第三章・臨界突入!!立ち込める暗雲、少々の〜その4、最強の虎〜 前編
9 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:40:00.30 ID:uu0p+Wbd0

DANGER■□■CAUTION■□■WARNING■□■DANGER■□■CAUTION■□■WARNING■□■


( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━

第三章には

     『吐き気をもよおすほどのジョジョネタ』
    
     『クサレ脳味噌かと疑う程の著しい歴史歪曲』

     『だがそれも良くない花の慶次ネタ』←new !!

……が含まれている危険があります。

もし何かを感じたら窓を開けて充分に換気した後、安静にする事を固くお願いします。
作者と君との約束だ。


DANGER■□■CAUTION■□■WARNING■□■DANGER■□■CAUTION■□■WARNING■□■


12 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:41:46.21 ID:uu0p+Wbd0

このブーン系小説は

原作『孔雀王』

内藤エスカルゴ様
http://www.geocities.jp/local_boon/

の提供で




以下、何事もなかったかのように再開します


15 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:42:45.86 ID:uu0p+Wbd0
いつもと変わらないバーボンハウスは、いつもと変わらず客は来ない。
ただいつもと違う所は、吸血鬼が昔話をしている事だ。
400年も昔の、戦国時代の話を。

( ^ω^)「へ〜。嘘っしょ?www」

昔話を語る吸血鬼───オトジャが、2つ目の話を終えた時、
ブーンはもう我慢できねェと笑い出した。
周囲を見回すと、ツンとヒートはブーンをシカトして感想を言い合っていた。

アニジャがどうだった、いいや、クーの御先祖様がどうだったと話は尽きない。
ブーンは少し嫉妬した。

それからハインとでぃだが……
       ∧_∧
从-∀从 (*-;;_-)Zzzzzz……

もう完全に酔い潰れていた。
そう言えば、いつの間にかハインはちゃんと目を瞑って寝ている。
でぃは彼女の膝の上で、仰向けになって伸びていた。

20 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:44:34.14 ID:uu0p+Wbd0
(´<_` )「ハッハッハッハッハ。
      ブーン君、紅茶の御代りは?」

( ^ω^)「はっはっはっはっは。
      頂きますお 」

ブーンの心中では振り子のように、オトジャの話を『信じる・信じない』が行ったり来たり。
ブーンは誤魔化すように、今オトジャが優雅に淹れてくれた紅茶を一気に呷った。
口の中を火傷した。

ξ゚听)ξ「ブーン、まだ拘ってんの?
    認めちゃいなさいよ。本当は嘘じゃない事、分かってるってさ 」

(;^ω^)「う……それは……」

ノパ听)「男の嫉妬は情けないぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」

(;^ω^)「お前は黙ってろお。うっせーんだお 」

(´<_` )「ハッハッハッハッハッハッハ。
      年寄りに昔話をさせると長いだろう?」

25 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:45:50.83 ID:uu0p+Wbd0
ブーンは完全に不利に追い込まれていた。
ツンやヒートのように、キャッキャウフフと盛り上がれたら、それはもう楽しいだろう。
ブーンだって、有名なのに資料の乏しい戦国武将の話は聞いてみたい。
前田慶次とか。

その時代に自分が居たら、歴史に名を残していたかもしれないとも思ったりする。
魔から人の世を取り戻す時代だった?
だったら、退魔師たるブーンはどれほど重用されただろう。

そんな妄想などをしている自分に気付き、ブーンは自分の負けだと照れ笑いした。

(;^ω^)「わーかーりーまーしーたーおッ!!
      もう嘘だなんて思わないお 」

(´<_` )「おや? ようやく白旗を揚げたんだね、ブーン君 」

( ^ω^)「まぁ、とりあえずこの場はそういう事にしとくお 」


28 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:47:07.05 ID:uu0p+Wbd0
と、そこに向こうの部屋から叫び声が聞こえた。
ショボンがアニジャを監禁している部屋だ。
2人で、来週の『徐々に奇妙な冒険』の原稿を書いている。

─── 「うぉぉぉぉー!!
     これは───!!この展開はまさに!!
     ───震えるぞハートォォォォォォ!! 」

どうやら原稿が書き上がったらしい。
アニジャの声は歓喜に満ちていた。

─── 「燃え尽きる程ヒートォォォォォォォォ!!」

ショボンの雄叫びも続く。
普段はクールなショボンがこんな声を出すなんて。
どうやら相当に出来の良い物が出来上がったらしい。

─── 「刻むぞ!!出来たばかりの原稿ぉぉぉぉぉぉぉ!!」

そしてショボンも続……

─── 「おい。何を『 刻 ん だ 』って?」


32 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:49:20.36 ID:uu0p+Wbd0
その後、暫く言い争うような声が。
今は片方が泣き叫ぶような声が聞こえる。

(;^ω^)「………」

あぁ、ショボン。
久し振りに『アレ』が出たな……。
ブーンはアニジャの不幸を思うと本当に悲しくなった。

あ、作業部屋の扉が開いた。

( #_ゝ#)「た……たすけ……」

一瞬姿を見せが、ドアの隙間から何者かの腕が出てきて、アニジャは闇へと消えた。

(;^ω^)「あれって、ヴァンパイアマスターだったっけ?」

ξ;゚听)ξ「多分……」

(´<_` )「アニジャが真面目に仕事をするとは……。
      ショボン君、やはり中々やるな……」

身の毛もよだつ不幸が降りかかるよりは、仕事した方がずっとマシだろう。
それがどんなに怠けものであってもだ。


35 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:50:24.29 ID:uu0p+Wbd0
( ^ω^)「ん?ちょっと待ってお。
      そう言えばアニジャさんって、クーさんに初めて会った時何て言ったんだっけ?」

(´<_` )「ハッハッハ。よく覚えているね、ブーン君。
      当時3歳だった彼女への最初の言葉は、『ょぅι゛ょFoooooo!!』だ。
      派手にダイブをキメたんだが、寸での所で葛葉嬢の父上にブッ飛ばされた 」

ξ゚听)ξ「おい。話が違うぞ 」

どうも、話の中のアニジャと今のアニジャが食い違う。
この400年の間に、強く頭でも打ったのだろうか?
2度や3度では済まない程、脳汁が出るまで強打しているのかもしれない。

(´<_` )「アニジャは大人になった市さんが、美しくなったのを見ているからね。
      全ての少女には、将来美しくなる可能性がある。
      ならば、全ての少女を自身の手で守ってやる。
      ……そう思っているらしい 」

( ^ω^)「本当に? マジで? 裏は無いの、裏は?」

ξ゚听)ξ「釈然としない何かを感じるわ……」

ノパ听)「つまり、アニジャは変態って事で良いんだろぉぉぉぉぉ!?」


42 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:52:29.68 ID:uu0p+Wbd0
(´<_` )「おや、もうこんな時間か。
      君たち、家に帰らなくても平気なのかい?」

オトジャはツンとヒートを心配そうに眺めた。
ハインは別に気にしていない。
この様子だと、このまま朝まで寝ているだろう。

ξ゚听)ξ「ウチは平気。
      昔ブーン達に助けられたってのもあって、
      『バーボンハウスに行く』って言えば何も問題ないわ。
      結構信用あるのよ、ブーン達 」

ノパ听)「私はツンの家に泊まるって言ってあるから平気だぞぉぉぉぉ!!」

ξ゚听)ξ「いや、聞いてないけど……」

(´<_` )「しかし、若い娘さんが夜更かしするのは頂けないな。
      充分な睡眠は、美容と健康には何よりも重要だよ?」

『え〜、だって〜』とか何とか言ってる女子高生を、優しく宥めている吸血鬼。
意外と考え方は古いらしい。
ブーンは感心したようにオトジャを見ていた。

と、そこである事に気付いた。

49 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:53:44.47 ID:uu0p+Wbd0
( ^ω^)「オトジャさん。
      アニジャさんって妹者の血を飲んでパワーアップしたんだお?
      それで吸血鬼の本領を発揮出来るようになったんだお?」

(´<_` )「そうだよ、ブーン君。
      ヴァンパイアマスターとなったアニジャは、絶大な魔力を手に入れた。
      霧や蝙蝠に変身出来るようになったのは、その結果だ 」

これを聞いて、ブーンの脳裏に過ぎった疑問は明確になった。
オトジャも姿を変える事が出来るのだ。
つまり、霧や蝙蝠に。

(´<_` )「その顔は……気付いたようだね、ブーン君 」

( ^ω^)「オトジャさんも、誰かの血を飲んだのかお?」

ツンとヒートもはっとする。
もしオトジャが今のオトジャになったのもアニジャと同時期ならば、そのエピソードがあるはずだ。


56 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:55:04.99 ID:uu0p+Wbd0
(´<_` )「君達に子守唄でも歌ってやろうかと思っていたのに。
      寝物語になってしまうようだね 」

事実、オトジャがヴァンパイアマスターに覚醒したのもこの時代の事だった。
どうやら、次の話が決まったようだ。

(´<_` )「血を吸うという行為は、私達の家族にとってはあまり自慢にならない。
      私の人生で唯一、人の血を吸った話だ。
      出来れば避けたいんだがね……」

だが、ブーン達3人の目は期待でいっぱいだ。
オトジャは『やれやれだぜ』と肩をすくめて笑った。

(´<_` )「フフッ。どうやら話さないわけにはいかないらしい。
      アニジャの話もしたんだ。
      私の事も言っておかなければ、不公平とも言えるね 」

オトジャはそう言って、皆のティーカップの紅茶を淹れ替えた。

80 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 20:58:36.10 ID:uu0p+Wbd0




          ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです━╋RETURNS━━

             ――――第三章・或る兄弟の東方見聞録――――


                     〜その4、最強の虎〜






83 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:00:07.20 ID:uu0p+Wbd0
        オン  ベイシラ マンダヤ  ソバカ
イ从   ノi、「ロ庵 吠室ロ羅 縛拏野 莎賀……」

ここは小さな社の中。
暗闇の中央には、煌々と炊き上がる護摩の祭壇がある。
炎は、周囲の闇を赤く染め上げていた。
祭壇の鏡には、炎と累々と積んだ木片が鮮やかに写る。

炎が焦がす高温の空間。
火の子が舞い上がり闇に溶けて行った。
        オン  ベイシラ マンダヤ  ソバカ
イ从   ノi、「ロ庵 吠室ロ羅 縛拏野 莎賀……」

そこには、一心に呪文を唱える1人の男。
その言魂には鬼気迫るものがある。
この真言……、毘沙門天の真言を唱える男こそ……。
        オン  ベイシラ マンダヤ  ソバカ
イ从゚ ー゚ノi、「ロ庵 吠室ロ羅 縛拏野 莎賀……」

……越後の龍、聖将、義将、軍神。
─── 退魔王・上杉謙信。
絶大な法力で魔に立ち向かう北国の雄。

90 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:01:36.17 ID:uu0p+Wbd0
織田信長と上杉謙信。
この2人が、戦国に於いて魔を打ち滅ぼす双璧。
人類にとっての急先鋒にして最後の砦だ。

だがここの所、上杉謙信の動きはほとんどない。
快進撃を続ける信長と比べると、あまりにもその差は明らか。
実質、魔と闘っているのは信長のみだというのが現状だ。
       オン ベイシラ
イ从゚ ー゚ノi、「? 吠室? ……。ぬぅ……!!」

しかし謙信は、断じて怠惰に過ごしている訳ではない。
今この瞬間も灼熱の護摩の前に鎮座し、たった1人で戦っているのだ。
       
イ从;゚ ー゚ノi、「クッ……、抑え切れんか!!」

歌うように唱えていた真言の声が突如乱れる。
今は苦痛の入り混じった声だ。

上杉謙信の守護神───毘沙門天は戦場の神。
加護を受ける者は、即ち最強の武人と言っても過言ではない。
その謙信が、全身全霊をかけて抑え続けたモノ───。

94 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:03:05.53 ID:uu0p+Wbd0
イ从;゚ ー゚ノi、「ぬぅぅぅぅぅ!!」

謙信の全身を波動が貫く。
───ヤツが動く……。

イ从;゚ ー゚ノi、「うぉぉぉぉぉぉぉぁぁああ!!」

その時、祭壇の中央にあった鏡が割れた。
同時に波動が風となり、一気に吹き抜けて行った。
風は煌々と燃え上がっていた炎を一息で吹き消し、後には暗闇ばかり。

イ从#゚ ー゚ノi、「………」

周囲の温度は急降下し、夜の冷たさが戻ってくる。
謙信は色白の顔を、怒りに染めて立ち上がった。
燃え残った薪が、軽い音を立てて崩れ落ちる。

炎に照らされ橙色に染まっていた先程とは、様相が打って変わってしまった。
今はただひたすら闇一色。
その中で真っ直ぐに立つ謙信だけが、闇に属さない物だった。

106 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:05:53.59 ID:uu0p+Wbd0
その上杉謙信───。

たった1人で抑えていた魔の名を苦々しく呼ぶ。
この時代、人の世に現れた最強の魔。
その名は……。

イ从#゚ ー゚ノi、「……信玄───」

謙信はゆっくりと社を出た。
遠くの空を見る。
おぞましい雷鳴が、分厚い雲を切り裂いていた。

解き放たれたのだ。
雷と共に。
上杉謙信の絶大な法力を以ってしても、抑えられぬ最強の魔。




─── 『 鵺 』が。




 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


116 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:08:30.63 ID:uu0p+Wbd0
 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

─── 1572年、冬。

この時の織田信長の本拠地は岐阜城。
聳えるこの山城からは、城下の様子がよく見える。
この岐阜では信長の庇護の元、人々が幸せに暮らしていた。

勿論、町人の1人1人の顔を見ることなど普通は不可能。
しかしこの山城に於いて、肉眼で人々の様子を見ている者が居た。
平和を目視し、ニヤニヤと嬉しそうに笑っている。

( ´_ゝ`)「よしよし。今日も城下は異常無しな。
       お、あそこで可愛いチャンネーが道に迷ってんな。
       シャー!! 助けに行ってちょっと良い仲になっちゃうぜぃぇぃぇぃwww」

アニジャ・アラーキー・バレンタイン───、木下藤吉郎秀吉である。
今は織田信長の客将として、VIP待遇を心の底から満喫している。
その正体は、ルーマニアから家出して来た吸血鬼である。


123 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:10:15.20 ID:uu0p+Wbd0
このアニジャ。
家族は当然吸血鬼だが、誰も彼もが人との共生を楽しむ。
よって、今アニジャは人々がニコニコと笑いながら生きているのを見て、大変満足気だ。

そのアニジャの元に、目を見張るような派手な着物を纏った大男が近付いて来た。
.∧(oノヘ
/(゚ー゚ { | 「おや?ほ〜ぅ!!
      どうかね? 城下見物は!!
      何か面白い物が見えるかね!?」

( ´_ゝ`)「ん? お前は……」

アニジャはこの男に顔を向けると同時に瞠目した。

2mに届くのではないかという身長───、
これは長身のアニジャですら見上げる羽目になった。
そして虎の毛皮の腰巻に始まり、深紅に染め上げた小袖、
更に袴などは金銀に煌いている。

髷は天に向かって真っ直ぐ1本結い上げ、身長がますます高くなった格好だ。
腰には朱色の鞘に納められた、見事な大小がぶら下がり、
脇には恐ろしく巨大でやはり朱色の槍を鞘に入れて抱え込んでいる。

世間では『傾奇者』と呼ばれるこの様な男。
如何にも恐ろしい見た目格好をしているが、
その顔は何とも涼やかで、少年の様な屈託のない笑顔を見せていた。

128 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:11:45.65 ID:uu0p+Wbd0
.∧(oノヘ
/(゚ー゚ { | 「アンタぁ、サル殿だろぅ!?
      金ヶ崎じゃ、良いモン見せて貰った!!
      とんでもなく強いねぇ!!」

遠慮なくズカズカと近寄り、アニジャの肩を揉みしだく大男。
アニジャは不意を突かれたが、無法という点ではアニジャも負けてはいない。

( ´_ゝ`)「セクシーだってことも忘れるなよ。
      喧嘩が強い上に男前。
      それがオレ。Do You Understand?」
.∧(oノヘ
/(゚ー゚ { | 「わはははははっ!!
      サッパリ意味が分からんねぇ!!
      それはさて置き……」

アニジャはこの男に確かに見覚えがあった。
金ヶ崎の戦いの時、増援として駆け付けた明智光秀の軍にいた男。
恐るべき武力で、魔兵を薙ぎ倒していた男だ。
.∧(oノヘ
/(゚ー゚ { | 「どうだい、サル殿!?
      オレと少しだけ、手合わせでもしてみんかね!?」

その表情が物語る事はただ1つ。
強者への『興味』である。

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/27(土) 21:13:35.80 ID:uu0p+Wbd0
アニジャは自身の力を自覚している。
まともにやり合えば、人間相手では勝負にならない。

( ´_ゝ`)「止めとけ止めとけ。
      クーならまだしも普通の人間がオレ様に……」

だがアニジャは途中で言葉を止めた。
いや、遮られたと言った方が正しいだろう。
大男は自身の力を誇示するように、脇に抱えていた巨槍を小枝のように振り回したのだ。
その槍使いは高尚な演武の意気に達しており、並の使い手では無い事を物語っている。
.∧(oノヘ
/(゚ー゚ { | 「アンタぁ、敵が弱過ぎて退屈してるだろ?
      オレもさ。
      オレ達みたいに強い奴ぁ、戦場で燃える事も出来ない。
      ……違うかい?」

( ´_ゝ`)「馬鹿言ってんじゃねぇよ。
      オレはな、楽して勝ちたいから強い奴は嫌いなの 」

これは半分は本当だが半分は嘘だ。
アニジャは元から、そして妹者の血を吸って以来は尚更、敵と言える敵はいない。
だが周囲の人間達は命を燃やして戦っている。
その温度差が、アニジャに一抹の不安を抱かせていた。


143 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:15:49.48 ID:uu0p+Wbd0
アニジャはこの健やかな大男を見る。
この体格に先程槍を振るった人間離れした腕力。
この男も同じなのだと思った。

( ´_ゝ`)「……ま、ちょうど退屈してた所だ。
      ちょっとくらいなら、じゃれてやっても良いぜ?」

互いに向かい合い、大男が槍を構えた。
その瞬間、空気が張り詰め、小虫や鳥が息を潜めた。
少なくともアニジャはそう感じた。
.∧(oノヘ
/(゚ー゚ { | 「良いねぇ、そうこなくっちゃ!!
      では、いざ尋常に───」

まさに大男がアニジャに飛びかかろうとしたその瞬間───
((
ミ ^Д^)「アニジャ殿 」

横合いから、2人とは余りにも対照的な冷え切った声がかけられた。
そのテンションの違いで、思わず気が抜ける。
((
ミ ^Д^)「殿がお呼びにございます 」

空気を読まないこの男は明智光秀。
2人の事情など一切知らぬといった顔をしている。


148 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:18:02.18 ID:uu0p+Wbd0
( ´_ゝ`)「ち、なんだよ。急ぎなの?」
((
ミ ^Д^)「急ぎかどうかなど関係ありませんよ。
      お館様が待っておいでです 」

アニジャは何か言おうとしたが止めた。
完全に白けてしまったのだ。
だが、この男との繋がりは個人的に持っておきたいと思った。

( ´_ゝ`)「あ〜ぁ。仕方ねぇな。
      じゃ、勝負はお預けだな。『左馬之助』」

この時、光秀の乱入により、不貞腐れていた大男の顔に再び輝きが戻る。
見る見るうちに少年の様な笑顔を再び浮かべた。
.∧(oノヘ
/(゚ー゚ { | 「なんだ。知ってたのかい?www」

( ´_ゝ`)「へっwww」
.∧(oノヘ
/(゚ー゚ { | 「今度、絶っっっっ対手合わせ頼むぜ!!
      約束だ!!  秀 吉 殿!!」

160 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:21:08.03 ID:uu0p+Wbd0
大男こと明智左馬之助秀満は心から懇願した。
アニジャは既に信長の元へ歩いている。
だが、この声に答えたのか、後ろ向きのまま右拳を突き上げるのだった。
((
ミ ^Д^)「左馬之助……。
       あの方は信長様のお気に入り。
       勝負など挑んで、怪我でもさせたら事ですよ?」

じっとアニジャの背中を見つめ続ける左馬之助に、ようやく光秀は声をかけた。
この天真爛漫な甥には昔から苦労させられている。
そしてその人間離れした強さも充分に承知している。

光秀は単純に、この甥がアニジャを傷つける事を恐れたが……。
.∧(oノヘ
/(゚ー゚ { | 「なぁ〜に、叔父上。
      怪我で済まないのは多分オレの方さ 」

左馬之助の見解は違った。
たった数秒、本気で対峙しただけで痛感したのだ。
───敵うわけがない、と。

涼やかで満足そうな左馬之助。
これを怪訝に一瞥すると、光秀はアニジャの後を追った。

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


166 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:22:54.01 ID:uu0p+Wbd0
 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼
((
ミ ^Д^)「アニジャ殿をお連れしました 」
((
ミ ´_ゝ`)「おぅ、来たか『サル』www」

( ´_ゝ`)「何か用かよ、阿呆?」

信長の部屋に着いたアニジャ。
未だにサルと呼ばれる事を、心の底から納得してはいない。
((
ミ# ´_ゝ`)「んだと!? このサル!!」

(*´_ゝ`)「阿呆、阿呆、ド阿呆。
      あ〜HO〜う〜〜〜〜〜 」

ある日、アニジャは少年時代の信長が『うつけ者』と呼ばれていた事を聞きつけた。
それ以来、アニジャはサルと呼ばれた反撃としてこういう言葉を用いる。
こういう時、基本的に周囲はドン引きだ。
((
ミ ´_ゝ`)「クッソ、でもまぁ良いや。
      でな、サル。
      狸小僧の奴が困った奴に目を付けられてんだよ 」

( ´_ゝ`)「YEAHSがなんだって?
      アイツには弟者が付いてるだろ?」

172 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:24:44.18 ID:uu0p+Wbd0
金ヶ崎の戦いの後、オトジャは家康と共に三河へ行った。
オトジャはオトジャなりに自分の役割を見つけたのだという。
出発の日、オトジャは『そろそろ弟離れしろよ』とアニジャに残して行った。
((
ミ ´_ゝ`)「影をやって随分になるがちいとばかりきついらしい。
      な? 半蔵 」
∠ ̄\
 |/゚U゚|「御意……」

突如として物陰から現れたのは、黒装束に黒頭巾の不気味な男だった。
恐ろしく気配が希薄なのは、熟練した忍故の事。
この男こそ、徳川家康に忠義を尽くす伊賀忍軍頭領、服部半蔵である。

( ´_ゝ`)「うわwww 何その格好?www
      全身黒ずくめとか無いわ〜www。
      どこの不審者だよオイwww 」
∠ ̄\
 |/゚U゚|「影に華、不要……」

先程の左馬之助とは対極にある半蔵。
アニジャは物珍しそうに、半蔵の忍び装束を弄って回った。
その間、半蔵はまさしく影のようにじっとしている。


179 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:26:33.68 ID:uu0p+Wbd0
( ´_ゝ`)「弟者が居てどうにもなんねーの?
      アイツだってヴァンパイアだぞ?
      どこのどいつに目ぇ付けられたって?」
((
ミ ´_ゝ`)「ふむ……、『虎』だ」

( ´_ゝ`)「日本には居ねぇだろがwww」

アニジャは思わずツッコミを入れる。
しかし、それ以外の者は『虎』という言葉で明らかに緊張した。
服部半蔵ですら、一瞬気配を濃くしたのだ。

信長は1人着いて来れていないアニジャに、丁寧に説明を始める。
((
ミ ´_ゝ`)「本物の虎じゃねぇよwww。
      甲斐の虎こと武田信玄の事だ。
      今までは退魔王・上杉謙信が毘沙門天の法力とやらで抑えてたんだけどな。

( ´_ゝ`)「じゃ、そいつに任せとけよwww」
((
ミ ´_ゝ`)「いやねwww。
      なんと、それがもう駄目なんだとwww。使えねーwww。
      ついでにな、どーも最近のオレ達の戦いっぷりが気に入らねーらしいwww」

酷い言いようだが、上杉謙信は現時点で最強の退魔師の1人である……。

183 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:28:39.34 ID:uu0p+Wbd0
( ´_ゝ`)「で、アンタと仲の良いYEAHSが狙われたっての?www
      それと弟者がいてどうにもならないのと何の関係があるんだよ?www
      オレはグータラしてたいんだけどwww」

アニジャは外を見る。
冬の合い間の陽気は非常に心地好い。
こういう日は何もせずに、城下の美人を眺めるに限る。
((
ミ ´_ゝ`)「いいから聞けってwww。
      甲斐の虎こと武田信玄は今までぶち殺してきた妖怪大名とは違う。
      間違いなく『 戦 国 最 強 』だ。
      流石の影も手を焼いているらしい 」

『戦国最強』───。

その言葉に一瞬反応したアニジャを、信長は見逃さなかった。
なんだかんだ言っても、強い者に魅かれる。
アニジャは既に、戦国の男なのだ。
((
ミ ^Д^)「殿、なりません!!」

明らかに気持が揺れ動いているアニジャだったが、そこに待ったがかかる。
明智光秀が弾けたように異議を唱えた。


184 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:30:49.22 ID:uu0p+Wbd0
((
ミ ^Д^)「武田信玄は他の妖怪大名のようには参りません!!
      優れた軍略、戦国最強の騎馬軍団、そして信玄自身の強さ!!
      安易に動けば、忽ち食い滅ぼされます!!」

烈火の如く喚き散らす光秀。
冷静に戦局を見極め、それでのし上がった男とは思えない態度だ。
確かに光秀の言う事は正論であり、相手が相手だけに下手に動くと危ういが……。
((
ミ ´_ゝ`)「言いたい事は分かるぜ。
      だったらお前の考えは?」
((
ミ ^Д^)「殿の首を狙っているのは信玄だけではありませぬ。
      大事を忘れ兵を裂けば、殿の御身が危うくなる。
      三河殿には、死んでいただくしかありませんな 」

( ´_ゝ`)「なにっ!?」

光秀の非情な結論。
アニジャの頭には一欠片もない考えだ。
この切り捨てとも言える答えに、アニジャは一瞬にして頭に血が上る。
だがそれよりも憤慨したのは……
∠ ̄\
 |/゚U゚|「その首……、余程いらぬと見える……」
((
ミ; ^Д^)「は……、服部半蔵!!」

小太刀の冷たい刃を光秀の首筋に当てる、服部半蔵だ。

189 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:33:23.76 ID:uu0p+Wbd0
((
ミ ^Д^)「私は物事の道理を弁えているだけです!!
       私怨で私を討つというのか!?」

流石に戦国の将である。
半蔵が少し力を入れるだけで自分の命は消える。
その状況でも声を張り上げる気概を、光秀は持ち合わせていた。

しかし、文字通り影のように気配を殺していた半蔵。
その半蔵が、怒りを顕わにし、それが自分に向けられている事実。
これは目眩がするほど恐ろしい事態だった。
((
ミ ´_ゝ`)「やめろ、半蔵 」
    
信長の鶴の一声で、半蔵は光秀から離れた。
たっぷり時間を取った後で信長は続ける。
((
ミ ´_ゝ`)「光秀の言う事は一理ある。正論だぜ。
      でだ。オレの考えはこうだ 」

そして力強く立ち上がり、力強く言う。
((
ミ ´_ゝ`)「信玄を倒す!!」

その声には一切の怖れや迷いはない。
最強の妖怪大名・武田信玄と、真っ向から戦う覚悟は既に出来ている。

193 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:35:59.64 ID:uu0p+Wbd0
((
ミ ´_ゝ`)「天下分け目の大戦だ。
      頼めるか、サル?」

勿論、アニジャ達の力が最重要だ。
信長はアニジャが何と言うか既に知っていたが、わざとらしく聞き直す。

( ´_ゝ`)「つまり、武田信玄とか言うのは凄く面倒くさいんだろ?
      あんまりやり合いたくねーなー 」

アニジャも、自分の真意を信長がお見通しなのは百も承知。
敢えて焦らす。
((
ミ ´_ゝ`)「コイツを倒せば魔の時代は多分終わる。
      あとは人間の手で戦国を終わらせればいい。
      残りはオレ達の手でケリを付ける。
      そしたらオレが責任持って、お前らが死ぬまでぐーたらさせてやるよwww」

( ´_ゝ`)「………」
((
ミ ´_ゝ`)「今までみたいにちょこちょこ出て行って、一々雑魚倒してたらしんどいだろ?
     ここで一発デカイ仕事して終わりにしたらいいんじゃね?」

( ´_ゝ`)「……ひょっとしてオレ、乗せられてる?」

アニジャは照れ臭そうに頭を掻く。
信長が自分に向ける視線が熱い。

コイツは心底オレの事を信頼してるな───。
アニジャはそう思ったが、自身も信長に対してそうだった。

195 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:38:25.11 ID:uu0p+Wbd0
((
ミ ´_ゝ`)「半分はなwww。
      だがお前らがこんな時代にこの国に来たのは意味がある。
      その意味ってのはこういう事なんじゃねーのか?」

アニジャは思った。
これはもう自分の負けだと。
そろそろ観念してやっても良い頃だろう。

( ´_ゝ`)「オレと弟者が2人とも死ぬまでだからな。
      ギリギリの生活なんて嫌だぞ。
      死ぬまで贅沢させろよ。
      言っとくけど、オレ達は相当長生きだぞ 」
((
ミ ´_ゝ`)「だからそう言ってんだよwww」
((
ミ; ^Д^)「殿!!」

この期に及んで光秀は、まだこれを認めたがらない。
危険は出来るだけ、いや絶対に避けるべきなのだ。
しかし、信長とアニジャの意見は、光秀の主張は逆の方向で一致した。

( ´_ゝ`)「へぇ〜ぇ。……オッケーwww」

アニジャはようやく、声に出して快諾した。

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

198 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:41:07.47 ID:uu0p+Wbd0
 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼
((
ミ ФωФ)「アニジャ殿!! クー殿!! 良くぞ参られた!!」

(´<_` )「久しぶりだな兄者!! クーも!!

服部半蔵の援軍要請の直後。
アニジャはクーと3000の兵を連れて、徳川家康の居城・浜松城に軍を率いてやってきた。
家康とオトジャが満面の笑みでこれを迎えた。

∫λリ゚ -゚ノノ「して、首尾の方は?」

絹の様な黒髪を結い上げたクーが尋ねる。
戦が近い現在、クーの表情は鋭く引き締まっている。
整った顔が一層凛々しい。
((
ミ ФωФ)「うむ。良くは無いな 」

家康は机上に広げた地形図を見るよう促した。
現在地である浜松城、そこに向かって赤い駒が配置されている。


201 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:42:39.38 ID:uu0p+Wbd0
((
ミ ФωФ)「これがこの三河の地形図である。
        こちらが我輩の軍、そちらが武田軍。
        数でも場数でもどうにもならない差がある、といった所である 」

(´<_` )「やはり武田の騎馬軍団が脅威だ。
      風のように現れ、火のように攻撃して行く。
      戦国最強とはよく言ったものだ 」

家康に続いてオトジャが説明する。
オトジャは既に家康軍の中核を担う立場になっていた。

初めは訝しがっていた家康軍の古くからの武将達。
しかし、オトジャは戦に於いて圧巻の強さを誇る。
何よりも紳士然としたオトジャの立ち振る舞いが、侍達に好感を持たせた。
((
ミ ФωФ)「この影殿がいなければ我等はとうに蹴散らされていただろう。
        影殿の働きでしばらくは膠着状態であったのだが…… 」

オトジャの功績を讃える家康。
ふと外を見ると、黒い雷雲が重く立ち込めていた。

( ´_ゝ`)「ん? 雨か 」

アニジャの何気ない言葉を聞き、家康とオトジャは反射的に立ち上がった。
((
ミ;ФωФ)「不味い、信玄が来る!! 」

205 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:45:51.36 ID:uu0p+Wbd0
この時点で殺気に満ち満ちた敵の気配を感じた。
家康の頬を、冷たい汗が伝う。

(´<_` )「私が出よう。
      兄者、クー、共に来てくれるか?」

ス、と家康の肩に手を当てたオトジャは、確かに武将たる雄々しさを持っていた。

∫λリ゚ -゚ノノ「信玄をくれるのなら喜んで行くでゴザルよ 」

悪魔召喚師、五代目・葛葉ライドウは、新たな仲魔の可能性に歓喜。
速やかに快諾した。

( ´_ゝ`)「まぁそのために来たんだし。
      で? 武田信玄ってのは何の化け物なの?」
((
ミ;ФωФ)「影殿。
       我らもいつまでもお主に甘えてばかりでは…… 」

家康は今は配下であるオトジャに軽い憧れを抱いていた。
ごく単純な理由だ。
その強さは男を熱くする。

207 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:47:37.04 ID:uu0p+Wbd0
(´<_` )「目には目を、歯には歯を。これは古代文明の格言だ。
      つまり『魔には魔を』だ。
      君達は人間達と、戦国最強の武田の騎馬軍団と戦わなければならない。
      人の手で人に勝利してこそ、人の時代が訪れる 」
((
ミ;ФωФ)「しかし!!」

(´<_` )「魔はただ強力な力を持っているというだけだ。
      我が物顔で人の世に居座り、力に物を言わせて人を支配する。
      そのような魔は、魔によって粛清されなければならない 」

オトジャが家康に、深い尊敬の念を抱いているのはこういう所からだ。
身分に関わらず、自分の命が誰も彼ものそれと等価と信じているのだ。

( ´_ゝ`)「で? 武田信玄ってのは何の化け物なの?」
((
ミ ФωФ)「……分かり申した。
       ではこの家康。
       魔の脅威に一切捉われることなく、武田軍と一戦交えまする!!」

時に暴走しがちな家康を、しっかりと諌める役割をオトジャは果たしていた。
2人の信頼は固い。

家康は自分の役割を明確に認識した。

211 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:49:52.81 ID:uu0p+Wbd0
∫λリ゚ -゚ノノ「オトジャ殿、見事な口上にゴザル。
        あのように言われれば、さしもの頑固ダヌキも流石に折れざるを得ますまい 」

(´<_` )「しばらく共にいて分かったことだが、アレはいい男だ。
      彼は家臣を自分の子供のように思っている。
      国の民百姓も皆含めてだよ。
      私達はあの勇敢な男の戦に、泥を撥ねる者を叩き潰さなければならない 」

∫λリ゚ -゚ノノ「オトジャ殿。家康殿に惚れ申したなwww」

(# ´_ゝ`)「ッアー───!!
      で!? 武田信玄ってのは何の化け物なの!?」

誰にも彼にも無視されまくっていたアニジャが、激しく自己主張を始めた。
緊張していた場が一瞬和む。

∫λリ゚ -゚ノノ「はっはっはwww すまぬすまぬwww。
        信玄はな、『鵺』にゴザル 」

( ´_ゝ`)「ぬえ?」

(´<_` )「キマイラだよ 兄者。
      顔は猿、体は虎、そして尾は蛇。
      私達がおとぎ話で聞いたそれとは多少異なるが同じ種類の魔だろう 」

ふ〜ん、とアニジャは顎を撫でる。
この男、多分分かっていない。

215 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:54:41.25 ID:uu0p+Wbd0
((
ミ ФωФ)「皆の者、こちらを見ていただきたい 」

甲冑に着替えた家康が、3人に再び地形図に注目させた。
((
ミ ФωФ)「現在、武田軍は三方ヶ原を進軍中でゴザル。
        我らの目先を素通りして、先の城を落そうという腹積もりらしい。
        これは明らかなる挑発!!だが拙者は敢えてこれに乗ろう!!」

力強く机上の地形図を叩く。
((
ミ ФωФ)「武田軍が三方ヶ原を抜けた所で、背後から叩く!!」

∫λリ゚ -゚ノノ「家康殿、しかしそれはあまりに……」
((
ミ# ФωФ)「下策も下策でゴザル!!
        しかし2万を超える大群に包囲される小城はどうか!?
        三河の民は皆、我が子も同然でゴザル!!子を見捨てる親がどこにおろうか!?」

これが徳川家康である。
用兵に関しては天才だが、その優し過ぎる気性は将とは言い難い。

(´<_` )「アニジャ。無理を通して道理を無視するんだwww」

( ´_ゝ`)「メンドクセーヤツwww」

しかし、だからこそ人々は家康に付き従うのだ。

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

218 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:57:43.66 ID:uu0p+Wbd0
 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼
((
ミ ФωФ)「死ぬやもしれん……」

家康は1万1000の兵に守られながらもそう思った。

今いるのは三方ヶ原台地手前。
この先の台地を抜けて、祝田の坂を下っているはずの武田軍を背後から強襲する。
戦略上は有利なはずが、何か恐ろしい殺気を感じた。
((
ミ ФωФ)「だが、拙者は命を秤にかける事など出来ぬ!!
        全軍突撃!!
        武田軍の鼻をへし折ってやれ!!」

号令と共に雄叫び───。
寡兵の家康軍では悠長な事はしていられない。
最初から全力を以って、不意打ちにて戦局を有利に運ぶのだ。

家康を始め、数々の武将、一兵卒に至るまでが猛進する。
三方ヶ原台地に出た!!

(雑兵「ふっふっふっふ。
    殿の言う通りじゃ!!愚かなり家康!! 」

───目に入ったのは、万全の陣を敷いて待ち構える武田軍だった。


219 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 21:59:01.09 ID:uu0p+Wbd0
((
ミ; ФωФ)「ぬっ!?これは魚鱗の───!!
        寡兵では効果は薄かろうが─── 」

家康は即座に頭を回転させ現状を見極める。
武田軍が布くのは魚鱗の陣。
その意は相手を殲滅すること───。
((
ミ# ФωФ)「『鶴翼の陣』を組めぇい!!
        それが唯一、生き長らえる道ぞ!!」

家康は魚鱗の陣を確認するや否や、鶴翼の陣を取る。
敵に対して両翼を張り出し、『V』の字を描くのだ。
これは一般には、中央が前方に張り出した魚鱗の陣に有効だとされる。

両翼を閉じる事で、包囲・殲滅するのに適しているからである。
だが翼を広げるように兵を配置するため、中央の大将、
即ち家康は無防備となる諸刃の剣。
自らの命を、投げ出す覚悟が無くては到底選択できない陣形だ。

その上、兵の数は武田軍3万の3分の1。
勝利を掴む唯一の望みである奇襲は完全に読まれていた。

万に一つも勝ち目はないが、我先にと逃げ出せば、先に待つのは殲滅のみ。


更に───。




222 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:00:52.27 ID:uu0p+Wbd0
((
ミ; ФωФ)「ぬっ……?雨が強く……。
        ハッ!?」

甲冑に当たる雨粒が痛い。
黒い雲から、雷鳴が迸る。
その稲光の一瞬───、家康が瞬きをした一瞬の後、

(=゚д゚)「徳川家康───。
     これだけの兵力差で打って出るとは噂通りの男よ。
     この信玄、久々に血が涌いたぞ!!」
((
ミ; ФωФ)「武田……信玄……!!」

死が、鼻先に現れる!!


徳川家康はこの時、初めて真の魔という物を認識した。

向こうにある武田軍3万より、たった1人のこちらの方が色濃く死を連想させる。
これまで様々な妖怪を信長と共に打倒してきた。
だが、どれもこれも違う───。

息を吸う自由すら奪われる、威圧と圧迫。
背中に迸る電撃の様な闘気は、まさに闘神のそれだ。
家康の舌はカラカラに乾き、喉は閉塞する程張り付いた。

227 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:03:24.64 ID:uu0p+Wbd0
(=゚д゚)「貴様の力……見せてみよ!!」
((
ミ; ФωФ)「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

信玄の兜の下から、鋭い視線が刺さる。
人の姿をしているが、明らかに人ではない事を魂が感じていた。
信玄が素手の拳を突く。

殺される───。

家康はそれを確信した。

(=゚д゚)「ぬぅ!!」

不快感とも喜びとも取れる声。
信玄の雷の様な突きを、間に割って入って止めたのは3つの影だ。

(´<_` )「家康!! コイツに手を出すんじゃない!!」

(; ´_ゝ`)「なんじゃコイツは!? スゲェ迫力だぜ!!」
((
ミ; ФωФ)「アニジャ殿!!オトジャ殿!!
        ……かたじけない!!」

∫λリ゚ -゚ノノ「これが……武田信玄!?」


231 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:05:49.09 ID:uu0p+Wbd0
家康の前に、これを守護せんと立ちはだかるのは吸血鬼と悪魔召喚師。
三者三様に武田信玄を見据え、一様にこれが只者ではないと断定する。

この時、攻撃を妨害された信玄は……

(=゚д゚)「よくぞオレの鉄槌を止めた!!
     並々ならぬ闘気を感じるぞ!!
     うぬらが信長の刀だろう!?
     フハハハハ!! 見事なり!!」

喜びに打ち震えた。

(=゚д゚)「我が闘争の轍。
     強者によって刻まれん!!」

3人を敵として認識した武田信玄が吠える。
アニジャ達は信玄の身長が、自分達より遥かに高いと錯覚した。
あまりにも───、あまりにも巨大───。


236 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:09:05.73 ID:uu0p+Wbd0
だがアニジャとオトジャは吸血鬼。
そしてクーは悪魔召喚師である。
強大な魔と対峙して、尻尾を巻いて逃げることなど無い。

( ´_ゝ`)「まずは小手調べだ───ぜっ!!」

アニジャは先手必勝とばかりに、人知を超えた速度で踏み込んだ。

(=゚д゚)「早い!! だが早さだけでオレは倒せぬ!!」

アニジャは神速に乗ったまま拳を信玄に放った。
これに信玄も呼応する。
両者の拳同士がぶつかり合い、その衝撃で周囲の空気を弾き飛ばす。

(=゚д゚)「ぬぅ!! 早さだけではないか!!」

この拳同士の勝負に勝ったのはアニジャだった。
衝突した信玄の拳は押し負け、反動で体ごと後ろに振られる。

(´<_` )「卑怯だと呼んでくれても結構だ!!」

アニジャの背後から突如としてオトジャが飛び出した。
オトジャは地を穿つ程の勢いで踏み込む。
信玄を射程に捉えた時、放たれたのは回し蹴りだ。

239 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:10:47.58 ID:uu0p+Wbd0
(=゚д゚)「軟弱なり!!」

だがオトジャの蹴りを信玄は両手で受け止めた。
バランスを崩した時点から、復帰が冗談のように早い。
片足を掴まれたオトジャは、その手から恐るべきパワーを感じ取った。

(´<_` )「フッ。両手が塞がったようだが良いのかい?」

(=゚д゚)「っ!?」

オトジャの回し蹴りが繰り出された反対側から、氷のような殺気が迫る。

∫λリ゚ -゚ノノ「その首、頂戴いたす!!」

クーが刀を首筋めがけて振り抜いたのだ。
だが信玄は状態を反らせてこれをかわす。
大きく反り返った姿勢となり、信玄の目前を2本の刀が通り過ぎた。

(=゚д゚)「見事!!」

そのままの姿勢で、信玄は高々と言い放つ。
絶対的強者の余裕か。


242 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:13:53.49 ID:uu0p+Wbd0
∫λリ゚ -゚ノノ「馬鹿め!!
        油断したでゴザルな!?」

3人の攻撃をしのいだ信玄を、更なる攻撃が襲う。
アニジャ、オトジャ、クー。
この3人以外に、信玄と相対するものはいないはずだが……。

(;=゚д゚)「グァァァ!!」

白い槍と鉄の爪が、信玄を穿っていた。

|||゚ - ゚||「私の槍が先ですね、ケルベロス!!」
 ,/i/i、
ミ,,゚(叉)「そう見えるか!? 役に立たぬ目よ!!」

黒髪、白鎧の騎士、魔槍ゲイボルグを持つ英雄クー・フーリン───。
銀毛の魔獣、口から硫黄の吐息を吐く地獄の番犬ケルベロス───。
悪魔召喚師、クーの心強い仲魔だ。

信玄の身体は深刻なダメージを追っている。
切り裂かれた傷口からは肉が垂れ、少し遅れて鮮血が噴出した。
だが、これで勝ったと楽観視する者は1人としていない。


245 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:16:57.67 ID:uu0p+Wbd0
(=゚д゚)「ククク……!!
    フハハハハハハハハハ!!」

アニジャは『ほらね』という顔をしてオトジャを見た。
オトジャは頷いて返答する。
有りがちなパターンだ。
ウンザリする。

(=゚д゚)「我が肉体に是ほどの傷を負わせるとは!!
    『源頼政』以来、何百年ぶりか思い出せぬわ!!
    ならば、オレもこの力に応えねばなるまい!!」

突如として空が暗くなる。
雷雲が更に分厚くなったようだ。
同時に雨足は痛いほどに強くなり、稲妻が蛇の如く荒れ狂う。

( ´_ゝ`)「あ〜……。やっぱりこの先があるのね。
      どうするオトジャ?
      アイツ、多分変身するぜ?」

(´<_` )「気を引き締めるさ!!」

(#=゚д゚)「ぅぅぅぅぅおおおおおおおおおぁぁぁぁっ!!!!」

信玄の周囲を無数の電流が迸る。
眩い電撃に信玄の姿が覆い隠された。
瞬間、電撃の中から膨大な殺気が溢れ出し、
フラッシュのような強い光が消えると共に、その者が姿を現した。

246 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:19:20.60 ID:uu0p+Wbd0
M_M
[゚曲゚ 7『闘争を───』

武田信玄───『鵺』は、猿の顔、虎の手足、狸の胴に蛇の尾を持つと言われる。
目の前にある脅威は、虎の様な体毛だが、2本の足で立つ人型の魔物。
強靭な筋肉の瘤が禍々しく盛り上がり、全身から陽炎のような空気の揺らぎが立ち昇る。
M_M
[゚曲゚ 7『愉しもうぞ!!』

(´<_` ;)「なっ!?」

信玄の姿が消えた、と同時にオトジャの目の前に現れる!!
吸血鬼の動体視力でも捕らえられなかった!!
気付いたときには───

(´<_` ;)「ガハァ!!」

オトジャの腹を、信玄の腕が貫く!!

(; ´_ゝ`)「オトジャ!!」

即座にアニジャがその場へ急行。
信玄の横っ面を、これでもかと言うほど殴りつける。
アニジャの一撃で信玄は、数十メートルは吹き飛ばされた。

249 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:21:45.26 ID:uu0p+Wbd0
(; ´_ゝ`)「オトジャ、生きてるな!?」

(´<_` ;)「ハァハァ……!!
      グッ!! 凄い痛みだ……!!」

吸血鬼の生命力ならば死ぬことはないだろう。
だが、問題は吸血鬼にこれほどの傷を負わせたことだ。
大抵の傷は即座に治癒するが、オトジャの腹の穴はそれが遅い。

(; ´_ゝ`)「おい、調子悪いのかオトジャ!?
      傷が中々塞がらないぞ!?」

アニジャは人がするようにオトジャの傷を両手で圧迫した。
こんなことは初めてだ。
傷が治らないなんて……。

だが、重症を負った本人ははその原因を察していた。

(´<_` ;)「おそらく……ヤツの方が魔としての力が上なんだよ、アニジャ。
      ハァハァハァ……。
      この傷に、ヤツの妖気が付着している。
      それが治癒を妨害しているらしい…… 」

252 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:24:06.08 ID:uu0p+Wbd0
∫λリ゚ -゚ノノ「気を抜くな!! また来るでゴザル!!」

オトジャの負傷で意識を信玄から外していたアニジャ。
クーが一括するとアニジャは顔を信玄を殴り飛ばした方向に向けた。

激しい雨がやや収まって来たか───。
分厚い雨雲で周囲は依然として薄暗く、たまに光る雷鳴が目に痛い。
そこに鵺は、ゆっくりと現れた。

ダメージはほとんどないように見える。
笑みを浮かべた口元は、闘争に対する喜びか。
赤い光を宿す釣り上がった眼からは、吐き気を催すほどの殺気が滾る。
M_M
[゚曲゚ 7「其の疾きこと……」

何事かを呻いたかと思うと、同時に一陣の風が吹いた。
見えない何かが迫り来る。
地が引き裂かれて行く事で、かろうじて接近を判断出来る。
M_M
[゚曲゚ 7「風の如く!!」
 ,/i/i、
ミ,,゚(叉)「っ!?」

鵺はケルベロスの後方に姿を現す。
地獄の番犬はその瞬間、波動に体を切り刻まれていた。
鵺の移動により生じた衝撃波が傷を負わせたのだ。

253 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:26:49.79 ID:uu0p+Wbd0
|||#゚Д゚||「貴様っ!!」

即座にクー・フーリンの魔槍が信玄を貫く。
しかしそこには既に信玄はいない!!

|||#゚Д゚||「ファッキンマザーファッカー!! どこに消えた!?」

姿どころか気配を完全に消してしまった。
たった今まで目を瞑っていても分かる程、殺気と闘気を漲らせていた信玄がだ。
まさに林の如き静けさ───。

∫λリ゚ -゚ノノ「クー・フーリン!!危ない!!」

だが少し離れていたクーには全てが見えていた。
クー・フーリンの背後で、組んだ両手を大きく振り被った信玄の姿が!!
M_M
[゚曲゚ 7「侵略すること火の如く!!」

|||;゚Д゚||「なっ!?」

後頭部から強烈なハンマーのような一撃。
クー・フーリンは為す術もなく地面にめり込んだ。
アニジャとクーは、既にここへ走っていたが一歩届かない。

254 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:28:39.02 ID:uu0p+Wbd0
だが大振りな一撃を放った後には隙が出来る。
信玄に出来た一瞬の隙。
そこを見逃すアニジャとクーではない!!

アニジャはスピードに乗せた拳を、クーは渾身の力で二刀を振り込む!!
完全に捉えた!!

∫λリ;゚ -゚ノノ「馬鹿な……」

(; ´_ゝ`)「かっ、固っ!!」

高質な物に当たったような音が響く。
アニジャの拳は肌で止まる。
クーの刀までもが皮膚を切り裂くことも出来ない。

そしてこの攻撃で微塵も体勢を崩さない信玄は、腹に響く声でこう言う。
M_M
[゚曲゚ 7「……動かざること、山の如し!!」


258 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:31:17.63 ID:uu0p+Wbd0
( ´_ゝ`)「っ!!」

自信の攻撃が通じない事を嘆くよりも先に、アニジャは信玄から距離を取った。
クーも同じことを考えていたのか既に下がっている。
あまり長く近くにいると、不愉快な結果が待っているのは明らかだ。

( ´_ゝ`)「化け物が……」

苦々しく言うアニジャには、珍しくシリアス感が漂っている。
表情は強張り、緊張した構えを解く事は無い。
M_M
[゚曲゚ 7『これで終わりではないだろう? 
     さあ闘え!!もっとオレを楽しませろ!!
     貴様らの心臓が止まるその時まで!!』

鵺の叫びに同調するかのように、直ぐ近くの木に落雷する。
稲妻の衝撃波と放電がアニジャ達の皮膚を叩いた。
しかしそんな物を気にしている暇は無い。
目の前の悪鬼から、一瞬でも目を離す事はならない。



その時───




261 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:36:37.67 ID:uu0p+Wbd0
M_M
[゚曲゚ 7『ぬぅ!?』

豪雨と雷鳴、それに混じって馬の蹄の音、大勢の駆ける足音が戦場に木霊する。
大群の退却───武田軍が退却している。
退却する兵の中から1人、鵺の元へ足早に訪れた。

(雑兵「殿!! 恐るべしは三河殿の戦略!!
     味方は崩れ、退却を余儀なくされております!!」

人外の姿を晒している信玄に対し怖れもない。
武田信玄が人では無い事を承知しているらしい。
鵺はその兵に二、三囁くと、直ちに兵は退却の軍へ混じった。
M_M
[゚曲゚ 7『この不利を覆すとは、見事なり家康!!
     我が闘争に相応しき相手よ!!
     貴様らもだ!! 人外の兄弟、そして魔を駆る侍よ!!』


263 名前: ◆FnO7DEzKDs :2011/08/27(土) 22:38:07.24 ID:uu0p+Wbd0
鵺の殺気は揺るがない。
しかし、今は誰にも向けられる事無く無意味に発散しているのみ。
M_M
[゚曲゚ 7『この場は退く!!
     だが闘争は続く!!オレをもっと愉しませろ!!
     フハハハハ!! さらばだ!! フハハハハハハハ!!』

落雷───。
今までで一番近くに落ち、一瞬視界の全てが光に包まれる。
眩んだ目が回復した頃には、鵺の姿は既に無かった。
雷鳴の様な笑い声だけを残して───。

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △ 

inserted by FC2 system