30 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:52:12.54 ID:z8MDhwJsO
『作戦領域に到達。
本機は作戦領域から離脱する』
( ^ω^)「後でまた迎えに来てお〜」
 
去って行く輸送車に大きく両手を振るブーンドライブ。ACが手を振る姿は非常に不気味でありそれでいて笑いを誘う。
そこに一機のACが降ってくる。武装はマシンガンとレーザーブレードと中型ミサイルといった所か。
通信が入った。
 
『こちらブラクラだ。今日はよろしく頼む』
( ^ω^)「こちらこそよろしく頼むお」
『敵は恐らくあの洞窟に立て籠もっているだろう。行くぞ』
 
 
──洞窟内部
『なんだこれは…』
 
洞窟を進み、開けた場所に出た彼らが目にしたのは大量のMTの残骸だった。まだ炎が残っている事から、破壊されてそう時間は経っていないだろう。
 
(;^ω^)「どういう事だお? まさか他のレイヴンが受けた作戦領域に来ちゃったとか…?
オペレーター、何か分かるかお?」
 
《アウトロー・マテリアル社に問い合わせた所、その場所で間違いはないようです》
( ^ω^)「じゃあ一体誰が…」
《現在確認中………!? レーダーに反応が! 洞窟内に何者かが潜んでいます。気をつけて下さい!》

32 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:53:27.81 ID:z8MDhwJsO
ブーンのレーダーにも反応がある。それは洞窟の奥にいるのか、ずいぶん離れてはいるが高速で接近している。
 
《機体照合を開始………レイヴンです!
機体反応からランカーACツンデレビウムと断定。ただちに迎撃を!》
(;^ω^)「え、AC!? それにそのACはツンの…」
『どうする! ツンデレビウムと言えば上位ランカーだぞ!!』
(;^ω^)「ど、どうするって…、ちょっと通信入れてみるお」
( ^ω^)「ツン! 僕だお! ブーンだお!!」
『…!? まさかアンタが相手とはね…』
( ^ω^)「ツンとは戦いたくないお! 僕もするから武装解除してくれお!」
《何を言っているんですか!!》
『………レイヴンの発言とは思えないわね。死になさいッ!』
 
ツンデレビウムは肉眼で確認出来る距離まで近付いている。
逆関節の脚部を始めとするエネルギー消費の少ないパーツで構成されている純白のACだった。武装はライフルと小型ミサイルだ。
ミサイルが向かってくる。
コアの迎撃レーザーが撃ち落とせなかったミサイルは二発。一発回避し、一発被弾した。
兄者はどうにか無傷のようだ。

34 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:54:31.85 ID:z8MDhwJsO
『これで分かったかしら? 私は本気よ。死にたくなかったら反撃しなさい』
( ^ω^)「やるしか…ないのかお…!」
 
どうにか攻撃力だけを奪って済せたい。ブーンはツンを殺したくはなかった。
…ブーンに彼女を殺せるだけの実力は、無きに等しいが。
ブーンドライブが最初に動いた。
武装はショットガンとレーザーブレード。肩にはグレネードが積まれている。
 
( ^ω^)「兄者! 生きて帰るにはやるしかないお!! 再起不能にするお!!」
『…了解した。全力を尽くそう』
 
ブラクラはマシンガンを乱射しながら旋回し、ブーンドライブもブラクラとは逆に回りながら弾丸をばらまいた。
しかしツンデレビウムの機動力は高くなかなか当たらない。
それとは逆にツンデレビウムからの弾丸は嘘のように二人の機体に突き刺さる。
 
『クソォ! なぜだ! 何故当たらない!!?』
 
叫ぶ兄者。だが叫んだ所で命中率が上がったりはしない。
半狂乱の兄者とは違い、冷静なブーンは武器を切り換える。
ブーンドライブがしゃがんだ。グレネードなどの反動が凄まじい武器は、しゃがんで機体を固定しなければならないのだ。
肩にある一門の砲台を構えて狙いを定める。

35 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:55:33.04 ID:z8MDhwJsO
( ^ω^)「兄者! 離れてるお!」
 
撃ち出された火球は真っ直ぐツンデレビウムに突き進む。が、余裕を持ってかわされてしまい爆炎が彼女を飲み込む事もなかった。
一発目を外したブーンはそのままグレネードを発射し続ける。しかしこれも全てかわされた。
その間にもミサイルを混えたライフル弾が二人を襲う。
力の差は歴然だった。
 
『…ああん、もう! そんな離れた場所からのグレネードなんて当たる訳ないでしょ!! それに動けなくなるんだから格好の的じゃないの! 撃ってダメならすぐにチェンジするのっ!』
(;^ω^)「何を…言ってるんだお…?」
『兄者! アンタもマシンガンばかり使ってないで武器を換えたりしたり距離を変えたりしたらどうなの!? 弾の無駄使いはやめなさい!
ブーン! 当たらないなら接近して撃つ! だいたいショットガンなら近くで撃たないと大したダメージにはならないわよッ!!』
『どういう事だ?』
(;^ω^)「僕にもさっぱり…おわああああああああ!!!!!」
 
迫り来るミサイルを必死に避けるブーン。助言したり攻撃したりと、訳が分からない。

36 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:56:41.47 ID:z8MDhwJsO
『ホラもっと接近して! 二機とも機動力は低くないんだからっ!』
(;^ω^)「そんな事言ったって…」
『うむ…近付いても離れられては…』
『アンタたち馬鹿じゃないの!? 敵が簡単に相手の有利なポジションに来る訳ないじゃない! せっかく二人なんだから頭を使いなさいっ!」
(;^ω^)「兄者、どうすればいいんだお?」
『……分からん』
『…………一人が引き付けて接近するとか左右両方から回り込むとかあるでしょ…』
 
通信からのツンの声は脱力しているように聞こえる。
それでも攻撃の手は止まらず、二機とも目に見えて消耗している。弾数も残り僅かだ。
ブーンドライブに至っては空になったグレネードを背負っていた。
 
『弾が尽きた武器はさっさと捨てなさい。それと二人とも。撃つ時は二次ロックしてから発射しなさい』
『むぅ…!』
(#^ω^)「言われなくても分かってるお!」
 
実際には忘れていたのだが、度重なる完全に遊ばれているような言動が頭にきたらしく、ブーンはグレネードをパージしながら怒鳴り散らした。
 
(#^ω^)「兄者ァ! 二人で特功するお!! 合わせろお!!」
『了解した』
 
二機から静かなチャージ音が響く。

37 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:57:32.35 ID:z8MDhwJsO
次の瞬間、ブースターが激しい火を吹いた。圧縮したエネルギーを一度に放出する事により巨大な推進力を生むオーバーブーストだ。
一瞬で最高速度まで跳ね上がった機体は瞬く間に距離を潰す。
彼らの機体がエネルギーチャージを始めたのを見極めたツンデレビウムは事前に方向転換をし、なんとか距離を保とうとしていた。
 
(#^ω^)「オラァァァァァ!!!! どうだお!!!」
『いいぞ。これだけ近ければ…!』
 
今までのお返しとばかりに、至近距離で二機から放たれた弾丸の応酬。残弾全てを使い切るつもりで乱射した。
さすがに回避し切れず、ツンデレビウムの装甲は無数の弾に抉られた。
それでも向かって来る彼らを被弾しながら飛び越え、それ以上の被害を押さえたのは瞬時に身を動かせる判断力、これまでレイヴンとして戦ってきた経験の賜物だった。
 
『うん、いいじゃない。この短期間でよく息を合わせたわね。オーバーブースト発動のタイミングはバッチリ』
 
上と下で交差するように擦れ違ったせいで再び距離が開いてしまった。自ら離れていく二機の背中にミサイルを放つツンデレビウム。

38 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:59:22.37 ID:z8MDhwJsO
『ぬぅ…!! ミサイルが来るぞ!!!』
(#^ω^)「このスピードだったら簡単にかわせるお!! このまま旋回してもう一度接近するお!!」
 
言葉の通りミサイルは彼らに被弾する事なく地面に激突する。爆発音を後方に残し、再び追撃を試みるブーン。
しかし…
 
(#^ω^)「うおおおおおおおお」
( ^ω^)「おおぉぉぉ」
(;^ω^)「ぉぉ…?」
 
旋回の途中でブーンドライブは完全に停止した。反対側ではブラクラも硬直している。
故障かと焦るブーンだったが、原因はすぐに分かった。
単純明解な理由で絶望的な状態。そう、エネルギー切れである。こうなってしまうとエネルギーを消費する武器はもちろんの事、ブースターも使えなくなってしまうのだ。
走る事は可能だがAC相手にこの状態は致命的だった。
 
『戦場では感情的にならないこと。そして常にエネルギー残量に気を配りなさい。特にオーバーブースト発動中はね』
 
ブースターを吹かしている時でも正確に当ててくるツンの攻撃を、走ってよける自信は二人にはない。
ツンデレビウムがライフルを向ける。
 
(;゚ω゚)「………」
『どうしたの? エネルギーが切れたってだけで諦めるの?』
(;゚ω゚)(もう…ダメだお…)
『諦めるのは死んだ時にしなさいッ!!』
 
怒鳴られ、ブーンは反射的にトリガーを引いた。
拡散して飛んでいく弾丸。
どうせこれも避けられる。ブーンはそう思いながら呆然と白の機体を眺めていた。

39 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:00:27.74 ID:z8MDhwJsO
───彼女は動かなかった。
 
広がりながら飛ぶ為、全弾命中という訳にはいかなかったが六つの弾丸が装甲に突き刺さる。
 
『…機体ダメージが規定量を超えたわ。おめでとう。ひとまずは合格よ』
(;^ω^)「…へ?」
『合格…?』
『詳しい話は後日オペレーターに聞いて。今夜にも全貌が通達されるから』
『こちらツンデレビウム。作戦目標クリア。帰還します』
 
チャージ音の後、彼女の機体はフワリと宙に浮くと出口へと方向を変える。解き放たれたブースターの轟音と混乱する二人を残し、あっという間に彼女は去っていった…。

40 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:02:05.77 ID:z8MDhwJsO
( ´∀`)「まずはこの映像を見てくれモナ」
 
モニターには赤い飛行物体が映っている。
その物体は一直線に作業ロボに飛来すると爆発した。更に映像が切り替わり、場所は違うが同じような光景が映し出される。
最後にはこの飛行物体が群れを成して航行ている様が流された。先頭の個体が爆発すると誘爆して全ての個体が塵と化す。
 
( ^ω^)「なんだコイツらwwwwwきめぇwwwwwww」
ξ゚听)ξ「黙りなさい」
 
ボソリと呟き、ブーンの太ももをつねるツン。つねられた本人は悶絶してうずくまった。
ツンに襲撃された後、ブーンはすぐにオペレーターに説明を求めた。
それによるとあの日の依頼は正規のもので、嘘偽りはないと聞かされた。ただ先に到着したツンが武装勢力を全滅させて潜んでいただけなのだ。
アウトロー・マテリアルからしてみれば、誰であろうと出した条件さえ満たしてくれれば文句はなく、苦情は来ていない。武装勢力さえ排除すればあとは好きにやってくれといった所なのだろう。
そこであの場を借りてツンは任務を遂行した。
任務内容はレイヴンの力を計り、振るいにかける事。その際、助言はしてもいい事となっており、一定の力もなく助言も聞き入れないレイヴンならば容赦なく鉄屑に変えろと言われていたという。
全て、レイヴンが弱体化している事態を重く見たVIPによる、実戦を想定したある種の訓練のようなものだったのだ。

42 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:03:27.93 ID:z8MDhwJsO
収集された上位ランカーは皆、今もこの任務にあたっているという。
そしてこの日、何故唐突にレイヴンを鍛え直す決断を下したのかを知る為に、ブーンたちはVIPに来ていた。
今は幹部であるモナーの説明を受けている所である。
 
( ´∀`)「これが何かわかるかモナ? ハイそこの君ッ!」

( ^ω^)「虫?」
(;*ω*)「うぁお…っ!」
ξ゚听)ξ「まじめに答えなさい」
( ;ω^)「…分からないお」
( ´∀`)「じゃあ隣りの君ッ!」
( ´_ゝ`)「ふむ…何かの兵器だろうか? 単体では大した事はなさそうだが、最後の群れとなると厄介そうだな」
( ´∀`)「君たちは『特功兵器』を知ってるかモナ?」
( ´_ゝ`)「いや…」
( ^ω^)「知らんお」
( ´∀`)「まあ知らなくてもしょうがないモナ。
昔あった管理組織や各都市を壊滅に追い込んだ兵器の事モナ。記録によると、あるレイヴンが特功兵器を生産する装置を破壊したとあるモナ」

43 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:04:51.17 ID:z8MDhwJsO
( ^ω^)「でもなんで今その話をするんだお?」
( ´∀`)「…先日、この特功兵器がニューソクシティで確認されたモナ。発見したのはミルナ君モナ。
そこで急遽調査を頼んだモナ。他の一桁ランカーは依頼が入ってたし、こんな危険な任務は彼以外頼めなかったモナ。死んでしまっては何も持ち帰れないし…。
ミルナ君はトップランカーの座を捨てて引き受けてくれたんだモナ…」
 
最後の一言だけは弱々しく言う。
 
( ´_ゝ`)「なんと…あの不戦敗はそういう事だったのか…」
( ´∀`)「結局、何も発見出来ずにトップの座を空け渡すだけの結果に…。ああ、ドクオとの対戦見たかったモナ…」
(;^ω^)(それが本音かお…)
( ´∀`)「とにかく、現れたのはさっきの映像以外にないから出所の特定も出来ないんだモナ。でも、誰の仕業かはおおよその検討は付いてるモナ」
 
『从゚∀从』
 
今度は白衣を着た女がモニターに映った。笑顔ではあるが喜びの感情を感じさせない表情だった。目が笑っていないのだ。

44 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:06:21.18 ID:z8MDhwJsO
( ´∀`)「ハインリッヒ高岡博士。ラウンジ・ファウンデーションの研究者モナ。
旧世代の技術を発掘研究していた人で、特功兵器が確認される数日前に姿をくらましたんだモナ。恐らく、彼女が…」
( ^ω^)「じゃあラウンジに圧力でもかけて問い質せばいいお。VIPならそれくらい出来るんじゃないかお?」
( ´∀`)「もちろんそれもやったモナ。でも彼女は単独で行動していて、分かった事は博士は以前からちょくちょく姿を消していた事ともう一つ…」
 
『H―1』
 
( ´∀`)「博士のPCに残されていた、謎の記号モナ。これについては皆目検討がつかないモナ。特功兵器だけでも脅威だけど、こっちも何か不気味なものを感じるモナ」
( ^ω^)「でっていう」
( ;ω;)「キャァー!!!」
 
度重なるふざけた返しのブーンの太ももを、ツンは捻り上げた。今度は本気だったらしく、太ももの肉は若干裂けて血が滲んでいる。
 
(;´_ゝ`)「だ、大丈夫か…?」
( ω )
(;´∀`)「つ、つまり気たるべき危機の時のためにレイヴンを鍛え直す計画モナ。訓練生にも報酬は出されるからしっかり訓練しろモナ。
ちなみにこれも最初に動いたのはミルナ君モナ。まぁ彼にはちょっと問題があるけど…」

45 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:08:31.18 ID:z8MDhwJsO
一通りの説明が終わった所で、ドアが開いた。
入って来たのは噂のミルナだ。
 
( ゚д゚)「任務は完了した。どいつもこいつも使えん屑ばかりだ」
( ´∀`)「また…モナ?」
( ゚д゚)「雑魚共が何人集まった所で雑魚は雑魚。それなら始めからいない方がいい。邪魔なだけだからな。
レイヴンは量より質だ。…ん?」
 
彼は頭を巡らせて兄者を見つめる。そして嘲笑いながら言った。
 
( ゚д゚)「誰かと思えばランク17位の内藤ホライゾンと20位の流石兄者か。…そうだ兄者よ、いい事を教えてやろう。私が今回テストをした相手は貴様の弟だ」
(;´_ゝ`)「なに…!?」
( ゚д゚)「確か弟のランクは貴様より一つ上の19位だったな? その弟より弱い貴様が何故ここにいる?」
 
ミルナの言葉を無視し、立ち上がった兄者は彼の胸倉を掴んで尋ねた。
 
( ´_ゝ`)「弟者に…なにをした…」
( ゚д゚)「そういきり立つな。四肢を切断してコアを破壊したくらいだ。貴様の名を呼んでいたぞ」
ξ;゚听)「なんて事を…」
(#´_ゝ`)「おのれ…!」
 
殴りかかろうとした兄者の腕をミルナはガッシリと掴み、暴挙を許さない。
その体勢のままツンに語りかける。

46 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:10:20.56 ID:z8MDhwJsO
( ゚д゚)「ツン…上位ランカーとはいえ貴様も勘が鈍ったのではないか? こんな屑共が戦力になるとは到底思えんな」
ξ゚-゚)ξ「彼らも鍛えれば強くなるだけの素質はあるわ。きっと弟者も。その芽を摘むなんて…」
( ゚д゚)「こいつらがか? 笑わせるな。育てる価値すらない雑草の間違いだろう。
ああ…兄者よ。言い忘れていた。弟者は今頃病院に運ばれているはずだ。運が良ければまだ生きているかもしれんな」
(;´_ゝ`)「!! 失礼する! ツン、今日の訓練は勘弁してくれ!」
 
ミルナを突き飛ばして部屋を出て行く兄者。
そこでようやくブーンは目を覚ました。
 
( ^ω^)「あれ? 兄者はどこだお?」
ξ゚听)ξ「…後で話すわ。行きましょ」
( ゚д゚ )「………」
(;^ω^)(うわぁ…超見られてるお…こっちみんなwwwwww)

47 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:11:17.59 ID:z8MDhwJsO
兄者の後を追うように部屋を出たブーンとツン。
これからすぐに訓練だ。
 
( ^ω^)「それにしてもアイツ…コッチ・ミルナだっけ? さっきメッチャ見つめられたお。アイツ変態じゃないかお?」
ξ゚听)ξ「…無駄口叩いてないでさっさと格納庫に向かいなさい。今日は休む暇はないわよ」
 
檄を飛ばされて駆け出すブーンを見ながらツンは思った。
あの二人を徹底的に鍛えてやろうと。そしてミルナを打ち倒せるくらい強くしてやろうと────

49 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:12:12.68 ID:z8MDhwJsO
薄暗い研究室で狂笑を絶やさずにキーを叩く女がいた。彼女は一心不乱にデータを打ち込んでいく。
その横に張り巡らされた強化ガラスの中には特功兵器が次々と量産されていた。
そして建ち並ぶ二種類の人型兵器。
 
从゚∀从「もうすぐ…もうすぐだよぉ…ハッハ!」
 
彼女は己の行為に髪を振り乱して陶酔した。
彼女が貪るものは狂気。
彼女が見るものは魔宴。
彼女が酔い痴れるものは軟泥の美酒。
彼女が奏でるものは堕落の旋律。
彼女の指先が刻むのはH―1。

50 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:14:09.60 ID:z8MDhwJsO
( ^ω^)『兄者!! もっと撃って来いお!!!』
( ´_ゝ`)『これで…どうだァ!!!!』
 
訓練施設では二機のACが戦いを繰り広げていた。
模擬弾が弾ける音や、機体が地面や壁に激突する轟音は連日連夜止む事はない。
 
('A`)「おー、やってるな。どうだあいつらは?」
ξ゚ー゚)ξ「そうねぇ、とりあえず動きの基本は叩き込んだわ。それだけで随分良くなったみたい。まだまだ荒削りだけど、逆に言えばもっと伸びるわよ、あの二人」
(;'A`)(基本も出来てなかったのかよあいつら…)
ξ゚听)ξ「そういうアンタはどうなのよ?」
('A`)「ミルナじゃないが、今のVIPにはやっぱロクなヤツがいねーな。勢い余ってランク28位を殺っちまったしよ…。
まあそれからは極力死なない程度にやってる。ヤツに言わせてみれば甘ちゃんなんだろうが、どうも顔見知りを殺しちまった後は気分悪い。
気ィ使って戦うのはしんどいぜ…。
そういや弟者はどうなった?」
ξ゚-゚)ξ「静かに息を引き取ったわ。兄者の顔を見てからすぐですって」

52 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:16:27.25 ID:z8MDhwJsO
('A`)「そうか…。
そうならないように気をつけなきゃな。まあ、昨日ようやく一人鍛えがいのあるヤツに当たったから当分その心配はしなくていいんだけどよ」
ξ゚听)ξ「で、それがモララーって訳ね。確か10位の」
 
ドクオの後ろで遠慮しがちに様子を伺っていた少年は、名を呼ばれてようやく顔を出した。
VIP最年少でありながら一桁を射程距離に捕えた将来有望なレイヴンである。
 
( ・∀・)「久しぶりだなツンさん。
任務中にいきなりドクオさんが襲って来た時はションベンちびるかと思ったからな」
ξ゚ー゚)ξ「まだまだ子供ねぇ…。
他の人はどうなのよ? クーは見つけたらしいけど。ヘリカルはまだね」
('A`)「やっぱ難しいんだろうな。21位からは更にすげぇレベル下がるし、狙うなら10位台になってくる。そりゃ下位レイヴンにも才能あるヤツもいるかもしれんが、見極めるのは大変だな。
二人も生徒持ってるのはお前くらいなもんだぜ。
あぁ、そういやジョルジュのヤツもいい生徒が見つかったって喜んでたな…」
 
ジョルジュ、という名前を耳にして途端にツンの目付きが鋭くなる。
 
ξ゚-゚)ξ「…何位?」
('A`)「…15位」
ξ#゚д゚)ξ「アイツめ…っ!」
 
ツンの顔は般若のものに変わりつつあった。

53 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:18:58.96 ID:z8MDhwJsO
( ・∀・)「15位といえば渡辺さんだな! 渡辺さんはおっぱい大きいからな」
ξ゚-゚)ξ「ドクオ、モララー。ちょっと行って警告して来なさい。手出したらタダじゃおかないって」
('A`)「マンドクセ…なんで俺が…」
ξ゚-゚)ξ「行きなさい」
 
手の骨をゴキゴキやりながら優しく、しかし鬼神の声色で言い放つ。
 
(;・∀・)(ここは従った方が身のためだからな…)
(;'A`)(ああ…こんな所で怪我したくないしな…)
 
そそくさと退散する二人を見送り、今度は戦い続けている二人に通信を入れた。
 
ξ゚听)ξ「ハイそこまでっ!」
(;^ω^)『やっと休憩かお…?』
(;´_ゝ`)『もうヘトヘトだ…』

54 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 02:20:14.37 ID:z8MDhwJsO
ξ゚听)ξ「ハァ? 休憩な訳ないでしょ。これから私が入るから、二人でかかって来なさい」
(;^ω^)『マジかお…』
(;´_ゝ`)『なんというスパルタ…。聞いただけで分かってしまった。この教官は間違いなく鬼』
ξ゚ー゚)ξ「私だって鬼畜じゃないわよ。10発当てた方から休憩入っていいわ。一人抜けるとタイマンになるから大変よ」
(;^ω^);´_ゝ`)(途中まで協力して出し抜くしかないな/お)
ξ゚听)ξ「ああそれと、被弾するごとにマイナス1。休みたかったら死ぬ気で避ける事ね」
(;^ω^)『鬼畜だお…』
(;´_ゝ`)『いや、悪魔だ…』
ξ゚-゚)ξ「教官への暴言により10発追加で20発に変更。呪うなら未熟な自分を呪いなさい」
(;^ω^);´_ゝ`)『………』
 
この日、二人が昏倒するまで訓練は終わらなかった。


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