第三章・臨界突入!!立ち込める暗雲、少々の〜その4、最強の虎〜 後編
8 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:35:17.10 ID:Ai+edtDV0
DANGER■□■CAUTION■□■WARNING■□■DANGER■□■CAUTION■□■WARNING■□■


( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━

第三章には

     『吐き気をもよおすほどのジョジョネタ』
    
     『クサレ脳味噌かと疑う程の著しい歴史歪曲』

     『だがそれも良くない花の慶次ネタ』←new !!

……が含まれている危険があります。

もし何かを感じたら窓を開けて充分に換気した後、安静にする事を固くお願いします。
作者と君との約束だ。


DANGER■□■CAUTION■□■WARNING■□■DANGER■□■CAUTION■□■WARNING■□■



12 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:36:59.24 ID:Ai+edtDV0
昨日のあらすじ

木下藤吉郎ことアニジャは、織田信長の元でグータラしていた。
そこに、徳川家康配下、服部半蔵から援軍要請が来る。
甲斐の虎、そして戦国最強の妖怪大名・武田信玄の進軍が始まったのだ。

デビルサマナー・クーと共に家康の陣に駆けつけるアニジャ。
そこでは家康とオトジャが2人を待っていた。

アニジャはそこで、家康の正体がかつて天皇を悩ませた鵺であると知る。
で、実際ケンカ売ってみたらガチで強くてフルボッコ。
何とか家康が武田軍を打ち破り、鵺は一時退却したのだった……


18 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:39:05.07 ID:Ai+edtDV0




          ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━

             ――――第三章・或る兄弟の東方見聞録――――


                     〜その4、最強の虎〜

                        第二夜



21 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:39:47.93 ID:Ai+edtDV0
 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

( ´_ゝ`)「ふぅ〜……、危なかったぜ。
      あんなのがこの国に居たなんてな。
      どうなのクー? 何かオレ様の攻撃が効いてないように見えたんだけど」

アニジャ達、そして家康の軍は、居城である浜松城に帰り着いた。
着くや否や座り込み、休憩を極め込むアニジャ。
周囲では兵達が早くも次の戦の準備に大忙しだ。

∫λリ゚ -゚ノノ「鵺とは実体の無い幻の事。
         いくら攻撃しても、決して倒すことは出来ないとの事でゴザル 」

クーは草鞋の紐を解きながら、アニジャの側に胡坐を掻いた。
『信玄は強いなぁ!!』そう言いながら屈託のない笑みを見せる。

(´<_` )「………」

そこにはオトジャもそこに加わり、三人は久し振りに膝を突き合わせた。


25 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:40:55.75 ID:Ai+edtDV0
( ´_ゝ`)「じゃ、どうする?手はないの?」

クーは鵺を『実態の無い幻』であり、『決して倒せない』と言った。
だが先程感じた存在感は、幻などという生易しい物ではない。
絶対的力を持つ鵺に対する比喩表現だろう。

∫λリ゚ -゚ノノ「上杉謙信公は封じる事で精一杯だったでゴザル。

( ´_ゝ`)「謙信?誰それ?」

(´<_` )「アニジャ。ホラ、越後の……」

( ´_ゝ`)「あーあー!! 『愛』のアイツね!?」

(´<_` )「それは直江……。クー、放っといて話を続けよう 」

強敵との戦いでかなり消耗していたせいか、オトジャはツッコミを放棄した。
代わりにクーの肩をぽんと叩く。

∫λリ゚ -゚ノノ「因みに謙信公は、現在最強の退魔師の1人と言われてゴザルよ 」

( ´_ゝ`)「最強の退魔師が勝てないの?
      じゃ、もうダメじゃん?」

アニジャは、もう今日の仕事は終わりだ、と言わんばかりにその場に寝そべった。
もちろん、三河の兵達はその横で真面目に働いている。
オトジャは『やれやれ』と肩を竦めてクーを見た。

27 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:42:21.07 ID:Ai+edtDV0
∫λリ゚ -゚ノノ「ふっふっふwww。
        そうでもないんでゴザルな、これがwww」

しかしそこは悪魔召喚師のクー。
この国、及びあらゆる地域の魔物に対して、充分な知識を有する。
待ってましたと言わんばかりに、意気揚々と語り始めた。

∫λリ゚ -゚ノノ「鵺はその昔、1人の人間に倒されてゴザル 」

その言葉に興味をそそられたのか、アニジャが急遽上半身を起こした。
聞く準備は出来ている。
それを見てクーはにやりと笑う。

∫λリ゚ -゚ノノ「『源頼政の鵺退治』。
        平安時代末期、近衛天皇の御所である清涼殿に夜毎現れ、
        天皇を悩ませた魔獣『鵺』。
        その討伐に任命されたのが、高名な退魔師だった源頼政でゴザル 」

( ´_ゝ`)「ふんふん、それでそれで?」

アニジャはもう身を乗り出している。
一方オトジャは行儀良く聞いていた。


30 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:43:58.31 ID:Ai+edtDV0
∫λリ゚ -゚ノノ「頼政は山鳥の尾で作った尖り矢で、射殺したという話でゴザル 」

(; ´_ゝ`)「え〜!!それだけ!?」

『あんな速く動く奴に矢なんか当たんねーよ』。
アニジャはそんな顔をすると、がっくりと首を垂れた。
しかし、どうやら話はそれで終わりではないようだ。

∫λリ゚ -゚ノノ「ふっふっふふふっwww。焦るな焦るなwww
        この尖り矢でゴザルが、少々特殊な矢竹を使ってゴザッてな。
        『一鎌の矢』という化け物退治には欠かせぬ、必殺の武器だったらしい 」

(´<_` )「それが弱点ということか?」

退魔の武器───。
少なからず期待を煽られたオトジャは思わず口を開いた。
『うむ』と頷いたクーは更に続ける。

∫λリ゚ -゚ノノ「もう1つ。
        頼政が鵺退治の褒美に天皇より賜った刀。
        それこそが絶対最強の破魔の剣、『退魔神剣・獅子王』でゴザル!!
        これさえあれば、真に鵺を倒せるのでゴザル!!」

バッと立ち上がり、握った拳を突き上げ、高らかにその名を告げるクー。
魔祓いに於いて頂点にある武器、『退魔神剣・獅子王』。
それを聞いたアニジャは───、

( ´_ゝ`)「厨くせーネーミングだな、オイwww」


32 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:45:17.44 ID:Ai+edtDV0

─── 獅子王 ───

驚くべき事にこの刀は実在する。
この刀が、手にした者に繁栄をもたらす事は造作の無い事。
魔を切りつければ忽ち滅する、退魔師ならば誰もが欲しがる刀だが……

∫λリ゚ -゚ノノ「ところが鵺はこの刀の存在を存じてゴザる。
        これを破壊するために、清涼殿に現れたのでゴザるのだからな。
        何と、鵺は倒される直前に獅子王に呪いをかけた 」

クーはそこまで言うと地面に拳を叩きつける。
そして忌々しげに続けた。

∫λリ゚ -゚ノノ「妖刀『百足丸』……。
        切った相手と持つ者の命を貪り食らう、今の獅子王の名でゴザる 」

( ´_ゝ`)「と、言う事は……何だ?
      相手だけなら良いけど、自分も死ぬの?
      じゃ使えねーじゃん!!」

その通りだと言わんばかりに頷くクー。
お手上げだと言わんばかりに諸手を挙げるアニジャ。
そしてオトジャもまた手を上げるのだが……

(´<_` )「私が使おう 」

オトジャの目には所謂『決意』が宿っていた。


37 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:46:52.64 ID:Ai+edtDV0
(; ´_ゝ`)「え、え?え?
      いや。いやいやいやいやいやいやいや!!
      何言ってんのオトジャ!? 使えば死ぬんだぜ!?」

即座に反論するのは勿論アニジャだ。
オトジャもアニジャがこう言う事は既に分かっていた。
穏やかな口調でこれを諭す。

(´<_` )「それは人間の話だろう、兄者?
      ヴァンパイアたる私なら、命の量も多いはず。
      食い尽されたりはしないさ 」

命をかける決意をしたオトジャの言は落ち着いていた。
それが冗談の類では無い事を知らしめる。
ならばアニジャの表情も瞬時に引き締まる。

( ´_ゝ`)「待て。それなら条件はオレも同じだぜ。
      こういう役は、兄ちゃんがやるもんだ 」

アニジャなら当然こう言う事も、オトジャは既に予測済みだ。
本気で言っている。
しかし、オトジャには決して引けない理由があるのだ。

(´<_` )「いや、私にやらせて欲しい。
      武田信玄は家康を狙ってやって来たんだ。
      そして彼は今、私の主。頼むよ、兄者 」


40 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:48:22.11 ID:Ai+edtDV0
アニジャとて、魔が信長の命を狙って来たならば、命をかけてこれを迎撃するだろう。
アニジャにとっての信長は、オトジャにとっての家康なのだ。
流石にアニジャも、オトジャの言わんとする事を理解したが、兄として『はい、ドーゾ』とは言えない。

( ´_ゝ`)「馬鹿言うな。危ないと分かってるモンを弟に……」

∫λリ゚ -゚ノノ「アニジャ殿。
        これをさせぬは、武士にとって生き恥以上の何物でもない。
        心苦しいが、ここはお主が折れるが道理でゴザル 」

(; ´_ゝ`)「うぅぅぅうぅう……、その言い方はズルイぞ、Qoo。
      オレが頭の固い頑固野郎みたいじゃないか……」

(´<_` )「すまない、兄者 」

オトジャの言う通りにしなければならない事は、アニジャも覚悟していた。
だが兄としての責任との板挟みに、身動きが取れない状態だった。
クーの言葉は、その状態から引っ張り上げてくれた形になる。

と、ここでアニジャは凄く大切な事に気付いた。

( ´_ゝ`)「ん?ちょっと待てよ?
      鵺の弱点は分かったがな、矢と刀はどこにあんの?」


41 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:50:07.01 ID:Ai+edtDV0
するとクーは胸を張って言った。

∫λリ゚ -゚ノノ「拙者の実家でゴザルwww
        伊達に由緒正しき、悪魔召喚師の家系を名乗っているわけでは───」

(;#´_ゝ`)「じゃ、さっさと取ってこいよ!!」

あまりにも敢然と言い放つクーを見て、一瞬ぽかんとしてしまった。
そんな大切な物を、こんな大事な戦に忘れるとは……。
クーは馬を走らせ、兄弟がその背中を見送った時、アニジャが屈辱的に漏らした。

(; ´_ゝ`)「まさか、このアニジャ様がツッコミ役に回るとは……」

クーの姿が見えなくなるまで律儀に見送る。
周囲を見回すと、忙しそうに走り回っていた兵は全て作業を終わらせている。
今では整然と陣形を組み、表情は戦人のそれだ。
アニジャは感心せざるを得なかった。

( ´_ゝ`)「しかしコイツぁ見事だな。
      YEAHSのヤツ、敢えて城門を開きっぱなしにするとは。
      敵さん、警戒して入ってこねぇぜwww」


42 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:51:41.08 ID:Ai+edtDV0
浜松城に逃げ帰った家康は、何と全ての城門を開けさせた。
更にあらん限りの篝火を燃やす。
これこそ古代中国の天才軍師、諸葛亮孔明の空城の計。

城門を開け放つのは、敵軍を自ら引き入れ叩き潰さんとの意思表示である。
即ち、自軍の兵力の絶対的優位性を敵に錯覚させようとする計略だ。
一見隙だらけの計だが、優秀で用心深い指揮官ほど逆に警戒するものだ。

家康の空城の計は見事成功し、武田軍は攻め入る事は無かった。

( ´_ゝ`)「さて、やられっぱなしは悔しいよな 」

(´<_` )「少数精鋭で行くぞ。良いな、アニジャ?」

その夜、吸血鬼兄弟率いる少数の家康軍は、野営する武田軍に攻め入った。
糞味噌の負け戦の後、直ちに夜襲をかける。
東海一の弓取り、徳川家康なればこその戦略と言って良いだろう。

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


46 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:55:08.09 ID:Ai+edtDV0
 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

その後、暫くは両軍睨み合ったままの膠着状態。
数度の小競り合いは有ったものの、互いに決定的な一手に欠けていた。

そして数ヶ月後、年は明け間もない頃。

(´<_` )「雨か……」

頭の上に垂れこめるような鼠色の雲。
見上げるオトジャの顔に滴が零れた。
雨は次第に強くなり、激しい豪雨が土を跳ね上げる。

(´<_` )「……ん?」

再びオトジャは顔を上げる。
雨雲は更に分厚く積み上がり、漆黒の雷雲となって光を閉ざす。


その直後───。


閃光が一瞬にして網膜を白く染め上げた。
直後に訪れる爆音──!!振動──!!
轟雷が大地を刺し貫き、周囲の気が一変───!!
そこへ血相を変えた兵が、息も絶え絶えに駆け込む……。

(伝令「伝令!!武田信玄殿、騎馬軍と2万の兵を引き連れ出陣!!」


51 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 21:57:18.71 ID:Ai+edtDV0

伝令が耳に入るや否や、家康の脳裏には戦の概略が浮かぶ。
全ての地形、天候による状況の予測、一兵に至るまでの細かな配置。
決して楽観は出来ないが……。
((
ミ; ФωФ)「信玄め!! 痺れを切らしたか!!」

家康は青筋を立て、眼に覇気が通じる。
数瞬後、熱くなっている脳をクールダウンするかのように静かに呟いた。
((
ミ ФωФ)「いや、それは違うな。
        その気になれば我らなど、簡単に捻り潰せる力があるのだ。
        戦を楽しんでおるのか……?」

その傍では、影のように付き従う最大戦力──。

(´<_` )「クーはまだ帰ってこない……か。
      だが、やるしかない 」

( ´_ゝ`)「こないだは3人がかりでダメだったのに……。
      あ〜、ヤダヤダ 」


───即ち、吸血鬼兄弟。


56 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:00:07.69 ID:Ai+edtDV0

オトジャは家康の顔を見た。
即座に分かる。
あらゆる状況を想定するも唯一つ、武田信玄の処置が決まらないのだろう。

いや、正確には決まっているのだ───。
しかし心優しき戦の天才は、その意味を十分過ぎるほど理解している。

(´<_` )「家康。信玄は我ら兄弟が何とかしよう。
      君は武田軍と戦比べだ 」
((
ミ; ФωФ)「しかし!!」

弾けるようにオトジャを見る家康。
たった今、オトジャの口から出たそれが、信玄を唯一無二の方法である。
同時に2人の親友を死地へと送り出す決断だ。

(´<_` )「良いかい、家康?
      普通の人間が魔と対峙するなどという事、本来はあってはならないんだ。
      君は堂々と自分の戦をやれば良し 」

オトジャは家康の苦しみを分かち合いたいと思った。
なればこそ、唯一の道を自らの口から出さたのだ。

(´<_` )「目には目を。
      歯には歯を。
      ……そして、魔には魔を、だ」


61 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:02:26.36 ID:Ai+edtDV0
オトジャの顔が一瞬曇った。
どれだけ通じ合っているように見せようが人と吸血鬼。
根本的に人間と違うことを心の中で悲観する。
((
ミ ФωФ)「……分かり申した。
        だがオトジャ殿、拙者は1つ思う所を言わせてもらおう 」

そんなオトジャの本心を知ってか知らずか、家康はオトジャの肩に手を置いて正面から見据える。
そして何とも心地の良い笑顔を浮かべた。
((
ミ ФωФ)「魔が人を喰らうは魔の業。
        その業故、魔は人とは共生出来ぬ。
        さればこそ、我らは立ち上がり魔を討つのである 」
((
ミ ФωФ)「だがここで疑問が生まれる。
        ならば、人と共に歩むお主らは果たして何ぞや?」

(´<_` )「それは……」

オトジャの心が、大きく打ち震えた。
((
ミ ФωФ)「人と共に生きるお主らは、最早魔に非ず!!
        拙者は 『 友 』 に!!
        『 友 』 たるお主らにこの戦で最大の敵を託し、そして戦うのだ!!」

家康は再度、オトジャとアニジャに笑いかけると突如として顔を引き締めた。
僅かに頭を下げ『御免仕る』と一言。
後は後ろも見ずに2人を残し、全軍率いて進軍の一手。

さしもの吸血鬼達も、これには痺れた──。

65 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:04:19.36 ID:Ai+edtDV0
───どれほど時が過ぎただろう。
吸血鬼兄弟は、身を打ち付ける雨の中、遠くに戦の怒号を聞いていた。
家康が魂を燃え上がらせ、闘っている。

(´<_` )「兄者……。家康が私達の事を友人だと言ってくれたよ 」

( ´_ゝ`)「あぁ。じゃ、ダチの為にも頑張らねぇとな〜 」

ここは戦場にあって隔絶されたもう一つの戦場。
家康は人の戦場に───。
そして兄弟は───。

( ´_ゝ`)「おい、そこのお前 」

(´<_` )「私達の相手をして行かないか?」
M_M
[゚曲゚ 7『オレが求めるは武のみ!!
     物を言うのはこの拳よ!!
     参れ!!存分に語り合おうぞ!!』

───魔の戦場に!!

( ´_ゝ`)(´<_` )「っ!!」

鵺を目の前にして、2人は同時に後ろを振り返った。
懐かしくも、心待ちにしていた気配。
兄弟のもう一人の親友が、遙か彼方から馬を飛ばして来ている!!


70 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:06:26.01 ID:Ai+edtDV0

(´<_` )「兄者!! クーが来た!!」

( ´_ゝ`)「良いタイミングだぜ!!
      正直、ちょっと危ないかな〜、なんてwww 」

膠着状態だった戦が、籍を切ったかのように流れ始める。
瞬時に鵺を見据えるオトジャ。
今打てる最善の手は───

(´<_` )「兄者!! 今の兄者なら取りに行った方が早い!!
      ここは私に任せて武器を!!」

( ´_ゝ`)「無茶すんじゃねーぞ!!」

アニジャもそうだと悟った。
最早オトジャを止めはしない。
任せられる───、そう判断するよりも早くアニジャは蝙蝠となって飛翔した。
M_M
[゚曲゚ 7『どこへ行く!?
     闘争は既に始まっているぞ!!』

鵺は掌に力を込めると、そこに電撃が迸る。
そしてそれを、空中羽ばたくアニジャに投擲した。
雷の矢が迸る。


73 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:08:58.93 ID:Ai+edtDV0
(´<_` )「君の相手は───」

そこに敢然とオトジャが飛び込む。
鵺の雷光を腕を十字に組んで受け止め、弾き飛ばした!!
そして鵺を、眼光鋭く睨みつける。

(´<_` )「このオトジャ・ヒロヒコ・バレンタインだと認識して頂こう!!」

鵺の電撃に劣らぬ力強い声。
それに見合うオトジャの覇気。
さしもの鵺も、このオトジャの気迫で毛先にチリチリと熱を感じる。
M_M
[゚曲゚ 7『この信玄に1人で、だと!?
     ほぅ……、全身が粟立つぞ!!
     血が沸き上がる!!
     久しい感覚!!
     その凄まじき闘気、源頼政以来よ!!』

鵺はオトジャを全力を以て殲滅すべき相手と認識。
地響きを起こす程のパワーで、地面を踏みつける。
M_M
[゚曲゚ 7『これ程の男を……』

腰を落とし筋肉が膨張。
鵺の体毛が総毛立ち、陽炎のような闘気に触れた雨粒が尽く蒸発していく。
そして鵺の姿が消える───!!
M_M
[゚曲゚ 7『失う事になるとは!!』


77 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:10:48.79 ID:Ai+edtDV0
鵺は一瞬の内にオトジャの目前に踏み込んだ。
常軌を逸するスピードだ。
だが……

(´<_` )「そう簡単に……」
M_M
[゚曲゚ 7『何っ!?』

次の瞬間、地面に転がっていたのは鵺の方だった。
オトジャは妙に落ち着いている。
冷静な目で、尋常ならざる殺気の鵺を見下ろしていた。

(´<_` )「……行くとは考えない事だ。
      人が生み出した戦場の体技、中々優れている 」

合気の技───。

オトジャはこの数ヶ月を無作為に過ごした訳ではない。
前回の鵺との邂逅で、オトジャは力の底上げを急務とした。
家康軍に存在する数多くの真の戦人───、オトジャは尊敬の念を以て彼らの技をその身に刻んだ。
M_M
[゚曲゚ 7『愉快なり!!』

鵺は笑みを浮かべ、ノーモーションで屹立した。
ダメージは殆どない。
無論、オトジャは既にそこにはいない。

81 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:13:04.71 ID:Ai+edtDV0
(´<_` )「奇遇だな。
      私もどうやら……」

そしてオトジャは、地面に横たわっていた棒の先端を踏んだ。
人の身の丈を超えるその棒は、回転しながら上空に。
そして目の前まで落下した時、オトジャはそれを掴み取る。

(´<_` )「愉しんでいるらしい!!」

それは、槍───。
吸血鬼たるオトジャが、この国で初めて決意と共に手に取った武器。
鵺の表情が愉悦に染まる。
M_M
[゚曲゚ 7『ほぅ……槍を使うか!!』

(´<_` )「本多忠勝という男が居てね。
      彼に使い方を教えて貰ったよ 」
M_M
[゚曲゚ 7『それは家康に従う剛の者!!
     本多の技を、魔たる貴様が使うか!?』

剛槍を小枝のように片手で振り回し肩に担ぐ。
半身になって空いている手を鵺に突き出した。
人の腕力では不可能な槍の使い方、それを体現するために編み出した構えだ。

(´<_` )「そういう事になる 」
M_M
[゚曲゚ 7『是非も無し!!』


88 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:16:33.11 ID:Ai+edtDV0

強大な力を持つ2人の魔の対峙。
 

或いは一粒の雨───、
或いは不意に渦巻いた風───、
或いは千切れ飛んだ一片の草の葉───。



それだけで十分だった。
それだけが、最後の邂逅の切欠となった。

M_M
[゚曲゚ 7『ぬぅぅぅぅおっ!!』

(´<_` )「おおおおっ!!」


二つの魔が、ぶつかり合う。


90 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:17:45.64 ID:Ai+edtDV0

───オトジャの脳裏に浮かぶ。



この国に来たのは、アニジャが母親と大喧嘩したからだ。
手も足も出ないのは分かっていても、それが若気の至りというヤツだ。
オトジャはアニジャが家出するだろうと分かっていたし、着いて行こうとも思った。

アニジャはどうせなら楽しい所に行こうと言った。
その手に有ったのは、ボロボロになったマルコ・ポーロ著、東方見聞録。
紆余曲折を経て、黄金の国ジパングに辿り着く。

ジパングは話に聞く楽園ではなかった。
そこは100年の戦に疲れ果てた、魔と英雄達の国。
織田信長、徳川家康、そして五代目・葛葉ライドウ───。

心から友と呼べる人間との出会い。

そうだ。
彼らの為だった───。
彼らの為に───。

(´<_` ;)「ぐっ……は……」
M_M
[゚曲゚ 7『見事なり!!』

オトジャは今、自らの体内から流れ出た血の海に沈んでいる───。


94 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:21:47.78 ID:Ai+edtDV0
血に染まった右腕を握り締め、鵺は滔々と語り始めた。
M_M
[゚曲゚ 7『我ら魔は、何かが足らぬせいで鍛錬により強くなる事は無い!! 
     それは人にのみ許された力!!
     なればこそ、我が望みは人の中に見出していたが……』

(´<_` ;)「運命を武に委ねた魔の……命運など……」

声を出そうにも、胃の底から来る血液に邪魔される。
オトジャは歯を食いしばり血の逆流を誤魔化す。
振り絞るように鵺を見据えた。

(´<_` ;)「直ぐに……枯れ果てるさ!!」

オトジャは鵺から目を逸らさない。
体は地面から動かない。
しかし、眼光から力は失せない。
M_M
[゚曲゚ 7『凄まじき武よ!!
     その命、我が命運枯れ果てるまで心に刻もうぞ!!』

鵺は腕を振り上げた。
止めを刺すべき好敵手と認めたからだ。



───その時、


97 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:23:56.03 ID:Ai+edtDV0
((
ミ# ФωФ)「オトジャ殿ー────!!」
M_M
[゚曲゚ 7『ぬぅっ!!』

完全に不意を突かれた鵺は、力を込める間もなくこれを反射的に振り払う。
としても、人の身にしてみれば深刻な打撃となった。
((
ミ; ФωФ)「ぐぅぁっ!!」

(´<_` ;)「家康!!」

オトジャの隣に弾き飛ばされる家康の肩から、どす黒い血が流れ始めた。
たった一人で戻って来たのだ。
敬愛する友を護るために。
M_M
[゚曲゚#7『許さぬ……!!
     弱き者がこの戦いを汚すなど……』

だがこの行為は鵺の逆鱗に触れた。
華々しき武の衝突、その荘厳なる幕引きの寸前だった。
鵺の闘気が沸騰し、電撃が弾け飛ぶ。

家康は這うようにオトジャの前に滲み出た。

(´<_` ;)「そこ……をっ、、、どくんだ……!!」
((
ミ; ФωФ)「南無……」


99 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:27:09.41 ID:Ai+edtDV0
M_M
[゚曲゚#7『断じて許さ───!!』

鵺が憤怒の拳を振り下ろさんとした───。
だがそれは言葉と共に強制停止した。
鵺の背中に衝撃が走る。

鵺の背に一筋の光線が突き刺さっている。
それは光を失い、矢となった。
同時に鵺の絶叫が上がる。
M_M
[゚曲゚#7『グァァァッ!!
     この痛みは!?この矢はまさか!?
     頼政───!?』

鵺は上空を見据え絶句する。
光の雨が、自らを目がけて降り注ぐのが見えた。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

─── 一方その頃。


( ´_ゝ`)「なむ はちまん だいぼさつ〜♪
      なむなむ はちまん だいぼさつ〜〜っと♪」

アニジャの手には極端に巨大な弓。
そして傍らの箙には、十分過ぎるほどの矢が詰まっている。
一鎌の矢───、かつて源頼政が使用した、妖魔封じに必携とされた武器だ。

104 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:30:02.01 ID:Ai+edtDV0
( ´_ゝ`)「ちぇ……。Qooのヤツめ。
      そんなにオレに良いトコ持って行かれたくないのかねぇ?」

アニジャはここで一休み。
文字通り一息だけ吐いて、即座に次の矢を番える。

( ´_ゝ`)「え〜と、なんだっけ?
      あ、そうそう。
      なむ はちまん だいぼさつ〜♪ 」

クーに教えられたこの真言を唱えながら射る。
放たれた矢は、瞬時に光を纏って高速で飛び立った。
その全てが、数里先の鵺に直進する。

( ´_ゝ`)「オレって弓のセンスあんのかな?www
      面白いくらい当たるぜwww」

神器と真言の力だが、ノリノリのアニジャには関係ない。
ただ、自らに課せられた仕事を、弟の為にきっちりやるのみだ。

( ´_ゝ`)「Qooが刀を持ってそっちに行くぜ!!
      しっかりキメろよ、弟者!!」

そしてアニジャは再び矢を番えた。

(*´_ゝ`)「そういえば……。
      クーが連れてたあの良い女は、一体誰だろね?」

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

108 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:33:42.87 ID:Ai+edtDV0
 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼
M_M
[゚曲゚#7『頼政の亡霊め!!
     よもや再び『一鎌の矢』を射られようとは!!
     だが同じ手がこの鵺に通じると思うな!!』

彷徨一閃。
鵺を纏う電撃が一層強くなる。
数本の矢が焼き切られた。

(´<_` ;)。o ○(クッ……!! 声が……!!
          家康!?家康は無事なのか!?)

オトジャは血を流し過ぎた。
脳が冷たくなり、視界が暗い。
僅かに残された力は自らの延命ではなく、友の無事を探るのに使う。

鼓動は感じる。
直ぐ近くから、だが凄く弱い。
深刻なダメージを追っているようだ。

(´<_` ;)。o ○(これは!? 家康の血!?
          この出血量は早く手当てをしないと!!
          クソ!! 体が……!!)


111 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:35:25.38 ID:Ai+edtDV0

不意に鼻を突くのは、自分のそれとは違う血の臭い。
そこだ───、家康はまだそこに居る。
((
ミ ФωФ)「オトジャ・ヒロヒコ・ヴァレンタイン殿……」

オトジャが認識するとほぼ同時に、家康の声が耳に届いた。
戦の中とは思えない程に優しい声だ。


(´<_` )。o ○(何をしている……。早く逃げろ……)

だが家康の考えは違った。
家康は血みどろの手をオトジャの鼻先に翳す。
そして、父が子に語りかける様に言った。
((
ミ ФωФ)「早くせぬか。
        共に、闘おう───」

・・・・・・・・・・


・・・・・


・・


114 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:38:23.26 ID:Ai+edtDV0
M_M
[゚曲゚ 7『ぬぅぅぅぅぉぉぉぉぉおおおお!!』

鵺の雄叫びと共に、激しい雷光が迸る。
針鼠のように突き刺さっていた矢の全てが、この電撃で炭と化す。
M_M
[゚曲゚ 7『 小 賢 し !!
     我を真に討ち滅ぼすには足らぬわ!!』

鵺とは実態の無い幻───、決して倒せない───。

       オン  ベイシラ マンダヤ ソバカ
イ从 〓 )「ロ庵 吠室ロ羅 縛拏野 莎賀!!
      毘沙門天 夜叉走牙!!」

M_M
[゚曲゚ 7『っ!?』

突如、白頭巾を目深に被った一騎の武者が戦場に乱入した!!
複雑に組んだ両手から、青白い光が巨大な蛇となって信玄に牙を剥く!!
信玄はエネルギー体の大蛇の顎を掴み、強引に上下に引き裂いた。

騎兵が馬上から鵺を見下ろす。
ゆっくりと白頭巾を下げ、その顔が露になった。


121 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:41:34.38 ID:Ai+edtDV0
イ从゚ ー゚ノi、「闘争を楽しもうぞ、宿敵!!」
M_M
[゚曲゚ 7『謙信!!』

越後の龍、退魔王・上杉謙信。
女と見紛う程の白く透き通った肌と端正な顔立ち。
彼を連れて来たのは無論───、

∫λリ゚ -゚ノノ「武田信玄と決着を付けるのだ!!
        このお方がおらねば始まらんでゴザる!!」

五代目葛葉ライドウ!!
その手には、幾重にも封印された命を食らう妖刀。

∫λリ゚ -゚ノノ「オトジャ殿!!」

クーは投げた。
その先には……。


123 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:43:35.16 ID:Ai+edtDV0
(´<_` )「………」

立っている───。
傷は塞がり、一つの壁を突破した吸血鬼。
足元には失血の中、ギリギリの所で意識を繋ぎとめている徳川家康。

血液とは魂の通貨。
意志の銀板。

アニジャがお市の方によってそうなったのと同様。
オトジャは徳川家康の血液によって───、

オトジャの手に、遂に鵺を倒す唯一の物が握られた。
封印ごと一気に抜刀する。

(´<_` )「これが、妖刀百足丸……」

妖しくも美しい刀身が露になる。
反射する光が、纏わりつく大きな百足を連想させた。
M_M
[゚曲゚ 7『獅子王!?』

刀から発する恐るべき妖気に鵺は反応する。
雨が、止んでいる───。


130 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:46:39.87 ID:Ai+edtDV0
(´<_` )「妖刀か……。
      君のお蔭だ、家康。
      君のお蔭で、私はこの刀を振るう事が出来る 」

血を失い紫になった家康の唇が僅かに歪んだ。
感じるのだ。
オトジャから漲る力の中に、自分の魂が息付いている事を。
M_M
[゚曲゚ 7『獅子王!!獅子王か!!
     オレが恐れし唯一の力!!
     誰にも使わせまいと呪いをかけたが……』

鵺は上杉謙信でもなく、葛葉ライドウでもなく、徳川家康でもなく───。
オトジャ・ヒロヒコ・ヴァレンタインのみを見ている。

そのオトジャは握るだけで掌から刀に力を吸い取られていくのを感じる。
オトジャの見通しは甘かった。
ヴァンパイアですら、─── いや、だからこそ持っただけで魂は終わっていただろう。

だが、今は違う。
徳川家康の血液によって、ヴァンパイアマスターとなった今は。
彼の血により、少しだけこの刀を使う時間を得られたのだ。

133 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:48:15.91 ID:Ai+edtDV0
M_M
[゚曲゚ 7『ふはっ!!ふははははははははっ!!
     良かろう!!
     よくぞ我が前に再び現れた!!
     過去の恐怖は自らの力で打ち破るのみ!!』

駆ける───。

(´<_` )「─────ッ!!」

迎え撃つ───。

しかし今、鵺がオトジャの元に辿り着くには障害を越えなければならない!!
第一の障害は今も天空から降り注ぐ光の矢、一鎌の矢だ───。
M_M
[゚曲゚#7『痒いわ!!』

鵺は電撃を発散する。
半数以上の矢がこれで打ち砕かれたが、意識がオトジャに向いている今は全回避とはいかない。
身体を貫く必殺の矢だが、鵺の進軍は止められない!!

137 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:52:22.27 ID:Ai+edtDV0
イ从゚ ー゚ノi、「今は塩は贈らぬぞ!!」

∫λリ゚ -゚ノノ「人としての意地、馳走仕る!!」
M_M
[゚曲゚#7『退け!!』

第二、第三の障害が同時に刀を振る。
退魔の鋭刃が鵺の皮膚を滑る。
以前アニジャとクーの攻撃を防いだ時と同じ現象だ。

しかし遅れて鵺の両腕から鮮血が飛んだ。
防御に全意識を割けなかったからだろう。
しかしそれれでも、鵺の進軍は止まらない!!

(´<_` )「君は強いな……。
      たった一人で我ら全員を相手にするとは…… 」
M_M
[゚曲゚#7『ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』

鵺の懇親の一撃がオトジャの腹を撃ち抜いた───。
……かに見えた。
そこから漏れたのは血液ではなく───。
M_M
[゚曲゚#7『これは……、霧!?』


140 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 22:57:19.12 ID:Ai+edtDV0
鵺は目と鼻の先でオトジャの顔を目視した。
こんな顔をしていたか……。
鵺はこの顔を網膜に焼きつけ……。

M_M
[゚曲゚ 7『……フッ』


笑った。



(´<_` )「ハッ!!」

最後の雷が落ちた───。




───雨は既に、止んでいる。





143 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:01:37.36 ID:Ai+edtDV0
M_M
[゚曲゚ 7『………』

(´<_` )「………」

静寂───。
M_M
[゚曲゚ 7『我が闘争……』

静寂を破ったのは鵺。
オトジャは微動だにしない。
鵺の肩先から逆の腰に掛けて───、
M_M
[゚曲゚ 7『……終焉なり!!』

鮮血が吹き出した。
その勢いに押されるかのように、鵺は背中からゆっくりと地面に沈む。
ヴァンパイアマスター、オトジャの勝利の瞬間だった。

149 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:08:23.50 ID:Ai+edtDV0
鵺は全身の力が抜けていくのをリアルに自覚していた。
妖刀百足丸───獅子王が刻んだ傷口から魂のレベルで消耗していく。
自身が怖れた最強の退魔の剣……。
しかし、消耗が徐々におさまっていく。
M_M
[゚曲゚ 7『急所を外して……』

鵺は目を開けた。
仰向けになった状態で視界に入るのは、黒い雲の切れ目から差し始めた太陽の光だ。
そして、オトジャから受けた一撃が、重症ではあれ命を奪うには至らないことを理解した。
M_M
[゚曲゚#7『キサマ……』

鵺は怒りとともにオトジャを睨み付ける。

───情けをかけられた。
屈辱とも言える所業だった。
しかしオトジャは静かに語りかける。

(´<_` )「私に血をくれた家康はこう言った。
      『人と共に生きる私達は魔ではない』とね。
      私は人の世を脅かす魔を討ち滅ぼすのだ。
      君は……」

オトジャは彼方を見る。
家康軍との戦を放り出して、主を救わんと武田軍がこちらへ猛進して来ていた。

(´<_` )「そうではないんだろう?」

157 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:13:01.58 ID:Ai+edtDV0
M_M
[゚曲゚#7『貴様、オレを愚弄するか!?』

(´<_` )「何とでも言うと良い。
      私はもう君に止めを刺さない。
      無益な殺生はしない。それがルーマニアの紳士だ 」

ちらりと彼方の軍塵を見やる。
武田軍は大分近づいて来ている。
そろそろ頃合いか。
M_M
[゚曲゚#7『その言葉……、必ず後悔する事になる!!』

(´<_` )「その時は受けて立とう。何しろ私も……」

オトジャ家康の元へと歩みより、肩に担いだ。
そして家康と鵺の顔を見て微笑んだ。

(´<_` )「真の吸血鬼とやらに成ったようなのでね 」
M_M
[゚曲゚ 7『………』

この顔を見て、本人とっても意外だったが鵺の怒りは霧散した。
妙に静かな気持ちだ。
((
ミ ФωФ)「全軍、退却でゴザる!!」

鵺は追おうとは思わなかった───。

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

159 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:16:19.91 ID:Ai+edtDV0
 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

武田信玄病死───。

その一報が入ったのは2ヵ月後のことだった。
激戦の地、三方ヶ原。
アニジャとオトジャは、春の風に身を任せながらゆっくりと歩いていた。

( ´_ゝ`)「おいおいおいおいおい、おぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
      アイツ死んだらしいじゃん!?
      こんなにすぐ死ぬんなら、別に頑張らなくても良かったじゃん!! 」

オトジャは微笑みを浮かべて、柔らかく首を振った。

(´<_` )「そんなに簡単に死んでたまるものか。
      どうやら分かってくれたらしい。
      この国は、人の手に戻さなければならないという事を 」

兵馬に踏み荒らされた平野に、早くも草花が芽吹いている。
放置さえた刀や槍が、草に覆われている。
誇り高き侍達の夢の跡だ。

163 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:20:38.21 ID:Ai+edtDV0
(´<_` )「ところで、悪くはないね 」

( ´_ゝ`)「ん?何が?」

(´<_` )「ヴァンパイアマスターだよ 」

(*´_ゝ`)「あ〜。お前YEAHSで童貞捨てちゃったんだって?プwww」

(´<_` ;)「その著しく誤解を招く言い方はよせ……」

自分は妹者だからと言って優越感に浸っているアニジャ。
かつては彼女の血を飲んだ事で、罪悪感に苛まれていたというのに。

(´<_` )「まぁ、それは良いとしよう。
      ところで兄者、私達は2人ともこれで母者に並んだ事になる。
      もしかして今なら……」

( ´_ゝ`)「勝てるかも……?」

兄弟は顔を明るくして、互いを見た。
そして同時に言う。

( ´_ゝ`)(´<_` )「「無理だな 」」


166 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:23:40.31 ID:Ai+edtDV0





          ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━

             ――――第三章・或る兄弟の東方見聞録――――


                     〜その4、最強の虎〜



                           終






167 名前:予告編 ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:24:36.64 ID:Ai+edtDV0
人間五十年、

  ───サルよ。オレはお前のお陰で人間らしく生きたぜ……



下天のうちを比ぶれば、

  ───良い……、夢が見れた……



夢幻の如くなり

  ───ありがとよ……



((
ミ ^Д^)「敵は……」




      本 能 寺 に 有 り !!!!


171 名前:予告編 ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:27:59.51 ID:Ai+edtDV0

日本史上最悪のクーデター勃発。

その陰には……


──────

( <●><●>)「戦国の世……。終わらせるには惜しいこの世の地獄……。
         実に惜しい……。クフフフフ……」

暗躍する月下の怪人。
                           ──────
──────

.∧(oノヘ
/(゚Д゚#{ | 「叔父上ぇぇぇぇ!!愚かな事をぉぉぉぉぉ!!」
((
ミ ^Д^)「左馬介……。貴方には教育が足りなかったようですね。
      な〜に……。まだ、間に合いますよ……」


明智左馬介に迫る不穏な光秀の魔手───。

                           ──────

173 名前:予告編 ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:29:02.73 ID:Ai+edtDV0
──────
▼・ェ・▼「御館様!!クッ……、ご無念でございます!!」
((
ミ ´_ゝ`)「是非も無し。なぁ〜に、まだサルが居るさ 」


炎の中でなおも笑う、織田信長が見た未来とは───?
                           ──────
──────
((
ミ; ^Д^)「馬鹿な……!!早い、早すぎる!!
      サルめェェ!!これ程までの化け者だったのか!?」


今明かされる豊臣秀吉の大返し、そのカラクリとは───?
                           ──────

176 名前:予告編 ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:30:56.96 ID:Ai+edtDV0
( ´_ゝ`)「テメぇの敗因はたった一つ。
      たった一つのシンプルな答えだぜ光秀……」

(´<_` )「貴様は私達を……」

( ´_ゝ`)(´<_` )「「 怒 ら せ た ・ ・ ・ 」」





          ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━

             ――――第三章・或る兄弟の東方見聞録――――


                   〜完結編、ジパング・黄金の国〜

180 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:34:07.25 ID:Ai+edtDV0
今日の投下は以上です
鵺強かった〜〜〜

スレ立てや沢山の支援ありがとうございました
ではでは

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/28(日) 23:33:13.14 ID:btVV0m960
大麻さんお帰りなさいー!というか昨日から投下してたのか
元ネタの孔雀王二次探して10数年彷徨って結局ホモしかなくて凹んでる時にブーンの退魔師稼業を知って早1年・・・
狂おしい程続きを待ってたよ!
ブーンとツンよりも、荒巻とツン(の中の阿修羅)がどうなるのかwktk

そしてオトジャ、マジイケメン
人の手に戻す・・・これで鵺は織田信忠と松姫の婚姻同盟を考えたのかな

189 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/28(日) 23:40:45.81 ID:Ai+edtDV0
>>178
読み込んでくれてますね、嬉しいな〜
次の話を書くパワーになります
元来オトジャはアニジャよりイケメンの設定だったんですが、ここにきてようやくアニジャに追いつきましたw

元ネタ探して見つかったホモってのが気になる……

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