以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:21:29.62 ID:zzAEvP3X0<> まとめサイト
内藤エスカルゴ
http://www.geocities.jp/local_boon/shobo_WolfChild/top.html
第三話投下します。 <>(´・ω・`)は狼少年のようです
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:22:33.91 ID:zzAEvP3X0<>
僕は普通になりたかった。
けど、それは叶わない願いだった。
何故かは知らない。
ただ、初めからそうゆう風に出来てたんだ。
だから僕は普通でいることを諦めた。
………でも、僕はただ。ただ、普通になりたかっただけなんだ。
それのどこがいけない?
「(´・ω・`)は狼少年のようです」
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:23:42.44 ID:zzAEvP3X0<>
第三話『RUN』
川 ゚ -゚)「なんのことじゃ?」
草木も眠る丑三つ時。
殆どの人間は布団の中で睡眠という名の束の休息を取っている時間帯である。
そんな時間であるにも関わらず、ある廃ビルの屋上には二つの人影があった。
(´・ω・`)「……だから、あんたは誰なんだよ?」
一人はショボン。
普段は感情を表に出さないこの少年だが、
唐突に現れた謎の人物に流石に不信感を顕にしている。
川 ゚ -゚)「誰か、じゃと?」
そしてもう一人はショボンに問い詰められる女性。
その端正な唇の両端を吊り上げ、質問を返す。
川 ゚ ー゚)「その前に……ぬしこそ自分が誰か知っておるのか、ショボンよ?」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:24:56.04 ID:zzAEvP3X0<>
(´・ω・`)「……はい?」
一体なにを言い出すんだ、この女性は?
大体なんで僕の名前を知っているんだ。
僕なら自分のことをよく知っている。
僕はショボン。VIP高校の生徒で、クラスの爪弾き者。
友達はいなくて、いつも一人で、毎日退屈で……そして……
………
……それで?
……それだけ、なのか?
僕を形容する言葉は、たったそれだけしかないのか?
自分が誰なのか。そんなこと考えたこともなかった。
思いもよらぬ問いにショボンは言葉を濁らせた。
川 ゚ -゚)「ふふ、まぁ良い。ぬしの質問に答えてなかったの。
わっちのことは、そうじゃのう……クーと呼んでくりゃれ。
よろしくの、相棒」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:26:55.77 ID:zzAEvP3X0<>
そう言うと、クーとは笑みを浮かべてショボンの肩に手をおいた。
一方のショボンといえば、頭の中が疑問で一杯で今にも破裂しそうだった。
クー、と名乗ったこの女性。
何故こんな時間に、こんなところに?
何故僕の名前を知っている?
何故、何故……
いや、その前に。
(´・ω・`)「……え、今なんて」
川 ゚ -゚)「わっちゃあクーじゃ」
(´・ω・`)「いや、その後の」
川 ゚ -゚)「よろしくな、相棒と」
(´・ω・`)「……相、棒?」
全くもって訳が分からない。
一体こいつはなにがしたいんだ?
これ以上疑問符が増えたら、本当に頭が破裂しそうだった。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:29:16.73 ID:zzAEvP3X0<>
川 ゚ -゚)「そう、相棒じゃ。わっちが誰かなんぞ取るに足らんことだかや。
わっちがここに来たのはぬしに頼みたいことがあったからじゃ」
(´・ω・`)「……頼みたいこと?」
川 ゚ -゚)「うむ。単刀直入に言うとな、ぬしの体を貸して欲しい。
いや、借りる。無理やりにでもの」
逃げよう。ショボンはそう思った。
これ以上何かを考えても埒があかない。
このクーとかいう女は完全にイカれている。
これ以上この女の近くにいるのは明らかに得策ではない。
そして出来れば警察に行って、この不審者のことを通報しよう。
(´・ω・`)「いや、僕はそろそろ帰……」
ショボンの言葉を遮る様に、素早く出されたクーの手が彼の頭に触れた。
途端。ショボンは身動きが取れなくなった。
押さえつけられたり掴まれてるわけではなく、ただ触れられているだけなのに、だ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:31:37.54 ID:zzAEvP3X0<>
(´・ω・`)「なっ……!」
川 ゚ -゚)「じっとしていてくりゃれ」
動けないだけではない。
ずず、と何かが頭の中に入ってくる感触。
クーの掌が当てられた部分を中心に、頭、首、胸、と、どんどんとその感触は広がる。
初めて経験する言い表しがたい感覚に、ショボンは恐怖を覚えた。
自分の中に、何かが入ってくる。
(´゚ω゚`)「な、なん……これ……っ!」
やめろ、やめろ、やめろやめろやめろやめろやめろやめろ。
僕に触るな僕に近寄るな僕から離れろ僕から出て行け。
来るな来るな来るな来るな来るな来る
川 ゚ -゚)「じっとしていてくりゃれ、と言っておろう」
(´゚ω゚`)「がああああああああっ!!」
瞬間、鋭い頭痛がショボンを襲った。
何本ものアイスピックに頭が貫かれたような、激しい頭痛。
川 ゚ -゚)「抵抗しなければ痛みはせん」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<>age<>2007/07/15(日) 22:32:22.86 ID:kIWeknwFP<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:33:30.65 ID:wE/SKn/zO<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:33:40.80 ID:zzAEvP3X0<>
体は動かず、抵抗すれば原因不明の痛みに襲われる。
最早ショボンにはクーの言葉に従う他に道はなかった。
ぐったりと体の力を抜き、なすがままに入ってくる『何か』を受け入れる。
(´-ω-`)(……んあ?)
ふと、ショボンはあることに気づいた。
体の節々が異様に熱を持っているのだ。
『何か』が体に充満するに連れて、体が熱を帯びていくのを感じる。
やがて熱は痺れへと変わり、痺れは全身を支配してゆく。
体の機能が麻痺し、息が吸い込めず呼吸が苦しくなる。
(´-ω-`)「……死ぬ……のか……、……僕は……」
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:36:36.20 ID:zzAEvP3X0<>
先程とは打って変わり、ショボンの頭の中はスッキリしていた。
己の体に決定的な異変が起こっているのを冷静に受け止めていた。
ごき、という音と共に、腕が骨ごと折れる感覚。
それに続くように全身の骨がぼきぼきと鳴り、ショボンの体は壊れていく。
不思議と今度は痛みは感じなかった。代わりに意識が薄れ掛けてきている。
川 ゚ ー゚)「何をいっちょる。ぬしは死にゃせん」
ニッ、と薄っすらと笑みを浮かべるクーの顔がぼんやりと見える。
目も霞んできているようだった。
川 ゚ ー゚)「ぬしは、生まれ変わるんじゃ」
ショボンの意識はそこで完全に途切れた。
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:38:00.25 ID:zzAEvP3X0<>
*
*
川 ゚ -゚)『おい、起きぬか』
(´-ω-`;)「……う……」
川 ゚ -゚)『こりゃ、起きぬか!』
(´・ω-`)「……へ?」
川 ゚ -゚)『ぬしは雄のくせにだらしないのう。全く困りんす。
ほれ、さっさと立たぬか』
クーに促されるままゆっくりと体を起こそうとする。
何度も転びそうになり、なんとか四つん這いで立ち上がった。
妙に動きにくかった。まるで他の体に乗り移ったようだ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:39:32.67 ID:zzAEvP3X0<>
自分はまだ生きている。
ぼんやりとした意識の中、ショボンはそれだけは理解した。
川 ゚ -゚)『それではゆくとするか』
(´・ω・`)「……いくって、どこへ?」
川 ゚ -゚)『そんなもの決まっておろう』
気が付けばショボンは廃ビルの屋上の縁に立ち、地面を見下ろしていた。
下は見るだけで目眩がする高さだ。
ここから落ちれば、人間などひとたまりもない。
熟れ過ぎてぐしゃぐしゃに潰れたトマトのように、無残な亡骸を地面に転がすことになるだろう。
そして、そんなことを考える自分の意思とは裏腹に。
川 ゚ -゚)『夜の散歩にじゃ!』
(´゚ω゚`)「ちょ……うわあああああああああああ!!」
ショボンの体は勢いよく屋上から飛び降りていた。
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:42:45.10 ID:zzAEvP3X0<>
屋上から飛び出したショボンは、当然引力という名の枷に捕まる。
当然その体は地面に向かい、次に重力という名の鎖に物凄い勢いで引き寄せられる。
そして最後に待ち受けるのは死という名の地面であり、
真っ逆さまに落下したショボンは当然のように
(´゚ω゚`)「……ぁぁぁぁあああああああああああ!!」
すとん、と華麗な着地を決めた。
(´-ω-`)「……!!」
(´・ω-`)「………」
(´・ω・`)「……あれ?」
これがオリンピックの会場であれば、会場総立ちで拍手喝采が送られていただろう。
そのくらい見事な着地。
あの高さから落ちたというのに、さも当たり前のように着地した自分。
有り得なかった。
廃棄されていたとはいえ、腐ってもビルから飛び降りたのだ。
どれだけ上手くやっても大怪我は免れない高さだったのに。
かすり傷一つ負っていないなんて、奇跡という言葉ですら物足りない。
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:44:22.56 ID:zzAEvP3X0<>
川 ゚ -゚)『何をボケっとしちょる、ショボン』
(´・ω・`)「え、でも、僕……」
そういえばさっきから声は聞こえるのにクーの姿が見えない。
周囲を見回すが、どこにも彼女はいなかった。
相変わらず分からないことだらけだ。
川 ゚ -゚)『さっきも言ったろう、夜の散歩じゃ!』
まただ。
また自分の意思とは関係なく勝手に体が動き出す。
一歩、一歩、また一歩。足が動く。
最初はゆっくりとした歩みだったそれは小走りへと変わり、やがて全力での疾走になった。
思い切り心地よい夜風を切り、周囲の景色がびゅんびゅん後ろに流れていく。
戸惑いがちだったショボンも、次第に走りのもたらす不思議な快感に飲まれていく。
全力疾走の楽しさなど、運動音痴である彼にとって初めての経験であった。
(´・ω・`)「うわ……すっごい気持ちいい……!」
川 ゚ -゚)『そうだ、楽しめ!
足を動かし、風を身に受け―――、全てを追い抜くこの感覚を!』
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:46:33.56 ID:zzAEvP3X0<>
(`・ω・´)「イ―――――ヤッホォゥ!!」
今やショボンは完全に風と一体になっていた。
否、その速度は既に風以上だった。
両手で地面を掴み込み、力強い蹴り足で己の体を前に蹴りだす。
その単純作業がたまらなく楽しかった。
それだけで何もかもが視界から消えていく。
人を消し、建物を消し、全てを消していく。
車を追い抜いてやったときのあの運転手の顔と来たら、
思い出すだけで笑いが込み上げてくる。
何もかも分からないことだらけだった。
クーが何者なのかも、ビルから落ちて怪我一つないことも、
いつの間にか自分が四本足で走っていることも。
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:47:55.09 ID:44SMmXJs0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:48:26.46 ID:zzAEvP3X0<>
だが、既にそれはどうでも良くなっていた。
今大切なのは唯一つ。
(`・ω・´)「速く速く速く……、もっと速くッ!!」
川 ゚ ー゚)『あっはっはっはっはっ!!
最高……やはり走るのは最高じゃっ!!』
車を抜き、風を抜き、音を抜き、光をも追い抜く。
それでもショボンの手足は疲れることを知らず、さらなる走りを彼に求める。
これほど満たされた気分はいつ以来だろう。
いや、こんな最高なのは初めてだ。
今までの人生の中で味わったことない程の
素晴らしい高揚感を感じながら、ショボンは全てを走り抜けた。
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:51:15.86 ID:zzAEvP3X0<>
(´・ω・`)「はぁっ、はっ、はぁ―――」
ショボンの住むVIP街からかなり外れた湖。
何時間走ったのだろう。時間を忘れるくらいの楽しさだった。
流石に疲れたのか、ショボンは体を休めるため湖の畔に座っていた。
川 ゚ -゚)『どうじゃ、走るのは楽しいじゃろう』
(´・ω・`)「はっ、はぁ……うん。
こんなに気持ちいいなんて知らなかったよ」
舌を突き出し、ぜいぜいと乱れた呼吸を整えながらショボンは答えた。
そういえばクーがどこの誰なのかはまだ聞いてなかったが、彼女には感謝せねばなるまい。
腐った毎日を送っていた自分に、走りという至高の喜びを教えてくれたのだから。
……そうだ、彼女はどこにいるんだ。
そもそもあのスピードで走っていた自分にどうやってついてきたのか?
相変わらず声は聞こえども、姿は見えないままだ。
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:52:29.54 ID:zzAEvP3X0<>
彼女のことも気になったが、それよりも今は体の欲求に答えてやりたかった。
呼吸を整え終え、ぐったりと横たわると喉が渇いてきた。
あれだけ激しい運動をしたのだ、喉が渇かない訳がない。
(´・ω・`)「はっ、ふぅー……。み、水が飲みたい……」
丁度目の前には湖がある。
普通ならこんな汚れた水など絶対に飲みたくないが、今はそれより喉が潤いを求めていた。
湖の側により、手で水を救おうとする。しかしその試みは何故か失敗した。
(´・ω・`)「……?」
再び両手で水を救い上げるも、すぐにそれは湖へと零れ落ちてしまう。
仕方なく身を乗り出して直接口をつけて飲もうとする。
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:53:36.60 ID:zzAEvP3X0<>
今夜は満月だった。
満月は太陽光を反射し、昼間のごとく地上を照らし出す。
そして月光は湖にも降り注ぎ、そこに反射する景色を映し出す。
優しく降り注ぐ月光の下、ショボンは湖に映る自分の姿を見た。
(´・ω・`)「――――、え」
即ち、黒く、巨大なオオカミの姿を。
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:54:30.21 ID:zzAEvP3X0<>
第三話『RUN』fin
キーワード「獣への覚醒、爽快」
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 22:58:25.62 ID:zzAEvP3X0<> 支援してくださった人たち、ありがとうございました。
次の投下予定は木曜です。
よければまたお付き合いください。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 23:00:22.42 ID:wE/SKn/zO<> 乙 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 23:01:21.37 ID:44SMmXJs0<> 乙 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 23:06:37.01 ID:iPEUniLoO<> >>1
乙 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/15(日) 23:16:41.69 ID:ZM+xmZ660<> 今まとめで呼んできた
これから読む乙 <>