84 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 03:18:06.82 ID:z8MDhwJsO
ξ#゚д゚)ξ「あーーーもうっ! 悔しいっ!!」
 
ゴミ箱を蹴飛ばして地団駄を踏むツン。
散乱するゴミ。
帰還してからというものの、ずっとこの調子だ。
ミルナ以外の増援だったなら、ここまで荒れはしないだろう。
だがミルナに助けられた事は事実であり、彼が来なければ死んでいたのも疑いようがない。それが更に癇に触るらしく、やり場のない憤りを物にぶつける。その矛先はブーンたちにも向けられた。
 
(;^ω^)「ツン…そんなに暴れるなお…」
(;´_ゝ`)「あ、あまり怒るとシワが増えるぞ…」

ξ#゚听)ξ「うるさいわねっ!
アンタが最初に無茶しなければこんな事にはならなかったのよ! 兄者もブーンを助ける為とはいえ無暗に突っ込んで反撃されて!
おかげで私一人に注意を向けなきゃならなかったのを分かってるの!? だからいつまで経っても半人前なのよアンタたちはッ! 大体もっとアンタたちが強ければあんなヤツの助けを──」
 
そこまで言って、自分が何を言っているかに気付く。
今の言葉は自分の非力さを肯定しているようなものだった。
自分がもっと強ければこんな結果にはならなかった。ミルナのように一人であの強敵を葬れる程強ければ。
それらに気付き、意気消沈して押し黙るツン。
そこに、一人の女が入ってきた。クーだ。

85 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 03:20:39.31 ID:z8MDhwJsO
川 ゚ -゚)「随分荒れていると聞いたが…そうでもないようだな」
( ^ω^)「いや、もう大荒れで」
( ´_ゝ`)「部屋を見れば分かるだろう。怒鳴り散らすわ物は壊すわで…」
(;*ω*);*_ゝ*)「アッー!!」
ξ#゚-゚)ξ「ちょっと黙りなさい」
ξ゚听)ξ「で、どうしたの? そういえばクーもあの無人機と戦ったらしいわね。どうだった?」
川 ゚ -゚)「うむ、その件で来たのだ。間違いなく今まで戦った中で一番の強敵だ。
恐ろしい相手だった。自分の弱さを実感したよ」
ξ゚-゚)ξ「でも生きてここにいるって事は倒したんでしょ?」
川 ゚ -゚)「やられる寸前に増援が来てな。ドクオとモララーだ。彼らが来なかったら今ごろ死んでいただろう」
ξ゚听)ξ「ドクオがねぇ…。あ、でもドクオも別の任務だったんじゃないの? よく助けに来てくれたわね」
川 ゚ -゚)「それなんだが、ニューソクシティから少し離れた所に研究所があってな。今は使われてないらしいんだが、なんでもその近辺で高岡博士の目撃情報があったらしい。
ドクオたちはそこの調査に向かったと言っていた」

87 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 03:22:10.26 ID:z8MDhwJsO
ξ゚-゚)ξ「??? よく分からないわね」
川 ゚ -゚)「話は最後まで聞くんだツン。そこを調査してたドクオは地下に繋がるリフトを発見したんだ。地下には長い通路があり、その先に広大な施設があったと聞く。
特殊な妨害電波が張り巡らされているのか地上との通信は不可能。どうしようかと思っている時に、彼らもあの無人機に襲われたらしいぞ」
ξ゚-゚)ξ「今は使われてない施設と高岡博士と無人機…。なんか匂うわね」
川 ゚ -゚)「ああ、あの無人機は高岡博士と何らかの関わりがあると考えた方がいいだろう。
話を戻すぞ。無人機を撃破して更に調査を進めた所で、分岐点があったのだ。その中の一つを選んで先に進んだ所で、またリフトがあったらしい。リフトで上がると、そこはニューソクシティ北部だったとか」
ξ゚听)ξ「じゃあたまたま北部に出たドクオたちが、クーを発見して援護してくれた訳ね」
川 ゚ -゚)「そういう事だ。まあ援護というか、私は見てただけだがな。
とにかく運が良かった。突然レーダーに反応が現れたから驚いたぞ」

88 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 03:23:57.81 ID:z8MDhwJsO
ξ゚听)ξ「てか、ドクオもよくペラペラ任務内容を話したわね…」
川 ゚ -゚)「帰還してから、助けられた礼を言いに彼の部屋を尋ねた時に聞いたんだが──そういえばひどく動揺していたな。
何か不都合があるかと日を改めようとしたら、慌てて部屋に入れられた。最初は黙っていたが一度話し出すと後はずっと話しっぱなしだったな」
ξ゚ー゚)ξ「テンパってたんでしょ。あいつクーの事好きっぽいからねぇ」
川 ゚ -゚)「私のような色気のない女を? 初耳だな」
ξ゚听)ξ「今度聞いてみたら?」
川 ゚ -゚)「うむ。そうするとしよう」
ξ゚听)ξ「ところでクー。あいつの戦いを間近で見たんでしょ? どうだった?」
川 ゚ -゚)「強いな、彼は。久しぶりにトップランカーの実力を見たが私など足下にも及ばない。私もあのようにありたいものだ」
川 ゚ -゚)「ああ、当初の目的を忘れる所だった。ツンに折り入って頼みがあるのだが…」
ξ゚-゚)ξ「なに?」
川 ゚ -゚)「私と共に訓練してくれないか? 私はまだまだ弱い…。生徒を持ってはいるが、弱い私に教官を勤める権利などない…」

89 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 03:25:16.01 ID:z8MDhwJsO
つまりクーは己を磨こうとツンに頼みに来たのだ。
ツンは考える。日に日に強くなっていくブーンや兄者。それに対して自分は?
力が欲しい。何者にも負けない、全てを屈服させる力が。
ツンは二つ返事で答えた。
 
ξ゚-゚)ξ「いいわ、やりましょう。二人とも、ちょっと…」
 
( ^ω^)「レイド権チェンジ。兄者がレイダーだお」
( ´_ゝ`)「おk。カバディカバディカバディカバディキャバドゥェ…」
ξ゚听)ξ「ブーン! 兄者!」
( ^ω^)「今忙しいから後にしてお。
それより兄者、今噛んだお。キャントアウトでレイド権チェンジ」
( ´_ゝ`)「むむぅ…今度はアンティだな」
( ^ω^)「カバディカバディカバディカバディカバディカバディ…」
 
ξ# )ξ
 
ツンの長話に飽きて二人でカバディをしていたブーンと兄者を鉄拳で黙らせ、ツンは説明を始めた。

90 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 03:26:36.34 ID:z8MDhwJsO
ξ゚-゚)ξ「…という訳で、私はしばらくアンタたちの相手を出来ないの。でも安心して。
夜にでも二人の訓練映像を見て悪い所や良い所があれば言ってあげるし、毎日の特訓メニューも組んであげるから。質問は?」
(♯)^ω(#)「ありませんお」(♯)_ゝ`(#)「同じく」
ξ゚-゚)ξ「そ。じゃあ私は行くわ。そろそろ機体修理も終わってるはずだし。アンタたちのは損傷が激しいからまだ時間かかるわね。
筋トレでもやってなさい」
 
説明し終わった途端に席を立つツン。彼女も久しく燃えているようだ。
 
(♯)^ω(#)「よし! 兄者やるお!!」
(♯)_ゝ`(#)「うむ!」
 
気合いの入った二人を見て、満足気に部屋を出るツン。
 
ξ゚听)ξ「あ、言い忘れてたけどクーの生徒が加わるかr──」
(♯)^ω(#)「カバディカバディカバディカバディ…」
 
ξ  )ξ
 
(♯) ω(#)♯)_ゝ (#)
 
VIPに二人の悲鳴がこだました。

98 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 04:12:47.42 ID:z8MDhwJsO
訓練所を縦横無尽に飛び回る緑一色に染められたAC。
両肩に積まれたチェインガンと銃器を持たない二つの手。その両手からレーザーブレードが生まれた。
俊敏に動きながら乱舞する緑の機影。しばらくブレードを振り回してから急に動きを止め、ビシリと妙な構えをとりながら彼は言った。
 
『かまきり拳は無敵だ』
(*^ω^)「おお〜」
『か、かっこいい!』
 
生身で構えると様になっているかもしれないが、ACでやると悪い冗談のように見える。見る人が見たら気分を害す事受け合いだ。
しかも本人は至って大真面目なので始末が悪い。ブーンと兄者は気に入ったようではあるが。
 
『ふふふ、そうだろうかっこいいだろう!』
 
彼の名はほわっちょ相田。かまきり拳法初代創始者の肩書きを持つレイヴン。
彼がクーの生徒だ。ランクは12位と、それなりの実力はあるようだ。
 
『クー姉さんから話は聞いてるよ。今のパフォーマンスで僕の実力は充分理解してもらえたとは思うけど、念の為に直接伝えよう。行くよッ!』
( ^ω^)「来いお!」
(;^ω^)「ってちょ、速──」
 
相田の機体、カマキリオンは速かった。ツンのそれよりも速い。
ブースターが火が吹いたかと思った時には並んでいた二機の間を通過する。それほど距離があった訳ではないがブーンと兄者はこの速さには驚きを隠せない。
二機とも、コアには一文字の傷が付けられていた。

99 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 04:13:58.17 ID:z8MDhwJsO
『ふふ、どうかな? 高出力ブースターを積んだ軽量二脚のスピードはすごいだろう!』
『なんというスピード。見るまでもなく分かってしまった。
その機体のオーバーブーストは間違いなく光』
『まあ装甲は紙並みだし、このブースターにしたのはつい最近だけどね。スナイパーのクー姉さんに追いつくにはスピードを上げるしかないと気付いたんだ。
ちなみに僕のコアにオーバーブーストはない。速いけどエネルギー消費がハンパないからね。その代わり実弾系のオービットがあるよ。それじゃ、訓練を始めようか』
( ^ω^)「把握したお。えーと、今日のメニューは…」
 
ツンが組んだメニューをモニターに表示する。
 
『反撃しつつ、ほわっちょ相田の攻撃を避け続ける、か』
( ^ω^)「尚、背後に回られて斬られたら原点1…。1ポイントにつき腹筋背筋腕立て20回…5ポイントごとに1キロの走り込みを追加…」
『死ねるな』
(;^ω^)「死ねるお…。相田もペナルティあるのかお?」『僕だって必死だ。
君たちの攻撃を受けるごとに腹筋背筋腕立て3回。君たちの装備はマシンガンとショットガン、僕も死ねるよ』
(;^ω^)「後ろをとられないようにがんばるしかないお…」

100 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 04:15:54.44 ID:z8MDhwJsO
一方その頃…
 
深い青に緑の線で装飾され、両手にスナイパーライフルを持ったACと純白のACが交戦していた。
ツンデレビウムは武器をレーザーライフルに変更している。先の戦いで攻撃力の低さを実感してから、まずは純粋に武器から変えたようだ。むろん機体もそれに合わせた物に改良してあった。
 
ξ;゚听)ξ「随分と、射撃精度が上がったじゃないの…! それに逃げ足も速くなったんじゃなくて!?」
『伊達に任務はこなしてないからな…! ツンこそ、その速度で私を射程内に捉え続けるとはな!』
ξ;゚-゚)ξ「お互いレベルアップしてるって事ね…面白いじゃない、トコトンやるわよ!」
『ああ望むところだッ!』

102 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 04:17:31.86 ID:z8MDhwJsO
ξ;--)ξ「あぁ…疲れた…久しぶりに朝から晩まで全力で戦ったわ…眠い…」
 
欠伸を噛み締めながらウトウトとするが頭を振って眠気を飛ばす。
 
ξ;゚-゚)ξ「いけないいけない…まずはブーンたちの様子を見なきゃ…」
 
録画映像を早送りで再生して気になる所があればスロー再生し、注意点をメモする。
その作業を繰り返し、次はメニューの作成。
全てが終わる頃には三時を過ぎていた。
 
ξ;--)ξ「次からもっと早く切り上げなきゃダメね…今から帰って出社したら三時間も寝れないし…。さすがにキツいわ…シャワーも浴びたいし…」
ξ゚听)ξ「あ、そうだ!」
 
ツンはポンと手を叩き、軽い足取りでシャワールームへ向かった。

103 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 04:20:37.71 ID:z8MDhwJsO
目覚ましが朝を告げる。
朝が弱い者にとって、一日で最も辛い時間だ。
 
( -ω-)「もう…朝…かお…」
 
二度寝しようと叩くように目覚ましを止め、寝返りを打つ。
手には柔らかい感触。そして枕のすぐ横では…
 
ξー_ー)ξ「…zzZ」
( -ω-)「………」
(;^ω^)「うぉわぁ!!?!?」
ξ--)ξ「あ……ブーンおはよう…」
(;;^ω^)「すいませんすいませんすいません昨日走り込みはサボりましたついでに今おっぱい触りましたすいませんすいませんすいま(ry」
ξ--)ξ「んーー…いまなんじ…?」
(;;^ω^)「七時過ぎでございますお嬢様」
ξ--)ξ「そう…じゃ…起きるわ…」
 
のそのそと起き上がって洗面所に向かうツン。すぐにシャワーの音が聞こえてきた。続いてドライヤーの音。
音が鳴り止んでブーンの前に現れたのはタオルを首にかけた全裸のツン。
 
ξ*゚听)ξ「ハァ…さっぱりした…」
(*゚ω゚)「………」
ξ*゚听)ξ「………」
ξ////)ξ「やだっ! 自分の部屋と勘違いしちゃった!」
 
朝から普段ではあり得ない光景を目の当たりにしたブーンは放心するしかなかった。

104 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 04:22:26.61 ID:z8MDhwJsO
ξ////)ξ「ごめなんなさいねブーン。すぐに朝食作るからね」
(*^ω^)「いえ、充分ご馳走さまですおwwwwww」
 
ブーンの戯言は届かなかったのか、ツンはそのまま冷蔵庫を開く。
 
ξ゚听)ξ「何も入ってないじゃない。こまめに発注しときなさいよ。レイヴンなら食料はタダでもらえるんだから」
 
愚痴るツンの言う通り、VIPに所属するレイヴンには無料で食料品が支給される制度が昔からあった。
日々命をかけるレイヴンにとってはタダより高い物はないという言葉が見事に当てはまる。
しかし近年ではレイヴンの死亡率は著しく減少しているので、この制度を見直そうという動きもあるようだ。
 
ξ゚听)ξ「でもパンと卵ははあるみたいね。トーストとコーヒーになるけどいい?」
(*^ω^)「けっこうですお」
 
ブーンは運ばれてきた目玉焼きトーストを一口かじり、根本的な疑問を投げ掛けた。
 
( ^ω^)「そういやなんでツンがいるんだお? てか、どうやって入ったんだお?」
ξ゚听)ξ「ホラ、これ」
 
彼女もトーストを頬張りながら鞄をまさぐる。そして取り出されたカードキー。

106 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 04:23:52.92 ID:z8MDhwJsO
( ^ω^)「あれ? いつの間に取ったんだお?」
(;^ω^)「…って僕のはポケットに入ってるお。なんで二枚あるんだお?」
 
ツンはトーストをもう一口かじってから言う。
 
ξ゚听)ξ「作った」
( ^ω^)「へ?」
ξ゚听)ξ「私、アンタの教官だしね。簡単に発行してくれたわよ。これからもちょくちょく利用させてもらうわ」
(;^ω^)「職権濫用ここに極まる」
(*^ω^)「でもツンなら大歓迎だお!」
ξ゚-゚)ξ「あとクーもたまに来ると思うから」
(*^ω^)(sneg?)
ξ゚听)ξ「変な事したらただじゃおかないわよ。
そういえば昨日の走り込みサボったらしいじゃない。食べたら走って来なさい」
(;^ω^)(言わなきゃよかったお…)
 
つい口を滑らしてしまった事に後悔したが、それ以上にこの嘘のような状況に彼の胸は弾んでいた。

107 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 04:25:12.67 ID:z8MDhwJsO
数日後…
(;ヽ´ω`)「お…おぉぉ……」
('A`)「よう、久しぶりだな」
(;ヽ^ω^)「あ…ドクオ…」
('A`)「なんかすげぇ疲れてるみたいだな。妙にやつれてるし…。そんなにツンのしごきはキツいか?」
(;ヽ^ω^)「それもあるけど…むしろ寝れないのがキツいお…」
('A`)「あん? 不眠症か?」
(;ヽ^ω^)「違うお…。いつからか毎晩のようにツンとクーがベッドに入り込んできて…」
(;'A`)「な、なんだと!?」
(;ヽ^ω^)「それでいつの間にか夜もトレーニングする事になっちゃったんだお…」
(;'A`)「夜のトレーニングゥ!!?」
(;ヽ^ω^)「最初はツンとクーだけでやってたのを僕は見てたんだお」
(;'A`)「公開プレイ!!? 何やってんだよクー…」
(;ヽ^ω^)「その内二人とも意地張り出してどんどん激しくなって…」
(;'A`)「は、激しいのか!!?」
(;ヽ^ω^)「それはもう、汗が飛び散るくらいに。それで何故か僕まで参加するはめに…」
(;'A`)「…で、どうだった…?」
(;ヽ^ω^)「もう二人とも体力あり過ぎで毎回僕が最初にダウン…」
(;'A`)「お前…」
(;ヽ^ω^)「涙も出ないくらいカラッカラに…。おかげで脱水症状寸前の日もあるお…」
(#;A;)「お前ェェーーーーー!!!」
(;ヽ^ω^)「部屋は汗臭くなるし寝る時間は削られるし…勘弁してほしいお…。誰か代わってほしいお…」
(;A;)「ち…チクショーーーーーー!!!!!」
(;ヽ^ω^)「お…?」
 
泣きながら走り去っていくドクオを、ブーンは訳も分からず見送っていた。

120 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 05:23:16.17 ID:z8MDhwJsO
──その夜
空一面に広がるどんよりとした雲が星々を隠す。風も吹かない穏やかな夜だった。
草木は眠り、人も夢を観ているだろう。
その静寂を打ち破るどこか遠くから聞こえる微かな音…。
それは徐々に大きくなっていった。
 
ξ゚听)ξ「ブーン起きなさいッ!! 起きろーーーーーっ!!!」
 
ツンの蹴りがブーンの脇腹に炸裂。蛙が潰れたような呻きが室内に響いた。
ブーンは寝起きの悪さでは一流だったがさすがにこれには目を覚ます。
 
( -ω-)「痛い…お…もう…朝…?」
川 ゚ -゚)「違う。敵襲だ」
( -ω-)「敵…」
(;^ω^)「敵襲!?」
 
驚いてバネ人形のように飛び起きるブーン。
驚くのも無理はない。ここ数十年間でVIPが襲撃された事などなく、少なくともそのような暴挙に出る組織をブーンたちは知らない。
VIPは完全な安全地帯だと思っていたのだ。
 
川 ゚ -゚)「敵はガードメカやMTを次々と破壊している。VIPにいるレイヴンは皆出撃命令が出された」
 
廊下を走りながら手早く説明を受けるブーン。
 
(;^ω^)「敵って…ニューソクシティで戦ったヤツかお…?」
ξ;゚听)ξ「正体不明機って事しか分からないわ。もしかしたらアレかもね…!」

121 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 05:24:50.13 ID:z8MDhwJsO
格納庫に到着すると彼らのACは既に調整を終了し、出撃を待っていた。
 
《メインシステム 戦闘モード起動します》
 
耳にタコが出来る程聞き慣れた音声が響く。
現在ブーンのオペレーターは不在の為、情報はACが感知したものだけが頼りだ。
 
( ^ω^)「ブーンドライブ、出るお!」
『こちらツンデレビウム、出撃します』
『こちらスナイパークール、これより敵機の排除に向かう』
 
それぞれが合図を送り、VIPを脅かすものを撃破せんと飛び立った。
 
目下に散らばる鉄屑の山。ACとMT、ガードメカの物だろう。それらの多さが敵の強大さを示していた。
 
《敵ACを確認。機体照合開始………ヒットしませんでした。旧式のACです》
 
COMが無機質な音声が告げる。
パルス銃を撃ちながら飛び回る真紅のAC。
エンブレムには大きく「9」の数字。
それは接近するACを斬り捨て、離れた者には容赦なくパルスを浴びせて確実に撃破している。
MTが、そしてACでさえ短時間で沈むその光景はさながら悪夢のようであった。
 
《敵は強力なエネルギー兵器とグレネードを装備しています。連続して攻撃を受けないように注意して下さい。
機動力を活かした近距離でのグレネードランチャーによる正面からの極めて連続しての高火力攻撃主体の短期戦が有効でしょう》
(;^ω^)「グレネードランチャーなんか装備してないお…。これだから機械は嫌だお…」
『何ぶつくさ言ってるの! 来るわよッ!!』

122 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 05:26:36.51 ID:z8MDhwJsO
接近すると赤の機影が霞んで見える。狙いは全く定まらず、発射した弾丸は天空を突き進む。
側面からはツンデレビウム、背後からはスナイパークールが連射している。だが弾丸が赤い装甲を抉る事はない。
それとは対照的に敵のパルスは冗談のようにそれぞれの機体へ精確に命中した。
 
『ブーン! 後ろッ!!』
(;゚ω゚)「…っ!」
 
相田との訓練がここに活きた。レーダーは常に見ていたので回り込まれた事は分かっている。
敵の腕が振られる瞬間にオーバーブーストを発動し、ブレードは空を斬る。しかしそこから発射された赤の光波がブーンドライブを追った。
そうとは知らずに振り返る。
 
(; ω )「おおおおお!!!??」
 
機体に大きな傷が刻まれた。
故障はないが、こんなものを連続で食らえば一瞬で大破してしまうだろう。
 
『コイツ…! ずっと飛びながら撃ってるのになんでエネルギー切れしないのよ…っ!?』
『弾が…当たらない! クッ…チャージング…!』
 
先ほどから増援のACは続々と来ているが、来た途端に易々とスクラップに変えられてしまう。
ツンやクーでさえも数発被弾しながら動き、被害を抑えるので精一杯だった。反撃など出来ようはずもない。
雨あられとパルスを降らし、やがて飛びながら肩にあるグレネードを構える敵AC。

124 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 05:28:36.34 ID:z8MDhwJsO
『誰であろうと…私を越える事など不可能だ』
 
グレネードが火を吹いた。
 
『え…!?』
『馬鹿な…』
 
空中から火球を放つ姿はまるで爆撃機。その爆炎は周囲にある物を飲み込み、あらゆる物を蹂躙する。
 
(;゚ω゚)「なんで空中からグレネードを撃てるんだお!?」
『さあね…! よっぽど高性能のオートバランサーでも積んでるんじゃないの!』
(;゚ω゚)「解説してないで避けろお!!」
『分かってるわよっ! …私にもっと力があれば…!!』『ツン! ブーン!オペレーターからの通達だッ!
ドクオとミルナ、それとギコが到着した! あのヘリに乗っている! 護衛するぞ!!』
『…希望が見えてきたわね』
( ^ω^)「任せろお! 指一本触れさせないお!!」
 
気力をふり絞って援護に向かう三機。
しかしここで敵が攻撃を中断するとは誰が予想しただろうか。ピタリと爆音が止んだ。
 
( ^ω^)「…?」
『どうしたのかしら…』
『分からん。故障かもしれん。だが油断はするな』
 
こうしている間にヘリは格納庫に着陸する。
ブーンたち三人は旋回しながら様子を伺う。

126 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 05:29:53.53 ID:z8MDhwJsO
『お前たちの力はその程度か 修正するまでもない…
ナインボール 帰還する』
 
( ^ω^)「へ…?」
『去って行くわ…。追跡する?』
『いや…深追いは危険だな。指示を仰ごう』
 
彼らは炎を揺らめかせる残骸の中で立ち尽くす。そこについさっき到着した三人がACに乗ってやって来た。
真っ先に駆け付けたのはドクオのAC、メランコリックハートだ。
 
『クー! 無事か!?』
『うむ。腕部と脚部およびコアの破損により射撃補正と機動力の低下、それにジェネレーターとラジエーターがイカれたくらいだ』
『ボロボロじゃないか…』
『敵はどこにいる』
『あの野郎どこ行きやがったゴルァ!』
 
ガーゼフィクスとギコの重武装タンク型AC、護流亜も駆け付けた。
 
( ^ω^)「逃げられたお」
『逃げ出した訳じゃなさそうだけどね…。戦いは私たちの完全敗北よ…』
 
ツンは悔しそうに呟き、格納庫へ飛んで行く。
 
『フン、無駄足だったか』
『こんな事なら寝てたかったぞゴルァ…』
 
ミルナとギコもツンを追った。そしてブーンも。
彼らに続こうとしたドクオだったが、クーからの通信で一旦着地する。

127 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 05:30:58.72 ID:z8MDhwJsO
『そういえばドクオ』
('A`)「ん? なんだ?」
『君は、私が好きなのか?』
(;;'A`)「ぶぁっ!? な、な、なんでそんないきなりそんな事を!?」
『ツンから聞いたんだ』
(;'A`)(あの女…)
『どうなんだ?』
(;;'A`)「そ、そりゃ嫌いと言ったら、嘘になるし、好きじゃないと言っても嘘に…」
『つまり?』
(;;'A`)「つ…つまりす、す、好k亜qswでrftgyふじこlp;…」
『落ち着いて話せ』
(;;'A`)「ちょ、ちょっと落ち着く時間をくれ…」
『いいぞ』
(;'A`)「じゃ、じゃあその間に聞きたいんだが…その…ブーンの部屋で…あの…なんか色々やってるって聞いたんだが…本当か…?」
『夜のトレーニングの事か? それならブーンの部屋で寝る時は毎回やっているぞ』
 
( A )
 
『どうした?』
(;∀`)「ハハ…そうかァ…アハハハぁ…」
 
ドクオはオーバーブーストを起動した。
 
『急に笑い出すな。少し怖いぞ』
(;A;)「チクショーーーーウワァァァァァァン!!!!!!!」
『あ! 待てどこに行く?』
 
彼女の言葉を無視してドクオは彗星の如くカッ飛んで行った。エネルギーが切れるまでとこまでも、どこまでもひたすら真っ直ぐに…。

128 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 05:33:20.85 ID:z8MDhwJsO
『話が違うぞ…』
从゚∀从「ハハ? 何がだい!」
『この世界は秩序が保たれているように見える…それにイレギュラーなど存在しない
何故私を蘇らせた…』
从゚∀从「それは一部の世界しか見てないからだよ!」
『ならば私にネットワークへの接続権を与えろ』
从゚∀从「それは出来ないねぇ!」
『何故だ』
从゚∀从「そんな事を許したら全部乗っ取られちまうかもしれないしねぇ…ハッハ!」
『本当はお前が秩序を破壊する者ではないのか …もしお前が秩序を保とうとしているならば全てを私に委n』
从゚∀从「喋り過ぎだよ。ゆっくりおやすみ…坊や。その間戦闘データでも見せてもらうよ…」
从゚∀从「おやぁ? この子は…これは面白いねぇ。面白いよ! ハッハッハッハァ!」


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