zT1L7QXv0


( ・∀・)(こいつはもらった!)

ショボンはこのクラスでも一番のウスノロだ。
加えて棒立ちとくれば、目をつぶっていてもボールをスティール出来る自信がモララーにはあった。

( ・∀・)「おらっ!!」

モララーの素早い手捌きが無防備なショボンの手からボールを奪い取る。
そして前方に駆け出そうとして、

( ・∀・)「……へ?」

自分がボールを持っていないことに気付いた。

(´・ω・`)「遅すぎるよ」

( ・∀・)「……なっ!?」

ショボンの捨て台詞に振り返るモララー。
ようやく自分が抜かれたことに彼が気付いたとき、既にショボンはそこにいなかった。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:57:43.95 ID:zT1L7QXv0


一体自分は何をやっているんだ?
敵コートへと疾走しながらショボンは自問自答する。
あのジュルジュの指示を無視して、こともあろうに単騎掛けで敵コートに乗り込むなんて。

(´・ω・`)(そんな……、そんなこと、僕に出来るわけが――――)

(´・ω・`)(出来るさ)

もう一人の自分が囁く。
こいつらは鈍い。自分は速い。
こいつらには見えていない。自分には見えている。

彼の中のオオカミが牙を剥き出す。

――――さぁ、何を躊躇う必要がある?



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:58:45.38 ID:oCDvQTvdO
支援

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/19(木) 23:59:18.79 ID:zT1L7QXv0


彼の目の前に敵チームが立ちふさがる。ゴールまでの障害は四人。
後ろでジュルジュが何か喚いているが、蚊ほども気にもならない。
そして―――、ショボンの内に宿るオオカミが目覚める。

(´・ω・`)「出来る」

目にも留まらぬ神速のハンドリング。一人。

(´・ω・`)「出来る」

右、左、右。軽やかなフィント。二人。

(`・ω・´)「……出来るッ!」

獣のごときしなやかなステップ、身を屈めてターン。三人。残りはゴール前に一人。

(`・ω・´)「おおおおおおおおっ!!」

力強い蹴り足、驚異的な跳躍。
あんぐりと口を開けた相手の間抜け面が一瞬視界に入る。
ごっ、とボールをリングへと叩き込む。
震えるリング、揺れるリングネット。ダンク・シュート。

一瞬の静寂の後。

ドッ、と大きな歓声が沸きあがった。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:00:11.45 ID:EV2N9EhSO
支援

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:00:56.58 ID:DkaO5nUI0


ノパ听)「試合終了!50対16でジュルジュチームの勝ち!」

終わってみれば圧倒的大差での勝利。
そして得点の大半はショボンによるものだった。

( ^ω^)「ショボン凄いお!あんなにバスケ上手かったのかお!」

(´・ω・`)「え、いや、偶然だよ……」

('A`)「あんなの偶然で出来るかよ……」

( ´∀`)「そうだモナー。あれは本当に凄かったモナー」

クラスメイトに取り囲まれるという未曾有の出来事にあい、ショボンは困惑気味の対応しか出来なかった。
普段なら絶対に話しかけてこないようなクラスメイトに持て囃されることなど、
一時間前までのショボンには全くもって予想できない出来事だっただろう。
ショボンの活躍はそれほど神懸かったものだったのだ。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:04:15.69 ID:DkaO5nUI0


( ^ω^)「僕のブーンより速かったお!あれなら空も飛べそうな気がするお!」

空気を読めずに普通にショボンに接するブーンの存在も、
ショボンとクラスメイトの距離を縮める手伝いになっていた。

('A`)「相変わらずブーンはウンチだったじゃねーか。ボール顔面にぶつけて鼻血とかどこのコントだよ」

(;^ω^)「うるさいお!僕はドジっ子属性なんだお!」

( ´∀`)「折角の属性もお前じゃ萌えんモナー」

(ヽ'ω`)「みんな酷いお。ブーンは心に大きな傷を負ったお」

(´・ω・`)「……あははっ」

クラスメイトの冗談に失笑を漏らすショボン。

(#・∀・)「……クソッ!!」
  _
(;゚∀゚)「……なんだよ、アイツ……
     ……ふざけやがって……!!」

体育館の片隅でぼやくジュルジュとモララー。
憎々しげな視線の先には、皆に囲まれる今日のヒーローの姿があった。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:06:00.99 ID:DkaO5nUI0


( ^ω^)「ショボンー!これから暇かお?」

放課後。
いつものように手早く帰り支度をすませたショボンにブーンが話しかけてきた。

( ^ω^)「これから皆で遊びにいくお!ショボンも来ないかお?」

例によって遊びに誘ってくるブーン。
昨日までのショボンならば即座に断っただろう。


……だが、今日なら?
あれだけの活躍を見せ、皆に話しかけられた……今日ならば。
湧き上がる薄い期待。これまで抑圧してきた願い。


ちら、とクラスメイトたちを見る。

('A`)( ´∀`)「……」



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:06:57.11 ID:EV2N9EhSO
支援

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:07:16.28 ID:DkaO5nUI0


(´・ω・`)(……そう、だよな)

自分が甘かった。
たかがバスケで活躍した程度で……自分が迎え入れてもらえるはずがない。
諦めにも似た悲哀の表情を浮かべ、断りの言葉を口にしようとした。

その時。

('A`)「……ショボンも、来るか?」

( ´∀`)「……どうモナ?」

(´・ω・`)「……!」

一瞬の躊躇い。
そして、再び返事を紡ぎ出すためにゆっくりを口を動かし。

(´・ω・`)「……うん、じゃあ行こうかな」

( ^ω^)「やったおー!それじゃあ早くいくお!!」

(´・ω・`)「こ、こら、引っ張るな」

強引に彼を引っ張るブーンに抵抗するショボン。
だが、その困惑気味の顔には……微かな笑みが含まれていた。
長年手に入れられなかったものをようやく手に入れた、微かな笑みが。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:07:42.79 ID:PQzHwVyC0
('A`)( ´∀`)「支援」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:08:19.17 ID:DkaO5nUI0


*
  *


五月蝿い人間たち。
癪に障る部屋。
変化の無い日々。
クーは自分を取り巻く全ての環境が嫌いだった。
ふと、何かを感じ取ったように顔を上げる。
どこか悲哀を帯びたその双眸を薄っすらと細め、呟く。



川 ゚ -゚)『……意外と早かったの』



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:08:40.93 ID:CJeyCsbK0
支援

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:09:47.04 ID:DkaO5nUI0


第四話『POWER』Fin

キーワード「「そっちには行くな」、体育の授業、呟き」





37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:11:55.93 ID:DkaO5nUI0
支援してくれた人、読んでくれた人、ありがとうございました。
次回の投下予定は日曜夜です。
少し大学のレポートがやば気なんで、もしかしたら二三日遅れるかも。
よかったらまたお付き合いください。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:12:16.43 ID:CJeyCsbK0


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 00:12:21.89 ID:EV2N9EhSO


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