( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです ―第十六話・火の玉女子高生ツン・初めての退魔録― 〜その2、下心〜

3 名前:あらすじ ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:28:20.88 ID:+X7vQWzG0
〜前回までのあらすじ〜

つんと
でぃが
閉じ込められた



4 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:30:32.97 ID:+X7vQWzG0

血に染まった体育館をじっと見据えるツン。
その視界には、否応なく、かつての友人達の無残な屍が入り込んでくる。
ぐっと唇を噛み締め、少女は1つの決意を宣言する。

ξ゚听)ξ「ごめんね皆。今はこのままにしとくけど、全部終わったら絶対天国に送ってあげるから……」

あまりにも理不尽に命を奪われた友人達への宣誓。
彼女らはもうそれに答えてくれることは無い。
ついさっきまで、それがずっと続くかのように笑い合っていたのに・・・・・・

∧_∧
(*゚;;-゚)「ツン、行くぞ」

2度と忘れることのないように、網膜と脳裏にその無念を焼きつけるツンを促すでぃ。
ツンは後ろ髪を引かれるように視線を逸らし、体育館の扉をゆっくりと後ろ手に閉じた。

ξ゚听)ξ「それにしてもこの紫の……霧?これって何なの、でぃさん?」
∧_∧
(*゚;;-゚)「さぁな。地獄の瘴気といった所じゃろうか。良い物ではない。やたらと触ってはならんぞ 」

ξ゚听)ξ「うん……」


5 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:32:32.28 ID:+X7vQWzG0

窓から伸ばそうとした手をふと引き戻すツン。
校舎の外には依然として、不気味に薄明るい紫の霧が漂っていた。

∧_∧
(*゚;;-゚)「さて、ワシらの為すべき事は承知しておろうな?」

ξ゚听)ξ「うん……。この学校のどこかに潜んでる、この事態を引き起こした張本人をぶち殺すのね?」

言葉を受け、外の瘴気から足元のでぃへとツンは視線を移す。
やるべき事は自覚している。
死んだ友人達の為にも、自分は生きてこの地獄から抜け出さなければならないのだ。

∧_∧
(*゚;;-゚)「そうじゃ。それで現世に戻れるかどうかは分からんがな 」

ξ゚听)ξ「え!?ちょっと待ってよ!!術師をやっつけたら元に戻るんじゃないの!?」

おいおい、さっきと随分話が違うぞ。
ツンは涼しい顔の小憎たらしい猫又を見下ろしながら、ピンと伸ばした人差し指を向けた。


7 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:34:12.58 ID:+X7vQWzG0

∧_∧
(*゚;;-゚)「多分そうなるじゃろ。しかしワシも初めての事じゃからな。確信は無い 」

ξ゚听)ξ「もぉ〜!!適当なんだから!!」

縋る様な眼をしながらどなり散らすツンだったが、でぃは何食わぬ顔でその怒声を尻尾で受け流していた。
右へ左へと振れるでぃの尻尾を見ていると、この猫又が塵程も不安な気持ちを持っていないことが分かる。
ツンはこれを見て怖がってばかりいるのも馬鹿らしく感じた。

同時に不安が少しだけ取り除かれたことにも気付く。

―――まさかでぃは、自分を安心させる為に神経を揉んでいるのではないか?

ツンの脳裏にそんな疑問が浮かぶ。

∧_∧
(*゚;;-゚)「時には適当にやらんとワシみたいに長生きは出来んぞ 」

ξ゚ー゚)ξ「1000年以上も長生きする気はないわよ!!」

まさか自分と同じだけ人間が生きることが出来るとは思っていないだろう。
だったら多分これは冗談を飛ばしている。
ツンはそう思ってツッコミを入れた。
元気付いた自分の姿を見て、でぃも安心してくれるだろう。

ところがでぃはがっくりと肩を落とし、溜め息さえ付き始めた。

ξ;゚听)ξ。o ○(あれ?本気だった?)


9 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:36:44.69 ID:+X7vQWzG0

∧_∧
(*゚;;-゚)「むぅ〜……」

ξ゚听)ξ「どうしたの、でぃさん?」

面白くさなそうに、顔をしかめる猫又・でぃ。
不思議に思ったツンは足元に向けて声を出した。

∧_∧
(*゚;;-゚)「……段々鼻が利かんようになっておる。嗅ぎ慣れぬこの空気のせいか。
     術師の臭いを辿るのは難しいな 」

地獄の瘴気に鼻が麻痺しつつある。
少しだけ面倒な事になりそうだ。
しかしツンは極めて楽観的に事を見ていた。

ξ゚听)ξ「歩き回って探せばいいじゃない。時間はたっぷりあるんだし 」
∧_∧
(*゚;;-゚)「そうも言っておられんぞ 」

ξ゚听)ξ「え?どうして?」


11 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:38:30.46 ID:+X7vQWzG0

考えに擦れ違いがある。
それだけなら良いのだが、残念ながらここは普通の場所ではない。

∧_∧
(*゚;;-゚)「何度も言うがここは地獄の1丁目じゃ。長居すればここの住民共に嗅ぎ付けられる 」

ξ゚听)ξ「鬼……?」

忘れてかけていたが、ここは闇の儀式によって建物ごと地獄に叩き落されている。
歓迎しない事態がいつ起こってもおかしくはない。

∧_∧
(*゚;;-゚)「とは言っても最初は小物じゃろうから大した脅威ではないが、一々相手をするのも面倒じゃの 」

ξ゚听)ξ「オーケー。巻いて行きましょ 」

ツンはその場からずっと先まで伸びている、夜の学校の長い廊下を見据えた。
誰もいない、そして瘴気に不気味に照らされている廊下はどこか恐ろしい。
それは恐らくは意識の底に刷り込まれているものだろう。

フッ、っと1度強く息を吐き、ツンは呟いた。


12 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:40:22.87 ID:+X7vQWzG0

ξ゚听)ξ「まずは1階、1年生の教室からね。とことん行きましょ、迅速にね 」




        ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです

     ―――第十六話・火の玉女子高生ツン・初めての退魔録―――

 
              〜その2、下心〜


15 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:41:44.34 ID:+X7vQWzG0

いつもは大勢の生徒で賑わうこの廊下も、誰もいない今、聞こえるのは自分の足音だけ。
それが妙に大きく聞こえる。
否に耳に付く。

昼間だとあまり感じない廊下の臭い。
それを今だとはっきりと感じ取ることが出来る。
息を吸い込むと、その臭いがむっと口中に広がり、鼻を抜けていく。

その不思議な感覚を味わいながら、自分の足音が廊下に鳴らす反響音を聞く。
そうしていると妙に納得してしまう。
夜の学校に関する怖い話の数々は、こういう不思議な雰囲気が生んだ物なのだろう。

ξ゚听)ξ「ん?」

足音が反響しているせいで気付くのに遅れたが、もう1つ足音が聞こえているような気がする。
ツンは耳を澄ましてその方向を凝視した。
遥か向こうから駆けてくる人影が見える。

ノパ听)「ツーン!!」

ξ゚听)ξ「ヒート!!あんた無事だったの!?」


17 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:43:45.91 ID:+X7vQWzG0

姿を見せたのは素直ヒート。
ツンに恋い焦がれる百合乙女。
それ以外では、ツンの親友と言っても差支えないこの少女の生存に、ツンは心から安堵する。

ノパ听)「ツン!!何かおかしな事になってるよ!!」

ξ゚听)ξ「うん、あまり良い状況じゃないわ 」

ツンはヒートにこの経緯を告げる。
それにはどうしても避けては通れない内容がある。
気落ちしながらも体育館で殺された多くの学友の話をした時、ヒートはツンの腕を握った。

ノパ听)「ツン、何か私……怖いよ 」

普段は誰よりも快活な少女の声が、今は暗く沈んでいる。
ツンの腕には、震えるヒートの手からヒシヒシと恐れが伝わってくる。
ツンは強く、そして優しくその手を握り返して言った。

ξ゚听)ξ「大丈夫よヒート。私が付いてるわ 」

ノパ听)「ツン……?」

ξ゚听)ξ「大丈夫だからね 」

ノパ听)「……うん 」


19 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:44:43.82 ID:+X7vQWzG0

2度繰り返した事で、心なしかヒートの恐れが薄らいだように感じた。
ツンには大丈夫だという確信は無かったが、今はこれでいいと思った。
そこに空気を読まずにでぃが囁く。

∧_∧
(*゚;;-゚)( おい、ツン )

ξ゚听)ξ( 何?)

真剣な声を出すでぃ。
あまり良い事ではないな、とツンは思いながらも聞かないワケにはいかない。
でぃの助言は常に正しいだろうからだ。

∧_∧
(*゚;;-゚)( この女、何故他の者のように死んでおらんのか気にならんか?)

ξ゚听)ξ( っ!?でぃさん、まさか疑ってるんじゃ!?)

案の定良い事ではなかった。
それ所かかなり悪い部類に入る。
しかしでぃは続ける。


24 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:45:35.39 ID:+X7vQWzG0

∧_∧
(*゚;;-゚)( 我らの命に関わる問題じゃ。警戒は怠るなよ )

ξ゚听)ξ( ヒートは友だt――)
∧_∧
(*゚;;-゚)( ツン!!)

強い口調で言葉を被せるでぃ。
そのまなざしも同様に強い。
ツンは認めざるを得なかった。
ここに生きている以上、確かにヒートにも可能性はあるのだ。

ξ゚听)ξ(……分かった。でもこの子は違うわ。絶対に……)

しかし、違う可能性もある。
ツンは恐れで強張る笑顔を浮かべるヒートを見て、そちらの可能性を強く信じた。

ξ゚听)ξ「1階はこれで終わりね。上に行くわよ 」

ノパ听)「2階は2年生の教室と特別教室が幾つかだね!!」

     ・     ・     ・     ・     ・


26 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:47:16.19 ID:+X7vQWzG0

     ・     ・     ・     ・     ・

ξ゚听)ξ「ここは……家庭課室、か。あまり縁の無い教室だわ。よし、入るわy――」

ノハ;゚听)「ツツツツ、ツン!!ココには何も無いよ!!入っても仕方ない!!」

ツンは出鼻を挫かれた。
自分と入口の間に強引に身を割り込ませるヒート。
何故か全力で進入を拒んでいるように見える。

ξ゚听)ξ「そんなの入ってみないと分からないじゃないの 」

ヒートを押し退けて入口のドアに手をかけようとするツン。
しかし、ヒートはさらに身を割り込ませて必死に抵抗する。

ノハ;゚听)「分かるよ!!だってさっきまで私ここにいたんだもん!!」

ξ゚听)ξ「さっき?どうしてこんな夜中に?」

ノハ;゚听)「いいいい、いいじゃないそんな事!!とにかくココは見ても何も無いから次行こうよ!!」

明らかに何かを隠している。
ツンはヒートを掻い潜ろうとするも、素晴らしいスクリーンアウトで締め出された。
改めて考えてみても、このディフェンスはどう考えても何かを隠している。


29 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:49:22.04 ID:+X7vQWzG0

軽快なステップでヒートを抜こうとしているツン。
反射神経とフットワークでそれを許さないヒート。
中々思い通りにならない為に苛付き始めていたツンの足に、でぃが頭を押し付けて関心を向けさせた。

∧_∧
(*゚;;-゚)( ツン!!)

ξ゚听)ξ( 何よっ!!)
∧_∧
(*゚;;-゚)( 声が聞こえる!!何者かの泣き声のようじゃ!!)

ξ゚听)ξ( まだ生きてる人がいるのね!?どこ!?)
∧_∧
(*゚;;-゚)( こっちじゃ!!)

駆けて行く猫に一目散に付いて行くツン。
たった今まで一進一退の攻防を繰り広げていた相手が、突然背中を向けて走って行ってしまった。
残されたヒートは、1人になってしまったことを思い出し盛大に慌てる。

ノハ;゚听)「ちょっと、ツン!!待ってよ!!」


31 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:51:43.85 ID:+X7vQWzG0

∧_∧
(*゚;;-゚)(声はここからじゃな。人が1人おるようじゃ)

ξ゚听)ξ「音楽室?」

でぃが何者かの声を聞きつけたのは音楽室。
ツンとヒートはその前で中の様子を伺ったが、人間の耳には中の物音を聞き取る事が出来ない。
ツンは恐る恐る扉を開き、耳を澄ます。

(    )「ヒッ……うぅ……」

ξ゚听)ξ「誰かいるの?」

(    )「・・・・・・」

ツンの声と同時に室内はひっそりと静まり返った。
何者かが息を潜めている。
ツンは再び、最大限に穏やかな声で声をかける。

ξ゚听)ξ「誰かいるんでしょ?」

从'ー'从「ツン……ちゃん?」

今度は返答があった。
聞き慣れた声。
普段なら苛付くほど間延びしているその声も、この危機的状況の為か、幾分引き締まって聞こえる。


34 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:53:32.80 ID:+X7vQWzG0

从'ー'从「ふぇ〜、生きてたんだねぇ〜?怖かったよぉ〜 」

ξ゚听)ξ「渡辺さん!!」

目に涙を浮かべながら暗がりから出てきたのは、ツンのもう一人の親友、渡辺だった。
もっとも、こちらもツンに対する余計な感情を除けばの場合ではあるが。

从'ー'从「私、夜中トイレに行ってぇ〜……。急に外がおかしくなってぇ〜……。怖くてずっとここに隠れてたのぉ〜……」

ξ゚听)ξ「よしよし、もう大丈夫よ。ヒートもいるわ 」

恥も外聞もなくツンに抱きついて、その控え目な胸に顔を埋める渡辺。
この時ばかりはツンも、優しい抱擁を返し頭を撫でた。
そしてもう1人の生存者、ヒートの方を見るように促す。

ノパ听)「渡辺さん!!無事だったのね!?」

从'ー'从「ヒートちゃんも大丈夫だったんだねぇ〜。良かったぁ〜 」

快活なヒートの声が木霊し、重苦しい静寂を破る。
1人不安に駆られていた渡辺も、ツンでさえもこれには助けられた。


36 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:55:22.90 ID:+X7vQWzG0

ξ゚听)ξ「渡辺さん、ヒート、大事な話があるの。聞いてくれる?」

再会を喜び合うのは一先ず後回し、とばかりにツンの口調が変わった。

ξ゚听)ξ「今の状況、かなりヤバい事になってるのは分かると思う。最悪と言ってもいいわ。
     いや、違うわね。これからもっと悪くなる事も考えられるから今はまだ最悪じゃないわ 」

从'ー'从「え〜、一体どういう事ぉ〜? 」

ヒートには既に探索中に話したが、今合流したばかりの渡辺は事態が飲み込めない。
恐らくは、ただ純粋に不気味な雰囲気に恐怖していただけだろう。
多くの仲間達が無残に殺された事など想像だにしていない。

∧_∧
(*゚;;-゚)「そのままの意味じゃ。今からお主らを寝ておった部屋に戻す 」

ノハ;゚听)「猫が喋った!!」

それまで普通の猫を決め込んでいた、でぃが突然言葉を発する。
突然の事態に飛び上がって目を見開くヒートと渡辺を余所に、でぃは淡々と続けた。


39 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:57:13.23 ID:+X7vQWzG0

∧_∧
(*゚;;-゚)「このような大事の最中じゃ。気にするな。お主らを部屋に戻した後ワシが結界を張る。
     その中におれば魔の力は及ばぬ 」

ξ゚听)ξ「私達はこの異変を起こした張本人を探す。校舎の中にソイツがいるってのが、私とでぃさんの見解よ 」

ツンもでぃに続く。
もうここには友人と再会を喜び合う少女の姿はない。
退魔師となった1人の女がいるだけだ。

∧_∧
(*゚;;-゚)「お主らと一緒では何かと動き辛い。部屋で大人しくしておれ 」

良く言えば合理的、悪く言えば冷たい言い方をしてでぃは歩き出す。
向かうのは、今夜3人と1匹が寝ていた部屋。
それに続こうとする強い顔のツンの腕を取って、ヒートは悲しげに聞いた。

ノパ听)「ツン……。こんな状況なのにどうしてそんなに落ち着いてられるの?」

眉尻を下げ、今にも泣き出しそうな表情のヒート。
それを見て、ツンは俄かに表情を緩めた。

41 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 20:59:29.44 ID:+X7vQWzG0

ξ゚听)ξ「外にね……、外にまた会いたい奴らがいんのよ。
     いつも何でもお見通しだって顔で、すましてるバーのマスターに、
     見た目は怖いけど、本当は優しい頑張り屋さんの元ヤクザ 」

今度は笑った。
暗い世界でそこにだけ光が指しているような笑顔で、ツンはその誰かの事を口に出す。

ξ゚听)ξ「それからボケーっとしてるけど、本当の本当にいざという時には誰よりも頼りになるアイツ……」

怖がるヒートの手をしっかりと握って、ツンは続ける。

ξ゚听)ξ「私だって怖くないわけじゃない。でも怖がってばかりじゃ何も解決しないわ。
     こういう時こそ背筋をピンと伸ばさなきゃ 」

歩いているうちに宿舎へと着き、せっせとでぃは結界を張り始める。
その間、ツンはヒートと渡辺の手をしっかりと握り、始終勇気付ける言葉を続けた。

∧_∧
(*゚;;-゚)「これで結界は完成じゃ。行くぞ、ツン 」

ξ゚听)ξ「じゃ、いい子にしてるのよ2人共 」

最後に1度、ツンは握る手に力を込めて笑いながら出て行った。

     ・     ・     ・     ・     ・


44 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:01:11.25 ID:+X7vQWzG0
     ・     ・     ・     ・     ・

最後の部屋の扉を閉める。
探索が終わった。
何の収穫もないまま終わってしまった。

ξ゚听)ξ「これで大方見て回ったわね。でも一体どういう事?私達の他には結局誰もいなかったわ 」

つまりそれは……

∧_∧
(*゚;;-゚)「ふむ……。となれば残る可能性は1つ、選択肢は2つじゃな。
     そしてツン。お主にはどちらなのか見当が付いておろう?」

ξ゚听)ξ「・・・・・・」

ツンは閉口する。
他に誰もいないという事は、つまりそう言う事だ。

∧_∧
(*゚;;-゚)「気持ちは分かる。じゃがのぅ……、そうではないという証拠を探したが見つからなんだ。
     ならば認めざるを得まい 」

ξ゚听)ξ「……分かってるわ 」


46 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:02:48.19 ID:+X7vQWzG0

ツンは受け入れた。
そうではないと信じていたから必死になって探した。
その過程で、そうであった時に認める覚悟を次第に強めていっていた。

∧_∧
(*゚;;-゚)「ワシの結界の中では魔の力は使えぬ。もう1人は無事なはずじゃ。急ぐぞ 」

でぃはツンの心情を悟り、幾許かの心の助けになる助けになるような言葉を選んだ。
ツンもでぃも知っていた。




他に誰もいないという事は、ヒートか渡辺のどちらかなのだ。




その時、静寂を引き裂く破壊音が、静寂ゆえに強烈に校舎内を埋め尽くした。
その数瞬後に、割られたガラスが床に届き、粉々に砕け散る音が続く。


48 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:04:27.02 ID:+X7vQWzG0

ξ;゚听)ξ「何なの!?」
∧_∧
(*゚;;-゚)「ちぃっ……、もう来よった……」

たまげるツンは、忌々しげに口元から食い縛った牙を覗かせるでぃを見た。
その様子を見て察する事は1つ。

ξ゚听)ξ「まさかっ!?」
∧_∧
(*゚;;-゚)「鬼が来た!!ツン、娘っ子共はお主に任せる!!ワシは鬼の方へ向かう!!」

言うや否や、ツンの返事を待たずに駈け出して行くでぃ。

ξ゚听)ξ「でぃさん!!でぃ……さん……」

その後ろ姿に慌てて声を駆けるも、既に届かない事を悟り言葉を飲み込み。
同時にもう1つ悟る事がツンにはある。

ξ゚听)ξ「私がやらなきゃ……」

     ・     ・     ・     ・     ・


49 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:06:51.21 ID:+X7vQWzG0

     ・     ・     ・     ・     ・

ノパ听)「何!?今の音はっ!?」

鬼が侵入したその音は、静かな建物内に強烈に響いた。
当然、この宿舎にも届く。

从'ー'从「何だろ〜ねぇ〜?ガラスが割れたみたいだよぉ〜 」

緊迫した声を出すヒート。
緊張感のない声を出す渡辺。
対照的な声音でそれぞれが第一声を発する。

ノパ听)「行かなきゃ!!」

突然立ち上がるヒート。
何よりも優先しなければならない、為すべき事が脳裏に浮かんだ。
ツン達の忠告は既に頭にないヒートを、渡辺は両手で必死に制する。

从;'ー'从「え〜、だ、駄目だよぉ〜。ツンちゃんも猫ちゃんもここに居ろってぇ〜 」

ノパ听)「ちょっと見てくるだけだから!!すぐ戻るから渡辺さんはここで待ってて!!」

     ・     ・     ・     ・     ・


53 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:08:05.47 ID:+X7vQWzG0

     ・     ・     ・     ・     ・

∧_∧
(*゚;;-゚)「1匹か。よくもまぁこんなに早く嗅ぎつけたもんじゃのぅ 」

でぃはその正面に立ちはだかる巨大な人影に、心からの皮肉を飛ばした。

天井に届かんばかりの身長。
身に纏ったボロから覗くのは、今にも皮膚を突き破り、はち切れそうな鋼の筋肉。
そして首から上に堂々と鎮座しているのは、絶えず不快な臭いのする涎を垂らす馬の頭。

∧_∧
(*゚;;-゚)「ほぅ、馬頭神王か。じゃがお主、現世の臭いがするぞ……」

ギラリと両眼を輝かせて、威嚇するように言うでぃ。
馬の頭と現世の名残を持つ鬼は、激しい吃音で答えた。

( ゚∋゚)「オ、オ、オ、オレは此間まで生きてた。生きて、い、い、生きて人を楽しくこ、こ、殺して 」
∧_∧
(*゚;;-゚)「何じゃ、物狂いか。死して間もない故、現世の臭いに敏感だったという道理じゃろうな 」

最大限の軽蔑と共に、でぃは敵の分析を済ませる。


60 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:10:10.99 ID:+X7vQWzG0

ブルルルルッ、と唇を震わせ、鬼は涎を撒き散らす。
真っ赤に充血した眼は釣り上がり、強烈な怒気を発する。
そして、その怒りの対象を叫んだ。

( ゚∋゚)「殺された!!こ、こ、お、オレ、殺された!!コートの、男!!
     殺す!!ころ、す!!コロ、コロコロコロ――」

コートの男……
その名を口にすると同時に、手当たり次第に両拳を壁に叩きつける。
拳が触れた途端、コンクリートの壁は塵となる運命にあった。
∧_∧
(*゚;;-゚)「魔に落ち過ぎて、地獄にやれば逆に喜ぶとでも思うたか。
     閻魔大王め、何も鬼にせんでも良かろうに 」

その怒りに何ら気押されることなく、心底迷惑そうに悪態をつくでぃ。

∧_∧
(*゚;;-゚)「お主がどこの誰に殺されたかなど、皆目見当も付かぬ。興味もない。が……」

最早、目の前のでぃの存在も忘れてしまったのかのように、拳をコンクリートに打ち続ける鬼。
醜悪なその姿を見たでぃは、口元をキュッと伸ばして笑う。

∧_∧
(*゚;;-゚)「ワシがもう1度殺してやろう。かかって来るが良い、身の程を教えてくれるわww」

     ・     ・     ・     ・     ・


66 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:12:30.11 ID:+X7vQWzG0

     ・     ・     ・     ・     ・

ξ゚听)ξ「居ない!!もう、どこ行ったのよ2人とも!!」

もぬけの殻の室内を見て、ツンは青冷める。
その事実がツンを必要以上に焦らせた。

ξ゚听)ξ「2人でここから出てるとすると……、あの子が危ない!!」

室内にはまだ体温の温もりが残っている。
まだ2人が出て行って、そう時間は経っていないはずだ。
ツンは1度、大きく深呼吸して目を閉じる。

ξ--)ξ「くっそー……、考えろ、考えろ、考えろ……。私があの2人ならどこに行く?」
ξ#゚听)ξ「分かるワケないじゃないのよっ!!死ぬかもしれないってのに行くとこなんて……」

1分1秒が惜しい中、纏まらない考えがツンを苛立たせる。
その苛立ちを言葉にして吐き出す。
気持ちを切り替えて今夜の出来事を頭から整理すると……

ξ゚听)ξ「あの子そういえば……。もう!!行くしかないじゃないのっ!!」

一縷の可能性を見出し、ツンは走り出した。

     ・     ・     ・     ・     ・


67 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:14:28.83 ID:+X7vQWzG0

     ・     ・     ・     ・     ・

ノパ听)「ハァッ!!ハァッ!!良かった……。無事だったんだ 」

目的地に着いたヒートは、目当ての物の無事な姿を見て安堵の息を吐いた。
ここは家庭課室。
そしてヒートが大事に持っているのは、縫いかけのドレスだった。

从'ー'从「ヒートちゃん、何それ〜?」

ヒートは背中を向けていた入口から声をかけられる。
振り返ると、部屋で待たせていたはずの渡辺がそこに立っていた。

ノパ听)「渡辺さん!!待っててって言ったのに、しょうがないなぁ 」

从'ー'从「何それ〜?」

それに気付いたヒートは、興奮を抑えるように話しかけた。
渡辺はヒートが持っているドレスに関心があるようだ。
ほんのりと頬を桃色に染めて、ヒートは照れ笑いを浮かべた。

ノハ*゚听)「これ?えーと、まぁ……、アハハハハ!!
     今度の公演でツンに着て貰おうと思って夜鍋して作ってたんだ!!」

从 ー 从「何それ〜?」


69 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:16:56.54 ID:+X7vQWzG0

廊下の窓からの微妙な瘴気の光の逆光となり、渡辺の表情は見えない。
見えない表情の渡辺の返答。
そこにはどこか、怪訝なものを感じる。

ノパ听)「え?だからツンに着て貰おうと……演劇の衣装だよ?」

从 ― 从「何それ……何それ、何それ、何それ何それ!!
      ナニソレナニソレナニソレナニソレナニソレッ!!!!」

突然に、あまりにも突然に渡辺の口調が変わる。
壊れてしまったおもちゃのように、不自然なトーンで同じ言葉を何度も何度も何度も繰り返す。

ノハ;゚听)「渡辺さん……?」

思いがけない事態に、ヒートは言葉を失う。
やっと出た言葉は、友人の名前だけだった。

从 ― 从「どいつもこいつも私の事を『渡辺さん渡辺さん渡辺さん』……」

しかしその友人の表情は未だ見えない。
見えないのは表情だけではない。
その心情すら、厚いカーテンに仕切られてしまったかのように読み取ることが出来ない。


73 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:20:02.45 ID:+X7vQWzG0

从'∀'从「アハハハハ!!うふふふふふふ……、アハハハハハハハハッ!!」

そして笑い出す。
ヒートはここで、初めて渡辺の表情を見た。
いつも控え目な笑みを浮かべている渡辺の顔には、大口を開けた不自然な表情が生まれていた。

ノハ;゚听)「一体……どうしたっていうの?」

从'ー'从「ふふふ、ヒートちゃん頭悪いのぉ〜?」

言葉と同時に、空気が弾けるような音がする。
ヒートが両手で大切に持っていたドレスが、破裂したように裂けていた。

ノハ;゚听)「え……?え?」

何が起こったのか分からない。
無残に引き裂かれてしまったのは、自分の手の中にあった物だというのに。
手を叩いたような音が1回しただけ。

从'―'从「あーぁ。せっかく私とツンちゃんだけの世界に来たと思ってたのになぁ〜 」

ノハ;゚听)「何言って……」


75 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:22:36.93 ID:+X7vQWzG0

今度は口をぴったりと閉じ、生気の失せた無表情になる渡辺。
友人の見たことのない表情の変化に、ヒートは戸惑い、そしてその戸惑いは恐怖に昇華しつつあった。

从'―'从「他の邪魔者はちょっと念じただけで、喜んで生贄になってくれたのになぁ〜。
     どうしてお前だけ言う事聞いてくれないかなぁ〜?」

ノハ;゚听)「何……言ってるの?部屋に帰ろ?ね?」

恐れながらもヒートは、極めて都合の良い解釈をしようとする。
これは渡辺が自分を怖がらせようとしているだけだ。
冗談に決まっている。

从'ー'从「嫌だぁ〜♪」

しかし、いつになっても渡辺はネタばらしをしようとしない。
冗談ではない……?
そして、それはついに訪れた。

从'ー'从「だってあの部屋じゃ力が使えないんだもん♪何回もお前を殺そうとしたのよぉ〜。ペリ、ってね 」

ノハ;゚听)「あっ!!」


77 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:25:16.96 ID:+X7vQWzG0

ヒートは右手の指に刺すような熱を感じた。
おそるおそる右手を顔の前に持ち上げる。
人差指の爪が剥がれていた。

从'―'从「あの猫、結界がどうとか言ってたけど、あの中じゃ本当に力使えないんだもの。
     どうやって連れ出してやろうかって焦ったわぁ〜」

ノハ;゚听)「本当に……、本当にアンタがやったっての?」

口の端を吊り上げ、気に入らない、という表情をした渡辺。
ヒートはこのような渡辺の顔は見た事が無かった。
邪悪とさえ思わせるこの表情。

从'ー'从「だからさっきからそう言ってるじゃない。何度も同じこと言わせないでよぉ〜ww」

ノハ;゚听)「だって、アンタ音楽室で泣いてたんじゃ……」

ヒートのその言葉を受け、再び渡辺は顔を歪める。
続くのは嘲る様な笑い声。

从'ー'从「笑ってたのよぉ〜ww。嬉しくて嬉しくてwwほ〜ら、ペキ♪」

ノハ;゚听)「う、ぁ、あぁぁー――!!な……、な、に、これ?」


79 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:27:06.45 ID:+X7vQWzG0

我慢の範疇を超えた激痛が、爪の剥げた指に走る。
見てみると、おかしな方向に曲がってしまっている。

从'ー'从「わかんないんですぅ〜ww。
     変質者が部屋に来て、私の口に何か押し込んで、気が付いたら超能力者になってたのぉ〜。
     便利よぉ〜。ホラ、ペキンッ!!」

ノハ;凵G)「あぁぁぁぁぁぁー――――っ!!」

見ている前で、今度は隣の中指がへし折れた。
何も触る物はないのに、独りでに折れた。
指は既に青黒く内出血を起こしている。

从'ー'从「他にも色々出来るのよぉ〜。例えばお前が今考えてる事が分かっちゃうとか。
     テレパシーって言うのかしらぁ?
     ウフフww、怖がってるわねぇ〜。あ、これは見ただけでも分かるかww」

からかう様に笑う。
心なしか、普段より言葉使いが汚くなっているような気もする。
目線は完全に上から下だった。


82 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:30:13.34 ID:+X7vQWzG0

从'―'从「他の奴らはこのテレパシーで命令したら、素直にみ〜んな体育館に死にに来てくれたんだけどなぁ〜。
     どうしてお前だけ来なかったのかしら?もう1本、ペキンッ!!」

ノハ;凵G)「……っ!!……っ!!」

少しだけ首をかしげて、思い通りにならなかった事が不思議だという顔をする。
人を殺した事に関しては、何の罪悪感も持っていない物言いだった。
渡辺は腹いせのように、ヒートの指をもう1本曲げた。

从'ー'从「凄いでしょ〜?この世界もねぇ〜、頭にやり方が浮かんできたんだよ♪
     生贄はちょっと多めに使っちゃったんだけどネww」

1人で喋り続ける渡辺。
自分の得た力を、初めて他人に話す事が嬉しくて仕方が無いような顔をしている。
それは、相手が他の誰でもなくヒートだから。

从'―'从「まぁ別にどうでも良いわぁ〜。今から捻じり殺してあげるんだからぁ〜 」

キッ、と強く睨む。
同時にヒートの体は独りでに教室の壁に強烈に押し付けられ、コンクリートで固められたかのように身動きを封じられた。
その衝撃は肺の中の空気を押し出し、ヒートは一時的に酸欠状態となる。


89 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:33:43.16 ID:+X7vQWzG0


更にもう一度、渡辺は眼に力を込める。
ヒートの上半身を覆っていたシャツが千切れ飛び、胸の下着が作り出す柔らかな丘陵が露わになった。

从'ー'从「へぇ〜、結構おっぱい大きいんだね〜。私とどっちが大きいかなぁ 」

ノハ 凵@)「カッ!!カハッ!!」

渡辺は自分の乳房を両手で確かめながら、値踏みするようにヒートの胸元を凝視した。
その間もヒートは、酸欠の苦しみから、未だ言葉が生き返らない。

从'ー'从「いっつもいっつも私のツンに纏わり付いて邪魔だったのよぉ〜ww。
     まずはぁ〜……右足から――」

心底楽しげに渡辺はヒートの身体を視姦する。
思い切ってツンを呼び捨てにしてみた。
渡辺はその快感に打ち震えた。
この女さえいなくなれば、ツンは自分のものになる。

今から両手両足をもぎり取り、最後に首を捻る。
その後で愛しのツンの元へ行こう。




ξ゚听)ξ「そこまでにしなさい、渡辺さん 」



90 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:35:44.68 ID:+X7vQWzG0

あまりにも凛とした声だった。
ヒートにも渡辺にも、それは強き意志を持つ聖女の声に聞こえた。
両者とも一瞬唖然とする。

この聖女を傷付けさせるわけにはいかない、という責任感が失った言葉を奮い立たせた。
ヒートの口から、か細いが、誇り高い声が漏れた。

ノハ 凵@)「ツン……、来ちゃ、ダ……メ……」

それは普段とは比べようもないほどに弱々しい声だったが、確かにツンの耳に届いた。
しかしツンは逃げに来たのではない。
救いに来たのだ。

ξ゚听)ξ「ヒートを解放しなさい、渡辺さん 」

静かに、だが気の張った声で命令する。
震えの無い強い声だった。

从'―'从「あら、その顔は私だって分かってた顔ねぇ。どうしてかしら?何かミスしたぁ?」

ξ゚听)ξ「ヒートを解放しなさい!!渡辺さん!!」


93 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:37:27.90 ID:+X7vQWzG0

今度は秘められた意志の強さだけではなく、その口調さえも強く言った。
友人が友人を殺し、今また傷付けている。
この事実を完全に受け入れ、そして乗り越えていた。

从'ー'从「え〜、こいつ殺せばもう私達だけなのよぉ?やっと2人だけの世界―――」

ツンはツカツカと渡辺に歩み寄り、頬を強烈に叩いた。
その瞬間、見えない力からヒートが解放され、床に崩れ落ちる。
手加減など一切せず、力一杯に大きく振りかぶって振りぬいた平手打ちだ。

ξ゚听)ξ「教えてやるわ。あんた最初に私の顔見たときに『生きてたんだ』って言ったでしょ?
     確かに皆死んだわ。
     でも怖がって音楽室に閉じこもっていたはずのあんたが、どうしてそれを知ってるのって話よ 」

从;ー;从「何……?せっかく私がツンちゃんの為に……」

片頬を真っ赤にした渡辺は、涙を浮かべながらツンに訴える。
全ては2人の為。
ツンの為だと。

そう信じていた。
ツンは必ず喜んでくれると思っていた。
だが……

ξ゚听)ξ「私の為に?笑わせないでよ。何もかもアンタの為でしょ?」

ツンの口から出たのは、軽蔑の言葉だった。


94 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:40:06.60 ID:+X7vQWzG0

从 ー 从「私はツンちゃんの……」

ξ゚听)ξ「はっ!人の為にって言ったら聞こえは良いわね。
     でもそこであんたは何をしたの?
     十何人も友達を殺した。ヒートを傷付けた。そして……」

尚もツンの為だと主張しようとする渡辺。
しかしその主張は言い終える前に否定された。
そして、後に続くのは渡辺の心の平衡を崩すに十分な一言だった。

ξ゚听)ξ「私を裏切った!!」

この瞬間、渡辺の中で何かが音を立てて崩れ始めた。

何もかもツンに捧げるつもりだったのに。

ツンの為に他の人間を全て殺したのに。

从 ― 从「私……は……、ツンちゃんの……」


96 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:42:39.35 ID:+X7vQWzG0

それでも縋り付こうと口を動かす。
しかしツンの方向を見ることが出来ない。
ツンが恐ろしいのだ。

ξ゚听)ξ「そうやっていつまで経ってもツン『ちゃん』!!
     人に近づいて来て貰いたいのに自分から壁作ってるのに気付かないの!?
     だからアンタはずっと渡辺『さん』なのよ!!」

ダメ押しのように最愛の人間から自分を否定される。
その言葉の内容に、渡辺は打ちのめされた。
ツンの方は、渡辺がツンに対して思っている程の感情を、自分には持っていなかった。

从 ― 从「もう……いい……」

全てを否定された結果、渡辺の何かのスイッチが入った。
信仰と言っても申し分ない程の、心の支えを全否定された事により入ったスイッチ。

从'―'从「もういいわ。ふふっ、ふふふふふふふ……。
     私はツンちゃんの為にやったんだもん。今はただ戸惑って分からないだけよね?」


100 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:45:49.36 ID:+X7vQWzG0

自分にだけ都合の良い解釈。
しかしそうしないと渡辺は壊れてしまっていただろう。
渡辺のその自己擁護はエスカレートし、突然独り語りを始める。

从'ー'从「そうだよ、私の気持ちは絶対ツンちゃんも分かるよ 」
从'―'从「いつかっていつ?待てないよ 」
从'ー'从「待てないなら分からせてあげればいいよ 」
从'―'从「どうしたらいいと思う?」 
从'ー'从「殺せばいいと思うよ 」
从'―'从「殺しちゃおうか?」
从'ー'从「いいんじゃない。そうすればずっと私の物よww」

あるいはもう壊れてしまっているのか。
目の前で狂った結論に達した友人を、ツンはいたって冷静に見ていた。

ξ゚ー゚)ξ「言っとくけど私は殺されないわよ。簡単には死ぬなって耳にタコが出来るほど言われてんだから 」

从'―'从「うふふふふww。こ〜ろ〜し〜て〜あ〜げ〜る〜 」

笑い声を出してはいるが、その表情は石のように固まっている。
ツンには自分でも、どうしてこれほど冷静でいられるのか分からなかった。

ξ゚听)ξ「アンタそれ笑ってんの?表情おかしいわよ 」

そして自分に発破を掛ける意味合いも込めて、大きな声を出した。


103 名前:十六話 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:48:31.39 ID:+X7vQWzG0

ξ゚听)ξ「その性根、私が叩き直してやるわ!!」



        ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです

     ―――第十六話・火の玉女子高生ツン・初めての退魔録―――

 
              〜その2、下心〜 終


107 名前:予告 ◆FnO7DEzKDs :2007/12/14(金) 21:50:27.75 ID:+X7vQWzG0
次回予告

曲がりすぎて届かなかった思い―――从-ー-从

ξ゚听)ξ「実際にここまで歪んだ人間を見ると現実味が無いわね。
      友達だったのに何も感じないわ 」


真っ直ぐで届いた思い―――ノハ--)

ξ゚ー゚)ξ「愛してる愛してるって普段は鬱陶しいけど、いざという時には助けてくれたわね、ヒート 」


少女達の思いを、踏み躙る怪人1人・・・・・・

( <●><●>)「あれだけの苗床に植えた種です。さぞかし綺麗な芽が出たでしょう」


悠久を生きた猫又は何を思う・・・・・・?
∧_∧
(*゚;;-゚)「うむ。ワシがただの猫だった頃の事じゃ。遠い昔の話よ 」


        ( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです

     ―――最終話・火の玉女子高生ツン・初めての退魔録―――

 
              〜その3、真心〜


前へ 次へ  目次 inserted by FC2 system