†吸血鬼ハンター川 ゚ -゚)のようです
- 1 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:01:28.83 ID:3bq8FzGU0
- ※注意書き
このブーン系小説「†吸血鬼ハンター川 ゚ -゚)のようです」は原作「吸血鬼ハンターD 妖殺行」を元にして書いています。
映画版と小説版の両方を参考にしながら書いていきますが、参考というか、もうそのまんまの部分が多々あります。
あと、この作品のクーは「男」です。
クーが男とかマジ許せん!氏ね!という人は読まないほうがいいです・・・。
努力してオリジナルの展開を入れていくつもりですが、上記を踏まえて読んでいただけると幸いです。
- 2 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:02:41.49 ID:3bq8FzGU0
- ※†主な登場人物
「吸血鬼ハンター」
川 ゚ -゚)
名前:クー 性別:男性 種族:ダンピール
伝説の吸血鬼ハンターと呼ばれ、彼の経歴、出身地などその素性は一切不明。
貴族(吸血鬼)と人間のハーフ、ダンピールである。
とてつもない美貌の持ち主で、彼を見たものは男女を問わず、彼の虜になってしまう。
その一見華奢に見える体も、実は鋼のように鍛えられており、
剣の腕も超一流で、彼の剣に切れぬものはないとさえいわれる。
無口な性格で、人と交わす会話は必要最低限のもののみである。
('A`)
名前:左手(ドクオ) 性別:男性? 種族:寄生体
クーの左手に寄生する謎の生物。
その顔は非常に醜いもので、直視するに堪えない。
いつもクーに無駄口を叩き、握りつぶされている。
たまに左手の存在を知らない人間に、クーの声真似をして悪戯したりする。
様々な特殊能力を持ち、クーをアシストする。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 08:03:27.35 ID:vDnDoLX90
- //二ヽ\_ヽ_\ \_
/ { (イ⌒ ̄ヘへヽ、 `ー─- 、
/ // \`ー ヾ \ へー-、 `二ー-、
/ / ハ 「 ヽ、 、 \ \へ `ヽゝ
/ ノ / /´ \ \ ヽ ヽ 、 ヽ \\ } }
/イ / / / ,| ヽ ヘ、 ヽ } ヘ l ヽ ト、 \イ ノ
,/ / / / l | l ヽ 、\ }_ェl,,ュ_l_ l ハ l \ `゙ ヽ
/ / / l l l | l ト、\_ヽ´lノ イ `/l _lヘ_l_ ヽヘ \
,/ l / l l l l | ,.k | `ー-ゝソ r _,.= ._ ソyハヽ`Y }ヽ 、 }、
| l l l l l l ヘイ ゝノ ≠" ̄`゙ |l l人 } l l }/丿 クソスレ
| i | トヘゝ ト、 rメ r _二_ 〃〃 |l l lイ / / /
| l l l \j、ゝィ'、 ≠ ̄` 丶 . - =y、 ノj} l l | ∧{ /
ヘ ハ 、l l / /|ハ ′〃 , ´ l ハノ lリ lヘ(
トイl l {八l| ヘゝ く / // / ィ l丿 Y
| l l l\| l "、 丶._ / /ィ イ´ノノ
| ヘ ヽ ハルァl ヽヘ、  ̄ / |从/
l ヘY 、ヽ_ル‐-、廴_≧==ェ-、-イ |
∨ヘ ト'/ ‐、: : l`ヽ二トミーニ._二 | __
\ベ/ : : :\: l \ `゙´ ̄~ ̄. :/
`゙/ : : : : : : : l \ \ .,,_.: : : : : /
/´ : : : : : : : : : | ヽ、ヽ ー=: : /`ー--‐、
/ /: : : : : : : : : :l \ / イ `)\: : : }
/゙/: : : : : : : /l: : : : :| ∨ メ、ヘ : :|
/ : : : : : : :): }: : : / /´/ヘハ: :l
‐'´ : : : : : : : : : : l: / l lο: \ : {
: : : : : : : : : : : : l | |:. :. ゙l: `l
\ : : : : : : : : : : : : :{ l l:. :. | : : \
/\ : : : : : : : : : : : : : : :| \ \:. . / : : : : |
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 08:04:43.34 ID:3bq8FzGU0
- 『マーカス兄弟』
五人の兄弟からなる吸血鬼ハンターで、辺境一とも言われる凄腕の吸血鬼ハンター。
しかし、残虐非道なやり口、同じ依頼にあたった同業者の排除など、黒い噂は絶えない。
十字架のデザインが所々に見られる装甲車に乗って移動する。
装甲車の中には生活に必要な資材がそろっており、三男のブーンのためにベッドも設置してある。
( ゚Д゚)
名前:ギコ=マーカス 性別:男性 種族:人間
マーカス兄弟の長男。
浅黒い色の肌に、黒の短髪、鋭い目つき、筋肉質で傷だらけの体。
野性味溢れるその見た目からは、彼が百戦錬磨の男という印象を受ける。
得意武器はボウガンで、遥か遠くの目標物でも正確に射抜ける技量を持つ。
弟思いで、兄弟の全員を可愛く思っている。
特に、生まれつき病弱である三男のブーンのことは一番大事にしている。
(´・ω・`)
名前:ショボン=マーカス 性別:男性 種族:人間
マーカス兄弟の次男。
ハノ字眉毛と見上げるほどの巨体が特徴。
ハゲ。
得意武器は何百キロはあるかというハンマーで、彼はそれを軽々と使いこなす。
正確は冷静沈着で、兄弟の中では一番の常識人。
兄弟の野蛮な素行を目にすると説教を始める。
(ヽ´ω`)
名前:ブーン=マーカス 性別:男性 種族:人間
マーカス兄弟の三男。
白髪で、痩せこけた生気のない顔つきをしている。
生まれつき病弱で、一日のほとんどをベッドの上で過ごしている。
- 5 名前:第四話 ◇v6MCRzPb66:2009/05/23(土) 08:06:22.73 ID:3bq8FzGU0
- ( ・∀・)
名前:モララー=マーカス 性別:男性 種族:人間
マーカス兄弟の四男。
小柄ながらも、鍛えられたその体は、細くはあるが鋼のような筋肉に覆われている。
お調子者の性格で、いつも一言多い。
得意武器は手裏剣を大きくしたような刃物で、ブーメランのように投げたりすることもできる。
目にも留まらぬスピードで動くことができる。
ξ゚听)ξ
名前:ツン=マーカス 性別:女性 種族:人間
マーカス兄弟の長女で末っ子。
美しい巻き毛の金髪で、全身赤のバトルスーツを纏っている。
女性ながら戦闘能力は高く、強力な衝撃弾を発射する巨大な重力銃を軽々と扱う。
車両、重火器の扱いに長けており、女性であるというハンデを感じさせない。
††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
- 6 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:07:42.95 ID:3bq8FzGU0
- 「一般人」
( ФωФ)
名前:ロマネスク=エルバーン 性別:男性 種族:人間
電動車椅子に腰掛けた老人。
とある町の町長である。
デレの父親であり、クーにデレを取り戻してもらうよう依頼した。
(’e’)
名前:セントジョーンズ=エルバーン 性別:男性 種族:人間
エルバーン家の長男。
クーとマーカス兄弟にデレを取り戻してもらうよう依頼した。
ζ(゚―゚*ζ
名前:デレ=エルバーン 性別:女性 種族:人間
エルバーン家の長女。
貴族にさらわれた。
ロマネスクによると、その人柄は「誰にでも優しく接し、慈悲深い姿はさながら聖母のようである」という。
††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
「貴族」
( ´∀`)
名前:モナエルリンク 性別:男性 種族:吸血鬼
デレを攫った恐るべき力を持つ貴族。
しかし、噂によると彼は決して人には牙を向けないらしいが・・・?
- 7 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:09:11.05 ID:3bq8FzGU0
- ※前回までのあらすじ
遥か遠い未来。
貴族と呼ばれる吸血鬼達の存在に怯えながらも、
貴族の支配から解き放たれた人々は徐々にかつての生活を取り戻していた。
しかし、貴族の脅威は未だ完全には去っておらず、その脅威を取り除くため、人々は吸血鬼ハンターの誕生を促した。
デレを誘拐した貴族、モナエルリンクを追い続けるクー。
ついにクーはモナエルリンクを捉える。
ツン=マーカスも、クーとほぼ同時にモナエルリンクに追いつくが、
モナエルリンクへの攻撃を自身に跳ね返され、瀕死の重傷を負ってしまう。
クーはモナエルリンクを後一歩の所まで追い詰める。
しかし、モナエルリンクの身を案じ叫んだデレの声に動揺し、その隙を突かれ取り逃してしまう。
クーは瀕死のツンを介抱し、逃亡を続けるモナエルリンクへの追跡を再開する。
一命を取り留めたツンもマーカス兄弟と合流し、再び逃げる貴族とそれを追う二組の吸血鬼ハンターによる追跡劇が幕を開ける。
- 8 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:10:24.83 ID:3bq8FzGU0
- 「第四話 激突」
ツンを介抱した後、月明かりが照らす森の中、クーはモナエルリンクへの追跡を再開していた。
暗い森の中を黒馬に跨り歩かせながら、クーは考える。
あの時―モナエルリンクを追い詰めた時。
エルバーン家の娘、デレ=エルバーンは、貴族の身を案じた。
クーにとっての唯一の気がかりはこの娘のことであった。
何故彼女は自らを攫った貴族の身を案じたのか―
もし、左手が言ったように、デレがモナエルリンクによって貴族の洗礼を受けていたとしたら、話は早い。
二人とも亡き者にしたあと、デレの遺品をエルバーン家に持ち帰れば依頼は達成される。
最悪のシナリオではあるが、実際そのようになる可能性が一番高かった。
しかし、もしそうでなかったとしたら―
('A`)「あんな娘、放っておけばよかったものを。
厄介なことになってきちまったぜ・・・」
左手の声により、クーの思考は中断された。
左手の言う娘とは、ツン=マーカスのことである。
彼女は自ら放った攻撃をモナエルリンクに反射され、致命傷を負った。
意識を失い、生死を彷徨っている彼女を、クーが助けたのだ。
彼女の持つ一流の吸血鬼ハンターとしてのプライドが、同業者の施しを受けてしまったことを恥と感じさせていた。
- 9 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:11:37.01 ID:3bq8FzGU0
- 彼女は自らを介抱したクーのことを、感謝するどころか憎んでさえいる。
同じ獲物を追う同業者、しかもダンピールなどに情けをかけられた、と―
再び出会ったとき、彼女がこちらのことを敵と見なさない保障はどこにもなかった。
川 ゚ -゚)「・・・」
クーの美しい顔は、まさに神の造形した完全なる美―そう形容するのにふさわしい。
月明かりに照らされ、色白のその顔が作り出す表情からは、彼の胸中を窺い知ることはできなかった。
クーは左手の言葉に応えない。
馬を走らせ、森を抜けた先にある、巨大な岩山へ向けて駆け抜けていった。
††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
- 10 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:12:53.08 ID:3bq8FzGU0
- 深い霧がかかった岩山。
空には暗雲が立ち込め、満月はその姿を隠されている。
暗雲と深い霧に遮られた月の光はかろうじて、うっすらと岩肌を照らす。
その岩山は人が立ち入った痕跡はおろか、生物の気配すらなく、生あるものには場違いと思わせるほどの恐ろしい雰囲気であった。
ライトで道を照らしながら装甲車が走っているのは、いくつもの岩でできた巨大なアーチ―これが自然にできたものか、はたまた人の手によるものか、
人ならざるものの手によるかは定かではないが―が連続している、どこか禍々しい雰囲気を持った暗い道であった。
先へ進めば進むほどに深くなる霧、漂う瘴気が、この道は地獄へと続いているのではないかと錯覚させる。
いや、本当に地獄へと続いているのかもしれない―
この先には「バルバロイの里」と呼ばれる集落があった。
装甲車はそこへ向かっていた。
先ほど彼らはツンの発信機から発される電波で彼女の居場所を突き止め、瀕死の重傷を負った彼女を拾った。
ツンの傷は深かったものの、的確な処置がなされており、兄弟達は、彼女が貴族を倒すことをしくじり反撃を受け、
その傷を自ら手当てして兄弟の到着を待っていたのだと理解した。
また、拾ったときからツンの様子がおかしいのも、貴族に負けたという事実が彼女の自尊心を傷つけているからだと理解した。
チョコレート・バーを食べながら退屈そうに装甲車を運転しているのは、モララーであった。
助手席にはギコが、巨大なハムをサバイバルナイフで切り、それを咀嚼しながら座っている。
二人の間に立ち、コーヒーを啜っているのはショボンである。
ギコとショボンはその巨体ゆえに、狭い装甲車の中では少し窮屈そうであった。
- 11 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:14:21.97 ID:3bq8FzGU0
-
( ・∀・)「おい、本当にこっちであってんのかよ」
( ゚Д゚)「ああ。手ごわいハンターに追われた貴族が必ずすることが一つある。
間違ぇねぇよ。」
(´・ω・`)「兄さんの言うとおりだ。バルバロイか・・・
だけどあそこの連中だけは相手にしたくないな」
( ゚Д゚)「・・・バルバロイの里は魔人の里。
魔人達は逃げてきた貴族の護衛を引き受ける。
腕利きのハンターでもやつらの術には太刀打ちできねぇ」
(´・ω・`)「恐ろしい奴らだ。油断ならないね」
( ・∀・)「貴族が泣きつくわけだ。ま、僕達には関係のないことだけどね。
バルバロイだろうが、ダンピールだろうが、邪魔するやつはぶっ殺してやるよ」
- 12 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:15:35.47 ID:3bq8FzGU0
- バルバロイの里の魔人達は貴族の護衛任務を請け負っている。
彼らの報酬は高額なものの、魔人達の腕は確かであり、並の吸血鬼ハンターでは相手にならない。
―並の吸血鬼ハンターならば。
マーカス兄弟達には魔人達に打ち勝つ自信があった。
百戦錬磨の彼らは、その経験と実績から、自分達の技に絶対的な自信を持っていた。
どんな術を操る魔人が来ようと、同業の凄腕のダンピールだろうと、負けるはずはない、と。
しかし、貴族がバルバロイの里に逃げ込んでしまったら、面倒なことになるのに間違いはない。
ギコは、その前に方を付けられるといいんだがな、と呟いた。
装甲車は深い霧に包まれながら、複雑に入り組んだ山道を上っていく。
弱弱しい月明かりが差し込む装甲車の後部。
そこには飾り気などは一切なく、積まれた物資や武器、ブーンの医療機械など、
必要最小限のものがせわしなく積み込まれていた。
ξ゚听)ξ「・・・」
ツンは積まれた物資に背中を預け、先ほど負った、左胸の傷口に手を当てながら外を眺めていた。
深い霧につつまれた窓の外の世界には特別面白いものはなく、
月の光に照らされた様々な形の巨大な岩が視界に入り、また消えていく―それだけを繰り返す。
- 13 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:17:01.60 ID:3bq8FzGU0
- しかし視線は外へ向けていても、その殺風景な景色はツンの目には入っていなかったであろう。
何か思想に耽っているようで、まさに心ここにあらずといった様子であった。
(ヽ´ω`)「ツン・・・痛むのかお・・・?」
ハッとした表情で、ツンは視線を窓の外からブーンへと移した。
ベッドに横たわって眠っていたブーンは、いつの間にか上体を起こしてツンを見つめている。
(ヽ´ω`)「痛むのかお・・・?怪我したとこ・・・」
ツンは立ち上がってブーンの元まで歩み寄り、上体を起こしたブーンを手でそっと横になるよう促す。
ξ゚ー゚)ξ「フフ、大丈夫よ、ブーン兄さん。
長旅で疲れたでしょ。少し、眠ると良いわ」
そういうとツンは優しく微笑み、横になったブーンに毛布をかける。
(ヽ´ω`)「その傷・・・自分で手当てしたんじゃないお・・・」
ツンはハッとした表情をし、毛布をかけるその手を一瞬止める。
- 14 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:18:42.42 ID:3bq8FzGU0
-
(ヽ´ω`)「あいつ・・・変なダンピールだお・・・
でも、僕達にとっては・・・目障りな存在に変わりはないお・・・」
ξ--)ξ「・・・」
ξ゚听)ξ「当たり前よ」
ξ )ξ「・・・兄さん、このことは誰にも言わないで」
(ヽ´ω`)「・・・」
ブーンは目を細め、ツンへと儚くも優しい微笑みを向けた。
直後、ブレーキングにより車輪が地を滑る甲高い音が鳴り、装甲車は急停止した。
照明を消し、その場で静止する。
前方に何か発見したようであった。
その何かとは―
(;・∀・)「い、いやがった・・・!しかし、何故止まってる!?」
( ゚Д゚)「さぁな・・・直接聞いてみるさ。
ツン、お前は様子がわかるまでブーンと待ってろ」
ξ゚听)ξ「わかったわ」
- 15 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:20:17.89 ID:3bq8FzGU0
- 装甲車の前方には開けた場所があり、そこに馬車が止まっていた。
深い霧がかかっているため、様子は窺い知れないが、
馬車を引いている馬は四頭、うっすら見える馬車の形容から判断しても間違いなかった。
その馬車はマーカス兄弟が追い続けるターゲット―モナエルリンクの馬車であった。
その馬車が、何故かこの山道の途中で、何をするでもなく静止しているのであった。
これはマーカス兄弟にとっては僥倖であった。
この先のバルバロイの里に逃げ込まれてしまえば、強力な力を持つバルバロイの魔人が貴族の護衛に当たるだろう。
しかし、ここで仕留めることができれば―
ギコ、ショボン、モララーは装甲車を降りる。
そのまま素早く左右の岩壁へと展開し、壁に張り付きながら、音も立てずに馬車へと忍び寄る。
左に展開したギコは、ヘッドセットに小声で囁き、指示を送る。
( ゚Д゚)「ショボン、お前が行け。俺とモララーが援護する」
右に展開したモララーとショボンがヘッドセット越しに指示を受ける。
( ・∀・)「兄さん、礼儀正しくね」
(´・ω・`)「フフ、僕はいつもそうしてる」
- 16 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:22:10.43 ID:3bq8FzGU0
- ギコとモララーはそれぞれの得物を構える。
馬車へと忍び足で近寄るショボン。
中にいるであろう貴族に気づかれぬよう、無音で移動する。
ショボンは見上げるほどの巨体の持ち主であるが、それでも音を立てずに移動する辺り、
さすが吸血鬼ハンターと言ったところであろうか。
(´・ω・`)「・・・ヌゥゥゥウウウアアアアア!!!!!」
馬車の目の前まで行くと、ショボンは手に持つ巨大なハンマーで馬車を横殴りに吹き飛ばした。
同時にギコは高速でボウガンの矢を次々と発射し、モララーは手裏剣状の剣を両手で投げ飛ばす。
馬車は横殴りに振られたショボンのハンマーによって布のようにふわりと浮き上がり、
次々と矢に射抜かれ、投げられた二つの剣によって切り裂かれていく。
(´・ω・`)「!?」
―いや、それは真にただの布切れであった。
馬車は攻撃を受けると、真っ黒な布切れへと姿を変えたのだ。
さきほどまでそこに存在していた馬車の姿は消え去り、
矢が突き刺さった、所々切り裂かれている黒い布切れだけがその場に残る。
一瞬、狐に包まれたかのように唖然とするマーカス兄弟―
すぐにこれが罠であることに気づき辺りを警戒する。
- 17 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:24:06.27 ID:3bq8FzGU0
- (´・ω・`)「・・・?ただの布切れだ・・・」
(#・∀・)「・・・ふざけやがって」
( ゚Д゚)「おい、油断するな」
( )「ンッフフフフ・・・イーヒッヒッヒ!!」
直後、その場に怪しげな笑い声が響き渡る。
布切れに総攻撃を仕掛けたマーカス兄弟を嘲笑うかのようなその声は、
岩場に反響し、声の主の居場所を掴ませない。
マーカス兄弟は一瞬動揺し、声の主を見つけられないことに焦りを感じながら武器を構えた。
( )「ここまで足を踏み入れるとは・・・この身の程知らずの蛆虫どもめ。
試してみるか?五千年の間、魔人達の血と血を混ぜ合わせ、闇の中で育んだバルバロイの妖術・・・
それにお前達の腕が通用するかどうか・・・?」
その声は生理的な嫌悪感を感じさせるほどの、妖しげで不気味な声であった。
マーカス兄弟は、何度も声の主の位置を探そうとするも、見つけることができない。
(;・∀・)「ど、どこだっ!?」
初めて味わうバルバロイの妖術―
マーカス兄弟は明らかに動揺していた。
- 18 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:25:25.28 ID:3bq8FzGU0
- ショボンの足元―ショボンの体が月の光を受け落とした影の中から、
短剣を持った手と男の顔が現れたのに気づかなかったのも、焦りからくるミスであろう。
( ゚ゞ゚)「ヒヒヒ・・・!」
ショボン達、マーカス兄弟はその影の男に気づかない。
男はいやらしい笑みを浮かべ、短剣を天高くかかげるとそのまま振り下ろし、ショボンの影の心臓の辺りを貫いた。
(;´゚ω゚`) ∵ 「ガハッ!!」
ショボンの口から鮮血が飛び散る。
影への攻撃がそのまま影の主へと及ぶ、影縫いの術であった。
( ´゚ω゚`)「ぬぅ・・・ッ!そこだァッ!!」
攻撃を受けたショボンは影の男の所在に気づいた。
ショボンは、振り返りながら両手で持った巨大なハンマーを男に向かい振るう。
男は回避しようと影から飛び出し、岩壁にとび移ろうとするも、
恐るべき速度で振るわれたショボンのハンマーは、男の体を正確に捉えた。
ハンマーとともに岩壁に叩きつけられる男。
そのあまりに強力な一撃の衝撃により、岩壁から砂煙が発生する。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 08:26:24.38 ID:+eF4bgQDO
- 支援
- 20 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:27:10.78 ID:3bq8FzGU0
- 武器の構えを解かずに、マーカス兄弟は砂埃が晴れるのを待つ。
(;・∀・)「やったかッ!?」
一瞬の後、視界が開けた。
しかしそこには、またもや先ほどの黒い布と、
それを壁にめり込ませているショボンのハンマーがあるのみであった。
男は再び姿を消した―
( )「ンッフフフフッ・・・ヒーッヒッヒ!イーッヒッヒッヒアッハッハッハ!」
(;゚Д゚)「チッ・・・!やるじゃねえか・・・」
( ´ ω `)「・・・」
マーカス兄弟の間に再び緊張が走る。
武器を構え、辺りを見回し、声の主を探すギコとモララー。
しかし、ショボンは武器を手放し、その場に力なく直立していた。
( ´ ω `)「影ダ・・・影ニ・・・キヲツケロ・・・」
ショボンの口から、だらりと血が流れ落ちる。
- 21 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:28:22.76 ID:3bq8FzGU0
- (;゚Д゚)「あんだってぇ?」
(;・∀・)「・・・?」
( ´ ω `)「・・・」
(;゚Д゚)「おい、ショボン、何を・・・ッ!?
おい、ショボンどうした!何があった!?」
ギコは横目でショボンを見て、その異常に気づく。
急いで走りよるギコとモララー。
ショボンの心臓と口からは、大量の血液が流れ出ている。
立ったまま虚空を見つめ、動こうとしない。
(;・∀・)「ッ!?・・・し、死んでるッ!」
(;゚Д゚)「馬鹿言うなッ!どけ!おいショボン、しっかりしろォ!!
しっかりするんだショボンッ!!!」
( ´ ω `)「・・・」
( ;Д;)「しっかりしねぇかァッ!ショボンッ!!
起きて返事をしろッ!!
くっそぉ、こんな馬鹿なことがあって堪るかァッ!!!」
( ;Д;)「なんてこったあああぁぁぁァァァ!!!!!!」
( )「クックック・・・ヒーッヒッヒ!!イーーーッッヒッヒッヒ!!!」
- 22 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:29:53.96 ID:3bq8FzGU0
- ギコの叫びと共に、辺りに再び怪しい笑い声が響いた。
その笑い声は徐々に遠ざかっていく―
その場には、立ったまま動かないショボンを泣きながら抱きしめるギコと、
ギコに突き飛ばされ、尻餅をついたまま動けないでいたモララーだけが残された。
ショボン=マーカスは死亡した。
††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
(((;゚A゚)))「おい、クー。よせ。考え直せ」
クーが跨った黒馬は、月の光さえ届かない、高い岩壁に挟まれた狭い道を歩く。
前方を見やれば、幾つもの大きな風車が回っており、他所では何かを燃やしているのだろうか、煙が立ち昇っていた。
土で作られた住居らしき物も見ることができる。
この先に生物が住んでいる場所があるであろうことは、明白であった。
そう、クーの前方に見える集落は―バルバロイの里であった。
マーカス兄弟とは違う道のりでバルバロイの里まで辿り着いたクーは、そのまま里の方へと馬を歩ませる。
(((;゚A゚)))「バルバロイの里に正面から乗り込むつもりか?
正気とは思えんぞ!?
お前の頭は帽子を乗せるためだけにあるのかッ!?
ちょっとは頭を使えッ!!」
- 23 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:31:06.56 ID:3bq8FzGU0
- 川 ゚ -゚)「・・・」
(;A;)「・・・なんとか言えよクー!」
必死で止める左手の声を無視し、クーはバルバロイの里の入り口である巨大な門に向かう。
その姿を、岩陰から無数の眼が覗き見ていた。
異形の者達―バルバロイの魔人達である。
下半身がヘビの女や、魚類と人間の間に生まれたような姿の男など、
姿かたちはまさに人間のそれとはほど遠いものであった。
クーは門の前まで辿り着くと呟くような、静かな声で言った。
川 ゚ -゚)「・・・俺はハンタークー。用があって参上した。開門願いたい」
一瞬の沈黙の後、門の仕掛けが作動し、鎖が門を引く音と共に―
クーを中へと誘うように、巨大な門はゆっくりと開いた。
クーは馬を歩かせ、開かれた道を進み、バルバロイの里へと足を踏み入れる。
真っ直ぐ続く道の左右には、岩や土で作られた住居が立ち並んでいる。
住居の中や、住居の上には、異形の者達―その数、少なくとも五十はあろうか―
その全てがうめき声を上げながら、クーに視線と共に、殺気を送っていた。
('A`)「・・・どいつもこいつも気の良さそうな連中だ。
うんざりするくらいな・・・」
- 24 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:32:48.17 ID:3bq8FzGU0
- クーが歩みを進めるその先には、十数人の異形の魔人達。
( ・∀ ∀・)「カラカラカラカラ」
|(●), 、(●)、|「コォォー・・・コォォー」
( ∴)「キィーキキキキキキキ」
その異形の魔人達の前にいるのは、一輪車に乗った小さな老人であった。
/ ,' 3
老人の白い髪の毛はほぼ抜け落ちており、伸び放題の白い眉毛は顔から飛び出し、
口から覗く歯の本数は頼りなく感じるほど少ない。
しかしその眼光は衰えることなく、鋭い光を放っている。
この老人こそが、魔人達の里―バルバロイの里の長老であった。
老人の爬虫類のような瞳が、クーをじっと見つめている。
その老人の前まで行くと、クーは馬の歩みを止め、馬から降りた。
―いつの間にか、クーは異形の魔人達に取り囲まれていた。
- 25 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:34:10.77 ID:3bq8FzGU0
- / ,' 3 「ほぉ〜・・・馬から降りたか。
老人に対する礼儀をわきまえておるのぅ。」
川 ゚ -゚)「・・・」
クーは里の奥を見やる。
―モナエルリンクの馬車がそこにはあった。
馬車を見つめながら、クーは言う。
川 ゚ -゚)「・・・あの馬車に乗っている娘を渡してもらいたい」
/ ,' 3 「んん?ヒッヒッヒ・・・
大胆で美しい若者よ、良いとも、と言いたいところじゃが、
我々は、去るお方の依頼であの貴族の護衛を引き受けておる」
川 ゚ -゚)「・・・」
/ ,' 3 「それも百万ダラス金貨百枚でな。お前にそれだけ払えるか?」
(;'A`)(依頼の報酬金が一千万ダラスなのに、一億ダラスなんて払えるかっつーの)
川 ゚ -゚)「・・・払えばその依頼人を裏切るか」
/ ,' 3 「・・・ホッホッホ!愉快、愉快、全く愉快。
我ら、バルバロイの里人が数千年の昔、あのヴァンパイアの大王に召抱えられて以来、
貴族の影となって仕えてきたことはお前も知っておろう?
その我らに向かって、そんな口を聞くとは・・・」
- 26 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:35:32.69 ID:3bq8FzGU0
- 老人は一輪車でクーの方へ近づき、クーの顔を下から睨み付ける。
その色の薄い濁った瞳からは、強烈な殺気が放たれていた。
/ ,' 3 「ダンピールも大勢見てきたが、お前のようなやつは初めてじゃ。
死なすには惜しい、実に惜しい・・・」
老人の表情が険しくなる。
/ ,' 3 「じゃが、お前をここから帰すわけにはいかん。
その命、貰い受けるぞ」
/ ,' 3 「ここに居並ぶものども、一人残らず驚天の技を見につけておる。
いかに優れたハンターといえども、全員を倒すは不可能・・・」
この老人が言うには、先ほどの男―ショボン=マーカスを殺害した、
影の男の用いたような恐るべき術を、ここにいる里人全員が身につけているという。
恐るべしはバルバロイの魔人達。
その魔人達がクーへ向けて、強烈な殺気を飛ばす。
バルバロイの里は殺気が充満し、ひりつく様な緊張感に包まれた。
††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
- 27 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:37:20.78 ID:3bq8FzGU0
- クーとバルバロイの里人達との間に一触即発の空気が流れる中、
その様子を遠く離れた岩陰からモララー=マーカスが双眼鏡で覗いていた。
( ○=○)「ッ・・・」
(;・∀・)「あいつイカれてんじゃねえのか・・・?
とんでもねえアホ野郎だぜ・・・!どういうつもりだ・・・?」
マーカス兄弟もクーと時を同じくして、バルバロイの里へ辿り着いていたのだ。
彼らはクーとは違い里へ入ることはなく、里の手前の岩山に隠れるように装甲車を止め、様子を伺っていた。
モララーは斥候として里の様子を観察していた。
装着したヘッドセットへモララーは問い掛ける。
(;・∀・)「兄貴、そっちはまだなのか」
装甲車の中では、心電図らしき機械から発せられる規則正しい電子音が静かに響いていた。
ベッドの上で上半身を裸にして横たわる男―ブーン=マーカスである。
彼の体には心電図らしき機械から伸びる数本のコードと、点滴の管が繋がれていた。
ブーンの心臓の鼓動に合わせて電子音が鳴り響く。
- 28 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:38:44.05 ID:3bq8FzGU0
- ベッドの上で上半身を裸にして横たわる男―ブーン=マーカスである。
彼の体には心電図らしき機械から伸びる数本のコードと、点滴の管が繋がれていた。
ブーンの心臓の鼓動に合わせて電子音が鳴り響く。
ブーンの傍らには、ギコとツンがいた。
ギコは注射器を右手に持ち、左手のカプセルに入った液体を注射器の管の中へと吸引していく。
注射器の管がカプセルに入っていた緑色の液体で満たされると、ギコはブーンを見つめる。
やせ細った顔と体―まさにブーンには骨と皮という表現が相応しい。
生れ落ちたときからブーンは病弱だった。
戦闘には参加などできるはずもない、最早足手まといとさえ言えるブーンを、ギコは一番可愛がっていた。
ギコは、本当は可愛い弟を苦しませるような真似はしたくなかった。
―だが、ショボンが殺された―
仇を討たないわけにはいかなった。
( ゚Д゚)「・・・すまねぇなブーン。
だが、どうしてもお前の力を借りなきゃならねぇ。
・・・ショボンの仇をとるんだ」
( Д )(ショボン・・・ブーンがお前の仇をとってくれる。
天国からしっかりと見てろよ。)
ブーンはその言葉に応え、注射を促すよう右上をギコに差し出す。
- 29 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:40:50.46 ID:3bq8FzGU0
- (ヽ´ω`)「わかってるお・・・兄さん・・・」
ツンはブーンに繋がれた機械や点滴の調整をしていた。
その真剣な表情からは、ブーンの身の安否を真剣に案じていることが容易に読み取れた。
ξ゚听)ξ「無理はしないで、兄さん・・・
必ず戻ってくるのよ、いいわね?」
(ヽ´ω`)「・・・」
ブーンはツンの言葉に、無言で微笑み返した。
ギコがブーンの右腕に注射針を指し、液体を注入する。
徐々に装甲車に響く電子音の間隔が長くなる。
やがて継続的に鳴っていた電子音は、ブーンの心停止を知らせるべく、継続的な音へと変化した。
††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
- 30 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:42:10.55 ID:3bq8FzGU0
- 川 ゚ -゚)「・・・俺を殺せば、里人の何人かは道連れとなる。
が、それも仕方なかろう。
だが、バルバロイの名に汚れた傷がつく。
たった一人のハンターを相手に、里人全員を嗾けた、と・・・
それで良ければ相手になろう・・・」
/ ,' 3 「ふむぅ・・・痛い所を突いてくる。益々愉快な奴」
( ゚ゞ゚)「長老殿」
声がしたのはモナエルリンクの馬車の方からであった。
馬車の上に男女が三人―
( ゚ゞ゚)
黒いローブを全身に纏った色白な細身の男。
彼は先ほど影の術を操り、ショボン=マーカスを殺害した男であった。
面妖な仮面のようなその顔は、中東の魔術師の仮面のような、底知れぬ恐怖を感じさせるものであった。
从 ゚∀从
エメラルドの美しい長髪を足元まで垂らしている女性。
露出度の高い、髪の色と同じくエメラルドのボディスーツを着ており、胸元ははだけている。
その妖艶な美しさを目にした男性は間違いなく劣情を掻き立てられるであろう。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 08:42:25.89 ID:BGx6fmvv0
- 男クーでもいいじゃない支援
- 32 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:43:24.78 ID:3bq8FzGU0
- ( ゚∀゚)
浅黒い肌の毛深い男。
その胸の前で組んでいる両手は筋骨隆々である。
身長は180cmほどだろうか。
素肌の上に羽織ったくすんだ赤色のベスト、ミルク色のアラビアズボンと、エスニックな服装をしている。
野獣のような鋭い目つき、その瞳は黄金色で、爛々と輝いている。
彼らが放つ禍々しい殺気は、彼らが魔人達の中でも最上級のものであろうことをクーに知覚させた。
( ゚ゞ゚)「そやつの言うとおりでござるよ。
ここは護衛の任についた我ら三人にお任せくだされ。
そやつ初めからそのつもりで乗り込んでおりますれば―
その策に乗ってやるも、一興」
黒いローブの男はクーの言うように、自分達とクーを戦わせてくれと長老に申し出た。
まさに自信過剰とも言えるであろう男の言動。
しかし、影を操る男の術、そしてその能力は謎であるが、恐らく影の男と同等かそれ以上の技を使う男女―
この三人の前では、流石のクーも分が悪いのではないか。
/ ,' 3 「ならぬ!我ら影の者どもに名などは縁無き物。
ただ務めを果たすだけに没頭するが我らの心得。
勝手な真似は・・・んッ?」
老人は、クーの視線が自分達の後方に向けられていることに気がつき、振り返った。
- 33 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:44:50.21 ID:3bq8FzGU0
- ―何者かがやってくる。
その者は全身をうっすらと青白く光らせ、両手を横に広げ、空中を滑るように移動してこちらへ向かってくる。
男は白いコートを身に纏っており、首元には青いマフラーが巻かれていた。
( ^ω^)
―その正体は、ブーン=マーカスであった。
しかし、その男の顔は痩せこけてはおらず、至って健康的なもので、
普段のブーンの末期患者のようなそれとは大きく異なっていた。
微笑みを浮かべながら、ブーンはクーと里人達の方へと向かってくる。
彼の周りには無数の小さな青白い光が飛び回っている。
まるで、何匹もの蛍が彼の回りを飛行しているかのようであった。
突如、その光が大きく膨張する。
次の瞬間、その無数の光から放たれたレーザーは、クーの周りを取り囲んでいた里人達を貫いた。
貫通したレーザーは住居や壁へ命中し、それらを粉々に吹き飛ばす。
驚き、後ずさる里人達。
- 34 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:46:13.16 ID:3bq8FzGU0
- (; ・∀ ∀・)「ヒ、ヒィィィィ!」
|;(●), 、(●)、|「オオオォォ・・・!」
(; ∴)「キキキキ!?」
再び、ブーンの周りを飛び回っている無数の光が膨張すると、レーザーが放たれる。
その攻撃で、また何人かの里人はその身を貫かれ命を落とす。
里人達は、突然の襲撃に混乱し、攻撃を避け続けることしかできなかった。
††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
ブーンがバルバロイの里で暴れている様子を、モララーは双眼鏡越しに眺めていた。
( ○=○)「ヒャハハ!良いぞブーン、流石だぜッ!」
(*・∀・)「皆殺しにしちまえッ!ヒャーハッハッハ!!」
モララーの歓喜の声が、ヘッドセット越しに聞こえてくる。
電子音が鳴り響く装甲車の中、ツンは不安げな表情でブーンを見つめていた。
ξ;--)ξ(お願い、無事に帰ってきて・・・ブーン兄さん!)
††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
- 35 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:48:05.62 ID:3bq8FzGU0
- ―ブーン=マーカス。
彼は生来の病弱さ故に、ベッドの上から動くことはできず、通常は戦闘に参加しない。
しかし、今回のような数多くの強敵と対峙する際、マーカス兄弟は彼の力に頼ることになる。
ブーンは心停止することを条件に、霊体が体から抜け出し、自由に行動することができるようになる。
霊体はエネルギー体であるが故に、敵の攻撃を受けることは一切なく、ブーンの放つレーザーは圧倒的な破壊力で敵を粉砕する。
この術はブーンの身体に多大な負荷を与えるため乱用はできなかったが、
いったん発動すればまさに無敵―彼こそが、マーカス兄弟の切り札だった。
( ^ω^)
微笑みを浮かべたまま、ブーンは一方的に里人達を虐殺していく。
次々と積み重なる屍の山、粉々に吹き飛ばされた住居―
圧倒的なその強さの前に、恐るべき術を操る魔人達にも成す術は無かった。
/ 。゚ 3 「馬車を出せぃッ!!」
老人が命じると、馬車を護衛する魔人が手綱を握り、里の出口へと馬を走らせ始めた。
走り出した馬車に気づいたブーンは虐殺をやめ、馬車を追跡し始めた。
馬車の最後尾には、兄ショボンの仇―
影の術を操る男が足を組み座っていた。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 08:48:50.97 ID:WtzAluLy0
- 面白い、支援
- 37 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:49:21.82 ID:3bq8FzGU0
- ( ゚ゞ゚)「こっちだ、こっち。ヒヒヒヒヒ!」
ブーンはその男を馬車ごと破壊するべく、男に向けてレーザーを放つ。
ブーンの攻撃を見て、男は立ち上がり自らが纏う黒いローブを広げる。
ブーンが放ったレーザーは、男の体を貫いたかのように見えた。
しかし、レーザーは男の広げたローブの暗黒の中に吸い込まれていった。
( ゚ゞ゚)「ヒャハハァ!!」
流石はバルバロイの魔人である―
ブーンの恐るべき破壊力を持つレーザーでさえ無効化する、正に驚天の術であった。
馬車は傷一つ負うことなく、里の出口へと進み、姿を消した。
馬車を追おうとするブーンが、後方から迫る蹄の音に気が付く。
クーである。
黒馬を駆り、馬車の走り去った方へ向かってきた。
クーもまた、馬車が走り出したのを見て追跡を始めたのだ。
ブーンはクーの方へ向き直り、レーザーを放つ。
レーザーが当たる直前、クーは馬の上から天高く跳躍し、回避。
そのままブーンの方へ降下、背の長剣を引き抜き―
- 38 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:51:30.78 ID:3bq8FzGU0
-
一閃。
ブーンを脳天から真っ二つに両断した。
( ω )
クーの一撃を受けたブーンは、その姿を維持することができなくなり、霊体は装甲車で眠る本体のほうへ戻っていく。
自身を無敵と信じて疑わなかったブーンは、攻撃を回避しようとしなかった。
しかし、クーの鋭い一太刀は、ブーンを切り裂いた。
―クーは、斬れぬはずのものを、斬ったのだ。
††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 08:52:15.00 ID:BGx6fmvv0
- ブーンすげぇ、クーすげぇ
- 40 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:52:57.30 ID:3bq8FzGU0
- (ヽ-ω-)
装甲車で眠るブーンに、帰ってきた霊体が重なり一体化する。
(ヽ゚ω゚)「ヒイ゛イ゛イ゛イ゛ィイ゛ッィィイ゛ィッィイ゛ィ!!!
ア゛カ゛ア゛ァア゛ア゛ア゛ァア゛ア゛ア゛ァア゛ァァァァッッッ!!!」
ξ;゚听)ξ「ッ!!」
ブーンは身の毛もよだつ、凄まじい叫びと共に息を吹き返した。
傍らでブーンを見守っていたツンが、急いでブーンの口に呼吸器を当てる。
(ヽ゚ω゚)「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
ブーンの心臓の鼓動のリズムは限界まで速くなっていた。
機械から発せられる電子音が鳴る間隔は、異常に短い。
危険な状態であることを知らせる警告が、ブーンに繋がれた機械のモニター上に表示されていた。
ブーンが術を使うことの、代償であった。
( ゚Д゚)「でかしたぞブーン!!」
- 41 名前:第四話 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:54:25.84 ID:3bq8FzGU0
- ( ゚Д゚)(見たかショボン。ブーンがやってくれたぜ。
だがまだ終わっちゃいねぇ。
お前を殺した男の息の根を必ず止めてやる!)
ギコは装甲車を発進させ、モナエルリンクの馬車への追跡を始めた。
††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
ブーンの霊体を一刀両断したクーは、そのままモナエルリンクの馬車を追う。
クーと黒馬は、疾風のような速さで里の出口へと姿を消していく。
/ ,' 3 「ハンタークー・・・なんとも大した奴よ。
じゃが、バルバロイの手練れ三人が相手では勝ち目はあるまいて・・・
惜しいのぅ・・・」
老人がクーの走り去った後を、名残惜しそうに眺めながら、呟いた。
第四話 終
- 42 名前:作者 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 08:57:05.57 ID:3bq8FzGU0
- 以上で投下終了です!
>>19 >> 31 >>36
支援ありがとうございました!
最初のほうトリップ忘れたり混乱してミスをしてしまったり・・・
あばばば!!!
最初に表記するのを忘れてしまったのですが、内藤エスカルゴさんが第一話〜第三話をまとめてくださってます。
多大なる感謝っ!
http://www.geocities.jp/local_boon/
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 08:57:53.80 ID:7Y1b0QHbO
- これはなかなか。
ハンター乙
- 44 名前:作者 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 09:00:31.79 ID:3bq8FzGU0
- >>29でミスがありました・・・
×やがて継続的に鳴っていた電子音は、ブーンの心停止を知らせるべく、継続的な音へと変化した。
○やがて断続的に鳴っていた電子音は、ブーンの心停止を知らせるべく、継続的な音へと変化した。
- 45 名前:作者 ◆v6MCRzPb66 :2009/05/23(土) 09:24:07.66 ID:3bq8FzGU0
- >>43
ありがとうございます。
以下独り言。
今回のブーンがバルバロイの里を襲撃するシーンは、
この小説を書くにあたって最も書きたいと思っていたシーンでした。
原作の映画では、グローブ(ブーン)がバルバロイの里を滅茶苦茶に破壊するシーンはカタルシス抜群、私の一番好きなシーンです。
また、D(クー)とグローブ(ブーン)とベンゲ(影の男)の三者の凄さが上手く表現されています。
原作どおりだと私の好きなグローベック(ブーン)の見せ場が少ないので、
小説のほうのエピソードや、オリジナルのエピソードで出番を作ってあげたいと思っています。
流石にこの時間だと書き込みも少ないようですね。
次の投下はいつになるかはわかりませんが、できるだけ早くしたいと思っています。
投下した作品は内藤エスカルゴさんがまとめてくださっているので、
もし気に入っていただけたならば読んでいただけると幸いです。
では、今日はこの辺で。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 09:33:29.54 ID:rOoz+QNYO
- 乙ー。燃えるな
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 09:36:17.52 ID:ft7lWkiC0
- 乙!
にしても一日でこれだけ書くとは…